平成28年2月定例会 第4回岩手県議会定例会会議録

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〇44番(工藤勝子君) 自由民主クラブの工藤勝子でございます。
本定例会において代表質問をする機会を与えられましたことに感謝を申し上げます。
東日本大震災津波の発生から、間もなく5年が経過しようとしております。改めて、犠牲になられた皆様方に哀悼の意を表し、被災された皆様方にお見舞いを申し上げます。
初めに、東日本大震災津波からの復興と財源確保についてお伺いいたします。
知事は、平成28年度を本格復興完遂年と位置づけましたが、その名にふさわしく、被災市町村において、本当に目に見えた形で復興が完遂できることを心から願っております。
県内では、今年1月末現在、約2万2、000人の方々が、応急仮設住宅等で寒さや暑さに耐えながら、不便な生活を余儀なくされております。被災者の方々は、こうした生活がまさか5年間も続くとは考えていなかったと話されています。一日も早い恒久住宅での生活を望む被災者の切実な願いをどう受けとめ、本格復興完遂年を実感してもらおうとしているのか、お伺いいたします。
知事は、災害公営住宅を内陸にも建設する方針を発表されました。内陸に避難されている方々約2、300世帯の意向調査を実施し、整備戸数や場所については、本年4月以降に具体的な検討を進めると伺っております。
沿岸市町村においては、1人でも多くの方がふるさとに戻ってほしいと願う中、その人口は、2015年の国勢調査結果によると、5年前と比較し、12市町村で全て減少し、4市町村では二桁の減少となっているのが現状です。
このような状況の中で、沿岸地域の災害公営住宅が完成する前に内陸への建設が動き出すことが、沿岸に戻る人の減少を進める要因の一つにならないのか、その影響も懸念されるところです。
今回の方針決定について、沿岸市町村を初め、関係者との協議や調整をどのように行い、その際、どのような意見が出され、どのような考えで決定されたのか、お伺いいたします。
また、内陸のみなし仮設住宅には、盛岡市を初め、県内の市町村にも多くの方々が生活されておられます。整備戸数や場所はどのような視点で検討されるのか。さらに、建設予定地以外の市町村に住んでいる方々に不利益とならないような配慮が必要と思いますが、これらの方々への住宅支援をどのように措置される考えなのか、お伺いします。
復興を力強く進めていくためには産業振興が重要であり、県では、なりわいの再生として、地域漁業の再生と資源回復に向けた支援のほか、被災した中小企業の再建や復興に向けた取り組みを支援し、若者や女性を初めとした被災地で起業を行おうとする方々への支援を実施するとしています。
一方、被災地では、人材や資材の不足、高騰が大きな課題として挙げられており、特に水産加工業者は、人手が不足で規模拡大ができないとも言われ、被災地の産業振興において、人材確保は今後も大きな課題であると思われます。こうした状況の中で、どのように被災地の人材確保を図ろうとしているのか、お伺いいたします。
地域産業の再生や企業誘致などの産業振興、住宅再建などを進め、被災地に再びにぎわいを取り戻すためには、一日も早く土地の整備を完了する必要がありますが、一部市町村では、中心部の住宅再建はおよそ2年後になる地区もあるとのことです。土地区画整理事業などのおくれにより、まちづくりに時間がかかればかかるほど、内陸や県外への移転志向は強まるのではないでしょうか。
多くの方々が住みなれた沿岸地域に住み、働き続けられるよう、また、多額の資金を投入して整備を進めている土地に空き地が目立つような事態とならないために、5年を経過する今こそ、まちづくりをさらに加速化する必要があると考えますが、今後どのように取り組まれるのか、お伺いします。
平成28年度当初予算において、震災対応分の予算は4、005億円となっておりますが、これまで国が全額負担してきた復興事業の一部が地元負担となったことから、この一部負担分として25億円を計上し、このうち、24億円を県債で賄うこととしております。今後、全ての復興が完了するまでに必要な予算はどれくらいと試算され、その財源確保の見通しはどうなっているのか、お伺いします。
今月、本県で被災者の心のケアに取り組まれている医師の方から、その取り組み状況を伺う機会がありましたが、被災地では、今後も、この5年間で積み重なったストレスや先の見えない不安により心身の不調が出てくるおそれがあり、10年、20年という長いスパンの支援が必要とのことです。本県の復興計画は、平成30年度までとなっておりますが、被災者の心の復興には、こうした長時間に及ぶ取り組みが必要との意見を踏まえ、10年、20年を見通した長期的な対応をどのように検討されているのか、お伺いします。
また、長期間に及ぶ取り組みを続けていくための必要な財源確保の見通しはどうか、国に対してどのような要望を行っていくのか、お伺いします。
次に、県政の今後の運営方針についてお伺いします。
知事は、平成19年4月の就任に当たり、岩手の現状を危機的な状況であると演説され、特に県民所得の低迷、人口減少問題、仕事、雇用問題、医師不足等の問題を挙げ、危機を希望に変えていくと述べられました。
2期8年の間には、大震災の発生により、千年に一度とも言われる未曾有の被害によって多くの方々の命や財産が奪われ、震災からの復興を県政の最重要課題としてこの5年が経過しております。この間、いわて県民計画第1期、第2期アクションプランの推進により、震災復興とあわせて、これら危機的な状況の解消に取り組んでこられたと思いますが、本定例会の知事演述において、岩手の抱える現状や課題は語られず、知事の危機意識がなくなっていると感じました。
危機から明るい光が見える希望へとつながったと評価できる成果はどういったものがあり、知事就任時から岩手の危機的な状況はどのように変わったのか、また、希望郷いわての実現はどの程度進んでいると認識されているのか、お伺いします。
このたび策定された第3期アクションプランは、大震災からの復興とふるさと振興を進め、さらには、その先にある希望郷いわての実現に向けて具体的な取り組み等を示すとし、政策推進目標を定めるとともに、産業、雇用など、七つの政策の基本的考え方を定めた計画となっております。
プランは、県政全般にわたる内容となっておりますが、知事が認識する岩手の現状や希望郷いわての実現の状況などを踏まえ、本格復興完遂とともに、今後特に力を入れ、重点的に推進していくとお考えのものは何か、お伺いいたします。
次に、財政運営についてお伺いします。
平成28年度の一般会計当初予算は総額1兆661億円となり、前年当初に比べ451億円の減となりました。大震災からの復興予算は4、005億円と、前年度に比べ482億円の減となっており、その財源については、震災復興特別交付税や国庫支出金などのほか、県債の発行により確保される見込みとなっております。
一方、通常分の予算については、県税収入が前年度から24億円ほど増額すると見込まれるものの、社会保障関係経費の増などにより財源不足が生じるため、財源対策基金を192億円取り崩し、その結果、平成28年度末の基金残高は377億円になると見込まれております。また、県債残高は6年連続で減少しているものの、平成28年度末の残高は1兆3、100億円と見込まれ、依然として極めて高い水準にあります。
財源対策基金は、このままのペースで推移すればここ数年で枯渇し、将来への蓄えが底をついてしまう懸念がある一方、1兆円を超える多額の県債の償還が残ることになります。
少子高齢化と人口減少が進む中、これからの岩手を担う若者や子供たちに蓄えを引き継ぐことができず、多額の県債の償還を残すという事態を危惧しておりますが、これらのことを踏まえ、本県の財政運営に対する知事の御所見をお伺いします。
次に、人口減少対策についてお伺いします。
本年1月に出された岩手県人口移動報告年報によると、平成27年10月1日現在の本県の人口は約127万3、000人で、近年の動向は、平成16年に140万人を割り込み、平成18年以降はおおむね1万人のペースで人口減少が進んでおります。この10年間の人口の社会動態については一貫して社会減で推移しており、平成24年、平成25年は約2、000人の減少でしたが、平成27年は約4、000人に拡大しております。
こうした中、平成27年10月に策定された岩手県ふるさと振興総合戦略では、若者の仕事や移住に関する願いに応え、県外への転出超過を解消する社会減ゼロを目指すとし、5年後の平成32年に社会減ゼロにするという目標を立てられました。
知事は、何を根拠として5年後に社会減ゼロを実現できるとお考えなのかお伺いいたします。
まち・ひと・しごと創生法により他の都道府県でも総合戦略を策定し、同様の取り組みが全国で展開される中、大学進学や就職で県外に出る人を減らし、また、県外に出た若者や人材を岩手に呼び戻すためには、ふるさとに引きつける仕事や魅力があるのかという点が深く関係してくると思われます。岩手の魅力を発信しながら、地場に定着している企業の応援や誘致企業等による働く場の確保、正規社員としての所得の安定、さらには若い女性の雇用の創出などを進めていく必要があると考えます。
総合戦略では、施策推進目標の一つとして、やりがいと生活を支える所得が得られる仕事を創出し、岩手への新たな人の流れの創出を目指すとし、県のほか企業、団体、教育機関、産業支援機関などの取り組みも示しております。
〔議長退席、副議長着席〕
県では、先ごろ、いわてで働こう推進協議会を立ち上げ、関係団体等との連携を図ることとしておりますが、個々の企業や関係団体等に浸透を図り、オール岩手による具体的な展開につなげていく必要があります。また、市町村の人口減少対策においても雇用創出は重要な位置づけにあるものの、市町村によっては人材やノウハウが十分でなく、県への期待も大きいのではないかと思います。
県の役割として、関係団体等とどのように連携し、オール岩手による取り組みに結びつけていくのか、市町村との連携や支援をどのように行っていくのかお伺いいたします。
次に、農業振興戦略についてお伺いします。
農業、農村社会の担い手となる若者が全体的に少ない中にあっても、農業経営に夢や希望を見出し、独自のこだわりと高い志を持って新しい農業に挑戦している若者や女性たちが活躍を始めております。
こうした担い手となる人たちには、高度な栽培技術や6次産業化におけるノウハウとともに経営感覚を身につけることが求められると思いますが、担い手を応援するための県の農業普及活動についてお伺いします。
TPP協定において、参加12カ国が協定文に署名したことから大筋合意の内容が確定し、農林水産省は、昨年12月に、農政新時代と題し、農林水産分野におけるTPP対策を示しており、この中で、攻めの農林水産業への転換として、体質強化対策や経営安定、安定供給のための備えなどの戦略を打ち出しております。
また、県では、これに伴う本県の農林水産物の生産減少額を40億円から73億円と試算されておりますが、いまだその影響は不透明であり、また、産地間競争の激化や安い海外の農畜産物の輸入による不安の声も聞かれており、担い手が将来に希望が持てる持続可能な農業振興策が求められております。
TPP協定の合意を物ともせず元気に今後も農業を続けていけるよう、担い手に対して知事から力強いメッセージを送っていただきたいと思いますが、いかがでしょうか。
また、県としても、守りの農業から攻めの農業に転換するため、国内、海外販売戦略を打ち出すべきと考えますが、今後どのように対応しようとしているのかお伺いします。
知事は新春インタビューで、担い手育成や産地強化を図り、付加価値や販売戦略を工夫すると話されております。本県の平成26年度おける新規就農者数は246人で、このうちUターン者は107人、新規参入者は38人となっており、農村地域における人口増や地域活性化につながっております。
また、NPO法人ふるさと回帰支援センターへの移住相談件数が2015年には2万1、000件で、前年の1万2、000件から大幅に増加し、特に20代、30代の移住希望者が急増しており、若者の田園回帰志向が見られるとのことです。移住希望地は長野県がトップということですが、岩手県が希望地として選ばれるような取り組みが必要ではないでしょうか。
移住希望者を本県に呼び込み、新規就農者増加の流れをより強くするため、岩手の大地で農業をやろうキャンペーンを計画すべきと考えますが、担い手の確保、育成に対する知事の御所見をお伺いします。
次に、教育理念と県立高等学校再編についてお伺いします。
県教育委員会は、昨年12月25日に新たな県立高等学校再編計画案を公表しました。知事も、かなりの努力と工夫を重ねて練り上げた案と評価しておりますが、初めに、知事の教育理念、教育ビジョンをお伺いいたします。また、少子化が進む中で、岩手の将来を担う人材を育てる高校教育のあり方をどのように考えているのか、あわせてお示しください。
高等学校は、教育機関としてだけでなく、地域産業の担い手育成や芸術文化振興など地域活性化の役割も担っており、特に若者が少なくなっている過疎地域においては貴重な存在と言えるのではないでしょうか。高等学校は、教育環境整備の観点から一定規模の生徒数を確保する必要がありますが、一方で、小規模高校には、身近な地域で学ぶ機会を確保できることや、きめ細やかな指導という点でメリットもあります。
小規模高校のこうしたメリットも考慮し、きらりと光る、地域に根差した特色のある活動や、地域の課題解決、地域活性化に向けた地域と学校との連携などによる小規模高校ならではの魅力ある学校づくりを行い、地元の生徒や保護者、地域住民等からの期待に応え、存続させていくことも重要ではないかと考えます。小規模高校のあり方に対する知事の御所見をお伺いします。
県教育委員会は、望ましい学校規模を原則1学年4学級から6学級程度と公表していますが、1学級であっても、生徒たちには、自信と誇りを持って伝統を積み重ね、目標に向かって進んでほしいと願うばかりであります。どんな環境にあっても、教育を受ける生徒には平等であってほしい、教育に格差があってはならないと思います。
今回示された計画案に対して、説明会やパブリックコメントを通じてさまざまな意見が寄せられていると思いますが、今後、地元市町村、同窓会、地区民、保護者等が一体となって地域の高等学校の存続に向けて努力する時間を与えてほしいという声を知事はどのように受けとめているのかお伺いいたします。
次に、緊急雇用創出事業問題への対応と市町村との信頼関係についてお伺いいたします。
2月10日に開催された東日本大震災津波復興特別委員会は、知事出席のもと、DIOジャパンの緊急雇用創出事業の問題について集中審議が行われました。この問題について、会計検査院から、立地市町に対する県の指導監督が不十分であったと指摘されており、知事は、集中審議の中で初めて県民に謝罪されました。
一方で、会計検査院からの指摘により、立地7市町に求められている返還金については、本県だけが特別な対応をすることは難しいとし、立地市町に全額返還を求めることとしております。
県と市町村は、ふるさと振興など重要かつ喫緊の課題への対応に向けて今後一層の連携が求められており、より高い信頼関係を構築していかなければならない中、今回の事案に対する県の対応、その責任の担い方について、立地7市町だけでなく、他の市町村も高い関心を持って注目していると思います。
知事は、先日の県民に対する謝罪により、立地市町に対する責任も果たしたとお考えなのか、また、県が誘致に積極的にかかわってきた企業が、結果としてこういう事態をもたらしたことをどう受けとめているのかお伺いいたします。
さらに、先日開催された山田町NPO事案の再検証に関する有識者会議において県の責任を指摘する意見が相次ぎ、県には、山田町への指導監督という面で法的責任があるとの意見もあったとのことですが、知事は、こうした意見をどのように受けとめ、対応するお考えかお伺いいたします。あわせて、本事業の問題に係る県の対応が市町村との信頼関係に影響を及ぼすことはないのかお伺いいたします。
最後に、副知事2人体制についてお伺いします。
平成22年9月に、知事は、トップマネジメントの強化を狙いに副知事2人体制とし、上野副知事が就任しました。上野副知事は、頻繁に沿岸被災地を訪問し、首長との連携を密にしたことなどから高い評価を得ておりました。知事は、先日の議会運営委員会において、東日本大震災津波発生当初に比べ、知事、副知事を合わせた沿岸被災地の訪問や企業誘致に向けたトップセールスの件数が減少していると答弁されております。
震災からの復興完遂と、その後のさらなる復興や人口減少問題、ふるさと振興、TPP対策、ILC誘致など重要課題が山積する中、希望郷いわての実現に向けた取り組みを推進していくため、もう一度、副知事2人体制としてみてはどうでしょうか、知事のお考えをお伺いいたします。
以上で代表質問を終わります。知事におかれましては誠意ある御答弁を心からお願い申し上げます。御清聴ありがとうございました。(拍手)
〔知事達増拓也君登壇〕
〇知事(達増拓也君) 工藤勝子議員の御質問にお答え申し上げます。
まず、恒久住宅への早期移行についてでありますが、議員御指摘のとおり、震災から間もなく5年が経過しようとしている中にありまして、被災者の皆様には、一日も早く応急仮設住宅から恒久住宅に移っていただけるようにする必要があります。このため災害公営住宅の整備を急いでおり、今年度末で全体の約6割、そして、平成28年度末では約9割の完成を目指しております。
また、被災者生活再建支援金や、県、市町村による住宅再建に対する独自の制度によりまして住宅の自力再建の支援も行っているところであり、災害公営住宅の整備や住宅の自立再建などを合わせて、現在約6割の方々が住まいの再建を既に終えられたか、あるいは現在再建中となっております。今後も、被災者の皆様に一日でも早く安定した生活に戻っていただけるよう全力で取り組んでまいります。
次に、内陸への災害公営住宅建設についてでありますが、これまで、県では、内陸避難者の皆さんの住宅の確保に向けて、災害公営住宅の建設を含む具体の支援策について関係市町村や国との協議を行ってきたところでありますが、特に沿岸市町については、直接訪問するなど丁寧に意見交換を行ってまいりました。
沿岸市町村からは、内陸避難者への支援は必要だが、新たな人口流出を生じないように配慮してほしいなどの意見がありましたので、内陸の災害公営住宅の入居要件を、沿岸に戻る意向のない内陸避難者など限定的にすることで、建設について沿岸市町村から一定の理解が得られたところであります。建設する場所や戸数等については、現在行っている内陸避難者への意向調査の結果や既存の公営住宅の状況を踏まえて検討してまいります。
次に、被災地の人材確保についてでありますが、被災地においては、人手不足が企業経営における重要な課題の一つとなっています。そのため、県では、関係機関と連携したマッチングの促進、企業向けセミナーの開催による職場定着支援、企業情報の効果的な発信支援、水産加工業の従業員宿舎整備等への補助など、人手不足解消に向けた取り組みを進めてきているところであります。
また、企業収益を上げて賃金等の処遇の改善につなげ企業の魅力を高めていくという観点からも、労働生産性の向上につながる設備等の高度化への支援やカイゼンの導入、付加価値の向上を図るための商品づくりや販路開拓の支援も進めているところでありまして、これらを通じて被災地における人材確保に引き続き取り組んでまいります。
次に、まちづくりの加速化についてでありますが、沿岸市町村で行われている土地区画整理事業は現在までに7市町村18地区全てで工事に着手され、昨年11月には宮古市田老地区で県内初となるまちびらき式が行われました。また、来月には大船渡市大船渡駅周辺地区、大槌町町方地区でまちびらき式が予定されているなど、土地区画整理事業は着実に進捗しております。
これまで、県では、被災市町村へ職員を派遣するとともに、土地区画整理事業の進め方や法手続等について助言や支援等を行ってまいりました。震災から約5年が経過する中で、地区ごとに進捗状況や課題が異なってきておりまして、県としては、市町村からの相談に対してよりきめ細やかに対応する等、早期の事業の完成に向けて、引き続き国と一体となって市町村を支援してまいります。
次に、復興事業に係る財源確保についてでありますが、本県では、国や市町村分も含めた平成28年度以降5年間の復興事業費を約2.2兆円と試算していますが、昨年6月の国の復興事業の方針において今後5年間の財源フレームが示されて、必要と見込まれる財源はおおむね確保されているところであります。
議員御指摘のとおり、一部の復興事業について県負担が拡大されたところであり、平成28年度当初予算案では県債を24億円発行して対応したところであります。今後も、復興交付金や震災復興特別交付税など国の財源措置を最大限活用しつつ、一部の県負担分につきましては、県債の発行も含めて、あらゆる財源対策を講じて、決して復興をおくらせることのないように取り組んでまいります。
次に、心のケアについてでありますが、県では、心のケアに中長期的に取り組むために、岩手県こころのケアセンターを設置して、被災者に対する専門的なケアを実施しています。あわせて、住民の健康教育や心のケアに携わる人材育成の研修等も実施して、将来的に地域が主体となった心のケア活動も行えるように、引き続き支援していくこととしています。
これらに係る財源について、国では、平成32年度までの復興・創生期間において、被災者の心のケアを含む基幹的な復興事業を全額国費で対応するとしています。
一方で、国の心のケアに関する予算は年々減少傾向にありますことや、復興・創生期間終了後も引き続き国による財政措置が必要でありますことから、その財源の確保と本県への配分について、さまざまな機会を捉えて国に働きかけてまいります。
次に、岩手の現状についてでありますが、本県が直面する危機を希望に変えるため、いわて希望創造プラン及びいわて県民計画第1期、第2期アクションプランにおきまして、人口、県民所得、雇用環境などの目標を掲げて、その解消に向けて取り組んでまいりました。
その結果、県民所得につきましては、平成22年度から4年連続で1人当たり県民所得が向上し、国民所得との乖離が縮小したことに加えまして、地域医療については、人口10万人当たりの病院勤務医師数が増加傾向にあり、来年度からは奨学金養成医師の配置も始まりますことから、さらに改善が期待されます。
また、人口の社会減については、平成25年まで6年連続で減少し、雇用環境については、有効求人倍率が平成22年度以降改善してきたことなど、これまでの取り組みの成果があらわれてきており、いわて県民計画が描く目指す姿にも着実に近づいているものと認識しております。
その一方で、人口の社会減が平成26年に再び拡大に転じましたほか、雇用については、求人不足から人手不足への状況に転換しまして、労働環境の改善を初めとした雇用の質の向上が重要となるなど、新たな課題も顕在化しています。
こうしたことから、今般策定した第3期アクションプランにこれらの課題に対応した施策を盛り込んだところでありまして、今後、プランに基づく取り組みを着実に推進してまいります。
次に、今後の重点推進施策についてでありますが、今般策定した第3期アクションプランでは、希望郷いわての実現に向けて、東日本大震災津波からの本格復興を復興計画のゴールにつなげていくとともに、社会減ゼロや出生率の向上を目指すふるさと振興を軌道に乗せていく取り組みを推進していくこととしております。
そこで、先ほど申し上げました人口の社会減の拡大や人手不足などの新たな課題を踏まえて、県内就職の促進や創業の支援、働き方の改善などに官民を挙げて取り組むことに加え、出生率の向上に向けた結婚支援や保育サービスの拡充などの取り組みを推進してまいります。また、心と体の健康づくりを進めて、全国的にも高位にある自殺死亡率と脳血管疾患など3大生活習慣病の死亡率の減少に取り組んでまいります。
さらに、希望郷いわて国体、希望郷いわて大会の成功に向けた取り組みや、本県世界遺産が有する価値の継承、ILCの実現、地域の資源を生かした県北・沿岸圏域の振興など、岩手の未来を切り開く取り組みや広域振興圏の取り組みにも注力してまいります。
今後、第3期アクションプランを復興計画と軌を一に進め、本格復興の完遂とふるさと振興に向けた取り組みを推進し、県民計画に掲げる希望郷いわての実現を目指してまいります。
次に、本県の財政運営についてでありますが、平成28年度当初予算編成に当たりましては、本県の厳しい財政状況を踏まえて、事務事業を1件ごとに精査するなど歳出の見直しに努めつつ、一層の歳入確保に取り組んだところでありますが、社会保障関係費の伸びなどによりまして、最終的に192億円の収支ギャップが生じたところであります。
今後も、社会保障関係費など増大する財政需要に対応するため、公債費負担の適正化を初め財政の健全化を図りつつ、国に対して適切な財政措置を強く働きかけるなど、安定的な財政運営の実現に向け取り組んでまいります。
次に、社会減ゼロの実現についてでありますが、国は、東京圏への過度な人口の集中が日本全体の人口減少に結びついていると分析し、国の総合戦略において、2020年までに東京圏への転入超過10万人を解消するということを基本目標に掲げています。
本県におきましても、この国の目標に呼応しまして、2020年までの社会減ゼロを基本目標に掲げておりますが、この目標の実現には国の強力な取り組みが不可欠であります。しかしながら、昨年1年間の東京圏への転入超過は前年に比べて1万人近く増加してしまっておりまして、こうした現状を踏まえて、地方を重視した経済財政政策を確実に実施するよう国に対して強く求めてまいります。
県といたしましては、社会減ゼロの実現に向けて、若者の仕事や移住に関する願いに応えることが重要であり、総合戦略における岩手で働くの柱に基づいて、雇用の受け皿となる産業振興を図るとともに、創業支援や移住、交流促進の施策等を総合的に推進し、本県への新しい人の流れを生み出してまいります。
次に、雇用創出等についてでありますが、雇用創出に当たりましては、若者や女性にとって魅力のある雇用の場を確保することが重要であり、産業界、教育機関、市町村団体など関係機関で設立したいわてで働こう推進協議会を中心に、県内就職の促進や創業の支援に加え、働き方の改善の取り組みを官民挙げて推進していくこととしております。
また、県が県内外で開催するマッチング事業に市町村も参加するとともに、各地域でも広域振興局と市町村、ハローワーク等が連携して就職面接会や情報共有、また各種調査なども行っているところでありまして、今後も市町村と連携し、県内外からの人材確保に引き続き取り組み、岩手を担う若者等の県内就業の拡大を図ってまいります。
次に、県の農業普及活動についてでありますが、県では、農業改良普及センターを中心に、地域農業を支え、産地の核となる経営体の育成に向けて、意欲ある担い手に対し、経営ビジョンの策定と、その実現に向けた農地の集積や、財務、労務管理能力の習得等を支援しています。また、農産物加工など6次産業化を目指す農業者の皆さんに対しては、食のプロフェショナルチーム等の専門家と連携し、商品開発や販路開拓等の取り組みを支援しています。
今後も、ICT技術など高度な生産管理技術等に対応できるよう普及員の資質向上に努めるとともに、民間の専門家等とも連携しながら意欲ある農業者の経営発展を支援するなど、地域農業の振興に取り組んでまいります。
次に、担い手へのメッセージについてでありますが、TPP協定は、本県の基幹産業である農業に大きな影響を及ぼすことが懸念されています。こうした中で、本県農業の競争力強化を図っていくためには、担い手の経営力向上と経営基盤の強化がこれまで以上に重要となります。このため、いわてアグリフロンティアスクールなどによりますビジネススキルの習得支援や、農地中間管理事業による農地集積の取り組み、また、本議会において追加提案を予定しておりますTPP関連の補正予算などを活用して、担い手の経営発展に必要な機械、施設の導入支援や農地の大区画化などを進めてまいります。
県では、食料供給基地として岩手県農業の持続的な発展を図っていくこととしておりまして、今後とも、意欲ある農業者が将来にわたり安心して経営を継続することができるよう、必要な対策を講じてまいります。
次に、販売戦略についてでありますが、県産農産物のブランド力の向上や販路の拡大に当たっては、本県の安全・安心で高品質な農産物の魅力を国内外に発信して、流通関係者や消費者から高い信頼と評価をかち取っていくことが重要であります。
このため、さきに公表した第3期アクションプランでは、SNS等を活用した情報の発信や国内外でのトップセールスの実施、量販店でのフェア等の開催、商談会や産地招聘を通じたマッチング機会の創出などの取り組みを強力に展開することとしております。
また、国においては、農業の成長産業化や海外展開等を一層進めるために必要な政策について、平成28年の秋を目途に具体的内容を詰めるとしていますことから、こうした内容も踏まえながら、今後、海外展開への戦略を打ち出し、県産農産物の輸出拡大に取り組んでまいります。
次に、担い手の確保、育成についてでありますが、本県農業を持続的に発展させていくためには、若い就農者を確保するとともに、早期の経営安定と地域への定着を図っていくことが重要であります。県では、これまで、市町村等と連携しながら、就農相談会や農業体験の実施、研修受け入れ先のあっせんなどによって新規就農者を確保するとともに、経営力向上や技術の指導、機械、施設の導入支援などによって、担い手の育成、定着に取り組んでまいりました。
今後におきましては、こうした取り組みに加えて、岩手で夢をかなえようをキャッチフレーズにして、いわてで働こう推進協議会等と連携を図りながら、本県農業、農村の魅力のPRや農村ワーキングホリデー等への参加誘導、さらには、個別ニーズに応じた農地、住居のあっせんなど、きめ細かな支援をしてまいります。
次に、教育理念についてでありますが、人を育む教育は社会形成の礎であり、また、県勢発展のかなめは人、人をつくる岩手という理念のもと、教育の推進に当たりましては、初等中等教育から高等教育、社会人教育まで、県民の個々のライフステージに応じた多様な学びの機会を提供していくことが重要と考えております。
学校教育においては、岩手の子供たちが、グローバル化や情報化など急速に変容する社会を生き抜いていくため、子供たち一人一人に、確かな学力、豊かな心、健やかな体の知、徳、体、これをバランスよく身につけてもらうことが大切であります。特に、高校教育におきましては、社会に羽ばたこうとする生徒が集団生活を送る中で社会性や協調性を育むとともに、学習活動を通して基礎、基本を確実に身につけ、自立した社会人としての資質を育成することが重要であり、この岩手の地で、岩手のそして日本の次代を担う人材を育んでいきたいと考えております。
次に、小規模高校のあり方についてでありますが、今般の再編計画案では、総合教育会議の場での協議なども行いながら、望ましい学校規模の確保による学びの質の保証に加えて、本県の地理的条件等を踏まえた学びの機会の保障の観点を重視しつつ、また、県民の意見等を丁寧に聞き、小規模校の存続や校舎制の導入も含めた再編案として、教育委員会において取りまとめ、公表したものであります。
小規模校におきましては一定の制約はありますものの、丁寧な進路希望への対応や学校間の連携、ICT技術の活用などを行いながら教育の質の確保を図るとともに、これまで以上に学校と地域との連携のもとに、魅力ある学校づくりに努めていくことが必要と考えております。
次に、今後の対応についてでありますが、教育委員会では、計画案公表後、パブリックコメントやブロック単位での地域検討会議などを通じて、丁寧に地域の声を聞いてきたと承知しております。
統合の対象地域では、地域での努力の時間が欲しいとの強い意見などがある一方で、統合による学校の充実に一定の理解を示している意見もございます。こうしたさまざまな御意見をも十分に踏まえつつ、教育委員会においてさらなる検討を進め、成案の策定に取り組むことが大事であると考えております。
次に、緊急雇用創出事業に係る事案への対応等についてでありますが、DIOジャパンの事案は、同社が被災地の復興を掲げて進出したにもかかわらず、立地市町及び県民に多大な被害を及ぼしたものであり、極めて遺憾であるとともに、会計検査院からの指摘を真摯に受けとめております。
また、県としては、これまでも、中間段階における検査の徹底や内部考査、ダブルチェック、補助金等審査委員会の設置等に取り組んでいるところでありまして、引き続き、再発防止に努めてまいります。
市町村との関係につきましては、震災からの復興やふるさと振興などに、今後ともしっかり連携して取り組んでまいります。
また、山田町のNPO事案につきまして、現在、有識者会議で検討をいただいているところであり、引き続き、補助事業等の適正化について取り組んでまいります。
次に、副知事2人体制についてでありますが、副知事を含めた幹部職員の選任につきましては、適材適所の考え方で適時適切に行ってきたところであり、今後におきましても、副知事、関係部局長など職員全体が一丸となり、山積する重要課題に対して、県として総合力を発揮できる体制の構築に努めてまいります。
〇副議長(工藤大輔君) この際、暫時休憩いたします。
午後2時38分 休 憩
出席議員(48名)
1  番 千 田 美津子 君
2  番 臼 澤   勉 君
3  番 千 葉 絢 子 君
4  番 ハクセル美穂子 君
5  番 菅野 ひろのり 君
6  番 柳 村   一 君
7  番 阿 部 盛 重 君
8  番 佐 藤 ケイ子 君
9  番 佐々木 宣 和 君
10  番 川 村 伸 浩 君
11  番 田 村 勝 則 君
12  番 工 藤   誠 君
13  番 高 田 一 郎 君
14  番 吉 田 敬 子 君
15  番 佐々木   努 君
16  番 千 葉   進 君
17  番 佐々木 朋 和 君
18  番 名須川   晋 君
19  番 軽 石 義 則 君
20  番 神 崎 浩 之 君
21  番 城内 よしひこ 君
22  番 福 井 せいじ 君
23  番 佐々木 茂 光 君
24  番 高 橋 孝 眞 君
25  番 木 村 幸 弘 君
26  番 小 西 和 子 君
27  番 工 藤 勝 博 君
28  番 高 橋 但 馬 君
29  番 小 野   共 君
30  番 郷右近   浩 君
31  番 高 橋   元 君
32  番 関 根 敏 伸 君
33  番 岩 崎 友 一 君
34  番 嵯 峨 壱 朗 君
35  番 中 平   均 君
36  番 五日市   王 君
37  番 斉 藤   信 君
38  番 小野寺   好 君
39  番 飯 澤   匡 君
40  番 渡 辺 幸 貫 君
41  番 佐々木 順 一 君
42  番 田 村   誠 君
43  番 伊 藤 勢 至 君
44  番 工 藤 勝 子 君
45  番 樋 下 正 信 君
46  番 柳 村 岩 見 君
47  番 千 葉   伝 君
48  番 工 藤 大 輔 君
欠席議員(なし)
説明のため出席した者
休憩前に同じ
職務のため議場に出席した事務局職員
休憩前に同じ
午後3時3分 再開
〇副議長(工藤大輔君) 休憩前に引き続き会議を開きます。
日程第1、一般質問を継続いたします。渡辺幸貫君。
〔40番渡辺幸貫君登壇〕(拍手)

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