平成30年6月定例会 第13回岩手県議会定例会会議録

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〇3番(千葉絢子君) いわて県民クラブの千葉絢子です。このたび、一般質問の機会をいただきましたことに感謝を申し上げます。
それでは、通告に従い質問いたします。達増知事初め県当局におかれましては、今後10年の岩手の姿について、県民の皆さんに明確なメッセージが伝わるよう、御答弁をお願いいたします。
〔議長退席、副議長着席〕
初めに、児童虐待の防止に向けた取り組みについて伺います。
ことし3月、東京都目黒区で、5歳の女の子が両親からネグレクトや身体的な虐待を日常的に受け、ゆるしてくださいとのメモを残して亡くなった痛ましい事件がありました。また、北上市でも、4月に、1歳9カ月の男の子が、食事を与えられないまま、家に置き去りにされ亡くなったという痛ましいニュースが相次ぎました。この虐待による死亡事件は、いずれも保護責任者遺棄致死容疑でありますが、その内容は、一番信頼している親に、精神的、肉体的な苦痛を与えられた上に命を奪われるという、殺人に近い、むごいとしか言いようのない事件でありました。
目黒区のケースでは、この一家が香川県から転居してきた際、虐待の疑いがあるとした情報の引き継ぎのプロセスにおいて自治体間で情報は引き継いだものの、その深刻さを共有するまでに至らなかったことが、痛ましい事件を防げなかった原因であろうと感じています。
また、北上市の事件では、長男が通っていた認可外保育所は、事件前の2月末、岩手県の定期監査に同行した北上市の担当者に、極端に汚れた衣服、保育所にいる間の異常な食欲などの異変を報告。これを受けて、北上市は、容疑者の家を数回訪問したが接触できなかったとあります。この事件を受けて保育所の責任者は、緊急性を感じて情報伝達した。勤務先を訪ねたり、夜間に自宅訪問したりすれば実態をつかめたかもしれないと話しています。これに対し北上市は、保育所から毎日送迎しているとの報告もあったと説明。また、児童相談所に通告する緊急性までは把握できなかったと釈明しています。
3月15日に開催された北上市の要保護児童対策地域協議会において、児童保護の権限を持つ県福祉総合相談センターも出席しており、北上市から当該世帯のことについて報告されたものの、緊急性が高いケースとしてセンターへの通告はなかったとあります。
こうした県も含めたこれら自治体の対応が適切であったか、全力で対応しても防げない事案であったのか、その点をどのように感じているか伺います。
警察への情報提供のあり方について伺います。
県では、現在、児童相談所からの警察への情報提供に関しては相互連携に係る実施要綱を設けていますが、都道府県と政令指定都市に対して共同通信社が行った調査では、岩手県を含めた全国25の自治体で、警察との情報共有について基準が具体的ではないと回答しています。また、新聞の取材に対して、岩手県子ども子育て支援課では、幅広い事案に対応できるような表現になっており、今後も警察と積極的に連携し、情報共有を行っていくと答えています。
具体的に警察とはどんな状況において県から虐待についての情報共有が行われているのか、また、今回の虐待死亡事件を防げなかったことについてどんな思いを持っていらっしゃるか。警察側としては、情報提供のあり方についてどうすることが望ましいと考えているか、県警察本部長にお伺いいたします。
以上で壇上からの質問を終わり、以降は質問席よりお尋ねいたします。
〔3番千葉絢子君質問席に移動〕
〔知事達増拓也君登壇〕
〇知事(達増拓也君) 千葉絢子議員の御質問にお答え申し上げます。
まず、虐待死事案に対する所感についてでありますが、当時1歳9カ月の子供が、十分な食事を与えられず、低栄養や脱水症状で幼い命を失った北上市の事件はとても痛ましい事件であり、痛恨のきわみであります。県では、今回、保護者との接触を試みながらも、直接面談することができないまま、児童が死亡に至ったことを重く受けとめ、保護者に連絡がとれないケースや保育所への登園が3日以上ないケースについては、児童の安全確認のため、直ちに状況確認を行うよう、6月8日付けで全市町村に対し通知を行ったところであります。
北上市では、現在、内部検証を行っているとのことであり、県としては、その結果も踏まえ、今後、岩手県社会福祉審議会に、有識者による死亡事例検証委員会を立ち上げ、県の対応を含め、事実の把握や発生原因の分析、検証を行うこととしています。
児童虐待により、幼いとうとい命が失われてしまうことはあってはならないものであり、今回の事件は、防ぐべき事案であったと考えております。
このような事件を二度と繰り返さないためにも、検証をしっかり行うとともに、関係機関との連携を強化し、児童虐待の発生予防と早期発見、早期対応に向け、今後一層取り組んでまいります。
〔警察本部長島村英君登壇〕
〇警察本部長(島村英君) まず、今回の事件に関しましては、被害者の御冥福をお祈りしますとともに、幼いとうとい命が失われたことは、とても心が痛む思いでありまして、警察としても重く受けとめております。
次に、県から警察への情報提供につきましては、相互連携に係る実施要綱に3点定められております。
1点目が、子供の生命や健康に関するリスクが高く、継続指導が必要な場合。2点目が、一旦かかわりを終結し市町村で見守りを継続していたもので、リスクが高くなった場合。3点目が、調査継続中の事案で援助要請事案に発展するおそれがある場合であります。これら3点につきまして、県から警察にその事案概要を提供していただいております。
最後に、望ましい情報提供のあり方につきましては、今後、ただいま申し上げました情報共有の三つの基準の具体化を含めまして、県と検討してまいりたいと考えております。
〇3番(千葉絢子君) いずれにしても、この事件というのは非常に残酷で、県民や国民に与えた精神的な影響というのも、同年代の子供を持つ親を初め、かなり大きかったものではないかと思っております。
この子供の虐待事案は、都道府県のみならず、国をも動かすような動きに現在発展をしております。
まず、東京都では、小池知事がリーダーシップをとって、全国的にも大きな影響力があった目黒区での事件を受け、児童相談所の児童福祉司などの専門職員を100人規模で大幅増員し、警察と連携を進めるため、情報提供の基準を見直す考えを示したほか、虐待が疑われるケースの自治体間の情報共有の徹底を求める緊急要望書を、今月13日に厚生労働省に提出しています。虐待防止に関する条例の制定も行うようです。また、埼玉県では、児童相談所に通報があった事案についてデータベース化をして、県警察本部と情報共有できる仕組みを8月からスタートすると伺っております。
本県は、東京都の素早い対応についてどのよう感じているか、また、情報提供基準の設定の必要性、警察との連携強化の必要性についてはどのように認識しているのか、保健福祉部長にお伺いいたします。
〇保健福祉部長(八重樫幸治君) 東京都の対応についてでありますが、本県においても、本年度、児童福祉司を5人増員しており、平成28年改正児童福祉法に基づき、今後も段階的に児童相談所の体制強化を図ってまいります。また、北上市での事案を踏まえ、6月8日付けで、県内市町村及び保育施設に対し、児童虐待の発生予防に係る取り組みを徹底するよう、注意喚起を促す通知を行ったところであります。
国に対しましては、全国知事会を通じて、児童相談所の体制強化や関係機関の連携強化について要望を行っているところでありますが、必要に応じて、随時対応してまいる考えであります。
児童相談所から警察への情報提供については、先ほど警察本部長が答弁したとおり、基準を定めて情報共有を行っていますが、他県の例も参考にしながら県警察本部と調整を行い、常に基準を見直していくことが必要と考えています。
死亡等児童虐待の重篤化を防ぐため、警察等関係機関との連携の重要性は増していることから、現場レベルでの連携がより一層図られるよう取り組んでまいります。
〇3番(千葉絢子君) 先ほど警察本部長からも、3点基準があるという答弁でしたけれども、現在の情報提供、共有のあり方では、その情報に接した人の主観によってこの3点が区別されるような気がしております。主観ではなく、具体的な基準を早期に定めて再発を防止していくということが都道府県に求められている役割だと思いますので、ぜひ積極的にこの基準の見直し、具体的な設定という方向に動いていっていただきたいと思います。
県内の児童相談所や市町村に寄せられている虐待相談対応件数ですが、平成26年度が844件、平成27年度が1、058件、平成28年度が1、477件、そして平成29年度の速報値では1、522件と、年々増加しているようです。児童相談においては、夜間の緊急体制の強化、子供の心理面に対する支援の強化について、24時間体制で職員の負担が重いことが現場から上がり続けていますけれども、今回の北上市の事案も、人員がもう少し配置されていれば、もしかしたら防げたのではないかとの見方も出ているようです。
県として、子供の福祉のために児童相談所の職員の配置基準の現状、増員、相談体制の強化について、今後どのような方針で取り組んでいかれるでしょうか、お伺いいたします。
〇保健福祉部長(八重樫幸治君) 児童相談所の職員体制についてでありますが、増加する児童虐待相談に的確に対応するため、平成28年改正児童福祉法において児童福祉司の配置基準が見直され、平成31年度までに段階的に増員することとされています。
同法の配置基準によると、本県の平成30年度における配置必要人数は27人とされていますが、今年度は児童福祉司を5名増員し37名体制としています。あわせて、児童心理司についても3名増員し、より一層の体制強化を図ったところであります。
今後も、児童福祉司を担える専門職員の計画的な確保に努め、虐待を受けた子供への支援と、その保護者への指導を充実させてまいります。
また、昨年度から義務づけられた児童福祉司等義務研修の実施及び児童虐待事案を想定した児童相談所と警察との現場対応合同訓練の実施などにより、引き続き、職員の知識、能力の向上、対応力の強化にも努めていきます。
〇3番(千葉絢子君) 年々虐待件数が増加している影響で、保護施設の中での子供たちの部屋割りですとか、そういった保護されている環境についても、現場では手狭になっているという声も上がっています。ただでさえ心理的、肉体的に負担を受けている子供たちが、その施設の中で、さらにそういった負担を受けて二次障害のようなものが出てこないように、県にはきめ細かい対応をお願いしたいと思います。
東京都の人口は1、370万人いまして、岩手県の人口のおよそ10倍なのです。東京都では、児童相談所に寄せられた平成28年の相談件数は3万6、000件あったそうです。これは、岩手県の24倍という膨大な数でありながらも、今回、子供の命が奪われた事件を重く受けとめ、適切な対応をしようという姿勢を全国に先駆けて見せているように私には感じられます。
岩手県においても、保育所、幼稚園、学校、小児科、地域など、子供にじかに接する現場と県や市町村、そして警察との情報提供のあり方に明確な基準を今後設け、虐待による親と子の間での殺害が行われないよう、基準の見直し、体制の強化を強く求めたいと思います。
なお、目黒区の事件では、警視庁の捜査関係者が、5歳の子供のメモを読みながら涙を抑えることができないほど心を痛めている姿がありまして、その姿に打たれた国民も多かったと感じています。亡くなった児童にどれだけ心を寄せて捜査に当たってくださるか、その姿を見れば、我々国民にもよくわかるわけです。それは、この目黒区の事件にかかわらず、私たちが暮らすこの岩手県、全国の捜査関係者、また、児童福祉行政にかかわる皆さんに共有をしていただいて、ぜひ血の通った対応をしていただきたいと願っております。
次に、次期総合計画について伺います。
県では、昭和39年から総合計画を策定しており、現在は、来年度から始まる次期総合計画についての策定を進めています。6月定例会の開会に先立って現段階での素案が示されましたが、この内容についてお尋ねしたいと思います。
次期総合計画のキーワードは幸福です。県では、経済的な尺度でははかれない心の豊かさや、地域や人のつながりによる個人の幸福度を高める社会づくりを念頭に、幸福を守り育てることをこの計画の理念として掲げています。しかし、この計画では、幸福という本来一人一人の尺度によって自由に感じるべきものを行政が守り育てるべきものとし、行政の考える幸福の価値観を、我々県民はこのようなことで幸福に感じるであろうと、一方的な押しつけをしてしまいかねないと感じています。心の豊かさは、経済的な尺度での幸せより優位であるという概念は、果たして県民共通のものでしょうか。
日本は、高度経済成長期には経済的な豊かさに幸せを求めていました。バブルの崩壊、2008年のリーマンショック、そして2011年の東日本大震災津波によって経済が打撃を受け、基盤が揺らいだことにより、価値観がいわゆる物から心の豊かさにシフトしていったのが、この幸福に関する注目度が高まった背景にあると私は考えております。
総合計画というのは、県、市町村、民間、NPO、そして県民の皆さんといったさまざまな主体の協働によって、この岩手を10年後にどのような姿に持っていくのか、共通の目標と、主体別に具体的な目標を設定し、ともに行動していくことで実現していくものだと私は考えております。ここで大事なものは、具体的にどのように計画を達成していくためにアプローチをするのかという観点だと思います。
これまでの総合計画におきましても、具体的な方策がこれでいいのか、指標はこれが適切であるのか、市町村や民間、県民との連携、計画全体の県民への落とし込みはどの程度できているのかという議論が、私が県議会に参りましたこの3年間の間にも行われてきたと記憶しております。この点において、現在進行中のいわて県民計画において、市町村や民間との連携における課題、問題点、また、当初予定されていたあるべき姿に本当に近づいているのか、いわて県民計画の最終年度としての総括を知事にお伺いいたします。
〇知事(達増拓也君) いわて県民計画の総括についてでありますが、いわて県民計画では、みんなの基本目標として、いっしょに育む希望郷いわてを掲げ、仕事、暮らし、学び・こころの三つの分野で実現していきたい岩手の未来を示しており、仕事の分野では、自動車や半導体関連産業を中心とした産業集積が進んだほか、正社員の有効求人倍率も7年連続で上昇しています。
また、暮らしの分野では、人口10万人当たりの病院勤務医師数が増加しているほか、保育所整備や保育人材の確保、子供の貧困対策などの取り組みが進んでいます。
さらに、学び・こころの分野では、平成23年の平泉と平成27年の橋野鉄鉱山の世界文化遺産登録が実現したほか、グローバル人材の育成等により、海外とのネットワークの形成が広がっています。
これらの成果は、市町村や民間との連携のもとで得られたものであり、こうした連携は、東日本大震災津波や平成28年台風第10号災害からの復旧、復興、また、地方創生の分野においても発揮されたものと考えます。
現行のいわて県民計画は多くの成果を上げ、次期総合計画につながる土台を築いたものと考えますが、次期総合計画の素案で岩手の強みや弱みなどを示しているとおり、さまざまな課題もありますことから、それを踏まえた計画づくりを進めてまいりたいと思います。
〇3番(千葉絢子君) 今、課題、問題点はさまざま挙がっているということで、具体的なお示しはなかったわけですけれども、私は、市町村との関係というものにおいても、非常に課題が残っているのが現状ではないかと思っております。また、一般の岩手県民にこの計画がどの程度浸透しているのか。希望郷いわてモニターでしたか、350人ぐらいの方のアンケートの結果をもとに判断していらっしゃるのかもしれませんが、県内に住む130万県民にどれだけ浸透しているのかというのは、浸透の仕方にはまだまだ問題があると思いますし、そこの浸透なくては、県民みんなで一人一人が主体を持って取り組んでいくという目標にはつながっていかないと感じております。
ただいま答弁のありました件について、現在行われている次期総合計画のアクションプランと成果指標についての検討はどの程度進んでいるのでしょうか。ただいまの知事の答弁にあった課題についても、改善を含めた議論になっているのか、お伺いしたいと思います。
〇政策地域部長(藤田康幸君) まず、アクションプランと成果指標の検討状況についてでございますけれども、現在のアクションプランでは、事務事業、施策、政策という体系を踏まえた考え方によりまして、目指す姿に関する指標と具体的な推進方策に関する指標の二つの柱で構成しております。この考え方自体は、非常に精緻な考え方で成り立っているわけでございますけれども、ただ、一方、個々の指標を実際に見ますと、成果をあらわすアウトカム指標と実績をあらわすアウトプット指標が混在しておりまして、目指す姿に関する指標と具体的な推進方策に関する指標と、この二つの柱の関係性が不明瞭ではないかといった改善すべき課題があるものと私も認識しているところでございます。
昨年9月に取りまとめられた幸福に関する指標研究会報告書では、幸福感に関連する12の領域ごとに客観的指標の例が示されておりますけれども、これは、いずれも成果をあらわすアウトカム指標となっております。
次期総合計画に基づくアクションプランでは、研究会の報告書で示された指標の例を十分参考にしながら、また、外部の有識者の御意見もいただきながら、現行のいわて県民計画アクションプランにおける課題を解決する方策を鋭意検討してまいりたいと考えております。
それから、市町村との連携についてでございますけれども、まず市町村長にお集まりいただいて意見交換をする会ですとか、あるいは副市町村長にお集まりいただいて意見交換をする会を、例年、定期的に開催しております。さらに、より実務的な意見交換をするために、地方創生を担当する市町村の部課長にもお集まりいただき意見交換する会を昨年立ち上げましたけれども、これを今年度から4広域振興圏ごとに、上期に一巡、それから下期に一巡といった形で開催することとしておりまして、そこでは、地域コミュニティーの活性化や企業等に役立つ国の事業を紹介したりですとか、あるいは県内外の具体の先進事例を紹介しまして、より実務的な意見交換をすることとしております。その上で、市町村や民間との連携をより深めていく必要がある分野の一つとして、例えば地域コミュニティーの活性化があると考えておりますが─これは政策地域部のほうで担当しておりますが─この点につきまして、例えば県の職員がリエゾン的に現地といいますか地域に入りまして、役場の職員の方ですとかあるいは地域協議会の方─これは住民の方ですけれども─そういった方たちと一緒になって高齢者の方の買い物ですとか、コミュニティーバスをどうしたらいいのか、あるいは空き家をどのように活用したらいいかといったことを具体的に話し合う試みを既に始めているところでございます。その際、いわて未来づくり機構という産学官の連携組織でございますけれども、その枠組みの中で、これは大学の先生が中心となりまして、民間企業の協力も得ながら、ICTを活用した高齢者の方の見守りのシステムの実証研究を重ねておりまして、その成果を先ほどの取り組みに融合させていくといったことも考えております。
地域コミュニティーの活性化を一例として申し上げましたけれども、今後とも、分野によってどのような連携の仕方がいいのかといったことを常に考えながら、効果的な取り組みを進めてまいりたいと考えております。
〇3番(千葉絢子君) とても丁寧な答弁をいただきまして、やはり現場に職員の方、そして、何よりも知事が出向いて現場をごらんになるというのが、計画をつくっていく上で本当に大切なことだと考えております。それでこそ、アウトカムを重視した指標になってくると思いますので、答えは現場にあると知事は常々おっしゃっておりますけれども、知事ももちろん、それから若い世代の職員をぜひ現場に派遣していただいて、同年代の市町村の職員などと交流を持つ、関係をつくる機会というのもつくっていただきたいと思います。
私がいたメディアでは、若いころ、最初にお巡りさんの担当をさせていただきまして記者としての下地をつくっていくわけですけれども、一番情報をとりにくい、そしてコミュニケーションをとる方法がわからない職員、人材をまず現場に出して、関係をつくって情報を聞けるように育てていくというのが基本になると思います。そこから10年、20年たって、役職が上がってきて、本当に指針をつくっていけるような世代になったときに、そのネットワークは大いに力を発揮すると私は考えておりますので、ぜひその職員の育成という観点からも、現場に出すということの大事さを次の10年で、県の職員の皆さんには頑張っていただきたいと思っております。
通告はしておりませんが、県が考えている幸福度、先ほど田村勝則議員の一般質問でも知事とのやりとりがありました。この幸福というキーワードが次の総合計画に上がっている以上、この幸福についてもしっかり考えなければいけないと思っておりますので、あえて質問させていただきたいと思います。
県が考えている幸福度と、それから我々一般の県民が考えている幸福というものは、そもそも同じであるべきというようなお考えなのでしょうか。その幸福の基準と尺度についてどのように計画に盛り込むのか。また、幸福に思うことが達成できない場合、我々は幸せではないという結論になってしまうのでしょうか。この計画においての幸福ということをどのように取り入れていくのか、この幸福に関しては知事の発議だと思いますので、そのあたりを知事にお伺いしたいと思います。
〇知事(達増拓也君) 私だけではなくて、総合計画審議会の議論も重ねて、また、さまざまな有識者の意見も踏まえてつくられた素案ではあるのですけれども、そこでの議論の中で、幸福という言葉は、かなり日常生活において普通の使われ方をしていて、例えば私自身、自分の子供に幸せになってほしい、幸福になってほしいというときに、その幸福、幸せの定義を何か厳密に定めたり、あるいは子供の幸福、幸せの意味と自分の言っている意味というのが違っているかどうか、そこは違うかもしれないなということを念頭に置きつつ、いろいろ話し合ったり子供の活動を見ていたりしながら、そういう中で、ここはこういう勉強をして、こういう学校に進むことが幸せであるみたいなことをお互い納得しながらそういうことをやっている。そういうことが県民の間で、あるいは行政と県民の間、また、県民とNPOでありますとか企業、個人、そういったさまざまな主体の間で行われていけばよく、そういうことは実は、復興の取り組みや、いわゆる地方創生、ふるさと振興の人口減少関係の取り組みなど、それぞれかなり人の生き方にかかわるような部分で行政も一緒に取り組まなければならない。応急仮設住宅から次の行き先がまだ決まっていない人の支援といったところについて、何がその方のためになるのか、その方は何を求めているのかみたいなところまで行政も一緒に寄り添って考えて決めていくわけでありますし、人口減少対策についてもそういうところが多々あると思います。
ということで、既に県内でかなり行われていること、また、特に東日本大震災津波を経験し、復興に取り組む中で、余り他の地域、他の県と比べてというのもあれですけれども、岩手は岩手なりにかなりそれをよくやれるようになってきているのではないかと思っておりまして、そういうことを生かした次期総合計画の素案になっているのかなと思っております。
〇3番(千葉絢子君) 幸福というのはやはり個人の価値観によるところが大きいものでありまして、幸福の概念を計画として県民に浸透させていこうというのは本当に苦労することだと思います。結論でおおむね県民は幸福であると10年後に言われても、それは納得できない県民もいるのではないかという懸念は申し上げておきたいと思っております。
計画の質問に戻りますけれども、次に、10年後の岩手の姿について、産業振興、地域経済のあり方の観点からお伺いいたします。
東日本大震災津波以降、県内の社会資本は沿岸の復興を第一に予算が投入されてきました。一方で、内陸では南部でものづくり産業のグローバル拠点化が推進されて、県が誘致重点産業として特に力を入れている自動車や半導体、IT組み込みソフト、この三つの事業を中心に企業誘致が促進されてきました。
しかし、県庁所在地である盛岡市を含む県央圏域においては企業誘致や産業集積の動きは鈍く、岩手県の人口の3分の1を有する県央圏域にも経済の起爆剤が欲しい、ものづくりや復興以外の経済対策も考えてほしいという経営者の声が聞かれ始めています。県では、盛岡市を含む県央圏域の産業振興などの経済対策についてどのように考えていらっしゃるのでしょうか。
〇商工労働観光部長(戸舘弘幸君) 県央圏域の産業振興策についてでありますが、この圏域は、中核市である盛岡市を中心に主要な都市機能などが集積し、本県生産額の3分の1を生み出しております。県内一の消費地であることを背景に、第3次産業の生産額は8割を超えています。また、その中でも、卸売、小売業、情報通信業、専門・科学技術、業務支援サービス業ではそれぞれの分野別において本県生産額の5割を超えるなど、全県を牽引しているエリアと受けとめております。また、盛岡、八幡平エリアなどのすぐれた観光資源、豊かな食材や魅力ある伝統工芸品、そして県内有数の文化、スポーツ施設やコンベンション施設を有しているとともに、宿泊施設も充実しておりますことから、県内年間宿泊者数の約45%がこの圏域の宿泊施設を利用しているところであります。
この圏域の強みの一つとなっている情報通信産業は、今後、AIやIoTの活用などによる幅広い産業分野への参入が期待されるほか、組み込みソフトウエアの需要増などさらなる伸展が期待できますことから、県としては、IT開発拠点として整備されてきた滝沢市IPUイノベーションパークやマリオスを核といたしまして、圏域内にさらなる関連産業の集積を推進してまいりたいと考えております。これが産業振興の一つの大きな柱になるのではないかと考えております。
加えて、観光面におきましても、東北有数の交通拠点を有することや豊富な観光資源を有する強みを生かして戦略的、効果的なプロモーションを展開するとともに、さらなる誘客が期待できる外国人観光客の受け入れ態勢の充実、強化を支援いたしまして、滞在型、回遊型観光を促進し、観光消費の増大に努めてまいりたいと考えておるところでございます。
〇3番(千葉絢子君) では、県北圏域の産業振興など今後の経済のてこ入れについてはどのような方向で議論されているのでしょうか。
〇商工労働観光部長(戸舘弘幸君) 県北圏域の産業振興策についてでありますが、県北圏域におきましては、全国有数の生産量を誇るブロイラー産業や高い技術力を有するアパレル産業が集積しているほか、漆やこはくに代表される特色ある地域資源を有しておりまして、これらを生かした産業振興を図るため、企業立地補助制度や県北地域の中小企業者の生産力向上等を支援するための補助制度などの支援策を講じながら市町村と連携した取り組みを推進してきたところであります。
このような取り組みによりまして、国内最大規模のブロイラー加工工場の操業や医療用機械器具製造企業の立地など、県北地域の主要産業のますますの成長や新たな産業集積につながる成果があらわれているほか、地場企業におきましても生産性向上に向けた動きが見られるところでございます。さらには、二戸地域におきまして、地域の中核企業を支援する地域未来投資促進法に基づく地域経済牽引事業計画の承認を受けた企業と地元自治体が連携いたしまして、業容拡大や酒蔵を活用したツーリズムを推進する事業に着手するなど、地域経済の発展につながる新たな取り組みも動き出しているところでございます。
今後におきましても、こうした取り組みをさらに強化しながら、魅力ある食材を生かした食産業の振興や関係団体等と一体となった漆関連産業の振興、アパレル産業など高い技術力を有するものづくり産業の振興、隣接圏域と連携した広域観光の推進など、地域特性を生かした産業振興に取り組んでいく方向でございます。
〇3番(千葉絢子君) ただ、誘致企業とか、そういったものをどの程度今後誘致していけるかというようなところ、工業団地の空き状況を見ても盛岡圏域では100%に達しているところが多く、今後、雇用を拡大していくためには、新しい工業団地の造成などの観点も必要になってくると思っております。
次は企業誘致の方針についてお尋ねしたいと思います。
公益社団法人土木学会の推計によりますと、今後発生が懸念されている南海トラフ巨大地震において、その後20年間に発生する経済的な被害は最悪で1、410兆円に上ると発表されました。これは、現在国が抱えている国債残高をはるかに上回る額であります。また、首都直下型地震においても778兆円もの被害が予想され、こうした巨大な地震が生じるおそれは今後30年間に70%から80%と、ほぼ確実に発生すると予想されています。これらの地震の発生する地域はまさに日本経済の中心地であり、地震や津波の影響でこれほどのダメージを受けた場合、日本は世界の最貧国に転落する可能性があると懸念する声も出ています。
被害を減らす対策としては、公共インフラの対策投資のみならず、首都圏や中京、関西圏の経済活動を地方に分散させ、リスクに備えることなどが土木学会からは提言されているわけですけれども、関西大学社会安全学部の亀井克之氏が2016年に発表した論文─東日本大震災が企業リスクマネジメントに及ぼした影響によりますと、東日本大震災における業務継続計画、いわゆるBCPの課題は、東北沿岸部に事業所があった企業は、津波を受けて中核事業が跡形もなく壊滅してしまった。原発事故の避難域内の企業や跡形もなく流された企業にとって、もはや目標復旧時間という概念が意味をなさなくなった。あらかじめ協議していた取引先を含む地域全体が津波によって壊滅した。広域に及ぶ災害であったので、代替資源、代替策も被害を受けてしまった場合がある。巨大津波や原発事故などは想定外であり、共通認識形成の対象にすら入っていなかったという5点が問題になっていて、津波の影響を受けなかった本県内陸部においてはこれらの課題をクリアしていることが明らかです。
そこで、万が一に備えた日本経済のリスク分散のための生産拠点や本社機能の移転を進めるべく、岩手も積極的な企業誘致に今こそ名乗りを上げるべきと私は考えております。内陸ではILCの建設さえ候補に挙がるほどの強固な岩盤があり、住宅の倒壊などによる死者は一人もいなかったほど地震の揺れには本来強い地域です。また、東北本線、花巻空港、宮古市や釜石市のフェリー就航などによる港湾機能の強化のほか、震災から教訓を得た防災の視点や物流など、今後、災害時の指令拠点となり得る場所であることを大いにアピールし、企業のリスク分散のための移転先としての地位を確立していくことが重要と考えております。
県では、今後、首都圏、関西圏、中京圏の企業の本社機能の移転についてどのようにしていくつもりか、今後10年を考えた戦略についてお伺いします。
〇商工労働観光部長(戸舘弘幸君) 今後の企業誘致の方針についてでありますが、企業の本社機能移転につきましては、議員御指摘の災害時におけるリスク分散の側面ももちろん重要な視点でありまして、さらに国におきましては、安定した良質な雇用を通じて地方への新たな人の流れを生み出す地方創生の観点から施策を推進していくこととして、平成27年6月に地域再生法の改正が行われたところであります。
県では、平成28年度に地域再生法に基づく地域再生計画の認定を国から受けまして、税制優遇の創設や企業立地補助金の拡充といった独自の支援策も講じながら企業に働きかけてきたところであります。
本県では、自動車、半導体関連を初めとするものづくり産業の集積が加速しておりまして、今後、こうした産業の高度化、高付加価値化を進めるためには、研究開発や情報処理部門などの本社機能の移転も有効な手段でありますことから、企業が安定的に成長するためのリスク分散の観点から本県が最適地であることも強く訴えながら、引き続き本社機能の移転を働きかけてまいりたいと考えております。
〇3番(千葉絢子君) 恐らく10年前にはこれほどの被害が出るとは予想だにしていなかった東日本大震災津波が発生したように、今後10年の間にも私たちが予期しない大災害が日本の経済の中心地で起こり得ないとは全く言い切れないわけです。日本が立ち直れないような状況に陥る前に、岩手が率先して企業のリスク分散の受け入れ先として条件を整備し働きかけていくことは、東日本大震災津波からの復興や人口減少対策にも大きく寄与する、いわば岩手の生き残りをかけた道となるはずですから、ぜひ積極的に検討して戦略的に進めていっていただきたいと思っております。
次に、女性の雇用状況についてお伺いいたします。
私は、誘致企業、そして地場の企業の相乗効果によって人材や技術を集積する地域経済全体の底上げを図っていこうという県の方針に賛成しております。一方で、地域経済を活性化させる役目を担っている誘致企業の従業員の男女比にはいささか問題を感じております。
先日、人口減少・少子化対策調査特別委員会の調査で、県が1、700万円の予算で設置を支援したトヨタ自動車東日本の事業所内保育所を視察いたしました。その保育施設では、定員40人に対して現在利用している児童は30人と、定員まで10人の余裕がありました。民間の保育園では待機児童が出ている中、定員に10人の余裕があるばかりか、そのうち、トヨタの従業員の子供の利用者は12人ということで、いずれも男性従業員の子供であるという数字を聞いて、思ったより少ないなという印象を受けました。そして、従業員に占める女性の割合を伺ったところ、この金ケ崎の工場では、2、500人の従業員数のうち女性はわずか3%であるということでした。
自動車関連産業など、いわゆる誘致重点産業の集積化の戦略では確かに男性の雇用は確保されるかもしれません。一方で、若年女性の県外への流出を問題視し、2020年─あと2年後の社会減ゼロを掲げている岩手県でありながら、女性の雇用をふやすことの重要性を県はどのように考えているのかお伺いしたいと思います。
〇商工労働観光部長(戸舘弘幸君) 女性の雇用状況についての御質問でございますが、本県の人口の社会減は、18歳の進学、就職期、22歳前後の就職期に顕著でありまして、特に22歳前後で女性の県外転出が大きくなっております。22歳前後の女性の県外転出につきましては、一旦就職をしていた方が離職して再就職を目指す、こういった方々を含めて多くの女性が県外に就職先を求めていることが社会減に影響を与えていると考えられ、重要な課題と認識しております。
県内のものづくり企業を初め多くの企業では、男女を問わず幅広く人材を求め、人材確保に向けて働きやすい職場環境づくりに取り組んでいるところでありまして、県といたしましては、女性の人材定着に向け、県内企業の認知度向上に加え、さまざまな企業におきまして─ものづくりの現場も含めてということでありますが─女性が活躍していることや、働きやすい職場環境づくりに取り組んでいる状況等をきめ細かく発信いたしまして、県内企業が若年女性の就職先の選択肢としてしっかりと認知されるように取り組みを一層強化してまいりたいと考えております。
〇3番(千葉絢子君) 一番岩手に恩恵を与えてくれているトヨタ自動車東日本の工場に関しまして、工業関連の誘致企業でどれぐらいの女性社員がいるのかという資料をいただきました。そうすると、従業員数15人に対して1人とか28人に対して2人とか、10%を下回っている誘致企業が結構あるわけで、そうすると、今、大学進学率が50%を超えて、進学校でも女子学生が半数を占める高校もふえている中、大学を卒業した女性の就職先ってどこなのだろうという問題があります。
実際、東京や仙台など都市部の大学に進学した女子学生が岩手に戻って就職する場所といえば、県庁を初め市町村の役場、もしくは銀行など限られたものであり、しかもそれは非常に狭き門となっています。ではサービス業があるではないかとおっしゃるかもしれませんけれども、第3次産業というのは土日、祝日も仕事に出ることが多くて、そうするとなかなか子供の行事に出られないとか、それを苦にして正社員になれない、自由に休みたいという要求をどうしてもかなえられない産業構造になっているのではないかというところもあります。いずれ男性は県内就職が促進、一方で女性の就職先は、サービス業が嫌だったら県外というような考え方では、結婚や出産の適齢期である男女がマッチングする機会が著しく阻害されて、未婚率の上昇や少子化に拍車をかけることになるのではないだろうかと私は危惧しております。
県では20代から30代の就業人口の男女のバランスについて現在どのように分析しているのか。また、この点に対して、雇用について次期総合計画の中でどのような方針や対策を示していくのかお伺いいたします。
〇商工労働観光部長(戸舘弘幸君) 女性の雇用拡大、そして20代、30代の男女のバランスについてのお尋ねでありますけれども、平成27年の国勢調査就業状態等基本集計によりますと、岩手県の20歳から39歳までの人口は、男性が12万5、077人に対して女性が11万9、697人となっておりまして、女性が男性よりも5、380人少なくなっておりますが、就業者数で見ますと、男性が10万4、660人に対しまして女性は8万8、177人となっておりまして、女性が男性よりも1万6、483人少なくなっております。その要因といたしましては、先ほどの女性の進学、就職期の社会減や、出産や育児等による離職が考えられるところであります。
また、女性の年齢別の労働力人口の割合をグラフであらわしたいわゆるM字カーブは、出産、子育て期を迎える30代が底となっており、本県のM字カーブは、全国と比較いたしますと底が浅く、近年は、さらに改善が進んできているものの、依然としてM字カーブの傾向は残っている状況にございます。
次期総合計画の素案におきましては、さらに女性が働きやすい環境を整備するため、仕事と生活を両立できる環境づくりを政策項目に位置づけるとともに、県内企業の働き方改革の取り組みへの支援などによる雇用、労働環境の整備の促進や、保育サービスの充実、子育てに優しい環境づくりなどによる子育てと仕事の両立を図る家庭への支援などに取り組むこととして県民の皆様にお示ししているところでございます。
〇3番(千葉絢子君) 女性の労働者の6割は、第1子の出産で仕事をやめるという現状があります。申し上げてきましたのは、次期総合計画の目指す姿にどうアプローチしていくのか、その具体的な方策を示すアクションプランの策定においては、ただいま私が御指摘申し上げたような観点もぜひ取り入れていただきながら、目に見える形で成果を出そうとする戦略的な視点で指標を取り入れることも検討していただきたいとお願いしたいと思います。
いわて県民計画におけるアクションプランは、そういった観点からは戦略的ではなく、目標を満足させるための指標も多く取り入れられているような印象を受けております。ぜひ次の10年に、岩手をどう再生し、活力を生み出していくかに重点を置いた、文字どおりのアクションプランになっていくように御期待申し上げたいと思います。
次に、今後の財政についてお伺いいたします。
今月15日、政府は経済財政運営と改革の基本方針2018、いわゆる骨太の方針を閣議決定しました。その中の財政健全化につきましては、来年10月に予定されている消費税増税分の使い道を変更し、また、国と地方のプライマリーバランスの黒字化の達成時期を5年おくらせることが明記されました。一方で、2020年代になると団塊の世代が75歳に入り始めるなど、人口が減少する中での高齢者を中心にした社会保障費の増大が確実になる中、東京オリンピック、パラリンピック後の日本経済がどうなるのか、大方の予想では景気回復が鈍化するという不安を抱えている中での財政再建が果たして達成可能なのか不安に思っている国民や県民は多いことは想像にかたくありません。
2025年度のプライマリーバランス黒字化に向けては、社会保障改革を軸として、社会保障の自然増の抑制や医療、介護サービス供給体制の適正化、効率化、生産性の向上や給付と負担の適正化に取り組むことが重要との記載があります。また、予算編成との兼ね合いについては、地方一般財源総額について、2018年度の地方財政計画の水準を下回らないよう実質的に同水準を確保するということですが、県では、毎年、財源対策関係3基金からの繰入金に頼り、いわば貯金を切り崩しながら予算を組んでいる現状です。この基金の今年度末の残高見込みは、昨年度より146億円減少した232億円の見込みです。この中には震災復興特別交付金も含まれているため、いずれ精算しなくてはならない額も含まれており、実質的な残高はもっと少ないのが現実です。
こうした中、県では、安定的な財政運営のために今後10年間でどのようなシステムを構築し、財源を確保していく見通しか知事にお伺いいたします。
〇知事(達増拓也君) 今後の財政運営についてでありますが、次期総合計画を着実に推進していくために、中期財政見通し等を踏まえた中長期的な視点に立った財政運営、地方創生推進交付金等の国庫財源の有効活用、事業効果や効率性等を踏まえた事務事業の精査など、歳入、歳出両面での取り組みの強化、公共施設等総合管理計画に基づく県有施設の適正な管理や財政負担の平準化などに取り組みながら、持続可能な財政構造を構築していきたいと考えております。
また、先般閣議決定された経済財政運営と改革の基本方針2018において、国は、地方自治体がより自立的かつ自由度高く行財政運営できるよう、地方行財政の持続可能性向上に向けて取り組むとされていますことから、県としても、より地域の実情に応じた取り組みができるよう、地方一般財源総額の確保等、国に対して必要な要望を行ってまいります。
〇3番(千葉絢子君) 知事のこれまでの答弁をお伺いしておりますと、財源の確保については、地方交付税や国庫支出金などを着実に受けていくということがベースになっているようですけれども、人口減少の一途をたどる本県において、地方交付税は年々減少していくことも予想される中、復興財源の今後のあり方も不透明であります。
県の歳入の内訳は、自主財源は4割、一方で依存財源は6割となっている現状を見ますと、依存財源に左右されるのではなく、今後10年の新たな戦略でもって県税収入のアップによる自主財源比率を上げていくことが岩手県の安定的な財源を確保するのに欠かせない視点だと考えますが、この県税収入を上げていくための方策について知事はどのように考えているのでしょうか。
〇知事(達増拓也君) 財源の確保についてでありますが、県の歳入は、国庫支出金や地方交付税など、いわゆる依存財源の割合が高い状況にあり、国の予算や地方財政計画の変動の影響を受けやすい構造となっています。今後、持続可能な財政運営を行っていく上で、自主財源比率の向上も重要であり、県では、企業誘致や中小企業の育成強化などによる産業振興や人口減少対策等、あらゆる施策を通じて税源涵養を図ってまいります。
あわせて、国に対して、地域間の税源偏在といった課題に適切に対処し、地方自治体において、より自立的かつ自由度が高い行財政運営が可能となるよう求めてまいります。
〇3番(千葉絢子君) 私は、県の自主財源を確保していくことが安定的な財政運営に必要な視点だと考えております。先日、総務省自治財政局の大沢財政課長が当議会で講演を行った際、臨時財政対策債の残高が岩手県分で5、182億円、市町村分で2、540億円、合わせて7、700億円を超えることを知りました。これについては、後年、交付税措置をされ返済に充てられるということですが、この臨時財政対策債は年々増加の一途をたどっておりまして、社会保障費などの義務的経費の歳出の伸びが確実で、しかも課税できる世代が減少していく中で、どのタイミングで解消に向けて進んでいくのか、このまま地方交付税などを当てにしていていいのか本当に不安になっております。
この状況の中で、どうしたら戦略的な政策投資ができるのか非常に疑問を感じているわけですけれども、現在の債務残高は、結論を先送りしたまま目をつぶり、結果として将来世代へそのツケを回し続けているように感じられるのですが、この点について県はどのようにお考えでしょうか。
〇企画理事兼総務部長(佐藤博君) 安定的な財政運営に向けた対応についてでございますが、地方財政全体として、多額の財源不足額の恒常化に対し、臨時財政対策債の発行を含む対応が行われてきておりまして、本県においても、地方交付税の振りかわりとして毎年相当規模の臨時財政対策債の発行を余儀なくされてきたところでありまして、県債残高に占める割合も年々高まっている状況でございます。
臨時財政対策債の元利償還金相当額については、その全額を後年度、地方交付税の基準財政需要額に算入することが地方財政法に明記されるなど、制度的には担保されているところでございます。こうした制度的な手当てはあるものの、臨時財政対策債に依存した地方財政対策は制度の持続可能性の面で懸念があることから、法定率の引き上げも含めた地方交付税制度の抜本的な見直しを検討するよう、全国知事会等と連携しながら引き続き国に働きかけてまいります。
〇3番(千葉絢子君) やはり、依存財源が6割というものを、東京都並みとは言いませんけれども、交付税として他県に分配できるような、そういう強い岩手県をつくっていくという観点も地方自治の持続性というものを考えると必要になってくるのではないかと思っております。税源涵養のためにも、ぜひ投資できるような財政をきちんとつくっていく。そして、次の世代に手渡していくという方策を皆さんで考えていただきたいですし、我々もそこは研究をして提案をしていきたいと思っています。
次に、本県の地域医療の確保についてお伺いいたします。
本県では、県立病院が地域の中核的な役割を担っていますけれども、県立病院等事業に対して、県は医療機能に応じた基準に従い、一般会計から毎年200億円を超える繰り出しを行っています。半分から約6割が国の交付税などで賄われているということですが、それでも実質的な負担は毎年100億円程度に上ります。
かつて、県立病院等事業の経営改革の取り組みにより、現在の20病院と六つの地域診療センター体制に移行する際の議論におきましては、事前の地域住民側への説明が十分ではなく、計画への強い反発を招く結果となりましたが、これからの本県の地域医療の確保、医療政策のあり方については、こうした財政状況なども踏まえた、住民を交えた議論を始める時期に来ていると私は考えております。
県立病院等事業が現在の医療サービス提供体制を維持していくことは、地域医療を確保する上で重要と考えますが、厳しさを増す県財政運営の中、繰出金を交付していくことについて、医療政策上のこれまでの評価と、今後の繰出金交付のあり方についての考えをお伺いいたします。
〇保健福祉部長(八重樫幸治君) 県立病院等事業会計への繰出金についてでありますが、本県においては、山間地が多いことや民間の医療機関が不足している地域が多いという状況にあり、公的医療機関が本県医療の主要な機能を担ってきたところであります。県立病院は、僻地医療、救急医療、小児医療、高度専門医療など、採算性等の面から民間医療機関による提供が困難な医療を担うなど、地域に必要な医療を提供してきたものと認識しています。
県立病院等事業に対する負担金は、国が定める繰出基準等を踏まえ、不採算医療などの提供に要する経費に対し負担しているものです。
現在、県では、効率的かつ質の高い医療提供体制を構築していくため、県内九つの構想区域に地域医療構想調整会議を設置し、医療、介護関係者や市町村等の関係団体に加え、住民代表の参画も得ながら協議を行っています。この協議を踏まえながら、自治体病院間や民間医療機関との役割分担と連携を一層図っていくという視点に立って、今後も県立病院がそれぞれの地域で求められる役割を果たしていくため、国の定める繰出基準を基本としながら、必要な負担を行っていく考えであります。
〇3番(千葉絢子君) 以前の診療体制縮小の際の議論を、私は記者として取材をしておりました。そのときに住田町の町長とか、かなりの反発があっての結論だったと思っております。住民がどのように地域医療を守っていくお手伝いができるか、それは、県から言われたことに周りが従うということだけではなくて、住民から、どのような医療サービスを自分たちが必要としているのか、声を上げていくお手伝いをするということも、一つ、求められていく役割ではないかと思っております。
今回の質問では、今後10年の総合計画を策定するこのタイミングに合わせて、県としての見通しをお伺いしようと思っておりました。
今、政府では、元慶應義塾塾長の清家篤氏を座長としました自治体戦略2040構想研究会というものがありまして、現在40歳を過ぎたばかりの年代が高齢者の仲間入りをする2040年問題を見据えた自治体戦略の必要性について議論を行っています。
それによると、2040年には、日本の人口は1億1、092万人となり、毎年90万人ずつ減少する見込みであること。年間出生数は74万人になり、団塊ジュニア世代が全て高齢者となる2042年には高齢者人口が3、935万人と、全人口の36%を超える見込みとなっています。その際、行政は、持続的なサービスを提供していくために、自治体行政のあり方を大胆に構想する必要があると述べています。
その時代に自治体に求められる役割は、特に社会保障において、単なるサービスをプロバイドする側から、公助、共助、自助が機能し合う場を設定するプラットホーム・ビルダー、つまり、話し合いの場をつくる、持つことへの転換が求められるとしています。
今後の私たちの生活にかかわる社会保障や財政状況については積極的に県民に情報を開示し、住民が議論に参加することで、みずからの地域をどうしていきたいかを考える真の民主主義に導いていくことが、総合計画の推進や地域課題の解決に向けて必要と考えますが、この点について知事の所感をお伺いいたします。
〇知事(達増拓也君) 総合計画の推進や地域課題の解決に向けて、地域社会を構成するあらゆる主体の総力を結集し、地域の力を引き出していくためには、地域の現状や課題、強み、弱みなどを共有し、地域の資源を有機的に活用していくことが重要と考えておりまして、次期総合計画の策定に当たりましても、多様な主体がそれぞれ主体性を持って協働する県民本位の県政運営のさらなる推進について検討しているところであります。
また、県では、これまでも、社会保障経費の見込みなど、中期的な視点に立った財政運営を行うための中期財政見通しを毎年度公表しているほか、本県の人口の現状を分析し、長期的な展望を示した岩手県人口ビジョンなど、今後の県政運営を考える上で重要な要素となる情報も広く公開しております。
総務省の自治体戦略2040構想研究会の議論にも注視しながら、活力ある地域づくりや人口減少等の課題解決に向けて、住民の皆さんを初め、企業、NPOなどのあらゆる主体が議論に参加して、連携、協働した取り組みがさらに活発となるような県政運営を展開していきたいと考えております。
〇3番(千葉絢子君) 今回策定する次期総合計画は、今後10年の羅針盤となるものですが、今後の財政がどうなっていくのか、社会保障や税金がどうなっていくか、私たちにも予測がつきません。一たび首都圏や南海トラフを震源とする大きな地震などの災害が起きてしまえば、国からの交付金を当てにした財政や計画の当ても外れるかもしれません。そうなったときに、被害を最小限にするために、県税収入の税源となる県民の数をふやしていくこと、それから、県内の経済活動をより自立的なものにする取り組みこそ、今後10年の財政再建策への第一歩であり、次期総合計画の視点であるべきということを指摘して、この質問を終わりたいと思います。
次に、主要農作物種子法がことし4月1日をもって廃止されたことに伴う県の対応について伺います。
稲、麦、大豆などの種子の安定供給を行政が保証してきた主要農作物種子法が廃止されたことをめぐり、企業による種子の囲い込みや高価格での独占的販売などへの不安の声が農家や消費者の間で上がり、食料供給全般にわたる問題として取り沙汰されています。
これまでは、法律に基づき、主要農作物の奨励品種を決定するための試験の義務づけ、原原種、原種の生産、種子生産圃場の指定、生産された種子の審査などを都道府県が責任を持って行ってきました。
一方で、法律に基づいた公費による手厚い種子生産体制が民間の参入意欲を阻害しているとして、民間企業との競争条件を対等にし、国の総力を挙げた開発、供給体制の構築と、生産コストの低下につなげようという政府の方針で法律の廃止が決まりました。
今年度は、全都道府県が種子関連事業をおおむね維持し、安定供給の体制を継続する方針で、岩手県でも、ことし3月30日に、独自に要綱や要領を定め種子生産体制を維持するということですが、新潟県や兵庫県、埼玉県は条例を制定、また、北海道でも条例の制定に向けた検討を始めるなど、種子法の体制を実質的に引き継ぐ動きが出てきています。
今のところ、東北6県では独自の要綱、要領を制定し対応しているようですが、岩手県としては、条例化の必要性についてどのように考えているのでしょうか。
〇農林水産部長(上田幹也君) 条例化の必要性についてでありますが、県では、平成30年4月1日付で主要農作物種子法が廃止されたことに伴い、同日付で、岩手県稲、麦及び大豆の種子の生産等に関する要綱等を施行いたしまして、県において、原種供給及び種子生産に係る指導を行うなど、優良な種子を生産、供給する体制を維持、継続することとしたところであります。
全国の状況についても御指摘がございましたので触れさせていただきますが、種子の生産、供給を行っていない東京都を除きます46道府県が、種子法廃止後におきましても、従来どおり種子を生産、供給する体制を維持、継続していくこととしております。
また、その規定の方式でございますが、議員御指摘のとおり、新潟県、兵庫県、埼玉県の3県は条例の制定、残りの43道府県は、本県と同じく要綱の制定等により対応しております。
県では、これまで、説明会を開催するなど、生産者や関係団体に対しまして、新たな要綱に基づき、県が引き続き種子の生産、供給に関与する旨を周知したところでありまして、生産者の方々からは、種子法廃止後も、県が責任を持って種子生産を実施することがわかり安心したというような声が寄せられるなど、要綱等に基づき、従来どおりの生産、供給体制を維持、継続することに対し、一定の理解が得られているものと認識しております。
引き続き、他の道府県の動向を注視しながら、県が関与し、優良な種子を安定的に生産、供給する体制を堅持してまいります。
〇3番(千葉絢子君) ただ、昨年11月の農林水産省の通知では、これまで実施してきた業務を直ちに取りやめることを求めていないと都道府県に対して通知しつつ、種子生産については、民間の参入が進むまでの間、行政の知見を維持し、民間への知見提供を促進することとの記載があります。さらに、民間の競争力が整うまでの間、種子の増殖に必要な栽培技術等の生産に関する知見を維持し、それを民間事業者に対して提供するという役割を担うという前提があると続いているのです。
今後、外国の種子生産会社などが種子生産に参入してくることで、銀河のしずく、金色の風を初めとした県の浮沈がかかっているオリジナル品種の種子の質の低下はおろか、今後の存続さえも怪しくなってくるのではないかという農家の不安は当然であろうと私は思っております。
民間企業の種子生産に関する効率を考えますと、全国に存在する現在の多様な品種を高い品質で維持するのは、いずれ難しくなってくるだろうと思うのです。現在は、岩手県が責任を持って種子生産をする、これまでどおり行うというような方針を示していたとしても、例えば、兵庫県は、改廃に議会の承認が必要な条例とすることで、制度としての恒久化を図るために、いずれも知事が主導で条例の制定を行ったということです。それだけ、この種子法の廃止に伴う民間企業の参入は危ういという見方があるという裏づけになると思うのですけれども、本県は従前の体制を維持することとして、新たな要綱、要領を関係団体等への通知やホームページに掲載するほか、種子生産者への説明会等を開催していて、これまでのところ、種子法廃止に伴う問題は生じていないという農林水産部長の説明でありましたけれども、これで本当に十分だとお考えなのか、知事にお伺いしたいと思います。
〇知事(達増拓也君) 種子生産に係る今後の対応についてでありますが、本県の農業振興を図る上で、米、麦及び大豆の優良種子の安定供給は極めて重要であると考えており、種子法廃止後においても、要綱等に基づき、引き続き県が関与し、優良な種子を安定的に生産、供給する体制を維持しているところであります。
現時点において、生産、流通現場で粗悪な種子が流通するなどの問題は生じていないと認識しておりますが、今後とも、国や他の道府県の動向を見据え、種子生産者や関係団体の御意見等も伺いながら、優良な種子の安定的な生産、供給に向けて適切に対応してまいります。
〇3番(千葉絢子君) 私のところには、県のオリジナル品種についても、最初の年に比べて種子の質の低下を指摘する声というのが届いております。現在、種苗法において県が育成した品種に関しては、育成者としての権利を持っているため保護されていますが、県が今後オリジナル品種育成者の権利を手放して、民間企業への専用利用権を認めるということが絶対にないとは言い切れないのではないでしょうか。条例で定めることによって、権利を手放す際には議会の承認が必要であるという条件が整い、民間企業へのオリジナル品種の種子の提供を水際でとめることができるのではないかという、危機管理としての条例制定の意義があると私は考えているのですが、その点についてもう一度お伺いしたいと思います。
〇農林水産部長(上田幹也君) 県のオリジナル品種、例えば銀河のしずくあるいは金色の風でございますが、これに関しては非常に長い年月をかけ、県関係団体、機関が一丸となってつくり上げたものでありまして、それに対する費用についても相当な額を投じております。特に県内での新品種に関しての競争が激化している現状を考えますと、この二つの品種を初め県のオリジナル品種を維持し、それをてこに我が県の米の生産あるいは米の評価、これを定着させていくことが非常に重要だと考えております。そういった状況を考えますと、現時点もそうでございますが、将来にわたり、民間事業者にこういった権利を譲渡するということは今現在は考えておりませんし、将来についても、恐らくそういったことはあり得ないだろうと考えております。
〇3番(千葉絢子君) 現時点ではそうかもしれません。ただ、将来に対しての保証というのは、現時点ではどなたも持てないのではないでしょうか。また、将来において、権利が譲渡されるような事態になったときに、恐らく今答弁をいただいた上田農林水産部長は、部長ではないかもしれない。そうすると、責任の所在がどこかというところが今の答弁では不安な思いがいたします。
新潟県と兵庫県においては、いずれも知事のリーダーシップで条例を制定したのです。議会から条例を制定してくれということではなくて、知事御自身のリーダーシップによって条例を制定する必要があるとして条例をつくったわけです。現在、県が育成者権というのを保有していても、それが今後も保持されるという保証は、申し上げたとおりどこにもないわけです。県が民間企業に専用利用権を認めてしまう、決定してしまう事態になれば、議会や県民の了解を得られないまま、種子生産の主体が民間になってしまうということが現状で防げない、それが問題だと私は申し上げております。
知事は、岩手の農業や農家の所得向上を含めた今後の農業政策を御自身でしっかりと考えていただいて、全国がしのぎを削っている銘柄米を初め、オリジナル品種のブランド化、高付加価値化を通した本県の農業について、これからもリーダーシップをとって、開発、育成、生産、保護に当たるべきだと考えておりますので、ぜひ知事御自身のリーダーシップを発揮して条例を制定していただくよう、強く望みたいと思います。
最後に、いわての復興教育についてお伺いしたいと思います。
県では、平成23年の東日本大震災津波被害が発生したことをきっかけに、岩手の子供たちが郷土を愛し、復興、発展を支える人材をつくろうと、いきる、かかわる、そなえるの三つの教育的価値を育てるとするいわての復興教育を継続しています。
発災直後は、内陸の市町村が沿岸の市町村とそれぞれつながって学校を支援する横軸連携が学校独自でも行われていて、沿岸に通って支援をしたり、子供たちが交流をしたりという活動が行われていたと記憶しております。しかし、現在では、副読本による震災教育が中心となり、内陸の子供たちが沿岸各地まで足を運んで学習する機会が格段に少なくなっていることを私は心配をしております。現在の学校における復興教育が副読本中心に行われ、現地に足を運ばなくなっている一番の理由は何でしょうか。
〇教育長(高橋嘉行君) 議員御案内のとおり、この復興教育につきましては、東日本大震災津波を経験した中でクローズアップされた、いきる、かかわる、そなえるの三つの教育的価値を育んでいくために、県教育委員会においては、市町村教育委員会との連携のもとに、これまで県内全ての公立学校で推進し、それぞれの学校や地域の実情等に応じた取り組みを行ってきております。
副読本につきましては、各学校が復興教育に取り組む際の具体的な教材として作成したものでございまして、小中学校におきましては、その活用を基本として多様な教育活動に取り組んできております。
復興教育を推進する中で、小、中、県立学校の各校長会による横軸連携を基本とした活動もまた積極的に行われ、内陸部の学校が沿岸部の学校と交流したり、被災地でのボランティア活動を行うなど、さまざまな支援や合同での活動にも取り組んできたところであります。
一方、東日本大震災津波から7年余が経過し、学びの場の復興の進展等に伴い、各学校における復興教育の進め方も工夫しながら具体的な活動を見直して取り組んできていることや、風水害、地震等さまざまな自然災害に対する防災、減災対策などにも取り組んでいる防災研修会、また、相対的に沿岸部でのボランティアなどの機会が減ってきたことなどが、発災直後等に比して現地に行く機会の減少の主な理由ではないかと考えております。
〇3番(千葉絢子君) 県立盛岡南高校では、防災復興教育といたしまして、総合学習の時程35時間のうち、10時間を学校行事と位置づけて、毎年1年生を対象に現地調査などを実施し、沿岸の陸前高田市、釜石市、宮古市、山田町、大槌町などを見て遺構をめぐり、語り部から話を聞き、まとめ学習として文化祭においてパネル展示をする取り組みを平成24年から続けています。
盛岡南高校の生徒たちによると、内陸部の小学校や中学校では、復興教育の際に、実際に現地に行くことはなかったと言っている子供たちも多くいました。しかし、この現地学習を通して、聞いただけでは実感が湧かない。現地に赴き、足を踏み入れることの大切さを知り、周りの人を助けられる方法を考えたい。自分の記憶も薄れていたが、現地を訪れて復興への気持ちが高まった。言葉では伝わりにくい。足を運んでみて感じることがある。年々情報が減っていく。見ただけではなく、行動したいと思った。また訪れたいという、ふーん、そうなんだという受け身の印象から、自分が何ができるかを考えたいという能動的な気持ちへの変化があったようです。
現在の状況では、被災した沿岸地域の子供たちとそうではない内陸の子供たちの津波に対する理解、それから防災意識にはどんどん乖離が生じ、震災の記憶と教訓は机上の出来事として現実味が薄れていくのではないかと非常に危惧をしております。
あのとき、県内は寒い中での燃料不足で、ガソリンの給油を待つ車の中で亡くなった方がいたこと。同じまちでも津波の被害が出たところと出なかったところがはっきりと分かれたこと。どこに逃げた人は助かったのか。山の中で体を寄せ合って一夜を過ごした保育園の子供たちがいました。自分のお尻を山の上に押し上げてくれた大人が、その直後に波に飲まれていったこと。自分の奥さんと子供が行方不明でありながらも、必死に人命救助をしていた消防団員の方。後日、遺体安置所での無言の対面。あの震災の記憶はまだ生々しくその場に残っているものであり、津波の映像も残っていながら、それを表に出すことも限られる現状で、復興教育の副読本のみで、全ての子供たちがその痛みや悲しみを分かち合うことはできないと私は思います。
あの津波の恐怖を直接的に知らない内陸の子供たちにこそ、実際に現地を訪れ、自分たちと同年代の子供たちが、あのときにどんな思いをしたのかを知り、共感することで、具体的なアクションにつなげていく、それが真の復興や発展を支える人材の育成につながるのではないかと思いますが、どのような認識でいらっしゃるのでしょうか。
それから、バス代の負担について、各家庭の協力を得ながら毎年現地研修を継続している盛岡南高校ですが、この活動の移動経費については、内陸の子供たちの現地研修の際はいわての学び希望基金から補助するなど、財政的な支援をしながら、内陸の学校でも、盛岡南高校に限らず、現地研修を積極的に実施していく必要があると思いますが、この2点についてまとめてお伺いしたいと思います。
〇教育長(高橋嘉行君) 本県には、昭和8年の昭和三陸地震津波や明治29年の明治三陸地震津波など、多くの津波災害の歴史があり、内陸部を含めて、全ての地域の岩手の子供たちが、東日本大震災津波を初め過去に起きた津波の状況、当時の様子などに理解を深めることは、生きる力を育む上で極めて重要だと考えております。
このような観点から、本年度においては、いわての学び希望基金を活用して交流学習スクールという事業を新たに設けまして、沿岸部で復興に携わっている皆様の御協力もいただきながら、沿岸部の学校と内陸の学校との新たな交流にも取り組むこととしており、このような機会も通じながら、児童生徒の沿岸部への理解や津波災害などへの理解を一層深め、本県の復興や発展を支える人材の育成に努めていきたいと考えております。
それから、いわての学び希望基金のお話がございましたが、御案内のとおり、この基金は、東日本大震災津波による被害を受けた児童生徒の教育の充実のために、県内外の多くの皆様から寄せられた寄附金を原資として設けられているものでありますので、内陸の子供たちを対象とした活動にこの基金を活用することには慎重な検討が必要だと考えております。
いずれ、復興教育においては、今後とも全県を対象に取り組んでいくことが大震災の記憶の風化の防止やさまざまな自然災害への防災対策などを推進するために重要と考えておりますので、市町村教育委員会等との連携を図りつつ、特にも経済的に困難な家庭状況にある児童等への現地学習に対する支援のあり方なども検討しながら、復興教育の充実に努めていきたいと考えております。
〇3番(千葉絢子君) ぜひ、いわての復興教育においては、内陸の子供たちへの現地研修にも力を入れていただいて、我々大人と同じ目線で復興を語れる人材の育成に努めていただきたいと思います。
以上で質問を終わります。御清聴ありがとうございました。(拍手)
〇副議長(五日市王君) この際、暫時休憩いたします。
午後4時4分 休 憩
出席議員(45名)
1  番 千 田 美津子 君
2  番 臼 澤   勉 君
3  番 千 葉 絢 子 君
4  番 ハクセル美穂子 君
5  番 菅野 ひろのり 君
6  番 柳 村   一 君
7  番 阿 部 盛 重 君
8  番 佐 藤 ケイ子 君
9  番 佐々木 宣 和 君
10  番 川 村 伸 浩 君
11  番 田 村 勝 則 君
12  番 工 藤   誠 君
13  番 高 田 一 郎 君
15  番 佐々木   努 君
16  番 千 葉   進 君
17  番 佐々木 朋 和 君
18  番 名須川   晋 君
19  番 軽 石 義 則 君
20  番 神 崎 浩 之 君
21  番 城内 よしひこ 君
22  番 福 井 せいじ 君
23  番 佐々木 茂 光 君
24  番 高 橋 孝 眞 君
25  番 木 村 幸 弘 君
26  番 小 西 和 子 君
27  番 工 藤 勝 博 君
28  番 高 橋 但 馬 君
29  番 小 野   共 君
30  番 郷右近   浩 君
31  番 高 橋   元 君
32  番 関 根 敏 伸 君
33  番 岩 崎 友 一 君
34  番 中 平   均 君
35  番 五日市   王 君
38  番 斉 藤   信 君
39  番 小野寺   好 君
40  番 飯 澤   匡 君
41  番 佐々木 順 一 君
42  番 田 村   誠 君
43  番 伊 藤 勢 至 君
44  番 工 藤 勝 子 君
45  番 柳 村 岩 見 君
46  番 千 葉   伝 君
47  番 工 藤 大 輔 君
48  番 樋 下 正 信 君
欠席議員(1名)
14  番 吉 田 敬 子 君
説明のため出席した者
休憩前に同じ
職務のため議場に出席した事務局職員
休憩前に同じ
午後4時23分再開
〇副議長(五日市王君) 休憩前に引き続き会議を開きます。
日程第1、一般質問を継続いたします。高橋但馬君。
〔28番高橋但馬君登壇〕(拍手)

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