平成27年9月定例会 第2回岩手県議会定例会会議録

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〇27番(工藤勝博君) いわて県民クラブの工藤勝博でございます。会派の先輩、同僚各位の御配慮により登壇の機会をいただき、一般質問をさせていただきます。
まず初めに、知事の県政運営について何点かお伺いいたします。
1点目は、3期目無投票当選の所感についてであります。
まずもって、3期目の知事選無投票で当選ということで、まことにおめでとうございます。私ごとでもありますが、八幡平選挙区も無投票で終わらせていただきました。従来にも増して、その責務を感じているところでもございます。
戦後、岩手の知事選で無投票は初めてであり、有権者からは、投票の機会が失われたことに失望の声が多々ありました。県政課題が山積する中で論戦がなかったことは非常に残念であり、白紙委任ではないと私は強く申し上げたいと思います。
そこで、3期目の県政運営に当たり、表面化することがなかった批判の声にどのように向き合い、バランスのある県政運営に当たるのかお伺いいたします。
2点目は、国との関係について伺います。
達増知事の経歴から見ますと、東京大学卒業後、首相のそばで支える仕事に憧れ外務省に入省し、外交官として活躍されたことは衆目の一致するところであります。さらに夢を追いかけ、1996年、衆議院議員に転身し、国政で御尽力したことは敬意を表します。
岩手県知事を志した動機は、政治活動を通じて地方の弱さが日本の弱さと感じたからだと明かしております。今、まさにその原点に立ち返り、地方の弱さを強さに変えるべきではないでしょうか。
人、物、金の東京一極集中が進み、地方の人口減少、経済の停滞は深刻であります。特にも、未曽有の東日本大震災による被害をこうむった我が県においては、広い視野を持った強いリーダーが必要不可欠であります。知事選で明らかになった知事のスタンスは、まさに国と対峙する勢力の結集にほかなりません。師と仰ぐ方が東京で野党連合を結集し、岩手でのろしを上げ、足元にある県政課題がかすんでしまったと思うのは私だけでしょうか。
そこで、震災復興、ILC、生産基盤整備など、国とのかかわりが深い政策を進める上でどのように対処していくのかお示しください。
3点目は、議会との関係について伺います。
今般の県議会議員選挙は勝者なき結末に終わったと言われ、その後の議会勢力図は大きく再編されたことは御承知のとおりでございます。その背景にあるのは、知事選で支援した野党との特別な関係ではないでしょうか。県民党を名乗り、国政野党を取り込んだ政治姿勢を考えますと、今後の県政において二元代表制が機能するのか危惧されるところでもあります。
無投票3選が強大な権力を有する知事に与えられた重みと、議会に対する知事の姿勢が、この先4年間、岩手にとって最も重要で、歴史に残る足跡と思います。知事は、議会とどのようなスタンスで臨むのかお伺いいたします。
4点目は、岩手の戦後70年の所感について伺います。
ことしは戦後70年という節目の年であります。戦後の復興から目覚ましく発展した今日に生きる者として、先人には心から感謝と敬意を表したいと思います。
70年の歴史を見ますと、岩手の資源を見越して大県構想を掲げ畜産振興に道を開いた千田知事、昭和45年躍進国体の大成功、その後の中村知事は園芸振興に尽力されました。
当時、本県の所得増の要因は、中小企業、農業生産等の拡大による内需がもたらしたものと言われております。私もその生産に携わった一人として、当時のように企業、商店、農家、NPOなどが地域で再投資を繰り返すことで、仕事、所得を生み出すことは可能であり、地域内で経済を循環させれば、人々の生活を維持することができると考えます。
地方創生のヒントは、戦後70年の岩手の歴史に潜んでいると思われます。知事の仕事は知ることと言われる知事の、戦後70年の歴史を踏まえた今後の県政運営に関する御見解をお伺いいたします。
次に、岩手県人口ビジョンとふるさと振興について伺います。
1点目は、現状認識と課題についてであります。
県人口のピークは1960年に約145万人であり、以後、多少の増減を繰り返していたものが、1997年以降は減少の一途であります。2014年は約128万人で、2000年以降は、社会減、自然減が相まって減少するという本格的な人口減少期に入ってきました。自然減は死亡数が出生数を上回り、若年女性の減少と出生率の低さが原因とされています。出生率の低迷は、未婚化、晩婚化の進行が背景にあり、また、子育て世代の所得の低下、非正規労働者の増加、子育てと仕事の両立が困難であるとの課題が提起されています。
人口減少によって複合的な課題が浮かび上がります。生産年齢人口の減少による労働力不足と生産量の低下、地域医療、福祉、介護への影響、教育、地域文化への影響、地域公共交通や地域コミュニティーの共助機能の低下、県、市町村財政への影響、これらの現状認識と課題をどう捉え、岩手の存続に結びつけていくのかお伺いいたします。
2点目は、ふるさと振興について伺います。
ふるさと振興では三つの柱が示されました。岩手で働くやりがいと生活を支える所得が得られる仕事を創出し、岩手への新たな人の流れの創出を目指す。岩手で育てる。社会全体で子育てを支援し、出生率の向上を目指す。岩手で暮らす。医療・福祉や文化、教育など豊かなふるさとを支える基盤の強化を進め、地域の魅力向上を目指すとあります。また、10の基本姿勢も示されました。これらの取り組みが絵に描いた餅にならないよう、どう具体策を講じていくのか問われると思いますが、その振興策についてお伺いいたします。
3点目は、ふるさと回帰の取り組みについて伺います。
消滅可能性があると指摘されている自治体が、消滅してたまるか自治体サミットを開催し、みずからの危機意識と、別な観点から山村の恵みや地方で暮らす価値観、魅力を発信したところです。
岩手には、食、住まい、自然エネルギー、癒やしの場が豊富にあり、これらを活用する知恵と行動力を高めることにより地域が活性化すると考えます。
今、田園回帰の流れが注目されています。NPO法人ふるさと回帰センターの調査では、2014年ふるさと暮らし希望地域ランキング1位は山梨県、2位は長野県、3位は岡山県となっております。東北では、福島県は、震災、原発事故の影響がありながらも、Uターン、Iターンの希望者の相談が根強くあります。また、北東北として唯一名前が挙がった秋田県は、地道な活動の結果、希望者をふやしており、移住先としてPRをうまく行っていると発表されております。
そこで、県ではどのような情報発信に努めているのかお伺いいたします。
次に、防災、危機管理について伺います。
1点目は、危機管理体制の構築についてであります。
東日本大震災から4年7カ月がたちました。未曽有の大災害は人類初の広域複合大災害と定義している方もおります。東日本大震災は過去の津波被害とは全く異なった様相を呈した災害であり、広域大津波だけにとどまらず、火災、爆発、原発事故、ガソリン、物不足、風評被害など、ドミノ倒しのように同時多発的に引き起こされていきました。まさに人類が初めて経験する複合大災害として歴史に刻まれる特異災害でもあります。
県においては、当時、総合防災室防災危機管理の任にあった自衛官OBの越野修三氏が、災害対応の最前線で、その知見と迅速な行動で、被災者、被災地のために御尽力されたことに心から敬意を表するものであります。
繰り返される自然災害は、いつ、どこでもあり得ます。過去の限られた知見に基づく想定は、災害のたびに想定外でしたと言いわけをしなければならないほどリスクが高まっているのが感じられます。
そこで、県では、東日本大震災時の対応をどのように検証し、教訓をその後の防災、危機管理の中にどのように生かしているのかお伺いいたします。
2点目は、市町村、関係機関との連携について伺います。
ことし9月9日から11日にかけて、関東、東北が記録的な豪雨に襲われ、甚大な浸水被害に見舞われました。被災されました皆様には心からお見舞いを申し上げます。
この災害の中で、最も重要な行方不明者の確認をめぐる情報のあり方が問われています。県、市の情報が共有されず、不明者数がひとり歩きしたのが混乱に拍車をかけたと批判されました。このような不測の事態に備えた本県の市町村、関係機関との連携体制についてお伺いいたします。
次に、農林水産業の振興について伺います。
1点目は、4月に施行されました食と農林水産業の振興に関する条例の具現化についてであります。
基本理念に示されている収益性の高い安定的な農林水産業の確立を目指す政策として、従来にない岩手ならではの取り組みが求められています。とかく、生産物の価格低迷、TPP等の外圧、担い手の高齢化が言われていますが、それらの課題を乗り越える施策、また、人材の育成を急ぐべきと考えますが、所見をお伺いいたします。
岩手の1次産業は他県に比してバランスのよい生産構造になっています。地域社会のベースになっている稲作、土地利用型の酪農、施設集約の肉牛、ブロイラー、養豚などの畜産、また、園芸では野菜、花卉と多種多様な生産が営まれています。生産現場では規模拡大が進む一方、産地直売所等への出荷を目指した少量多品目の生産者が、高齢者、女性を中心に意欲的に生産をしています。産地直売所等への出荷を通じ、生涯現役で取り組みができる生産者の元気が地域経済を押し上げています。
そこで、ふるさと振興の重要な戦力でもある産地直売所の支援についてお伺いいたします。
2点目は、農業生産のイノベーションについて伺います。
農業の成長産業化が地方創生の柱に位置づけられている中、農業関連の新興企業が新たな農業技術を提案し、各地で品質の高い農産品を育てたり、効率的な生産を実現しています。いわゆるICTを活用したスマート農業であり、次世代の生産形態として注目されているところです。
畜産では、1頭ずつの個体管理やロボット搾乳で省力化し、生産効率の向上につなげています。また、園芸関係では、ハウス内の温度、湿度、CO2、日照時間などの環境制御をコンピューターで管理し、生育の最適化を図り、品質の高い商品を生産しています。
農業振興に向けたイノベーションとして、県ではどのように捉え推進していくのかお伺いいたします。
3点目は、昨年度から、稲作の大規模化、コスト低減を進める切り札として新設されました農地中間管理機構の実績、課題についてお伺いいたします。
国全体では、集積目標に対する機構の貸借実績が低調であった中で、岩手においては、機構の貸借実績が目標である2、000ヘクタールを達成するなど、全国的にも取り組み実績が上位に位置しています。県の集積目標は、10年間で8割を担い手に集積する方針を示しておりますが、これまでの実績と目標達成に向けた課題をどう捉えているのかお伺いいたします。
今後の基盤整備に取り組む視点について伺います。また、集積を促進するためには、おくれている本県の基盤整備を進めていくことが必要であると考えますが、今後の基盤整備についてどのような視点で取り組まれるのかお伺いいたします。
4点目は、畜産対策についてお伺いいたします。
まず、東京電力の原発事故の放射性物質の検査と今後の取り組みについてお伺いいたします。
原発事故から4年7カ月がたちました。事故以来、農林水産物を対象とした県農林水産物の放射性物質濃度の検査計画を策定し、定期的に検査を実施しております。平成27年度の取り組みでは、8月末現在、49品目、6、636件の検査のうち、国の基準値を超過したものは山菜のコシアブラの1件であります。
一方、酪農家は、廃用牛の出荷に当たっては、屠畜処理するよりも価格的に有利な成牛市場での販売を希望する場合が多いのですが、成牛市場は取引後に県外に移動することもあることから、農家は、3カ月に1回、岩手畜産流通センターで、屠畜した牛肉中の放射性物質濃度が1キログラム当たり50ベクレル以下であることの確認を受ける必要があります。このため、酪農家の切実な声があります。3カ月に1回の検査をいつまで続けるのか、苦しい経営に追い打ちをかける状態から早く改善してほしい、せめて6カ月に1度にはできないものかと。当局の御見解をお伺いいたします。
同じく畜産対策に関して、和牛子牛価格の高騰がとまりません。平均価格が70万円を超え、相場はしばらく高値基調が続く見込みであり、肥育農家への影響が心配されるところであります。子牛生産を専門とする繁殖農家は60代以上が中心で、高齢化が深刻であります。繁殖でも大規模経営ほど若い世代がふえてきています。このことからも、大規模層への支援とともに、高齢者ができるだけ長く続けられる政策支援が課題と思います。
そこで、県の増頭対策とあわせ高齢者の経営継続対策についてお伺いいたします。
5点目は、林業技術者の人材育成について伺います。
林業が地域経済を支える産業として、より成長させるための人材育成が各県で進められています。秋田県では平成27年4月から、就業前の若い林業技術者育成研修、秋田林業大学校を開講し、秋田県の林業を牽引する技術者の育成を始めました。また、山形県では、林業振興と若者の定着を図り、山形版地方創生につなげるねらいから、平成28年度から県立農業大学校の中に林業関係の新学科を開設するほか、独自に青年林業士の認定制度の創設に向けて準備を進めています。
本県の豊かな森林資源を保全するため、また、100年先の山林経営を見据え、木材生産の循環システムを確立する林業技術者の人材育成が重要と考えますが、県の育成方針をお伺いいたします。
次に、科学技術による地域イノベーションについて伺います。
1点目は、研究開発と人材育成についてであります。
従来型の企業誘致が限界を見せる中、革新的な技術を地元で開発し、競争力の高いものづくりで産業振興を図らなければなりません。東日本大震災からの復興と新たな地域創造に向けて、平成23年3月に策定した科学技術による地域イノベーション指針について、社会、経済情勢の変化に的確に対応し、将来にわたって持続可能な新しい地域の創造を実現するため、内容の見直し、改訂がなされました。新指針では、復興やILCに関する取り組み、また、新たな観点による地域イノベーション創出等を目指し推進するとあります。
日進月歩で新たな技術、情報が繰り出され、スピード感ある対応が求められる中、本県の研究開発、人材育成の成果と課題についてお伺いいたします。
2点目は、地域イノベーションの実現に向けた戦略について伺います。
岩手に根差している産業分野での取り組みが進み、多様な資源、技術が生かされ、持続的なイノベーションの創出による地域社会の発展につながることを期待したいものです。日本はコスト競争ではもはや新興国には勝てない。生き残るには、科学技術を駆使し、高くても売れる高付加価値の物やサービスを生むことが肝要であります。
産業界からも、イノベーションの創出、ICTの利活用、人材育成の強化が提言されています。これらの課題を踏まえ、地域イノベーションの実現に向けた戦略をお伺いいたします。
次に、観光振興について伺います。
1点目は、広域観光についてであります。
岩手に2カ所目となる世界遺産登録が実現しました。釜石の橋野鉄鉱山が明治日本の産業革命遺産として登録されました。まさしく、岩手の文化や産業遺産を象徴する二つが世界に認められたことを、県民の一人として誇り高く思うものであります。
また、この世界遺産登録を機に岩手の観光発信はさらに充実されるものと考えますが、どのようにその波及効果を高めていくおつもりなのかお伺いいたします。
2点目は、八幡平国立公園60周年について伺います。
平成28年に八幡平国立公園は指定60周年を迎えます。四季折々、豊富な自然と多様な温泉資源、そして日本の原風景を思わせるような景観等、日本屈指の観光資源を有しています。近年、登山やトレッキングの愛好者の増加に対し、宿泊場所や交通機関等の具体的かつすぐに活用できる旬な情報と、インターネットを利用した発信が求められています。また、インバウンド事業への積極的な取り組みにより、外国人観光客の入り込み数の増加が顕著になっています。
そこで、外国人観光客に配慮した多言語表示、老朽施設の更新、補修を進め、観光資源の魅力を高め、誘客促進につなげるべきと思いますが、当局の御見解をお伺いいたします。
3点目は、インバウンドへの対応について伺います。
訪日外国人観光客の入り込み数は、昨年、過去最高の1、341万人を記録する中、農村で滞在を楽しむインバウンドが盛り上がりを見せています。有名な観光地にはない、ありのままの日本を求め、近年、アジアからの来客が急増しております。
山形県飯豊町の取り組みでは、朝日、飯豊連峰の山々が囲む豊かな田園風景、雪が目玉のツアーが評判となり、毎年1、000人が台湾から訪れます。そこから農業を営む風景を満喫してほしいと企画したのが、農家民宿を体験できる田舎に泊まろうツアーであります。家の周りを散策し、夕食の食材を畑まで取りに行く。お母さんの手づくり郷土料理を食べ、満天の星を眺め、畳の部屋の布団で寝る、そんな地元農家の当たり前の日常を体験できることが大きな魅力になっています。
農林水産省では、訪日客を農村に呼び込む取り組みが検討されています。食や食文化を核に、風土や景観など観光資源を訪日旅行者向けに発信する地域を食と農の景勝地として認定し、ブランド化する制度の創設に向けて検討中と伺っております。
県においては、こうした取り組みを先取りするぐらいの気概が欲しいと思いますが、農村地域の魅力を生かしたインバウンドへの対応に対する所見をお伺いいたします。
最後に、野生鳥獣被害対策について伺います。
1点目は、野生鳥獣被害に対する今後の取り組みについてであります。
日本の鳥獣被害額は年間200億円ほどの被害が発生しています。申告されていないものを含めると1、000億円を超えると言われています。近年、中山間地域を中心に鳥獣被害が深刻な状況にありますが、これらは、集落の過疎化、高齢化による人間活動の低下、餌場の隠れ場所となる耕作放棄地の増加、小雪傾向に伴う生息域の拡大が影響していると考えられています。また、狩猟者の減少や高齢化が進んでおり、その影響についても懸念されているところです。
本県の被害について、先般、報道にありましたが、2014年のニホンジカの農作物被害額は2億5、641万円で、2011年度以降3年ぶりに減少に転じたとあります。
そこで、鹿以外の鳥獣を含め、野生鳥獣被害に対する今後の取り組みについてお伺いいたします。
以上で質問を終わります。答弁によっては再質問をさせていただきます。
御清聴ありがとうございました。(拍手)
〔知事達増拓也君登壇〕
〇知事(達増拓也君) 工藤勝博議員の御質問にお答え申し上げます。
まず、3期目無投票当選の所感についてでありますが、さきの知事選は、結果として無投票当選となりましたものの、県民の皆さんに希望マニフェストという形で政策をお示しし、告示日及びその前後、県内各地に足を運び、ビラの配布や演説などを行ったところであります。
こうした機会を通じて、復興とふるさと振興によって希望郷いわての実現を目指すことに対し、幅広い御理解をいただき、今までの実績とこれからの方向性について、大きな御支持をいただいているという手応えを得たところであります。
もとより、県として、県民の皆さんの声に十分に耳を傾ける姿勢は当然のことであり、オール岩手で希望郷いわての実現を目指し、大きな負託に応えていきたいと思います。
次に、国との関係についてでありますが、議員御指摘の復興、ILC、生産基盤整備や、他にも、ふるさと振興、TPP対策、希望郷いわて国体・希望郷いわて大会の開催、そして、2019年ラグビーワールドカップの岩手県釜石市開催など、現在、岩手は国とのかかわりが強い政策を多く抱えています。
これらの政策を成功させることは、岩手にとって重要であると同時に、国にとっても失敗が許されない重要政策であります。そのため、県と国とが力を合わせて取り組む必要があり、特に、答えは現場にありということで、県が、市町村を初め関係者を取りまとめ、国との情報共有を図り、一体となって取り組んでいくことが重要と考えます。
一方、国政に関し、安保関連法などの国の存亡にかかわり、県民の関心も高い問題については、私からも真摯に意見を述べていかなければならないと考えます。
国に対しては、現政権の政策と異なる意見だとしても、国のあり方を真剣に考え、岩手県民のことを深く思っての意見については、寛容に受けとめてほしいと思います。
次に、議会との関係についてでありますが、私は、地方自治法を初めとする関係法令条例規則に従い、また、日本国憲法を踏まえて、議会に対して真摯に臨んでまいりたいと思います。
次に、岩手の戦後70年の所感についてでありますが、私は、今年度の仕事始めに当たり、戦後70年を振り返り、初代国分知事から増田前知事に至る歴代の岩手県知事の事績を確認し、先人の皆さんの積み上げてきたものを自分たちのものにして、継承、発展させる県政で行きたいという思いを庁内全職員に向け訓示したところであります。
この中では、千田知事に関し、高度経済成長を背景にさまざまな事業を展開し、今日の岩手の基礎をつくられた知事として、さらに中村知事に関し、新幹線や高速道路、花巻空港のジェット化など、高速交通化を軸に岩手をさらに発展させた知事として振り返ったところであり、また、酪農振興や岩手を代表する特産品となっているホウレンソウやキャベツなどもこの時期に芽を出すなど、岩手の基礎が築かれた時代と認識しております。
当時の岩手にあったとされる地域での再投資の繰り返しによる地域内の経済循環については、今も日本の地方において、バスや鉄道、小売り、飲食、社会福祉などの分野において、いわゆるローカル経済として広く存在し、こうしたローカル経済圏の産業がGDPや雇用の7割を占めることが、識者により明らかにされています。
先人に学び、その知恵を生かすとともに、東日本大震災津波からの復興の過程で得られた地元の底力とさまざまなつながりの力を生かしながら、県民総参加のふるさと振興を進めてまいります。
その他のお尋ねにつきましては、関係部長から答弁させますので、御了承をお願いします。
〔政策地域部長大平尚君登壇〕
〇政策地域部長(大平尚君) まず、人口の現状認識と課題についてでありますが、本県の人口減少は、社会減と自然減が相まって進行しておりますが、社会減については、その主な要因は若者の進学期、就職期における県外流出であり、これには全国の経済雇用情勢と関係が大きいと分析しております。
また、自然減については、若年女性の減少と出生率の低迷が主な要因であり、その背景には、未婚化、晩婚化の進行があることから、これらを踏まえた対策を積極的に展開していく必要があります。
人口減少は、生産年齢人口の減少と相まって高齢化と少子化が進行することから、議員御指摘のように、地域経済の各分野における労働力不足や地域文化の担い手の減少、地域コミュニティーが持つ共助機能の低下など、経済、医療、福祉、教育、地域文化、公共交通を初めとする地域の社会システムに大きな影響を及ぼすことが考えられるところです。
今般策定する人口ビジョンは、このような課題を取り上げた上で、その対策として、岩手で働く、岩手で育てる、岩手で暮らすの三つの柱によるふるさと振興を推進することにより、社会減を解消し、出生率を向上することで人口減少に歯どめをかけ、2040年に100万人程度の人口を確保することを展望したものです。
次に、ふるさと振興についてでありますが、ただいま申し上げた人口ビジョンに掲げた三つの柱の実現を図るため、総合戦略の具体的な施策の検討に当たっては、これまでに有識者会議を初め、県が所管する審議会や会議の場など、外部からも幅広い御意見をいただきながら検討を進めたところです。
岩手で働くでは、若者や女性などの創業支援の充実や、移住希望者のニーズに応じた相談体制の実施など、岩手で育てるでは、“いきいき岩手”結婚サポートセンター、i-サポによる出会い、結婚支援の強化など、岩手で暮らすでは、医療、介護、予防、住まい、生活支援が一体的に提供される地域包括ケアシステムの構築などの取り組みを盛り込んだ10のプロジェクトを掲げたところです。
さらに、各プロジェクトを通じ、163の重要業績評価指標、いわゆるKPIを設定したところであり、これらのKPIについては、PDCAサイクルにより毎年度進捗状況を確認し、施策の見直しに生かしてまいります。
また、平成28年度予算編成に当たっては、総合戦略に掲げる仕事の創出や移住、定住の促進、出産や子育て支援など、ふるさと振興を展開する取り組みについては積極的に施策立案を図ることとし、必要な予算額も確保していくこととしており、プロジェクトの具体化とともに実効あるものとしてまいります。
次に、ふるさと回帰の取り組みについてでありますが、本県が持つ魅力を広く発信し、交流人口の拡大を図りながら、岩手ならではの移住施策を推進するとともに、移住希望者のニーズに応じたきめ細やかな取り組みを進めていくことが重要であると認識しております。
本県では、これまで、首都圏でのU・Iターンフェアの開催や移住イベントに出展するなど、本県への移住に関する各種情報提供や移住相談を実施してきたところです。
このような取り組みに加えて、今年度においては、新たに、東京のふるさと回帰支援センターに移住相談員を配置し、岩手県Uターンセンターと連携を図りながら移住相談に対応しているほか、定住交流のホームページのリニューアル、総務省のホームページ、全国移住ナビや移住情報誌への移住者インタビューの掲載、本県の多彩な魅力を紹介するPR動画の制作、本県の大学同窓会窓口と連携した県外在住者に対する情報発信など、取り組みを強化しております。
引き続き、市町村や関係機関と連携しながら、情報発信及び相談機能を強化し、移住、定住の一層の促進に向けて取り組んでまいります。
次に、研究開発、人材育成についてでありますが、研究開発については、地元大学のシーズ等を活用し、事業化に向け産学官が連携して取り組み、これまで異種材料の接合技術を活用した大学発ベンチャー企業の設立や車載カメラレンズなどの自動車用部品、医療機器の開発等により事業化が図られたところです。
研究開発では、研究成果が事業化に至らないケースもあることから、研究シーズの発掘から事業化まで一貫して支援を行うコーディネート機能の強化や、県内外の研究資源を柔軟に組み合わせて事業化を図る仕組みが必要と考えております。
また、人材育成については、ものづくりの基礎から応用までを視野に、工業高校の専攻科等における高度技能の習得や、大学等におけるものづくりとソフトウエアを融合させる高度な技術を有する人材の育成などに取り組んできたところです。
今後は、これら企業が求める人材育成に加え、研究開発をマネジメントできる人材やマーケティングにも精通した人材など、幅広い人材の育成が必要と考えております。
次に、イノベーションの実現に向けた戦略についてでありますが、本県のイノベーションの創出については、本年3月に、新・科学技術による地域イノベーション指針を策定し、重点的に推進する技術分野として、ILCの実現を見据えた加速器関連や環境、エネルギーなど7分野を設定し、推進することとしております。
同指針では、研究シーズの創出と育成、新たな産業の芽の育成、次世代産業創出共同研究プロジェクトの推進を研究開発の取り組み方針として、次に申し上げる四つの戦略を掲げたところです。
具体的には、人材育成、確保戦略では、研究開発マネジメントなど高度な能力を持つイノベーション人材の育成など、研究開発基盤強化戦略では、知的財産の活用支援強化や公設試験研究機関の研究開発機能の強化など、資金支援戦略では、競争的外部資金の活用強化など、産学官連携戦略では、産学官連携コーディネート活動や異分野連携の推進などであり、これらにより研究開発を強力に推進することとしております。
今般、産業界からも提言が寄せられたことから、本県の強みの産学官連携を生かしながら、コーディネート機能を強化し、ICTを活用した農工連携など、本県の多様な地域資源を生かしたイノベーションを目指してまいります。
〔総務部長風早正毅君登壇〕
〇総務部長(風早正毅君) まず、危機管理体制の構築についてでありますが、東日本大震災津波の対応に係る検証については、市町村や関係機関へのアンケート、現地調査、県防災会議分科会における検討などを通じて行い、平成24年2月に東日本大震災津波に係る災害対応検証報告書として取りまとめ、公表いたしました。
この検証結果を踏まえ、平成23年度以降、毎年度、県地域防災計画の見直しを行っており、これまでに、最大クラスの津波を想定した避難計画の策定や避難場所などの見直し、防災拠点への非常用電源設備の整備や住民への情報伝達手段の多様化など、多岐にわたる項目を反映させたところであります。
そのほか、広域防災拠点配置計画や災害時業務継続計画、災害時受援応援計画など、防災に資する各種計画の策定、避難所運営マニュアル作成モデルの策定や衛星携帯電話の無償貸与による市町村防災体制の支援などにも取り組んでおります。
今後も、災害情報システムの更新や水門、陸閘の自動閉鎖化など、検証を踏まえた災害対応の高度化を推進していくとともに、訓練等を通じて防災体制の見直しを行うなど、県全体としての災害対応力の向上や防災危機管理体制の強化に取り組んでまいります。
次に、市町村、関係機関との連携についてでありますが、大きな災害が発生した際には、県、市町村、関係機関が被害情報等を共有し、連携、協力しながら災害に対応していくことが極めて重要であります。
このため、県では、市町村が入力することにより、人的被害、物的被害、避難状況などの情報を県と市町村が共有できる災害情報集計システムを導入しています。
こうした市町村からの情報に加えまして、県の関係部局や関係機関から集められた情報は、県の災害対策本部支援室において取りまとめており、支援室に参加している関係機関の間で情報を共有し、現場の状況等について共通認識を持って災害対応に当たっております。
今年度は、市町村や関係機関の御意見も伺い、より情報収集、分析、発信能力の高い新たな災害情報システムを構築しているところであり、今後も、県、市町村、関係機関が情報共有を行いながら、災害対応で連携、協力する体制づくりに努めてまいります。
〔農林水産部長小原敏文君登壇〕
〇農林水産部長(小原敏文君) まず、農林水産業振興の課題への対応と人材育成についてでありますが、本県の農林水産業は、地域経済を支える基幹産業の一つとして持続的に発展していくことが重要でありますが、近年、担い手の減少や生産物価格の低迷等による所得の減少に加え、今般のTPP協定交渉の大筋合意による影響が懸念されるなど、さまざまな課題が生じてきております。
このため、農地の利用集積による経営規模の拡大や、機械化一貫体系による省力化、ICTを活用した高度な生産技術の導入等により生産性の向上を図りますとともに、米の県オリジナル新品種など県産農林水産物のブランド化や、6次産業化、輸出の促進などの取り組みを総合的に進めております。
また、新規学卒者や他産業からのU・Iターン者など、県内外から多様な新規就農者を確保し、地域みずからが担い手を育てる取り組みへの支援や、経営の発展段階に応じた研修などを行っており、これらの取り組みを一層進めることにより、地域の農林水産業を牽引し、食のグローバル化にも対応できる力強い経営体を育成してまいります。
次に、産地直売所の支援についてでありますが、産地直売所は、平成26年4月時点で県内に287カ所設置され、年間売上額は平成25年度実績で約116億円となっており、生産者の所得確保はもとより、宿泊施設等への食材供給や消費者との交流など、地域において重要な機能を果たしております。
産地直売所が、引き続き地産地消の拠点等として地域の活性化を担っていくためには、意欲ある生産者による地域特性を生かした多様な取り組みを促進し、誘客力と販売力を強化していくことが重要であります。
このため、県では、魅力的な店舗づくり等に向けた人材育成の研修や民間アドバイザー等による助言、加工施設の整備や女性グループ等が行う商品開発への助成、商工、観光業者等との交流、商談機会の提供を行うなど、産地直売所の実態に応じ、きめ細かに支援してまいります。
次に、農業生産のイノベーションについてでありますが、担い手の減少や高齢化が進行する中、農業生産分野におきましてもイノベーションの取り組みは重要であり、県の技術開発基本方針等に基づき、ICTなどを活用した技術の開発、普及などによる生産性の向上や需要への的確な対応を進めております。
県では、これまで、哺乳ロボットや搾乳ロボットなどによる作業の省力化、クラウドを活用した農地情報システムによる生産管理の高度化などの技術導入を支援してきておりますほか、県農業研究センターでは、大学や企業等と連携しながら、野菜等の周年出荷のための環境制御システムや、乳牛の発情や体調不良の早期発見システムなどの実用化に向けた研究を進めております。
今後も、国の研究機関や企業、金融機関等と連携し、地域の特性や経営の発展段階に応じた生産管理システムの開発など、生産者ニーズに対応した技術の開発と迅速な普及に取り組んでまいります。
次に、農地中間管理機構のこれまでの実績と課題についてでありますが、本県では、農地中間管理機構である岩手県農業公社を中心に、関係機関が一体となって取り組みを進めてきた結果、昨年度は、貸付目標の2、000ヘクタールに対し、実績が2、359ヘクタールと目標を達成し、今年度におきましても、目標の3、600ヘクタールに対し、9月までの実績は1、608ヘクタールとなっており、今後、冬場の農閑期にかけて地域の話し合いが本格化していきますことから、目標を達成できるものと見込んでおります。
今後、事業を着実に進めていく上では、出し手の確保や中山間地域等の条件不利地での受け手の確保が課題であり、最終目標であります8割の集積に向けましては、基盤整備の一層の推進と地域農業マスタープランの一体的な見直しが必要と考えております。
次に、今後の基盤整備に取り組む視点についてでありますが、昨年度の農地中間管理事業における貸付面積のうち、約8割が圃場整備実施地区であるなど、農地集積を促進するためには、水田の大区画化や排水対策、水利施設の改修など、おくれております本県の基盤整備を着実に進めていくことが重要であります。
このため、県では、地形勾配や区画形状などの立地条件と地域のニーズを踏まえた基盤整備を進めており、受け手の確保が課題となっております中山間地域等の条件不利地におきましては、国が今年度創設しました農地耕作条件改善事業や今定例会に提案しております活力ある中山間地域基盤整備事業などを活用した簡易な条件整備も進めながら、農地の有効活用や農業経営の効率化が図られるよう取り組んでまいります。
次に、廃用牛の放射性物質検査についてでありますが、廃用牛を成牛市場等へ出荷するためには、国の出荷制限解除の考え方に基づく県の出荷、検査方針により、3カ月に1度、岩手畜産流通センターで屠畜し、放射性物質濃度が50ベクレル以下であることを確認する必要があり、小規模農家では、事実上、成牛市場等への出荷ができない状況にあります。
県では、平成23年8月から廃用牛の放射性物質検査を継続してきておりますが、平成25年1月以降に実施した約1万7、000件の検査では超過事例は一件も発生していないことから、廃用牛の出荷が円滑に進むよう、他県とも連携して、国に対し規制の緩和を要請してまいりました。
これを受け、国は、本年3月に、一定の条件が満たされた場合、廃用牛の検査頻度を12カ月に1回に緩和するとしたところであり、現在、早期緩和の実現に向け国との協議を進めているところであります。
次に、和牛繁殖農家対策についてでありますが、本県の和牛繁殖農家は、小規模経営が多く、経営者の高齢化も進んでおりますことから、意欲ある担い手への規模拡大支援に加え、高齢の経営者の経営継続に向けた取り組みが必要であります。
このため、優良繁殖素牛の導入や低コスト牛舎等の整備に加え、牛舎周辺の放牧地を活用した周年放牧の導入を支援することなどにより、肉用牛の増頭を図りますとともに、預託施設であるキャトルセンターの活用や飼料収穫作業を請け負うコントラクター組織等の外部支援組織の育成を推進することにより、作業の省力化や外部化を進め、高齢者でも意欲を持って経営を継続できるよう支援してまいります。
次に、林業技術者の人材育成についてでありますが、県では、これまで、林業技術センターでの研修や岩手県林業労働対策基金との連携により林業技術者の育成を図ってきましたが、近年、大規模な木材加工施設や木質バイオマス発電施設の整備が進むなど木材需要の増大に伴い、林業の現場で活躍できる技術者のさらなる確保、育成が求められております。
このため、本年5月に有識者による林業人材育成のあり方検討会を設置し、今後の林業技術者の育成のあり方等について、さまざまな観点から議論をいただき、9月に既就業者のキャリア形成機会の充実や、就業希望者が林業の知識や技術を体系的に取得できる新たな養成機関の設置が必要などの提言をいただいたところであります。
県では、この提言を踏まえ、就業者のキャリア形成を支援するための研修体系を再構築するとともに、若い林業技術者を育成するための新たな養成機関の設置に向け、具体的な検討を進めてまいります。
次に、野生鳥獣被害に対する今後の取り組みについてでありますが、ニホンジカやツキノワグマなど、野生鳥獣による平成26年度の県内農作物被害額は約4億6、000万円と、前年度に比べ5、000万円ほど減少したものの、依然として大きく、また、被害地域が拡大しておりますことから、全県的な取り組みが求められております。
このため、県では、平成27年3月までに全市町村で作成された鳥獣被害防止計画に基づき行われます猟銃、箱わなによる有害捕獲や侵入防止柵の設置等の取り組みに対し支援を行うとともに、狩猟者の確保に向けた免許取得講習会や、地域における鳥獣被害対策の研修会の開催等に取り組んでおります。
さらに、今年度から広域振興局を単位とした地域鳥獣被害防止対策連絡会を設置し、市町村が連携した鹿の広域捕獲活動等を促進するとともに、近年、被害を拡大させておりますハクビシンには、専用侵入防止柵の設置や、生息域が拡大しておりますイノシシの捕獲技術の向上等を支援し、被害の低減に努めてまいります。
〔商工労働観光部長菅原和弘君登壇〕
〇商工労働観光部長(菅原和弘君) まず、広域観光についてでありますが、本県が、世界に誇る普遍的な価値である世界遺産を二つ有する全国でも数少ない県である優位性を生かし、その集客効果を県内に広く波及させることが重要であります。
このため、今月から来年3月まで展開いたしますいわて秋冬期観光キャンペーンでは、本県が世界遺産の県であることを強くアピールするPRを首都圏等で展開するとともに、世界遺産を核として県内各地の魅力ある観光地をめぐる周遊観光の促進を図るため、内陸の温泉地などと沿岸の景勝地などをつなぐバスツアーの運行を支援するなど、二次交通の充実に取り組んできたところです。
今後も、平泉の世界遺産登録5周年記念や、御所野遺跡を含む北海道・北東北の縄文遺跡群の世界遺産登録に向けた取り組みとも連動し、市町村、関係機関と連携しながら、地域の魅力向上や受け入れ態勢の充実を進め、魅力ある周遊観光ルートを構築し、売り込んでいくことで誘客の拡大とリピーターの確保につなげ、世界遺産登録効果の維持、拡大を図ってまいります。
次に、八幡平国立公園60周年についてでありますが、八幡平国立公園は、すぐれた自然景観や豊富な温泉などの多様な魅力を有する、外国人観光客にもよく知られている観光資源であり、その魅力をさらに高めることは、外国人観光客の一層の誘致拡大にとって重要なことと認識しております。このため、県では、観光ポータルサイトいわての旅や全県観光案内板の多言語化を進めるとともに、八幡平山頂レストハウスの改修工事を行っているところです。また、昨年度2月補正予算で補助制度を創設し、無料公衆無線LAN環境の整備など、外国人観光客の受け入れ態勢の充実を支援しているところです。今後も、地元市町を初め関係団体とも連携し、受け入れ態勢の一層の充実を進めるとともに、海外へのプロモーションを強化し、外国人観光客のさらなる誘致拡大を図ってまいります。
次に、インバウンドへの対応についてでありますが、外国人観光客のいわゆる個人旅行化が進むとともに、そのニーズも多様化してきていることから、本県ならではの農村地域の景観や食などの魅力を生かした海外プロモーションを展開し、外国人観光客の誘致拡大とリピーター確保を図っていきたいと考えております。
このため、県では、海外の旅行会社やメディア等へ農村体験や景観などの魅力を売り込むとともに、在留外国人の農家民泊モニターツアーの実施を支援するほか、無料公衆無線LANの整備などの外国人観光客受け入れ環境整備を支援することにより、外国人観光客の農村地域への誘致に取り組んでおります。
今後も、関係部局や市町村等と連携しながら、海外に向けた情報発信を強化するとともに、農家等を対象とした受け入れ研修や情報交換会の実施によりまして受け入れ態勢を一層充実させ、外国人観光客のさらなる誘致拡大とリピーターの確保を図ってまいります。
〇27番(工藤勝博君) 御答弁、大変ありがとうございます。
何点か再質問させていただきます。
まず最初に、達増知事にお伺いいたしますけれども、歴代の岩手県知事のお話も出ました。そういう中で、達増知事におかれましては、3期目のこれから4年間、一言で、どういう表現で県政運営をなされるのかお伺い―4文字でも結構です。よく温故知新と言われながら、やはり歴代の知事の足跡も含めた思いがあろうかと思います。今後4年間の思いを、4文字で結構ですので、示していただければと思います。
それから、ふるさと振興について重ねてお伺いいたしますけれども、5年間の総合戦略が示され、10のプロジェクトで主な政策ごとの達成すべき数値目標も示されました。これらの目標を達成するための財源の確保というのはどういう形でなされるのかお伺いいたします。
そしてまた、基幹的な産業振興の中で、商工業、観光産業、あるいは農林水産業の取り組みの具体的なことも示さないと、ただ絵に描いた形だけの計画に終わってしまうのではないかと思います。その点をまたお伺いしたいと思います。
次に、防災、危機管理対応についての質問ですけれども、大規模災害がこのごろ頻繁に発生しております。防災対策の一つは、やはり行政職員の皆さんの対応能力の向上が必要だろうと思います。職員の防災力あるいは危機管理対応能力の向上に向けてどのような対応をなされているのかお伺いいたします。そしてまた、県では毎年各地で総合防災訓練を実施されております。それらも含めて、その成果と、どのような課題があるのかもあわせてお伺いしたいと思います。
次に、農業関係の中で、先ほど小原農林水産部長から農業イノベーションについても詳しくお話がありました。私は、特にも先端技術を駆使した園芸生産というのはこれから県の大きな柱になるのではないかと思います。というのも、岩手県の園芸生産は、減反政策が始まった昭和50年代から転作作物として各品目が各種導入されました。その中で、昭和55年から昭和57年でしたか、3年間続いた冷害があったわけですけれども、それで振興対策として園芸品目が導入され、パイプハウスが各地で設置されたわけです。野菜の安定生産と、また、それによって市場評価の高い野菜が生産され、農家の所得確保、所得向上に大きく貢献したと思っております。
その当時に設置された施設が、もう既に当然耐用年数は過ぎておるわけですけれども、施設が老朽化しております。そしてまた、生産者の世代交代も進んでおります。それらを考えますと、次世代の施設は、生産効率の高い、あるいはまた、そういう革新的な技術を駆使できるような施設整備が当然必要だろうと思いますので、先ほどもお話にありましたけれども、重ねて今後の取り組みをお伺いしたいと思います。
次に、畜産振興に関してお伺いいたします。
畜産振興の中で、岩手県は大規模畜産経営をするには大変恵まれた地域ではないかと私は思っています。その一つに人口密度が低い。結局は、畜産ですから、においとか環境問題があります。そういう点で人口密度が低いというのと、あとは太平洋岸に、八戸、石巻に餌工場がある、近場に飼料工場があるというのは大変有利性があります。そういうことも含めて、これからの畜産にどういう形で支援していくか。特にも大規模畜産の場合、これからの県の農業生産の大きな柱になるのだろうと思います。どんどん規模拡大も進んでおります。例えば養豚につきましては、全国の中でも1戸当たり飼養頭数第2位という大規模化になっています。そういう経営体が今後ふえていくことが、これからの岩手の大きな農業生産の発展につながるだろうと思います。それらをどういう形で振興していくか。
もう一つ、畜産が元気なことによって、飼料用米も、消費といいますか、利用されます。水田のフル活用も含めた、畜産振興とあわせた形の連携ができるような施策がこれから求められるのではないかと思っております。その辺についても具体的にお話をいただきたいと思います。
次に、鳥獣被害の対策についてお伺いしたいんですけれども、鳥獣被害対策として、近年、電気柵の設置がかなり進んでおります。
そういう中で、ことし、静岡県で鳥獣被害対策の一つである電気柵に感電して2人が亡くなり、5人が重軽傷を負う痛ましい事故が発生いたしました。電気柵は、野生動物の習性を利用し、柵に触れたとき微電流で驚かせ、危険だと学習させることにより、警戒心をあおることで近づかせないための装置であり、感電のショックで撃退するものではないわけです。専用の電源装置は電流が制限されるタイプと決まっておりますけれども、その事故はしっかりした処置がされていなかった可能性があるということで、農林水産省では各関係部署に安全対策の再点検と改善指導を求める通達を出したとあります。
鳥獣被害が深刻化する中で、電気柵の規制につながるようなことがないように、再発防止に取り組まなければならないと思います。近年においても鳥獣被害対策として電気柵の普及が進んでおりますけれども、その電気柵の安全対策の実施状況もあわせてお聞きしたいと思います。
〇知事(達増拓也君) むちゃぶりという言葉が頭に思い浮かびましたけれども、過去70年の歴史を振り返り、歴代知事の事績を踏まえて、これからの4年間を4文字でということで、第7知事といかせていただきましょう。そのままで恐縮なんですけれども、過去の知事の皆さんの事績を踏まえて県政をしていかなければならないという思いは私も最初から思っていまして、私が知事になってから、初めて県のホームページに歴代知事の紹介というコーナーを設けるようにさせました。そして、7番目の知事ということで、過去6人の知事の皆さんのやってきたこと、これは知事だけではなく、県民の皆さんと一緒にやってきた、県外の人たちとも力を合わせてやってきた、その事績の成果を一つに合わせれば、できないことはないというぐらいの過去の蓄積が岩手にはあると思います。レインボーマン第7の化身、レインボーダッシュセブンは、1から6までの能力を全部兼ね備えたものなので、それを目指して第7知事として頑張りたいと思います。
〇政策地域部長(大平尚君) ふるさと振興に関する財源の確保についてでありますが、県のふるさと振興総合戦略は、国のまち・ひと・しごと創生総合戦略を参考に、今後5年間の施策を盛り込んだものであります。議員御指摘のとおり、毎年度の取り組みに必要な予算、財源の確保を図るということは非常に重要なことであります。
県といたしましては、地方の主体性に配慮した新型交付金の継続、平成27年度地方財政計画に計上されたまち・ひと・しごと創生事業費の継続と十分な額の確保などについて、本年6月の政府予算要望において、最重要事項として国に対して訴えてきたところです。
今般、国の概算要求が示され、平成28年度につきましては、新型交付金については1、080億円が要求されておりますが、さらなる額の上積みや自主性の高い制度設計もあわせて、引き続き、全国知事会や北海道東北地方知事会を通じて強く訴え、必要な財源の確保に努めてまいりたいと思います。
次に、産業振興の取り組みについてでありますが、商工業などにつきましては、若者、女性などの創業支援や外国人観光客の受け入れ態勢の整備、あるいは安定した雇用形態、雇用の質の向上を図っていくこと、あるいはものづくりについてはカイゼンなどを普及させ、中小企業の労働生産性を高める取り組みなどを盛り込んでおります。
農林水産業振興プロジェクトには、強い農林水産業、活力ある農山漁村を創造することが重要ということで、リーディング経営体の育成や6次産業化の取り組み、あるいは農林水産物の生産性、市場性を高めるブランド化の推進などを盛り込んでおります。
いずれ、これらの施策につきましては、平成28年度の予算の施策立案おいて十分検討するように各部に指示をしておりますので、それらについて、当部でも積極的に、各部の事業も点検しながら、実効性のある取り組みにしてまいりたいと思います。
〇総務部長(風早正毅君) 防災訓練と職員の防災、危機管理能力の向上についてでありますが、今年度の県の総合防災訓練は、7月12日に、奥州市及び金ケ崎町を主会場に、大雨による洪水と、その後発生した地震という複合災害を想定しまして、103機関、約1万500人が参加して74項目の訓練が行われました。
この中で、県、奥州市及び金ケ崎町にそれぞれ訓練災害対策本部を設置し、災害情報の収集、伝達、自衛隊、緊急消防援助隊等の派遣要請、被災市町への現地連絡員の派遣などの実動訓練を行いました。災害発生時の県と市町村、そして関係機関との連携の確認や職員の判断力、行動力の養成などが図られたものと考えております。
県では、総合防災訓練のほかにも、県災害対策本部支援室職員や広域支部職員を対象とした図上の訓練や研修会を随時実施しているほか、市町村職員を対象にした図上訓練の実施も支援しております。今後とも、県職員、そして市町村職員の防災、危機管理対応力の向上に努めてまいります。
〇農林水産部長(小原敏文君) まず、先端技術を駆使した園芸生産のお尋ねでございますけれども、本県の施設園芸はこれまで夏秋野菜用のパイプハウスを主体として取り組んできたところございます。今後、一層の園芸振興を図るためには、機械化やICT等を活用した技術の開発、普及などによります省力化や生産性の向上、長期安定出荷への取り組みなど、これまで以上に進める必要がございます。したがいまして、今後、周年型産地を育成する観点からも、鉄骨等ハウスを活用した施設園芸産地の育成などについても取り組んでまいりたいと考えております。
次に、畜産対策でございますけれども、本県は広大な農地や豊富な草資源を有しておりまして、また、配合飼料工場が近くに立地するなど、畜産を営む上で優位な状況にございます。また、県内の大規模企業養豚では、飼料用米を肥育豚に給与し、こだわりのある豚肉の生産、販売を行う取り組みが拡大してきております。こうした取り組みは、飼料用米の利用拡大とともに県内畜産物の高付加価値化にもつながりますことから、今後ともこういった取り組みを積極的に支援してまいります。
次に、電気柵の安全対策についてでありますが、県では、本年7月に発生しました静岡県での電気柵によります感電死亡事故を受け、7月に電気柵の安全対策の実施状況について市町村を通じ点検を行いました。この結果、全市町村1、728カ所の電気柵のうち、177カ所で表示板未設置等の不適切な事案が確認されましたことから、これらに対しまして改善指導を行い、現在は全ての箇所で改善がなされております。
今後とも、電気柵の設置や使用に当たりましては、関係法令の基準を遵守するよう、市町村と連携し、研修会の開催や広報等を活用した周知を行ってまいります。
〇議長(田村誠君) 次に、千田美津子さん。
〔1番千田美津子君登壇〕(拍手)

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