令和元年9月定例会 第2回岩手県議会定例会会議録

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〇26番(小西和子君) 社民党の小西和子でございます。
 このたびの台風第19号により犠牲になられた方々の御冥福をお祈りいたします。被災された皆様方にお見舞い申し上げます。
 では、通告に従い順次質問いたします。
 初めに、東日本大震災津波と2016年台風第10号災害からの復旧、復興について伺います。
 東日本大震災津波から8年7カ月、被災地を訪問し、家族が津波の犠牲になった方や今なお生活再建が進まない被災者の話を聞くにつけ、風化への危機感が強まっていると感じます。復興道路の整備や住宅再建が進んでいるという声がある一方、まちのにぎわい創出や新たなコミュニティー形成の課題があるとの声もあります。今なお応急仮設住宅等に1、297人が入居しております。
 県職員を初め、関係の方々は身を粉にして復興に奮闘しておりますが、マンパワーの不足、財源問題など、今も多くの課題を抱えています。今年4月1日時点の県職員の欠員数は81人です。特別募集とともに、任期付職員の採用及び他県応援職員の確保に努めた結果、9月1日現在での欠員数は69人となりました。しかし、震災前の欠員規模までの回復には至らず、依然として厳しい状況にあります。東日本大震災津波発災後の県議会の場においても、これまでの間の県職員の人員削減等に伴い、円滑な災害対応ができなかったという教訓も共有したところであり、人員確保に当たっては、まずもって東日本大震災の教訓を生かさなければなりません。
 さらに県では、今年度をいわて県民計画(2019〜2028)のスタートと位置づけ、遂行に向けて取り組みを加速化するとしています。これを着実に遂行していくためにも、人員確保対策は不可欠です。しかし、業務量の増大に人員が確保できておらず、既に現場からは、限界であるとの声が上がっています。職員のモチベーション低下は著しいものがあります。
 恒常的な欠員による過重労働を強いられる中、2018年度の精神疾患療養者数は78人となり、若年層の精神疾患者の増加傾向が続いています。このように、恒常的な長時間労働は是正されていません。職場での余裕が全くなくなる中で、パワハラ等もあり、欠員等の人員不足が職場環境の悪化に拍車をかけているのではと危惧しています。
 知事は選挙戦の中で、職員とともにつくり上げたいわて県民計画(2019〜2028)の確実な遂行に全力を挙げるとしました。県民の幸福度を高める施策推進の下支えはもとより、全国各地で発生している災害を踏まえ、迅速かつ着実な対応のためには、あらゆる職種における職員の増員が不可欠と言えます。さらに、県政課題の推進に向け、福祉、農政、畜産、土木等を初めとしたスペシャリストの確保、育成も重要課題です。
 そこで、いわて県民計画(2019〜2028)を初めとした県政推進に当たっての人員体制の確保に関し、中長期的視点からの対応についてどのように臨む考えか知事に伺います。あわせて、各行政分野における専門職の確保に向けた考えも伺います。
 次に、長時間労働の是正について伺います。
 ことし4月から超過勤務時間の上限が定められたほか、客観的な勤務時間管理が導入され、働き方改革の枠組みが導入されました。
 県内各職場で働いている方から県の職場実態を伺う機会がありました。超過勤務の上限が導入されても、実際の働き方は大幅に変わっていない、早朝勤務等で何とか業務をこなすなどの課題を伺いました。本来であれば、客観的な勤務時間の把握で長時間労働の実態を正確に把握し、少なくとも超勤上限の範囲におさまる職場環境への改善としていくことが必要と言えます。
 制度導入から半年が経過しましたが、諸制度の導入に伴う長時間労働の是正の効果をどう捉えているか、業務縮減や適切な要員確保などの職場環境改善にどう生かす考えか、具体的対応を伺います。
 次に、会計年度任用職員制度について伺います。
 知事部局における臨時、非常勤職員の配置状況は、本年4月時点で臨時的任用職員が572人、非常勤職員が1、741人、合わせて2、313人と聞いており、今や県の行政を進める上で欠かすことのできない存在となっています。
 そこで、2020年度からスタートする会計年度任用職員制度は、その趣旨が、特別非常勤職員と臨時的任用職員の任用要件の厳格化を目的とする一方で、初めて期末手当の支給を可能とするなどの処遇改善も大きな目的であると認識しております。本県においても、新制度導入を機に、処遇改善や雇用の安定を図るための制度設計が必要であると考えます。
 本県でも本年2月県議会で関係条例が整備され、制度導入に向けた諸準備も佳境を迎えているところです。しかし、現場からは、臨時職員がフルタイムからパートタイムに移行することが示され、現行の報酬水準が維持できるのか、募集方法や募集時期等がどうなるのか、雇用が維持できるのか、不安が尽きない切実な課題をお聞きしたところです。
 そこで伺いますが、2020年4月の導入を控え、現在の会計年度任用職員制度導入における進捗状況と今後の見通しを伺います。
 次に、制度導入をめぐっては、安定した財源確保や法の趣旨に沿った対応も課題です。総務省では、単に勤務条件の確保等に伴う財源上の制約を理由として会計年度任用職員制度への必要な移行について抑制を図ることは改正法の趣旨に沿わないとしていますが、地方交付税措置を初めとした財政上の措置がしっかりと担保される財源確保は不可欠であり、総務省への財源確保対策にしっかりと取り組む必要があります。地方公務員法等の一部改正に係る附帯決議にも、厳しい地方財政事情を踏まえつつ、政府は、制度改正により必要となる財政の十分な確保に努めることと記載されています。
 そこで、県として、新制度導入に当たって、処遇改善に向けた必要な財源措置について、現行の処遇を確保し、かつ期末手当やフルタイム職員への退職手当の支給に向けた必要な財政規模を伺うとともに、総務省への要望状況を伺います。
 また、改正法の附帯決議には、公務における同一労働同一賃金のあり方に重点を置いた対応に努めることとありますが、新制度の同一労働同一賃金についての県としての考え方を知事に伺います。
 次に、安倍政権の政策と県政について伺います。
 日本経済の体質は、今世紀初頭に大きく変容しました。象徴的なのが、企業の内部留保の激増です。ことし9月で463兆円に達しました。2001年度から2017年度まで売上高はわずか15.3%増、他方、非正規雇用の拡大などに伴い、人件費は同時期に77.4兆円減、消費税に伴う法人税減税でも、企業は38.6兆円を蓄えました。つまり、内部留保の増加分116兆円は、かなりの割合が人件費削減と法人税減税、言いかえれば労働者の犠牲と国民の負担です。内部留保の増加は世界的傾向ですが、多くの国では、同時に賃金もふえています。日本だけが人件費削減、消費冷え込み、国内市場が縮小、内部留保は海外投資へ、国内がさらに縮小という負の循環を拡大させています。
 日本の処方箋は何かといえば、内部留保を、賃上げ、非正規労働者の正規雇用、中小企業との取引条件の改善などに使うべきです。10兆円を賃金に回すだけでかなり変わると言われています。法人税率も所得税率ももとに戻し、応能負担にすべきです。さらには、内部留保課税も検討すべきと考えます。アメリカ、台湾、韓国でさえ課税しています。
 10月1日、国民の声を押し切って、消費税率が8%から10%に引き上げられました。社会保障のための消費税と言いますが、安倍政権は、社会保障の自然増の毎年5、000億円以上のカット、いわゆる年金カット法(公的年金制度の持続可能性の向上を図るための国民年金法等の一部を改正する法律)の強行採決を初め、社会保障の切り捨てを進めてきました。安倍政権が最大のチャレンジと位置づける全世代型社会保障への改革の中では、年金支給年齢の70歳超への選択拡大、75歳以上の医療費の窓口負担の原則1割から2割への引き上げ、受診時定額負担の導入、自己負担が3割となる現役並み所得者の対象拡大、要介護1、2の地域支援事業への移行、ケアプラン作成の有料化など、社会保障の改悪メニューが検討課題となっています。しかも、10月1日の消費税率アップと同時に、後期高齢者医療制度の低所得者に対する保険料軽減の特例措置が廃止されました。また、消費税の10%への引き上げを受け、政府は、生活保護費のうち生活費分―生活扶助を1.4%増としていますが、生活扶助が昨年10月から3段階での引き下げが行われていますから、実際の給付額が引き下げとなる人々もいるはずです。また、一般消費者に対して用意されているプレミアムつき商品券などは、基本的に生活保護世帯には適用されません。生活保護で暮らす人々にとって、2%の消費税増税の影響が大きいと思われます。これでは、消費税増税と社会保障改悪の一体改悪にほかなりません。
 1989年に3%の消費税が導入されて以来、42%だった法人税の基本率はほぼ半減し、23.2%に減税されました。1989年から2018年までの消費税収入は累計372兆円ですが、同時期の法人税減税は291兆円で、消費税収の約8割が法人税減税の穴埋めに使われてきたわけです。同時に所得税の累進課税も緩められた事実を見れば、消費税は社会保障のためではなく、法人税と富裕層の減税のための税と言えます。
 消費税を減税ないし廃止し、大企業や富裕層に適正な応能負担を求めれば、経済が活性化し、賃金が上がり、社会保障をカットどころか充実させる好循環がつくれると言われています。格差や貧困が拡大する中、ぎりぎりの生活をしている人であればあるほど消費税の影響は深刻です。多くの中小零細事業者は、消費税の転嫁が厳しく、軽減税率やポイント還元への対応もできないという状況に放置されています。
 そこで、消費税率10%への引き上げによる岩手県の経済に与える影響をどのように捉えているか知事に伺います。あわせて、県内の母子家庭を初めとする生活困窮者、中小零細事業者に与える影響も伺います。
 安倍政権の6年間で非正規社員が約300万人ふえて2、150万人に達し、働き手の4割近くを占めるまでになりました。賃金をふやすことと正社員化することを進めなければなりません。憲法第25条に基づき、最低賃金を全国一律、まずは1、000円に、さらに1、500円を目指すべきです。最低生計費試算調査によると、全国どこでも時給1、500円が必要であり、中小企業への支援と一体で行うべきです。
 日本の最低賃金は、先進国では最低レベルと指摘されています。ヨーロッパでは、最低賃金をフルタイム労働者の賃金の中央値の五、六割程度に設定する国が少なくないですが、日本は42%にとどまります。最低賃金がフルタイム労働者の賃金の半分に満たない状況は問題であると指摘されています。
 岩手県の最低賃金は10月4日に790円に改定されましたが、1日8時間、週40時間働いても年収は164万円余り、200万円以下のワーキングプアに入ります。東京都は1、013円に改定され、年収は210万円、岩手県と比べると46万円ほども多くなります。最低賃金が改定されるたびに、都市部との所得格差が開きます。若者、女性が地元に残らない要因の一つは所得格差です。国際的に最低賃金は全国一律が当たり前です。他の国でできて日本にできないはずはありません。
 そこで伺います。いわて県民計画(2019〜2028)の仕事・収入の指標の1人当たりの県民所得の水準を上げるためにも、最低賃金を全国一律、まずは1、000円に、さらに1、500円を目指し、中小企業への支援と一体で行うべきと県民の声が高まっていますが、知事の見解を伺います。賃金をめぐる格差は、地域間だけではありません。男女間、正社員、非正規社員の格差も依然としてあります。
   〔副議長退席、議長着席〕
 次に、子供の貧困対策について伺います。
 いわて子どもの貧困対策推進計画は、平成28年度から平成31年度までの4年間取り組むこととしています。本年度が最終年度ですが、岩手県として子供の貧困対策の最重要課題をどのように捉えているのか、これまでの成果もあわせて伺います。
 学校現場の教職員は、最前線にいて各家庭の状況を理解しています。しかし、その情報が福祉行政側に伝わっていないとの指摘があります。一方で、教育委員会と福祉担当課が一緒になっている行政―小さな役場では、情報共有できるはずなのに、機能不全となっていると言われています。
 こうした状況を受けて、盛岡市では、教育委員会、福祉関係課、市社会福祉協議会及びNPOが連携して、生活困窮家庭に食料支援を行うとともに、各家庭が抱えている悩みや課題を把握し、支援機関につなぐ取り組み等を行ってきました。この事業について県ではどのように評価しているのか。あわせて、岩手県が主導して行うべき事業と考えますが、いかがでしょうか。
 何らかの事業を行政から受託し、NPOが人を雇用した場合、人件費見積もりが安過ぎて、ワーキングプアを生み出すだけです。相談員や支援員のスキルを専門家と評価し、適正な委託料の算出をすべきです。結局、NPOは、受託事業が終わっても雇用確保に努めなければならず、多少無理してでも新規事業を取りにいかざるを得ません。そうすると行政はこれで人件費が足りていると勘違いし、次の予算は削られることになります。それでも、多少の手出しがあっても、NPOは受けざるを得ません。限界まで来て、NPOは破綻します。新たな使命感を持ったNPOが数年頑張りますが、やっぱり破綻という悪循環を行政の受託事業が生み出しています。子供の貧困は親の貧困です。親を貧困に導くことを行政もやっていることになります。
 岩手県は、人員不足にもかかわらず業務量がふえている児童相談所や、何でも兼務になっている市町村の現状を鑑みて、その応援もできる仕組みをつくるべきです。
 ひとり親家庭支援や子育てに困難を抱える保護者への支援は、大変な手間とスキルが求められます。一方で、NPOなど民間の法人、団体の中には、スキルを持つスタッフを確保し、包括的な就労支援やサポートなどの手法を確立させ、最前線で一生懸命取り組んでいるところもあります。市町村は大変疲弊しています。このことから、NPOなどに頼っている現状を市町村の責任とすることは考えられません。
 知事に伺います。県が子供の貧困対策をすると言うのであれば、特にひとり親、そして子供の困り事を集約し、包括的な相談体制を構築するための拠点をつくるべきと考えますが、いかがでしょうか。
 あわせて、このような拠点をつくるに当たっては、行政だけでなく、スキルや経験のあるNPOなどと力を合わせて取り組むべきです。さらには、こうした民間の法人や団体が、安定した収入や雇用環境のもとでひとり親支援や子供の貧困対策に専念できるような仕組みをつくるべきと考えますが、いかがでしょうか。
 次に述べるのは、貧困対策の最前線で奮闘している方々の言葉です。県が行うひとり親支援の相談対応の取り組みには、県全体や家庭全体を支える視点がない状態です。そのため、岩手のひとり親家庭、貧困問題の施策は目標も低く、成果につながっていません。人口減少も少子高齢化もここが問題だったことを行政は猛省すべきです。平日9時から17時までに相談に行くことのできる人は、この時代、なかなかいません。特に非正規雇用など立場の弱い人ほど休めません。行政の部署を強化しても、無理な時代と社会ではないでしょうか。そのことを行政ははっきりと認識すべきです。ひとり親支援や子供の貧困に関する包括的な相談体制を構築するための拠点を設けて、一刻も早く課題を解決し、その子や家庭に一歩を踏み出させてほしいと切に望みます。
 次に、豊かな教育の実現について伺います。
 2018年6月、県教育委員会は、岩手県教職員働き方改革プラン〜持続可能な教育環境の実現に向けて〜を発表しました。2018年度からの3カ年計画で、目標を、業務に関する充実感、健康に対する安心感の向上とし、月100時間以上の時間外勤務従事者を3年間でゼロに、80時間以上については半数以下にすることを数値目標として掲げています。県教育委員会では、教職員のワーキンググループによる業務のスクラップ・アンド・ビルドの検討を行い、市町村教育委員会にも同様の取り組みを促しています。
 多忙化解消のためには、多忙化解消の制度や仕組みを整えること、人をふやすこと、業務を減らすことが三位一体として機能することが重要です。ところが、県立学校の教員のうち、一月の時間外勤務が80時間以上100時間未満の職員の割合の平均は、2017年度は4.1%、2018年度は4.8%、今年度第1・四半期は7.9%とふえ続けています。100時間以上の職員の割合も同様にふえ続けています。過労死ライン―時間外勤務80時間以上の中学校教員6割、小学校教員3割と言われています。文部科学省の言う客観的勤務時間の把握ができている県内市町村は、33自治体のうち10自治体です。客観的勤務時間の把握なしに取り組みの比較はできないのではないでしょうか。
 また、2019年3月18日付文部科学省事務次官通知、学校における働き方改革に関する取組の徹底についてに、県教育委員会は本気で取り組む必要があると記載されています。岩手県教職員働き方改革プランの目標達成の道筋を具体的にお示しください。
 人事委員会委員長に伺います。岩手県教職員働き方改革プランに基づき取り組みを進めてはいますが、時間外労働が減るどころかふえています。さらには、県教育委員会は小中学校の勤務の実態を把握しておらず、このままであれば、教職員の勤務負担軽減や健康の確保を図ることはできません。このことについて、人事委員会委員長としての見解を伺います。
 国連子どもの権利委員会は、高度に競争的な学校環境が就学年齢層の子供のいじめ、精神障がい、不登校、中途退学及び自殺を助長している可能性があると日本政府に繰り返し勧告しています。15歳から34歳までの若い世代で死因の第1位が自殺となっているのは、重立った国では日本のみです。また、いじめの認知件数は年々増加し、全国で54万件を超えました。このことから、高度に競争的な学校環境を生み出している根源である岩手県小・中学校学習定着度状況調査を廃止すべきと考えます。
 また、本年度は10月2日に行われましたが、県教育委員会からの再三にわたる入力、訂正の情報があり、現場は混乱しました。岩手県小・中学校学習定着度状況調査については、他の都道府県の状況や市町村教育委員会における取り組みを参考にするとのことですが、およそ4割の都道府県は独自学習調査を行っておりません。文部科学省も調査の一元化を通知しているのですから、あり方を含め、廃止を決断すべきときと考えますが、いかがでしょうか。
 毎日のように児童虐待、体罰、障がい者差別、いじめ、不登校が報じられています。7人に1人が子供の貧困です。教育現場の課題を踏まえ、国連子どもの権利条約に基づいた、子供の権利が尊重され、子供の能力が最大限発揮できる岩手にするための議論を県教育委員会が中心となって始めるべきと考えますが、見解を伺います。
 来年4月からの大学入試に活用する英語民間検定試験に対する不安の声が上がっています。地域格差、経済格差の問題があり、それらに対する対応が不十分である、英語民間検定試験の公平、公正に対する不信感が払拭されていない、障がいのある受験者への配慮がまちまちであるなどであります。県教育委員会としての英語民間検定試験に対する見解と今後の対応について伺います。
 最後に、多様な生き方が認められる男女共同参画社会の実現について伺います。
 7月22日開催の岩手県東日本大震災津波復興委員会第14回女性参画推進専門委員会の席上、今年度末までに提言集がまとめられる予定との報告がありました。いわて県民計画(2019〜2028)では県民の幸福度向上が基本方針であり、その実現には市町村レベルでの防災の考え方が重要であると考えます。
 そこで伺いますが、この提言集は、市町村での防災計画やマニュアル作成の際に参考になるような配慮が重要であると考えますが、いかがでしょうか。あわせて、提言集には男女共同参画の視点や項目を起こすべきと考えますが、進捗状況を伺います。
 防災に男女共同参画の視点を持つことの重要性について、市町村の認識を高めていく必要があります。その際、県の先導が必要と考えますが、県はその役割を果たしているのか知事に伺います。
 防災に男女共同参画の視点を持つことの重要性から、防災会議への女性の登用は進んでいるものと思われます。いわて県民計画(2019〜2028)の推進方策として、県の防災会議における女性委員数を今年度以降13人に、女性委員が参画する市町村の防災会議の割合を今年度は93.9%に目標設定しています。1人だけではなく、複数参画できるように女性委員の人材育成も必要と考えます。仙台市では、防災のスキルをつけるために、防災に関する地域女性リーダー育成研修が実施されています。女性防災リーダー育成研修等が実施されているのか伺います。
 LGBTについて伺います。
 LGBTについての研修や出前講座の回数を増やすこと、パネル活用、リーフレットによる普及啓発を行うことでありましたが、現状について伺います。
 岩手の高校生の10人に1人が該当する調査結果から、小学校、中学校、高校での人権教育が重要であることを訴えてきました。どのように推進したのか伺います。
 以上で私の質問を終わります。御清聴ありがとうございました。(拍手)
   〔知事達増拓也君登壇〕
〇知事(達増拓也君) 小西和子議員の御質問にお答え申し上げます。
 まず、人員体制の確保についてでありますが、今年度からスタートしたいわて県民計画(2019〜2028)の行政経営プランにおいては、社会経済情勢の変化や新たな行政課題等に柔軟に対応できるよう、適時適切な組織体制の見直しや、行政需要に応じた適切な定数配置等に取り組むこととしております。
 このため、引き続き復興業務に必要な職員数を確保しますほか、今後の行政需要の拡大や職員のワーク・ライフ・バランスの推進などに対応するため、業務の見直しによる定数の再配置を行いつつ、今年度からの4年間で80人から100人程度増員することとしております。
 また、復興やふるさと振興等の県政課題に対応するため、特別募集を含め新規採用職員を大幅に増やしてきたほか、任期付職員や再任用職員の採用、応援職員の受け入れなど、多様な方策により必要な人員の確保に取り組んでいるところであります。
 今後とも、こうした取り組みを通じて、いわて県民計画(2019〜2028)の着実な推進を図るための職員体制の確保、充実に努めてまいります。
 次に、会計年度任用職員制度の同一労働同一賃金についての県としての考えでありますが、国が平成30年に定めた同一労働同一賃金ガイドラインにおいては、我が国が目指す同一労働同一賃金を通常の労働者と短時間、有期雇用労働者の間の不合理な待遇の相違及び差別的取り扱いの解消を目指すものとしています。
 今回の制度導入により、これまで非常勤職員に対し法律上認められていなかった期末手当の支給が可能となるものでありますが、国は、国会審議の中で、期末手当の支給が、同一労働同一賃金ガイドラインが定める方向性に合致していると説明しており、議員から御指摘のあった改正法の附帯決議の内容を盛り込んだ形で、会計年度任用職員制度を整備したものと承知しております。
 県では、こうした国の考えに沿って、任用期間が6カ月以上などの要件を満たす会計年度任用職員に対し、常勤職員と同じ支給率で期末手当を支給するなどの内容を定めた条例を整備したところであり、本県の制度も、この方向性に合致しているものと考えております。
 次に、消費税10%増の岩手県の経済に与える影響についてでありますが、消費税率の引き上げは、経済的に弱い立場にある方々や地域経済を支える多数の中小企業に負担を強いることになるため、県民生活に多大な影響を及ぼすことが懸念されます。
 また、東日本大震災津波や平成28年台風第10号災害、先般発生した台風第19号災害の被害を受けた地域においては、暮らしの再建やなりわいの再生の妨げとなることが危惧されます。
 特に、議員御指摘のひとり親世帯等の経済的に困窮している方々においては、今般の消費税率の引き上げにより、幼児教育、保育の無償化や高等教育の無償化、年金生活者支援給付金の支給などの政策が実施されるものの、水道光熱費等の負担増が家計に与える影響が大きいと懸念されるところであります。
 また、中小零細事業者においては、軽減税率制度の実施に伴う会計システムの入れかえなどの事務的、経済的負担に加え、消費増税分の価格転嫁を行わない場合の負担等が生じると見込まれるところであります。
 県といたしましては、経済的に弱い立場にある方々が困窮することがないよう、また、地域に根差した産業に十分配慮して、地方経済の落ち込みや復興のおくれを招くことがないよう、本年6月に政府予算提言、要望を行ったところであり、引き続き、全国知事会などと連携し、十分な対策を講じるよう国に対応を求めてまいります。
 次に最低賃金の引き上げと中小企業への支援についてでありますが、地域における各企業が生産性を高め、収益力を向上させることにより、最低賃金も含めた地域の賃金水準が上がっていくことが重要であり、そのことが豊かな自然、食など、恵まれた生活環境と相まって、岩手で働く、岩手で暮らすことの実現につながっていくものと考えます。
 この賃金水準の向上に向けて、県は、いわて県民計画(2019〜2028)において、中小企業が行う経営力の強化や生産性の向上、新たな事業活動などの取り組みの促進を盛り込んだところであり、商工指導団体や産業支援機関と連携のもと、中小企業者の収益力の向上を支援してまいります。
 次に、ひとり親家庭等の包括的な相談体制の構築についてでありますが、県が昨年度実施した子どもの生活実態調査結果においては、ひとり親家庭等が、公的なサービスを有効に活用していないことが明らかとなりました。
 また、次期岩手県ひとり親家庭等自立促進計画の検討を行っている専門部会において、就労、生活、子育てなど、さまざまな相談ニーズに対して、それぞれの相談機関が十分に対応できていない状況も見られることなどについて、御意見をいただいております。
 こうしたことから、就業率が高く、さまざまな困難を抱えるひとり親家庭等が、必要なときに必要なサービスを活用できることが重要であり、県としては、民間団体や関係機関の緊密な連携のもと、ひとり親家庭等のニーズに包括的に対応する相談支援体制を構築し、ワンストップの相談支援、出張、訪問相談、サービスの申請補助を行う同行支援など、利用しやすいサービスを一体的に提供していくことが必要と考えております。
 国においても、ひとり親家庭等を総合的に支援する母子家庭等総合対策支援事業を拡充したところであり、こうした国の制度の活用も視野に入れ、引き続き、専門部会において関係者から御意見を伺いながら、本県における包括的な相談支援体制のあり方について検討してまいります。
 次に、防災会議等での女性委員の参画状況についてでありますが、県では、いわて県民計画(2019〜2028)に基づき、男女が互いに尊重し合い、共に参画する社会の実現に向けて各般の施策を推進しているところでありますが、地域防災の分野においても、防災に関する政策、方針決定過程に男女がバランスよく参画し、男女の違い等に十分配慮した防災対策を行っていくことが重要であると考えています。
 防災行政における男女共同参画の現状を示す女性委員が参画する市町村防災会議の割合は、2017年度現在で81.8%にとどまっていることから、防災対策の推進に向けた活動が男女共同参画の視点で行われるよう、市町村防災会議における女性委員の登用を積極的に進めているところであります。
 市町村が行う防災対策の中には、避難所運営におけるプライバシーの確保や被災者の生活を支える備蓄など、女性の特性や実情に即したきめ細かな対応を求められるものがあり、防災行政への女性の視点の反映が極めて重要であります。
 県といたしましては、市町村が女性の視点に立った防災対策を適切に実施できるよう、市町村長を対象としたトップセミナーなどさまざまな機会を活用し、市町村の防災行政への女性参画に向けた働きかけを、引き続き積極的に行ってまいります。
 その他のお尋ねにつきましては関係部局長から答弁させますので、御了承をお願いします。
〔総務部長八重樫幸治君登壇〕
〇総務部長(八重樫幸治君) まず、専門職種の人材確保についてでありますが、専門職の職員については、専門的な知識を必要とするそれぞれの行政分野において欠かせない人材であり、その確保は重要な課題と認識しております。
 このため、退職者の見込みや行政需要の変化等を踏まえ、これまでも職員の計画的な採用に努めてきたところであり、専門職については、おおむね必要な人員が確保できていますが、一方で、総合土木職や獣医師などの一部の職種については、震災復興に伴う業務量の増大や民間企業等との競合のため、採用予定数を確保できていないなどの課題があります。
 このため、職務経験者等を対象とした採用試験を実施しているほか、インターンシップや大学訪問、技術系職種を対象とした業務説明会等による採用試験受験者の確保等の強化を図っているところであり、今年度、大卒で知事部局に採用した職員のうちインターンシップを経験している者が19名と、前年度の10名から大幅に増加したところであります。
 こうした取り組みを初め、今後においても、所管部局や人事委員会と連携しながら、専門職種確保のための取り組みを進めてまいります。
 次に、長時間労働の是正についてでありますが、超過勤務命令の上限時間の設定は、職員の健康の保持や仕事と生活の両立を目的として導入したものであります。
 導入に当たっては、所属長に対し、業務の見直しや超過勤務の事前命令、事後確認の確実な実施などについて、改めて周知徹底を図ったほか、超過勤務が多い所属に対するヒアリングをよりきめ細やかに行い、職員の健康状況や業務の進捗状況などを確認の上、弾力的に事務分担の見直しを行うよう求めているところです。
 また、今年度導入した、管理職員が職員の勤務時間を客観的に把握する仕組みなどを活用し、業務量の偏在の解消を図るよう徹底しているところであり、こうした取り組みを通じて、職員の業務負担の軽減に一定の効果があるものと考えています。
 さらに、今年度においても、特別募集の実施や任期付職員の採用によるマンパワーの確保や業務支援の活用、機動的な人員の再配置などを行っているところであり、これらの取り組みを一体的に進め、職員の超過勤務の一層の縮減に取り組んでまいります。
 次に、会計年度任用職員制度導入の進捗状況と今後の見通しについてでありますが、平成31年2月県議会定例会で議決いただいた会計年度任用職員の給与等に関する条例等を踏まえ、人事委員会において、任用、勤務条件などの検討を行い、ことし7月に制度の詳細を定めた人事委員会規則を制定したところです。これを受け、知事部局を初めとする各任命権者において、給与や勤務時間など具体的な勤務条件を検討したところであります。
 各任命権者においては、こうした制度の概要や具体的な勤務条件等を記載した資料を作成し、現在任用中の臨時、非常勤職員に配布したほか、各所属に対し説明会を開催するなど、新たな制度を周知するための取り組みを進めています。
 今後においては、任命権者ごとに公募及び選考を順次実施するなど、任用に向けた手続を行うこととしており、引き続き、制度の円滑な導入に向け準備を進めてまいります。
 次に、会計年度任用職員制度導入の財源措置についてでありますが、制度導入による財政所要額については、個々の職員の詳細な勤務条件によって変動するものでありますが、仮に、今年度の臨時、非常勤職員の任用数をベースに会計年度任用職員を任用することとした場合、普通会計ベースで、期末手当に約8億円、退職手当に約0.3億円、これに連動する共済費、社会保険料の増額分など合わせて、計9.6億円程度を要するものと見込まれます。
 これらの財政所要額については、国会審議の中で、政府から地方財政措置についてしっかりと検討していくと答弁されており、県としても、ことし6月に実施した令和2年度政府予算要望において要望したところであります。引き続き、必要な財源措置が図られるよう、全国知事会等とも連携し、国に対応を求めていきます。
 次に、女性防災リーダーの育成研修等の実施についてでありますが、県内では、婦人消防協力隊46隊が編成され、7万2、111名の隊員が地域の火災予防等に取り組んでおります。
 婦人消防指導者研修会や応急手当普及講習会が行われ、資質の向上が図られているほか、消防団員の教育訓練を行う研修会にも、昨年度は43名の女性消防団員が参加し、各地域における防災力の向上につながっております。
 県としては、これらの研修に加え、市町村と連携し今年度から行っている防災士養成研修についても、市町村に対して、積極的に女性を推薦することを働きかけることなどにより、地域における女性防災リーダーの育成を図っていきたいと考えています。
   〔保健福祉部長野原勝君登壇〕
〇保健福祉部長(野原勝君) まず、いわての子どもの貧困対策推進計画についてでありますが、現計画に掲げる指標を見ますと、生活保護世帯の子供の高等学校等進学率が、平成26年度の90.6%から、平成30年度速報値では96.3%まで上昇したほか、母子世帯の就労収入月額15万円以上の割合が、平成25年度の30.2%から、平成30年度では33.5%まで増加しているところです。
 昨年度実施した岩手県子どもの生活実態調査結果においては、依然として、母子世帯の就労、収入面での厳しい生活実態が浮き彫りとなる中で、ひとり親家庭等就業・自立支援センターの利用が目標に達しなかったことに示されているとおり、母子世帯の公的なサービスの有効活用を促進していくことが重要な課題であると認識しています。
 県としては、母子・父子自立支援による相談支援、児童扶養手当の支給や母子父子寡婦福祉資金の貸し付けなどの経済的支援のほか、ファイナンシャルプランナーによる家計管理支援、母子世帯の母等を対象とした職業訓練を実施するなど、就労、収入面での支援の充実に引き続き取り組んでまいります。
 また、公的サービスの有効活用については、先ほど知事からも御答弁申し上げましたが、民間団体や関係機関の緊密な連携のもと、母子世帯等のニーズに包括的に対応する相談支援体制の構築に向け、検討を進めてまいります。
 次に、関係機関等の連携による困窮家庭への支援についてでありますが、議員御紹介の盛岡市の取り組みでは、教育との連携により、福祉が困窮家庭の情報を把握し、その情報をもとに民間団体が行う食料支援活動をきっかけとして、福祉担当課が、その家庭の支援ニーズ等を把握し、具体的な支援に結びつけており、みずから支援を求めることが困難な困窮家庭を早期に把握し、適切な支援につなぐ効果的な取り組みであると認識しています。
 このような関係機関の情報共有や民間団体等との連携による取り組みが県内に広まっていくためには、各市町村において、それぞれが抱える課題や地域の実情に応じ主体的に取り組みを進めていくことが重要であることから、県といたしましては、市町村の取り組み状況を把握し、県全体としての展開方策を検討しながら、研修の開催や助言等を通じ、好事例の情報提供を行うなど市町村の取り組みを支援してまいります。
   〔復興局長大槻英毅君登壇〕
〇復興局長(大槻英毅君) まず、復興に関する提言集の作成についてでありますが、復興の取組と教訓を踏まえた提言集(仮称)につきましては、東日本大震災津波の経験や教訓を震災対応を経験していない職員に伝え、将来の震災対応に備えることが必要と考え、作成することとしております。これらの教訓等は、発災時に現場の災害対策を担う市町村の職員にも参考としていただけるものと考えているものでございます。
 こうしたことから、提言集では、県として、これまでの復興の取り組みを通じて得た教訓の取りまとめを中心としながら、市町村からも協力を得まして、県が市町村と連携して進めた取り組みや、津波により被災した市町村それぞれの取り組みも掲載することとしております。
 また、災害時に各自治体が活用しやすいよう、発災時に起こる課題への対応事例をできるだけ多く記載するとともに、取り組んだ対策を時系列で整理して記載するなど、配慮をしながら作成していきたいと考えております。
 次に、提言集の作成における男女共同参画の視点についてでございますが、県では、復旧、復興の推進に当たりまして、避難所運営や若者や女性による被災地での新たなビジネスの立ち上げの支援を初めといたしまして、女性の意見を幅広く取り入れながら取り組みを進めてきたところでございますが、こうした女性の視点からの教訓も盛り込むことが重要と考えております。
 提言集におきましては、こうした取り組みの課題の掲載のほか、復興を支える仕組みとして、多様な主体の参画・つながりの項目を設け、男女共同参画の取り組みを掲載するとともに、県以外の関係団体等の取り組みにつきましても、男女共同参画に関連する団体の取り組みなどを含めて掲載することを検討しておりまして、今後、有識者の意見もいただきながら内容を取りまとめてまいります。
   〔環境生活部長大友宏司君登壇〕
〇環境生活部長(大友宏司君) LGBTについてでありますが、個人の尊厳や基本的人権を守るという観点から、LGBTへの理解を深め、誰もが生きやすい社会となることが重要であり、県では、平成28年度に岩手県男女共同参画センターにLGBTに関する相談窓口を設置したところです。
 ことし4月から相談日を週1日から2日に拡充しており、9月末現在で、昨年度の同時期の1.6倍に当たる142件の相談が寄せられております。また、学校や企業などの依頼に応じて開催しているLGBTの出前講座については、今年度17回の実施を予定しており、9月末現在で既に昨年度1年間の実績を超える330人の方が受講しております。
 昨年度作成した啓発用パネルについては、市町村で行う男女共同参画月間の行事や秋祭りなどのイベントで活用されているところです。
 なお、啓発用リーフレットについては、一般県民向けと中高生や保護者向けのものを、専門家や支援団体の意見をいただきながらそれぞれ作成中であり、学校や関係機関などに配布する予定としております。
 男女平等や多様な性について理解し、尊重する社会となるよう、引き続きLGBTに対する県民の理解を深め、偏見をなくすための普及啓発などの取り組みを推進してまいります。
   〔教育長佐藤博君登壇〕
〇教育長(佐藤博君) まず、岩手県教職員働き方改革プランの目標達成についてでありますが、学校における働き方改革を進める上では、教員一人一人の勤務時間をしっかりと把握することが重要であり、県教育委員会では、市町村教育委員会が、その所管する小中学校の教職員の勤務時間をタイムカードや出退勤管理システムにより客観的に把握するよう、通知や会議の場において説明を行うなど働きかけを行っているところです。
 プランの取り組みについて、項目に沿って申し上げますと、チームとしての学校の推進としては、スクールサポートスタッフ等の外部人材の配置促進、教職員業務改善としては、教員等のワーキンググループによる業務のスクラップ・アンド・ビルドの検討、部活動の適正な運営としては、部活動指導員の配置や部活動の在り方に関する方針の策定、勤務時間の適正管理としては、盆、年末年始における学校閉庁日の設定、労働安全衛生体制の確立としては、小中学校への労働安全衛生管理研修会の開催、そして、心とからだの健康対策としては、メンタルヘルス相談窓口の設置など、さまざまな取り組みを推進してきたところです。
 今後も、プランの取り組みを着実に推進するとともに、ワーキンググループの提案に基づく働き方改革事例集の作成、講演会の開催やリーフレットの配布による保護者への理解醸成の推進など、取り組みを拡充し、確かな成果が得られるよう、学校における働き方改革のさらなる推進を図ってまいります。
 次に、岩手県小・中学校学習定着度状況調査についてでありますが、この調査は、本県の児童生徒の学習上の課題を踏まえて、身につけるべき学力を具体的な問題の形として示した調査であり、学習上のつまずきや教員の学習指導上の課題等を明らかにしながら、それを生かした授業改善を推進していくことで、学習状況の改善や学習意欲の向上を含む確かな学力の定着を目指していくものでございます。
 一方で、岩手県教職員働き方改革プランにおいては、各種調査について、民間試験との連携や調査の実施方法の改善等、調査を活用した授業改善に注力できるような運用の改善を図っていくこととしており、県教育委員会としては、現在、他県の状況に関する情報収集や研修会等の機会を通じた調査の分析、活用に関する意見交換などを行っているところです。
 学力調査については、現在、国や県の調査のほか、各市町村で独自に実施している調査の実態もあることから、市町村教育委員会等と県学調の意義や課題認識について共有を図りつつ、意見交換なども行いながら、引き続き、全体的な調査のあり方について慎重に検討を進めてまいります。
 次に、子どもの権利が尊重され、子どもの能力が最大限発揮できる岩手についてでありますが、本県では、いわて県民計画(2019〜2028)及び岩手県教育振興計画において、自他の生命を大切にし、他者の人権を尊重することを掲げ、自分の大切さとともに他者の大切さを認めることができる心の育成に取り組むこととしており、これは、子どもの権利条約の趣旨も踏まえた取り組みであると認識しております。
 具体的には、各学校において、いじめ、暴力、虐待等の課題を踏まえ、人権が尊重される学校、学級づくりに資する子供たちの実践的態度と行動力を育成するため、道徳教育の充実やいじめ防止対策の推進等に取り組んでいるところです。
 今後におきましても、関係部局や市町村教育委員会など子育てに関するさまざまな組織と連携しながら、子供たちの主体性を重視し、一人一人が活躍する場を設定するなど、子供たちが自己肯定感を高め、みずからの資質、能力を余すところなく伸ばしていくことのできる教育の充実に取り組んでまいります。
 次に、大学入学者選抜における英語民間検定試験についてでありますが、グローバル化が急速に進展する中、英語によるコミュニケーション能力の向上を図るため、来年度から、大学入学者選抜において、聞く、話す、読む、書くの4技能を評価する英語民間検定試験が活用されるものと承知しております。この英語民間検定試験の導入については、試験会場などについて未定の部分も多く、生徒、保護者及び各学校の不安感が大きいことから、県教育委員会としては、検定試験の負担軽減などの配慮について、経済状況や居住地による受験機会の格差が生じることがないよう、国に対して財政支援や実施体制について要望を行うとともに、検定試験の実施団体に対しても適切な実施を要請してきたところです。本年9月には、大学入試センター担当者を招聘し、県内の高等学校に対して英語民間検定試験に関する説明会を開催するなど適切な情報提供を行ったほか、検定試験の実施団体との協議も重ねているところです。
 今後も、国、各大学及び検定試験の実施団体の動向を注視しながら、正確な情報を生徒、保護者及び各学校に提供し、不安感の払拭につながるように努め、あわせて、4技能における各学校の到達目標を定めたCAN−DOリストを活用するなどにより、英語力の向上に努めながら、本県の高校生が希望する進路を着実に実現できるように取り組んでまいります。
 次に、小学校、中学校、高校における人権教育の推進についてでありますが、学校教育においては、児童生徒一人一人が人権の意義やその重要性についての正しい知識を十分に身につけるとともに、性的マイノリティーとされる児童生徒に対する偏見や差別等をなくしていくための教育活動の充実が必要と認識しております。
 県教育委員会では、教職員が性的マイノリティー等への理解を深め、児童生徒に対しよりきめ細かく対応することを目指し、小、中、高等学校の保健担当教員を対象とした研修会を平成27年度から毎年実施してきております。
 また、これまでも各教科等において児童生徒の自主性の尊重や体験的な活動を取り入れるなどの指導方法の工夫を行うとともに、県内の中学校を研究指定校として性的マイノリティーを含めた人権教育の研究を推進しており、その成果を本年2月に人権教育啓発リーフレットにまとめ、県全体に普及啓発を図っています。
 今後におきましても、教職員等の一層の理解促進や人権が尊重される環境づくり等を通じ、児童生徒一人一人の人権意識や人権感覚の醸成に努め、心の教育の充実を図ってまいります。
   〔人事委員会委員長熊谷隆司君登壇〕 
〇人事委員会委員長(熊谷隆司君) 教職員の勤務負担軽減や健康の確保についてでありますが、教職員の長時間勤務の解消が喫緊の課題となっている中、本県では、岩手県教職員働き方改革プランを初めとする業務改善等の取り組みが進められているものと認識しております。
 学校における働き方改革は、小中学校も含めた学校現場全体で進めていく必要があることから、県教育委員会においては、市町村教育委員会などとも一層の連携を図っていくことが重要と考えており、昨年及び本年の人事委員会報告及び勧告において、その旨、言及したところでございます。
 また、人事委員会では県教育委員会から時間外勤務の状況などを聞き取っておりますが、月の時間外勤務が80時間以上の教員の割合が増加したことについては、タイムカードの導入によって、客観的で正確な勤務時間把握が進んだことなども要因であると捉えております。
 今後、県教育委員会においては、同プランに基づく業務改善等の取り組みを着実に進め、教職員の勤務負担を軽減し、健康の確保を図っていくことが重要であると考えております。
 人事委員会においては、労働基準監督機関として、教職員の時間外勤務の時間数が特に多い県立学校に職員が赴き、長時間勤務の状況や要因、解消に向けた取り組み等について実態を確認し、指導、助言に努めているところでありますが、今後も実態確認などを実施し、必要な指導、助言を行ってまいります。
〇26番(小西和子君) 御答弁ありがとうございました。
 それでは、再質問させていただきます。
 まず、教育長にお伺いしたいと思います。
 岩手県教職員働き方改革プランの目標達成についてのところでございますけれども、現在の学校現場の大変苛酷な労働環境ということは教育長もおわかりのことと思っております。採用試験の倍率が3倍を切るというのは危険水域であると言われておりますけれども、昨年の小学校の教員採用試験の倍率は2.7倍でありました。もう危険水域を超えております。今年度もさらに低いだろうということを担当のほうから答弁でいただいております。
 一昨年、3人の初任者が余りの過重労働に倒れてしまい、病休をとりました。中には、学校で倒れて救急車で運ばれた初任者もおります。その中で、3人の初任者のうち2人は復帰できたのですが、1人は体調が戻らず、夢と希望にあふれて教職員になったにもかかわらず、やめてしまいました。このような状況から、岩手大学教育学部の教授の皆さんからは、現場の過重労働を改善しなければどんどん教員を志す学生が減ってくるから、何とか早く改善してくれというふうに言われております。
 教育実習をしますと、そこでもう教員は無理だと諦める学生が多数おります。それだけ苛酷な状況であります。ですから、何か業務を減らすか人をふやすかしなければならないのですけれども、県教育委員会のほうに、来年から小学校の学習指導要領が変わって、さらに業務過重になる、どういうふうな対策をとるのですかと聞いたところ、何も考えていなかった、そういうことがあります。このままでは、岩手県の学校教育、学校現場は持続不可能になります。このことについて教育長はどのようにお考えか、まず伺います。
 それから、学調―小・中学校学習定着度状況調査についてでございますけれども、OECDの調査によりますと、日本の小中学校の教職員の労働時間は群を抜いて多いわけです。その中でも、教育委員会への報告書づくりといった事務作業がOECD平均の約2倍、部活動は約4倍になっております。そして最も驚くことは、肝心の授業時間や授業準備の時間、子供と向き合う時間は平均よりも週2時間18分も少ないということが報告されております。ですから、OECDの教育局長は、事務的な負担を減らす努力をするべきだと述べております。したがって、文部科学省のほうでも一元化をするべきだと言っておりますので、市町村で行っているCRTやNRTという学力調査は小学校で33市町村、中学校で28市町村行っておりますので、子供たちの学習のつまずきを把握し、授業改善に生かす準備はできております。これだけで十分であろうと考えます。
 斉藤信議員から紹介されましたけれども、事前練習を行った学校は、小学校で昨年は85%ありました。その前の年は77%ですから、ふえています。中学校は36%、一昨年は25%と、どんどん拍車がかけられている状態でありますし、ガイドライン、ガイドラインとおっしゃいますけれども、ガイドラインで周知されているというのは本当に少ないです。全ての教職員に説明をしたというのは小学校で19%、中学校で15%の状況です。このような状況では、何のための学調かということになります。過去問を来る日も来る日もやります。子供たちはもう疲れ切ってしまいます。楽しみがなくなりますので、不登校になる子供も出てまいりました。
 このことをどのように考えているのか。このような結果から、即刻やめるべきではないかと考えますので、そのこともお願いします。
 それから、先ほどの質問の中で、岩手の子供の権利を尊重して、それから能力を精いっぱい発揮できるような、そんな岩手にするためにという話をしましたところ、それは絶対必要であるという御答弁でありました。それは他部局とも連携をしてやるべきだと考えます。特に、子供の貧困等は教育委員会だけではできませんし、ほかの幾つもの他部局と連携してやるべきだと考えております。
 まず、その3点についてお伺いいたします。
 それから、保健福祉部長にお伺いいたしますけれども、子どもの貧困の実態調査で大変驚いたのは、ガスとか水道等をとめられたことがあると答えている家庭がこんなにもあるのだということです。そういうことに鑑みますと、そのような生活環境が今度は子供のやる気をなくして、自己肯定感を低下させてしまうと私は考えております。子供の能力を十分に発揮させるためには、何としてでも子供の自己肯定感を上げていかなければならないと考えておりますけれども、やる気がない状態をどのような対策を講じて解決していこうと思っているのかというあたりをお聞きしたいと思います。
〇教育長(佐藤博君) 3点、御質問をいただきました。
 まず1点目でございますが、働き方改革にかかわる取り組みのことでございますが、まず、プランの目標がなかなか達成できない要因をいろいろと分析しております。今年度、教職員に対しましてアンケート調査をしたところでございますが、時間外勤務の要因としては、部活動あるいは校内会議、それから行政関係団体事務等を挙げる教職員が多くありました。これまで学校や教員が担ってきた業務について、今後、保護者あるいは地域等との適切な役割分担を進めていく必要もあると捉えておりますし、一部、スクールサポートスタッフの配置や部活動指導員など、いろいろとそういった手だても講じてきているところでございます。
 それからもう一点でございますが、新学習指導要領の施行に伴いまして、アクティブラーニングやカリキュラムマネジメント等の新しい指導方法に対応した指導計画の策定、それから教材研究に教員がいろいろと苦心している状況も見られます。こういったところを、業務の改善あるいは合理化ということにも取り組まなければなりませんが、やはり定数改善計画を策定していろいろと対応していただくよう国にも要望しているところでございますので、これは引き続き要望をしてまいりたいと考えております。
 それから、2点目の県学習定着度状況調査と市町村の調査、いろいろと調査しているわけでございますが、各市町村におきましては、国や県の調査も踏まえまして、管内の学校における学力向上のために、民間の試験―NRTとかCRTといった調査を実施しているところと認識しております。
 県が実施している調査につきましては、県全体の児童生徒の学習上の課題や、授業改善や学習意欲の向上を推進するための観点から実施しているところではございますが、今後、市町村教育委員会等と意見交換を行いながら、全体的な調査のあり方について引き続き慎重に検討を進めていくこととしております。
 それから3点目、他部局との連携についてでございますが、まず、県教育委員会では、学校教育指導指針に子どもの権利条約の理解と尊重を含めた人権教育の推進を位置づけております。人権が尊重される学校、学級づくりに資する子供たちの実践的な態度と行動力の育成に取り組んでいるところです。また、いわての子どもを健やかに育む条例に基づく行動計画であるいわて子どもプランのほうにも、生きる力を育む学校教育の推進など、教育委員会が取り組むべき施策を盛り込んでいるところです。
 今後も、保健福祉部等と連携をしまして、子供の権利を守り、向上させるための施策に取り組んでまいります。
〇保健福祉部長(野原勝君) 議員からは、子どもの生活実態調査について、特に子供の自己肯定感という部分について御質問をいただきました。
 さきに御報告させていただきました子どもの生活実態調査の中間報告につきましては、主に、世帯の類型、母子家庭であるとか父子家庭であるとか、また、所得の多寡、この二つの視点で着目して分析させていただきました。
 この子供の自己肯定感に関する項目については、単に世帯の収入によらず、ほかの要因もさまざま関係しているのではないかということに関して、現在検討しております岩手県子ども・子育て会議子どもの貧困対策推進計画部会の委員の中では意見が出されているところでございます。
 したがいまして、今後、最終報告の取りまとめに向けて今、検討しておりますけれども、子供の自己肯定感につきましては、そのほかの要素、食事の状況であるとかさまざま結果をとっておりますので、そういった部分について少し横断的に分析いたしまして、最終報告に向けて議論をしていただきまして、来年度以降、子供の自己肯定感向上に向けてどのような取り組みができるのかといった観点についても検討してまいりたいと考えております。
〇26番(小西和子君) 岩手県教職員働き方改革プランにつきましては、本当に本気になって進めていかなければ教職を志す学生がどんどん減っていってしまう。これがすごく大きな課題だと考えておりますので、しっかりと取り組みをお願いいたします。
 今、保健福祉部長から、自己肯定感につきましては、収入の多寡もあるけれどもそうではない要素もあるのではないか、今後、分析をしていきたいというようなお話がありました。
 私が教員をしていたとき、お母さん1人で男の子2人を育てている家庭がございまして、学級集金等もその日その日に持ってこられなくて、その子供がうつむきながら私のところに来るのですね。何を言いたいかわかるので、いいから、都合のいいときでいいからと言ってちょうだいというふうに言っていました。やっぱりその子は、ほかの子と比べてどこか一歩引いている感じでした。やる気のなさといいましょうか、どうせ頑張ったってという姿が学年を重ねるに従って見えてきます、貧困家庭の子供たちは。そして、それが学習にも影響してくることになってきます。すばらしい能力を持っているのに、もう最初から諦めてしまうといったことです。
 自己肯定感を上げるためには、さまざまな子供たちと触れ合うこと、参加権とか意見表明権といった子どもの権利条約のそういった権利が保障されていかなければならないと考えます。
 いわての子どもを健やかに育む条例ができたときのいきさつについては御存じない方もいらっしゃると思うのですが、私の質疑に対して、知事は、国連子どもの権利条約に基づいたものをつくりますという答弁をしてくださいました。ですけれども、でき上がったものは、残念ながら国連子どもの権利条約に基づいているとはカウントされておりません。一覧がインターネットで調べるとあるのですけれども、残念ながら、遠野市のわらすっこ条例と奥州市の子どもの権利に関する条例は記載されておりますが、岩手県のは載っていなかったのですね。近いところでいいますと、秋田県、それから北海道では大分前に制定しております。
 そこで、それこそ岩手の子供たちの幸福の実現のために、私は、約束していただいた国連子どもの権利条約に基づいた条例を整備していただきたいと考えます。先ほど教育長がお話ししたようなそんな思いもありますので、他部局と連携をして、国連子どもの権利条約に基づいたものと認定されるような条例にアップグレードしていただきたいと考えますけれども、このことについて検討していただけないかどうか御答弁をお願いいたします。
〇保健福祉部長(野原勝君) 議員から御紹介いただきました本県のいわての子どもを健やかに育む条例では、子どもの権利条約が定めている個々の子供の権利については個別に規定はしていないものの、この条例の基本理念の第3条におきまして、条約で求めている、子どもの権利を尊重し、その最善の利益を考慮することを掲げております。
 子どもの権利の尊重や権利擁護については、その重要性を十分に認識しつつ、県の最上位の法規である条例に定めるということに鑑み、子供の権利のみならず、子供をめぐるあらゆる課題についての県の基本的な考え方を示すため、現在の条例を策定したところでございます。
 条例におきましては、子ども・子育て支援に関する基本的施策の内容や、市町村との連携等の具体的な施策、方策を主に定めているものでありまして、議員御提案の子どもの権利条約が定める子供の権利について、条例に個別に規定することにつきましては、条例制定の趣旨や法制上の整理などの観点から、法務担当部局からの助言もいただきながら研究していく必要があると考えております。
〇議長(関根敏伸君) 以上をもって一般質問を終結いたします。
   
   日程第2 認定第1号平成30年度岩手県一般会計歳入歳出決算から日程第56 議案第42号令和元年度岩手県一般会計補正予算(第2号)まで
〇議長(関根敏伸君) この際、日程第2、認定第1号から日程第56、議案第42号までを一括議題といたします。
 これより質疑に入ります。
 質疑の通告がありますので、発言を許します。高田一郎君。

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