平成27年9月定例会 第2回岩手県議会定例会会議録

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〇39番(飯澤匡君) いわて県民クラブの飯澤匡でございます。
ただいま議長のお許しをいただきましたので、順次、通告に従い、会派を代表して質問させていただきます。
いわて県民クラブは、改選後、新人2名を加えて再結成され、結成してここに3年目を迎えるに至りました。国政政党の縛りを受けない、自己完結、自己責任に立脚した県民党的会派を目指す会派であります。あくまで県民目線に立った政策の立案と提案を積極的に行い、二元代表制の一翼を担う議会の権能を最大限発揮できるよう精進してまいります。本県の議会基本条例にのっとった議会としての本分を追求する以上、行政に対しては誰が知事であろうとも是々非々の立場で処する所存ですので、御理解をよろしくお願い申し上げます。
さて、これよりの質問は、私並びに多くの県民が疑問に思っていることを直接知事にお聞きすることで、正念場を迎えた東日本大震災からの創造的な復興やILC実現等の本県の将来に向けた重要課題に対して達増知事の政策達成の本気度を確認するものであり、私の問題意識に基づいた指摘と政策提案を交えて質問しますので、あらかじめ御了承願います。
最初に、TPP(環太平洋経済連携協定)大筋合意に対する本県の対応についてお伺いします。
このたびの大筋合意の内容は、日本の交渉参加が認められた要件である重要5項目の関税撤廃は免れたものの、大幅な引き下げや低関税での輸入拡大を受け入れる内容となっています。交渉過程の段階からTPPへの参加は本県の農業経営に大きな影響を及ぼすことは御案内のとおりであり、特に酪農、畜産関係部門においては生産基盤の根底を揺るがす状況になることも予想されてきました。段階的な関税の低減の影響は10年、20年先に顕著になり、30代、40代の担い手の離農が懸念されます。今後、政府においては、農業政策の議論が本格化し、国内対策を検討し、予算の確保等の対策を急ぐとの動きが報道されています。今後、国会におけるTPP協定の承認という手続もあり、本県としては、政治的な対応と、また、県内の農家を守るために予算の確保という現実的な対応が求められると考えますが、知事の基本的対応姿勢についてお尋ねいたします。
次に、知事演述で示された今後4年間の県政運営の考え方について数点お伺いします。
まず、財政運営でありますが、昨年の秋に県がまとめた平成26年度から平成28年度の中期財政見通しでは、平成27年度以降は歳出が歳入を200億円以上上回る状況となり、基金が平成28年度末には枯渇する見込みであるとの財政状況が示されました。また、平成24年度決算では実質公債費比率が18.6%と、地方債発行に総務省の許可が必要となっている18%以上となったことで県債発行が抑制されている状況であります。
一方、政府は、経済財政運営と改革の基本方針2015を閣議決定し、昨年度の予算編成方針に沿ったリーマンショック後の危機対応モードから平時モードへの切りかえを進めるため、歳入面、歳出面の抑制を図り、地財計画においても今後さらなる財政の健全化を推進する方向が予想され、歳出特別枠の廃止など、一層厳しい対応が待ち受けています。
そこでお伺いしますが、このような厳しい財政状況の中で、国の健全化計画を意識した財政管理は不可欠と考えますが、知事の県財政のマネジメント策を中期財政の見通しとともにお示しください。
さきに発表された公債費負担適正化計画によれば、徹底した歳出の見直しを図るとされ、投資的経費や補助金、負担金の見直しをするとされています。事業の効率化、取捨選択、集中管理は回避できないと思いますが、その際、どのようなシステムで動かしていくのか、県民にも説明責任の果たせるシステムを構築すべきと考えますが、いかがお考えでしょうか。また、今後、本格的対応が迫られる地方創生や人口減少問題に対する予算額の見通しと財源確保策についても具体的にお示し願います。
復興財源に関して、平成28年度以降は国が復興事業費の一部負担を被災地自治体に求める方針を閣議決定したことは、県のみならず被災地自治体の財政運営にも大きな影響を与えることとなります。知事は、さきの知事演述で具体的な運営方針には全く触れておらず、市町村と連携しながら政府に対して被災地の状況を説明するにとどまっています。財務省主導で行ったと思料される今度の措置に対して依然として被災地自治体首長の国や県への不満はくすぶっており、県というより知事自身の国に対するリーダーシップが今後問われてくることは必至であります。
私のみならず多くの県民が心配している知事と政府との距離感については、知事が県民党を標榜したことで一瞬期待感が出た向きもありましたが、政府関係者や県内の経済界からの声は、一向に変化が起きていないのではないかと憂慮される声があるのも事実であります。県民利益を考慮すれば、客観的にどのような外部からの評価がされているのかを把握し、それらを活用させていくことは必要不可欠であり、民間企業であれば会社挙げての危機管理対策を練るのは至極当然でありますが、県の組織機構ではどのような対応をされているのか参考までにお聞きします。
来年度分から5年間の復興事業費の負担拡大分は県73億円、沿岸市町村16億円と試算されていましたが、県はもとより、沿岸被災自治体の事業への影響をどのように見込み、また、対応されるのかをお聞きします。
関連して、復興事業をめぐって、これまで、大雪りばぁねっと問題やDIOジャパン問題は県議会で決算不認定の主たる要因となっただけでなく、県内自治体と県との信頼関係を失う結果となりました。このことは、今後、国への要請についても県の指導力が問われることとなりますが、いまだに議会の2度にもわたる決議に沿った検証活動は行われていません。どのような検討がされているのか改めてお聞きします。
次に、知事の希望マニフェストと被災地復興について伺います。
今や国政、地方を問わず常備品となったマニフェストを作成したことについては了とします。8年前に作成したマニフェストがもとになり希望創造プランが策定されました。4年前は復興計画をマニフェストがわりとして作成されませんでしたので評価外でありますが、知事がみずから自己評価をされている四つの危機、人口流出、県民所得の低迷、雇用不足、地域医療の崩壊は、一部表面的な数値は改善されているものはあっても、根本的な解決には至っていないと私自身、また、県民も評価しているものと思っております。内在している課題を洗い出し、課題解決のための道筋を示していくことが必要なはずですが、着実に改善されているとの根拠は何なのかお示し願います。
8年前のマニフェストは、外部識者からマニフェストとしての完成度について、具体的な数値目標や実現のための手だてなど厳しい評価があったと記憶しています。今回のマニフェスト作成については、それらの指摘に対してどのような留意をされたのかお聞きします。
県勢発展のかなめは人、人がつくる岩手、人をつくる岩手については共感するものでありますが、県内の教育機関をどのように位置づけ発展させるかについては言及されておりません。現状の姿で十分とお考えなのか、法改正により知事が教育部門にも責任を負う体制となることでありますから、問題意識を示しつつ、明確な基本的なお考えをお示し願います。
地域資源を生かした産業振興については、産業ごとの達成する目標が掲げられています。被災後の産業振興と新産業の植えつけ、並びに広域的な産業創生における県の役割の重要性については、これまでも私は提案もし、多くの時間の質疑をしてきました。被災地からは、生活の糧を求めてやむなく故郷を後にした地域の未来を担う人材がいます。それらの人々が将来は故郷に帰り、希望の持てる産業戦略を担うのはまさに県の仕事であると私は思います。産業振興の点としての取り組みは震災前から補助事業等で行っていることは承知していますが、面としての県のダイナミックな取り組みや新規事業への積極姿勢、例えば再生エネルギーによる地産地消の基地を目指し、国の研究機関や民間投資を促すなどの、広域で地域の強みを生かす県の戦略的な動きについては私は満足できません。本来であれば沿岸広域振興局が産業振興の戦略拠点となって行うべきものと考えますが、今までどのようなミッションを与えて活動されてきたのか、現状と今後の方針についてお伺いします。
県が策定した三陸創造プロジェクトは被災地創造の全庁的な機動計画として位置づけていると認識していますが、現時点での課題認識についてお示し願います。また、マリオス内に設置されている三陸総合振興準備室はどのような意図で設置されたのか、いまだに私は不明でありますので、設置目的とこれまでの実績についてお知らせ願います。
被災地の経済を支えてきた復興事業は、期限が到達すれば確実に終了し、それとともに雇用先も失うこととなります。宮城県と比較して決定的に現時点でのおくれを生じている問題意識は県にあるのでしょうか。震災後には商流も大きく変化し、大資本に地域経済も包括されようとする中で、県においては知事マニフェスト実現の手だてはどうするのかお知らせ願います。中長期的な産業振興策については、戦略室等を設置し、民間の人材を積極的に活用していく方策を探るべきと私は考えますが、いかがでしょうか。
JR大船渡線の鉄路復活についてお伺いします。
次にお聞きするILCの実現とも関連する交通アクセスの復旧は、将来の岩手県南、宮城県北との連携にかかわる未来図にかかわる重要な課題と認識しています。現在、復旧が未定となっている気仙沼-盛間は見込みが立っていない状況にある中で、陸前高田市や大船渡市では、まちづくりが進む中で、JR側からの意向を酌みつつ市民レベルでの検討もされている報道がありますが、県が主体的な姿勢を示していないのはまことに残念な状況と言わざるを得ません。JR山田線の三陸鉄道への移管においても、県の初動がおくれにおくれて被災地自治体からの不満が高まった経過がありました。県の主体的な取りまとめを期待しつつ鉄路全線復旧を願うものでありますが、現状と今後の取り組む姿勢についてお伺いします。
ILCの実現に向けた県の取り組みについてお伺いします。
私は、ILC計画の実現はもちろんのことですが、同時に、実現に向けた県のグランドデザインにかかわった将来図の策定、産業の育成、人材の育成等が一体となって戦略的に策定され、それが県民に周知、理解され、そして、国を初め世界に発信していく過程が重要だと考えます。21世紀が環境の世紀と位置づけられ、自然と社会との調和が今日の世界の命題とするならば、その考え方に合致した独創的なグランドデザインを県が自信を持って主張するべきであり、このことは、本県の強みである自然豊富な地域資源を生かし、持続可能な未来社会をつくることにもつながることでもあります。
本年4月に一関市大東町で行われたPSG(一般社団法人国際経済政策調査会)主催のILC講演会では、都市工学の専門である石川幹子先生の里山を生かした研究都市機能をちりばめたコンセプトを堂々と展開すべきとのお話はまことに示唆に富むお話でありました。石川先生は、ILC立地評価会議、社会環境基盤専門委員会のメンバーでもあり、岩手の北上高地に連なる広大な地形と里山文化を研究サイト立地に融合させて活用する可能性について高く評価をされていたと伺いました。また、ILCの権威でもある吉岡先生からは、地元の林産物を積極的に研究棟建設に活用するといった科学的根拠に基づいた貴重な御提案もありました。
県はこれまで庁内にワーキンググループをつくり、諸問題について検討されてきたと存じますが、県が上部推進組織である東北経済連合会等の組織に気兼ねをしているのかどうかわかりませんが、なかなか表に出てこない慎重な姿勢は、逆に仙台を中心にしたありきたりの都市を中心に据えたグランドデザインに吸収される危惧を私は持っています。この際、石川先生から勇気づけていただいたような、大風呂敷とは言わないまでも風呂敷を用意し、大きく広げる大胆さを持って早急にアクションを起こすべきと考えますが、識者の提案を県はどのように評価され、対応されるのでしょうか。岩手県南と宮城県北の関係3市においては行政レベルでこの検討がされていると聞いておりますが、現在の進捗状況と県のかかわり方についてもお伺いします。
また、私は、宮城県を逆に利用してやるくらいの隣県との連携策や交通アクセスの整備、教育機関環境の整備は、国に対して戦略的に提案することをパッケージとして最低限行う必要があると考えます。地域の大きな課題である国道343号新笹ノ田トンネルの建設も、建設資材の搬入に大船渡港や釜石港からビームの衝突地点まで最短距離であることは説得力を持つに違いありません。
また、私が欧州のCERN(欧州原子核研究機構)やアメリカのSLAC(国立加速器)研究所を視察した折に研究者の方々から提案された地元産出の新鮮な食材提供については大いなる期待感が持たれており、それには地域営農の持続的な発展が不可欠であります。モデル的な中山間地帯の営農持続戦略もあわせて必要となると考えますが、この点については具体的にお考えをお示し願います。
ILCが国際プロジェクトとして決定するかどうかは、この2年が正念場とされています。県としては、大胆な行動力と細心の注意力を持って、この2年の間にあらゆる手段を持ってILCの実現と東北地方に自然との共生が図られた産業立地特区を目指して全力を挙げて推進策を新たに検討すべきと考えますが、以上申し上げた提案の評価とともに、県の実現に向けた取り組みについて知事にお伺いします。
次に、地域医療の創造的な育成策についてお伺いします。
地域医療をめぐる状況は依然として厳しいものがあり、人口減が激しくなっている中山間地帯の県立の地域病院、自治体の診療所とも医師が安定的な常勤体制に至っていない状況にあります。地域医療を守る懇談会を県議会が予算の組み替え動議により増額補正したことにより設置され、市民レベルでの意識はここ数年顕著に上がってきています。
〔副議長退席、議長着席〕
議会からの提案が契機になって機運醸成に貢献したと言えると思います。しかしながら、医療環境に目を転じると、私の地域の二次医療圏の実態は、基幹病院、地域病院ともに決して大きな前進は図られていません。医師の不足を医療局に指摘すれば、自治体の診療所で医師を確保しているではないかという要職の方の責任回避するような発言を耳にした場面がありました。これでは根本的な解決は果てしなく遠く感じます。医療が高度化し進化をする一方で、高齢化が進み、総合医を必要とする地域が疲弊を招いている姿の格差は医療政策で埋めていかねばなりません。これから人口減少が激しくなっていく地域にいかに医療提供体制を構築するかは、喫緊の重要な課題として認識しています。本県の県立病院を基軸にこれまで行ってきた体制は誇れるものであり、その体制の上に立った確固たる地域医療政策を敷き、政策に基づいた自治体とも一体となった方策が求められると考えます。特に、県立病院の地域病院の役割分担の明確化と自治体病院との連携は、県民にしっかりとその姿を示す必要があります。県ではただいま申し述べたことにどのように対応されていくのか考え方をお示し願います。
以前から、地域医療政策の柱を据えて地域のニーズに合致した医療体制の整備を推進するためには、命と健康を守る保健福祉部を前面に押し出して、医療局との組織改編等も検討すべきとの提言をしてまいりました。県では検討するとの過去の答弁がありましたが、その後どのような検討をされたのか、また、課題があれば何なのか明確にお示し願います。
地域医療政策を県民と一体となって行うためには、現在の地域医療懇談会を発展させた取り組みが不可欠と考えますが、現状の課題認識を伺います。
国では医療費の抑制を主眼とした地域医療構想の策定を都道府県に義務づけていますが、病床数の削減を図る目的を満足するだけでなく、これを機会に大いに二次医療圏ごとの地域医療のあり方について医療関係者を中心にまとめる絶好の機会と考えますが、これからの進め方についてお伺いします。その際、現状では保健所が中心となって進めていますが、今後は保健福祉企画室が中心となって地域のニーズの把握と進捗管理をすべきと私は考えますが、その体制構築についてもお聞きします。
知事は、マニフェストで地域医療基本法の呼びかけをすると明記されましたが、私は、立法しなければ意味をなさないと思います。立法を実現するための具体的な手だてと方策についてお知らせ願います。
最後に、2019年ラグビーワールドカップ岩手県釜石市開催に向けての課題と取り組みについてお伺いします。
現在行われているイングランド大会は、日本が南アフリカを初戦で破るというジャイアントキリングの快挙をなし遂げ、3戦目のサモア戦も快勝するなど、ジャパンチームの戦いぶりに世界のラグビーファンから称賛の声が上がっております。このことは、次回開催地である日本への期待の高まりとともに、開催地の一つである釜石市が東日本大震災からの復興の姿を全世界に感謝の声を届ける絶好の機会であることを本県は認識し、準備を着実に進めていかねばならないと私自身も心を引き締めているところであります。これから釜石市鵜住居地区への新スタジアムの建設費の確保はもとより、既に視察団を送り込んでいる釜石市と同規模で、現在開催しているイギリスのグロスター市との交流を通じた開催に向けての課題の洗い出し等、民間レベルでの交流を起点とした活動が推進されることを切に望むものであります。
ラグビーワールドカップ釜石開催成功に向けた決意を最後にお伺いして私の代表質問を終わります。御清聴まことにありがとうございました。(拍手)
〔知事達増拓也君登壇〕
〇知事(達増拓也君) 飯澤匡議員の御質問にお答え申し上げます。
まず、TPP協定の大筋合意についてでありますが、畜産物の関税率の引き下げ、撤廃や米の無関税輸入枠の設定等について合意されたことは本県の農業者、農業団体に強い衝撃を与えており、残念であります。
県としては、本県の農業に影響を及ぼすことがないよう、国の責任において必要な対策を十分に講ずること、東日本大震災津波からの復興の途上にある被災地の活力を決して低下させないことなどについて、10月6日に国に対して緊急要請を行ったところであります。また、TPP協定の本県の農業等への影響について全庁的な情報共有と総合的な対応を図るため、10月6日に岩手県TPP協定対策本部を設置いたしまして、引き続き情報の収集等に努め、必要な対応について検討を進めてまいります。
次に、県財政のマネジメント策についてでありますが、自主財源に乏しい本県におきましては、国の動向に常に注意を払い財政運営を行っており、昨年9月に公表した中期財政見通しにおきましても、国の計画等を極力反映した推計を行っているところであります。国のいわゆる骨太の方針によりますと、地方の一般財源総額について、平成30年度までにおいて平成27年度の水準を下回らないよう実質的に同水準を確保するとされているわけでありますが、本県の財政状況は、社会保障関係費の増や、高水準で推移する公債費等により今後も多額の収支ギャップが生じ、厳しい状況が続くと見込まれますことから、引き続き、東日本大震災津波からの復旧、復興に係る事業については最優先で取り組む一方、事務事業評価結果等を踏まえて、歳出の徹底した見直しを行い、限られた財源の重点的かつ効率的な活用に努めてまいります。
次に、歳出の見直しについてでありますが、投資的経費や補助金、負担金等の歳出事業については、毎年度の事務事業評価や公共事業評価等の結果を踏まえて予算編成過程においても見直しを行い、当初予算に反映しております。今後も、政策評価の仕組みに基づくマネジメントサイクルを確実に機能させ、また、県民の皆さんにわかりやすいものとなるよう努めながら、いわて県民計画の着実な推進と財政健全化を図ってまいります。
次に、地方創生、人口減少問題に対する財源確保についてでありますが、今般策定するふるさと振興総合戦略を踏まえて、今後の予算編成に当たっては、総合戦略に掲げる仕事の創出や移住、定住の促進、出産や子育て支援など、ふるさと振興を展開する取り組みについて積極的に施策立案を図ることとしています。具体的な予算額は、今後の編成作業を通じて積み上げていくこととしておりますので現時点で見通すことは困難ではありますが、総合戦略の推進に必要な額を確保していくこととしております。
こうした総合戦略の推進には、とりわけ安定的な財源の確保が重要でありまして、今後5年の戦略期間を通じた継続的な施策展開を図ることができるように、一般財源総額の確保や地方創生のための新型交付金など、必要な財源の確保について、全国知事会や北海道東北地方知事会と連動し、国に対して強く訴えてまいります。
次に、外部からの評価についてでありますが、県政運営に関する情報や評価については、県民の方々初め県内外の企業、業界団体等から直接あるいは各部局を通じて御意見、御提言をいただいていますほか、秘書広報室を初め各部局が独自に入手したさまざまな情報や外部の声等について、不断に報告、協議を受けているところであります。緊急を要するものについては、災害発生時はもちろんのこと、例えば、世界遺産登録、今回のTPP交渉大筋合意など、関係部局から秘書広報室を通じ24時間体制で連絡、協議を受け、必要に応じ指示を出せるようにしております。また、特に重要な案件につきましては、直接、関係部局長に対応を指示するほか、庁議や政策会議等の場で協議したり、あるいは対策本部を設置して全庁的に対応しているところであります。
次に、復興事業に係る地方負担の拡大による影響についてでありますが、県及び市町村に新たに見込まれる地方負担は小さな額ではありませんが、一方、このために復旧、復興事業の進捗に影響が出ることがあってはならないものであります。国における平成28年度政府予算概算要求を見ますと、被災者支援や復興まちづくり、住宅再建やなりわいの再生など、必要な事業の所要額はおおむね盛り込まれておりますが、引き続き、国費による力強い支援を国に求めるとともに、新たに生じる負担分につきましては、起債による財源確保も視野に入れながらも、東日本大震災津波からの復旧、復興に係る事業を最優先として、復興におくれが出ることのないよう進めてまいります。
次に、大雪りばぁねっとについてでありますが、議会の決議には具体的に対応しなければならないと考え、現在も裁判や会計検査院による検査が継続している状況において、新たに検証委員会を設置して一定の結論を導き出すような検証を行うことは差し控えるべきと考えておりますが、現時点で対応できる方策といたしまして、外部の方に検証結果の内容について個々に所見をいただいて、本年2月定例会の際に、その内容を提供させていただいたところであります。
今後、会計検査院の検査結果が公表となった場合等におきまして、その具体的な内容を見きわめた上で、どのような対応が必要となるか、検討してまいりたいと考えております。
次に、危機の改善の根拠についてでありますが、本県が直面する危機を希望に変えていくために、いわて希望創造プラン及びいわて県民計画第1期、第2期アクションプランにおきまして目標を設定し、その解消に向けて取り組みを進めてまいりました。
人口につきましては、平成18年に6、000人台であった社会減が減少傾向にあり、直近のデータでは、平成24年以降、3年連続2、000人台で推移しています。
県民所得については、県民所得と国民所得の乖離が縮小傾向にあり、比較可能な平成13年度以降で最も乖離が縮小しております。
雇用環境につきましては、求人不足数が大幅に改善し、平成26年度は、有効求人数が有効求職者数を2、500人上回る結果となっています。
地域医療については、平成18年に人口10万人当たり112.3人であった病院勤務医師数が、平成24年に124.6人と増加傾向となっており、着実に成果が出ているところであります。
一方、これらの課題については、例えば雇用環境では、雇用の量の確保に加えて質の向上が重要となっているなど、本県を取り巻く社会経済環境も変化しておりまして、今後策定する第3期アクションプランやふるさと振興総合戦略に、これらに対応するための施策を盛り込んで、その着実な推進を図ってまいります。
次に、マニフェスト作成の留意についてでありますが、今回の知事選で掲げた希望マニフェストは、いわて県民計画と岩手県東日本大震災津波復興計画をベースに、今後重点課題として重視すべき事項、さらには、現行の第2期アクションプランの先を見据えて実施したい政策などを盛り込んだもので、簡潔にして要を得た内容となるよう留意したところであります。
次に、教育についてでありますが、人材の育成に当たっては、初等中等教育から高等教育、社会人教育まで、県民個々のライフステージに応じた多様な学びの機会が確保されることが重要です。特に、学校教育におきましては、岩手の子供たちがグローバル化や情報化の進展など、変化の激しい社会を生き抜くために、子供たち一人一人に変容する社会に対応できる確かな学力、豊かな心、そして健やかな体の知・徳・体をバランスよく育てることが大切であります。
このような基本的な考えのもとに、公立学校を初め私立学校、大学などの教育機関がそれぞれの役割を果たしつつ、学校種間や産業界などとの連携を一層深めながら、この岩手の地で、岩手の、そして日本の次代を担う人材を育んでいきたいと考えております。
次に、広域振興局における産業振興の取り組みについてでありますが、広域振興局は産業振興による地域経済の活性化を主眼とし、地域ニーズに即した施策展開が可能となるよう、市町村への支援、広域的、専門的サービスなどを提供していくことを目指して設置したものであります。
各広域振興局におきましては、これまで、いわて県民計画に掲げる目指す将来像を実現するためにアクションプランを策定して産業振興等に取り組み、例えば県央広域振興圏におけるIT産業の振興や地元食材の地域内流通促進の取り組み、県南広域振興圏における自動車関連産業を中心とするものづくり産業振興の取り組み、県北広域振興圏における食産業やアパレル産業振興の取り組みなどが挙げられます。
また、沿岸広域振興圏におきましては、東日本大震災津波からの復旧、復興を最重要課題と位置づけて、復興計画に基づいて漁業や水産加工業を初めとするなりわいの再生等に取り組んでまいりました。
今後におきましても、復興計画や今年度策定することとしております第3期アクションプラン地域編に基づいて、広域振興圏の目指す姿の実現に向けて取り組んでまいります。
次に、三陸創造プロジェクトについてでありますが、このプロジェクトは、長期的な視点に立って、将来にわたって持続可能な新しい三陸地域の創造を目指し、五つのプロジェクトを掲げていろいろな分野について横断的に取り組んでいるものであります。
プロジェクトを構成する各施策につきましては着実に実施されているものがある一方で、中長期的観点で盛り込んだものの中には、現在、具体化に向け検討中のものもあるなど、進捗の度合いが施策によって異なっているという状況にあります。
こうしたことから、今後、三陸らしさを踏まえて、県民の皆さんやさまざまな団体の意見も取り入れながら、プロジェクトの具体化を図ってまいります。
また、三陸総合振興準備室については、オール三陸としての地域振興をデザインしながら、地域資源を生かした観光等の産業振興や三陸ブランドの活用などの事業を総合的に展開する新たな推進体制を整備するために、その準備作業を担う組織として設置したものであります。
これまで、沿岸市町村や関係団体等との意見交換、先進事例調査などを行ってきたところでありまして、引き続き、基本的な方向性などについて検討してまいります。
次に、マニフェストに掲げる本格復興についてでありますが、本県におきましては、水産業の復旧や被災事業所の再建のほか、魅力ある商品づくりや生産性の向上、企業誘致や既存企業の成長の後押しなど、復興後の足腰の強い産業の振興に向けて復興事業を着実に進めているところであります。
加えて、沿岸地域においては、復興道路の整備や三陸鉄道の一貫運営をにらんだJR山田線の復旧、新しいまちづくりなどが進んでおりまして、こうした環境変化を積極的に生かして、物流や交流人口の拡大につなげていくことが重要であります。このため、三陸鉄道や復興道路で結ばれて一つになる新しい沿岸地域の発展や三陸の復興を強力に発信するイベントの開催など、マニフェストに掲げる本格復興を実現する施策を展開してまいります。
また、中長期的な産業振興策につきましては、先ほど申し上げた三陸地域の総合振興に関する新たな推進体制の中で、官民協働による産業振興のあり方についても検討してまいります。
次に、JR大船渡線についてでありますが、本年6月、復旧方針をハイレベルで協議する場として、国主催による大船渡線沿線自治体首長会議が開催されて、JR東日本からは、改めて安全確保等のための山側ルートへの移設の必要性と自社単独での復旧費負担は困難であることの説明がなされるとともに、国からは、ルート移設等に要する費用の支援は困難という考え方が示されたところであります。
また、7月の第2回会議では、第1回会議において沿線市から、営業主体であるJR東日本が復旧方針を明確に示すべきとの要請があったことを受けて、同社から、BRTによる本格復旧が提案されたところでありまして、現在、沿線市においては、この提案を受けて、今後の復旧のあり方等について、住民懇談会を開催するなどして意見の集約を図っているところであります。
県といたしましては、大船渡線の本格復旧に当たっては、利用者である沿線地域住民の皆さんの考えが重要であると認識しておりまして、今後とも、沿線市の意向を踏まえて、復旧方針の早期決定と復興の加速化が図られるよう取り組んでまいります。
次に、関係市とのかかわりについてでありますが、一関市と宮城県栗原市、登米市の3市は、県境を越えた連携を進めるため、本年4月に市長懇談会を開催したところであります。同懇談会では、3市の連携のあり方について意見交換が行われ、ILCについても情報共有をしていくことを確認したと聞いております。
県といたしましては、広域の視点で2県3市により本年4月に設置しましたILCまちづくり検討会の中で、一関市を通じて情報の共有や意見の反映を図っていく考えであります。
次に、欧米の研究者からの提案についてでありますが、外国人研究者に対して、地元の新鮮な食材や加工品を提供することは、ILCを契機とした農業、農村の活性化につながるものと考えております。現在、中山間地域の営農を持続させるため、県内各地区で策定されている地域農業マスタープランに基づいて、担い手を中心とした農業生産体制づくりや、地域資源を活用した6次産業化などの取り組みを進めているところでありますが、今後、ILC計画の進展を踏まえて、外国人研究者の意見も聞きながら、新たな産地づくりなどの検討に生かしていきたいと考えております。
次に、提案の評価と推進策についてでありますが、国の有識者会議の議論から、ここ一、二年は、国際プロジェクトに向けた極めて重要な期間であると受けとめております。ILCは、多くの外国人研究者やその家族が居住、交流しますことから、まちづくりにおいて重要な交通や教育、医療などの課題とその解決策について、部局横断による庁内のワーキンググループで議論を深めているところであります。
また、先ほど申し上げました2県3市によるILCまちづくり検討会において、里山との調和や多文化共生など、まちづくりのコンセプトや地域の広域的な将来方向について検討を進めているところであります。
今後は、このような活動を発展させて、その成果を産業振興を含めた東北の戦略に反映させてまいります。
県といたしましては、これらの取り組みに加えて、関係団体と連携した要望活動を強化しますとともに、英語により情報発信を行うTHE KITAKAMI TIMESの定期発行など、国内外の方々が東北、岩手に関心を持っていただくように、活動を展開してまいります。
次に、県立病院の役割分担と自治体病院との連携についてでありますが、県内各病院が担う役割や機能については、岩手県保健医療計画や岩手県立病院等の経営計画で示しホームページでも公開しており、また、地域医療を支えるための県民運動等を通じて広報を行っているところでありますが、県立の地域病院は、初期救急やプライマリーケアなど地域住民に身近な医療を担い、県立病院のみならず、福祉、介護を含めた地域との連携を進めていくとしております。
さらに、県では、将来の目指すべき医療提供体制を定める地域医療構想を現在策定中でありまして、この構想を実現する取り組みの中で、各医療機関の役割分担や連携のあり方についても、地域の医療関係者の皆さんと協議を行っていくこととしております。こうした取り組みについては、医療審議会に報告し公表してまいります。
次に、医療政策を担う組織体制についてでありますが、これまで、保健福祉部と医療局の共管組織であります医師支援推進室が一元的に医師招聘を行うなど、両部局が連携して医師確保に取り組んできておりまして、今後も一体的な取り組みが必要であると考えております。こうした中、来年度から奨学金養成医師の配置が本格化しますことから、県や医療局等の関係機関が、本年5月、奨学金養成医師配置調整会議を設置するなど、必要な体制を検討し、順次対応してきたところであります。
今後、奨学金養成医師が年々増加しますことから、その適正配置に向けた体制の強化が課題であると認識しておりまして、関係機関の意見を聞きながら、そのあり方について検討する必要があると考えております。
次に、地域と一体となった医療提供体制の構築についてでありますが、地域医療に関する懇談会における提言の具体化に向けて、平成22年度以降、保健医療圏ごとに保健所を中心とした会議を開催し、医療、介護関係者に地域住民も加えて意見交換を行ってまいりました。これを契機に、地域医療・介護連携モデル推進事業の実施や住民ボランティア活動の広がりなどの取り組みが見られたところでありますが、近年、圏域によって会議の進め方等が異なっている状況にあります。
県では、現在策定を進めています地域医療構想の策定後は、保健医療圏を基本とした構想区域ごとに、医療関係者等を構成員とする協議の場を設置して、今後の地域の医療と介護のニーズに応じた具体的な方策について協議を行うこととしております。
その方策等の推進に当たりましては、本庁関係部局と保健所が連携をしながら、地域の取り組みを支援してまいります。
次に、地域医療基本法を制定するための具体的な方策についてでありますが、県では、地域医療を守るため、国全体で医師の計画的な養成と適正配置に取り組むことを主眼とする地域医療基本法の制定を求めて、これまで、政府予算提言要望や首都圏におけるシンポジウムの開催、全国紙における情報発信などを通じて、その必要性を提言してきたところであります。今後もさまざまな機会を通じまして、国への提言や国民的な議論に向けた情報発信等を行って、その実現に向けて取り組んでまいります。
次に、2019年のラグビーワールドカップ日本大会の釜石市での開催についてでありますが、現在開催中のワールドカップ2015イングランド大会での日本代表チームの大活躍は、国内を盛り上げて、次回日本大会の開催機運は大いに高まっています。
ラグビーワールドカップが東日本大震災津波の被災地である釜石市において開催されることは、全世界からいただいた支援への感謝を伝えるとともに、復興の姿を発信するための絶好の機会となります。
また、大会を契機とした国内外観光客等の来県による交流人口の拡大や地域経済の活性化が期待されますことから、県といたしましては、この機会を捉えて釜石市と連携し、世界に向けた情報発信、PRを行って、誘客とそして受け入れ態勢の整備に取り組んでまいります。
一方、大会の成功に向けましては、釜石市のスタジアム建設を初め、選手、観客等の輸送、宿泊施設の確保など課題も多くありますので、今後、国やラグビーワールドカップ組織委員会等関係機関と連携を図りながら、県内市町村、民間そして県民がオール岩手で、まさにスクラムを組んで万全の体制で大会を迎えることができるよう、しっかりと準備を進めてまいります。
〇議長(田村誠君) 次に、五日市王君。
〔36番五日市王君登壇〕(拍手)

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