平成30年9月定例会 第14回岩手県議会定例会会議録

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〇22番(福井せいじ君) 自由民主クラブの福井せいじです。
質問に入る前に、西日本豪雨、平成30年台風第21号、そして、北海道胆振東部地震被災者の皆様へ、心からお見舞いを申し上げます。
同僚議員、そしてまた、先輩議員の御理解を得て質問に入りたいと思います。
まず初めに、岩手県次期総合計画の策定についてお聞きします。
初めに、人口減少対策の反映についてお聞きします。
過日、2019年度から2028年度までの10年間の岩手県次期総合計画中間案が発表されました。皆様御存じのとおり、現在、日本は人口減少時代に突入し、社会の大きな転換期にあります。2016年の年間出生数は97万6、979人となり、100万人の大台を割りました。
国立社会保障・人口問題研究所による平成29年日本の将来推計人口によると、今後も出生数減少の流れはとまりそうにもなく、2065年には55万7、000人、2115年には31万8、000人にまで減少すると予測されています。そして、2008年に1億2、800万人をピークとして減少局面に突入した日本の人口は、現状の出生率のまま推移すると、2065年には8、808万人、2115年には5、056万人になります。日本のように急激に人口が減少する状況は世界史において例がないことであり、日本は極めて特異な時代に突入しています。
このような時代にあって、私たちは、現在ではなく、もしかしたら既に存在していないかもしれない私たちの地域の将来の暮らしのあり方を、豊かで希望が持てる地域であり続ける仕組みをつくることが使命であると私は考えます。
そのような観点から、まず、人口ボリュームの大きい団塊世代が75歳以上となる2025年問題に正面から向き合う岩手県次期総合計画は、非常に重要な計画になると考えます。
〔副議長退席、議長着席〕
改めて日本が直面する人口減少問題の課題を整理すると、1、出生数の減少、2、高齢者の激増、3、生産年齢人口の不足であります。
このような課題に対する対策を含めた次期総合計画の策定が重要であると考えますが、次期総合計画にはどのような形で反映されているのか、知事の考えをお聞かせください。
続きまして、人口減少社会における施策についてお伺いします。
岩手県は、人口減少対策として岩手県ふるさと振興総合戦略を策定して、その施策推進目標として、2020年社会減ゼロの達成、2019年合計特殊出生率1.45、2019年県民所得の国民所得比93.4以上として、10のプロジェクトに基づいたさまざまな施策を展開し、2040年には人口103.9万人を維持しようと計画されております。
そこで伺いますが、2019年8月の速報の推計値で岩手県の人口は約124万2、000人でありますが、2040年の人口規模は現在の約83%となります。
このような推計値に基づいて2040年の岩手県の姿を考えると、歳入も現在の約83%となるのか、また、歳出も同様に約83%になるのか、人口が約20%減少する状況で社会インフラの整備はどのようなものかなど、具体的にさまざまな要素の変化を想定し今後の施策を展開する必要があると考えますが、岩手県はどのように取り組んでおられるか、知事に伺います。
続きまして、市町村との連携について伺います。
人口減少という大きな、そして静かな有事に立ち向かい、このような課題を効果的に解決していくためには、住民に身近な都道府県や市町村が、地域の実情に応じた取り組みをより主体的に展開できる仕組みとすることが必要であると、次期総合計画には書かれております。私は、このような転換期に当たり、県は、市町村とより緊密な連携を図り、課題解決の意識を共有することが欠かすことができないと考えます。
次期総合計画策定に当たり、市町村との連携のあり方はどのようにされているのか、また、地域の実情に応じた取り組みをより主体的に展開できる仕組みとはどのような仕組みであるか、知事に伺います。
続きまして、幸福について伺います。
今回の次期総合計画では、幸福度に着目し、幸福をキーワードとした計画策定に取り組んでおられますが、経済成長とともに物質的豊かさを実現した日本が転換期を迎えた今、新たな価値観を含む幸福について考えることは重要であると私は思います。
次期総合計画には、経済的尺度でははかることができない心の豊かさや、地域や人とのつながりなどを大切にし、一人ひとりの幸福度を高める社会づくりを進めていく必要があると書かれており、それに挑戦することは大いに意義のあることだと私は考えます。
そこで伺いますが、一人一人の幸福度を高めるということは、一人一人が持つさまざまな欲求を満たすことが必要であると考えます。しかし、行政施策は、そこに住まう住民の最大公約数で策定され、住民から預かった限られた財源を使い推進されるべきだと私は考えます。
一人一人の幸福実現と最大公約の行政施策は必ずしも一致しなくなると私は思いますが、この点に関し知事はどのように考えておられるか、お聞かせください。
以降の質問につきましては質問席で行います。
〔22番福井せいじ君質問席に移動〕
〔知事達増拓也君登壇〕
〇知事(達増拓也君) 福井せいじ議員の御質問にお答え申し上げます。
まず、次期総合計画への人口減少対策の反映状況についてでありますが、本県の今後10年のビジョンを描いていく上で、人口減少は重要な課題でありますことから、今般公表した長期ビジョン中間案におきましては、平成27年度に策定した人口ビジョンを踏まえ、岩手の変化と展望の中で、2040年に100万人程度の人口を確保するとの展望を示したところであります。
また、幸福を守り育てるための10の政策分野を設定したところでありますが、その中で、人口減少対策を総合的に推進していく考えであります。
具体的には、結婚、家庭、子育てに希望を持てる環境づくりに向けた取り組みのほか、生活習慣の改善による健康づくりや、さまざまな福祉課題を総合的に支援する体制づくり、また、将来を担う若者などの地元定着の一層の促進やIoT、AIを活用した県内企業の生産性や付加価値の向上、さらには、若者や女性、高齢者が活躍できる仕組みづくりなどの取り組みを進めてまいります。
次期総合計画の基本目標に掲げるお互いに幸福を守り育てる希望郷いわての実現に向け、生きにくさを生きやすさに転換し、岩手県の魅力を高めていくための取り組みを展開することにより、岩手県への新たな人の流れを創出し、人口減少等の課題解決を図ってまいります。
次に、人口減少社会における施策についてでありますが、人口減少は、県の経済規模の縮小に伴う税収の落ち込みによる行財政への影響のほか、社会インフラについて、住民1人当たりの行政コストの増加に伴い、より効率的な維持管理が必要となるなど、地域の社会システムの維持、存続に大きな影響を及ぼすものであります。
このため、次期総合計画の長期ビジョンでは、行政経営の方向性として、限られた財源の重点的かつ効果的な活用を図るなど、持続可能な財政構造の構築を目指すこととしています。
また、社会インフラについては、産業や交流を支える基盤としての整備の方向性を引き続き掲げるとともに、老朽化が進む施設の計画的な修繕を行う予防保全型維持管理や県民との協働による維持管理など、良好に管理し次世代に引き継ぐ方向性を盛り込んでいるところであります。
これらの具体的な取り組みについては、アクションプランにおいて、現状と課題をさらに分析した上で、内容や工程表を明らかにすることとしています。
次に、市町村との連携についてでありますが、今後、県民一人一人が互いに支え合いながら幸福を追求していくことができる地域社会を実現していくためには、地域社会を構成するあらゆる主体が、それぞれ主体性を持って、ともに支え合いながら、みんなで行動していくことが大切であると考えております。
そのためには、特に、行政の役割を担う県と市町村の連携が重要になりますことから、次期総合計画の策定に当たりましては、パブリックコメントや地域説明会に加え、知事と市町村長との意見交換会などを開催し、市町村の意見も踏まえながら、中間案に反映させるとともに、10の政策分野の取り組み方向の中で、市町村を初めとした多様な主体に期待される取り組みを新たに盛り込み、さらに市町村を含めて広く意見を伺っていくものであります。
また、今後、東京一極集中の是正や個性豊かな地域社会の形成、少子高齢化社会への対応などの取り組みを進めていくためには、より地方の人々の暮らしや仕事を起点とする政策の推進を可能とする国から地方への権限移譲や、税財源の確保、充実などをさらに進めることが重要と考えております。
このため、東日本大震災津波からの復興のプロセスにおきまして、国の制度では補い切れない支援策の創設や新たな仕組みによる土地収用手続の迅速化など、地域の実情に応じた取り組みをより主体的に展開できる仕組みをつくってきたところであり、今後、こうした経験を生かして、地方が主体となる取り組みを推進していくとともに、さらなる地方分権を国に働きかけてまいります。
次に、幸福についてでありますが、幸福の捉え方や重視する視点は一人一人異なるものでありますことから、岩手の幸福に関する指標研究会の報告書では、主観的幸福感に関連する領域として、健康や仕事、コミュニティーなど12の領域が提言されています。
これらを踏まえ、次期総合計画では、一人一人の幸福度を高める社会づくりに向け、基本目標に、お互いに幸福を守り育てることを掲げ、これを実現するための政策の体系として10の政策分野を設定したところであり、これらの分野により、一人一人の多様な幸福に対応できると考えております。
また、政策の推進に当たりましては、県民がどの程度幸福を実感しているかといった状況を県民意識調査で詳細に把握しながら、政策プランにおいて、10の政策分野それぞれに幸福に関する客観的な指標を掲げ、政策の効果を捉えていくこととしております。
このような総合的な評価とこれを踏まえた施策を進めていくことにより、個人として、また社会として、お互いに幸福を守り育てる岩手の実現につながると考えます。
〇22番(福井せいじ君) まず初めに、人口減少対策の反映についてお聞きしますが、例えば子育て支援における出生率の向上とか、あるいは高齢者が元気で、いつまでも生き生き働いていただくようなさまざまな高齢者に対する支援等が盛り込まれている政策が書かれていますけれども、私は、これらの政策だけでは、なかなか人口減少の対策にはなり得ないと思っております。
例えば、団塊の世代が後期高齢者に入る2025年あるいは団塊ジュニアが高齢者になっていく2040年、この時代を捉えますと、この出生率の向上あるいは社会減の低下だけでは、なかなかこの人口減少に対する社会インフラの整備とか、あるいは今後の介護費用の捻出等はなし得ないのではないかと考えております。
そこで、私はもっともっと構造的な改革等も必要になってくるのではないかと思うのでありますが、そういった骨太の社会の構造全体を変えるようなお考え、政策というものは、知事は何かお考えにならないでしょうか。
〇知事(達増拓也君) 出生率の向上と社会増だけでは足りないということですけれども、まず、人口の増減に関しては自然増減と社会増減の二つしかないわけでありまして、まず、そこに対する政策が、この人口対策としてはあると考えているわけであります。
今のお話の中で財源が足りなくなるというような御趣旨のこと、つまり、これは日本全体の人口ビジョンにおいても、当面人口が減り続けることについては避けられないということで、今いる1人当たりが生産する富といいますか価値といいますか、それが一定であり、また、そこから税金、社会保障など公的に出すお金の割合が一定と仮定すれば、人口が減る割合に応じて、公的な収入、国や地方自治体の収入も減るということになるのでありましょうけれども、一つは、財政収入が減ったとしても、サービスの水準をできるだけ落とさないで済むような工夫をしていく流れがあると考えます。
また、1人当たりの生産する富や価値の量をふやす、つまり1人当たりの生産性を向上させることで、人口は少なくなっていくけれども、その少なくなっていく一人一人が、より多くの貢献を社会、地方や国に対してなし得るようにしていくことは、目指さなければならないと考えております。先ほどは、IoT、AIを活用した県内企業の生産性や付加価値の向上というような例を挙げたのですけれども、そういう意味での構造改革は必要と考えます。
〇22番(福井せいじ君) 私の質問の仕方が回りくどかったような気がするのですけれども、今のままの施策では、私は人口減少のスピードに間に合わないのではないかと考えているのですね。そういったところを知事はどう考えているのかお聞きしたいのですけれども、いかがでしょうか。
〇知事(達増拓也君) この人口減少の要因を今目の前にある危機的状況あるいは生きづらさ、なかなか就職できないとか、就職しても収入が少なくて結婚できない、家庭を持つことができないとか、また、結婚して、出産しても子育てが難しいとかといった課題について、できるだけ今すぐ解決していくような基本的アプローチをとることで人口の減少に歯どめをかけていく、できるだけおくらせていくという施策の展開が可能になるかと考えます。
〇22番(福井せいじ君) 今おっしゃったおくらせるということが、私も大切だと思います。今のスピードで行くと、先ほどちょっとお話ししましたが、2040年には団塊ジュニアの世代が高齢になりまして、もしかしたら、その社会福祉財源の破綻が考えられる。そういった意味では、なるべく今、知事がおっしゃったように、生産性を高めるであるとか、あるいはさまざまな施策、子育て支援、出生率を改善していくとか、少しずつ小さな取り組みでも実効を上げることによって、そのスピードが遅くなると。これは、一つ非常に大事なことだと私も思います。
そういった意味で、そういった施策を実効性のある施策に持っていくことが必要であると私は考えるのですけれども、そこで一つちょっとお聞きしたいのですが、先ほどの人口減少の対策として私が聞き及んでいるところによりますと、総合計画という上位計画があって、その下にふるさと振興総合戦略がありますが、ここに三つの施策推進目標が掲げられております。
一つは、岩手で働くというところでは、社会増減が平成32年はゼロ、そしてまた、岩手で育てるということで、合計特殊出生率が1.45、これは平成31年、そしてまた、岩手で暮らすというところでは、国民所得に対する県民所得の水準の乖離縮小で93.4が平成31年ということですけれども、この施策に対して10のプロジェクトがあるということで、ここでその10のプロジェクトに対するKPIの達成状況を確認されております。このKPIの達成状況を見ると、ほとんどがAかBであるということが成果の達成度としてまとめられております。
ところが、施策目標の岩手で働くの社会増減については、全くもって及んでいないところでありますが、KPIの達成状況がよい、A、Bの評価が7割から8割ある。9割近いものもありますけれども。そうなると、私はその10のプロジェクトを推進する施策が、目標にアプローチする方法がずれているのではないかと思うのですけれども、いかがでしょうか。このKPIの評価と、それから、三つの施策推進目標の達成状況のギャップを知事はどう捉えておりますか。
〇知事(達増拓也君) 岩手で働く、岩手で育てる、岩手で暮らす、それぞれの目標については、まち・ひと・しごと創生法に基づき、国でも定めているビジョンや総合戦略と軌を一にするような形で定められており、東京への人口集中が1年10万人ぐらいの流入だったのが5年間でゼロになる。ただ、それはむしろ12万人ぐらいにふえているのが現状なわけでありますし、また、日本全体として出生率も、出産を希望する人たちの希望に沿うような出生率にまで上がるのと対応しているわけですけれども、日本全体がそうなっていないことの影響がまずあるかとは思います。
他方、日本全体として東京一極集中がさらに悪化し、また、出生率が思うように伸びない中にあっても、岩手としては、やはり社会減の減少と出生率の向上を目指していかなければならないと考えております。
他方、今KPIの対象となっている事柄について、達成度がA、Bということによって、これは岩手県内各市町村、全体で言えば-岩手県全体ということですけれども、より働きやすく、より子育てしやすく、より暮らしやすくはなってきていると考えます。
それだけでは足りないということであれば、何かほかにさらなる手をということで、県と市町村が一緒に策を講じていかなければならないと思います。
それは、次期総合計画の中間案の中では10の政策分野の中にも入っているプロジェクトですね。ILCでありますとか、北上川バレープロジェクトでありますとかといったプロジェクトの中には、特に今までやったことのないような施策が盛り込まれておりますので、それによる人口減少への歯どめが、より効果を発揮することを期待したいと思います。
〇22番(福井せいじ君) これまでやったことのないプロジェクトというのは、非常に夢のあることでありますし未知のプロジェクトである。それがどのような効果を生むかは、本当にILCみたいなビッグプロジェクトであれば、すばらしいインパクトがあるので、さまざまな意味で好転する要素があると思うのですけれども、先ほど知事がおっしゃった市町村との連携ですが、これは、私はこの7月、8月に県内の全市町村を回ってまいりました。やはり市町村も非常に人口減少に対する危機感を持っています。
そういった意味では、県と各市町村が本当に膝詰め談判をしながら、この人口減少対策について、ここの計画の中にも書かれていますけれども、ある意味、地域ごとの人口減少対策を県と一緒になって推進していくことが、私は大事ではないかと思います。
ビッグプロジェクトもいいのですけれども、もう一度、一つ一つ掘り下げていけば、地に足のついた人口減少対策はあるし、それが実効ある政策に、そしてまた効果に、成果に結びつくと思うのですね。
そういった意味で、私は知事に、知事だけではなく、ある意味、執行部の皆さんに、もっともっと市町村に出かけていって、人口減少対策、そして、この総合計画が市町村と一緒につくられるものであってほしいと私は思うのでありますが、この市町村との連携について、もう一度知事のお考えを伺いたいと思います。
〇知事(達増拓也君) ことし初めに行いました県と市町村の意見交換会、県は知事を初め部局長、そして市町村からは市町村長の皆さんに出ていただいて、そこで、やはり人口減少問題をテーマにし、そして、並行して、今、市町村においては副市長を初め事務方の皆さんと県の事務方とで、頻繁にこの人口減少対策についても調整するような形としております。
そういう中で、公共で企業関係の説明会をする場において、市町村も主体としてテーブルを出して、市町村へのU・Iターンの説明を企業の説明とともにしてもらう場を県でも工夫したりとか、そういうきめ細かい連携をするようにしているところでありますが、結果として、まだまだ人口減少に歯どめをかけていかなければならないような状況ですので、さらに頑張っていきたいと思います。
〇22番(福井せいじ君) 先ほど言った新しいプロジェクト、ビッグプロジェクトも一つ列挙して、リストアップしていただきたいですし、ある意味、今、知事がおっしゃったとおり、一つ一つの市町村における人口減少対策、そしてまた、今回の次期総合計画における市町村との連携プロジェクトも、一つずつつくっても、私は、これは人口減少対策として、そしてまた次期総合計画の推進に当たっては、非常に重要なことであると思います。
そういった意味で、市町村との連携、一つ一つ何か共有するプロジェクトも持っていっていただければありがたいと私は思いますので、これは要望して、終わりたいと思います。
続きまして、少子高齢化対策の子育て支援についてお聞きします。
子供医療費助成の取り組みについてです。これまで何度も質問してきましたが、今回も改めて子供の医療費助成について伺います。
現在、県が行っている医療費助成制度は、未就学児の入院、通院と小学生の入院に係る医療費を対象に、市町村が助成を行った場合、一定の所得制限や受給者負担金を前提とした基準の範囲で2分の1を補助するもので、受給者に対する給付は、未就学児は現物給付、小学生は償還払い方式としています。
県の助成対象を小学生の入院までとしていることもあり、県内全ての市町村において、小学生が通院を含めて助成対象とされている一方で、助成対象を小学生までとしている市町村が3、中学生までとしている市町村が13、高校生まで拡大している市町村が17となっているなど、取り扱いに大きな差が生じています。
これまで何度も何度も要望してまいりましたが、少子化社会にあって、全国どこの市町村でも、子供の医療費負担の心配をせずに子育てができる環境をつくることが、出生率向上につながると考えます。
そこで、改めて、岩手県当局にあっても、高校生までの子供の医療費助成を実施していただきたいと考えます。中学生まで拡大した場合、県費増加分は3億5、000万円程度、高校生まで拡大した場合は4億5、000万円程度の負担増加になると試算されています。現在の補助対象を一足飛びに高校生まで補助対象者を広げることはできないと思いますが、徐々にその対象範囲を広げていただきたいと考えますが、知事のお考えをお聞かせください。
〇知事(達増拓也君) 県では、人口減少対策としての総合的な子育て支援施策の一環として、厳しい財政状況にはありますが、平成27年8月から助成対象を小学生の入院まで拡大し、平成28年8月から未就学児と妊産婦を対象とした現物給付を実施しております。
総合的な子育て支援は岩手県ふるさと振興総合戦略を展開していく上で重要な施策でありますが、子供の医療費助成は、本来、自治体の財政力の差などによらず、全国どこの地域においても同等な水準で行われるべきあり、これまで、国に対して、県の政府予算提言、要望や全国知事会要望などにおいて、全国一律の制度を創設するよう要望してまいりました。
県の助成対象を中学生や高校生まで拡充していく場合、多額の財源の確保が必要となりますが、本県では、県立病院等事業会計負担金が多額になっているという事情もありますことから、今後、国の動向を注視ながら、県の医療、福祉政策全体の中で総合的に検討する必要があると考えております。
〇22番(福井せいじ君) 先ほど、田村誠議員の質問にもあったのですが、もう一度伺います。
現在、未就学児までとなっている現物給付について、昨年の9月定例会において小学生まで拡大することを求める請願が採択され、その後、2月定例会の私の質問に対して、知事は、請願の趣旨を踏まえて市町村と調整したいと考えている旨、答弁されています。
先ほど、田村誠議員の質問に対する答弁で、子供の医療費助成の対象拡大をするというような答弁を伺ったのでありますが、これまでどのように調整され、また、今後どのように取り組んでいくのか、ここで再度御確認したいと思いますが、いかがでしょうか。
〇知事(達増拓也君) 県では、昨年の9月定例会において小学生までの拡大を求める請願が採択されたことを重く受けとめ、これまで、市町村との協議の場を設け、実施に向けた意見交換を行いながら、課題の把握や必要な調整を進めてまいりました。
現物給付の対象拡大に当たっては、新たに国民健康保険の国庫負担金等に減額調整措置が発生することや、医療給付費の増加が懸念されることなどから、拡大に慎重な意見もありましたが、最終的には、県内全ての市町村から賛成の意向が示されたことから、今般、県内統一して小学生までの現物給付の拡大を行うこととしたところであります。
今後は、県、市町村それぞれにおいて具体的な取り組みを推進していくこととなりますが、取り組みに要する期間や受給者等への周知期間などを考慮し、来年度の受給者証の更新時期に合わせた2019年8月の実施に向けて取り組みを進めたいと考えております。
〇22番(福井せいじ君) 一歩前進したという形だと思いますが、ちょっと確認したいのですけれども、今まで、小学生までの医療費助成は入院のみの助成対象だったと思うのですけれども、これを入院の現物給付とするということでしょうか、それとも通院まで含めた形での助成対象とするのかということを確認したいのが1点。
それと、先ほど来、人口減少問題、東京一極集中というものを知事は答弁されていましたが、実は東京都は中学生までの医療費助成を行っています。そういった意味で、ある意味、地方との格差はここにもあらわれています。そういった意味では、岩手県も頑張って中学生まで入院、通院の医療費助成を行っていただきたいですし、また、東京一極集中という観点からも、こういった格差をなくしてほしいということをもっと強く訴えていただきたいと思いますが、いかがでしょうか。
〇知事(達増拓也君) 前段のことについては担当部長から答弁させたいと思いますけれども、まさに東京のような人口も多く、そして経済力があって財政収入も多いところと一般の市町村が競争しますと、これはなかなか東京一極集中を是正することは難しいということもありますので、やはり全国一律な制度を国に求めるということが大事になるかと思います。
全国知事会でも、そうした状況について確認を新たにしながら、強く要望を進めるところでありますし、県からもそのようにしていきたいと考えます。
〇保健福祉部長(八重樫幸治君) 子供の医療費助成の関係でございますけれども、市町村が行う子供の医療費助成について、県では、その2分の1を市町村に対して助成しています。それは、小学生については通院(後刻「入院」と訂正)のみでありまして、入院(後刻「通院」と訂正)については助成はしていないわけですけれども、今度行う現物給付は、医療機関に行って、窓口で-申しわけありません。助成は入院のみ行って、通院はしておりませんけれども、今度の現物給付は、小学生の方が医療機関に行ったときに、通院であろうが、入院であろうが、全て現物給付とするものでございます。
〇22番(福井せいじ君) そうすると、小学生まで通院も入院も県が助成し……、確認してください。
〇保健福祉部長(八重樫幸治君) 助成については、これまでと同じように入院のみの助成でございます。通院まで拡大するものではありません。
現物給付については、小学生の全て、入院も通院も含めて、償還払いではなくて現物給付にするものでございます。
〇22番(福井せいじ君) 再度確認ですけれども、そうすると、市町村が行っている分に関しては、市町村が通院の医療費について補助を行っている場合は現物給付になると考えてよろしいですか。そういう説明ですか。通院も入院も現物給付という意味がわからない。
〇保健福祉部長(八重樫幸治君) 医療費助成というのは、つまりそれが自己負担がある場合もありますけれども、それを無料化するというものでありまして、現物給付というのは、その払ったものに対して、後ほど償還払いをするか、窓口では現金が要らないかというところでありますので、今回の、来年8月からの改正では、入院にしても、通院にしても現物給付ですから、窓口でのその支払いは必要なくなるということでございます。
〇22番(福井せいじ君) 非常にありがたい措置だなと思っております。また、改めて聞きたいと思います。
続きまして、放課後児童クラブについてお聞きします。
子育て支援の推進により保育所待機児童対策の充実が図られてきておりますが、保育所を利用する共働き家庭などにおいては、小学校就学後の子供の放課後の安全・安心な居場所確保に直面します。
さらに、次代を担う人材育成の観点からは、共働き家庭等の児童に限らず、全ての児童が放課後等における多様な体験活動を行うことができるようにすることが重要であり、全ての児童を対象として総合的な放課後対策を講じる必要があると考えます。
国では、2014年に放課後子ども総合プランを策定し、2018年度末までに放課後児童クラブを約30万人分新たに整備することを目指すとしております。ことしの速報値では、利用を希望したが入所できなかった児童数は12人で、受け皿の確保は推進されていると感じますが、放課後児童支援員は基準どおり確保されているのか、放課後児童支援員の処遇について、その報酬はどのような基準で定められ、実態はどうなっているのかを伺います。
〇保健福祉部長(八重樫幸治君) 放課後児童支援員についてでありますが、国で定めた職員の配置基準では、児童40人程度の支援の単位ごとに2人以上配置し、そのうち、少なくとも1人は県が実施する放課後児童支援員の認定資格研修を修了した者を配置することとされています。
県内の放課後児童クラブは、平成30年5月1日現在で385カ所が運営されており、1カ所当たりの平均職員数は4.3人、そのうち放課後児童支援員は2.6人が配置されていることから、国の基準を充足した配置がなされています。
また、放課後児童クラブは、登録児童数や開設時間数などに応じて算定された補助金と利用者からの利用料で運営がされておりますけれども、クラブごとに利用児童数や職員数、開設時間数などが異なるため、支援員の報酬額もクラブごとに定めているところであります。
放課後児童支援員の報酬額の実態について県の統計資料はありませんが、平成28年度に、国が直接放課後児童クラブに対して実施した調査によりますと、月給で支払われる者の平均給与額は年270万3、000円となっているところであります。
〇22番(福井せいじ君) 続いてお聞きしますが、放課後児童クラブの設置場所について伺います。
国では、学校教育に支障が生じない限り、余裕教室や放課後等に一時的に使われていない教室等の徹底的な活用の促進を呼びかけ、また、長期休業や土曜日など学校授業日以外の活動についても、ニーズなどに応じて柔軟に対応することを促進していますが、県内における学校の活用状況をお知らせください。
〇保健福祉部長(八重樫幸治君) 放課後児童クラブの学校の利用についてでありますが、県内385カ所のうち、学校の余裕教室で実施しているのは57カ所、学校の敷地内に専用施設を設けて実施しているのは78カ所、合わせて135カ所となっておりまして、全体の35.1%が学校内で実施しているところであります。
〇22番(福井せいじ君) この放課後児童クラブについては、保護者もその運営に負担をしているということで、なかなか物件が見つからないという場合もありますので、ぜひ、今度とも学校の利用についてはPRしていただきたいと思いますし、また、そういった課題がある場合には、積極的に市町村で対応するよう県からも呼びかけていただきたいと思います。
そして、放課後児童クラブの運営費について伺っていきます。
平成30年度は40人規模の補助金基準額は約430万円で、放課後児童クラブの運営費は、先ほどお話ししましたが、保護者負担額と国、県、市町村による補助額が折半となっており、保護者負担額は平成30年5月1日時点で県内のクラブの88.6%が月1万円以下の設定となっています。補助金と保護者負担額の総計は約800万円となり、その運営費で家賃、人件費、その他の経費を賄うとすれば、人件費は低く抑えられていると考えます。
子供の安全・安心、人材の質、放課後児童支援員の処遇改善を図るため行政負担を増額していく必要があると考えますが、先ほどお話があったように、放課後児童支援員の年収、報酬については非常に低いと私は考えています。当局のお考えをお聞かせいただきたいと思います。
〇保健福祉部長(八重樫幸治君) 放課後児童クラブの運営費についてでありますが、国では、平成29年に、放課後児童クラブの安定的な運営や職員確保の観点から運営費の補助基準額の見直しが行われ、主に人件費相当額の改善が図られたところです。
登録児童数40人の標準的なクラブの補助基準額は、平成28年度に374万4、000円であったものが、平成29年度は430万6、000円となり、56万2、000円の増額が図られたほか、開設日数などクラブの運営実態に応じた各種加算についても改善がなされたところであります。
さらに、平成29年度から、放課後児童支援員の勤続年数や研修実績などに応じて賃金改善を図るキャリアアップ処遇改善事業を実施し、昨年度は県内93カ所、237人分の賃金改善が図られ、さらに、今年度は147カ所、457人分の賃金改善が図られる予定であります。
県では、引き続き、市町村を通じて県内の放課後児童クラブに対してキャリアアップ処遇改善事業を周知し、活用を促すとともに、国に対しても、運営に係る国庫補助基準のさらなる引き上げを要望しながら、支援員の処遇改善に取り組むクラブを支援してまいります。
〇22番(福井せいじ君) 保育所に続いて小1の壁という形で、今、放課後児童クラブのニーズが非常に高まっていると私は考えます。これは、市町村が直接所管する施設ではありますが、国と市町村の間に立って県も積極的に放課後児童クラブの環境整備については促進していただきたいと思いますので、どうぞよろしくお願いいたします。
続きまして、介護保険制度の持続可能性の確保について伺います。
先ほど来お話をしてまいりましたが、少子高齢化社会の進展により、現在の年金制度、介護保険制度など、高齢者介護、福祉を支える制度の維持に対し多くの国民が不安を抱えています。このことが社会全体の閉塞感を生み、経済成長の壁にもなっていると私は考えます。
そこで、今後、人口減少が続く状況の中で、介護保険制度の持続可能性の確保について伺います。
人口減少の大きな山となる2040年問題、先ほど話しましたが、団塊ジュニア世代が高齢者となり、65歳以上の人口が約4、000万人とピークを迎える一方で、15歳から64歳の生産年齢人口は約6、000万人で、2018年に比較して約1、500万人が減少し、税や保険料を負担する就業者数も約5、650万人と、2018年に比較し約930万人に減少します。このような人口とその構成の見通しから、2040年の局面対応に焦点を当て、この問題を考えてみます。
平成30年第6回経済財政諮問会議で示された2040年を見据えた社会保障の将来見通しによれば、社会保障給付費は、経済成長率を年2%前後とするベースラインケースで2040年に190兆円まで増加し、特に介護給付費は約26兆円と、2018年の2.4倍と最も大きな伸びが見込まれています。また、医療費が約68兆円で1.7倍、年金は約73兆円で1.2倍となり、今後も大幅な伸びが予想されており、その確保策は急務であると考えます。
今後の対応として、経済財政運営と改革の基本方針2018によると、社会構造の変化に的確に対応し、持続可能な社会保障制度の確立を目指すことで消費や投資の活性化につなげると同時に、社会保障制度の効率化を通じて、国民負担の増加の抑制と社会保障制度の安定の両立を図る取り組みが進められるとしていますが、ここで示された介護保険制度の持続可能性の確保に向けた取り組みを踏まえ、岩手県としてはどのように対応していくのかお聞かせください。
〇保健福祉部長(八重樫幸治君) 介護保険制度の持続可能性の確保についてでありますが、議員から御紹介のありました経済財政運営と改革の基本方針2018においては、介護保険に関連して、予防・健康づくりの推進や、医療・介護サービスの生産性向上、給付の適正化などを進めていく方針が示されたところであります。
県としては、介護を要する高齢者に必要なサービスが適切に提供され、全ての市町村等保険者が安定的に運営できるような介護保険制度にしていくことが重要であると認識しているところであり、今般の基本方針を踏まえた制度の見直しに対しても、市町村等とともに適切に対応できるよう努めていく考えであります。
当面の具体的な対応としては、平成30年度の介護保険制度の改正を踏まえ、高齢者の自立支援と要介護状態の重度化防止に向けた介護予防ケアマネジメントや、介護給付の適切化など市町村等の取り組みを支援するとともに、あわせて、介護サービスの生産性向上の観点から、多様な人材の活用や介護ロボットの導入などによる効率的なサービス提供に取り組む事業者を支援していくこととしております。
〇22番(福井せいじ君) 今お聞きしましたが、私は、要は、この問題については、要介護者を少なくしていくと同時に被保険者をふやしていくということが必要だと思っています。先ほど、人口減少対策でも知事にさまざま伺ってきました。先ほど部長は、健康寿命の延伸であるとか、あるいは生産性向上による財源の確保とかも話しましたが、抜本的に取り組むことも必要ではないかと私は思うのですが、例えば就業期間を延長する。今、行政機関においては60歳の定年というのがありますけれども、これを例えば65歳に延長することによって要介護者を少なくし、さらには被保険者をふやすことにもつながるのではないかと思いますけれども、こういった抜本的な対策を先んじて行っていくことが、地方のこういった介護保険制度の持続を可能にするのではないかと考えますが、そういった点を知事はどのようにお考えでしょうか。
〇知事(達増拓也君) 65歳まで働くことが、イコール要介護者が減るという理屈がちょっとのみ込めなかったところがあるのですけれども、抜本的な対策という観点からは、まずは、部長が答弁したように、健康増進等で要介護になる人がなるべく要介護にならないようにしていくという方向性と、そして、介護にかかるコストを削減していくというのがやはり基本だとは思っております。
あとは、負担をどのように広げていくかということに関しては、日本国内、確かにお金はあるところにはありますので、国民の知恵と力を結集すれば負担の拡大ということも可能かとは思うのですけれども、そこは、抜本的改革というよりは、今あるお金をどう使うかということかと思いますが、そういった議論もまた必要かと思います。
〇22番(福井せいじ君) 突然済みませんでした。また質問をもとに戻しますので、よろしくお願いします。
それでは、次に児童虐待防止策に移りたいと思います。
まず初めに、児童虐待防止策について話しますが、児童虐待について、全国の児童相談所への相談件数は2017年度には13万件を超えており、5年前と比べて倍増しています。また、児童虐待により2016年度は77人もの子供の命が失われています。
岩手県における児童相談所における対応件数は、2017年度で1、088件、前年比15.5%増。このような大幅な件数の増加は、2016年に警察庁から、児童虐待への対応における関係機関との情報共有の徹底についてということが発出されたことにも要因があると思います。
岩手県の虐待防止の取り組みは、2016年3月から2020年までを見据えた児童虐待防止アクションプランを策定し、虐待の発生予防、虐待の早期発見、虐待の相談機能と対応の充実、虐待の再発防止の四つの項目に分類したプラン体系に基づきさまざまな施策に取り組んでおられます。
暮らす場所や年齢にかかわらず全ての子供が地域でのつながりを持ち、虐待予防のための早期対応から発生時の迅速な対応、虐待を受けた子供の自立支援に至るまで切れ目ない支援を受けられる体制の整備が求められています。
そこで、本年4月に発生した1歳9カ月の男児が低栄養、脱水症状による全身機能障害で亡くなった事案に基づき、今後の虐待防止策のあり方について質問させていただきます。
児童虐待防止、対応は一つの機関等で全ての役割を担うことはできません。虐待防止にかかわる連携すべき者、関係機関は、1、当事者である子供、2、家族、3、子供を預かる保育所、幼稚園等、4、地域の民生・児童委員などの地域住民、5、子供や母親を健診する医療機関、そして行政機関では、6、児童福祉、母子保健、教育部門などをつかさどる市町村、7、広域振興局、保健所、8、児童相談所、9、警察、10、支援内容を協議する要保護児童対策地域協議会などたくさんの機関があり、それぞれの機関には児童福祉司を初めとする専門職員、担当者など本当に多くの方々の連携が必要となっています。
しかし、今事案に関して、多くの方々の連携が必要であったゆえに、それぞれの役割の明確化、判断基準、そしてさまざまな権限の付与と執行判断基準、通報から保護に至るまでの意思決定者の明確化、関係者を結び、児童の状況、家庭の環境を正確に適切に伝えるツールの確立が必要であったと考えます。
各関係機関内の報告、連絡、相談と責任範囲、意思決定機関の明確化が現在は曖昧な状況にあると感じますが、このような課題をいかに解決し児童虐待を防止するか、そのお考えをお聞かせ願いたいと思います。
〇議長(佐々木順一君) 本日の会議時間は、議事の都合によりあらかじめ延長いたします。
〇保健福祉部長(八重樫幸治君) 児童虐待防止対策に係る役割の明確化についてでありますが、虐待対応の枠組みとして、国の子ども虐待対応の手引きにおいて、虐待の重症度等に応じて児童相談所と市町村の役割を区分しており、市町村は情報収集を行った上で、緊急の対応が必要と判断されるケースについては児童相談所に送致することとされています。また、市町村が設置する要保護児童対策地域協議会においては、関係機関が連携し援助方針を共有するとともに、各機関の支援が重複することを防ぐなど、援助の役割分担の共通理解を図りながら対応しているところであります。
県では、各関係機関に対しては、児童虐待防止推進月間の取り組みなどを通じて迅速な通告の協力について周知しているほか、平成28年3月に要保護児童対策地域協議会マニュアルを策定し市町村職員の対応力の強化を図ってきており、今後とも、マニュアルを活用した実践的な研修を実施するなど、市町村と連携して児童虐待防止に取り組んでまいります。
〇22番(福井せいじ君) 非常にたくさんの方々が連携しており、その場その場での判断基準が曖昧な部分があると私は考えています。
今回の4月に発生した事案においても、それぞれの機関が、それぞれの部署がその場面に行って確認をしますが、それがなされない場合は、次に手渡しで回されていくといった事例が見られたように思います。そういった意味で、それぞれの場面において誰が何を判断し、どのような形で次の機関に役割を伝えていくか、そういった報告、連絡、相談というものがしっかりとなされるような仕組みづくりをすることが必要だと思いますので、ぜひ、県からも各市町村に対し、そういった徹底をしていただきたいと思います。
それぞれの機関のことでありますが、その連携のあり方についてもう一つ伺います。
子供が生まれる前の妊娠期において、妊婦健診受診時に医療機関が把握した妊婦の家族、家庭の状況や、出生後の乳幼児健診、予防接種の際に気づくこともある要支援者情報はいかに共有され支援に結びついているのか、ここで改めてお聞きしたいと思います。
〇保健福祉部長(八重樫幸治君) 関係機関との情報共有についてでありますが、医療機関が妊婦健診などにおいて、産後メンタルヘルスケアが必要など出産後の子育てについて支援が必要と認められる特定妊婦等について把握した場合、市町村に対し文書や電話連絡、県内産科医療機関と市町村をつなぐ周産期医療情報ネットワークシステムいーはとーぶを通して情報提供がなされています。
また、市町村母子保健担当課では、乳幼児健診において、育児生活環境問題で要観察となった子供や、乳幼児健診の未受診や予防接種の未接種が続く子供に対しては、保健師による電話連絡や家庭訪問、保育所等への聞き取りなどのフォローを行い要支援者の把握に努めています。
これら医療機関からの情報や乳幼児健診、予防接種の状況、その後の経過観察の状況などを市町村の母子保健担当課で総合的に判断し、支援が必要と考えられるものについては、児童福祉担当課と情報を共有しているところであります。この情報をもとに、さらなる支援が必要な子供については、市町村要保護児童対策地域協議会や個別のケース会議を通じて情報共有が図られ、保育所や児童相談所、地元警察署など、さまざまな関係機関による専門的な支援につなげているところであります。
〇22番(福井せいじ君) 今、部長から答弁いただいたのですけれども、ここにおいても、さまざまな担当部署や連携機関の名前が出てまいります。そういった意味では、どの場面で、誰に責任があるのか、そしてまた、どのような判断で意思決定をするべきなのかということを、今後もさらに各市町村でしっかりとしたマニュアルをつくるように指導していただきたいと思っております。
最後に、児童虐待防止の担い手である児童福祉司について伺います。
県は、児童相談所の体制強化に取り組んでおられ、2018年度は5人増員され37人となりました。一方、国が示した児童虐待防止対策体制総合強化プラン(新プラン)の骨子によると、児童福祉司1人当たりの業務量が、これまで虐待相談が40ケース相当となるよう設定されていることを見直し、児童虐待相談及びそれ以外の相談を合わせて40ケース相当となるよう設定し、増員することを求めています。
今後、相談事案が増加することも想定されますが、現在3カ所設置している児童相談所をふやす考えがあるか、また、児童福祉司、児童心理司、保健師、弁護士の配置について、今後の見通しをお聞かせください。
〇保健福祉部長(八重樫幸治君) 児童相談所の体制の強化についてでありますが、児童虐待の増加に伴い増員した児童福祉司や児童心理司等の専門職員が、相談対応スキルを獲得し、児童虐待対応の専門性を確保するためには、年月をかけて組織的に教育訓練を行うことが必要不可欠であり、また、専門的な児童相談対応のためには一定規模の職員が必要であることから、まずは、現状の体制で、専門職員を育成しながら、警察や市町村要保護児童対策地域協議会等、関係機関との一層の連携による地域の見守り体制の充実を図り、児童虐待の早期発見や早期対応等の取り組みを推進していく考えであります。
また、児童福祉司の配置については、現在、人口5万人に1人の基準で配置していますが、来年度からは4万人に1人の基準となりますことから、この基準を満たすよう体制の強化を図っていくほか、御指摘のありました他の専門職員についても、児童相談所運営指針等の基準に基づき配置に努めてまいります。
政府は、7月20日に公表した児童虐待防止対策の強化に向けた緊急総合対策に、2019年度から2022年度までに全国で2、000人規模の児童福祉司の増員などを盛り込んだ児童虐待防止対策体制総合強化プランの骨子を示しており、国の検討状況を情報収集しながら、本県の児童虐待対策の充実強化を図ってまいります。
〇22番(福井せいじ君) 一つだけ確認をさせてください。児童福祉司の増員についてでありますが、今さまざまな部門で人材不足、人手不足が叫ばれております。保育士もそうでありますし介護士もそうでありますが、この児童福祉司については、今度5万人に1人が4万人に1人ということで約20%増が見込まれるわけです。この確保については果たして大丈夫なのかということをお聞きしたいのですけれども、いかがでしょうか。
〇保健福祉部長(八重樫幸治君) 現在、県内の児童相談所の児童福祉司は37人ということでございます。これは今の基準、5万人に1人、さらには来年度の基準でもあります4万人に対して1人というこの基準も既に満たしておりますけれども、専門的な相談に対応できるような研修をしてその質を高めるとともに、児童福祉司のさらに上に、スーパーバイザーという経験5年以上の児童福祉司を配置することも定められておりますので、そうした配置にも努めてまいります。
なお、議員御指摘の全国で児童福祉司等を増員するので大丈夫かということにつきましては、県でも今、児童福祉司の募集をしながら確保に努めているところですけれども、今後も、県の児童福祉司の必要性等をしっかりPRしながら、確保に努めてまいりたいと思います。
〇22番(福井せいじ君) ぜひ、悲しい事件が二度と起こらないよう注力していただきたいと思っています。
続きまして、産業人材の確保についてお聞きしたいと思います。
東日本大震災津波以来、有効求人倍率は高い水準にあり、現在も多くの業種、企業で人手不足が続いています。過日、地元紙に、人材クライシス〜本県企業集積の現場から〜という記事が掲載されました。その記事には、世界的な大手企業の立地や工場増設で雇用創出の動きが加速する一方、県内の企業は、かつてないほど人手不足の危機に直面している。さらに、人材の奪い合いで転職市場は活気にあふれ、大手と中小企業のはざまで求職者の心も揺れると書かれていました。
多くの企業の県内進出により、県南地域を中心に今後5年間で約5、000人規模の雇用が創出されるとのことです。県内の雇用機会がふえることは、県内就職を促進し、人口の社会減少ゼロの達成に向け有効な手段になると思います。
しかし、現在の人材不足の問題は、需要が増加し企業業績が上がり人手不足に陥っているといった単純な構図ではなく、1、企業からの求人像と求職している方々とのミスマッチ、2、人口減少による求職者の減少、3、県外企業の進出による人材の奪い合いなど、さまざまな要素が絡み合っているのが、県内における人材不足の状況です。
それゆえに、先ほど述べた三つの視点からの切り口で人材不足対策に積極的に対応していく必要があると考えますが、当局のお考えをお聞かせください。
〇商工労働観光部長(戸舘弘幸君) 人材不足対策についてでありますが、本県の現在の人材不足は、求職者が減少している一方で、産業集積等に伴う新規雇用が増加していること、また、職種や正規、非正規の別による求人と求職のミスマッチが見られることなどといったさまざまな要因があると認識しております。
まず、雇用のミスマッチ解消には、県内企業が、働き方改革の推進等により自社の魅力や価値を高め、それを採用につなげられるよう採用力を向上させていくこととあわせて、学生や求職者が、みずからの可能性を県内企業に見出すことができる気づきの機会をつくることが重要であります。
また、求職者の減少等への対応といたしましては、企業等がAIやIoT、ロボットなど第4次産業革命技術の活用により生産性を向上させる一方で、小中学校等の早い段階から、地域で働く価値を伝えるなど若者の地元意識を醸成することによりまして、新卒者等の県内就職やU・Iターンを促進したり、働きやすい環境整備により、子育て中の女性や高齢者等の潜在労働力を生かしていただくことも必要だと考えております。
このため県では、今年度新たに地域産業高度化支援センター等の設置により、ものづくり人材の育成や定着を図るとともに、高校生と県内若手社員等との交流会や学校と連携した企業の情報発信等によりまして、県内企業の理解を深める取り組みを進めているところでございます。
また、岩手U・Iターンクラブを創設いたしまして、県外学生に就職情報や企業情報をできる限りダイレクトに届ける取り組みを進めているところであります。加えて、首都圏等の若者に向けまして、岩手での仕事や暮らしなどを総合的に紹介する情報誌を発行するための経費を盛り込んだ予算案を今定例会に提案させていただいているところでありまして、これも活用いたしまして、U・Iターン人材のさらなる確保を図ってまいりたいと存じております。
今後におきましても、いわてで働こう推進協議会を核といたしまして、複合的、重層的に取り組みを進めてまいります。
〇22番(福井せいじ君) 今いろいろな対策をとられているということですが、先ほどお聞きした中で、実は、県内企業と進出企業との間で、休暇制度や各種手当などの福利厚生、給与等にも格差があり、求人活動での障害ばかりでなく、転職者も増加しているということをお話ししました。これが非常に問題になっていて、転職者などがあると、事業継続の課題にもなっているということを私は伺っております。
こういった進出企業と地元企業との格差対策というのは何かあるのか、もしあればお聞かせいただきたいのですけれども、いかがでしょうか。
〇商工労働観光部長(戸舘弘幸君) 企業間の格差対策についてでありますけれども、福利厚生や賃金等の労働条件につきましては、人材確保の面でも重要な要素でありますことから、県では、岩手労働局と連携いたしまして、県内経済団体等に対しまして、待遇改善や長時間労働の是正、年次有給休暇の取得促進等の労働環境の整備について要請を行ってきたところであります。
また、労働条件の改善につながる働き方改革を促進するために、経済団体や労働団体等を構成員とするいわてで働こう推進協議会を核といたしまして、いわて働き方改革推進運動を展開し、県内企業における長時間労働の是正や年次有給休暇の取得促進に向けた取り組みを進めますとともに、賃上げを支援する業務改善助成金や正規雇用への転換を進めるためのキャリアアップ助成金等、これは国の助成金制度でありますけれども、これらの活用等につきましても周知に努めているところでございます。
〇22番(福井せいじ君) 地元の企業の方々は心配もしておられますし、非常に不安に思っているところがあると思います。そういった意味では、企業によって差があってはいけないのですけれども、不足を補うという意味で、県内企業の方々にもさまざまな採用支援、採用のノウハウの支援や、先ほど言った働き方改革の支援等のアドバイスを厚めに-厚めにと言ってはいけないですけれども-していただければありがたいと思いますので、どうぞよろしくお願いいたします。
最後に、盛岡広域の救急医療体制について伺います。
岩手医科大学の高度救命救急センターが2019年、矢巾町に移転することに伴い、盛岡広域圏における救急医療の中心医療機関として位置づけられる県立中央病院の救急医療対応の環境整備は、喫緊の課題であります。
先日、県立中央病院を訪問し、救急医療体制について調査してきました。県立中央病院における救急対応状況は、2017年度救急車搬入件数は6、953件、前年比109%、1日平均約19台、救急患者数は2万1、225人、前年比102%となっており、救急車の搬入件数が大幅に増加している一方、救急入院数は、直近5年間は5、600人程度であり、横ばいで推移しております。救急センターにおける医師配置は当直医7名であり、さらにICUや小児輪番にも対応しております。
このような状況の中で、院長初めスタッフの皆様は、業務プロセスの効率化、研修医枠拡大、人員強化、そして地域連携を通じて救急受け入れの円滑化を推進することで、一次救急対応を推進していくとのことでした。
このように、みずからの努力と工夫で増大する地域の救急医療需要に対応する姿勢は大いに評価するところでありますが、このような取り組み状況を踏まえ、今後、盛岡保健医療圏における救急医療体制の中心医療機関である県立中央病院の機能をどのように維持、強化していくのかをお聞かせいただきたいと思います。
〇医療局長(大槻英毅君) 救急医療体制の維持、強化についてでございますが、県立中央病院は、救急告示病院といたしまして、盛岡保健医療圏における二次救急医療の受け入れについて、体制といたしましては、医師は研修医も含めまして8名から9名、それから、看護師は3交代制、そして診療放射線技師等医療技術職員は2交代制勤務で24時間の体制で対応させていただいております。
県立中央病院における過去3年間の救急患者の受け入れ状況については、先ほど議員からも御指摘がございましたが、救急患者自体は平成27年から平成29年まで2万人から2万2、000人程度ですが、救急車の搬入による患者につきましては、平成27年度が6、261人、平成28年度が6、357人、そして平成29年度が6、953人とだんだん増加傾向にあるという状況でございます。
こうした状況がございますので、県立中央病院の現在の救急室が非常に手狭な状況になっていることもございまして、経過観察のための救急病床も少ないことから、このたび経過観察のための救急病床を10床程度、それから、CTが今1台ございますが、それにもう1台追加した2台の体制にする改修工事を平成31年度実施することといたしまして、現在、改修工事に係る設計を行っているところでございます。完成後は、広さにいたしますと、救急室が現在の1.7倍程度の面積となるということで、かなりキャパシティーは広がるものと考えております。
医療局といたしましては、今後、盛岡保健医療圏の他の二次輪番病院、それから医師会などと連携いたしまして、地域の救急医療ニーズを踏まえた格好で、よく相談しながら対応してまいりたいと考えております。
〇22番(福井せいじ君) 県立中央病院では、ソフト的な対応で何とか乗り切ろうということだったのですけれども、それではもう限界があると私も感じておりました。その中で、ハードの拡張というか診療スペースの拡張ということでは、大変ありがたいことだと思っています。
ただ一つ、待合スペースにおいても、感染症の疑いのある患者の対応スペースといったものも確保して、しっかりとした安全対策をとっていただきたいと思っております。
次に、救急搬送体制についてお聞きします。
傷病の状況に応じた適切な医療を提供できる体制とするためには、一次救急を担う地域の救急医療機関が積極的に患者を受け入れ、患者を分散させることが必要と考えます。また、不要不急の受診や搬送を減らすため、適正な利用を住民に対して広報することが必要ではないかと考えます。
岩手県高度救命救急センターの移転が迫る中、救急搬送体制を地域の関係機関が連携し構築していく必要があると考えますが、これまでの取り組み状況と今後の対応について、当局としてのお考えをお知らせください。
〇企画理事兼総務部長(佐藤博君) 救急搬送体制についてでございますが、まず、総務省消防庁の傷病程度別搬送状況についてお示しします。この調査によりますと、平成28年中の本県の救急搬送人員は4万6、838人となっておりまして、これは前年度と比較しますと0.9%の増となっております。このうち、搬送者に占める入院加療を必要としない軽症者の割合は42.3%となっております。
本県におきましては、消防、医療、行政の関係機関で構成する県及び地域単位の協議会を設置しておりまして、この関係機関の連携のもとに、傷病者の搬送及び受け入れの実施基準や救急救助のプロトコル、いわゆる応急処置の手順を定めたものを作成しておりまして、傷病者の適切な受け入れ態勢の構築を図っております。
また、県民みんなで支える岩手の地域医療推進運動といった取り組みを通じまして、関係団体と連携をし、救急車の適正利用等の普及啓発を行っております。
また、現在、盛岡地域メディカルコントロール協議会におきましては、特定の病院の負担を軽減するための方策を検討しておりまして、現在、関係機関と調整中であると伺っております。
〇22番(福井せいじ君) 今、総務部長がおっしゃった内容で一つ確認をしたいのですけれども、先ほど言ったように、入院を伴わない救急搬送が多いという中で、そういった意味では救命救急隊員の判断力、トリアージに関する技術の向上も私は必要であると思います。そして、さらには、受け入れ医療機関の理解も必要であると考えます。
先ほど、メディカルコントロール協議会の設置によって、また、そういったものを先ほどの受け入れ医療機関の調整については行っていくということでありましたが、救急隊員のそういったトリアージ、判断力のアップについてはどのようにお考えか、もしあればお聞かせいただきたいと思います。
〇企画理事兼総務部長(佐藤博君) 救急救命士の資格取得について、これが始まって以降、本県の救急救命士の数も非常にふえてきておりまして、現場で活躍していただいております。
議員指摘のとおり、救急救命士の技術の向上は非常に大事なことでありますので、そういった技術の向上に向けては、病院関係者と、それから関係機関で研修に努めているところでございます。
また、受け入れ先の医師との連携、それから理解を得るということでございますが、現在、救急救命士が心肺機能停止状態で傷病者に特定行為を行う、いわゆる気管挿管であるとかといったところについては、医師による具体的な指示が必要になっています。そして、盛岡地区広域消防組合消防本部では、岩手県高度救命救急センターあるいは県立中央病院、盛岡赤十字病院がこの指定病院となっていまして、そこと緊密な連携をとっております。
これが、搬入先もそこに行かなければならないという形になっておりますが、今検討しているのは、指示を行った医師の所属する医療機関に搬送することではなくて、指示を受けた医師から具体的指示を受けて、緊密な連携のもと、指示医師の指示した別の収容可能な医療機関に搬送するというような取り扱いに向けまして、現在調整中であると伺っております。
〇22番(福井せいじ君) いずれ岩手医科大学附属病院が移転するに伴ってさまざまな課題がまた出てくると思いますので、ぜひとも医療局、そしてまた知事部局におかれましては、適切な対応、そしてまた積極的な取り組みをお願いしたいと思います。
以上で私の質問を終わります。ありがとうございました。(拍手)
〇議長(佐々木順一君) 以上をもって本日の日程は全部終了いたしました。
本日はこれをもって散会いたします。
午後5時22分 散 会

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