平成28年9月定例会 第6回岩手県議会定例会会議録

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〇26番(小西和子君) 社民党の小西和子でございます。
通告に従い順次質問いたします。
初めに、安倍政権の政策と県政について伺います。
政府は、10月25日の閣議において、南スーダンにおけるPKOへの陸上自衛隊派遣に関し、本年10月末となっている派遣期限を来年3月末まで5カ月間延長する実施計画の変更を決定しました。その南スーダンの国内情勢について、本年10月下旬、NHKを初めとするマスコミは、本年7月に南スーダン政府軍と反政府勢力との激しい戦闘の中で、政府軍が市民を殺害し、PKOの部隊は市民の安全を守ることができなかった旨の報告書を国際的な人権団体が公表したと報道しました。この報告書によると、政府軍が市民を無差別に攻撃するとともに、対立する民族出身の住民を殺害し、さらには女性を乱暴したとして、政府軍を強く非難しています。また、同報告書は、国連のPKOの部隊についても、市民を守ることができず、援助団体のスタッフなどが助けを求めた際にも誠実に対応しなかったなどとして、失望したと見解を述べる一方、反政府勢力についても、国連が設営する避難民キャンプに入り込み、避難民を人間の盾にした可能性があると批判しています。同国の首都ジュバにおいては、7月の政府軍と反政府勢力の激しい戦闘でぶつかりの結果、270人以上が死亡しています。まさに戦争状態にあり、国際平和協力法に定めるPKO派遣5原則にある、紛争当事者の間で停戦合意が成立していることに合致しない状況にあることは明白です。
これに加え、政府は、本年11月下旬から新たに派遣する第11次部隊には、多くの国民の反対を押し切って強行可決させた安全保障関連法に基づく駆けつけ警護と宿営地の共同防衛の新任務を付与する方向で最終調整しています。この第11次部隊は青森県青森市に本拠を置く陸上自衛隊第9師団第5普通科連隊であり、この部隊には本県の出身者57人が所属しているとも言われています。政府がこのまま南スーダンのPKOに自衛隊を派遣し続け、さらに新部隊に対し、憲法に違反し、集団的自衛権の行使への道を開く駆けつけ警護などの新たな任務を付与すれば、本県出身者を初め多くの自衛官の命が危険にさらされることにつながります。政府に対し、我が国の平和の礎である憲法を遵守し、立憲主義に基づく政治の実行を強く求めるものです。
このことから、南スーダンにおけるPKOへの自衛隊の派遣を直ちに中止すること、あわせて、憲法を遵守し、昨年9月に強行可決した安全保障関連法を廃止するとともに、廃止されるまでの間、同法に基づいた新たな任務を自衛隊に付与すべきではないと考えますが、知事の見解を伺います。また、このことが県民や県政に与える影響についてどのように捉えているか伺います。
次に、環太平洋連携協定─TPPや沖縄問題など、国民の声に耳を傾けない強権政治についてです。
11月4日、TPPの承認案と関連法案について、衆院特別委員会で与党などが採決を強行しました。TPPは、農林水産業、食の安全、公的医療制度や薬価、労働、公共事業、著作権、ISDS条項など、国民生活や地域経済にも大きな影響を及ぼします。国民に十分な情報提供を求めた国会決議に違反するやり方です。沖縄の基地問題でも、県民の声に耳をかさない強権的なやり方については容認できません。
そこで伺いますが、まず、TPP批准による岩手県や県民に与える影響をどのように捉えているか伺います。また、このような国民の声に耳をかさない強権的政治について知事の見解を伺います。
次に、台風第10号被害と東日本大震災津波からの復旧、復興について伺います。
8月30日に、1951年、気象庁が統計をとり始めて以来初めて東北地方の太平洋岸に上陸した台風第10号は県内各地で記録的な大雨となり、河川の氾濫などによってこれまでに20人ものとうとい命が失われるとともに、いまだに3人の方が行方不明となっております。お亡くなりになられた方々に心より哀悼の意を表するとともに、被害に遭われた皆様方にお見舞いを申し上げます。
住家被害、全壊472棟、半壊2、279棟、一部損壊75棟、床上浸水104棟、床下浸水1、357棟、被害総額は約1、440億円にも上ります。いまだに213人の方々が避難所で不自由な生活を強いられています。うち、65歳以上の方は75人、12歳以下は15人。ほかに、自宅以外から通学している子供は30人以上います。
避難者のニーズについては、避難所に駐在する町職員が把握し、個別に対応していること、岩泉保健・医療・福祉・介護連携会議で情報共有を図りながらきめ細かな支援を行うようにしていること、避難者の健康については、保健師が避難所を定期的に巡回し、健康状態の確認、健康相談などを実施しており、高齢者や子供など要配慮者の支援も行っていること、また、通院などの交通手段となる町民バスが運行されていることなど、被災した方々に寄り添った対策がとられていることに敬意を表します。
心のサポートについては、今後、児童生徒の心のケアのニーズが増加するものと思われます。継続的かつ中長期的な支援が求められます。
9月下旬と10月上旬に被災地域を訪問し、被災状況や要望をお聞きしました。
そこで、学校施設の被害及び復旧状況について伺います。早急に復旧をし、教育活動に支障がないようにすべきと考えますが、いかがでしょうか。子供たちの心のケアについてもあわせて伺います。
また、日常の連絡手段でもあり、被災者支援情報など被災者の生活を支えている情報通信基盤などにも大きな被害が生じました。条件不利地域において市町村が整備した光ファイバーや共聴組合が保有するテレビ共同受信施設などの情報通信基盤の早期復旧を行うべきと考えますが、いかがでしょうか。
さらには、復旧に当たる人材確保が不可欠です。特にも、被災した道路や水道の本格復旧を進める自治体の土木技師が不足しており、県、市町村挙げての支援が必要と考えますが、どのような対策を講ずるのか知事にお伺いいたします。
多くの命を奪い、故郷が失われた東日本大震災津波から5年8カ月が経過しようとしています。道路の復旧、災害公営住宅の整備などによって一部では生活の再建に向けた環境が整いつつありますが、今なお応急仮設住宅などに1万6、500人を超える方々が入居しております。県職員を初め、関係の方々は身を粉にして復旧、復興に奮闘しておりますが、深刻な人手不足、復興格差の広がりや避難ストレスの増加、財源問題など、今も多くの課題を抱えています。
中でも、マンパワーなくして復旧、復興は進みません。4月1日時点で知事部局の職員定数は4、377人と前年度に比べて23人ふえているものの、欠員数は140人と高どまりとなっております。人員不足は深刻な状況で、病休者を受け入れる余裕がないため、再度病休に入る職員が目立ちます。また、年度途中の退職者が出たり国体対応への人事異動があったりなど、人員不足は深刻化しています。復旧、復興業務優先であることから、内陸の職場から人員不足の声が多く上がっています。人員不足を解決するための道筋を知事にお伺いいたします。
任期付職員の雇用について、本人希望を尊重して5年まで延長することとし、ことしで5年目となっています。人員確保のため、既に県の職場に精通した職員として任期の定めのない職員などへの選考採用を行っておりますが、選考の結果はどのようになっているか伺います。
自民党政権となって以来、地方交付税減額など国による地方自治への不当な介入により、職員の勤務労働条件が切り下げられています。制度ありきではなく、県独自の姿勢を明らかにし、国が押しつけようとしている諸制度に対し、反対姿勢を明確にすべきと考えます。給与制度の総合的見直しを初め、公務員給与引き下げが先行し、諸手当改善の議論は消極的であります。復興業務のみではなく、早朝から夜遅くまでの国体業務、また、これらの業務への支援のために職員が抜けた職場で必死に日常業務に当たるなど、県全体で厳しい状況が続きました。各地で奮闘する職員の実態に応える勤務環境改善への努力をするよう人事委員会として必要な指導を行うべきと考えますが、いかがでしょうか。
次に、豊かな教育の実現について伺います。
いじめ、不登校など、生徒指導の課題が深刻化していますが、30人前後の学級編制にすると、一人一人へのきめ細かな指導、学級や子供の落ち着き、学力向上、問題行動の減少など、教育効果があると報告されています。1学級の人数を比較すると、OECD加盟国平均が小学校で21人、中学校で23人に対し、日本では小学校で27人、中学校で32人と、日本はどちらも平均を大きく上回っています。
秋田県の小学1年生、2年生の少人数学級は2001年度に導入されており、2002年度からは中学1年生でも実施され、2016年度で小学1年生から中学3年生まで少人数学級が実施されています。福島県は11年前から、山形県は5年前から実施されています。
一方、岩手県は東北では一番遅く2006年度から小学1年生に導入され、2007年度には2年生に拡充されました。小学1年生で比べると、秋田県とは5年間の開きがあります。その後、中学1年生、小学3年生、小学4年生と実施され、岩手県でもことしやっと中学2年生にも実施されました。岩手県が力を入れている少人数指導のための県単独予算が約3億1、000万円で6、000万円増、すこやかサポート14人分、学校生活サポート18人分の増員が図られたことは評価されております。
子供を取り巻く環境が多様、複雑化する中で、35人以下学級が中学2年生に拡大されたことは前進です。しかし、学校行事、生徒会活動などの取り組みは学級単位を基本としているので、中学2年生から中学3年生は通常クラスがえをしません。中学3年生でクラスがえをしない選択をすれば、授業時数の大幅な増加やクラス担任配置など、さらなる多忙化につながります。このことから、学校現場では、2017年度、中学3年生までの少人数学級の拡大を切望しております。
少人数学級は、国の責任で早期に実現すべきであります。義務標準法が改正され、小学1年生の基礎定数化が図られましたが、岩手県では、小学校2年生から小学4年生、中学1年生、2年生については加配措置にとどまっています。これまでの答弁では、国における財政健全化の中での教職員定数など、総合的に勘案し、検討していくとのことでした。岩手県に生まれたために十分な教育を受けることができないなどということがあってはなりません。岩手県も東北のほかの県のように県単独予算で中学3年生に少人数学級を実現すべきと考えますが、いかがでしょうか。
学費が高騰し、世帯年収が下がり続ける中で、家庭の教育費負担がかつてなく重くなっています。既に大学生の5割超、大学院生の6割超が何らかの奨学金を受給しなくては学業を続けられないのが実態です。
我が国の公的奨学金制度の中心である独立行政法人日本学生支援機構による奨学金は貸与型の奨学金制度であり、その7割超が年3%を上限とする利息つきの奨学金となっています。近年、貸与者数及び貸与金額が増加を続ける一方で、学生の就職難や非正規労働の増加などから、卒業後も奨学金の返還ができずに生活に苦しむ若者が急増しています。独立行政法人日本学生支援機構は返還期限の猶予や減額返還などの制度を設けてはいますが、適用の要件が厳しく、民間サービサーによる苛酷な債権回収などが社会問題ともなっています。
奨学金を活用した大学生などの地元定着促進制度を実施している県は、昨年度は栃木県、富山県、鳥取県、山口県、今年度は秋田県、山形県、福島県ほか11県です。
〔副議長退席、議長着席〕
この制度により、地方大学などから地元企業への就職や、都市部の大学などから地方企業への就職を促進することがうたわれております。地元企業に就職した場合は返還を免除とあります。岩手県でも実施すべきと考えますが、いかがでしょうか。
県内自治体の奨学金制度も15市町村で実施されています。無利子の貸与型となっております。岩手県としては、いわての学び希望基金奨学金は小学生から大学生までを対象として給付していることは高く評価されています。国でも3万円程度の給付型奨学金の創設を検討しておりますが、岩手県として、貧困の連鎖を断ち切るためにも給付型奨学金創設について検討すべきと考えますが、いかがでしょうか、知事にお伺いいたします。
次に、子供の貧困対策について伺います。
先進諸国における貧困が社会問題化する中、日本では、2009年になり、ようやく政府が相対的貧困率を公表しました。2013年国民生活基礎調査によれば、国民全体の貧困率は16.1%、データのある1985年以降で最も高い数値となりました。ところが、子供の貧困率は、国民全体の数値を上回る16.3%という高さです。ひとり親世帯など子供がいる現役世帯のうち、大人が1人の世帯の貧困率は54.6%とさらに深刻な数値となっています。OECD諸国で比較しても日本は貧困率が高いグループに位置し、対策の推進が望まれています。
こうした中、やっと2014年1月、子どもの貧困対策の推進に関する法律が施行されました。岩手県でも2016年3月にいわての子どもの貧困対策推進計画が策定されました。現在、重点施策として、教育の支援、生活の支援、保護者に対する就労の支援、経済的支援、被災児童等に対する支援に取り組んでいます。
沖縄県では、本年、子どもの貧困対策計画を策定するに当たり、独自に県の子供の相対的貧困率を把握し、29.9%と推計しました。この数値は、国全体の数値16.3%の約1.8倍にも及びます。このように、貧困の出現状況には地域差があります。沖縄県では実態調査を行いました。子供への調査事項は、将来の夢、物品の所有状況、友達との関係、食事、学校生活、自己肯定感です。保護者への調査事項は、就学援助の利用、家計と子供への支出、子供の進学に関する意識、困窮経験など9項目です。沖縄県のように岩手県でも独自に実態調査を進め、貧困を可視化していくことが重要と考えます。また、岩手県の子供の貧困率を推計することで取り組みの効果を測定するためのバロメーターとなるものと考えますが、いかがでしょうか、知事にお伺いいたします。
岩手県のひとり親家庭を例に母子家庭の母の月の就労収入状況を見ると、5万円未満6.5%、10万円未満18.8%、15万円未満40.7%と、15万円未満で66%を占めます。所得状況は、教育費の私費負担の格差に直結します。
ある中学校の入学式の日、欠席した生徒がいました。家庭訪問をして欠席の理由がわかりました。制服を準備できなかったからでした。担任は、3月に卒業した生徒たちから制服や運動着など学校生活に必要なものを譲り受け、すぐに届けました。その生徒は次の日から元気に登校したということです。入学準備にかかるお金が貧困家庭に重くのしかかります。
地方自治体では、低所得者向けに学校生活でかかるお金を就学援助として支給していますが、まだまだ足りないのが現実です。多くの自治体は、制度上、新入学用品費を入学後に支給しています。このことから、各自治体では、制服代など何らかの支援措置を検討すべきと考えます。
現在では存在しない国名の入った大型地図で学習している学校があります。公費で賄うべき諸用紙代や図書費を学校徴収金として保護者負担としている学校があります。教育現場の予算や保護者負担について実態を把握すべきと考えます。さらには、教育予算における地方交付税基準財政需要額の学校図書館図書費、教材費、教育用コンピューター費では実際の積算単価措置と乖離して減額となっており、教育現場への影響は甚大であります。県教育委員会として、保護者負担を減らす観点からも、教育現場の実態を踏まえた教育予算の増額に向け取り組みを行うべきと考えますが、いかがでしょうか。
貧困の連鎖の防止の観点の取り組みで、2015年度は盛岡市、宮古市、滝沢市、雫石町、葛巻町、岩手町、紫波町、矢巾町で被保護世帯または生活困窮世帯の中学生を対象に学習の場の提供や各種支援を行っておりますが、現状と今後の取り組みの拡大について伺います。
また、県内では、NPO法人による子ども食堂が実施されています。県においても実施の拡大に向けて取り組んでいくべきと考えますが、子ども食堂の実施状況と、県としての今後の取り組みについて伺います。
経済的貧困は、生活資源の不足にとどまらず、子供の健康、成長、発達、学力、進学、家族関係、人間関係、精神保健などさまざまな影響を及ぼし、子供の将来のみならず、社会の安定にも深くかかわります。子供たちが自分の可能性を信じ、未来を切り開いていけるようにするためには、いわての子どもの貧困対策推進計画が真に実効あるものにならなければなりません。
新聞やテレビでは、毎日のように児童虐待の事件が報じられています。岩手県の昨年度の児童虐待相談対応件数は1、058件でした。昨年度に比べて25.4%増加しています。身体的虐待30.7%、性的虐待1.9%、ネグレクト25.1%、心理的虐待42.3%です。高水準の要因としては、都市化、核家族化などによる家庭養育機能の脆弱化や子育ての孤立化、妊娠期からの育児不安の増大などが挙げられます。児童虐待相談対応件数の大幅な増加をどのように分析しているのでしょうか。また、要因を解決するための児童虐待防止の取り組みと課題、あわせて相談対応体制について伺います。
最後に、男女が互いに尊重し合い、ともに参画する社会について伺います。
10月26日、世界経済フォーラムは、政治、経済、健康、教育の4分野での性別格差を評価した国別ランキングを発表しました。日本は144カ国中111位となり、主要7カ国で最下位、前年の145カ国中101位から大きく順位を下げました。インドは87位と、日本を追い越しました。安倍政権は2014年から全ての女性が輝く社会づくりを掲げていますが、日本は教育や健康の分野では比較的格差が小さいのですが、経済と政治の両分野は厳しい評価を受けました。日本は女性の大学進学率上昇などが評価されたものの、専門的、技術的労働者の数で男女差が拡大した点や、女性の所得水準の低さが評価を下げました。2013年の統計によれば、男性正規雇用者の平均賃金に対する男女間平均賃金格差の比率は約27%で、OECD加盟国の中で3番目に格差が大きくなっています。これは正規雇用で比較したものですが、非正規雇用を含めるとさらに格差が開きます。2014年の岩手県の事業所規模5人以上で比較すると、約39%と前年よりも格差は拡大しています。男女間平均賃金格差は子供の貧困に直結します。つまり、多くの子供の貧困は女性の貧困が要因となっています。
厚生労働省では、男女労働者間の格差について企業間での実態把握や取り組みの必要性の気づきを促す男女間賃金格差解消に向けた労使の取組支援のためのガイドラインやポジティブ・アクションを推進するための見える化支援ツールの作成及び普及啓発により、企業の自主的な取り組みを支援しています。岩手県では、男女間賃金格差解消に向けどのような取り組みを行ってきたのか伺います。子供の貧困対策のためにも男女間賃金格差解消に向け取り組むべきと考えます。今後の方針もお示し願います。
2016年4月、女性活躍推進法が全面施行されました。岩手県でも、4月に女性活躍推進のための特定事業主行動計画を策定しました。これを次世代育成支援のための特定事業主行動計画─子育て応援プランと相互補完するものと位置づけています。仕事と家庭の両立とキャリアアップの両方の実現を目指すとしていますが、欠員が多い中、多忙化、超過勤務労働など、環境の改善が進められないままの女性の活躍は負担増となることが懸念されますが、実態をどのように捉えているのでしょうか。あわせて、今後の取り組みについても伺います。
性暴力に遭った被害者に心と体のケアを提供するワンストップ支援センターの設立が全国で進んでいます。20カ所を超える都道府県で支援体制ができました。内閣府は2012年、ワンストップ支援センターは都道府県に最低1カ所は必要との見解をまとめ、センター設置のための手引を作成しました。国のモデル事業を活用して設置を目指す自治体もふえています。岩手県も設置を積極的に検討すべきではないでしょうか。その際、相談に当たる職員を正規職員として任用し、相談対応に関する質の向上に努めるべきと考えますが、いかがでしょうか。
知事は、2月定例会で、男女がともに個性と能力を発揮し、活力ある地域社会の形成に向け、男女共同参画やDVの根絶に関する意識啓発などに引き続き取り組んでまいります。また、就労、起業、子育て支援など、女性の職業生活に関する相談窓口を設置し、女性の活躍を幅広く支えてまいりますと所信表明演説をしておりますが、岩手県の男女共同参画の現状についてどのように捉えているのでしょうか。今後の男女共同参画社会実現への決意もあわせて伺います。
以上で私の質問を終わります。御清聴ありがとうございました。(拍手)
〔知事達増拓也君登壇〕
〇知事(達増拓也君) 小西和子議員の御質問にお答え申し上げます。
まず、南スーダンへの自衛隊の派遣についてでありますが、現在、政府において、南スーダンのPKOに派遣している陸上自衛隊に対して、安全保障関連法に基づく駆けつけ警護などの新たな任務が付与されることが検討されています。
安全保障関連法については、法案の審議の過程においても、多くの国民や専門家から反対を含むさまざまな意見があったものと認識しております。
こうしたことから、安全保障関連法については、今後も民意を踏まえて議論を行う必要があり、同法に基づく新しい任務の付与については、より慎重な判断が求められていると考えます。
自衛隊の海外における武力行使は、全ての国民にとって、ある一線を越えることであり、岩手県民にとっても人ごとではありません。その意味でも、政府には、国民の民意を踏まえた慎重な対応が求められると考えています。
次に、TPP批准による影響についてでありますが、TPP協定は、本県の基幹産業である農林水産業分野を初め、商工業、投資、医療、労働など県民生活や経済活動の幅広い分野に大きな影響があるものと考えられています。
例えば、農業分野においては、農産物の輸入拡大につながり本県の農業生産額が減少するなど、生産活動や農村社会等に大きな影響を与えることが懸念されます。
また、製造業分野においては、関税撤廃による輸出の増加により販路を拡大するチャンスとなることが考えられる一方、大手メーカーが部品の供給元を変え、TPP域内での調達比率を上げるなど、サプライチェーンの変化に伴うマイナス影響が生じることが考えられます。
国においては、農林水産物について品目ごとに生産額への影響を示していますものの、それ以外については、国の示す情報が、日本のマクロ経済に与える経済効果に限られているなどの制約のため、本県への影響を数量的に推計することは困難なところであります。
次に、国民の声の政治への反映についてでありますが、今、述べましたように、TPP協定は、国民生活や経済活動の幅広い分野に大きな影響があるものであり、十分な情報開示と説明を行って、国民的な議論を尽くした上で慎重に判断することが必要と考えております。
次に、復旧に当たる人材確保対策についてでありますが、県では、発災直後に、県市長会及び県町村会を通じて、県内市町村に対しまして職員派遣の要請を行うとともに、国に対しては、公共土木施設等の復旧を担う技術職員等の人材の確保について要望したところであります。
また、特にこの台風第10号被害の大きい岩泉町に対しましては、発災直後から現地に職員を派遣して町のニーズ把握に努めているほか、現在は、災害査定に向けた県内市町村の土木技師等の派遣について調整を行い、順次確保しているところであります。
災害復旧の着実な推進に向け、被災市町においては中長期的な人材確保が必要となりますことから、引き続き、内陸市町村に支援を要請しますとともに、国や関係団体等と連携して県外の自治体に働きかけるなど、さまざまな手段によってマンパワーの確保に取り組んでまいります。
次に、県における人員不足の解消についてでありますが、東日本大震災からの本格復興や台風第10号災害への対応に加え、県政の重要課題である岩手ならではのふるさと振興、いわて県民計画第3期アクションプランの推進などに向けた体制を構築することが、重要であると認識しております。
これまでも、新採用職員採用数の大幅な拡大、任期付職員や再任用職員の採用、都道府県等からの応援職員の受け入れなどを推進してまいりましたほか、本年度は、全国知事会を通じて人的支援の継続を要請しますとともに、新たな取り組みとして、宮城県、福島県に先駆けて、任期付職員経験者を対象とした選考考査を実施しておりまして、有為な人材の確保を図っております。
今後におきましても、こうした人材確保の取り組みを推進しますとともに、事業の効率化や重点化などにも十分配慮して、必要な人員体制の構築に取り組んでまいります。
次に、給付型奨学金についてでありますが、旧日本育英会が実施していた奨学金事業は、特殊法人の整理合理化によって、高校生を対象とする事業が都道府県に移管された一方で、大学生等については、引き続き国が担うこととされたものであり、基本的な考え方としては、今後においても、それぞれの役割をしっかりと担っていくことが重要であると考えています。
高等教育の機会均等を図る上で、学生への経済的な支援は極めて重要でありますことから、県においては、繰り返し、国が行う奨学金制度の拡充を要望してきたところであり、国においては、こうした声に応えて、現在、給付型奨学金の創設に向けて、給付額、対象者の要件等の具体的な検討を行っていると承知しております。
県におきましては、東日本大震災津波により親御さんを亡くされた学生等を対象とした、いわての学び希望基金奨学金の給付や一定の条件により返済減免制度を有する医師養成奨学金、看護職員修学資金等の貸与を行ってきているところでありますが、これらに加えて、学生のUターンや地元定着を促進して本県のふるさと振興を推進していくため、産業界等と連携し、新たな奨学金返還支援制度の創設の取り組みも進めてまいります。
次に、子供の貧困に係る県独自の実態調査についてでありますが、県では、子供の貧困の実態について、生活保護世帯の子供や就学援助を受けている子供の割合など、公的支援の対象となっている子供に関する統計資料等により把握しているところであります。
議員から御紹介がありましたとおり、沖縄県など他県で貧困の実態調査や貧困率の推計を行っているところもあることは承知しておりますが、都道府県レベルでの調査や推計については、他県との比較が容易にできるよう、主要な調査項目や推計手法の統一が望ましいと考えております。
このため、全国知事会では、ことし8月に、国が都道府県別の子供の貧困率を統一的な基準で調査し、その結果等を自治体に提供するよう要請したところでありまして、県独自の取り組みについては、国の動向を注視するとともに、まずは他県の調査項目や推計手法を研究することが必要と考えております。
次に、男女共同参画の現状と決意についてでありますが、男女共同参画社会の実現のためには、男女が、互いにその人権を尊重しつつ、責任も分かち合い、性別にかかわりなく、その能力を十分に発揮できることが重要であります。
昨年、県が行った意識調査においては、男性のほうが優遇されているという男女の不平等感や、男性は仕事、女性は家庭といった性別による固定的な役割分担意識が根強く残っており、男女共同参画の視点に立ったさらなる意識改革と、働き方を初めとする社会におけるさまざまな慣行の見直しが必要と考えております。
このため、いわて男女共同参画フェスティバルやワーク・ライフ・バランスセミナーの開催、いわて働き方改革アワードの創設などを通じて、男女共同参画や働き方改革についての意識啓発に努めてきたところであります。
また、女性活躍の支援を組織横断的に進めるため、庁内に新たに女性活躍推進本部会議を設置したところであり、さまざまな分野において、働きやすい環境の整備などに向けて官民一体となって取り組んでまいります。
今後とも、女性、男性、誰もが生きやすい社会となるように、また、地域社会が活性化するとともに、人を大切にした社会の形成、生活の質の豊かさにつながるよう、男女共同参画の一層の推進を図ってまいります。
その他のお尋ねにつきましては関係部長から答弁させますので、御了承をお願いします。
〔政策地域部長大平尚君登壇〕
〇政策地域部長(大平尚君) 情報通信基盤の早期復旧についてでありますが、台風第10号被害では、市町村が整備した光ファイバーなど概算で19億6、000万円余の被害が生じ、現在においても、岩泉町などで固定電話やインターネットが利用できない世帯やテレビが視聴できない世帯があるなど、住民の日常生活に影響が生じております。
被災した市町村では、通信事業者等の協力も得ながら、可能なところから順次、応急復旧を進めるなど、地域住民の情報通信手段の確保に向けて取り組んでいるところであります。
超高速ブロードバンド環境基盤については、これまで、いわゆる条件不利地域での市町村による整備を国の補助制度によって行ってきたものです。今後の本格復旧に向けては、情報通信基盤の災害復旧に係る国の補助制度がないことから、県としても、国に対して、災害復旧に係る新たな補助制度の創設を要望しているところであります。
引き続き、国に対して要望を強化するとともに、今後、市町村の整備方針等も踏まえ、必要な技術的助言の働きかけを行うなど、早期復旧に向けて市町村との連携を図ってまいります。
〔総務部長風早正毅君登壇〕
〇総務部長(風早正毅君) まず、任期付職員の選考採用についてでありますが、この選考考査は、岩手県任期付職員としての勤務年数が引き続き4年以上であり、採用する日の属する年度の初日において満年齢が59歳までの方を対象として、本年度から実施しております。
本年度は、一般事務と総合土木の各職種について募集したところであり、一般事務は応募者30人中7人を、総合土木は応募者12人中3人を採用いたしました。
次に、岩手県における特定事業主行動計画についてでありますが、女性活躍推進のための特定事業主行動計画の策定に当たり、職員に対して実施したアンケートにおいては、女性の能力発揮のために重要なこととして、子育て等に配慮した業務分担や配置が最も多い回答であったことから、妊娠、出産、子育て期にある女性職員については、心身ともに過度な負担とならないよう、引き続き配置等に一定の配慮を行っております。
また、仕事と生活の両立を目指した環境づくりに向け、男女を問わず、子供が誕生する予定の職員が、育児に関し配慮を望む事項などを育児支援シートに記載し、これをもとに、所属長と職員が面談をしながら、本人の希望を踏まえた職場環境の整備を図る制度を整備するなど、計画に基づく新たな取り組みも実施しながら、育児休業が取得しやすい環境の整備を進めております。
超過勤務の削減や欠員の解消などにも取り組みながら、全ての職員が、出産、育児、介護といった生活と仕事との調和を図ることができる職場環境の充実に努めてまいります。
〔商工労働観光部長菊池哲君登壇〕
〇商工労働観光部長(菊池哲君) まず、奨学金の返還支援による大学生等の地元定着の促進についてでありますが、昨日も御説明申し上げさせていただいたところではございますが、この国の制度は、地方創生、地方の自立に向け、地方公共団体と地元産業界が協力し、地方経済の牽引役となる産業分野や戦略的に振興する産業分野における地域の企業に就職する大学生等の奨学金返還を支援することにより、地方への定着を促進することを狙いとしているものであり、国のスキームでは、人材確保のメリットを享受する産業界と県とが負担を折半して基金を造成し支援するもので、県の負担分の一部については、国の特別交付税が措置されるものであります。
県では、この制度が、地域産業の成長と持続的な発展及びそれに寄与する人材の確保、定着を促進するための有効な仕組みであると考えておりまして、制度化に向けた検討を現在進めているところでございます。
なお、先行実施した他県におきましては、企業等からの出捐が思うように進んでいない例も多いところでございまして、企業、学生双方にとって有用な制度となるよう、企業の参画方法や対象とする産業分野等について、産業界等と協議、検討を進めているところでございます。早期に制度化ができるよう、引き続き努力してまいります。
次に、男女間の賃金格差解消に向けた取り組みについてでありますが、県ではこれまで、雇用の場における男女の均等な処遇の確保や男女間格差の解消が図られるよう、岩手労働局と連携し、関係法令やポジティブアクションなどの女性活躍推進の取り組みについて、周知、啓発を図ってきたところであります。
また、女性の職業生活における活躍を推進し、男女の賃金格差を解消していくためには、その主要な阻害要因とされております長時間労働につながる職場意識や労働慣行を是正し、ワーク・ライフ・バランスを実現するなど全ての人が働きやすい労働環境づくりを進めることが重要であり、加えて、女性が多くを占める非正規雇用者と正社員との賃金格差が大きいことから、正社員への転換や処遇改善を促進する必要があると考えております。
こうしたことを踏まえ、県では、国に対し、女性のキャリア形成のための労働環境の整備を一層推進するよう要望するとともに、関係団体への要請活動や企業経営者等を対象とするセミナーの開催など、意識啓発を行ってきたところであります。
さらに、今年度から、いわて働き方改革推進運動を開始するとともに、運動への参加企業82社の中から、すぐれた取り組みを実施している企業を表彰する、いわて働き方改革アワードを実施し、県内の企業等の働き方改革の取り組みを推進しているところでございます。
アワード受賞企業の中には、女性社員によるプロジェクトを立ち上げ、そこから生まれたアイデアを実行することにより、女性の労働環境の向上を図った事例もあったところでございます。
今後におきましては、こうした取り組みに加え、個別企業の課題解決に向けた相談体制を整備するとともに、アドバイザーの養成や企業への派遣などを行いたいと考えております。
県といたしましては、企業における働き方改革の一層の普及拡大を図り、女性が活躍しやすい労働環境づくりを進め、男女間の賃金格差の解消につながるよう努めてまいります。
〔保健福祉部長佐々木信君登壇〕
〇保健福祉部長(佐々木信君) まず、被保護世帯等への学習の場の提供についてでありますが、平成27年度から生活困窮者自立支援制度に基づく事業として実施されており、平成28年度においては、新たに花巻市が実施するなど、現在9市町で事業に取り組んでいます。
この学習の場の提供に当たっては、学生ボランティア、教員OB、子供の支援に携わるNPO法人などの協力を得ながら、地域の公民館等を会場に支援スタッフを配置し、定期的に実施しているところであり、現在の参加生徒数は145名と昨年同時期に比べ増加しております。
また、盛岡市及び滝沢市においては、就学に係る相談員を配置し、中学生等のいる被保護世帯を対象に、訪問等により学習や進路などの相談にも応じているところです。
県といたしましては、今後とも、先行して実施している取り組み事例の紹介などを通じて、各市において取り組みが進むよう働きかけていくとともに、県が所管する町村部については、地元町村の協力を得られるよう協議を重ね、引き続き、関係機関と協働しながら、参加者や対象地域の拡大に向けて取り組んでまいります。
次に、子ども食堂への取り組みについてでありますが、県で承知している範囲では、現在、盛岡市内の二つのNPO法人が子ども食堂を開設し、月に1回程度、ひとり親家庭の親子などを対象に食事の提供等を行っていると聞いております。
県では、今年度、県内各地でいわての子どもの貧困対策推進計画の出前講座を実施しており、その中で、地域からの要請に応じて、子ども食堂などの取り組みを行う民間団体と一緒に、その取り組み内容と実施方法の紹介を行っているところです。
今後も引き続き、地域での実施が進むよう、民間団体と連携して取り組みの促進を図っていきます。
次に、児童虐待防止への取り組みについてでありますが、児童虐待相談対応件数の増加について、国においては、子供の面前で配偶者に対し暴力を振るう事案、いわゆる面前DVについての警察からの通告や、児童虐待に対する意識が高まったことに伴う近隣、知人からの通告の増加によるものと分析しており、本県においても同様の状況と認識しています。
県では、平成28年3月に改定した児童虐待防止アクションプランに基づき、市町村及び児童相談所の対応力向上のための研修の実施や児童虐待防止推進月間を中心とした広報啓発活動等に取り組んでいるところですが、増加する児童虐待相談に対応するためには、より一層、市町村、学校、警察等と連携を図り、発生予防や早期発見などの取り組みを進めていく必要があります。
また、相談対応体制につきましては、児童相談所に虐待対応専門チームを設置し、順次、児童福祉司を増員するなどの体制強化を図ってきたところです。
今般改正された児童福祉法において、国、都道府県、市町村の役割、責務が明確化されたことから、今後とも、市町村と連携して必要な相談体制の充実に努めてまいります。
〔環境生活部長津軽石昭彦君登壇〕
〇環境生活部長(津軽石昭彦君) 性暴力被害者へのワンストップ支援センターについてでありますが、性暴力の被害者の方々は、心身に大きな負担を抱えているため、産婦人科医療、相談、カウンセリング等の心理的支援、捜査関連の支援、法的支援など多岐にわたる支援が必要とされております。
本県におきましては、公益社団法人いわて被害者支援センターが、性暴力等被害相談専用電話、はまなすサポートラインを開設し相談対応を行っているほか、関係機関において、それぞれの支援を行っているところであります。
議員から御提案のありましたワンストップ支援センターは、性犯罪、性暴力被害者の方々の負担を軽減するため、必要な支援を可能な限り1カ所で提供するものでありまして、県といたしましても、その必要性を認識しているところであります。
現在、先進事例の調査や産婦人科医に対するアンケート調査を実施するとともに、関係機関、団体との意見交換を行っているところでありまして、被害者の方々が求めるサービスをより効果的に提供できるよう、関係機関との連携方法や相談体制など、具体のあり方について今後検討を進めてまいります。
〔教育長高橋嘉行君登壇〕
〇教育長(高橋嘉行君) 台風第10号により被災した学校施設の被害及び復旧の状況についてでありますが、学校施設の被害は、小中学校51校、高等学校21校で被害があり、被害総額は現時点で1億9、900万円余となっております。
県教育委員会におきましては、児童生徒の通常の学校生活を早急に取り戻すため、国の災害査定前着工の手続等を進めながら早期復旧に取り組んできたところでありますが、大量の土砂が流入した県立宮古商業高校、久慈高校、久慈市立久慈湊小学校のグラウンド等については、10月中旬までに復旧工事を完了し、そのほかの学校についても応急的な措置を講じてきたところであります。
今後におきましては、国の災害査定への対応や本定例会において御審議いただいている補正予算案を含めた災害復旧予算の迅速かつ効率的な執行を行い、被災した学校の復旧に努めてまいります。
次に、子供たちの心のケアについてでありますが、東日本大震災津波発災以降、児童生徒等の心のサポートを充実させるため、発災前から配置しているスクールカウンセラーの配置に加え、沿岸地域の3教育事務所に臨床心理士資格を持つ巡回型カウンセラーを重点的に配置し、被災児童生徒等の心のサポートに取り組んできております。
今回の台風第10号被害に当たっては、被災市町や学校の要請に応じ、被災当初から巡回型カウンセラーを中心に11校に対し26回の派遣を行い、被災児童生徒や保護者へのカウンセリング、教員研修会への対応等に取り組んできております。
今後におきましても、引き続き丁寧な対応に努めつつ、中長期的な支援に努めてまいります。
次に、中学校の少人数学級についてでありますが、本県におきましては、安定した学校生活や学力の向上などを図るため、加配定数の確保を国に強く働きかけながら、少人数学級の対象を順次拡大してきており、本年度からは、新たに中学校2年生をその対象に加えたところであります。
県といたしましては、義務教育の機会均等と教育水準の維持向上に向けた基礎的な財源は、国の責任においてしっかりとした措置がなされるべきであるという考えのもと、これまでも、教職員定数の充実などを国に対し強く要請し、少人数学級や少人数指導を柱にした少人数教育を拡大し、あわせて県単独事業であるすこやかサポート事業などの充実を図ってきたところであります。今後におきましても、少人数学級などの安定的な実施に向け、引き続き取り組んでまいります。
少人数学級の中学3年生への拡大については、3年生は、学習指導、生徒指導に加え、進路指導の重要性が増す学年であること等を踏まえつつ、また、教職員定数の改善に向けた国の動向や加配定数の確保の見通しなどをも見きわめながら、そのあり方について具体的な検討を進めてまいります。
次に、教育予算の増額に向けた取り組みについてでありますが、教材費については、昭和60年度から国庫負担が廃止され地方交付税による地方財政措置が講じられているところであり、平成28年度の措置額は、標準団体で小学校が286万円、中学校が283万7、000円となっております。したがいまして、一義的には、学校の設置者が各学校の状況等を踏まえつつ具体的な予算措置等の対応をすべきものではありますが、議員御指摘のとおり、学校教育の推進に学校図書や学校備品の充実は極めて重要でありますので、今後におきましても、地方財政措置も踏まえつつ、市町村に対し、国が定めている教材整備指針に沿った適切な対応が図られるよう要請してまいります。
〔人事委員会委員長熊谷隆司君登壇〕
〇人事委員会委員長(熊谷隆司君) 職員の勤務環境改善についてでありますが、議員御指摘のとおり、職員の皆さんが、東日本大震災津波からの本格復興を初め、希望郷いわて国体、いわて大会の開催、台風第10号による災害の復旧、復興等の職務に全力を挙げて精励してきていることは十分に承知しております。
こうした中で、人事委員会としては、社会一般の情勢に適応した職員の勤務条件を確保するため、毎年、職員及び民間事業所の給与などに関する調査研究を行い、その結果について議会と知事に報告及び勧告を行っており、本年は、給料表、期末・勤勉手当の3年連続引き上げ改定と扶養手当の見直しを勧告するとともに、適切な人員体制の確立等による長時間勤務の解消に向けた取り組みや、仕事と家庭の両立支援の推進などの勤務環境の整備について報告したところであります。また、この勧告等により職員に適正な処遇を確保することは、職務に精励している職員の努力や実績に報いるとともに、効率的な行政運営を維持する上での基盤となるものと考えており、その実現に向け所要の措置を講ずるよう要請いたしました。
今後も、公務員の労働基本権制約の代償措置としての機能を発揮し、働きやすい職場環境の実現に向け、人事行政の専門機関としての使命を果たしてまいりたいと考えております。
〇26番(小西和子君) 大きく2点、再質問をさせていただきます。
まず、1点目は、任期付職員の選考採用についてであります。
県職員というのは広域異動などがありますので、なかなか希望する方々が集まりにくいのではないかと考えるところであります。ですから、そういう中で確実な採用を行うためにも、任期付職員の任用の定めのない職員への採用は有効と考えます。これまで県の職場を経験した上で改めて県職員になりたいとの希望を示していることから、ほかの職場へ行くということは少ないと考えられます。加えて、即戦力としての活躍が期待できます。ですから、ぜひ人員確保のためにも選考採用を最大限活用すべきと考えますが、いかがでしょうか、再度お伺いしたいと思います。
2点目は、児童相談所の相談対応体制についてでございます。
さまざまな法律が変わっていますけれども、それは時間も押していますのでカットいたします。
県内3児童相談所が受け付けた児童虐待の件数が数年前の300件ほどから昨年度は672件と倍以上に増加する中、児童の安全や生命を守る体制をきちんと整備することが必須であると考えます。本県では、児童福祉司を他の職との兼務発令が行われております。さらに、沿岸被災地に対する他県からの派遣職員が一関児童相談所でお二人、それから宮古児童相談所にお二人と伺っておりますけれども、継続いただいているということは本当にありがたいと思います。兼務の解消と、改正児童福祉法の趣旨に沿った体制整備は当然行われるべきと考えます。
先ほどのお話にもありましたけれども、厚生労働省の資料によれば、児童相談所の専門職の人件費について、地方交付税措置では、平成27年度の標準団体当たり児童福祉司36人から今年度は39人などに増員されております。これら国の改善策が本県では実行されているのでしょうか。現在、改正児童福祉法を満たしている状況なのか伺います。今後の見通しもあわせて伺いたいと思います。
引き続きでございますけれども、中核市との役割分担についてでございます。
中核市での児童相談所設置について、国は、5年をめどとして、中核市が児童相談所を設置できるよう必要な措置を講ずるとしております。
そこで、県の児童相談所と中核市の役割分担を協議する場を設置することが必要ではないかと思うのですけれども、そのようなことは行っているのか、今後行う予定があるのかということをお伺いいたします。県の児童相談所の業務の半分は盛岡市分だというようなことも聞こえておりますけれども、そのあたりもあわせて、もしおわかりでしたらお願いしたいと思います。
また、市町村での児童福祉人材育成への支援についてですけれども、市町村の人材育成など能力向上を図るための県の支援の状況はどうでしょうか。県内市町村でも大槌町、八幡平市、紫波町などが社会福祉士の採用を行っていると聞いておりますけれども、やはり福祉人材の確保と対応力アップのための研修について県として推し進めていくべきと考えますので、そのあたりをお聞かせ願いたいと思います。
〇総務部長(風早正毅君) 任期付職員経験者の活用をとの御質問でございますが、任期付職員経験者の選考採用に当たりましては、任期の定めのない職員として、職務遂行能力や適性を有するか、任期付職員としての勤務実績を含め、一定の判断基準を持って選考する必要があります。
その採用予定者数については、退職者数や職員の年齢構成など、県庁組織全体のバランスを考慮の上、検討し、決定しており、今後とも、毎年度の受考対象者数など、その状況等を見ながら募集人数を検討し、その活用を図ってまいります。
〇保健福祉部長(佐々木信君) まず、児童相談所の体制についてでありますが、ただいま議員からお話のありましたのは、地方交付税の単位費用算定基礎における児童福祉司の標準配置数、すなわち人口170万人の標準団体での人数であり、これを本県の人口に置きかえますと、平成27年度は29.7人、平成28年度は31.2人と算定されます。一方、今般改正された児童福祉法で示された児童福祉司の配置標準数は平成28年10月1日で人口6万人に1人以上とされており、これによると23人以上と算定されます。
本県の児童福祉司の配置は現在30名となっております。また、他府県からは、これも委員から御紹介がありましたとおり、一関、宮古両児童相談所に合わせて児童福祉司3名及び児童心理司1名の派遣を受けており、これら派遣職員には主として東日本大震災津波の被災児童への対応業務などを担っていただいております。
今後につきましては、今般の改正児童福祉法において児童相談所の体制強化が盛り込まれたことから、他府県からの職員派遣の終了も将来的には見込んで、県としても必要な体制の整備に努めていく必要があると考えています。
次に、中核市との役割分担についてでありますが、中核市では、児童福祉法施行令による指定を受けて児童相談所を設置できることとなっており、現在、全国で47の中核市のうち2市で児童相談所が設置されているところです。
国では、増加する児童虐待相談に対応するため、児童相談所設置自治体の拡大を図るべく必要な支援を実施することとしており、平成29年度概算要求において必要な経費の補助を盛り込んでいます。盛岡市においてはこうした流れを受けて情報収集等を行っていると聞いており、県といたしましては、引き続き、盛岡市の意向を確認しながら、必要に応じて情報提供、意見交換をしていく必要があると考えています。
なお、福祉総合相談センターにおける市町村別の児童虐待相談対応件数については、ただいま資料を持ち合わせておりません。
市町村での児童福祉人材育成への支援についてでありますが、国においては、改正児童福祉法の中で市町村の要保護児童対策地域協議会への専門職の配置を義務づけており、それに伴う必要な経費の補助を平成29年度概算要求に盛り込んでおります。県では、市町村の対応力向上を図るため、平成28年1月に策定した市町村要保護児童対策地域協議会運営実務マニュアルを活用し、新たな市町村職員研修を実施しており、こうした取り組みも含め、市町村の対応力の向上に向けた支援を行ってまいります。
〇26番(小西和子君) 任期付職員の採用についてですけれども、4月1日時点で140人の欠員であったとのことですが、現在はもっとふえていますよね、ここでは言いませんけれども。岩手県職員の皆さんは岩手県の頭脳だと思うのですけれども、それを何とか解消しなければ、その方々が十分に自分の能力を発揮できないと考えます。任期付職員の方々は、4年間とか5年間、県の業務に精通しているわけです。10人しか採らないというのはどういうことなのでしょうか。
また、任期付職員には、頑張れば正職員に合格するというようなモチベーションが上がるような対応をしていく必要があるのではないでしょうか。県の業務を長く経験してよく知っている任期付職員からの採用について、10人と言わないでもっと拡大していくべきと考えます。もう一度答弁をお願いします。
〇総務部長(風早正毅君) 先ほど御答弁申し上げたこととも若干重なりますが、やはり任期付職員の方を任期の定めのない職員として採用する場合には、これは当然ながら選考採用が原則になりますので、その選考採用の際に、議員が御指摘されました任期付職員としての勤務実績も含め、一定の判断基準を持って採用、選考をする必要がございます。したがいまして、任期付職員として勤務した経験を有することだけをもって採用することは非常に困難だと考えております。
他県に先駆けまして任期付職員の期間の定めのない職員への道筋をつくった本県でございますので、引き続き、任期付職員の方々も含め、ぜひモチベーションを持って勤務をしていただければと考えてございます。
〇26番(小西和子君) 百数十人の欠員があるということですので、ぜひこの欠員をゼロにするような道筋をきちんと示していっていただきたいと要望して終わります。
〇議長(田村誠君) 以上をもって一般質問を終結いたします。
日程第2 認定第1号平成27年度岩手県一般会計歳入歳出決算から日程第52 議案第37号小白浜漁港海岸防潮堤災害復旧工事の請負契約の締結に関し議決を求めることについてまで
〇議長(田村誠君) この際、日程第2、認定第1号から日程第52、議案第37号までを一括議題といたします。
これより質疑に入ります。
質疑の通告がありますので、発言を許します。斉藤信君。

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