平成27年9月定例会 第2回岩手県議会定例会会議録

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〇24番(高橋孝眞君) 自由民主クラブの高橋孝眞です。
ただいま提案がありました水門・陸閘自動閉鎖システム整備工事の請負契約の締結について質問いたします。
この契約は、衛星通信を使い、自動的に水門、陸閘を閉鎖するシステムであり、地震の際には津波対策として大変有効なシステムであるとの説明を受けました。しかしながら、水門、陸閘の制御は、統制局2局、制御所24カ所、遠隔監視制御装置158カ所と、数の上でも多く、大がかりなシステムだと思います。プロポーザル公告に至った点を含め、何点かお聞きいたします。
平成23年3月11日に発生した東日本大震災において、水門等の操作に従事した方々が多数犠牲になったことを踏まえ、農林水産省及び国土交通省は、平成25年4月に津波・高潮対策における水門・陸閘等管理システムガイドラインを改訂いたしております。それを見ますと、水門、陸閘の閉鎖方法をレベル1からレベル6で整理されております。レベル1から4は現場での操作、レベル5は遠隔手動操作、レベル6は衛星を使っての自動操作。今回の提案は、最高レベルである自動操作であります。
ガイドラインでは、レベル5―遠隔手動操作とレベル6―自動操作の導入の留意点として、自動操作は、地震発生から閉鎖が速やかに行われるというメリットもありますが、管理者の状況確認なしに操作が行われるため、操作事故、すなわち避難状況を確認されずに閉鎖されるという事故が発生するおそれがあるというふうに、導入の際のデメリットとして注意を促しております。
これらの点を含めながら、私は、レベル5の遠隔手動操作でよいのではないかと思うのですが、今回、通信衛星を使う自動操作を導入した理由、どのような検討がなされた上での導入なのかについて教えていただきたいと思います。
ガイドラインで指摘されている事故発生に対しては、どのような対策が今回とられているのか伺います。
学識経験者からは意見も聞いておりますけれども、どのような意見があったのかもお伺いいたします。
自動閉鎖システムは、他県でどの程度の実績があるのでしょうか、箇所数を教えてください。また、その際、水門、陸閘の数、規模についてもあわせて教えてください。
遠隔手動操作と自動操作でのランニングコストについては検討されたのでしょうか。どのような違いがあるのでしょうか、教えてください。遠隔手動操作と自動操作では、人的管理体制についてはどのような違いがあるのかもお願いいたします。
今回、東芝が契約相手先でありますが、東芝はどの程度実績があるのか教えてください。
今回の提案に当たって6社が提案をいたしているわけでありますけれども、東芝以外の5社の見積額について教えてください。
以上、最初にお聞きいたします。
〇県土整備部長(蓮見有敏君) まず、自動閉鎖システム導入の理由についてでありますが、東日本大震災津波において多くの消防団員等が犠牲になり、本県においても水門、陸閘の閉鎖作業にかかわり48名の消防団員が犠牲となった事実を踏まえ、復興基本計画に操作員の安全確保を図るための操作の遠隔化、通信、電源の多重化を図ることを明記し、操作員が現地へ向かうことのないような体制のもと、安全かつ迅速に確実に水門、陸閘の閉鎖が行われるようにすることといたしました。こうしたことから、水門、陸閘の施設数については徹底的な施設の統廃合を行うとともに、可能な限り操作が不要な常時閉鎖等による運用とし、その上で、残る津波警報時等に閉鎖作業が必要な施設約200基につきましては操作の遠隔化を図ることといたしました。
操作の遠隔化の手法につきましては、手動操作方法、いわゆるレベル5でございますが、この場合、手動で閉鎖のスイッチを押す管理者が気象警報を入手し、閉鎖の判断、閉鎖の手動操作等を行うことが必要であり、ヒューマンエラーの可能性を排除できません。一方、今回想定しております自動操作方式、レベル6でございますが、この場合、津波警報等を契機として自動で閉鎖することから、人の操作が介在いたしません。また、手動操作方法―レベル5に比べ閉鎖に要する時間が短く、さらに、万が一自動閉鎖が行われなかった場合でも遠隔手動によりバックアップ操作が可能なものでございます。このようなことから、自動操作方式―レベル6を導入したものでございます。
次に、事故発生対策についてでありますが、国が策定いたしました津波・高潮対策における水門・陸閘等管理システムガイドラインにおきましては、それぞれの手法についてのメリット、デメリットが整理されてございますが、自動操作の場合のデメリットとして、管理者の状況確認なしに操作が行われるため、操作事故が発生するおそれがあるとされております。
この対策としては、水門、陸閘の現地に挟み込み防止装置―接触式センサー等を設置し安全を確保するとともに、サイレン、拡声器等の警報施設や逃げおくれ防止のための避難階段等を設置し、操作事故の防止を図ることとしております。また、円滑な避難が行われるよう、周知看板、避難訓練、防災教育等のソフト対策を通じて、地域住民、観光客等へ自動閉鎖の周知、啓発を行ってまいります。
次に、学識経験者の意見についてでありますが、平成26年9月から10月にかけまして5名の学識経験者等に説明し、県の衛星通信を活用した自動閉鎖システムに対して、全員から妥当であるとの意見をいただきました。また、その上で、ハード対策とソフト対策の組み合わせが重要といった助言をいただきました。
次に、他県での実績についてでありますが、全国的には静岡県が先進県とされておりまして、地区ごとに自動閉鎖システムの整備を進め、これまでに、県全体で水門、陸閘等の自動閉鎖施設113基のうち77基が自動操作方式による遠隔化―レベル6の運用を開始していると聞いております。また、宮城県、福島県では、管理者別に自動操作方式による遠隔化―レベル6でございますが―の整備を進めており、水門、陸閘等の自動閉鎖施設が、宮城県では約220基、福島県では約40基と聞いております。
次に、ランニングコストの検討についてでありますが、自動閉鎖システムの監視制御に係るランニングコストにつきましては、平成26年度の時点では、点検費、通信費、電気料金等に係る経費として、今回の衛星通信を活用した自動閉鎖方式―レベル6の場合も従来型の光ケーブルを活用した遠隔手動方式―レベル5の場合も年間8億円から9億円程度と試算しておりました。今回のプロポーザルの技術提案を踏まえると、衛星通信を活用しました自動閉鎖方式―レベル6の現時点でのランニングコストは、年間1億円から2億円程度に抑えられると試算しております。
次に、遠隔手動操作と遠隔自動操作の人的管理体制の違いについてでありますが、従来型の光ケーブルを活用した遠隔手動方式―レベル5の場合、消防署等で職員が各水門、陸閘に設置された監視カメラの映像を確認の上、速やかに操作作業を行う必要があります。この場合、消防署等の1カ所の制御所では平均して15基程度の水門や陸閘の操作を短時間で行う必要があるため、少なくとも数人が専属で対応しなければならないと考えております。一方、今回の衛星通信を活用した自動操作方式―レベル6の場合、制御所においては操作状況の監視等のため最小限1名の常駐が必要となりますが、閉鎖までの一連の作業には人的作業が生じないものであります。
次に、株式会社東芝の実績についてでありますが、水門の閉鎖システム等に関しましては、平成14年度以降、3件の工事実績を確認しております。
なお、各プロポーザルの参加者とも、当該工事のような衛星通信のネットワークを利用し、多くの水門、陸閘を一斉に監視制御する工事の実績はございません。
次に、東芝以外の5社の見積額についてでありますが、見積額の公表は、本契約が成立する前においてはできないことになってございますので、御理解をいただきたいと思います。
〇24番(高橋孝眞君) もう少し導入までの手順を詳しく教えていただきたいと思いますが、ガイドラインで言うレベル5の遠隔手動操作とレベル6の自動操作の違いは当然内部で検討したものと、今お聞きしました。フローチャートを見ますと、市町村との協議、また、消防事務組合との協議がなされたことと思います。どのような協議がなされたのか、意見が出されているか、また、県庁内部ではどのような構成員のもとで決定されたのかについて再度お聞きしたいと思います。
また、IT化―自動化するということは、ただいまお話がありましたとおり人員の削減につながってくるわけでありますけれども、今、人口減少社会に向かって当岩手県はふるさと振興総合戦略の計画を策定しているわけでありまして、雇用の受け皿として、地域産業の活力を高め、長期的、安定的な雇用を確保するとうたっております。安全性にも若干問題のあるこの計画は、雇用が減少するシステムでもあります。ふるさと振興総合戦略の計画に逆行するのではないかと思われますけれども、お考えを伺いたいと思います。
また、東芝は過去に受注の実績がないということですけれども、東芝は、10年前に特許庁の基幹系システムの刷新を入札を経て受注いたしましたが、東芝グループの技術力不足などでシステム開発は難航し、3年前に開発が中止されております。また、現在、東京電力から受注したスマートメーターの通信システム開発案件も、技術力が不足しているということで開発がおくれているという報道があります。さらに東芝は、粉飾決算により東京証券取引所が特設注意市場銘柄に指定し、上場契約違約金を徴求されております。株主に大変な迷惑をかけておりますし、社会的にも問題があり、指名停止企業ではないと言いながらも、現時点での契約先として疑問を感じるわけでありますけれども、この点について知事のお考えをお聞きいたします。
〇知事(達増拓也君) 株式会社東芝は、県が定めた平成27年6月9日付の公告等に定めます入札参加資格や契約成立要件を満たしており、現時点では建設業法に基づく営業停止や県による指名停止を受けていないため、契約を締結できない場合に該当しません。また、国の指針におきましても、指名停止措置要件に該当する疑いがあるという判断のみをもって事実上の指名回避を行わないよう求めております。このようなことから、今般、契約の相手方として排除しなかったものであります。
〇県土整備部長(蓮見有敏君) まず、今回のシステムの検討に当たって、市町村長から意見聴取を行ったかということに関しましては、平成26年9月から12月にかけまして、有識者への意見聴取とあわせて沿岸の市町村長からも意見を聴取しまして、県の方針に対して了解を得てございます。その際、市町村長からは、自動閉鎖を開始するタイミングはどうかとか、県下一斉に閉鎖するのか、避難がおくれた者への対応はどうするのかといったような御質問を頂戴してございます。
それから、県庁内部での検討体制でございますが、この事業を所管いたします県土整備部河川課を中心に、関係する部局の関係課とも一体となって検討の上にこのようなシステムの導入を決定したところでございます。
それから、人員削減、雇用等との関係でございますが、今回のシステムにつきましては、東日本大震災津波を受けまして、県民の生命と財産を守るという目的を第一に考えまして、より確実性のある簡素で堅牢なシステムをつくるということがまず第一に必要であると考えてございます。そのために遠隔操作方式を採用して、プロポーザル等の手続を行って業者選定を行いきょうの提案に至っているわけでございまして、雇用関係につきましては、雇用問題として必要な対応をしていくべきものと考えてございます。
それから、東芝の衛星通信関係、システム関係の問題について御指摘がございましたが、今回のプロポーザルにおきましては、技術提案書の提出を求め、内容を十分私どもで審査、確認をさせていただきました。また、東芝を含め、プロポーザルの参加者に実際にプレゼンの場で説明をいただき、その場で意見交換をしながら施工の確実性とか技術に対する理解度等々を十分審査いたしましたので、この工事の履行につきましては問題がないと考えてございます。
〇24番(高橋孝眞君) 東芝は過去に実績がないということですけれども、先ほど、2件ものミスをしているといいますか受注中断をしているような問題を起こしていると。そういう意味合いで、新たな大きなシステムであります。そういうことから考えますと、本当に東芝でオーケーなのか。技術点についてはそのとおり高い評価はあったとしても、過去の実績ということを踏まえると、私は東芝には若干疑問を感じるところであります。
それから、意外と、今の説明でありますと、市町村等の意見を踏まえながら、レベル5―手動操作、自動操作を検討していない。そういう広い意味で今回、聴取をしていないといいますか、意見を聞いていないのではないかと思うわけでありまして、今後進めていく上では、市町村等の消防システム等、市町村との連携等については非常に問題があるのではないかと思うわけでありまして、その部分については注意して進めなければいけないのだろうというふうに思います。
その所感をまず求めますし、もう一つは、知事は、問題がないですよと、こういうお話でありましたけれども、指名停止そのものにつきましては、国の指針はありますが、指名停止は県が決められることであります。そういう意味合いで、国が指名停止をしたからといって県が指名停止をしなければいけないとか、県が指名停止をしたから国が指名停止をしなければいけないということはないわけでありまして、今回の事案を含めながら、先ほどのようなことを含めながら、知事は、最終的にこの東芝との請負契約で問題がないのだと、そういう整理でよろしいのかどうか考え方をお聞きしたいと思います。
〇知事(達増拓也君) 今、日本全国、国とか自治体とかで東芝という会社を契約の相手方から排除しているところはないと理解しております。公共工事の入札及び契約の適正化を図るための措置に関する指針、平成13年3月9日閣議決定、平成26年9月30日閣議決定で一部変更というものから、先ほどの、いまだ指名停止措置要件には該当していないにもかかわらず、指名停止措置要件に該当する疑いがあるという判断のみをもって事実上の指名回避を行わないようにするというのはその閣議決定から引用させていただいたのでありますけれども、その前の部分には、指名停止については、その恣意性を排除し、客観的な実施を担保するため―これは各省、各庁の長等はということなんですけれども―あらかじめ指名停止基準を策定し、これを公表するものとすると。もし行政が、疑わしいとか過去に失敗の例があるということで安易に指名停止、契約から排除ということをほしいままにやるようになりますと、かなりこれは問題があるのではないかということで、今回、東芝を契約の相手方として排除しなかったということであります。
〇県土整備部長(蓮見有敏君) 今回のシステムの工事に関する市町村との連携についてでございますが、方針決定の際の説明等は、申し上げましたとおり、平成26年9月から12月にかけてさせていただいたところでございます。
今回のシステムは、市町村との共同の施設になります。また、操作対象の水門、陸閘は、市町村管理のものが今、大体3割ぐらいと想定してございますので、これからも内容や進捗状況等を十分説明して、理解を求めながら進めていきたいと思ってございます。
〇議長(田村誠君) これをもって質疑を終結いたします。
次に、ただいま議題となっております議案第51号水門・陸閘自動閉鎖システム(衛星通信系)整備工事の請負契約の締結に関し議決を求めることについては、県土整備委員会に付託いたします。
日程第2 議案第1号平成27年度岩手県一般会計補正予算(第2号)から日程第48 請願陳情まで
〇議長(田村誠君) 次に、日程第2、議案第1号から日程第48、請願陳情までを一括議題といたします。
各案件に関し、委員長の報告を求めます。小野総務委員長。
〔総務委員長小野共君登壇〕

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