令和元年6月定例会 第17回岩手県議会定例会会議録

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〇2番(千葉絢子君) いわて県民クラブの千葉絢子です。
通告に従い、任期最後の一般質問をさせていただきます。当局におかれましては、県民が今後の岩手を展望し、希望を持てるような積極的でわかりやすい答弁を御期待申し上げます。
初めに、県立博物館学芸員による文化財への不適切な行為については、6月5日に新聞にて報道され、以降、さまざまなメディアで取り上げられました。今回の事案は、本県の文化財に関する拠点施設として、歴史、民俗、自然科学等に関する資料を収集、保管、展示し、調査研究を行う博物館において発生したことで、県民の信頼を著しく損なう、とても残念な出来事でした。
各種報道とこれまでの県教育委員会の説明によりますと、平成26年当時、内部職員の申し出により、野田村教育委員会など二つの機関から受託した業務において無断サンプリングなどの不適切な行為が行われ、平成28年には、この不適切な行為を行った職員を文書訓告処分にしたということです。さらに、このたび、平成26年度以前に奥州市教育委員会など三つの機関から受託した業務においても不適切な行為が行われたことがわかり、当時の処分や調査、組織マネジメントのあり方が適切であったか検証が必要です。
そこで、今回の件に関する教育長の所感についてお伺いいたします。
また、失墜した県文化財行政に対する信頼の回復には、県民が納得できる調査と結果説明、再発防止策などが必要と考えますが、今後の県教育委員会の取り組みについてお伺いいたします。
ただ、今回のことで岩手の文化振興の機運が低下することをも私は心配しております。岩手県立博物館は開館40年を迎えますが、平成13年に県立美術館ができて以来、近代美術品がそちらへ移管したことも影響し、過去20年の間に利用者が目標の4万人に届かなかった年が9回ありました。既存事業の見直しや、孫からおじいちゃん、おばあちゃんまで3世代で楽しめるイベントの構成、さらには広報活動の見直しにも着手、県博こども新聞などの盛岡市周辺の小中学校への配布などで、昨年度までの3年間には入館者数が開館以来の2番目、3番目の数字となり、平成29年は5万人を達成するなど、博物館のここ数年間の経営努力は特に評価すべきと考えています。
近年、全国的な博物館ブームが起きていて、特に恐竜の展示で人気の福井県立恐竜博物館には全国から年間60万人が、また、愛知県の豊橋市自然史博物館には年間70万人が訪れています。一方、岩手県立博物館には日本で最初に発見された恐竜の化石モシリュウとマメンキサウルスの骨格標本があり、間近で見ることができるのですが、これは動かない標本で、子供の興味を引く仕掛けがないのが非常に残念です。
また、昨年、東京国立博物館で開かれた縄文展には期間中35万人が来場し、縄文文化には高い関心があることが示されました。中でも人気の高い眼鏡をかけているように見える遮光器土偶は、岩手県民ならば教科書などで見るものではありません。盛岡市手代森など本県からの出土が最も多いという事実を県民のどれぐらいが知っているのでしょうか。
予算を見てみますと、5年前の平成25年度には3、800万円余りの予算がありました。しかし、昨年度の予算は2、900万円。なぜ5年前に比べて900万円も予算が削減されているのでしょうか。中でも一番削減されているのは教育普及活動費で、5年の間に100万円も削減され、41万円になっています。これでは、県の教育施設としての役割が十分に果たせないのではないでしょうか。
子供たちへの文化の継承のため、利用促進のために今後どうあるべきか、郷土愛を育む観点から、行きたくなる、さらに魅力ある施設にしていくよう考えなければいけないと思います。県の考えをお聞かせください。
次に、今月1日から始まった三陸防災復興プロジェクト2019について伺います。
まずは、シンポジウム、それから分科会、お疲れさまでございました。スタートを切るイベントを終えて、どのような成果があり、意義を感じられたか知事の所感をお伺いいたします。
オープニングセレモニーに続いて行われた三陸防災復興シンポジウムにおいて、定員に対する入場者数、県職員の動員数、並びに申込者の構成についてはどのような状況でしたでしょうか。このうち、地域の人たち、また、防災と復興の先進地の姿勢を学びに、全国各地からはどれぐらいの応募があったのでしょうか。
今後も各地であと3回開かれるシンポジウムの集客、動員については、もしあれば、どのような改善点が必要だと思われますでしょうか。
以上、登壇しての質問を終わります。以降の質問は質問者席からお伺いいたします。
〔2番千葉絢子君質問席に移動〕
〔知事達増拓也君登壇〕
〇知事(達増拓也君) 千葉絢子議員の御質問にお答え申し上げます。
三陸防災復興プロジェクト2019のオープニングセレモニーについてでありますが、米国大使館ヤング首席公使から、震災の教訓を次世代に語り継ぎ、世界各国の人たちと共有していこうとする皆さんの取り組みに感謝する、米国は防災において日本の経験から学ぶことがたくさんあるという内容のスピーチをいただきましたほか、国連防災機関の松岡駐日事務所代表からは、震災の経験を伝承する意義とともに、東北の皆さんの経験は、世界の防災、減災に役立つ、国連は橋渡し役を務めるというスピーチをいただいたところであり、海外とのつながりも復興の力とする開かれた復興の意義を確認することができました。また、地元で復興に活躍する若者からの報告もあり、岩手の復興が世界、そして未来に広がっていく形を共有できたこともよかったと感じております。
オープニングセレモニーに引き続き開催したこれからの防災をテーマにしたシンポジウムでは、台湾の防災研究者やインドネシアのアチェ津波博物館からも出席いただき、世界の自然災害の教訓も踏まえた防災教育の必要性や平時からの備えの重要性など、今後の防災力強化に向けた議論が行われました。
さらに、インドネシアのアチェ津波博物館の館長は、シンポジウム後に釜石市のいのちをつなぐ未来館を訪問し、教訓伝承のあり方を考える交流会に参加し、若い世代に教訓を伝えていくことの重要性を訴えたほか、秋の開館に向けて準備が進んでいる東日本大震災津波伝承館を視察し、今後の両館の連携について意見交換を行ったと聞いておりまして、今般の来県を機に交流が深まることが期待されます。
東日本大震災津波の記憶と教訓を日本国内及び世界と共有するとともに、三陸の魅力の発信と、多様な主体の参画と協力を進めていこうとする今回のプロジェクトに引き続き全力で取り組んでまいりたいと思います。
その他のお尋ねにつきましては関係部長から答弁させますので、御了承をお願いします。
〔政策地域部長白水伸英君登壇〕
〇政策地域部長(白水伸英君) まず、三陸防災復興プロジェクト2019の参加者の構成についてでありますが、6月1日のオープニングセレモニー後に実施いたしましたシンポジウムの参加者につきましては、約400名の御参加をいただいたところでございます。
参加者の構成でございますけれども、一般参加者は約170名、実行委員会構成員や協賛企業関係者などの関係機関が約150名となっております。また、県職員につきましては、関心を持つ職員が自主的に参加したものでございましたが、100名程度参加したところでございます。
なお、一般参加者170名のうち40名が県外の13都県からの参加となっておりまして、申し込みに添えられたメッセージなどを見ますと、他県の大学生や応援職員として本県を支援してくださった方も含まれているところでございます。
次に、今後の改善点についてでございますが、今後開催される3回のシンポジウムでは、震災の記憶と教訓を伝えるために、なりわいの再生、コミュニティーを基盤とした防災力の向上、新たな三陸地域の交通網を活用した地域間交流と地域活性化をテーマに議論を行うこととしております。その集客につきましては、一人でも多くの方の参加を得られるよう、引き続き、市町村や関係機関と連携しながら、県内外にプロジェクトの趣旨、それから各回のテーマについて、さまざまな媒体を通じてしっかりと発信してまいりたいと考えております。
〔教育長佐藤博君登壇〕
〇教育長(佐藤博君) まず、県立博物館における文化財への不適切な行為についてでありますが、文化財は国民、県民共有の財産であり、次世代に引き継いでいくことは、私たちに課せられた使命であり、責任であります。今回の事案に関しましては、文化財行政及び県立博物館を所管する県教育委員会として重く受けとめており、大変遺憾であります。県民の皆様、関係市町村を初め関係各方面に御迷惑、御心配等をおかけしておりますことに深くおわびを申し上げます。
県教育委員会といたしましては、県立博物館や指定管理者である岩手県文化振興事業団と連携し、文化庁の助言等もいただきながら調査を進め、県教育委員会が主体となって適正に対処してまいります。
なお、既に調査チームを設置し、平泉の柳之御所遺跡出土の重要文化財の調査等に着手したところであります。
今後は、複数の専門家にも加わっていただき、助言等をいただきながらできるだけ速やかに事実確認を進め、適宜公表に努めてまいります。また、当時の処分や調査のあり方、組織マネジメントにつきましても改めてゼロベースで調査を進め、再発防止策等を講じるなど、組織を挙げて信頼回復に取り組んでまいります。
次に、県立博物館の利用促進策についてでありますが、県立博物館は、企画展の充実やメディアを活用した広報活動の強化、家族等を意識した魅力的なイベントの開催など、県民のニーズ把握や興味、関心の掘り起こしに努めながら、職員の懸命な取り組みもあって、着実に実績を上げているものと捉えております。特に、企画展やテーマ展においては、岩手ならではの自然や文化的な価値に着目した企画展示に努めてきており、平成29年の企画展遮光器土偶の世界では、過去5年間で最多となる1万4、000人を超える入館者数を記録し、好評をいただくなど、県民の郷土に対する愛着を深め、誇りを高める一つの契機にもなっているものと考えております。
また、青少年の自然や文化への興味、関心を促すため、岩手らしい素材の取り入れに努めた体験教室などの企画を毎週実施しているほか、高校生を対象とした学芸員体験、博物館と学校が連携する、いわゆる博学連携の取り組みなどを進めており、幼児から中学生までの入館者数は、平成26年度の約1万2、000人から平成30年度にはその1.5倍の1万9、000人に迫るなど、着実に増加しているところであります。
今後におきましては、これまでの取り組みの継続に加え、来年度、開館40周年を迎えることから、より魅力ある企画展の検討を進めるとともに、出前授業の充実や学習利用の促進など、県内あまねく子供たちが博物館を利用できる環境づくりにも努めながら、魅力ある博物館づくりに一層取り組んでいくことが必要であると考えております。
〇2番(千葉絢子君) 40年前、私が生まれたころに県立博物館は開館いたしました。当時の中村知事は、れんが色のアーチ型の門をくぐって階段を上ったときに岩手山がよく見えるようにと、建物の角度をあえて30度変えて建設するよう指示したと伺っております。当時の中村知事の目には、きっと県立博物館に大勢の県民が集い、広い空と芝生の上にも大勢の家族連れが憩う姿が理想として浮かんだのではないでしょうか。
私たちには、そういった先人の思いを後世に伝えていく義務があります。そのためには、今回の件を通して、文化財を正しく後世に継承していく倫理観を持った人材の育成と、県民の文化振興の拠点としての博物館の活用のあり方についてもっと議論をお願いしたいと思っております。
また、三陸防災復興プロジェクトについては次の質問も予定しておりましたが、時間の関係上、割愛いたします。
次に、本県の子供の学力向上について伺います。
今から二、三十年前になりますが、我々子育て世代が中学生や高校生の多感な時期を過ごしていたときにも岩手の学力は大層低いことが言われておりました。
以前、知事が高校生との意見交換会に臨んだ折、知事の後輩に当たる男子高校生が、自分がどのランクにいるのか高校に入って初めて知り、愕然とした、焦りのようなものを感じたと話していたのを覚えておいででしょうか。出口では負けていない、学力だけではない、そのようにおっしゃる方もいますが、大学進学率を見てみますと、最新の統計データによれば2018年度の大学進学率は44.6%、10年前に比べると確かに5.1ポイント上昇しています。しかし、これは全国平均を10ポイント以上下回り、全国では43番目の数字になっています。
私が今回、大学進学率を質問しているのは、大卒者と高卒者の就職後の賃金の問題、職業選択の幅にかかわってくるからです。
私の手元には、2018年3月に卒業した学生について、雇用保険被保険者資格取得データから抽出した初任給情報があります。それによると、産業全体では高卒者の平均が15万7、000円、大卒者は19万5、000円、同じ年に就職した人でも、その差は月に3万8、000円もの開きがあることがわかりました。
大学進学を考えますと、この20年の間に実質賃金にはさほど変化は見られないものの、この失われた20年の間に教育費は倍になっています。国立大学の授業料は年間54万円になり、私立大学は年間100万円が目安となりました。これだけの学費を捻出するのに、学力をつける、大学に進学する、子供に教育費をかけられるような安定した収入を得ることも大切に考えなければいけないのではないでしょうか。
調査にあらわれる学力が全国平均を上回ることがいけないことか、全国平均を下回ることも放っておいていいのか。それは、これからの時代を生きる子供たちの幸せにつながるのでしょうか。子供たちや親の願いに耳をかさない、教育行政にかかわる側の大人の勝手な言いわけ、自己満足ではないかと私は思いますが、本県の学力向上について今後も現状で満足していくのでしょうか。
一方で、学力向上のあり方も、画一的なものではなく、学校のシステムについていくのが難しい子供たちの学習機会の確保や、実業高校で手に職をつける子供たちのことなど、普通科高校ではない選択をした子供たちの学力についてはどうあるべきと考えていますでしょうか。
〇教育長(佐藤博君) 学力向上に向けた取り組みについてでございますが、変容する社会の中で、子供たちが社会のつくり手として活躍していくためには、全ての子供たちに確かな学力を育成していくことが極めて重要であります。また、大学進学を希望する生徒への支援も大切であると考えます。
県教育委員会におきましては、学校の組織的な取り組みの強化や、児童生徒が学習の成果を実感できる授業づくり、授業と連動した家庭学習の充実などに取り組むとともに、少人数教育の推進や学習支援員などの活用により、一人一人の実態や、学習環境に応じたきめ細かな対応に努めてきたところです。
しかしながら、全国や県の諸調査の結果から、課題が継続している教科があることや、各教科を通じて思考力、判断力、表現力等の育成が必要であることから、今後とも、児童生徒のつまずきに応じた授業改善のための教員研修の充実や、学校への個別訪問の実施、家庭や地域との連携強化による家庭学習の充実などを通じた学力向上に取り組むとともに、進学対策の拡充を図り、子供たち一人一人の進路実現と、本県を支える人材育成を推進していく考えです。
〇2番(千葉絢子君) 今、県政が抱えている課題の一つに、医師不足の問題、また、獣医師の問題、児童虐待、子供の心のケアにかかわる専門職、教育者、市町村や県の職員の不足という諸課題があり、議会でも今後の人材確保のためにさまざまな議論が行われ、県費が投入されてきております。
こうした地域課題を解決する専門職は、いずれも大卒以上の人材確保が求められています。現在の岩手の学力で、大学進学率で、また、この人口減少社会で、この地域が抱える課題を解決していくための専門職を、自分たちの県で育てずに、どこから人材を確保してこようと考えているのでしょうか。
県は、自県で求める人材を自分の県で育成することを真剣に考えていないのではないかと、私はこれまで4年間の議論を通して大いに疑問を持っております。知事のお考えをお伺いいたします。
〇知事(達増拓也君) 本県が求めている専門職の確保についてでありますが、地域の課題をみずから解決できる地域づくりを進めるため、岩手の未来を担う高い専門性と教養を兼ね備えた人材を育成していくことが重要であると考えております。
このため、いわて県民計画(2019〜2028)では、10の政策分野の一つに教育を掲げ、児童生徒の確かな学力を育み、目指す進路の実現を図るとともに、産学官連携による地元定着の促進など、高等教育機関と連携した地域づくり、人づくりを推進することとしております。
また、政策項目の一つとして地域に貢献する人材の育成を掲げ、ものづくり産業や農林水産業、建設業、情報サービス産業の将来を担う専門人材の育成、確保に取り組むこととしているところであります。さらに、健康・余暇分野において、医師や看護師などの医療従事者や介護、福祉人材の確保、定着に向けた取り組みも盛り込んでいるところであります。
こうした取り組みを通じて、岩手において地域に貢献する人材の育成、確保を図ってまいります。
〇2番(千葉絢子君) 専門性を高める教育については、やはりもっと強化をすべきではないかと私は常々思っております。先ほど教育長の御答弁に諸調査の結果から課題が継続している教科があると伺いましたが、具体的にはどんな対応を今後考えているのでしょうか。いわて進学支援ネットワーク事業の取り組みの強化も必要ではないかと思いますが、教育長のお考えをお聞かせください。
〇教育長(佐藤博君) 大学進学を希望する者に対しては、その志望を達成するための支援を行うことが重要と考えております。いわて進学支援ネットワーク事業では、各大学のオープンキャンパスへの参加支援やいわて高等教育コンソーシアムによる高大連携ウインターセッション等により、生徒に対して大学における研究に触れる機会を広く提供し、進路意識の高揚と学力向上に取り組んでいるところでございます。
課題のある教科としては、理数科目が弱いと捉えておりまして、理数教科に関する取り組みの強化、拡充を検討してまいりたいと考えております。
〇2番(千葉絢子君) 教育委員会でもそのように課題を認識されているということ、また、その教科拡充を検討したいという御答弁、今回、私、初めてお聞きしたような気がしております。特に本県が抱えている喫緊の課題として医師の不足の問題が何度も取り上げられておりますけれども、医学部など理系専門職に進みたいという子供たちの進路希望をかなえることについても、やはり何かしらの手を打っていかなくては本県はこの医師不足の問題から脱却できないのではないかと思うのですが、この点についてはいかがでしょうか。
〇教育長(佐藤博君) 医学部への進学のためには、高い学力が求められるだけではなく、医師を目指す強い意志、それから使命感が大事でございます。
教育委員会といたしましては、保健福祉部と連携のもとに医学部進学セミナーを開催しまして、医学部進学の動機づけを図っております。また、平成29年度からは中学生を対象としたセミナーも開催するなど、医学部進学の裾野拡大に努めてきたところでございます。
高い学力が求められるということでございますので、学力向上の取り組みとして、先ほど理数教科の拡充強化といったことを答弁しましたが、さらに、医学部志望者に対する手だて、例えば集中プログラムとか、そういった手だても検討していかなければならないと考えております。
〇2番(千葉絢子君) 私はこれまでも、医学部進学者数は毎年60人程度ということで、学部定員がふえた後もやはり進学者の数は変わらない、これは問題ではないかということを委員会などでも取り上げてまいりましたが、やはり学力と、医学系の医療従事者、そういった職業につく子供たちの関係というのは無関係ではないと私は思っております。
まずその裾野を広げていただいて、職業の選択をすることができ、そして希望の進路をかなえていくことをサポートすることが非常に大事だと思っております。私は、子供たちの学力向上を掲げて前回の選挙においてここの議席をいただいたと思っておりますので、4年かけてようやく学力向上に向けた県の前向きな御答弁が出てきたということ、本当にありがたく、学齢期の子供を持つ一人の親として、また、子供の将来を案じている親の一人として心からの感謝を申し上げたいと思います。ぜひこの取り組みがうまくいきまして、岩手県の医師不足の問題などが解決されていきますように願うばかりです。
ただ、学力向上を議論する際、必ず教職員の多忙化というのが問題になります。そのたびに、部活動は外部指導員の導入ですとか週休2日制の徹底などの部活動改革が始まり、子供たちの相談などにはスクールカウンセラーやスクールソーシャルワーカーの配置が順次拡大され、学校調整課の設置、教員の働き方改革の議論も進んできたと自負しております。
先生方が疲弊しては、子供たちに知、徳、体のバランスのよい教育が難しくなるのは保護者の一人である私もよく承知しておりますし、働きやすい環境を整えるために、学校の現場も支えていきたいと議員としても思っております。
その一つの方法として、医師の事務作業の手助けをする医療クラークという方がいますけれども、教育現場にも、担任を持つ教員の事務作業の手助けをする教職クラークのような役割を果たすスクールサポートスタッフを配置し、本来の教諭の仕事である子供たちへの学力、生きる力の定着に専念してもらうよう環境整備を拡大していってはいかがかと思いますが、これについての県の考えもお伺いします。
〇教育長(佐藤博君) 教員の多忙化解消は喫緊の課題でありますから、こういったことを受けて昨年6月に岩手県教職員働き方改革プランを策定し、教員の業務負担の軽減等に向けた取り組みを進めているところです。
このプランの取り組みとして、教員が授業やその準備に集中し、児童生徒と向き合う時間を確保できるよう、教員の事務作業の一部を補助するスクールサポートスタッフを小中学校、義務教育学校に昨年度の13人から11人ふやしまして24人配置することとしています。
このほかにも、教員が担うことが多い教材費等の学校徴収金に関する会計事務を行う非常勤職員を高等学校に昨年度と同数の35人を配置し、教員の長時間勤務の大きな要因となっております部活動指導のサポートを行う部活動指導員を中学校、高等学校に昨年度の42人から43人増員し85人を配置することとしています。
今後も、働き方改革プランを着実に実行し、教員の業務負担の軽減に取り組んでまいります。
〇2番(千葉絢子君) 部活動指導員については、いろいろな意見もありますので、これはまた別の機会に取り上げたいと思いますけれども、私は、個人面談や学校行事のたびに、子供たちの担任、それから校長先生なども含めて、これからの教育について意見交換をしております。先生方からは、小学校高学年こそ目の行き届く人数で教育してあげたい。我々教員は、学力を身につけさせるという使命をおろそかにすべきではないという御意見をいただき、それが、我がいわて県民クラブでも要望し続けてきた全義務教育課程における35人以下学級の実施、学力向上の政策提言、それから実現につながってきたと思っております。
大人の目線ではなく、子供にとって一体何が有益なのか、何が将来のためになるのか、それぞれの子供に合ったニーズに応えられる環境を整えていただきたいと思いますし、また、職業選択の自由というのであれば、その選択肢を広げるために、子供たちの基礎学力の向上と定着が公立学校に求められていると私は申し上げまして、この質問を終わります。
次に、岩手県の来年3月末の基金残高は287億円しかないと伺っております。今後の県財政についてお伺いします。
一方で、県債残高は1兆2、500億円に上っております。自治体の年間支出のうち、借金の返済に充てられる割合を示す数字を実質公債費比率といいますが、岩手県の場合、この比率は、年々下がっているとはいえ、北海道の21.1%に次ぐ18.2%で、全国2番目の高さとなっています。
また、自治体のエンゲル係数に当たる経常収支比率は97.6%と非常に高く、新しい政策を組むのに苦慮するような財政運営が続いていて、非常に問題を抱えていると私はこれまでも指摘をしてまいりました。
まずは、県の財政について知事にお伺いいたします。現在、岩手はどういう状態にあり、これを改善させていくためにはどのような点に力を入れるべきか、次の4年間に向けた知事の考える財政改善策についてお伺いいたします。
〇知事(達増拓也君) ことし2月に公表した岩手県中期財政見通しでお示ししましたとおり、高齢化に伴う社会保障関係費の増や老朽施設の適正管理に要する経費の増大等に伴う維持費の増などにより、引き続き厳しい財政状況が見込まれているところであります。
このため、毎年度更新する中期財政見通しを踏まえて、企業誘致や中小企業の育成強化などによる産業振興や人口減少対策等、あらゆる施策を通じた税源涵養、公共事業を初めとした全ての事業における国費の活用、事業効果や効率性等を踏まえた事務事業の精査、公共施設等総合管理計画に基づく県有施設の適正な管理や財政負担の平準化など、財政の健全化に取り組むとともに、国に対しては、偏在性が少なく税収が安定的な地方税体系の構築や地方交付税を初めとする地方一般財源総額の確保を求めていくなど、第1期アクションプランの期間4年間も含め、将来にわたり持続可能で安定的な財政運営を行ってまいります。
〇2番(千葉絢子君) ことし1月、宮城県涌谷町が財政非常事態宣言を発令しました。この宣言によりますと、人口減少による町税の伸び悩み、社会保障費の大幅な増加、病院事業などへの繰り出しの増加などを背景に収支が悪化し、不足分を補うために財政調整基金の取り崩しが続き、このままの状態が続くと2年後に底をつくというような内容でした。同じような話をどこかで聞いたことがあるなと私は感じました。
涌谷町のエンゲル係数、つまり経常収支比率は、岩手県が97.6%に対して94.2%と岩手県よりも低かったのです。そして、収入のうち借金の返済の割合を示す実質公債費比率は12.6%で、岩手県の状況よりはずっとよかった。いわゆる健全化判断比率には兆候がありませんでした。
けれども、財務省が試算したキャッシュフロー分析指標では、返済財源が実質債務の何年分あるかを見ると、悪化の目安となる15年を上回り17.8年だったことがわかりました。この財務省のモニタリングは市町村にのみ実施されていて、県内では、公開している矢巾町を初め幾つかの自治体に調査結果となる診断表と今後の見通しが交付されているそうです。全国でも2017年4月末までの間に267の地方公共団体で診断表が公表されています。
岩手県でも、このような独自の試算で同じような分析ができないものでしょうか。そして、財政についてもっと開かれた議論を始めるべきではないかと私は思うのですが、県の考えをお聞かせください。
〇総務部長(八重樫幸治君) ただいま議員から御紹介のありましたキャッシュフロー分析指標については、財務省が財政融資資金の貸し手として、償還確実性を確認する観点から、財務状況を把握するため市町村を対象として算出しているものと承知していますが、指標のうち債務償還可能年数については、財務省の算出方法とは異なるものの、総務省の基準に基づき、都道府県を含めた全自治体分の平成29年度分からの算出、公表に向けて準備が進められているところであります。
財政の分析は、一定の基準に基づき統一的に作成された指標等を用いて、例えば、財政規模の類似する都道府県間の比較を行うことなどが効果的であると認識しておりまして、県においては、地方財政状況調査の結果や健全化判断比率などを活用し、他県比較等をしながら分析を行っています。
県では、こういった分析を行うとともに、財政指標や財政状況について、当初予算のポイントやあらまし、財政状況資料集や統一的な基準に基づく財務書類などの資料にまとめ、毎年度公表しているところであります。
引き続き、財政に関する県民の理解を深めていただくため、予算の歳入、歳出の内訳や決算、財政指標の分析資料などについて、積極的に提供してまいりたいと考えております。
〇2番(千葉絢子君) キャッシュフロー分析指標のようなものを、財務省とは違った方法で、総務省の計算の公式に当てはめて公表を考えていらっしゃるという御答弁でしたけれども、その際、涌谷町が直近に財政非常事態宣言を出しているということで、総務省の計算式に当てはめた場合に涌谷町はどうなるのかも、ぜひ比較をしていただきたいと思っております。
財政健全化の目安では全く兆候がなかったというところが、私はすごく心配でして、実際のところ、現金はどれぐらいあるのか、それから、職員の大量退職とか、そういう時期を迎えるに当たって、これからどれぐらいの支出がふえていくのか、その際の財源の確保はきちんとできるのかというところをつまびらかに県民の皆さんにもお示しして、では、どうしていくか、どこの部分を削ったらいいか、どこの部分に集中的に投資していったらいいかというような、本当に情報を開示した上での議論がこれから必要になってくると思っております。
私がこのように財政に興味を持ったのは、財政について全く知らなかったからなのです。議会で配られる資料を見ても、最初の1年間は、専門用語を理解することだけで本当に精いっぱいでした。そして、私が財政について知らないということは、もしかしたら県民の皆さん、それから県職員の皆さんの中にも知らない方がいるのではないかと思ったのです。そして、勉強して、支援してくださる方とまずは一緒に考えるというのが、私の財政への入り口でございました。
そうした中、福岡市の元財政局財政調整課長を務められた今村寛さんの本に出会いました。今村さんは職員向けの財政講座を担当していましたが、理屈はわかるけれども、実際にはどうしたらいいのかわからないという職員の声に悩んでいました。ある日、熊本県庁の職員がつくった自治体経営を体感できる対話型財政シミュレーションゲーム─SIMULATION熊本2030に出会いまして、それを福岡バージョンに進化させ、2015年から全国を回って財政出前講座を開催していらっしゃるということで、去年まで本県職員としていらっしゃった臼井さんが、この今村さんと一緒にお仕事をして、彼の話は非常にわかりやすいですというお話を私にもしてくださったことがありました。
このシミュレーションゲームは、人口減少社会と超高齢化社会の中で、決して逃れることのできない税収減と社会保障費の増加という厳しい制約条件が課せられた架空のまちを舞台に、2030年までの15年の間に、5年ごとに起こるさまざまな災害などの課題に対し、6人が仮想自治体の部長級職員という設定で一つのチームを組み、そして、制限時間の中でチーム内での対話に基づく政策選択を行い、判断を積み重ねていくというシミュレーションゲームです。この判断の積み重ねにより、ゲームの終了する2030年には、結果としてあらわれる私たちの未来についても評価が下されるという、現実さながらの厳しい自治体運営が体験できる点が評価されているそうです。
実は、岩手県庁内にもこのゲームを体験した職員がいます。また、先日は花巻市でも体験会が開かれたそうで、県内市町村の職員もこのゲームの存在を知り始めています。
社会の構造がそうなっているとおり、私たちの年代以降の県職員は数が少ないものの、15年から20年後には、ここにおいでの当局の皆さんと同様、意思決定にかかわる立場になってまいります。その際、一番心配なのは、意思決定までの議論の経験不足と、それから、どういった政策が必要かという着想についてできるかどうかなのです。ふだんから自治体運営に主体的に取り組む感覚を持ち、部局を横断して職員同士が施策を語り合える土壌をつくっておいて、対話による政策決定の感覚を身につけておくことは、今後の岩手県政を考える上でも非常に大切なことかもしれません。
財政の情報をもっと開示して、職員の対話による財政運営についてもっと広く県民を巻き込んでの議論に広げていくことが、よりよい県土をつくることにつながると思いますし、また、これは、新しいいわて県民計画への県民の参画にも寄与していくことになると感じますが、この県庁内におけるSIMULATION熊本2030の体験も含めたこれからの人材育成について、知事はどのようにお考えでしょうか。
〇知事(達増拓也君) 厳しい財政状況の中にあって、財政の効率化、適正化を図っていくためには、県の財政状況について、県民の皆さんに理解を深めていただくことが重要であると考えておりまして、引き続き、予算に関する情報や決算、財政指標に関する情報を積極的に公表することで、庁内職員も含め活発な議論の材料を提供してまいりたいと思います。
また、県民一人一人が、お互いに幸福を守り育てる希望郷いわてを実現するためには、あらゆる主体が協働する県民本位の行政経営を展開していくことが必要であります。
このため、部局の垣根を越えた職員間での議論、対話はもちろん、多様な主体との連携により施策を検討、実施することができるよう、研修等を通じて職員の合意形成能力等の向上を図り、県民視点で県全体の利益を追求する職員を育成してまいります。
〇2番(千葉絢子君) 私たちのこれからの人生に大きくかかわってくる社会保障の推移や財政状況については、行政からもっとわかりやすい情報を発信していただきたいと思っています。それに基づいて、住民の皆さんも議論に加わり、皆が当事者意識を持って施策を対話によって形成していくことが、これからの自治体運営に非常に大事になってくると思いますので、ぜひ、SIMULATION熊本2030を職員の方の体験も含めてお考えいただき、主体的にどのように県を引っ張っていったらいいかということを考えられるような土壌をつくっていただきたいと私は願っております。
次に、観光振興と経済政策について伺います。
私は2017年10月の一般質問におきまして、岩手の経済を活性化させるために、いかに岩手でお金を使ってもらうかが大事な観点であると申し上げました。その際に、県が今後さらに重視していかなくてはならない観光収入を上げるための提案をいたしました。
岩手のファミリー観光における逸失利益について、これを幾らかでも県内で回せるようになれば、さらに県外からもファミリーを呼び込むことができれば、もっとこの岩手の経済は潤うのではないかという私の考え方は変わっておりません。
2年前の質問に対し、知事は、三陸や県内の歴史、文化をめぐる旅をブラッシュアップしていくとお答えになりました。そして、答弁にあった、地域の創意工夫によって四季折々の魅力を磨き上げ、リピーターを獲得できるその地域ならではの観光地づくりを市町村やDMOなど関係団体と連携して推進してきた結果、観光客の入り込み数はどの程度伸びたのでしょうか。また、どんな観光客が来ているか、傾向や年齢層、ファミリー層のニーズなどについては、どのように調査、分析をしているかお伺いいたします。
〇商工労働観光部長(戸舘弘幸君) 観光客の入り込み数や傾向等についてでありますが、県の直近の観光統計によりますと、平成29年の観光入り込み客数は約2、759万人回となっておりまして、平成28年と比べて約14万人回、0.5%増加しております。
宿泊旅行者の居住地別の割合では、県内または隣県が41.0%、東京都を含む関東圏が37.1%。県外からの観光客の年齢層を見ますと、60歳代が24.2%、いわゆるファミリー層に当たると考えられる30歳代及び40歳代が35.6%となっています。
また、旅行人数を見ますと、2人での旅行が42.0%で、ファミリー層が含まれると考えられます3人から4人の旅行が30.4%となっております。旅行の同行者を見ますと、家族が64.9%、友人が17.8%となっております。
さらに、本県への訪問目的では、自然景観を見ることが62.8%、おいしいものを食べることが58.6%、観光文化施設を訪ねることが34.9%、温泉に入ることが34.1%、名所旧跡を訪れることが30.9%となっています。
こうしたことから、県外からの観光客のおよそ3割がファミリー層と推測され、本県に来ていただいた方々には、自然景観やおいしい食、観光文化施設などを中心に楽しんでいただいているものと考えております。
〇2番(千葉絢子君) ファミリー層も、三、四人での旅行が30.4%あると今御答弁をいただきました。家族で旅行ができるのは、部活などが関係のない小学校ぐらいまでが勝負と言われております。私の身の回りでも、1年に1回は必ず家族を伴って東京ディズニーリゾートに行ったり、大阪のUSJに行ったりとファミリー観光にお金を使う傾向が高いので、そのファミリー層を岩手県内に呼び込むことが、一つ重要なのではないかと申し上げてきているところであります。
私は2年前に東京都の豊洲と兵庫県の甲子園にあるキッザニアという施設の紹介をいたしました。ここは食品や住宅、病院や航空会社など60社余りの実際にある民間企業が出展し、ものづくりやサービス、接客など、子供向けにアレンジされたさまざまな仕事を親の手をかりずに体験することで施設内で使える通貨を稼ぎ、サービスを利用したらお金を払うなど、職業と消費の体験ができる施設で、全国からファミリー層のほか、修学旅行などで多くの来場者があり、常に予約でいっぱい、2006年にオープンしたキッザニア東京は、累計来場者数が去年1、000万人を数えているのです。
株式会社立地評価研究所大阪本社のレポートによりますと、親から子への投資を指す、子供を天使に例えたいわゆるエンゼル係数というものがあるそうですけれども、この高まりが近年見られ、少子化が進む一方で、子供の成長をサポートするような施設は、親世代からの注目を浴びることが多くなっていると指摘しています。このため、レジャー業界においても、キッズサポート施設が新しいビジネスチャンスの一つとして注目されている例として、キッザニアを取り上げているということなのです。
では、何が魅力かといいますと、キッザニアでは、パビリオン内の全てを子供に合わせた3分の2サイズで正確に再現しているということなのです。施設内通貨やキャッシュカードも、民間の銀行が実際に入っておりまして、実物さながらのリアリティーを追求しています。
1日を10時から夜9時まで2部に分けて予約制としていて、それぞれの時間内で目当てのパビリオンを回りますが、待ち時間などを合わせると1日で多くても五、六カ所程度のパビリオンを回るのが限界なのです。また、大手百貨店が出資しているというか入店している売店ブースには、1度や2度来場しただけでは到底買うことができない高額商品もありまして、施設内通貨を使った高額商品なのですけれども、このような仕掛けも子供の好奇心をあおり、そして、顧客のリピーター化を促している点が、非常に優秀なレジャー施設として評価されています。
キッザニアのような実際の民間企業が集まるレジャー施設を岩手県の中心部に誘致すれば、テーマパークなどに比べて冬場の悪天候も心配することなく、また、東北、北海道新幹線や花巻空港を利用して、関西、九州、北海道方面から、または海外からも宿泊を伴うファミリー層の集客もできるほか、東北各地からの教育旅行なども誘致でき、周辺の宿泊施設を初め、県内に年間を通して安定した経済効果を見込めるのではないかと思うのですが、いかがでしょうか。
〇商工労働観光部長(戸舘弘幸君) 御紹介いただきましたキッザニアのような民間企業が集まるレジャー施設でありますけれども、子供がさまざまな体験や学びができ、親子が一緒に楽しい時間を過ごすことができるものでありまして、子供のキャリア教育の観点からも有意義なものであり、一定の経済効果も見込めるものと考えられます。
一方、民間主体の施設が立地するに当たりましては、後背人口や施設の採算性など、さまざまな要素を検討して判断するものと考えられますことから、今後、令和2年度を目標に開業が計画されているキッザニア名古屋などの動向も注視しつつ、研究してまいりたいと存じます。
〇2番(千葉絢子君) この施設の利点は、東京や甲子園といった大都市にあることのほかに、民間企業が経営する大型の商業施設のテナントとして入居できるという点です。もし県有地にこの誘致が実現すれば、継続的な賃貸料の収入も見込めますし、それから、県財政にも少しは寄与することができるのではないかと私は考えております。
また、このキッザニア構想が実現した暁には、屋外遊園地のように降雪による施設の休止とか、悪天候による、例えば三陸のサッパ船のツアーは、きょうは雨が降ったからやめようかというような、旅行の行程を変更することなく、北海道、東北地域のファミリー層を含む旅行者にとって、岩手の自然、食べ物、温泉、それから文化施設といったものをトータルで満喫できる満足度の高い目的地にこの岩手県がなり得るのではないかと思うのです。
実は、キッザニアには、中学生でも楽しめるように、夕方から夜の回には英語による職業体験プログラムがありまして、こちらは中学生にも非常に人気だということなのです。つまり、このキッザニアの持っているノウハウを取り入れれば、県が力を入れている海外からのインバウンドもファミリーで呼び込めるのではないかと思います。
また、民間企業の中には、岩手県内にもハム、ソーセージなどを製造している会社もありますし、乳業関係の会社もあります。東京のキッザニアでも、食べ物を扱う企業は非常に人気でして、それは県内の企業からも入店が可能になるわけです。そうすると、年間何十万人も訪れるこの施設に、全国から、岩手にはこういう会社があるのだなということを知った子供たちが、将来的に岩手のそういった企業に就職することも皆無ではないと思うのです。あわよくば、岩手県内の産業、伝統工芸などもそこに入れてもらって、何とか県内の産業のPRにもなればいいのではないかと、私は夢ばかり膨らんでいくのです。
その中で、県内の観光客数の飛躍的な伸び、それから、県の施策である交流人口の拡大には、花巻空港の路線拡大が外せないと私は思っております。現在、花巻空港は、北海道、名古屋、大阪、福岡便のほか、台湾と上海に就航しています。しかし、オリンピックを間近に控え、国を挙げて観光立国を目指している今、より大きな海外マーケットからの誘客に取り組んでいくため、また、農産物、特産品の輸出、岩手と東京、さらに海外へとビジネスチャンスを広げるために、花巻―羽田便の就航を望む声が県民からも上がり始めています。県でも副知事が、羽田就航に向けた要請活動に日本航空をたびたび訪れていると私も伺っておりまして、これはぜひ進めていただきたいと思います。
花巻―羽田便の必要性について、県はどのような観点から要請をしているのか、また、実現可能性についてはどうなっているか、知事にお伺いいたします。
〇知事(達増拓也君) 羽田便は、国内外とのアクセスの向上やインバウンドの誘客拡大の観点から重要な路線となると考えておりまして、また、今後、ILCの誘致が実現すれば、相当数の研究者等の往来が期待されることも見据え、航空会社に対して羽田便の開設を要望しているところであります。
航空会社からは、新幹線との競合や羽田空港の発着枠の問題などから実現の見通しは厳しいとの見解が示されているところでありますが、県としては、ILCの誘致の状況も踏まえながら、引き続き働きかけを継続し、いわて花巻空港の航空ネットワークの充実と一層の利便性の向上に取り組んでまいりたいと思います。
〇2番(千葉絢子君) 岩手に就航している台湾と上海からのみならず、私は、オリンピック、パラリンピックをきっかけに幅広い海外旅行客を呼び込むのならば、海外から日本への多くの旅行者の入り口になっている羽田から、電車への乗りかえなしで岩手に輸送できるこの花巻―羽田便の実現は、大変有効だと思っております。
また、知事がおっしゃるとおり、ILCの誘致実現が成れば、海外と岩手を行き来する科学者にとっては、利便性を高めることにもつながりますし、それから、八幡平市にもインターナショナルスクールができると伺っておりますので、そこを利用する海外の富裕層の子弟、国内の富裕層の子弟などについても、非常にアピールポイントにもなります。この羽田―花巻便があるということは、ILCの誘致実現にも非常に大きな鍵になってくるのではないかと、私はこの重要性を非常に訴えていきたいと思っております。
わくわくするような観光資源、それから、世界に広がる、そして世界が岩手に集まる、そういったわくわくする岩手県を実現していただきたいと思っておりますし、この羽田便の就航をぜひ進めていただきたいと私からもお願いしたいと思います。
次に、子供、子育てに関する包括外部監査について伺います。
先日、2018年に県内で生まれた子供の数が発表になりました。それによると、去年1年間に生まれた子供の数は7、615人と、前の年を一気に560人も下回る結果が出たわけです。また、本県の合計特殊出生率も1.41と全国平均を初めて下回りました。
初めに、今回出生数が一気に560人も減少したことについてどう受けとめ、これはどうしなければならないと考えているか、知事の所感をお伺いします。
〇知事(達増拓也君) 本県の平成30年の出生数が平成29年の8、175人から7、615人に減少し、合計特殊出生率も1.47から1.41に低下したところであり、残念に感じております。
本県の出生数の推移においては、近年、横ばいや減少が小幅だった翌年には、比較的大きく減少する傾向があるということも見られますが、長期的な減少の要因として、子育てや教育に係る経済的な負担や育児に対する心理的、肉体的負担などにより、子供を持つことをちゅうちょしていることや、個人の価値観の変化なども考えられます。
少子化対策、子育て支援は、将来に関する問題であると同時に、今、目の前にある重要な課題であり、いわて県民計画(2019〜2028)の家族・子育て分野において、結婚、家庭、子育てに希望を持てる環境づくりの推進、安全・安心な出産環境の整備、子育て家庭への支援に取り組むこととしているほか、安定的な雇用や労働環境の整備の促進など、さまざまなニーズに対応した施策を盛り込んでいるところであります。
国においては、今年度策定する第2期まち・ひと・しごと創生総合戦略において、人口の自然増が重要であるという観点を重視し、効果的、効率的な地方創生の実現を追求することとしており、県としても、国の施策と連動しながら、オール岩手でいわて県民計画に掲げる取り組みをより一層推進し、社会全体で結婚、妊娠、出産、子育てを支え、県民が安心して子供を産み育てることができる岩手の実現を目指してまいります。
〇2番(千葉絢子君) 今、知事に御答弁いただいた中にもありましたが、私は、この出生数の減少は、経済状況を中心に、子供を育てにくいと思ってしまっている女性や家庭の数が一気にふえているのだと感じております。
県がことし2月に公表した岩手県子どもの生活実態調査において、小学5年と中学2年の子供と保護者、加えて就学援助世帯の抽出調査をしました。就学援助世帯の半分は母子家庭ということが推測されるわけですけれども、その結果、子育て支援策においては、子供の教育のための経済的支援を求める割合が全体で12.4%、就学援助世帯では13.4%であることがわかりました。そのほかにも、高かった項目は、子育ての手当や公的な助成など日ごろの生活のための経済支援、それから、子供の進路や就労について相談できるところといった、いずれも経済的な支援を求める声が多かったことが読み取れました。先ほどの質問でもお示ししたとおり、子育て世代が学生だった20年前と比べまして、少子化に伴って教育費が2倍になっているという事実も大きな原因になっていると思います。つまり、学齢期の子供を持つ世帯の経済負担に対する負担や不安が、子供を産み育てたいという男女の意思決定に少なからず影響していると言えるのではないでしょうか。
県ではこの詳細な分析結果を7月に公表するとしていますので、現在取りまとめの作業をしていると拝察いたしますが、調査結果についてはどのように捉えていますか。また、現時点でどのような施策が必要だと感じているでしょうか。
〇保健福祉部長(野原勝君) 子どもの生活実態調査結果についてでありますが、本年2月に公表した集計調査結果速報値からは、議員御指摘の経済的な支援に加え、低い家賃で住めるところの充実を望む世帯が全体では5.2%であるのに対し就学援助世帯では9.2%となるなど生活の支援に関するニーズも高くなっており、これらのニーズに対応する施策の充実を図っていく必要があると考えております。
また、現在、詳細な分析を進めている中では、収入の低い世帯に占める母子世帯の割合が高い傾向にあることが改めて浮き彫りになったことから、子供の貧困対策を進めていく上で、母子世帯に対する取り組みの一層の充実を図っていくことが必要であると認識しております。
今後、さらに有識者の意見を伺いながら分析を進め、その結果を踏まえ、今年度見直しを行ういわての子どもの貧困対策推進計画及び岩手県ひとり親家庭等自立促進計画に具体的な施策を盛り込んでいく考えであります。
〇2番(千葉絢子君) 加えて、ことし2月に提出された子ども・子育てに関する外部監査の結果報告書を見ますと、いわて子どもプランにおいて、どの事業のどの部分の取り組みが順調か、あるいはどの事業が成果を上げづらい状況かといった全体的な把握ですとか、事業間の連携がうまく機能しているか、また、取り組みのおくれた事業についてどのような工夫が必要かという検討が行われていないとの意見がありました。これを受けて、保健福祉部内では現在どのような分析や議論が行われているでしょうか。
〇保健福祉部長(野原勝君) いわて子どもプランの進捗管理についてでありますが、包括外部監査では、保健福祉部以外の部局を含めた県の施策全般について、子ども・子育て支援の観点で全体的に評価することが新たな取り組みの方向や部局間の連携促進に資するものであると御意見をいただいたものと認識しております。
包括外部監査で示された、プランに関連する施策の全体的な把握や事業間の連携、取り組みがおくれている事業の具体的な対策については、各施策の所管部局において毎年度の政策評価を通じて分析を行い、その対策の検討を行っているところです。
特に、事業間の連携については、いわての子育てにやさしい企業等認証といわて女性活躍認定企業の推進の一体的な取り組みや、放課後児童指導員の資質向上研修と放課後子ども教室の指導者研修の合同実施など、連携をとりながら取り組みを進めているものもあったところでありますが、包括外部監査における意見を踏まえ、より全庁的な視点での進捗状況の把握や評価を行うことができるよう、岩手県子ども・子育て会議において議論し、今年度見直すいわて子どもプランに反映させていくこととしております。
〇2番(千葉絢子君) 子ども・子育て会議の開催時期についても、毎年2月で、その次の年の予算には反映されにくいといった指摘というか意見もありました。外部監査におきましては、いわて子どもプランのコーディネーターとして全体の調整に当たることが望ましいといった意見や、コンサルティング的な役割を市町村に対して県が担っていくことが県全体でのレベルアップにもつながっていくと考えられるとしております。ただでさえ市町村は人手不足のため、県がより具体的な指導や助言をしていくことが今後求められておりますけれども、県の今後の方針をお聞かせください。
〇保健福祉部長(野原勝君) 子育て施策における市町村支援についてでありますが、包括外部監査の意見は、県が広域的かつ専門的な観点から、市町村相互の連携の取り組みなどをより踏み込んで支援すべきとの趣旨であるものと認識しております。
県ではこれまで、待機児童が発生している市町村と意見交換を行い、その解消を図るため、小規模保育事業の実施や、保育士確保に向けた保育士・保育所支援センターの有効活用などを助言してきたほか、市町村の求めに応じまして、複数市町村の共同による病児保育事業の実施など、広域的な連携の取り組みなどについて調整してきたところです。
県といたしましては、改めて今回の包括外部監査の意見の趣旨を踏まえ、今後、市町村がそのニーズや実情に応じて主体的な政策形成に取り組むことができるよう助言を行うなど、市町村への支援の強化に努めてまいります。
〇2番(千葉絢子君) 知事は、今までの施策がうまく機能していけば岩手は子育てがしやすい県だということをわかってもらえると3月の予算特別委員会で御答弁されています。ただ、昨年1年間の出生数、出生率がそういう答えになっていなかったというのは、やはり今までの施策では何かが足りない、もしくは見直すべきところがあるという一つの目安になるのではないかと思っております。施策がうまく機能するために、改善すべきところは改善して出生数の回復につながっていけばいいなと私は思っております。
次に、若者や女性の雇用環境改善に向けた取り組みについてお尋ねします。
県立大学を卒業する学生の県内就職割合は、平成29年度は46%台となり、3年連続で減少しています。昨年11月にジョブカフェいわてがこの春の新採用活動を実施した県内企業161社を対象に行った調査によると、およそ80%の企業が採用予定人数を確保できていないと答えています。さらに、このうちの65%が採用予定数の半数に満たない、また、1名も採用できていない企業は32%を超えておりました。高校生への求人倍率は今や3倍を超えていますが、県内の高校生の就職内定率は過去最高の99%を超えておりまして、もはや県内に就職できていない人材は残っていないと言うこともできると思います。
一方、県立大学の学生の就職率は3年連続で県内は低下しておりまして、46%台。これは、県内の就職、定着の促進を求めていかなくてはいけない事態になっております。
大卒者の県内定着を促すためにはどんな取り組みに力を入れるべきだと県は考えていて、それがうまくいっているかどうか御感想をお聞きしたいと思います。
〇商工労働観光部長(戸舘弘幸君) 大卒者の県内定着促進についてのお尋ねでありますが、平成28年度に実施いたしました岩手県の若年者雇用動向調査によりますと、大学生は高校生に比べ、就職先を決める上で、仕事の内容、職種、自分の技能、能力、専門性が生かせること、自分が成長できる、能力を伸ばすことができることを重視する傾向があります。
このため、企業に対しましては、求める人材像を明確化し、効果的な採用活動方法等を学ぶセミナーの開催等を通じまして採用力の強化を支援しており、さらに、本年度はいわて働き方改革アワードにおきまして人材確保・定着部門を新たに設けるなど、人材確保に向けた先進的な取り組みを促すこととしています。また、学生に対しましては、県内企業を知り、そこで働くことに魅力を感じていただけるよう、大学生が主体となって運営するふるさと発見!大交流会や大学等における企業キャラバンの実施、就職ガイダンスにおける企業のプレゼン、インターンシップの実施などに取り組んでいるところであります。
こうした取り組みに参加した学生からは、岩手にこれほど多くの企業があるとは知らなかった、県内就職も視野に入れて就職を考えたいといった声が多く聞かれ、一定の手応えを感じているところであります。これを県内就職につなげていけるよう、引き続きいわてで働こう推進協議会を核として取り組みを強化してまいります。
〇2番(千葉絢子君) 県内就職、定着を求めていく点で、私は賃金の話をしたいと思います。
県内の平均初任給を見ると、高卒は15万7、000円、大卒は19万5、000円。一方、ジョブカフェいわてでは、ひとり暮らしに最低限かかるお金は、家賃4万円、食費3万5、000円と設定した上で13万8、000円と試算していますが、これには医療費や車の維持費、貯金などは含まれておりません。
私は現在、富士大学で経済学の非常勤講師を務めておりますけれども、私の講義を受けている学生のうち、およそ半数が奨学金を借りて大学に進学していることがわかりました。仮に月5万円の貸与型奨学金を借りているといたしますと、4年間で240万円借りることになります。月々2万円を返済したとしても10年、月々1万円となると20年、返済にかかります。奨学金を借りている学生の割合が高くなっていることを考えると、大卒者は、より条件のいい企業を求めて、都市部の体力のある企業への就職を求めてしまうということも仕方がないことではないかと思っております。
子どもの生活実態調査でも、子育て世代の一番の悩みは経済的な問題だということがわかっています。企業の人事担当者へのヒアリングによると、給与面や採用の仕方について経営者にちょっと今それは時代おくれですよというような進言ができずに孤軍奮闘している状況を耳にすると、これはジョブカフェいわての方がお話しになっていました。また、子供を養い、生きていくために必要な額と、県内企業の賃金水準にもしかしたら隔たりがあるのかもしれないというふうに考えることはできないでしょうか。
大学生の県内就職を促進する上で何が一番の障壁になっているのか、また、人事担当者がどんなところで困っているのか丁寧に聞き取りをする必要があると思いますが、いかがでしょうか。
〇商工労働観光部長(戸舘弘幸君) 先ほど御紹介申し上げました平成28年度に実施した若年者雇用動向調査の結果では、例えば、大学生が就職先を決める上で重視することについては先ほど御答弁申し上げたとおりでありますが、4年制大学卒業者の企業をやめた理由では、仕事上のストレスが最も多く、次いで、労働時間、休日、休暇条件がよくなかった、人間関係がよくなかったという回答が多くなっています。
また、大学の就職担当者や企業の採用担当者からは、会議やセミナー、ヒアリング等の機会を通じて課題の把握に努めているところであります。大学側からは、県内企業を知らないため、大手就職サイトの情報で県外企業に流れていく、学生の専門知識や能力を生かし育成しようという思いが企業から伝わってこない、企業側からは、大学生の目線に立った具体的な採用活動の進め方がわからない、採用活動における求める人材像の明確化ができていないなどの課題が挙げられているところであります。
本年度、改めて若年者雇用動向調査を実施いたしますほか、就職活動を終えた学生を交えて企業の採用戦略の構築を支援する勉強会を新たに開催することとしておりまして、学生、企業双方の課題を今後、丁寧に把握してまいりたいと存じます。
〇2番(千葉絢子君) 子育て世代になると経済的な問題が一番のネックになるのです。それは、やはり賃金水準がもしかすると生活していくのに足りないのかもしれないというような傾向というか疑問もちょっと念頭に置いてヒアリングをしていただきたいと思います。でなければ就職したい人と採用したい人のニーズはマッチングしないままになってしまいますので、やはりここは詳細な分析、それから聞き取りが必要かと思っております。
次に、去年、環境生活部に採用された女性活躍推進員について伺います。
活動開始からちょうど1年がたちましたが、面談した結果、女性の活躍が進んでいなかった原因や、面談によって明らかになってきた課題などについてはどのように把握していらっしゃるでしょうか。
〇環境生活部長(大友宏司君) 女性活躍推進員の活動の成果についてでありますが、昨年5月に配置したいわて女性活躍推進員は、ことし5月末までに県内の企業等約380社を訪問し、企業経営者等の方々にいわて女性活躍企業等認定制度の活用等を直接働きかけてきております。
当初は、経営者の中には、義務ではないので取り組むつもりはない、必要性を感じないといった意見もあったところであり、企業等のトップや管理職の意識啓発、認定制度等のさらなる周知が課題であると認識したところです。
最近では、制度についての理解が進み、業界としての取り組みも見られるようになっており、認定企業数が5月末現在で82社となるなど着実に伸びてきていることから、引き続き県内企業等へのさらなる制度の普及に努め、女性が活躍しやすい環境づくりを支援してまいります。
〇2番(千葉絢子君) 女性の就業支援について伺います。
私は、これまでも子育て支援と雇用の問題はセットで考えるべきと訴えてまいりました。県では、女性の就業支援については、離職者等を対象にした職業訓練における女性の受講者数などを具体的な推進方策指標として、政策はおおむね順調と評価し続けてきました。
ここで本県の賃金水準を見ていきますと、全国39番目の低さです。さらに、男女間の給与格差は13万4、000円と、前の年より拡大していることがわかりました。さらに、子どもの生活実態調査を見ると、就学援助世帯の年収は150万円から250万円が最も多く、150万円に満たない世帯も27%を超えています。就学援助を受けている世帯の半分は先ほど申し上げたように母子家庭と推測されるというふうに数字にも出ているわけですけれども、生活向上のための資格取得や教育の機会のニーズは1.8%でした。つまり、母子家庭などが望んでいるのは、返せる見込みのない福祉資金の貸し付けや職業訓練でもなく、単に賃金の向上、労働条件の改善なのです。高校生の求人倍率は3倍。人手が不足している一方で、子供を育てている県民の、特に就学援助世帯は貧困にあえいでいる。おかしいと思いませんか。
この春採用を予定していた80%の企業が採用予定人数を確保できていないと答えているのに、県の未来を担っている子育て世代の母子家庭は、就職以来の非正規雇用で低賃金にあえいでいるわけです。この矛盾をどうにかするのが行政がやるべき女性の就労支援ではありませんか。知事はどのようお考えでしょうか。
〇知事(達増拓也君) 子育て世代の女性の就労を促進するには、仕事と生活が両立する環境の整備が重要であり、経済団体や労働団体等のオール岩手の体制であるいわてで働こう推進協議会において、働き方改革や処遇改善の推進に特に注力して取り組んでおります。その中で、女性に多い非正規社員の正社員転換や処遇改善については、岩手労働局などと連携し、県内経済団体に対し継続的に要請しているところです。
国では、非正規社員を正社員に転換する場合や有期契約労働者の賃金の増額を行う場合等に事業主に対して助成金による支援を行っておりまして、県内企業による活用件数も近年大幅に増加するなど、処遇改善も進んできております。
また、昨年度、県が実施した企業・事業所行動調査において、正社員の雇用割合をふやしている企業、事業所は59.7%と、平成28年の前回調査と比較して5.7ポイント増加するなど、県内企業における正社員化も進んでいるところであり、引き続き女性の正社員化や処遇の改善を促進してまいります。
〇2番(千葉絢子君) この数字にあらわれているのは明確な男女差別であり、それから賃金、待遇の格差なのです。セミナーに何人、認定企業が何件という数値目標では到底達成できないのです。語れないのです。男性と女性の給与格差、新卒と中途の採用の壁の解消が求められています。それが普及啓発をする上で一番訴えなければいけないことだと私は思っておりますし、これが達成されないと、若い女性を中心にした県外流出はとまりません。企業の人材不足も解消されないと私は申し上げておきます。どうかこの点を真剣に取り組んでいただきたい。そして、未来、将来、私たち、それから皆さんの娘たちが就職できる、生活していける岩手県をつくっていただきたいと切に願っております。
最後に、今後の地域医療のあり方について伺います。
人口減少が確定している未来においては、岩手の人口は20年後の2040年にうまくいって100万人程度、下手すれば70万人台に落ち込んでしまいます。この人口減少と医師偏在の中で、これからの地域医療をどうしていくのか県の考え方をお聞かせください。
〇保健福祉部長(野原勝君) 今後の地域医療についてでありますが、岩手県保健医療計画においては、将来の人口減少を見据えつつも、本県は広大な面積を有し、地理的に峠や山地で隔てられた地域が多く移動に時間を要することなどから、一般の医療需要のほか、脳卒中や急性心筋梗塞など発症初期において速やかに治療する必要がある疾病については、それぞれの圏域で対応する体制の整備を図ることとしております。
また、高齢化の進展により、慢性疾患や複数の疾病を抱える老齢期の患者が増加すると見込まれることから、県内九つの圏域に設置した地域医療構想調整会議において、医療、介護関係者などと協議をしながら、医療、介護需要や疾病構造の変化に対応した効率的で質の高い医療提供体制の構築に向けて取り組んでいるところです。
地域医療を担う医師の不足と偏在については、奨学金制度で養成した医師の特定診療科における配置特例や、沿岸地域での義務履行の必須化など計画的に配置を行うことにより、今後、段階的に解消に向かう見込みであり、将来のあるべき医療提供体制の構築と医師偏在対策が整合的に行われるよう取り組んでいく考えであります。
〇2番(千葉絢子君) 先日、岩手県医師会の小原会長が、日本医師会の代議員会において、医師の不足が顕著な区域においては医学部定員数を減らさず、地域枠も存続してもらうようにと協力を求めましたが、足りない医師をどうしていくのか、地域格差をどう埋めていくか我々も議論しなくてはいけないと思っております。
かつて県立病院網が発足するに当たり、昭和24年、県議会の県政調査会の中に特別に小委員会を設置して議論した経緯があると伺いました。県全体での地域医療のあり方研究会を立ち上げ、我々議員も参加して、一度全県の状況をつぶさに見て回った上で、今後の地域医療のあり方について全県での住民を交えた議論を始めてはいかがかと思いますが、最後に知事のお考えを伺いたいと思います。
〇知事(達増拓也君) 県全体の医療のあり方については、岩手県医療審議会において、岩手県保健医療計画の策定等に当たって、医療関係者、学識経験者や住民団体代表者等により議論いただいているところでありまして、特に地域医療のあり方については、岩手県地域医療対策協議会において、全県的な医師不足や地域偏在が解消されるよう、具体的な医師確保対策等について協議しているところであります。
さらに、各圏域において、地域医療構想調整会議において、医療、介護関係者や市町村等に加えて、地域住民団体の参画を得て、将来の人口見通しや医療資源の状況など地域の実情を踏まえながら、各医療機関が担うべき機能などについて協議を行っているところであります。
今後ともこうした場の議論を続けていくとともに、その取り組みや協議の内容について、県議会へのきめ細かな情報提供にも努めながら、今後の地域医療のあり方について県全体での議論を深めてまいりたいと思います。
〇2番(千葉絢子君) 以上、8項目にわたり、これまで4年間の議論を踏まえた県の考えを伺ってまいりました。皆さんが県民とともに歩もうとする、チャレンジする気持ちを持ち続けて、自分のこととしてこの地域課題に取り組んでくださること、岩手県職員憲章を胸にお仕事に精を出してくださるよう切に願いまして私の任期最後の一般質問を終わりたいと思います。どうもありがとうございました。(拍手)
〇議長(佐々木順一君) この際、暫時休憩いたします。
午後2時30分 休 憩
出席議員(45名)
1  番 千 田 美津子 君
2  番 千 葉 絢 子 君
3  番 ハクセル美穂子 君
4  番 菅野 ひろのり 君
5  番 柳 村   一 君
6  番 阿 部 盛 重 君
7  番 佐 藤 ケイ子 君
8  番 佐々木 宣 和 君
9  番 臼 澤   勉 君
10  番 川 村 伸 浩 君
11  番 田 村 勝 則 君
12  番 工 藤   誠 君
13  番 高 田 一 郎 君
14  番 吉 田 敬 子 君
15  番 佐々木   努 君
16  番 千 葉   進 君
17  番 佐々木 朋 和 君
18  番 名須川   晋 君
19  番 軽 石 義 則 君
20  番 神 崎 浩 之 君
21  番 城内 よしひこ 君
22  番 佐々木 茂 光 君
23  番 高 橋 孝 眞 君
25  番 木 村 幸 弘 君
26  番 小 西 和 子 君
27  番 工 藤 勝 博 君
28  番 高 橋 但 馬 君
29  番 小 野   共 君
30  番 郷右近   浩 君
31  番 高 橋   元 君
32  番 関 根 敏 伸 君
33  番 岩 崎 友 一 君
34  番 中 平   均 君
35  番 五日市   王 君
38  番 斉 藤   信 君
39  番 小野寺   好 君
40  番 飯 澤   匡 君
41  番 佐々木 順 一 君
42  番 田 村   誠 君
43  番 伊 藤 勢 至 君
44  番 工 藤 勝 子 君
45  番 柳 村 岩 見 君
46  番 千 葉   伝 君
47  番 工 藤 大 輔 君
48  番 樋 下 正 信 君
欠席議員(なし)
説明のため出席した者
休憩前に同じ
職務のため議場に出席した事務局職員
休憩前に同じ
午後2時48分再開
〇議長(佐々木順一君) 休憩前に引き続き会議を開きます。
日程第1、一般質問を継続いたします。関根敏伸君。
〔32番関根敏伸君登壇〕(拍手)

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