平成28年9月定例会 第6回岩手県議会定例会会議録

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〇17番(佐々木朋和君) 温かい拍手、ありがとうございます。
改革岩手の佐々木朋和です。通算6度目の登壇の機会を与えていただきました先輩、同僚議員の皆さん、県民の皆様に感謝申し上げ、通告に従い質問させていただきます。よろしくお願いいたします。
初めに、地方創生と人口減少対策について伺います。
県は、国のまち・ひと・しごと創生法を受けて、平成27年10月に、岩手県人口ビジョン、岩手県ふるさと振興総合戦略を策定し、人口減少対策に向け、平成31年度までの取り組み方向や施策、数値目標を示されました。
人口減少に伴い、国、県、市町村の財政が逼迫し、既存の行政サービス維持が難しくなってきている昨今、もう一度、地域やコミュニティーを再生し、民間業者や新しい公共などの主体も社会サービスのプレーヤーに加え、各主体が連携をとりながら、地域社会を維持、発展させていこうというのが地方創生であると認識しています。
国は、直接的な施策推進主体として主に市町村を想定していますが、県は、各自治体や各主体のつなぎ役のみにとまることなく、新たなプレーヤーの掘り起こしに加え、県として重点的に取り組む分野を定め、主体的に取り組んでいくべきと考えますが、県は、地方創生の中でどのような役割を果たしていくお考えなのか、知事に伺います。
また、国は、平成27年度、地方創生加速化交付金1、000億円に続き、平成28年度、地方創生推進交付金1、000億円、そして、地方創生拠点整備交付金900億円の予算措置を行いました。しかし、本県の措置額は、平成27年度、地方創生加速化交付金で5億6、000万円余、平成28年度、地方創生推進交付金で5億円余の交付金となっており、これを広く地方創生、人口減少対策に振り分けると、一つ一つの事業規模は、それほど多くない印象を受けます。
国も、地方創生、人口減少対策の先進事例や具体例を紹介しながら、県や市町村に施策の推進を促していますが、その先進事例の多くが、平成の大合併の時期に生き残りのため大胆な財政の組みかえを行い、施策にメリハリをつけ、一点突破で地域の再生を目指したものが多く、現在、多くの施策を展開している合併自治体や、県における有効な取り組み事例は少ないように思われます。
県は、岩手県ふるさと振興総合戦略において、岩手で働く、岩手で育てる、岩手で暮らすを三つの基本目標に、人口減少対策は切れ目なく複合的に進めるべしとの観点から総合的に施策を展開していますが、総合的であるため総花的な印象も強く、限られた予算の中で、一つ一つの施策も効果的な事業規模になっているのか疑問もあります。
小規模自治体の先進事例を見れば、過去に地域の存続、再生をかけて構築したネットワークが地域の自信につながり、多分野へと広がっていくケースがあります。まずは成功例をつくり、人口減少対策に対して自信をつけることを優先させ、施策資本の集中を図るべきと考えますが、知事の御所見を伺います。
以下の質問は質問席にてお伺いします。よろしくお願いいたします。
〔17番佐々木朋和君質問席に移動〕
〔知事達増拓也君登壇〕
〇知事(達増拓也君) 佐々木朋和議員の御質問にお答え申し上げます。
人口減少対策については、本県におけるこれまでの取り組みを踏まえ、まち・ひと・しごと創生法に基づいて、東京一極集中の是正と、さまざまな生きにくさから生きやすさへの転換を図るため、岩手県ふるさと振興総合戦略を策定したものであります。
〔議長退席、副議長着席〕
この総合戦略に基づいて、県として人口減少に歯どめをかけ、2040年に100万人程度の人口を確保し、将来的な人口の定常状態を実現するために、まず、岩手で働くでは、産業界、教育機関、行政等で構成されるいわてで働こう推進協議会の立ち上げの主導や、岩手で育てるでは、結婚を望む方々を支援する結婚サポートセンター─i‐サポの運営、岩手で暮らすでは、ふるさと振興の牽引役となる若者の発表と交流の場を提供するいわて若者文化祭の開催などの取り組みを進めているところであります。
また、国に対しては、東京一極集中の是正に向けて、県として、平成29年度政府予算要望、提言において地方創生分を取りまとめ、地方重視の経済財政政策の実施や、地方への移住、定住など具体的施策を求めるとともに、他県とも連携をして、全国知事会や北海道東北地方知事会などの場を通じて、強く訴えるなどの役割を果たしております。
こうした役割とあわせて、県としても、今後とも、市町村や企業、関係団体など多様なプレーヤーと連携をしながら、ふるさと振興を主体的に推進してまいります。
次に、政策資本の集中についてでありますが、人口減少問題は以前から重要な政策課題であり、これまでも、ものづくり産業の集積促進や観光業、農林水産業などの振興による雇用の場の確保、定住、交流の促進などの取り組みを進め、社会減が縮小するなど、一定の効果が見られるところであります。
また、総合戦略には、これらの取り組みに加えて、岩手県人口ビジョンの現状分析で明らかになった、本県の社会減の特徴であります雇用情勢と関係が深いこと、また、進学、就職期に顕著であることなどに対応するための新たな施策を盛り込んでおります。
これら施策について、本県の社会減の特徴が県内の若者の希望に合う就職先の確保が影響しているものと考えられますことから、ものづくり企業等のイノベーション創出やいわて林業アカデミーの設置、首都圏在住の本県出身学生等のU・Iターン促進に向けたインターンシップなどの新規事業を立案しまして、岩手で働くの分野に地方創生のための交付金を集中するなど、政策と財源、人材の最適化を図っているところであります。
人口減少対策については、議員御指摘のように、施策の成功例を広めていくことが重要と考えておりまして、例えば、葛巻町が行う豊かな自然環境のもとで人材を育む山村留学事業や、大船渡市が行う官民連携により、若い世代に新たな仕事をつくるふるさとテレワークを核としたIT利活用推進事業など、各市町村のすぐれた取り組みを共有して、横展開するなどを通じて地域の自信につなげ、また施策の効果がさらに高まるようにしてまいります。
〇17番(佐々木朋和君) 御答弁ありがとうございました。
知事には、今、具体的な事例についてもお話をいただきながら、そして、雇用の創出に向けて資本を集中していくというお話をいただきました。しかしながら、平成28年の地方創生推進交付金は5億円という内容でありますけれども、ハード面を抜かすと1億6、000万円余、構成事業が22あって、これを割っていくと、単純に割っていっただけでも220万円余りというような、これは交付金ベースですけれども、そういった予算規模になっていきます。
これから常任委員会または決算特別委員会の部局審査でさまざまなお話も出てくると思いますけれども、これについては事業規模が適正なのか、また、今復興に向けて取り組んでいる中で、県庁も人員が不足している中でも取り組んでいただいておりますから、きっと外部発注なども多くなっているのではないかと思います。そういった中でも事業の実効性が担保されているのか、しっかりと県民に示しながら進めていただきたいと思います。
続いて、医療と福祉についてお伺いをしたいと思います。
県は、岩手県ふるさと振興総合戦略10のプロジェクトにおいて、その一つに、保健・医療・福祉充実プロジェクトを掲げています。県土が広く、医療資源に乏しく、経済的にも必ずしも豊かではない本県において、在宅医療や地域包括ケアシステムが成立するのか、県民は不安を抱えており、医療と介護の連携によるまちづくりは、今、最も政策資本を傾けるべき課題とも思われます。
国は、地域包括ケアシステムの主体を市町村と定めました。これは、我が国の医療、介護サービスの地域差が余りに激しく、それに対応するためと言われておりますが、地方自治体である市町村を主体とするシステムは国際的にも例がなく、また、本県は全県に張りめぐらされた県立病院の医療体制が確立しており、医療計画は県が策定している状況下で、市町村主体でシステムを構築していけるのか、不安を抱かざるを得ません。
県は、地域包括ケアシステムの構築に向け、市町村の主体的な取り組みを支援するとともに、仕組みづくりや専門的な人材の確保、養成に努める補助的な役割を表明していますが、地域医療計画の策定は県が主体となって進めており、現在、各二次医療圏において、在宅医療を含む将来の医療供給体制についての協議が行われているところであります。
市町村が主体とされる地域包括ケアシステムの構築において、県は、県立病院などの公的病院や民間医療機関などをつなぎ、地域医療の連携体制の整備に取り組んでいくべきと思いますが、知事の御所見を伺います。
また、地域医療と市町村が行う介護や生活支援との連携を図るために、県はどのような役割を担っていくのか、あわせて伺います。
〇知事(達増拓也君) 住民が医療や介護が必要な状態となっても、住みなれた地域で安心して生活を継続できるよう、市町村が地域包括ケアシステムの構築を進めていく上で、入院や在宅医療の提供体制の確保が重要でありまして、医療機関の役割分担と連携による切れ目のない医療提供体制の構築に取り組むことが不可欠であります。県では、二次医療圏ごとに、医療関係者や市町村等を構成員とする協議の場を設置しまして、地域における協議を踏まえて、関係者と協力して病床機能の分化と連携の推進、在宅医療等の体制整備、医療従事者の確保などを重点的に進めてまいります。
また、医療と介護や生活支援との連携に当たっては、行政並びに医療機関及び介護サービス事業者等がそれぞれの役割を踏まえつつ、一体となって取り組むことが重要でありまして、県としては、関係者と情報共有の場の設定や専門人材の養成等によりまして、市町村の地域包括ケアシステム構築の取り組みを支援してまいります。
〇17番(佐々木朋和君) まさにそこが指摘をさせていただきたいところでございまして、もちろん、地域包括ケアシステムは市町村が主体となって取り組むと国も定めております。しかしながら、岩手県においては、県立病院が医療については大きな役割を担っている。また、これまでの県立病院の成り立ち、歴史から見ても、県立病院は地域の医療のセーフティネットとなってきたわけであります。それが今、地域包括ケアシステム、また在宅医療へと国がかじを切る中で、その中でも県はセーフティネットの役割を果たしていただきたい。そういった中で、市町村を主体として、しかしながら、県には在宅も含めたしっかりとしたシステムを構築していただきたい、こういった思いでございます。
そんな中で、私は、保健所の役割がやはり重要だと思っておりまして、次の質問をさせていただきたいと思います。
医療と介護の連携はそれぞれに地域のやり方があり、どこが中心になるかは、各地域の事情やパーソナリティーによって異なるという話をお聞きしますが、納得する部分もありますけれども、一方で、その地域に突出したリーダーがいなかったら、在宅医療の人的支援が乏しく、チームを組めない地域はどうするか。地域包括ケアシステムという命にかかわる制度だけに、看過できない問題であります。
地域において、医療と介護の連携のキーワードである顔の見える関係づくりを進める上で、保健所には、システム構築に向けた議論をポジティブに誘導したり、関係者が気づいていない視点を提供したりという、ファシリテーターとしての機能も求められていると考えますが、現状は思うような成果に至っていないのではないでしょうか。
県は、地域包括ケアシステムの構築に向けた保健所の機能強化に努めるべきと考えますが、御所見を伺います。
〇保健福祉部長(佐々木信君) 保健所の機能強化についてでありますが、市町村が在宅医療、介護連携の推進など、地域包括ケアシステムの構築に向けた取り組みを進めるに当たっては、議員御指摘のとおり、保健所が積極的に関与し、地域の取り組みを支援していく必要があります。
県内の保健所におきましては、これまでも、市町村と地域の医療従事者や介護関係者等が顔の見える関係を築けるよう、情報共有、意見交換の場を設けているほか、円滑な退院支援に向けた関係者間の連携体制の構築支援や、医療と介護の情報共有に向けた情報システム導入への支援など、一定の活動を行ってきました。しかしながら、地域保健法等において地域包括ケアシステムに係る保健所の位置づけや役割は明確でなく、そのための人員配置に対する国からの財政措置もないなど、保健所の一層の機能強化を図るためには課題がありますことから、県では、平成29年度政府予算要望において、関係法令の改正や、人員配置等に対する所要の財源措置を要望したところです。
今後とも、機会を捉えて国への働きかけを継続するとともに、地域包括ケアシステムの構築に向けて、市町村支援や広域調整など、保健所が期待される役割を果たせるよう取り組んでまいります。
〇17番(佐々木朋和君) 今の御説明をお聞きしましても、財源がなかなか乏しいというのはわかりますけれども、説明の中は、全部、支援という言葉で終わっていると。やはり主体的に私はリーダーシップをとってやっていっていただきたいと思います。
今まで保健所というイメージは、医療もしくは薬局に対して、規制とは申しませんけれども、許可をしたりまたはチェックをしたりといった役割だった。これが医療現場の大変なところを共管しながら、一緒にこのシステムを構築していく、関係を築いていくというところにあっては、やはりこれまでと求められるスキルでありますとか、また、そういった心構えというのも違うと思うんです。この辺は、県庁、本庁も支援をしながら、しっかりと役割を現場に伝えながら、心構えからまずはつくっていっていただきたいと思っております。
次に、在宅療養に向けた退院支援についてお伺いをしたいと思います。
地域医療構想の策定に伴い回復期病床が増加し、在宅療養への流れが加速していくものと思われます。しかし、地域包括ケアシステムの構築と足並みをそろえていかなければ、患者や家族の生活の行き詰まりを生みかねないのではないでしょうか。
9月1日現在、県内に地域包括ケア病床は10病院、342床が整備されています。地域包括ケア病床は、最長60日間の入院期間が設定されており、在宅復帰へのクッション役として期待されていますが、しっかりとした退院支援が前提となると考えます。
県は、在宅療養に向けた退院支援にどのように取り組んでいくお考えなのか伺います。
〇保健福祉部長(佐々木信君) 在宅療養に向けた退院支援についてでありますが、地域医療構想は、今後の高齢化の進展等に伴う医療需要の変化などに対応し、将来のあるべき医療提供体制の構築を目指すものであり、その実現に向けては、議員御指摘のとおり、在宅療養者や介護施設入所者の急性増悪時における医療機関の受け入れ態勢の確保や、退院時における入院医療機関と在宅医療にかかわる医療機関や介護事業者等との連携などについて、地域包括ケアシステムの構築と一体的に取り組む必要があると認識しております。
退院支援について、県では、医療と介護の総合的な確保という観点から、これまで、国の事業を活用したモデル事業の実施等を通じて、在宅高齢者の入退院に必要な情報共有や退院調整に係るルールの策定などに取り組んできており、引き続き、医療機関や介護事業者、市町村等とも連携しながら、退院調整に係るルールの定着、実用性の向上などに取り組んでまいります。
〇17番(佐々木朋和君) この在宅療養に向けた退院支援についてであります。今、在宅医療について、地域または現場でも議論をされていると思うんですけれども、その中で緩和ケア、みとり、そして在宅療養に向けた退院支援ということで、貧困の問題または独居生活をしている患者さんの問題、こういったものが一緒くたになって議論されているのではないかと思います。やはり命に直結する、もちろん、緩和ケア、みとりについても人間の尊厳として大事ですけれども、県としてまた県立病院としては、生活の行き詰まりに直結する退院支援、そして在宅医療と貧困の問題、在宅医療と独居生活の問題、こういったことをまずは先に議論をする、そして安心を県民の皆さんに与えて、そういった人間の尊厳についてのところに向かっていく、こういった筋道を立てた議論を県には誘導していっていただきたい、このように思っております。
次に、救急医療機関への軽症患者の受診対策についてお聞きをしたいと思います。
本県で問題になっているのは、医師の偏在化の問題であると思っております。県は国に対して、医師の偏在化を是正するため、地域医療基本法の成立を求めています。本県内においても、医師不足、医師の偏在化は顕著であり、県は奨学金養成医師の県内配置を進めていますが、基幹病院から地域病院へ行き渡るにはまだ数年かかり、現状は医師の負担を軽減しながら、これ以上の減少を食いとめる施策を行っていかなければならない状況にあります。
救急医療の現場では、地域に初期救急医療機関がありながら、基幹病院に時間外に軽症患者が集中する、いわゆるコンビニ受診が医師の負担の増大につながっており、問題とされています。病院によっては、救急の約8割が受診後に帰宅できる患者とも伺っています。
こうした救急医療機関への軽症患者の受診対策として、県はどのような取り組みを行っているのか伺います。
〇保健福祉部長(佐々木信君) 救急医療機関への軽症患者の受診対策についてでありますが、限られた医療資源のもとで、効率的かつ質の高い医療提供体制を実現していくためには、県民の皆さんにも地域医療の現状を理解していただいて、自分の健康は自分で守ることや、症状や地域の医療機関の役割に応じた受診行動をとることなど、県民みずからも医療の担い手であるという意識を持って地域医療を支えていただく必要があると考えております。
このような認識のもと、本県独自の取り組みとして、知事が代表を務める県民みんなで支える岩手の地域医療推進会議が中心となり、県民総参加型の地域医療体制づくりに取り組んでいます。
県では、これまで、適正受診や健康管理の重要性等についてのテレビCM、公共交通機関やコンビニエンスストアへのポスターの掲示など、普及啓発活動に取り組んできたところであり、今後も、関係機関と連携して取り組みを進めていく考えです。
〇17番(佐々木朋和君) 次に質問させていただきます。
各保健医療圏の二次救急医療は、主に輪番制をとって負担の分散を図っていますが、保健医療圏域内に救急対応ができる病院がほかにない場合はもとより、輪番制を実施している圏域においても、圏域の基幹病院に救急患者が集まる状況にあると聞いています。
地域において持続的に救急医療サービスを提供していくには、1カ所に負担が集中するのではなく、基幹病院以外にも負担を分担してもらうことが必要であり、この問題の解決には、地域の住民患者の御理解、医師会の協力、救急搬送を担当する担当部局との連携など、多方面にわたる対策が必要と考えます。
県は、保健医療圏の二次救急医療体制の現状をどのように分析し、対処していくのか伺います。
〇保健福祉部長(佐々木信君) 各保健医療圏の二次救急医療体制についてでありますが、本県の二次救急医療体制については、各保健医療圏の救急医療機関が輪番制等により、休日及び夜間における入院治療を必要とする重症救急患者の医療を確保しているところです。しかしながら、先ほど議員から御紹介がありましたとおり、県内の二次救急医療機関を診療時間外に受診した救急患者の約8割が入院を必要としない患者であり、また、救急患者のうち、7割以上が圏域の基幹病院を受診しておりますことから、基幹病院の負担が過重になっていると分析しています。
県といたしましては、引き続き、県民の適正受診に係る意識啓発に努めるとともに、保健所が各圏域の市町村、医師会、消防などの関係機関で構成される輪番体制等に係る協議の場に参画し、圏域の課題解決に向けた調整を行う中で、二次救急医療体制が確保されるよう取り組んでまいります。
〇17番(佐々木朋和君) ぜひ、この問題については、現状の医師不足をさらに加速させることなく、医師一人一人の負担軽減にも努めていくという観点からもお願いをしたいと思います。
また、今のお話ですと保健所がという話でございましたが、県庁みずから、ぜひとも他部局とも連携をしながら、救急車の問題等も含めて、いろんなルールづくりをぜひともやっていただきたいと思います。
次に、医療と介護を結ぶICTネットワークが沿岸地域を中心に整備されてきています。ネットワークの構築には、まずは地域における顔の見える関係の構築が大前提であって、押しつけはいけませんが、医療と介護の連携推進や医師の負担軽減のためには、早期の構築が必要と思われます。ICTネットワーク構築を進める上では、圏域を越えた全県一体となった運用も視野に整備すべきと思いますが、現状と今後の方向性をお示しください。
〇保健福祉部長(佐々木信君) 医療と介護の連携のためのICTネットワークの構築についてでありますが、県では、平成25年3月に策定した岩手県保健医療計画に基づき、県レベルでは、岩手医科大学と地域中核病院間の病病連携を目的とした医療情報連携システムの構築、また、地域レベルでは、被災地を中心とする地域における医療と介護の情報連携システムの整備を推進してきたところであり、沿岸4地域については、平成25年度から今年度までに順次運用が開始され、岩手中部地域においては昨年度から検討を開始しております。
将来的に持続可能な医療と介護の情報連携システムを構築するためには、病院、診療所、薬局、介護事業所などの関係機関が情報連携の必要性を認識し、システムの具体の機能等について協議を重ね、合意形成を図った上で、多くの関係機関が参画することが肝要であり、これまで地域が主体となった取り組みが進んできたところです。
県といたしましては、今後とも、地域における協議の場に参画しながら、医療、介護の連携強化のためのネットワーク構築に向けた取り組みを支援してまいります。
〇17番(佐々木朋和君) 今、それぞれ地域ごとにこのICTネットワークを構築していただいているということでございますけれども、まだない地域もあって、そこではこういったネットワークを構築していくということが望まれており、特に医師の側から求められているのではないかと思っております。また、岩手県全体のことを考えれば、全県として一体となったシステムの運用ということも視野に入れながら、各地域で情報連携をしながら取り組んでいっていただきたいと思います。
次に、生活支援対策についてお伺いをしたいと思います。
平成27年度の介護保険法改正で、要支援者への介護予防給付の一部は、平成29年度までに介護保険を財源に、市町村が地域の事情に応じて取り組む地域支援事業に移行されることとなりました。厚生労働省は、新しい総合事業として、フォーマル、インフォーマル双方のサービスの整備、連携をうたっていますが、高齢化が進む地域では、住民主体によるインフォーマルなサービスを提供していくためには、自治会やコミュニティーの再構築が必須であり、新たな公共を担うNPOなどの主体も不足している中で、現行のようなサービスが続けられるのか不安があります。サービスの主体は市町村ですが、県は市町村の生活支援対策をどのように支援していくのか、お考えを伺います。
〇保健福祉部長(佐々木信君) 介護保険法の改正に伴う生活支援対策についてでありますが、介護予防・日常生活支援総合事業では、市町村の判断により、多様な生活支援サービスを提供することが可能となり、県内においても、例えば住田町では、栄養改善を目的とする配食サービスを既に実施しております。
各市町村では、地域において多様なサービスが提供できるよう、新たなサービスの創出や担い手養成などの役割を担う生活支援コーディネーターの配置と、その活動を組織的に支えるためのサービス事業者や支援組織等の参画による協議体の設置を進めているところであり、平成28年10月末現在で協議体は10市町で設置、生活支援コーディネーターは13市町で配置されているところです。
県では、生活支援コーディネーター養成研修の開催や市町村に配置されたコーディネーターの資質向上や活動支援を目的とした連絡会議の開催などにより、市町村が取り組む生活支援サービスの提供体制構築を支援してまいります。
〇17番(佐々木朋和君) それでは、時間もあれですので次に進ませていただきたいと思います。
県立病院の経営と今後の方向性について伺いたいと思います。
平成27年度の県立病院等事業会計決算は、総収益1、007億900万円に対し、総費用1、020億8、300万円、差し引き13億7、400万円の純損失が生じ、昨年度に引き続き赤字決算となり、累積欠損金も451億4、500万円となっています。また、純損失から特別利益、特別損失を除いた通常ベースでの収支である経常損失は7億1、500万円で、平成21年度以来6年ぶりの赤字決算となっています。
しかし、財務諸表の経年推移を見ると、医業収支比率は95%前後となっており、小幅な赤字で推移している状況であり、累積欠損金についても平成26年度に273億円増加していますが、これは公営企業会計制度の変更により、退職引当金の計上が義務づけられたことが主な要因であり、この特殊要因を除けば、平成24年度から平成25年度においては黒字基調に転じ41億円の累積欠損金を解消しました。
県立病院には、その歴史から、医療過疎地も含めた県土全域にわたる県民の命を支える医療サービスの提供という使命があり、その使命を果たし続けていくためには健全な経営が求められます。
県では、県立病院の経営状況をどのように分析しておられるのか、今後の経営方針とあわせてお示し願います。
〇医療局長(八重樫幸治君) 県立病院の経営状況についてでありますが、平成27年度の県立病院等事業会計決算が赤字となった要因としては患者数の減少が挙げられます。その減少分を手術料収入等の増加でカバーした結果、収益は増加したものの、給与改定や年金一元化に伴う共済負担金の増加による給与費及び高額薬剤使用による薬品費の増加が収益の増加を上回ったことにより、経常収支が赤字になったものと分析しています。
今後の病院事業運営に当たっては、医師不足の深刻化を初め、県立病院を取り巻く経営環境はより厳しさを増しておりますが、今後とも、県民に良質な医療を継続的に推進していくため、新規、上位施設基準の取得や地域医療機関等との一層の連携による収益の確保と後発医薬品の使用拡大などによる費用の効率的執行に努めているところであり、こうした改善策を着実に実行することにより、安定した経営基盤の確立に取り組んでまいります。
〇17番(佐々木朋和君) そのような中、全国では、表面的な赤字経営が議会や住民の不信を招き、設備投資や人員増の抑制、さらには医師の撤退、そして経営破綻に至った自治体病院の例も聞いています。
そのような中、島根県の公立邑智病院では、病院の実力をはかるため、あえて地方交付税相当額のみを町からの繰出金とし、医業収支、内部留保などのコアデータの経年推移を議会や住民に示すなど、旧ガイドラインのころから財務諸表の見える化に努めています。
本県においても、広く県民の理解を得るため、経営状況の経年データの公表など、議会や県民に対してわかりやすい情報を公開して財務諸表の見える化に努めるべきと考えますが、現状と今後の取り組みについて伺います。
〇医療局長(八重樫幸治君) 財務諸表の見える化についてでありますが、現在、医療局においては、毎年度の決算状況や病床利用率及び経常収支比率を初め、経営計画の進捗状況等の情報を県のホームページ等を通じて公表しているほか、二次保健医療圏ごとに開催している県立病院運営協議会等において、各県立病院の現状等について丁寧に説明を行った上で、幅広い視点による意見や提言等をいただいているところです。
今後においても、他県等の状況も参考としながら、経年データの公表を初め、新公立病院改革ガイドラインに掲げる経営指標についても、わかりやすい情報の公開に向けて工夫していきます。
〇17番(佐々木朋和君) 前向きな答弁をいただきましてありがとうございます。
今、御紹介させていただいた邑智病院ですけれども、過疎医療、産科、小児科、救急医療については、政策医療という観点から必要経費と捉え、一般会計の繰り出しのルールを明確化し、必要な経費の基準額も定めるなど算定方式を明らかにして、地方交付税措置分に町が上乗せして繰出金を出しています。結果、平成24年度には合計特殊出生率2.65を達成し、町の地方創生、人口減少対策とリンクした病院経営が行われています。
本県においても、政策医療という考え方のもとに明確な繰り出しのルールを設定し、政策として上乗せ分の財源を確保しながら、人口減少を見据えた病院経営を行うべきと考えますが、御所見を伺います。
〇医療局長(八重樫幸治君) 一般会計からの繰出金についてでありますが、地方公営企業法第17条の2において、救急医療の確保に要する経費など、その性質上、地方公営企業の経営に伴う収入をもって充てることが適当でない経費のほか、周産期医療や小児医療に要する経費など、能率的な運営を行ってもなお、その経営に伴う収入のみをもって充てることが客観的に困難であると認められる経費については、一般会計において負担するものとされています。
本県においては、国の定める繰出基準を基本としながら所要額を繰り入れているところですが、今後とも、国に対し、交付税措置の充実について要請していくとともに、国の繰出基準改正に応じた繰出ルールの見直しについて、一般会計と協議していきたいと考えております。
〇17番(佐々木朋和君) よろしくお願いしたいと思います。
次に、DPC導入による評価と対策について伺いたいと思います。
診断群分類別包括支払方式、いわゆるDPCは、疾病を診断群分類別に区分し、平均的な診療報酬額の単価を設定することにより、平均在院日数や検査、投薬等の効率化及び標準化を進めるための制度であり、主として急性期病院が手上げ方式により適用できる仕組みとなっています。
DPC対象病院は、各病院の診療機能に応じてI、II、III群の三つの医療機関群に分類され、本県の9広域基幹病院は全てDPC対象病院となっており、中央、中部病院が、医療機関群で大学病院本院に準じた診療機能を有するII群の病院と高く評価されています。また、機能評価係数の全国ランキングにおいて、中央、中部病院がII群の上位、磐井、大船渡、久慈病院もIII群の上位となっており、高い評価を得ています。
今後は、この係数が病院の医療機能をはかる指標になるとともに収益向上の鍵になっていくと考えますが、県は、広域基幹病院にDPCを導入したことについてどのように評価をしているのか、また、今後係数のアップや収益の確保に向けどのような対策を行っていくのかお聞きします。
〇医療局長(八重樫幸治君) DPC導入による評価と対策についてでありますが、広域基幹病院等にDPC、診断群分類別包括支払方式を導入した効果としては、自院の診療データを全国のDPC対象病院と比較、分析し、診療の内容や在院日数を全国標準に近づけることにより、医療の質の向上や効率化が図られることが挙げられます。
また、県立病院が地域において果たしている役割などが機能評価係数に反映されたことにより、ただいま議員から御紹介ありましたとおり、磐井病院は、全国のIII群の中で第7位の病院にランキングされており、そうしたDPC制度の運用によって、県立病院では、従来の出来高制度より5%程度入院収益が増加しています。
今後におきましても、救急、急性期医療や地域医療支援など、地域で求められる役割を果たしていくとともに、医療の標準化や効率化を進め、機能に見合った施設基準の届け出を行うことなどにより、DPCにおける機能評価係数の維持、向上に努め、県民医療の質の向上と病院収益の確保の両立を図っていく考えであります。
〇17番(佐々木朋和君) 今、御紹介いただいたとおり、広域基幹病院については、このDPCの導入によって経営の改善が行われており、また、方向性も見えてきたと思っております。
しかしながら、問題は、やはり地域病院であります。平成27年度決算では、中央、中部、胆沢、磐井以外の16病院で赤字決算となっています。また、平成27年3月31日に通知された新しい公立病院改革ガイドラインでは、地方交付税の算定基礎を許可病床数から稼働病床数に見直すとされており、病床利用率67.6%である県立病院にとっては、大きな影響があると思われます。
DPC導入により医療の質の向上と経営安定化に努める大規模病院と比して、いわゆる地域病院をどう守っていくのかの解は、いまだに示されていません。一部の大規模病院の黒字で全体の赤字をカバーする考え方には限界があり、地域病院への戦略的かつ適切な設備投資は必至と考えます。
全国を見れば、二次医療圏を大きな一つの病院とみなし、機能分化を徹底させ、医療人材の効率化と診療報酬加算の増加を果たしている例も見られますし、また、地域病院に設備、人員ともに積極的に投資をして、医療の質の向上を図っていくことも重要であると考えます。例えば、千厩病院の回復期リハビリテーションに365日対応可能な体制を整えるなど、地域病院に特色的な魅力を与え患者を集めることも必要と考えますが、県は、地域病院の存続に向けどのような方針を打ち出していくのか伺います。
〇医療局長(八重樫幸治君) 地域病院の存続に向けた方針についてでありますが、圏域の基幹病院と連携しながら地域の入院機能を担うとともに、各圏域の状況を踏まえながら、地域のニーズに応じて必要な診療科を設置するなど、病院ごとの役割や特色等を経営計画において示しているところです。
例えば、千厩病院においては、地域において、急性期治療後に在宅復帰に向けたリハビリテーションを要する患者等の需要が見込まれることから、理学療法士を増員配置して、先月から地域包括ケア病床に係る施設基準の算定を開始しています。
また、東和病院においても、理学療法士を増員配置して、本年5月から地域包括ケア病床に係る施設基準の算定を開始しており、入院患者数が増加し、病床利用率が上昇しています。
今後においても、施設基準の取得に必要な人員体制の充実や医療機器の整備等を図りながら、それぞれの地域病院において特色のある医療を提供できるよう努めてまいります。
〇17番(佐々木朋和君) 大規模病院で全体の赤字をカバーするという方針ではなく、地域病院にもしっかりと設備投資、また人員の投資をしていくという方向性を示していただきました。ぜひともよろしくお願いしたいと思います。
今、その中で職員の配置についてお話がございました。全国的な医師不足の中、民間病院では、看護師等の医療従事者や医療事務スタッフの増員で医師の業務負担軽減を図っていますが、自治体病院は、職員定数条例に定められた職員定数の範囲内で職員を配置しなければならない制約があると伺っています。
今般の新しい公立病院改革ガイドラインの経営指標の目標達成に向けた具体的な取り組み例として職員採用の柔軟化が挙げられており、経営戦略的にも、診療報酬、施設基準の加算取得を図りながら、医療の質の向上に向けた有用な人員確保増のための職員定数の弾力的な運用も許していると認識しています。
県立病院では、これまでどのような基準で職員配置を行ってきているのでしょうか。今後の配置の考え方も含めてお示し願います。
〇医療局長(八重樫幸治君) 県立病院の職員配置の基準等についてでありますが、人的医療資源の有効活用を図るため、個別の県立病院が、それぞれの地域において果たすべき役割や機能に基づき、その業務量を把握しながら、県立病院全体の役割分担や収支バランスを考慮して職員配置を行っているところであります。
これまで、経営計画において、医療の質の向上等を目的として職員配置計画を定め、これに基づいて職員配置を行い、病院から新規または上位施設基準の取得の要望があった場合は、地域の実情等に応じ、県立病院全体の優先順位を定めて必要な職員を配置しています。
今後とも、これらの観点を踏まえ適正な職員配置に努めていきたいと考えております。
〇17番(佐々木朋和君) ぜひとも、医師不足という状況の中でありますけれども、そういった工夫をしながら進めていっていただきたいと思います。
次に、教育施策についてお伺いしたいと思います。
文部科学省が9月29日に公表した平成28年度全国学力・学習状況調査の結果によると、本県の中学3年生の平均正答率は、国語Aのみ全国平均を上回りましたが、数学A、Bが9年連続で平均を下回った一方、小学6年生では、数学Bを除き全国平均を上回りました。
調査に関しては、子供たちの学力をはかる上で適切かどうかの議論もあります。また、本県の子供たちは、いわての復興教育などを通して豊かな人間性を醸成しており、総合的な人間力の育成という意味では、よい方向に向かっていると感じています。
しかし、塾に通わせられる経済状況にない家庭もあり、学校教育には、子供たちが夢や目標をかなえ、世界や日本で活躍する人材となるための基礎的学力が養われるような取り組みを県民から期待されているのも事実であります。
学校外の教育に頼らずともしっかりとした学力がつけられることは、岩手県そのものの魅力となり、移住、定住への不安要素となる子供の教育への心配が払拭でき、本県への誘導施策の目玉ともなります。また、文部科学省調べで、公立中学生で年31万円余を要する学校外の教育費を抑えられれば、大きな子育て支援となります。
県は、本県の子供たちの学力の状況をどのように分析しているのかお伺いします。
〇教育長(高橋嘉行君) 学校教育におきましては、児童生徒一人一人が、確かな学力、豊かな心、健やかな体をバランスよく身につけ、社会人となる素養を育んでいくことが求められており、特に学力については、全国学力・学習状況調査などの諸調査で明らかになった学力等の状況を多角的に分析し、指導改善に生かすことが重要であると考えております。
本年度の国語、算数、数学を対象とした教科調査におきましては、議員御案内のとおり、小学校の国語、算数と中学校の国語は、全国中位レベル以上に位置した結果となっております。しかしながら、中学校の数学は、依然として低位にとどまっており、これは、教員一人一人の授業改善への支援や学校組織を挙げての学力向上への取り組みなどに、なお努力を要すると分析いたしております。
また、児童生徒に対する質問紙調査においては、小中学校ともに、授業がわかるという割合が向上し、各学校における授業改善が進んできておりますが、中学校の家庭学習時間は上昇傾向にあるものの、全国平均に比して少ないということなどが明らかになってきているところであります。
〇17番(佐々木朋和君) 今、そういった中で、全国では、自治体が授業や指導方法を工夫して学力改善につながったケースが目立ってきています。
福井県では、学力調査の成績もよいのですが、中学校では、全県下で全国平均を下回る学校がないなど、学力格差がなく、落ちこぼれをつくらない指導が評価されています。
他県からの研修が多い福井県では、1年間、福井県内の小中学校に籍を置いて研修を行った教師たちがレポートをまとめました。それによると、1人の教員が一つの学年の教科を担当するのではなく、1人の教員が1年生から3年生までを担当する縦持ち型を採用し、同じ教科を担当する複数の教員で授業を協働でつくり、すぐれた授業をすぐれた教師だけのものとしない授業の平準化を行っています。
また、福井県では、教員の90%が小中両方の免許を取得しており、人事異動でも20から25%が小中学校間で異動し、高校との校種間交流も行っています。これによって、各教師が義務教育9年間、あるいは高校卒業までの12年間を見通した教科指導が行われています。また、福井大学教職大学院が、現職教員のスキルアップのためのバックアップを行っています。
県は、授業力の向上に向けてどのような取り組みを行っているのか、今後の方向性も含めて伺います。
〇教育長(高橋嘉行君) 児童生徒の学力向上にとって教員の指導力は極めて重要でありまして、総合教育センターにおける基本研修などに加えて、全国学力・学習状況調査の分析などを踏まえ、現在、指導主事の学校訪問による支援や教科ごとの教員研修会を充実させながら、教員一人一人の授業力の向上に取り組むとともに、管理職の意識啓発を図り、学校全体での組織的な授業改善への取り組みを推進することなどにより、児童生徒の学力向上に取り組んでいるところでございます。
また、本県におきましては、独自に行っている高校1年生基礎力確認調査の結果を出身中学校と共有するなどの中高連携や、中学1年生の新入生学習状況調査の結果を出身小学校と共有するなどの小中連携に取り組んできているところではありますが、全国では、自校の学習に関する状況を公表している学校の割合が高い都道府県の学習状況調査の結果が良好である傾向もあるというようなこともございますので、このような取り組みについても、市町村教委と連携しながら推進していきたいと考えております。
〇17番(佐々木朋和君) また、先ほど紹介させていただいた福井県では、研修を行った先生方が驚かれたのは、宿題の量とやり切らせる指導だそうです。どの先生も他県の3倍ある宿題の量とそれをやり切る児童生徒と、その指導の徹底に驚いています。
本県にとって家での学習の指導は重要と考えますが、御所見を伺いたいと思います。
〇教育長(高橋嘉行君) 学力向上にとって、学校の授業に加え、小学校では特に復習、中学校、高校では復習、予習をしっかりやる家庭学習が極めて大事であります。
県教委におきましては、基礎力の定着を図り、子供たち一人一人の能力を伸ばすことや学習を通じた達成感などを醸成していくため、学校と家庭、地域が協働して、家庭学習の環境づくりや習慣づけ、宿題をやり切る指導の徹底などに取り組んでいるところであり、今後におきましても、なおその充実に努めてまいります。
〇17番(佐々木朋和君) まさに、やはり学校教育だけではなくて、これは家庭、また地域も巻き込んだ全県的な運動が必要だと思っております。ぜひとも、岩手県の子供たちが全国、世界に羽ばたけるような学習、授業内容にしていっていただきたいと思っております。
次に、少人数学級、少人数指導の実現についてお伺いしたいと思います。
全国学力・学習状況調査で上位に位置する秋田県では、平成13年から少人数学習に取り組んでおり、県費を使って少人数学習推進事業を展開しています。
小学校低学年、中学校1年生では30人学級を、小学校3学年から6学年、中学校2学年から3学年では、各校種での基本教科で20人程度の少人数指導ができるような人員配置をし、平成26年には、少人数学習推進事業に6億2、858万円を計上し、中学校においては、30人程度の少人数学級を中学3年生まで拡充しました。
本県では、児童生徒一人一人に向き合い、寄り添う学校教育の充実を平成28年度における重要課題としていますが、それには教師の負担軽減も重要で、少人数学習の推進はそれにもつながります。
県の少人数学級や少人数指導に対する評価と今後の取り組み、あわせて教職員の負担軽減策について伺います。
〇教育長(高橋嘉行君) 少人数学級につきましては、国に強く働きかけまして、加配定数の確保に努めながら、本年度におきましては新たに中学校2年生を対象としたところであり、その対象となった市町村教委、各学校からは、学級経営上の効果や不登校生徒の減少など、学習、生徒指導両面において大きな効果があると評価されております。
また、少人数指導につきましては、国からの少人数指導加配の活用に加え、本県の単独事業として、すこやかサポート、学校生活サポートの措置を講じており、児童生徒の習熟の程度に応じた指導による学習内容の定着等で、その成果が上がっております。
今後におきましても、安定的な教職員定数の確保等に努めながら、少人数教育の充実に取り組んでまいります。
教職員の負担軽減につきましては、教職員が、児童生徒一人一人に向き合い、確かな教育を実現していく上で極めて重要でありますので、従来の取り組みに加え、昨年1月からは、新たに設けた学校関係者による定期協議の場での検討を通じ、具体的な負担軽減策を順次実施してきているところであり、今後におきましては、運動部活動のあり方等を含め、引き続き教職員の負担軽減に取り組んでまいります。
〇17番(佐々木朋和君) 今、効果のほどは明らかだという答弁でございました。県費を使ってでも、私は、人口減少対策、また移住促進のためにも、教育にぜひとも支援を集中させていただきたいと思っております。
また、今お話の中で、運動部活動についてのお話がありました。福井県では、学力だけではなくて、全国体力テストでも毎年上位に挙がっており、小学校からの業間運動など運動の日常化に成功しています。一方で、中学の部活動では、学校ごとに終了時間が決められており、学業と部活動、運動のバランスがとられています。
平成28年2月定例会において、勉学、スポーツ、キャリア教育、そして、ふるさとを学ぶ地域学など、健全な配分のための運動部活動のあり方について質問したところ、県では、適切な休養日や活動時間の配慮や科学的な方法を取り入れた効果的な指導のあり方について、諸調査の結果により改善の必要性があることを認識され、岩手県版運動部活動の指導ガイドラインを作成すると御答弁されましたが、現状をお聞かせください。
〇教育長(高橋嘉行君) 県教委におきましては、各学校において、効果的、効率的な運動部活動が展開されるということ、それから、適切な休養日の設定や活動時間の配慮がなされること等によりまして、生徒が学習やスポーツ等においてバランスのとれた学校生活を送れるようにしていくことが重要と考えておりまして、これらの実現に向けて、各学校が円滑に取り組むことができるよう、運動部活動の指導ガイドラインを作成することといたしております。
現在は、その策定に向けて各学校の現状を調査している段階にあり、あわせて学校関係者の意見をもお聞きしながらガイドライン策定の準備を進めているところです。
しかしながら、本年6月に新たに文部科学省からスポーツ医科学の観点を考慮した練習時間や休養日の設定等について示す総合的なガイドラインを策定する方向性が示されましたので、この動きをも反映させながら、本県のガイドラインを策定していく考えでございます。
〇17番(佐々木朋和君) 今、新たな文部科学省のガイドラインが出されるというお話がありました。ただ、今までもそのガイドラインはあったわけで、それが県内で遵守されているかといったところが問題になったと思っております。
教育長におかれましては、しっかりと現場にそれらの落とし込みを行いながら岩手県のガイドラインも作成していただきたい、このように思っております。よろしくお願いしたいと思います。
次に、キャリア教育についてお伺いしたいと思います。
震災復興あるいは地方創生の観点から、日本、世界で羽ばたく人材となるための基礎学力とともに、地域愛を育み、地域の貴重な人材となるためのキャリア教育の要請が地域から挙がっています。
就職3年後の離職率では、高等学校卒業者は、平成25年3月卒で全国平均40.9%に対して、本県は41.4%となっています。
岩手県では、小中学校ともに職場体験などキャリア教育に熱心に取り組んでいる自治体も多くあると認識していますが、普通高校におけるインターンシップなどのキャリア教育が、時間の不足などにより十分ではないように思われます。
県は、この県内就職者の離職率の高さをどのように受けとめ、学校教育においてどのような取り組みを行っていくのか伺います。
〇教育長(高橋嘉行君) 若者が早期に離職する理由といたしましては、個々人、雇用主それぞれに起因するものなど、さまざまな事情があると推察しておりますが、とりわけ、社会人としての基礎を築く時期である高校卒業後間もない時期の離職につきましては、本人のその後の人生設計に大きな影響を与えることとなりますので、学校教育の中で健全な勤労観や職業観を育み、また、将来の自己実現に資する総合的な力を育んでいくことが大事であり、このような観点からキャリア教育を進めてきているところでございます。
労働局による直近の調査では、平成27年3月卒業者の1年目の離職率が全国を下回る結果が出ており、改善傾向があらわれてきております。さらに、本県において、いわてで働こう推進協議会が設立され、若者の地元定着を図る機運も高まってきております。
今後におきましては、このような流れを追い風と捉え、関係機関との連携を強めながら、企業の業務内容や労働条件など、的確な情報提供、インターンシップ、企業見学会の充実などを通じて、キャリア教育の一層の充実に努めてまいります。
〇17番(佐々木朋和君) 今、改善傾向にあるというお話をいただきました。しかしながら、一方で、私も数字がちょっと古いデータしかないのですけれども、大学卒業生で3年離職率は、高校卒業者と比べて、全国平均と乖離をしているという数字にあると思っております。そのことを考えると、普通高校におけるインターンシップもしくはキャリア教育というのは、不足しているのではないか、その影響が大学卒業時にもあらわれているのではないかと思っております。しっかりとこの点も捉えながら、指導していっていただきたいと思います。
その中で、ジョブカフェによる職場定着の取り組みについて伺いたいと思います。
離職者の中には、その後、フリーターや非正規社員という働き方を強いられた結果、若者の貧困、結婚したいけれどもできない状況に陥るなど、早期離職が人口減少の要因にもなっていると思います。県は、地元就職後の継続的な職場定着に向け、ジョブカフェいわてや地域ジョブカフェにおいて、どのように取り組んでいるのか伺いたいと思います。
〇商工労働観光部長(菊池哲君) ジョブカフェいわてによる職場定着の取り組みについてでありますが、ジョブカフェいわてでは、若年者のビジネスマナーなど、社会人としての基礎力の向上を目指したセミナーの開催や、就職後の悩みに対応したキャリアカウンセラーによる個別対応により、若年者の早期離職の防止と職場定着支援を行っているところでございます。
また、企業に対しましても、採用力や人材育成力を強化する研修の開催や、事業所に出向いての人材育成のカウンセリングなどによる支援を行っております。
また、県内8カ所に設置している地域ジョブカフェにおいては、各地域の実情に応じたセミナーの開催や、就業支援員による新規高卒者の就職の支援、就職後の事業所訪問による相談対応等により、若年者の職場定着を支援しております。
各セミナー参加者へのアンケート結果を見ますと、これからの勤務につなげていきたい、仕事をやり遂げようと思ったという声が寄せられるなど、高い評価が得られているところでありまして、今後も、ジョブカフェいわてや地域ジョブカフェの取り組みを通じまして、若者が安心して仕事を続けられるよう支援してまいります。
〇17番(佐々木朋和君) 今、震災以来、また復興に向けて若者の地元就職が多くなっていると認識をしております。そんな中でやるべきことは、この早期離職者をできるだけ少なくして、ぜひ、この岩手県をしょって立つ人材になっていただきたいというところであります。一層の取り組み、機能拡充をお願いしたいと思います。
その中で、今まで申し上げたとおり、県の学校教育には、基礎学力の向上から地方創生の政策的な地元定着、キャリア教育まで多様な要請があり、限られた時間の中で何を取捨選択するか、リーダーの決断が迫られています。そのような中、教育委員会制度改革により、新教育長の責任と権限、裁量がより大きくなり、また、首長は、総合教育会議において、公の場で教育行政について議論することが可能となり、教育行政に果たす責任や役割が明確になりました。今後は、学校の自立性、自主性に配慮しながらも、知事部局との連携強化により、さまざまな施策の推進が期待されます。
知事は、本県の教育行政についてどのような役割を担っていくのか、また、今後の岩手の教育をどのような方向に導いていくのか、お考えを伺います。
〇知事(達増拓也君) 新しい教育委員会制度におきましては、総合教育会議の設置や教育長の直接任命制などによって、知事がこれまで以上に教育行政にかかわる機会が高まりました。県民の代表である知事が教育にかかわることは、教育を県民に対してより開かれたものにしていくことになると考えておりまして、昨年度、いじめを一因とする重大事案が発生した際には、知事が臨時の総合教育会議を招集し緊急の対応を協議するとともに、知事、教育委員会委員長連名でのメッセージを発出するなど、県民の意識に応える取り組みを行ったところでありまして、今後におきましても、必要に応じて、このような知事としての役割を担っていきたいと思います。
また、教育の推進に当たりましては、初等中等教育から高等教育、社会人教育まで、県民個々のライフステージに応じた多様な学びの機会を提供していくことが重要であり、特に学校教育においては、岩手の子供たちがグローバル化や情報化など、急速に変容する社会を生き抜いていくため、子供たち一人一人に確かな学力、豊かな心、健やかな体の知、徳、体をバランスよく身につけてもらうことが大切であります。
このような基本的な考え方のもと、公立学校を初め、私立大学、私立学校、大学などの教育機関がそれぞれの役割を果たしつつ、学校種間や産業界などとの連携を一層深めながら、この岩手の地で、岩手の地域地域、そして日本の次代を担う人材を育んでいきたいと考えております。
〇17番(佐々木朋和君) まさに、知事に期待されているところは、そういった情報発信だと思っております。今まで申し上げました学力向上もしくは早期離職者対策を含めたキャリア教育といったところを、学校内ではなくて県民運動にして、ぜひともこの岩手を担う人材の育成、子供たちの教育、全国に誇れる岩手の教育を確立していただきたいと思います。
また、教育の現場は、子供たちを含めて大変多忙であって、時間があればやりたいんだけれどもというところが多くあると思います。そういった中で、何をするかも大事ですけれども、何をしないかということも大事だと思っておりまして、しっかりとした取捨選択をリーダーシップをとってやっていっていただきたいと思っております。
次に、国際リニアコライダー(ILC)の誘致実現に向けた取り組みについてお伺いをしたいと思います。
平成25年8月に、ILCの国内候補地が北上高地に一本化されたところであり、国は、日本学術会議の提言を受け、有識者会議を設置し専門的な見地から議論を行っており、誘致実現に向けた課題や取り組むべき方向性が示されたところであります。
東北地方では、加速器関連技術を用いたプロジェクトが順次計画されており、今後、関連産業の集積が進み、その集大成としてILCの建設が実現すれば、日本が国際的な科学拠点として世界に対し大きく貢献するとともに、新たな地方創生につながることが期待されています。
東北ILC推進協議会は、受け入れ態勢を具体的に検討する東北ILC準備室を設置しており、建設地が決定したときに備えて、関係機関の足並みをそろえ、研究所建設や地元企業の参入支援などに速やかに動き出せる仕組みをつくる方針と伺っています。
県は、これまで、庁内ワーキンググループなどを設置して受け入れ態勢を内部的に検討してきたと思いますが、県として、誘致実現に向けどのようにかかわっていくのでしょうか。また、議論の材料として、本県が描くグランドデザインを提示して議論を加速させるべきと思いますが、御所見を伺います。
〇政策地域部長(大平尚君) ILC実現に向けた取り組みについてでありますが、東北ILC準備室は、政府が国内誘致を決定する前に、建設候補地として準備すべきことを整理し、具体の対応を進めるために東北ILC推進協議会に設置されたもので、鈴木厚人岩手県立大学学長を室長に、東北の産学官に加えまして、東京大学や高エネルギー加速器研究機構も加わり構成されているものです。本県は、この準備室において、東北の地域課題とその対応、計画づくりなどを主に担当しているところです。
このようなことから、県といたしましても、東北ILC準備室の開設に呼応いたしまして、岩手県先端科学技術研究センター内に、ILC関係者の連携を密に図るための活動拠点として、岩手県ILC連携室を開設いたしました。また、県では、これまでワーキンググループを設置し、外国人の受け入れやまちづくりなどの課題抽出を行いましたが、現在はこれを格上げし、庁内の副部長級を構成員とする研究会において、その対応策について検討を進めております。
加速器関連産業の振興など、ILCの誘致決定にかかわらず、対応可能なことは着手しているところであります。
今後、東北ILC準備室において策定予定の地域広域基本計画、いわゆる東北のマスタープランは、東北におけるILC実現の道しるべともなることから、同プランの策定過程において、岩手県の担当部分のみならず、ただいま申し上げました本県のこれまでの検討状況なども踏まえ、広く議論をすることで、県と東北のベクトルを一つにした検討を進めていくこととしております。
〇17番(佐々木朋和君) 県として単独ではなく、準備室とともにグランドデザインを描いていくと捉えてよろしいんでしょうか。
〇政策地域部長(大平尚君) 岩手県としては岩手県の考え方はございますが、策定されるものは、東北のILC推進協議会において策定されるいわゆる東北のマスタープラン、この中にその考え方を盛り込んでいただくということでございます。
〇17番(佐々木朋和君) ぜひ頑張っていただきたいと思います。
その中で、県民の皆さんにとってもわかりやすい議論をしていくことが大事だと思っております。今、誘致に向けて国の発表を待っているというところでありますけれども、この東北ILC準備室が決定したときに備えてやれることはやっていこうという方針を出したと思っておりますから、ぜひとも県民を巻き込んで、県民にとっても具体的な構想があればこそ、より盛り上がっていくと思いますので、ぜひとも、そういったものを早く提示できるように頑張っていただきたいと思います。
次に、結婚サポートセンターについてお伺いをしたいと思います。
平成27年10月に運営が始まり、1年が経過した“いきいき岩手”結婚サポートセンター─i‐サポは、10月末現在の登録者数が、男性550名、女性314名、お見合い392件、交際まで発展した会員が190組、成婚3組と、短い期間ながら成果を上げています。盛岡市と宮古市に拠点を設け、沿岸地域では出張サービスも行っていますが、地域別登録割合を見ると、県央50%、県南23%、沿岸20%、県北6%と、地域別にばらつきがあり、また一方では、地域に拠点がないにもかかわらず、登録者がいるということはニーズの高さをうかがわせます。
県は、岩手県ふるさと振興総合戦略の中で、結婚支援事業を実施している市町村数を、平成31年度までに33市町村に引き上げることを指標としていますが、婚活事業は、各市町村単位よりも広域的に展開するほうがプライバシー配慮や交流を広げる意味でも有用と言われており、県として取り組むべき課題であると思われます。
これまでのi‐サポの取り組みの評価と各広域振興局圏内への拠点設置等について、知事の御所見を伺います。
〇知事(達増拓也君) 昨年10月の開設以来、盛岡市と宮古市の2カ所を拠点として会員同士のマッチング事業を実施するとともに、市町村、団体等が結婚支援事業として実施するイベントなどをホームページ等により広く情報発信を行って、その取り組みを支援しております。
“いきいき岩手”結婚サポートセンター─i‐サポの登録会員は、本年10月末現在で、既に今年度の目標850人を上回る864人となっており、成婚会員が3組誕生するなど、おおむね順調に運営されているものと認識しております。
今後、成婚会員の増加に向けましては、新たな会員を確保し、多くのマッチング機会を提供していくことが重要であり、現在拠点が設置されていない地域への増設や、出張サービスの拡充などによる強化が必要と考えています。
その一方で、拠点の増設等については、財源の確保やセンタースタッフの確保、養成などの課題もありますことから、構成団体である市町村、関係団体等の意見を踏まえて、結婚を望む県民の利便性に配慮しつつ、検討を進めてまいりたいと思います。
〇17番(佐々木朋和君) 今、市町村で、市町村ごとの取り組みには限界があると。今、市町村ごとの取り組みにおいても、ほかの隣接市町村や他県の市町村とともに、交流を深めながらやっていくほうがプライバシーの観点からもいいということで、そういった動きが広がっていると思います。そういった意味では、私は、これは県として取り組むべき課題だと思っておりまして、先進地の茨城県でも広域圏ごとにあるということでございますので、これについてはぜひ進めていただきたいと思っております。
次に、日本版DMOへの支援についてお伺いをしたいと思います。
行政や宿泊、飲食、文化、スポーツ、農林漁業、商工業、交通事業、環境事業などの関連事業者や地域住民などの多様な関係者を調整し、地域全体での戦略的な観光地域づくりや複数地域の広域的な連携を主導していくことを目的に、日本版DMOの整備が本県でも一関、平泉地域などで進められています。
従来、行政の観光振興策は、観光に携わる中小企業への設備投資補助やキャンペーン活動への助成などでありましたが、地域づくりの視点に向け、その求められる役割も変化していくと考えます。
県では、こうした日本版DMOに関する地域の取り組みに対してどのような支援を行っていくのかお伺いします。
〇商工労働観光部長(菊池哲君) 国では、日本版DMOの整備促進を図るため、昨年12月にDMOの候補法人登録制度を創設し、登録を受けた法人に対して、交付金による支援や関係省庁の連携支援チームによる支援などを行っているところであります。これを受けて、県では、東日本大震災津波で大きな被害を受けた三陸地域における復興のその先を見据えた総合的な地域振興の推進体制の整備の一環として、本年4月に、公益財団法人さんりく基金を母体とし、日本版DMOとしての三陸DMOセンターを開所したところでございます。
また、県内各地域において、地域主体によるDMO整備を促進するため、市町村や観光関係団体を対象に、DMOの目的、必要性などの理解を広めるとともに、具体的なDMOの登録手続、これに伴う国の支援策の活用に関するセミナーを開催するなど、DMOの設立に向けての効果的な支援を行うこととしております。
さらに、DMO設立後の活動への支援も重要であると認識しておりまして、そのため、県、市町村、観光事業者等で構成する観光推進組織でありますいわて観光キャンペーン推進協議会を中心に、これまで観光事業者等を対象に実施してまいりました着地型旅行商品造成やバスツアー運行への支援、観光マネジメント人材育成の支援などをDMO向けに拡充するとともに、連携して効果的な情報発信やプロモーションを展開していきたいと考えております。
〇17番(佐々木朋和君) 御答弁ありがとうございました。今まで、岩手県においても、従来の観光のほかにグリーンツーリズム、また、今回、国体の後のレガシーとして、スポーツツーリズムにも大きな期待を寄せられるところでありますけれども、まだまだそういったところが従来の観光とは遠い距離にあって、お客様に対して提示されていたのではないかと思っております。
また、今般、私の地元でも、餅食文化が食と農の景勝地に認定をされまして、そういった意味で、食を通じた観光ということも重要になっております。そういった多岐にわたる分野への支援を、ぜひともこのDMOへの支援という中で実現をしていっていただきたいと思いますので、よろしくお願いしたいと思います。
次に、放射性物質の影響を受けたほだ木等の処理と原木林の再生についてお伺いをしたいと思います。
福島第一原発事故による放射性物質によって大きな被害を受けた原木シイタケ生産は、生産者や市町村、県の努力により、個別生産者ごとの出荷制限解除も進み、再生産の道を進んでいます。その中で大きな課題が、ほだ場付近に置かれている汚染ほだ木、落葉層の処理であります。県内には、汚染ほだ木が約450万本、落葉層が約8、850トンあり、経年とともに腐食も進み、一刻も早い安全な保管、処理方法の確立が求められています。
現状と今後の方向性をお示しください。
〇農林水産部長(紺野由夫君) 放射性物質の影響を受けました市町村におきましては、ほだ場にあったほだ木や落葉層を除去して一時保管を行っておりまして、これらの処理が課題となっているところと考えております。このうち、一関市におきましては、林野庁及び環境省の職員による現地視察や、国の研究機関を含む国、県、市による現地検討を経まして、具体的な処理の方向性が固まったと伺っているところございます。これに基づきまして、ほだ木については、一関市が国の補助事業を活用して燃料用チップとして利用する実証試験に本年度着手するとともに、落葉層につきましては、他の場所への移設ですとか埋設、保管などの対応の検討を進めておりまして、こうした取り組みを県としては引き続き支援してまいりたいと考えております。
〇17番(佐々木朋和君) ぜひとも、関係市町村の後押しを県にはお願いをしたいと思いますし、また、全県的な展開に今後取り組んでいただきたいと思います。
最後になりますが、原木林の再生についてお伺いをしたいと思います。
県内では、シイタケ原木として利用できない立ち木に対する賠償も行われておらず、原木林の再生をどのように行っていくかが大きな課題であります。
原木林の被害の現状と再生に向けた今後の取り組みをお示し願います。
〇農林水産部長(紺野由夫君) 本県のシイタケ生産者につきましては、従来、地元のナラ林等を活用したシイタケ生産を行ってきたところでございますが、震災以降、県南地域におきましては、シイタケ原木が放射性物質濃度の指標値を超過する状況となったことから、地域外から原木を購入して生産を継続しているところでございます。
このため、県といたしましては、原木の地域内調達が難しい県南の11市町において、原木林の放射性物質濃度の推移を確認するためのモニタリング調査ですとか、放射性物質の影響を受けている広葉樹林を伐採し、再生させる実証等に取り組んできておりまして、今後とも、対策の拡充等を国に働きかけてまいります。
また、今年度、県内初となるシイタケ原木用非破壊検査機を導入いたしまして、原木の放射性物質検査を開始したところでございまして、シイタケ生産に利用できる原木の区域の拡大に向けて、引き続きしっかりと取り組んでまいります。
〇17番(佐々木朋和君) 原木シイタケ生産もようやくここまで来たというところでありますが、最終的には、やはり地域の原木林を使って、生産者が今までどおりの生産に戻るということでございます。また、山菜や野生キノコについても、いまだに出荷がかなわない部分もありますので、ぜひとも引き続き取り組みをいただきたいということをお願いして、質問を終わりたいと思います。御清聴ありがとうございました。(拍手)
〇副議長(工藤大輔君) 以上をもって佐々木朋和君の一般質問を終わります。
〇副議長(工藤大輔君) この際、暫時休憩いたします。
午後4時12分 休 憩
出席議員(47名)
1  番 千 田 美津子 君
2  番 臼 澤   勉 君
3  番 千 葉 絢 子 君
4  番 ハクセル美穂子 君
5  番 菅野 ひろのり 君
6  番 柳 村   一 君
7  番 阿 部 盛 重 君
8  番 佐 藤 ケイ子 君
9  番 佐々木 宣 和 君
10  番 川 村 伸 浩 君
11  番 田 村 勝 則 君
12  番 工 藤   誠 君
13  番 高 田 一 郎 君
14  番 吉 田 敬 子 君
15  番 佐々木   努 君
16  番 千 葉   進 君
17  番 佐々木 朋 和 君
18  番 名須川   晋 君
19  番 軽 石 義 則 君
20  番 神 崎 浩 之 君
21  番 城内 よしひこ 君
22  番 福 井 せいじ 君
23  番 佐々木 茂 光 君
24  番 高 橋 孝 眞 君
26  番 小 西 和 子 君
27  番 工 藤 勝 博 君
28  番 高 橋 但 馬 君
29  番 小 野   共 君
30  番 郷右近   浩 君
31  番 高 橋   元 君
32  番 関 根 敏 伸 君
33  番 岩 崎 友 一 君
34  番 嵯 峨 壱 朗 君
35  番 中 平   均 君
36  番 五日市   王 君
37  番 斉 藤   信 君
38  番 小野寺   好 君
39  番 飯 澤   匡 君
40  番 渡 辺 幸 貫 君
41  番 佐々木 順 一 君
42  番 田 村   誠 君
43  番 伊 藤 勢 至 君
44  番 工 藤 勝 子 君
45  番 樋 下 正 信 君
46  番 柳 村 岩 見 君
47  番 千 葉   伝 君
48  番 工 藤 大 輔 君
欠席議員(1名)
25  番 木 村 幸 弘  君
説明のため出席した者
休憩前に同じ
職務のため議場に出席した事務局職員
休憩前に同じ
午後4時32分 再開
〇副議長(工藤大輔君) 休憩前に引き続き会議を開きます。
〇副議長(工藤大輔君) 本日の会議時間は、議事の都合によりあらかじめ延長いたします。
〇副議長(工藤大輔君) 日程第1、一般質問を継続いたします。佐々木宣和君。
〔9番佐々木宣和君登壇〕(拍手)

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