令和元年9月定例会 第2回岩手県議会定例会会議録

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〇40番(工藤大輔君) いわて新政会の工藤大輔でございます。
 多くの人命が失われた東日本大震災津波の発生から8年半が経過いたしました。自然災害の猛威は、平成28年の台風第10号災害に続き、先般の台風第19号災害をもたらしました。ここに改めて、犠牲になられた方々の御冥福をお祈りし、被害を受けられた皆様にお見舞いを申し上げます。
 質問に入るに先立ち、いわて新政会は、さきの県議会議員選挙を経て、無所属で当選した8人のメンバーで会派を結成しました。
 私たちの暮らす岩手県は、東日本大震災津波からの復興途上にあり、復興後の三陸の創造、暮らしやものづくりの現場において、人口減少に起因する喫緊の課題でありながらも、中長期的に取り組まなければならない多くの課題に直面しています。その一つ一つに県民目線、女性目線、子供目線、未来目線で課題を捉え、責任ある決断をし、多様性があり持続可能な岩手を次世代に引き継ぐことを目標に掲げ、物を開き務めをなすという開物成務の精神で活動してまいります。達増知事を初めとする県当局の皆様、議員各位並びに県民の皆様に、よろしくお願いを申し上げます。
 それでは、会派を代表し質問をいたします。初めに、台風第19号災害についてお伺いします。
 大型で非常に強い台風第19号の接近に伴い、10月13日に本県で初めて、命を守るための最大限の警戒が必要な大雨特別警報が発令され、同日の明け方に県内に最接近しました。県は対策として、風水害対策支援チームの検討を踏まえた助言を市町村へ行ったほか、災害対策本部を設置し、被害軽減に向け、不眠不休で対応に当たられたと伺っており、感謝いたします。
 被害の全容はこれから明らかになりますが、既に甚大な被害が確認されており、被災者支援と被災箇所の早期復旧、一部運休が続いているJR八戸線、三陸鉄道の再開に向け、全庁を挙げて取り組まれますようお願いいたします。
 知事は被災地をいち早く視察してきたようでありますが、大規模自然災害が毎年のように起こる現状を踏まえ、どのような防災、減災対策を講じるべきと感じたのかお伺いします。
 次に、希望マニフェスト2019―2023についてお伺いします。
 知事は、希望マニフェスト2019―2023を掲げ、8年ぶりとなる知事選挙を戦い、4回目の当選を果たされました。多くの県民から多様な評価を得ての結果と受けとめており、お祝いを申し上げます。
 知事が掲げた希望マニフェスト2019―2023は、この3月に議会から承認されたいわて県民計画(2019〜2028)をベースにしており、計画の着実な推進とマニフェストにプラスして盛り込んだ13の個別施策から成っております。
 さきの知事演述において、新たにプラスされた個別施策についても述べられており、これらについて知事の考えをお伺いします。
 子供の医療費の窓口無料化、いわゆる現物給付の、中学校卒業時までの拡大についてお伺いします。
 県は、平成28年に乳幼児と妊産婦に医療費の窓口無料化、いわゆる現物給付を実施し、ことしの8月から、小学校卒業まで現物給付を拡大しました。これにより、医療費を一旦支払った後に市町村から還付されることなく医療を受けられることとなり、子育て世代にとって利便性が向上しました。既に中学校までの医療費助成を実施している自治体からは、中学校までの現物給付となるよう対象の引き上げを望む声があったところ、ことし8月から、全市町村において中学校までの医療費助成が実現し、対象を引き上げるベースが整いました。
 今後、市町村との協議を進めるとのことですが、小学校卒業までの現物給付事業もトラブルなく順調に進んでいると聞いております。早期の事業化を進め子育て世帯のフォローアップにつなげるべきと考えますが、知事は、この事業をいつから開始するよう準備を進める考えでしょうか。事業効果とあわせてお伺いします。
 次に、子供の貧困調査に基づき対策を講じることについてお伺いします。
 昨年実施した岩手県子どもの生活実態調査結果を見ると、就学援助世帯の6割が母子世帯であること、母子世帯の年収が100万円から250万円の世帯が多数を占め、正規の職につくことが困難な状況が続いています。ニーズが高い生活向上のための保護者の資格取得や学習の機会の提供、居場所づくりの充実に一層の取り組みが必要と考えます。
 さらに、公的支援制度について知らないとの回答が多いことは、必要としている人に情報が届いていないことにつながります。県が運営するひとり親家庭等就業・自立センターでは、非常勤職員の2名体制で平日のみの相談受け付けとなっており、土日には対応がなされていないことも課題であります。センター機能を強化し、個々に応じた支援プランの作成や各種事業を効果的に利用できるよう、相談窓口機能の強化が必要ではないかと考えます。
 今回行った調査結果をもとに、次期いわての子どもの貧困対策推進計画の策定を進めることになりますが、個人の努力では解決しがたい社会的な問題である貧困対策に、どのようなポイントを重視して取り組む考えかお伺いします。
 次に、第5世代移動通信システム―5Gについてお伺いします。
 知事は演述において、ソサエティー5.0の技術について、時間や地域の制約を超え、地方の可能性を広げるものであり、広大な県土を有する岩手でこそ、産業や暮らしの現場において活用されることの意義に触れられておりました。私も同様に思っており、県北・沿岸地域や中山間地域において、課題解決を探る有効な手段の一つと考えております。
 国では、自治体や事業者などに向け、ローカル5Gの導入を進めようとしており、活用策として、遠距離医療や農林水産業など多岐にわたる可能性を示しており、高度な技術革新により生活の質を守り向上させることに期待が寄せられております。総務省では約70億円の概算要求をしており、実証に向けたモデル事業が始まろうとしております。
 知事の希望マニフェスト2019―2023には、5Gによる地域課題解決を進めるとの記述がありますが、これから始まる新たな取り組みにおいて、本県ではどのように進める考えかお伺いします。
 項目の最後に、市町村との連携、協力についてお伺いします。
 県では、知事と市町村長との定期的な意見交換の開催を初め、市町村の行財政基盤の強化を目的としたコンサルティング事業、人事交流、被災市町村への職員派遣などを行ってきました。
 これまでの行財政改革により県や市町村の職員数が総じて減少しており、多様化する県民ニーズに応えていくには、県、市町村の垣根を越えた行政運営が一層求められる時代に入りました。特に小規模自治体においては、県、市町村の二層制を超えた行政基盤の構築が求められており、連携、協働の取り組みを加速させる必要があります。
 知事は、市町村行政と連携、協力する県の部局の強化や市町村の水道事業の広域化推進などの支援と、消防団の強化や消防団員の確保のための補助制度の創設に向け取り組む方針を示しましたが、こうした取り組みも含め、市町村との連携、協力をどのように進める考えかお伺いします。
 次に、県政の最重要課題である東日本大震災津波からの復興についてお伺いします。
 ハード面での事業の進捗が進み、暮らしや産業の基盤が整ってきたものの、水産物の水揚げの回復状況などを見ても、被災地では厳しい経済状況が続いています。今後は、県が策定した復興推進プランの実効性を高め、三陸のよりよい復興の実現に向け、地域の活力の底上げが図られるよう、着実な事業の進捗を要望いたします。
 ことし3月に、復興・創生期間における東日本大震災からの復興の基本方針の見直しについて、閣議決定されました。復興の総仕上げに向けて、被災地の自立につながり地方創生モデルとなる復興の実現を目指し、取り組みを進めることや、心の復興など生活再建のステージに応じた切れ目のない支援の継続、拡充などの方針が示されております。
 この見直しを受け、どのような取り組みを強化する考えかお伺いします。
 ことし9月末現在、応急仮設住宅等での生活者は583戸、1、297人となっております。国は、復興・創生期間中の仮設住宅生活の解消を目指すこととしておりますが、転居後の家賃を初めとした生活への不安等から、持ち家や公営住宅への転居に二の足を踏むケースがあります。
 新たな生活の拠点へ移行できるよう、生活再建に向け、ライフサイクルに合わせた支援が行き届くことにより不安の解消を進めなければなりませんが、どのように進めていくのか、仮設生活の解消の見通しとあわせてお示し願います。
 震災遺児、孤児の現状についてお伺いします。
 東日本大震災津波から8年半が経過し、発災時に小学6年生であった児童は、この夏に成人を迎えました。幼少期や思春期に家族を失い、失意の底から人生を歩み、成長してきた若者が、希望を持って人生を送れているのか、深く考えるときがあります。
 いわての学び希望基金の創設を初め、官民を挙げた支援の輪の広がりにより、生活や学ぶ機会の保障は受けられてきましたが、震災遺児、孤児の現状をどのように把握されているのでしょうか。
 特に、県外への進学、就職者については、必要な情報や支援が行き届いているのかや、里親との世代間ギャップなども課題となっていると聞きます。震災遺児、孤児の方々に寄り添えているのか、個人の尊厳を基本価値とし、誰ひとり取り残さないという理念に立ち、改めて現状把握に努め、とるべき対策を講じるべきと考えますが、対応をお伺いします。
 次に、三陸防災復興プロジェクト2019についてお伺いします。
 6月1日から68日間にわたって沿岸13市町村で開催されたビッグイベントは、8月7日に、坂本龍一さん、村上弘明さんが参加してのクロージングセレモニーをもって幕を閉じました。
 新しい三陸の創造を目指す姿に掲げ、東日本大震災津波の教訓を国内外に伝えるとともに、復興に力強く取り組む被災地の姿を発信し、これまでの支援に感謝の思いを伝えること、三陸の魅力を伝えること等を目的とした取り組みが進められてきましたが、事業の成果をどのように評価しているのでしょうか。試算された経済効果とあわせてお示し願います。
 今後は、三陸防災復興プロジェクト2019で取り組んだ事業の理念をどのように引き継いでいくかが重要なポイントであると思います。今後の方針をお示し願います。
 また、2021年3月11日には、東日本大震災津波の発災から10年が経過することになります。国内外が注目するその日、その年を迎えるに当たり、来年度も10年の節目の年に合わせた取り組みが必要と考えますが、どのように準備するお考えかお伺いします。
 次に、ILC計画についてお伺いします。
 政府はことし3月7日に、世界の研究者から求められていたエクスプレッション・オブ・インタレスト、ILC計画に関心があるとの意思表明を東京都で開催されたILC国際研究者組織の会議において行いました。その中で、文部科学省は国際的な意見交換の継続方針を示し、アメリカとのディスカッショングループでの協議に続き、新たにフランス、ドイツとの設置に関する議論を開始するディスカッショングループが立ち上がり、協議が進められていると認識しております。
 今後の誘致に向けたプロセスは、来年5月に策定される欧州素粒子物理学5カ年戦略にILC計画が優先計画として位置づけられるためにも、来年2月に策定される日本学術会議のマスタープランにILC計画が明記されることが重要であり、政府のさらなる明確な意思表示が待たれます。
 日本、欧州の二つの計画にILCを盛り込み、政府間の正式な国際分担案の協議に進展させるためにも、この重要な時期に、県としてどのような行動をとっていくのかお伺いします。
 県では先般、ILCによる地域振興ビジョンを策定し、受け入れ環境の整備への取り組みを体系的に進めようとしております。その中で、地域循環型エネルギー体制の構築や県内森林資源の活用など、使用する電力エネルギーを再生可能エネルギーからも賄おうとするグリーンILCに向けた共同研究を行っております。
 ILC効果を全県に波及させるためにも、どのような共同研究を実施し効果を見出そうとしているのかお伺いします。
 次に、岩手県ふるさと振興総合戦略についてお伺いします。
 岩手で働く、岩手で育てる、岩手で暮らすの三つの施策推進目標を掲げ、重要業績評価指標―KPIを用いて取り組みを進めたこの戦略は、計画最終年となりました。10のプロジェクトごとに取り組まれた181の事業の状況は、おおむね達成以上の割合が80%となっており、事業ベースで見ると一定程度着実に進められたと言えます。
 しかし、施策推進目標に対しての達成状況は、人口の社会増減、合計特殊出生率、国民所得に対する県民所得の乖離縮小のいずれにおいても、実績値が目標を下回ってしまいました。この結果をどのように捉えているのでしょうか。
 人口減少対策を最大の目標とするこの計画は、地方創生という切り口から減少率を緩やかにしようとしているため、人口減と関係の薄い事業であってもKPIに盛り込まれています。複合的に施策を組み合わせることによって成果を引き出そうとする現計画において、各事業の構成や目標値が適切であったのか、人口減少対策に結びついていたのか、十分な検証が必要となります。
 第2期となる次期総合戦略策定においては、国から関係人口の創出、拡大などの新たな視点が盛り込まれ、より一層地域振興の色合いが濃くなる戦略になると推察されますが、理想とする子供の数を産むことができない環境にあることの原点に立ち返って、阻害要因となる課題の解消に向けた事業の拡充なしに、県が目標とする2040年に人口100万人の維持は難しいものと考えます。
 今年度策定する次期戦略では、どのような方針のもと事業の策定に取り組むお考えか、重点的に取り組む事項とあわせてお伺いします。
 次に、医療政策についてお伺いします。
 厚生労働省は、2017年の実績をもとに、急性期の診療実績が特に少なく、似たような機能が近くにある病院について、再編や統合などの議論が必要と判断し、全国424の公立、公的病院名を公表しました。本県では、洋野町国民健康保険種市病院、岩手県立軽米病院などの10病院が該当しています。
 久慈地域では、基幹病院である岩手県立久慈病院が高度急性期と急性期の役割を担っており、洋野町国民健康保険種市病院は、1病棟の中で急性期から回復期、慢性期を担い、地域ニーズに即した病院機能を果たしています。
 今回の公表は、機械的なデータ分析と実績だけで判断したことに課題があり、そもそも人口や医師が少ない県で実績が少なくなるのは、ある意味、当然の結果であります。
 また、急性期の診療機能がある病院だけが公表の対象となっており、回復期や慢性期といった必要な機能を担っているという現状を理解した上での公表になっていない点を、問題点の一つとして強く指摘します。
 今回の公表を受け、どのような認識のもと岩手の医療の現状を訴えていくのかお伺いします。また、来年9月までに対応策を厚生労働省に返答するよう求められておりますが、地域医療構想調整会議の場で、どのような議論を期待しているのかお伺いします。
 全国的な医師の不足と偏在を解消するために、県では、奨学金による医師養成事業を初め、中高生や奨学生向けのセミナーの開催、指導医の資質向上など、今年度も23事業、10億4、250万円の予算を投じて医師確保及び医師支援策を講じています。
 その成果として、奨学生が平成20年度以降で537人、医師招聘数が平成18年度以降で156人、復職した女性医師数も平成27年度以降で13人となり、岩手県独自の中核病院での高度医療と地域病院での地域医療の両方を学ぶ、たすきがけの研修システムの開始など、医師養成は順調に進み始めたところでありました。しかし、ことし2月に厚生労働省から医師偏在指標が示され、岩手県は169.3と医師が少ない順で全国最下位という結果でありました。
 県では、今定例会に補正予算として地域医療情報発信事業、予算額1、254万円余を提案しております。この事業は、医師少数県でネットワークを構築し、実効性のある施策に国を挙げて取り組むよう働きかけを行おうとするものであります。どの程度の県から理解を得られているのか、また、国に対しどのような提言を行っていこうと考えているのか伺います。また、今後、この連携体制を生かし、どのような活動を展開していくのか、あわせてお伺いします。
 一県一医大構想により、全ての都道府県に医師養成機関が設置されております。しかし、医学部の定員については、診療科の偏在の状況、人口当たりの医師数などが考慮されないまま決められてきたこと、また、設置してある大学が国公立大学か私立大学かによっても、医療の道を選択するかどうかにおいて医師不足や偏在の要因の一つになっていると考えられ、平準化を図るよう国の改善が求められます。
 また、県内学生の医科大学や医学部入学者数は、全国と比較して少ない傾向にあるのではないでしょうか。要因を分析し、本県出身の学生をふやす取り組みを一層加速させるとともに、東北地方の国立大学の医学部においての東北枠の設置の実現など、新たな取り組みを行うべきと考えますが、県内学生の医学部進学増に向けた取り組みについてお伺いします。
 以上で質問といたしますが、現在、ラグビーワールドカップ2019が開催されており、日本代表の活躍は、国民に大きな感動を与えています。ラグビーの持つワン・フォー・オール、オール・フォー・ワンの精神は、県政推進に通じるものがあります。県民との協働により県政が大きく前進することを念願し、質問といたします。
 御清聴ありがとうございました。(拍手)
   〔知事達増拓也君登壇〕
〇知事(達増拓也君) 工藤大輔議員の御質問にお答え申し上げます。
 まず、防災、減災対策についてでありますが、今回の台風第19号による災害を受け、私自身、10月13日に釜石市から宮古市までの沿岸地域の被災状況を上空から確認しましたほか、翌14日には、普代村に赴き、中心地における土砂の流入状況などを確認してまいりました。また、両副知事にもそれぞれ釜石市、山田町及び宮古市を訪問させ、被災状況を確認させたところであります。
 視察を踏まえて、今回被害を受けた地域の一日も早い復旧に向けて取り組んでいくことに加えまして、地域における防災、減災体制の整備に向けた取り組みを推進する必要があると改めて認識したところであります。
 県といたしましては、平成28年台風第10号災害後、大規模な自然災害の発生に備えて、国、県、市町村等で構成する大規模氾濫減災協議会による総合的な防災対策の推進、市町村における風水害対策を支援する岩手県風水害対策支援チームの設置、要配慮者利用施設における避難確保計画策定の支援などに取り組んできたところであり、今回の台風第19号災害においては、岩手県風水害対策支援チームによる助言などにより、多くの方の迅速な避難につながったところであります。
 引き続き、市町村等と連携しながら、台風や局地的大雨による災害の安全対策を進めてまいります。
 次に、子供の医療費助成の現物給付についてでありますが、県では、人口減少対策としての総合的な子育て支援施策の一環として、市町村等と協議の上、本年8月から、現物給付の対象をこれまでの未就学児から小学生まで拡大したところであります。
 現物給付の対象拡大により、子育て家庭の経済的な負担が軽減され、その置かれた環境に左右されることなく、子供の適正な医療の確保が図られるという効果が期待できますことから、県内全市町村で中学生への医療費助成を開始したことを機に、さらに中学生までの拡大に向け、市町村との協議を進めることとしたところであります。
 拡大時期につきましては、小学生までの拡大の経緯を踏まえれば、最短で、来年度の受給者証の更新時期であります令和2年8月と想定されますことから、当面、これを念頭に市町村等と具体的な協議を進めていきたいと考えております。
 次に、子供の貧困対策についてでありますが、今回公表した岩手県子どもの生活実態調査結果では、議員御指摘のとおり、特に母子世帯において、就労状況が不安定であるため、収入の低い世帯が多く、子供の将来の進路にも影響を与えるなど、厳しい生活実態が浮き彫りとなったところであります。
 また、生活向上のための資格取得や教育の機会の充実に対するニーズが高いことや公的支援施策の周知が行き届いていないこと、公的相談窓口が十分に活用されていないことなど、母子世帯が抱えるさまざまな課題も明らかとなったところであります。加えて、収入にかかわらず、子供の居場所に対するニーズが高いことも改めて認識したところであります。
 これらの実態を踏まえて、県としては、保護者に対する職業生活の安定と向上に資するための就労の支援の充実、教育の支援の確実な実施、ひとり親世帯に対する相談支援の強化、子供の居場所づくりの推進などに重点を置いた対策を講じていく必要があると考えております。
 今後、さらに調査結果の分析、評価を進め、子供の現在及び将来がその生まれ育った環境に左右されることなく、子供たちが自分の将来に希望を持てる社会の実現を目指し、次期いわての子どもの貧困対策推進計画に必要な施策を盛り込んでいく考えであります。
 次に、第5世代移動通信システム―5Gについてでありますが、5Gは、ソサエティー5.0時代を支える技術であり、超高速、超低遅延、多数同時接続といった技術的な特徴を生かして、さまざまな産業への応用や地域の課題解決が期待されております。このような技術は、広大な県土を有し、幅広い産業を展開し、人々の暮らしや仕事の現場に広がりのある我が県においてこそ活用や実装の場があり、いわて県民計画(2019〜2028)の新しい時代を切り拓くプロジェクトの推進にも資するものと考えております。
 また、全国での早期展開を図る観点から、現在、ローカル5Gの制度化が行われており、今後、通信事業者以外のさまざまな主体が、地域ニーズや産業分野別のニーズに応じて、柔軟に5Gシステムを構築することが可能になるものと承知しております。
 このような新しい動向を踏まえ、県においては、今後、5Gは県民生活の向上を図るためのICT利活用の重要な基盤であるとの前提に立ち、通信事業者への基地局整備に係る働きかけを通じて、本県における5Gの整備を促進するとともに、地域特性を踏まえ、ローカル5G等を活用した地域課題解決の方策について積極的に検討してまいります。
 次に、県と市町村との連携、協力についてでありますが、人口減少や少子高齢化を初めとする市町村や県を取り巻く環境の変化を踏まえ、県民に必要なサービスが持続的に提供されるよう、単独の市町村では解決が困難な課題の対応や、それぞれの地域の特性を踏まえた取り組みなどを進める上で、市町村との連携、協力を深めることが重要と考えております。
 このような考えのもと、市町村行政と連携、協力する部局の強化や、現在、策定中の新いわて水道ビジョンを踏まえた水道事業の広域連携、消防団員確保に対する支援など、県民生活に身近な市町村の施策について、その方向性や課題を明らかにしながら検討や準備を進めているところであります。また、北いわて産業・社会革新ゾーンプロジェクト等のゾーンプロジェクトや、活力ある小集落実現プロジェクトなど11の新しい時代を切り拓くプロジェクトの推進に当たっては、関係市町村との連携、協力のもと、地域振興や産業振興などにつながる取り組みの具体化に向けた検討を進めています。
 今後、これらの取り組みを進める中で、県が担うべき役割を検証しながら、市町村との連携、協力を一層進めてまいります。
 次に、復興の基本方針見直しへの対応についてでありますが、国では、この基本方針の見直しの中で、復興・創生期間において被災者支援やなりわいの再生などに重点的に取り組むことに加え、これらの課題に復興・創生期間後も対応することの必要性も示しているところであります。また、6月21日に閣議決定された経済財政運営と改革の基本方針2019では、年内に復興・創生期間後の復興の基本方針を定めることに加え、復興をなし遂げるための復興庁の後継組織を引き続き置くこととされたところです。
 被災地においては、これまでの取り組みにより復興の歩みは着実に進んでいるところでありますが、整備が終わっていない社会資本などについては、早期に整備を完了する必要があります。
 一方で、被災者の心のケアやコミュニティーの形成支援、市町村が行うまちづくり後における住宅再建や事業者への支援などについては、復興・創生期間後も被災地の状況に応じ重点的に対応していく必要があると考えておりまして、必要な事業や制度の継続について、その財源の確保も含めて、国に対して要望や提言を行いながら、被災者一人一人の復興をなし遂げられるよう取り組んでまいります。
 次に、応急仮設住宅入居者の恒久的住宅への移行についてでありますが、持ち家再建の支援策として、国が実施する被災者生活再建支援制度のほかに本県独自の被災者住宅再建支援事業を実施しており、また、所得の少ない方の災害公営住宅への入居に対しては、国の減免制度を活用するほか、県独自の減免制度についても利用を促しているところであります。さらに、被災者一人一人が置かれている状況に応じて、被災ローン減免制度や災害援護資金貸付制度の活用に向けた資金面の相談に当たっているほか、健康面や経済面の不安に対応するため、医療費の窓口負担減免措置等の継続や、被災者生活設計アドバイザーによる相談対応を行っているところであります。
 令和2年度には県内の全ての災害公営住宅が完成予定であり、ほとんどの世帯が来年度までに恒久的な住宅への移行ができる予定でありますが、現在、再建の意向が未定などの方についても、市町村と連携をとりながら県の被災者相談支援センターが個別に相談、支援を行っており、一日も早い移行が図られるよう取り組んでいるところです。
 次に、震災遺児、孤児の現状についてであります。東日本大震災津波による孤児は94人、遺児は490人であり、本年5月に実施した現状調査で把握できた限りでは、成人した孤児が56人、遺児が247人、このうち県外に転出した孤児は28人、遺児は107人となっておりますが、進路の状況等につきましては、いわての学び希望基金の奨学金受給者のほかは、把握が難しい状況にあります。
 県では、被災者相談支援センターや岩手県U・Iターンセンターを設置するなど、県外に転出した震災遺児、孤児からの生活や就職などさまざまな相談にも対応できる体制を整備しており、今後とも、市町村や学校の協力を得ながら状況把握に努め、その旨の周知を図ってまいります。
 また、未成年の孤児のうち、現在32人が里親に委託されており、世代の離れた祖父母が里親となっている孤児が11人となっております。
 県では、当事者が交流する里親サロンを実施するなどの支援を行っているところであり、引き続き丁寧に対応し、里親や孤児の不安や喪失感の軽減に努めてまいります。
 次に、三陸防災復興プロジェクト2019についてでありますが、このプロジェクトには、国、外国政府、国際機関、企業、団体、そして次世代を担う若者など多くの方々に参画いただき、開かれた復興の意義を確認するとともに、岩手の復興が世界に、未来に広がっていく形を共有することができました。また、沿岸部の市町村長からは、観光客数が増加するなど顕著な効果が見られた、市町村だけでイベントを行うには限界があることから感謝している、風化防止や防災意識の啓発に寄与できたと考えるという御意見とともに、全ての市町村から継続実施を求める声があったところであります。
 なお、これらの事業への参加者数は約18万3、000人であり、三陸防災復興プロジェクト2019実行委員会の事業と軌を一にして市町村が実施した関連事業を含め、本プロジェクトによる地域経済への影響を推計したところ、35億円を超える経済波及効果があったと聞いています。
 このプロジェクトの目指す姿や取り組みについては、いわて県民計画(2019〜2028)の三陸防災復興ゾーンプロジェクトにおいて継承していくこととしております。2021年3月には東日本大震災津波発災から10年の節目を迎え、三陸地域が注目を集める年となりますことから、国の事業などとも連携を図り、引き続き復興への支援に対する感謝を伝え、東日本大震災津波の教訓や復興の姿を伝承、発信するとともに、三陸地域の多様な魅力を発信することにより交流人口の拡大を図り、持続的な地域の発展につながるための取り組みを進めてまいります。
 次に、ILCに関する県の今後の動きについてでありますが、日本学術会議が策定するマスタープランは学術界における判断を示すものであり、研究者組織が直接的な対応を行うものと捉えておりますが、県においては、昨年、同会議の所見で指摘があった地域住民との対話や環境アセスメントの進め方等について、研究者組織の取り組みに協力するなど、マスタープランの審議が円滑に進むよう対応しているところであります。
 また、欧州素粒子物理戦略におけるILCの位置づけについては、今月2日に国際ワーキンググループでの議論を取りまとめ、大学共同利用機関法人高エネルギー加速器研究機構から提言された国際分担の考え方をもとに政府レベルでの国際的な協議を進め、日本政府からILC誘致の意思表明が行われることが重要であると考えております。このため、超党派国会議員連盟を初め、北海道、東北各県、関係団体等が密接に連携し、できるだけ早期に政府に対し要望を行いたいと考えております。
 次に、ILCによる地方振興ビジョンについてでありますが、本ビジョンは、国際研究都市の形成支援やイノベーションの創出など5本の柱から構成され、その取り組みや波及効果が多岐にわたることから、知事を本部長とするILC推進本部を設置するとともに、まちづくりや居住環境、産業振興など部局横断で分科会を組織し、全庁を挙げて本ビジョンの取り組みを進めています。
 この中で掲げるグリーンILCは、ILCのエネルギー消費を抑えながら、施設から生じる排熱の有効利用やILC関連施設の木造化等を進めるものであり、現在、排熱を回収、運搬して園芸施設などに活用する方法や、ILC関連施設の木造化に適した工法の研究などを大学や民間企業とともに進めています。
 このほか、県民を対象としたグリーンILCセミナーを県北、県央地域で開催するなど、グリーンILCが広く理解され、全県で展開されるよう取り組んでいるところであり、第1次産業を基幹産業とし、持続可能な社会を目指す本県の特徴を生かした取り組みとして、今後も積極的にグリーンILCを推進してまいります。
 次に、施策推進目標の結果についてでありますが、社会減ゼロについては、自動車、半導体関連産業の集積による雇用の創出等に取り組んだものの、近年の景気や雇用情勢などにより、特に若年層を中心に東京圏への転入超過数が拡大している状況にあります。
 合計特殊出生率の向上については、子育ての負担軽減や仕事と育児の両立支援等に取り組み、平成29年までは目標を上回っていたものの、平成30年になり下回ったところであり、推移を注視していく必要があります。
 国民所得に対する県民所得水準の乖離縮小については、さまざまな暮らしの環境の整備とともに、ものづくり産業や農林水産業等の振興により1人当たりの県民所得は年々上昇しているものの、全国との経済成長率との差などにより、国民所得の上昇幅のほうが大きいことが背景にあると考えております。
 次に、次期岩手県ふるさと振興総合戦略についてでありますが、現在策定を進めている岩手県ふるさと振興総合戦略につきましては、現行の戦略の成果や課題を踏まえるとともに、国の第2期まち・ひと・しごと創生総合戦略の動向も注視しながら成案化を図っていくことが重要と考えております。
 具体的には、現行の岩手で働く、岩手で育てる、岩手で暮らすの3本の柱は維持しつつ、国の新たな視点である関係人口の創出、拡大の考え方を踏まえ、新たに4本目の柱として岩手とつながるを追加し、岩手ファンの拡大や、関係人口、交流人口の拡大に向けた取り組みを進めていきたいと考えております。さらに、持続可能な開発目標―SDGsや、科学技術を活用した超スマート社会―ソサエティー5.0の実現などについても、ふるさと振興を進める上で重視する視点として盛り込む方向で検討を進めているところであります。
 今後とも、県議会を初め、市町村、関係団体等の御意見を十分に踏まえ、次期戦略の策定を進めてまいります。
 次に、公立、公的医療機関等の再検証への対応についてでありますが、今回の国による病院名の公表は、議員御指摘のとおり平成29年度の診療実績データを用いて機械的な分析をもとに行われており、最新の診療実績が反映されていないことや、分析対象ががんや脳卒中など一部の診療領域に限定され、一つの病棟で幅広い医療ニーズに対応している地域の中小病院の機能が適切に評価されていないことなど、その内容には課題が多いものと認識しております。また、本県では、公表された10病院のうち8病院において、平成29年度以降、一定程度病床機能の転換や病床数の見直しが実施または検討されており、再検証の要請がそのまま病院機能の大幅な見直しにつながるものではないと認識しております。
 こうした認識のもと、国が求める2025年に向けた公立、公的医療機関等の具体的対応方針の再検証が地域の実情に十分即したものとなるよう、国に対して知事要望を行うこととし、全国知事会とも連携しながら、国と地方の協議の場などを通じて国に対して訴えてまいります。
 また、県内9圏域に設置している地域医療構想調整会議では、個々の医療機関の機能や診療実績の実態も確認しながら地域の実情に応じた丁寧な議論が展開されることを期待しており、県としても、地域医療構想アドバイザーと連携しながら、病床機能等に関するデータの分析結果の提供や、客観的、専門的な助言などにより議論を活性化し、効率的で質の高い医療提供体制の構築が図られるよう取り組んでまいります。
 次に、地域医療情報発信事業についてでありますが、医師少数県による連携については、発起人県になることに対して、本県と同様の状況にある新潟県を初め、複数の県から既に賛同を得られているところであり、今後、これらの県を中心として他の医師少数県等に働きかけを行ってまいります。
 また、国に対する提言については、全国的な医師の不足と地域偏在を根本的に解消するため、県境を越えた医師の適正な配置調整、医師少数区域での勤務経験を病院長となるための要件とする対象病院の拡大などを求めていきたいと考えております。
 今後の活動につきましては、今年度中に他県との連携体制を構築し、共同記者会見やシンポジウムの開催、各種メディアの活用による情報発信を行うこととしており、来年度以降についても、同様の課題を持つ医師少数県で連携し、統一的な動きとして、政府予算提言、要望や全国規模の会議での発信などを行うほか、あらゆる機会を通じて、国に医師の不足と地域偏在の解消について働きかけていきたいと考えております。
 次に、医学部進学増に向けた取り組みについてでありますが、医師不足を解消するため、平成20年度から学校法人岩手医科大学医学部の臨時定員増が図られており、県では国に対し、定員増の恒久化を強く求めているところであります。
 近年、全国の医学部定員が増加していることもあり、本県の高校生が医学部に進学できる機会が拡大しておりますが、県内の高校の卒業生が減少する中で、医学部進学者数は横ばいで推移している状況にあります。県といたしましては、医学部進学の機会が拡大していることを県民の皆さんに広く呼びかけながら、進学者の増加につなげていきたいと考えております。
 このため、県では、地域医療に関する講演等を内容とする医学部進学セミナーを開催し、医師を目指す動機づけを図るとともに、外部講師による医学部進学対策講座を開設しているところであり、今後も引き続き、医学部志望者の学力向上や意識醸成のための体系的、集中的なプログラムの実施など、進学支援策の強化に取り組んでまいります。
 また、本県出身者が確実に医学部に進学し、医師として本県の地域医療に従事してもらうためには、地域枠の設置が最も効果的な取り組みであると考えており、県では、学校法人岩手医科大学医学部の地域枠に加えて、来年度から新たに国立大学法人東北大学医学部に2名分の岩手県地域枠を設置し、進学機会の拡充を行うこととしております。
 今後も、医学部進学者の裾野の拡大を図るとともに、各大学とも連携し、これらの地域枠の適切な運用に努めながら、本県出身の医学生の増加に向けて取り組んでまいります。
 答弁漏れがございました。
 台風第19号災害を受けた防災、減災対策につきましては、今後、人命の保護、県民の財産、公共施設の被害の最小化が図られるよう、岩手県国土強靱化地域計画に基づき、国の動きも注視しながら、河川改修や治山等の防災対策の取り組みを着実に進めていくとともに、全ての市町村において早急に国土強靱化地域計画が策定されるよう、必要な支援を行ってまいります。
〇副議長(中平均君) 次に、飯澤匡君。
   〔48番飯澤匡君登壇〕(拍手)

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