令和元年6月定例会 第17回岩手県議会定例会会議録

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〇東日本大震災津波復興特別委員長(関根敏伸君) 東日本大震災津波復興特別委員会の、これまでの調査の経過と結果につきまして、御報告いたします。
東日本大震災津波から、間もなく8年4カ月が経過いたします。この間、県民一丸となった取り組みにより、復旧、復興事業はおおむね順調に進んでいるものの、事業の進捗状況は、地域によって異なっている状況であります。
本県においては、沿岸地域を中心に、本年5月末時点で死者5、142人、行方不明者1、114人、家屋の流出、倒壊等の被害は2万6、000棟を超えており、今なお約1、700人の被災者が応急仮設住宅等での生活を余儀なくされております。
さらに、平成28年の台風第10号がもたらした記録的な大雨による河川の氾濫等により、多くの人命が失われるなど、たび重なる災害によって復興が長期化し、県民生活と地域経済に大きな影響を及ぼしているところであります。
このような中、本委員会は、前任期に続き、平成27年9月臨時会において、議長を除く全議員を委員として設置されて以来、20回にわたり委員会を開催し、復旧、復興の現状、課題や取り組み状況等について、執行部や関係者から説明を受け、質疑、意見交換を行うとともに、内陸を含めた被災市町村や復興に向けて取り組んでいる方々を対象に、延べ32回の市町村等に対する現地調査を実施してまいりました。
この間、県では、昨年度までは岩手県東日本大震災津波復興計画に基づき、復旧、復興事業を推進してきたところであり、今年度以降は、いわて県民計画(2019〜2028)に基づく取り組みを推進していくこととしており、復興計画で掲げていた安全の確保、暮らしの再建、なりわいの再生の三つの原則を復興の柱として引き継ぎ、さらに、未来のための伝承・発信を四つ目の柱に加え、復興計画期間内に終わらなかった社会資本整備の早期完了や、被災者支援及び産業振興等の復興事業に継続して取り組んでいるところであります。
まず、現状と課題についてでありますが、一つ目の柱である安全の確保については、海岸保全施設や湾口防波堤の復旧、整備、市町村が行う復興まちづくり事業への支援、地域防災力や広域的な防災体制の強化などの取り組みが進められております。
また、不通となっていたJR山田線宮古―釜石間については、三陸鉄道に経営が移管され、本年3月からは南北リアス線と一体となった運行が行われております。さらに、三陸沿岸道路については各地で供用が開始され、企業立地や港湾の利活用等の産業面での活性化や、救急医療施設へのアクセス向上等の生活面での効果が期待されております。その一方で、一部地域においては、来年度以降も海岸保全施設の整備等が続く見込みとなっております。
本年1月に実施したいわて復興ウォッチャー調査では、ハード事業の進捗状況を評価する声がある一方、工事の完了までは安全が実感できないという声や、住民の防災意識の低下への不安の声もあったところであります。さらに、防災集団移転事業の進展等により生じた移転元地の利活用などが課題となっており、復興後を見据えたまちづくりが求められているところであります。
二つ目の柱である暮らしの再建については、災害公営住宅の供給割合は9割を超え、盛岡市に内陸避難者向け災害公営住宅が完成するなど整備が進んでおります。また、被災者相談支援センター等においては、被災者からの幅広い相談に総合的に対応しております。さらに、被災した県立病院は、昨年3月に全ての復旧が完了し、また、被災した公立学校施設についても、昨年12月に全ての校舎の復旧が完了しております。その一方で、今なお約1、700人の方々が応急仮設住宅等での生活を余儀なくされており、住宅や生活の再建に向けたきめ細かな支援が求められております。
また、応急仮設住宅での生活の長期化、災害公営住宅への転居等に伴う住環境の変化により、被災者の心身の健康状態の悪化やコミュニティー機能の低下が懸念されているところであります。
三つ目の柱であるなりわいの再生については、県管理の31漁港全ての復旧が完了したほか、商工業者に対する各種支援により、8割を超える被災事業所が再開または一部再開しております。さらに、土地区画整理事業等の進捗に伴い、新たなまちづくりと連動した本設商店街の整備など、商業機能の再生が各地で進められております。
また、平成29年9月に、釜石港のガントリークレーンが供用開始し、翌年6月には、宮古―室蘭フェリー航路が開設され、産業振興や交流人口の拡大への効果が期待されております。
その一方で、本年1月の復興ウォッチャー調査では、地域経済の回復に対する実感が前回調査時と比較して減少し、漁獲量の減少や企業の人手不足、後継者不足に対する不安の声もあったところです。また、人口減少や復興需要の縮小による地域経済への影響のほか、原子力発電所事故に伴う放射性物質による影響も懸念されております。
四つ目の柱である未来のための伝承・発信については、ウエブサイトいわて震災津波アーカイブ〜希望〜の活用や、東日本大震災津波伝承館の整備等による防災文化の醸成と継承、いわての復興教育などの取り組みが進められております。その一方で、発災からの年月の経過による記憶の風化や防災意識の低下が懸念されているところであります。
そこで、本委員会では、これまでの調査結果を踏まえ、県当局に対し、東日本大震災津波からの復興を被災者が実感できるものとなるよう、次の事項に配慮して取り組まれることを要請するものであります。
1、まちづくりのおくれが、生活再建や事業所の復旧に影響を及ぼしている地域があることから、社会基盤の整備を一層加速させるとともに、被災市町村の職員不足など社会基盤整備事業の円滑な進捗を妨げる課題を解決し、移転元地の活用など地域の将来を見据えたまちづくりの取り組みを継続して支援すること。
また、記憶の風化を防ぎ、国内外の防災力の向上にも貢献する東日本大震災津波伝承館の効果的運営や復興、防災教育など、災害の教訓を次世代に伝承する取り組みの充実を図ること。
2、住宅の再建は、被災者が安定した生活に戻るために必要不可欠な条件であることから、災害公営住宅の供給を早期に完了させるとともに、住宅再建に向けた相談、支援制度を継続、充実させること。
また、応急仮設住宅の入居期間の長期化や、住居の移転による環境変化に起因するストレスから被災者の心身の健康を守ることを最優先とし、継続的な心のケアや医療、介護、福祉施策を充実させるとともに、災害公営住宅への入居等の際にはコミュニティー形成に対する支援の充実を図ること。
3、放射性物質の影響による被害への対応については、直接の被害のほか、風評被害の払拭など農林水産物の産地再生に向けた取り組みを継続し、充実させること。また、業績の回復が伸び悩む水産加工業が抱える課題の解決のため、販路開拓、人材育成、ブランド化等の支援に継続して取り組むこと。
4、復興後の地域経済の活力の向上に向け、復興道路等や宮古―室蘭フェリー航路などの新たな交通ネットワークの活用による地域経済の活性化や、ラグビーワールドカップ2019の釜石開催、国際リニアコライダーの建設実現など、新しい三陸地域の創造、発展につながる地域特性を生かした産業の育成や、人的、文化的交流の拡大促進を戦略的に展開すること。
なお、以上の取り組みを推進する際には、沿岸地域で進む人口減少に歯どめをかけるため、復興の進捗に伴い、変化する被災地域の課題を丁寧に酌み取り、市町村や関係団体と緊密に連携しながら、地域資源を活用した産業振興や交流人口の拡大など、地方創生の取り組みを総合的に推進すること。
また、被災者の心のケアや産業振興等、中長期的視野での対応を要する取り組みについては、来年度までとされている国の復興・創生期間の終了後も、被災地に寄り添った人的、財政的支援を継続し、一日も早い復興の実現に向け邁進すること。
以上のとおりであります。
結びに、県当局においては、復興がおくれている地域に対するさらなる支援と、被災者一人一人が復興を実感し、ふるさとの未来に希望が持てるような三陸地域の創造と発展に向けて、なお一層注力されることを切望し、東日本大震災津波復興特別委員会の報告といたします。(拍手)
〇議長(佐々木順一君) 次に、川村産業振興・働き方改革調査特別委員長。
〔産業振興・働き方改革調査特別委員長川村伸浩君登壇〕
〇産業振興・働き方改革調査特別委員長(川村伸浩君) 産業振興・働き方改革調査特別委員会の、これまでの調査の経過と結果につきまして、御報告いたします。
本委員会は、平成29年9月定例会において設置されて以来、7回の委員会及び3回の県内外での現地調査を実施し、産業振興及び働き方改革等について調査を実施してまいりました。
まず、現状と課題についてであります。
本県の産業においては、主に自動車、半導体関連産業がものづくり産業を牽引し、今後も両分野を柱として、これらに続く成長分野や地域の中核産業が発展し、ものづくり産業全体が県経済をより一層力強く牽引していくことが期待されており、その効果を県内全域に波及させていく必要があります。
また、本県においては、中小企業が県内全事業所の99.8%を占め、本県経済を支える重要な役割を担っていることから、中小企業の振興を図るため、新事業分野の開拓や、経済的、社会的環境の変化に対応した経営力の向上、経営人材の確保、商業、サービス業者の生産性の向上などの取り組みを促進することが必要であります。
産業人材の育成については、ものづくり産業や農林水産業を初めとする各分野において、県内の高等教育機関と地場企業などの産学官金が連携して、科学技術による持続的なイノベーションの創出に向けた取り組みが進められていることから、地域社会に貢献する意欲があり、専門知識や技術が高く、各分野の産業やその基盤となる研究開発を担う人材を育成することが必要であります。また、企業のニーズや成長分野の動向を踏まえた技術革新に対応する高度技術人材等の育成も必要であります。
さらに、労働力不足などの課題を解決するため、農林水産業や建設業などさまざまな分野において、情報通信技術やロボット、自動運転機能などを活用した取り組みが進められていることから、先端技術に対応できる人材の育成と定着を図るとともに、技術の高度化等にも対応できる施設設備の整備が必要であります。
次に、働き方改革についてですが、本県の生産年齢人口は、1985年をピークに減少局面に転じ、国の推計によれば、今後も人口減少や若者の県外流出などを背景に、2030年には57万6、000人まで減少すると見込まれています。
県内企業の雇用、労働環境は、岩手労働局と連携した産業関係団体への非正規労働者の正社員への転換、待遇改善の要請や、いわてで働こう推進協議会を核としたいわて働き方改革推進運動の展開による長時間労働の是正など、改善の取り組みが進められておりますが、県外企業と比較し労働時間が長く、賃金水準が低い状況となっていることから、長時間労働の是正など働き方改革を一層推進するとともに、企業の収益力向上を支援し、正規雇用の拡大や処遇の改善など、県内企業の雇用、労働環境の整備を促進する必要があります。
また、若者の県内定着については、本県の高等学校卒業者の卒業後3年以内の離職は減少傾向にあるものの、依然として離職率は高いことから、若者の仕事への認識と企業での業務内容などとのミスマッチの解消や、学校や企業等との連携により、職場定着を支援する取り組みが必要であります。
さらに、高校と大学の連携による高度技術人材の育成や、ものづくり分野におけるキャリア教育などが進められていますが、進学や就職期における若者の転出が顕著であり、産業を担う人材が不足していることから、児童生徒や保護者等の地元産業への理解を高めるとともに、段階に応じたキャリア教育を充実させるなど、若い世代が地元に定着する取り組みの推進が必要であります。
また、今後、国においては、外国人材の受け入れ拡大に向けた取り組みを進めることとしていることから、外国人にとっても暮らしやすい環境づくりと労働環境の整備を進める必要があります。
本委員会としては、これまでの調査結果を踏まえ、この際、県当局に対し、産業振興及び働き方改革に関する今後の施策の推進に当たり、次の事項に配慮し取り組まれるよう申し入れるものであります。
まず、産業振興についてですが、1、本県のものづくり産業を牽引している自動車関連産業や半導体産業の一層の集積を図るとともに、新たな企業誘致や地場企業とのマッチングなどにより、県北・沿岸地域へ波及効果を拡大する取り組みを推進すること。
2、地場企業と大学などの研究機関の連携を推進し、企業のニーズと大学のシーズを結びつけ、地場企業の技術力向上や新技術開発、新産業の創出などの業容拡大の取り組みを支援すること。
また、地場企業が県外や海外市場に挑んでいくことができるよう、県外、海外市場で評価されるような新技術や新商品の開発等を支援すること。
3、県内の高校、大学、企業が連携して地域の産業を担う人材育成に取り組むとともに、県内企業への就業を促進する取り組みを支援すること。
4、起業を志す若者や後継者の経営能力の向上を図るため、産学官金の連携により、企業の中核を担う経営人材の育成に取り組むこと。
5、ものづくり産業や農林水産業、建設業など各分野において進む技術革新に対応するため、県内の高等教育機関等と連携して、先端技術を活用するための人材育成に取り組むこと。
6、先端技術の導入は、魅力ある企業づくりを推進し、若者の就業促進にもつながることから、地場企業への導入を支援すること。
次に、働き方改革についてですが、1、長時間労働の是正、賃金の引き上げ、労働生産性の向上、柔軟な働き方がしやすい環境の整備促進などの働き方改革を実現するため、経営者と労働者とのコミュニケーションを高めていくとともに、企業規模によって働き方改革の取り組みに差が生ずることのないよう支援すること。
2、生産性向上によって企業にもたらされる付加価値を、労働者に還元する仕組みが必要であることから、好事例を紹介するなど、企業の意識啓発等に努めること。
3、児童生徒や保護者の地元産業などに対する理解を高めるとともに、中小企業の魅力の発信力の低さを補うため、企業の情報発信の取り組みを支援すること。
4、産学官が連携して地元企業の魅力向上を図るとともに、県内企業と大学生等との交流機会を創出するなど、若者が地元に定着する意識の醸成を図るよう取り組むこと。
5、離職した若者の再就業を促進していくため、リカレント教育の推進など、職業能力の開発や、マッチングなど再就業のための取り組みを支援すること。
6、先端技術の導入が進むことで、技術的失業と人材不足が同時に生じることが懸念されるため、就業のマッチングが図られるよう対策を検討すること。
7、外国人材の受け入れに対応するため、生活環境を整備するとともに、外国人材が企業に適応できるよう、必要な措置を国に対して要望すること。
以上のとおりであります。
結びに、県当局においては、本委員会の意見や要望に十分配慮しながら、県政運営になお一層の努力を傾注し、産業振興、働き方改革に当たっては、ワーク・ライフ・バランスの充実が図られ、希望とやりがいを持って働くことができる仕事を創出し、岩手の産業振興の推進に取り組まれることを切望し、産業振興・働き方改革調査特別委員会の報告といたします。(拍手)
〇議長(佐々木順一君) 次に、佐々木人口減少・子育て支援対策調査特別委員長。
〔人口減少・子育て支援対策調査特別委員長佐々木努君登壇〕
〇人口減少・子育て支援対策調査特別委員長(佐々木努君) 人口減少・子育て支援対策調査特別委員会の、これまでの調査の経過と結果につきまして、御報告いたします。
本委員会は、平成29年9月定例会において設置されて以来、7回の委員会及び3回の県内外での現地調査を実施し、地域における人口減少対策及び子育て支援等について調査を実施してまいりました。
まず、現状と課題についてでありますが、日本の人口は2008年をピークに減少局面に入る一方で、東京一極集中の傾向が続いています。本県においても、若年女性の減少及び出生率の低迷による自然減と、進学、就職期の若者の転出、特に就職期の女性の転出の影響による社会減が相まって、2000年以降は本格的な人口減少期に入り、国の推計によれば、2045年の本県の人口は88万5、000人になることが見込まれています。また、本県の平成30年の出生数は7、615人で、10年前と比較して2、608人減少しており、合計特殊出生率は1.41と、依然として低い水準にとどまっているほか、生涯未婚率及び平均初婚年齢ともに上昇しており、未婚化、晩婚化が一層進んでいます。
人口の自然減の原因の一つである出生率低下の背景には、子育て世代の所得の減少や非正規労働者の増加といった経済的事情、出産後の女性の就労継続の困難さなどといった就労環境の問題などさまざまな原因があり、また結婚しない理由には出会いの機会が少ないことなどがあることから、関係機関と連携し、総合的な対策が必要であります。
社会減については、高等学校卒業者の県内就職率は上昇傾向にあるものの、依然として18歳の進学、就職期と22歳前後の就職期における若者の転出が顕著になっていることから、関係機関が連携し、地域社会に貢献する意欲ある人材を地元に定着させるために取り組むことが必要であります。
一方、地方創生の動きの中で、若年層の地方への移住ニーズが高まり、全国的に移住、定住の取り組みが強化されています。本県においても、受け入れ態勢の整備はもちろん、移住希望者に対する本県の認知度を高め、定住につなげるための移住後の細やかなフォローなど、効果的な移住、定住対策が必要であります。
子育て支援についてですが、平成31年県の施策に関する県民意識調査において、安心な子育て環境整備へのニーズは3番目に高く、関連施策の充実が必要であります。
県内では、安心して妊娠、出産、育児ができるように妊産婦を支援する産前産後ケアの事業を実施している自治体は限られており、利用に当たっては金銭的な負担が大きいために、十分な支援につながっていない実態があります。また、本年10月からの幼児教育の無償化による受け入れ施設や、幼稚園教諭、保育士の不足への懸念に加え、5年間の経過措置期間中は、指導監督基準を満たさない認可外保育施設も無償化の対象となることから、保育の質の確保も課題となっています。
核家族化や地域のつながりの希薄化等により家庭や地域の子育て力が低下する中で、県民一人一人が家族や子育ての意義について理解を深め、社会全体で子育て家庭を応援する機運を高めるとともに、仕事と子育ての両立に向けたさらなる環境整備等の積極的な取り組みが必要であります。
また、従業員の仕事と家庭の両立のために事業主が講じる措置を定める次世代育成支援対策推進法に基づく一般事業主行動計画については、策定が努力義務とされている従業員100人以下の企業の多くが未策定となっていることから、企業の計画策定を促進させることが必要であります。
本委員会としては、これまでの調査結果を踏まえ、この際、県当局に対し、人口減少対策と子育て支援等に関する今後の施策の推進に当たり、次の事項に配慮し取り組まれるよう申し入れるものであります。
1、人口の自然減対策に関しては、“いきいき岩手”結婚サポートセンターの機能強化により結婚支援体制を充実させるとともに、安全で安心な妊娠、出産のための環境整備、企業等における雇用条件、待遇面の改善や働きやすい職場環境づくりによるワーク・ライフ・バランスの実現など、出会いから結婚、妊娠、出産、子育てまで、ライフステージに応じた切れ目のない支援を行い、関係機関と連携し、出生率の向上に向けて取り組むこと。
また、行政とともにこれらの支援の担い手となるNPO法人等が安定して継続的に運営できるよう、NPO法人等に対する相談支援体制の改善に取り組むこと。
2、人口の社会減対策に関しては、高校や大学等を卒業する若年層の地元定着を促進するため、在学中から地域の魅力や仕事場に触れる機会をふやすとともに、県内企業のインターンシップ受け入れや職場体験活動への支援を強化し、雇用のミスマッチ解消による職場定着に取り組むこと。
3、若者や女性等のU・Iターンを促進するため、首都圏における就職相談体制や県外大学との連携を強化するとともに、求職者支援訓練制度を活用した人材育成事業である徳島県神山町の神山塾の例を参考とするなど、人口流出の大きい就職期の女性に焦点を当てた対策を推進すること。
また、市町村と連携し移住希望者のニーズに対応するとともに、移住者を対象とした意識調査を実施し、移住後のフォローに反映させるなど、移住者の定着支援体制の強化、拡充により、安心して移住できる環境を整備すること。
4、妊産婦に対する産前産後ケアは十分とは言えないことから、市町村が産前産後ケア体制を構築できるよう支援するとともに、経済的な理由により産前産後ケアが受けられないという事態が生じないよう、利用者の負担軽減策を講じるなど、全ての妊産婦が安心して出産、子育てができる環境づくりを進めること。
また、公的機関の子育て相談窓口が利用しにくい場合もあることから、相談窓口に来ることができない親を支援するため、子育て家庭や子育て支援の現状を学び、子育て家庭を応援する美容院等を県が認定する香川県の子育て美容−eki事業の例を参考とするなど、地域と子育て相談窓口をつなぐ仕組みを検討すること。
5、幼児教育の無償化後も施設運営及び保護者の施設利用に支障が生じないようにするため、保育所の利用定員拡大等による待機児童解消や、延長保育、病児保育などの多様な保育サービスの充実に取り組むとともに、職員の確保や処遇改善を図り、保育の質の確保に取り組むこと。
6、長時間労働の是正、育児休暇や看護休暇の取得、短時間勤務等の多様な勤務形態の導入など、子育てに優しい職場環境づくりを推進するため、仕事と子育ての両立支援に取り組む企業等の表彰、認証を促進するなど、社会全体で子育てを支援する機運の醸成を図ること。
7、一般事業主行動計画の策定促進のため、従業員100人以下の企業に対して計画策定の働きかけを強めるなど、企業における従業員の仕事と家庭の両立支援や子育て支援を一層推進すること。
以上のとおりであります。
結びに、県当局においては、本委員会の意見や要望に十分配慮しながら、県政運営になお一層の努力を傾注し、地域の存続には次代を担う子供が欠かせないという危機感を持ち、人口減少、子育て支援対策を実施していくことを求めます。
また、岩手で暮らす魅力を高め、岩手への新たな人の流れを創出するとともに、社会全体で子育てを支援することにより、安心して子供を産み育てることができる岩手の実現に取り組むことを切望し、人口減少・子育て支援対策調査特別委員会の報告といたします。(拍手)
〇議長(佐々木順一君) 次に、佐々木防災・減災対策調査特別委員長。
〔防災・減災対策調査特別委員長佐々木朋和君登壇〕
〇防災・減災対策調査特別委員長(佐々木朋和君) 防災・減災対策調査特別委員会の、これまでの調査の経過や結果につきまして、御報告いたします。
本委員会は、平成29年9月定例会において設置されて以来、7回の委員会及び3回の県内外での現地調査を実施し、自然災害への防災、減災対策や地域防災等について調査を実施してまいりました。
まず、現状と課題についてでありますが、東日本大震災津波や平成28年台風第10号、平成30年7月豪雨のような集中豪雨、同年9月の北海道胆振東部地震のような大地震のほか、竜巻、豪雪、火山噴火などさまざまな自然災害が毎年のように発生しており、災害発生リスクの高まりや被害の甚大化が懸念されます。今後、首都直下型地震や南海トラフ地震が発生するとの予測もあり、本県においても、マグニチュード7級の地震が発生する確率は、青森県東方沖及び岩手県沖北部などで90%とされ、多くの人命が失われ、国家や社会の重要な機能が致命的な障害を受けるおそれがあります。
防災、減災対策についてですが、大規模災害時には、早期の避難が被害の軽減にとって重要であることから、市町村長が避難勧告等の的確な判断を下すために、県等が適切に助言を行う体制の構築が求められています。災害発生時には、防災担当課が市町村長の補佐など重要な業務に専念できる体制やその後の災害査定を受ける体制の構築など、災害発生時の市町村の体制のあり方について検討していく必要があります。
また、東日本大震災津波からの復旧、復興に当たっては、将来的な地域の防災やまちづくりを踏まえた復興計画を早期に策定することが課題となったほか、地籍調査の実施の有無が復旧、復興の進捗に影響を与えたことから、早期に調査を進めていく必要があります。
さらに、安全、安心を支える社会資本として多重防災型まちづくりを進めていますが、水門、陸閘自動閉鎖システムなど、整備した施設の維持管理費の確保が課題となっています。
また、外国人にとっては、災害時に提供された情報が日本語であったたため、避難やその後の生活に苦慮する事態も生じたことから、外国人も含めた住民の安全を守る体制を考えていく必要があります。
次に、事前防災の観点から、地方公共団体の庁舎の耐震化に取り組んでいますが、地震災害等により庁舎が損壊した場合の業務のあり方についても検討が必要であります。
また、内陸部においても,河川改修などにより治水安全度向上に取り組んでいますが、一方で、県内の土砂災害危険箇所は1万4、348カ所と東北で一番多い状況であり、計画的かつ効率的な事業実施に努めていく必要があります。
次に、地域防災等についてですが、地域防災は地域コミュニティーが基本であることから、住民が災害に対する知識を高め、自主防災活動における災害対応力の向上を図っていく必要があります。平成30年4月1日現在の自主防災組織の組織率は、86.9%と全国平均を上回るものの、組織率や活動内容に地域間で格差が生じています。
また、平成29年度に実施した県の自主防災組織の実態調査によれば、避難行動要支援者名簿は全市町村で作成していますが、自主防災組織への提供は51.5%となっています。さらに、個別支援計画の作成は20.6%にとどまっていることから、災害が生じた際、要支援者の救助に窮する可能性があり、そのあり方について検討が必要であります。
本委員会としては、これまでの調査結果を踏まえ、この際、県当局に対し、自然災害への防災、減災対策及び地域防災等に関する今後の施策の推進に当たり、次の事項に配慮し取り組まれるよう申し入れるものであります。
まず、防災、減災対策についてですが、1、大規模災害が発生した際、防災担当課等が市町村長の判断を補佐する重要な業務に専念できるように、市町村に対し、組織的な体制構築のための助言をすること。
また、災害時に迅速な対応ができるよう、防災士を取得する取り組みが市町村で行われていることから、その取り組みを支援すること。
2、市町村長が避難勧告等を行うに当たっては、洪水警報の危険度分布システムなど、気象台や県が発表する情報を活用するよう、市町村に対し助言すること。
また、市町村長が地方気象台長等とのホットラインを通じて、避難勧告等の判断に対する助言を積極的に求めることや、そのための関係構築に取り組むよう助言すること。
3、平成28年台風第10号災害など未曾有の大災害においては、市町村職員が住民の生命、財産を守るための対策に優先して取り組んだため、災害査定を受検する体制の構築が困難であったことから、各省庁の災害査定の柔軟な実施が実現するよう、国に対して要望すること。
4、東日本大震災津波の際、県が発災6カ月後に被災13市町村に先駆けて復興計画を策定したことは、その後の市町村の復興計画策定の指針となった。今後、大規模災害が発生した場合には、この経験を生かすとともに、市町村に対して積極的に助言すること。
5、自然災害からの早期復旧などに資する地籍調査の一層の促進を図るため、十分な予算を確保するとともに、財政支援を拡充し、地方自治体負担の軽減が図られるよう国に対して要望すること。
6、水門、陸閘自動閉鎖システムなど、東日本大震災津波からの復旧、復興に伴い整備した施設の維持管理費の増嵩が見込まれることから、国に対して適切な財政措置が図られるよう求めること。
7、被災した外国人のほか、日本人のお年寄りや子供、障がいのある方にも、小学校の3年生でもわかるやさしい日本語であれば災害情報は伝わることが立証されており、他県等でも取り組みが進められていることから、本県も地域防災計画にこうした情報発信を取り入れること。
8、第2期岩手県耐震改修促進計画を策定し、地方公共団体の庁舎の耐震化率を令和2年度に90%まで向上させるよう取り組んでいるが、災害への迅速な対応や復旧、復興を速やかに進める観点から、耐震化率100%を速やかに達成できるよう取り組みを進めるとともに、庁舎が損壊した場合の業務のあり方についても検討し、対応策を講じること。
9、整備すべき河川や土砂災害危険箇所が多く、全ての箇所の整備には時間を要することから、優先順位を設定し、計画的かつ効率的に整備すること。
次に、地域防災等についてですが、1、自主防災組織は、その組織率のみならず具体の活動内容が重要であることから、自主防災組織の活動内容を把握し、その課題解決に向けた取り組みを継続的に実施すること。
2、地域防災は、自主防災組織として活動する町内会、自治会により展開されており、その地域づくり機能と一体となった取り組みが重要であることから、地域ぐるみで防災力、減災力を高めていくよう取り組むこと。
3、市町村が作成している要支援者名簿について、個人情報保護法などに留意しながら、地域の自主防災組織に提供し、災害が発生した際に、要支援者の的確な救助、支援が実現するように取り組むこと。
そして、これまでに述べた課題の解決には、相当な期間が必要であり、かつ、地方だけでの解決は困難であることから、長期的な視点で市町村を支援しながら、そのニーズを的確に把握し、引き続き国に対して必要な措置を要望すること。
以上のとおりであります。
結びに、防災、減災対策の取り組みは、防潮堤や砂防堰堤などのハード面の対策のほか、自助、共助、公助の理念に基づいたソフト面の対策の充実、向上が必要であります。県当局においては、本委員会の意見や要望を誠実に受けとめ、防災、減災対策を確実に実施することにより、いわて県民計画(2019〜2028)の理念である、県民一人一人がお互いに支え合いながら、幸福を追求していくことができる地域社会の実現に取り組まれることを切望いたしまして、防災・減災対策調査特別委員会の報告といたします。(拍手)
〇議長(佐々木順一君) 次に、郷右近出資法人等調査特別委員長。
〔出資法人等調査特別委員長郷右近浩君登壇〕
〇出資法人等調査特別委員長(郷右近浩君) 出資法人等調査特別委員会の、これまでの調査の経過と結果につきまして、御報告いたします。
本委員会は、平成29年9月定例会において設置されて以来、7回の委員会及び3回の県内外での現地調査を実施し、出資法人等が地域に果たす役割及び経営状況等について調査を実施してまいりました。
まず、現状と課題についてでありますが、出資法人等が地域に果たす役割について、国は、第三セクター等の経営健全化等に関する指針において、地方公共団体が、第三セクター等に対し、徹底した効率化と経営健全化を初めとした適切な関与を行うことが必要であるとしており、また、第三セクターの長所を活用し、地域の元気創造を図ることが重要であると示しております。
県においては、いわて県民計画第2期アクションプラン期間の平成23年度から平成26年度までにおいて、県出資等法人の自立を促すとともに、県出資等法人等を東日本大震災津波の復興に向けての施策推進主体の一つとして位置づけ、県との連携強化を図り、事業を実施されてまいりました。また、第3期アクションプラン期間の平成27年度から平成30年度までには、運営評価を通じた経営の改善を実施するとともに、復興や地域課題への対応に向けた連携、協働のパートナーとして、県と出資等法人の施策の連携を強化してきております。
効率的かつ効果的な県行政の実現に寄与するためには、出資法人等がそれぞれの設立趣旨に基づき、地域のニーズに応じた役割を果たすことが重要であります。特に、東日本大震災津波からの復興に当たっては、今後も出資法人等の持つ能力を活用し、復興を強力に推進していくことが必要とされます。
次に、出資法人等の経営状況等についてでありますが、国においては、地方公共団体財政健全化法の全面施行により、第三セクター等に係る債務等が健全化指標で捕捉されるようになったこと等を踏まえ、第三セクター等の抜本的改革を先送りすることなく早期に取り組み、将来的な財政負担の明確化と出資等法人の計画的な削減を行ってまいりました。
県においては、平成15年度に策定した岩手県出資等法人改革推進プランに基づき、県出資等法人指導監督事務要綱を全部改正して県出資等法人指導監督要綱とし、県内に主たる事業所を有する法人等について、運営評価を実施するなどの指導監督を実施されております。
これまで、経営上問題のある県出資等法人からの出資の引き揚げ等を積極的に推進し、平成15年度から平成30年度までに16法人を整理合理化するとともに、出資引き揚げを実施し、経営上の大きな問題を抱えた法人に関する取り組みが行われてまいりました。
県の運営評価については、県出資等法人の自律的経営を促進するとともに、県出資等法人が効率的により質の高いサービスを提供すること、並びに、その経営が将来にわたって県の負担を招くことのないよう経営状況を的確に把握し、課題の解決を図るため、PDCAサイクルの確立による徹底した法人改革の取り組みを継続的に支援されております。
毎年度実施する運営評価結果を事業に反映しつつ、外部・内部環境分析を行い、今後の果たすべき役割、あるべき姿や課題を明らかにし、ミッションを果たすための事業目標や法人運営の課題解決のための経営改善目標を設定し、より効率的に質の高いサービスを提供できる法人となるよう、取り組みを推進してきております。
また、県においては、平成28年度決算分から、総務省が新たに提示した統一的な基準により財務書類を作成しており、一定の要件を満たした県出資等法人に関係する財務状況を合算した連結財務書類を作成し、公表しております。しかしながら、全国的には、出資法人等が破綻した場合において、最終的な責任を行政側が負うことになった事例が見受けられるところであり、将来にわたって県民への負担を招かないよう、リスクマネジメントしていくことが重要であることから、県は議会の適切な関与、チェックを受けながら、可能な限り出資法人等におけるリスクを把握の上、どのようにリスク分担をするかなどのマネジメントを確立していくことが必要であります。
また、一定の公共サービスの提供のための出資であることに鑑み、出資者である県が、出資法人等のガバナンスの強化を図ることが重要であります。
本委員会としては、これまでの調査結果を踏まえ、この際、県当局に対し、出資法人等への指導監督に当たり、次の事項に配慮し取り組まれるよう申し入れるものであります。
1、東日本大震災津波からの復興や人口減少への対策に向け、専門性の高い事業等の実施に当たっては、出資法人等の持つ資源、能力を活用しながら取り組みを強力に進めることが必要であることから、県と出資法人等の施策の連携をさらに強化するよう取り組むこと。
2、出資法人等の経営が将来にわたって県民への負担を招かないよう、議会の適切な関与、チェックを受けながらリスクマネジメントをしていくことが重要であることから、出資法人等のリスク管理を適切に行うよう取り組むこと。
また、平成29年の地方自治法の一部改正を踏まえ、県は内部統制基本方針を策定し、内部統制体制を構築したところでありますが、予算執行の適正を期する観点から、出資法人等の内部統制を促すとともに、その存在意義やあり方等についても不断の見直しを行い、出資法人等のガバナンスの強化を図るよう取り組むこと。
以上のとおりであります。
結びに、県当局においては、本委員会の意見や要望に十分配慮しながら、県出資法人等の機能の強化や課題の解決を図るため、指導監督を十分に行い、効率的かつ効果的な県行政の実現に県出資法人等が寄与できるよう取り組みを強化することを切望し、出資法人等調査特別委員会の報告といたします。(拍手)
〇議長(佐々木順一君) お諮りいたします。各調査事件については、これをもって調査を終了したいと思いますが、これに御異議ありませんか。
〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
〇議長(佐々木順一君) 御異議なしと認めます。よって、各調査事件については、これをもって調査を終了することに決定いたしました。
日程第31 発議案第1号東日本大震災津波の被災者の医療費窓口負担、介護保険サービス利用者負担等の免除に対する財政支援の強化を求める意見書
〇議長(佐々木順一君) 次に、日程第31、発議案第1号東日本大震災津波の被災者の医療費窓口負担、介護保険サービス利用者負担等の免除に対する財政支援の強化を求める意見書を議題といたします。
提出者の説明を求めます。神崎環境福祉委員長。
〔環境福祉委員長神崎浩之君登壇〕

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