平成27年9月定例会 第2回岩手県議会定例会会議録

前へ 次へ

〇34番(嵯峨壱朗君) 自由民主クラブの嵯峨壱朗でございます。
改選後、初の定例県議会におきまして代表質問の機会をいただきましたこと、同僚議員各位に対しまして衷心より感謝申し上げます。
会派を代表いたしまして達増知事に質問いたしますので、率直かつわかりやすい答弁を願うものでございます。
さて、達増知事におかれましては、今般、県政史上初めてとなる無投票当選により3選を果たされました。平成19年に全国最年少知事として初当選されましたが、その1期目を終えられる直前に発生した東日本大震災津波は、今なお、本県に深い傷跡を残しております。また、日本全体が本格的な人口減少時代に突入している中、地方創生も喫緊の課題となっております。まさに、これからの4年間は、こうした大きな課題を解決しなければならない重要な期間であり、知事のリーダーシップの発揮、そして、国、市町村と呼応した力強い施策の展開を大いに期待するものであります。
初めに、希望マニフェストと知事演述についてお伺いいたします。
知事は本年6月20日に、御自身のブログの中で、知事選に向けての希望マニフェストを発表しております。その内容は、10月2日の本会議における知事演述に含まれておりますので、あわせた形でお尋ねしたいと思っております。
今般の知事演述については、大半がこれまでの県政運営の延長との感が否めない中、限られた状況の中で、多少なりとも新たな取り組みも展開しようとしているというのが私の率直な印象でございます。その一方で、これまでの県政運営に関しての総括が十分に伝わってこなかったとも感じております。
具体的には、平成19年からこれまでを振り返って、人口流出、県民所得の低迷、雇用不足、地域医療の崩壊などの危機的な県政諸課題に対し着実に成果を上げてきたとし、また、大震災からの復興計画の第2期で掲げた事業はおおむね着実に進んでいると評価し、今後は、第3期の準備とその実行を視野に取り組んでいくと述べております。さらに、人口減少対策についても1期目から取り組んでおり、その成果を土台に、さらに総合的に取り組んでいくと力強く主張しております。
いずれも、その成果を積極的に評価されておりますが、これまでの県議会における議論などを振り返れば、この評価は、少し主観的過ぎるのではないかと感じたところであります。果たして、広く県民の心に響くのであろうかといった疑問も拭えません。今後、復興とふるさと振興を進めるさまざまな取り組みを将来に向かって大きな成果に結びつけていくためには、これまでの取り組みから得られた課題をしっかりと見きわめ、これを克服していくということも重要であると考えております。
知事は、これまでの2期8年にわたる県政運営をどのように総括されているのでしょうか。全ての取り組みが順調だったと考えているのでしょうか。これまでの県政運営をどのように評価されているのか、お尋ねしたいと思います。
次に、希望マニフェストの前段で知事は、地元の底力とさまざまなつながりの力が高まり、本格復興という正念場の向こうに、大きな希望が見えています。岩手では地域を守り、未来を切り開く取り組みが力強く進んでいますと述べられております。
知事におかれましては、これまでの成果と反省を踏まえて、これからの4年間、どのような大きな希望に向かって進んでいこうとしているのでしょうか。そして、現在、どのような取り組みを力強く進めることで、その希望が実現していくとお考えなのでしょうか。3期目の4年間に挑むに当たっての決意をあわせてお伺いしたいと思います。
今般の知事演述では、三つの計画を掲げられております。暮らしの再建、なりわいの再生、安全の確保を3原則とする復興計画。岩手で働く、岩手で育てる、岩手で暮らすを三つの柱としたふるさと振興総合戦略。そして、今後、県民計画第3期アクションプランを策定するとしております。いわて県民計画は長期ビジョンの中で、ゆたかさ、つながり、ひとを三つの視点として示されております。県民にとって中核となる計画が三つの計画となるわけであり、これらの計画のそれぞれの考え方や盛り込まれている施策の連動性等について、わかりやすく県民に伝えていく必要があるのではと考えております。特にも、ふるさと振興総合戦略といわて県民計画については、相互の計画に盛り込まれる方向性や具体的な取り組みは、基本的に同じものになるのではないかとも考えております。相互の計画の関連性や連動性をどのように確保していくのか、お示し願いたいと思います。
また、知事は、新たに行政評価の指標に幸福度を取り入れようとしております。一方で、県が示した岩手県人口ビジョン(案)では、生きにくさ、学びにくさ、働きにくさ、結婚しにくさを、それぞれ生きやすさなどに転換していくとの方向性も示されております。
これまで長く国会議員を務め、この8年間県政をリードしてきた達増知事は、岩手県がそんなに生にくい、暮らしにくい県だと本当に思っているのでしょうか。県政評価と矛盾しているような気もしております。
そもそも、知事は、現在の県民の幸福度が低いとお考えなのでしょうか。どのような状態を幸福度が高いと考えているのでしょうか。あわせて、幸福度をあらわす指標としては、具体的にどのような指標を想定しておられるのか、お示し願いたいと思います。
次に、県財政についてお尋ねいたします。
県では、昨年9月、平成26年度から平成28年度までの中期財政見通しを公表しており、平成27年度には収支ギャップが236億円生じ、平成27年度末の基金残高が297億円、平成28年度には収支ギャップが272億円、平成28年度末には取り崩すべき財源対策基金も枯渇すると見通しております。このような財源の枯渇が見込まれる状況の中で、希望マニフェストや知事演述に盛り込んだ事業を進めていく財源を確保するためには、国の協力をどのようにして得ていくのかということが重要になると考えますが、現在における収支ギャップの見込み、歳入歳出ギャップを埋める具体的な方策とその考え方についてお尋ねいたします。
次に、補助金の適正化についてお尋ねいたします。
先般、知事は、補助金適正化条例の議会提案を見送る旨の表明をされたところであります。この条例については、決算不認定の主因となった緊急雇用創出事業補助金に係る不正事案の発生を踏まえ、その再発防止策として条例制定の検討をしていたものであると認識しております。この条例の必要性について、我が会派では、昨年12月の常任委員会以降、屋上屋になるのではないかなど、その必要性をただしてきたところでありますが、知事みずから、本年の予算特別委員会において、本条例が制定されれば、より一層適切な補助金執行につながり、不正事案の発生防止が図られることが期待できるなどと非常に前向きな考えを示されていたところであります。こうした中で、今般、補助金適正化条例の議会提案を見送ることとしたその具体的な理由についてお尋ねしたいと思います。
次に、震災復興についてお尋ねいたします。
東日本大震災の発生からまもなく4年7カ月が経過いたします。改めて犠牲になられた方々の御冥福をお祈りし、被災された皆様方に心からお見舞いを申し上げます。
初めに、恒久住宅への移転支援についてお尋ねいたします。
本県の被災地では今なお2万人近くの方々が応急仮設住宅で暮らしており、こうした方々の生活は、建物の老朽化も進み、さらにその生活環境の悪化が進んでおります。知事演述でも触れられているように、住宅の確保を図ることが急務であり、一日も早い災害公営住宅の整備が望まれるところであります。
一方で、震災からの時間の経過とともに、災害公営住宅に住むのか、持ち家にするのかといった考え方にも変化が生じているものと考えております。的確な意向把握が重要であると思われます。今後、応急仮設住宅から災害公営住宅や持ち家に移転していく方々に対してどのように支援しようとしているのかお尋ねしたいと思います。
次に、被災地のなりわいの再生の中心となる水産業の復興について質問させていただきます。
県が掲げる復興計画においては、平成26年度から平成28年度までの本格復興期間も折り返し地点を迎えており、なりわいの再生に向けて、沿岸地域の基幹産業である水産業の復興が最重要であると考えます。
本県水産業に関しましては、漁港の復旧もおおむね進み、そして漁船も目標どおり確保されております。県内魚市場の水揚げ量も震災前の8割まで回復しております。しかしながら、本県の基幹魚種であるサケの漁獲量は震災前の水準を大きく下回り、全国一の生産量を誇るワカメの生産量も震災前の約7割にとどまるなど、今後のさらなる生産の回復が待たれているところであります。また、水産加工業に関しましては、被災した事業所の多くが事業を再開したものの、販路を失ったことなどにより業績の回復が進んでいない事業者が多いとされております。知事は、本県水産業の復興の現状をどのように捉え、今後、水産業の本格復興に向けてどのように取り組んでいくのかお尋ねしたいと思います。
本県の漁業就業者数は、震災前からの高齢化の影響と震災による廃業等の影響により、平成20年に9、948人であったものが、平成25年には6、289人と震災前後で63%まで減少しております。本県は、養殖業や採介藻漁業などの沿岸漁業が盛んな水産県でありますが、これらの漁業の大半は個人での経営が主となっていることから、担い手が確保されなければ、復旧した漁船や養殖施設を用いた漁業生産の回復や漁村の活性化が思うように進まないものと考えております。県では、漁業の担い手確保に向けてどのような取り組みを進めていくのかお尋ねします。
本県の水産業に関しましては、震災によって失われた販路の回復が課題とされているところであり、また、漁業の担い手を確保、育成していくためには、生産者の所得を向上し、魅力ある産業としていくことが必要と考えます。そのため、水産加工等によって水産物の付加価値を高めるとともに、輸出の促進など新たな販路の確保が重要と考えます。今後、輸出の拡大を含め、水産物の販路の回復、拡大をどのように図っていくのかお尋ねしたいと思います。
次に、いじめ問題についてお尋ねいたします。
全国各地で、いじめを要因としてみずから命を絶つ子供が後を絶ちません。本県においても、先ほどの高橋元議員の質問にもございましたが、昨年5月に滝沢市で、本年7月には矢巾町で中学生が相次いでみずからの命を絶つ事案が発生しており、二度と同様の事案が生じることのないようしっかりとした対策を講じ、児童生徒が安心して学校生活を過ごすことができる環境を確保しなければなりません。
しかしながら、いじめの実態については、本県でそうであったように、再調査をすればするほどその件数は増加し、学校内では担任のみが問題を抱え込んで、組織として対応ができていないことが明らかになっております。知事は、こうしたいじめ問題の実態の把握さえできかねている現状をどのように受けとめているのかお尋ねいたします。
今定例会においては、岩手県いじめ問題対策連絡協議会、岩手県いじめ問題対策委員会及び岩手県いじめ再調査委員会をそれぞれ設置する条例案が提出されております。また、昨年、改正地教行法(地方教育行政の組織及び運営に関する法律)が施行され、総合教育会議の設置や教育大綱の策定など、知事が教育行政にリーダーシップを発揮する仕組みが構築されたところであります。こうした状況を踏まえて、今後、知事はいじめ対策にどのように立ち向かおうとしているのか、具体的なお考えをお尋ねしたいと思います。
次に、地域医療と人口減少についてお尋ねいたします。
〔議長退席、副議長着席〕
本県の人口10万人当たりの医師数は平成24年12月現在で199人となっており、全国平均の237人を大きく下回り、全国で40番目の低さとなっております。また、県北・沿岸部ではこの県平均さえも大きく下回っており、特にも産婦人科や小児科の医師不足が深刻であります。そして、こうした環境が若者や女性の地域からの流出に拍車をかけている要因ともなっております。まず、このような地域医療、とりわけ周産期医療や小児科医療を取り巻く現状をどのように認識し、どのような方策で改善していこうとしているのかお尋ねしたいと思います。
岩手医科大学に設けた地域枠奨学生の第1期生が本年度末に初期臨床研修を修了し、来年度から本格的に県内の医療機関に配置されます。これまでの医師養成の成果の見込みとあわせてお示しいただきたいと思います。
知事は人口減少といった危機的状況への対応策をさまざま考えておられますが、急には人口減少に歯どめをかけることはできません。特にも、積極的な人口減少への対応以前に、県央からも遠く、時間的、空間的に困難を強いられ、安心して子供が出産できない地域にそもそもどのような人口減少対策が有効なのでしょうか。県内の周辺部、特にも沿岸北部地域における産科医の不足は日々深刻さが増してきております。人口減少対策以前に、知事は、安心して出産できるといった当たり前の医療が提供されていない現実をどのように考えているのでしょうか。全国的な産科医不足では答えになりません。私は、どの地域にどういった医師を配置すべきか、常識的な視点を持てばその答えはおのずと出てくると考えております。そうした中で、僻地ほど県民の県立病院に対する期待は恐らく知事が想像する以上に高いものがあり、あたかも生殺与奪の力を持っているかのように捉えられていると言っても過言ではありません。
そこで改めてお尋ねします。知事は県立病院の役割をどのように考え、今後どのように運営されていくお考えなのかお尋ねします。また、医師の適正配置について、知事はどのように考えているのかあわせてお聞かせ願いたいと思います。
最後に、知事の政治姿勢について何点か質問させていただきます。
初めに、安全保障関連法案と県政運営のかかわりについてお尋ねしたいと思います。
去る8月17日付の知事のブログで、結集し始めた新たな勢力と題し、復興とふるさと振興による希望郷いわての実現のため、そして、安保法案に反対する県民、ひいては国民の多数をつなぐため、5野党のトップが結集します。岩手を守り、日本を変える新しい時代が始まりますと述べ、岩手県内に満ち満ちたエネルギーが希望の矢となって南イコール東京に向かって放たれます。8月20日が新しい時代が始まる記念すべき日となるように、どうぞよろしくお願いしますと記しております。また、9月22日にも安保関連法案の問題点と題してブログを更新されております。その説明には、安保関連法案反対といった知事の並々ならぬ思いを感じるとともに、やはり知事は国政の問題に深い見識と強い関心を持っているのだなと感慨を新たにいたしました。知事が安保関連法案に反対するといった個人的な政治判断に何ら異論を差し挟むつもりはありませんが、確認しておきたいことがございます。安保関連法案について、知事が反対の姿勢を必要以上に強調することと県政運営とどのようなかかわりがあると考えているのかお示し願いたいと思います。
また、知事は、日ごろから復興とはふるさとを消滅させないことと述べられておりますが、東京に向かって放たれた希望の矢とは何を意味するのでしょうか。また、新しい時代とはどのような時代なのでしょうか。記念すべき日になるようにとはどういう意味なのでしょうか、お示し願いたいと思います。
次に、白紙委任の考え方についてお尋ねします。
8月17日の定例記者会見において、県知事選に関し、知事候補を擁立しないのであれば達増候補予定者を支持するというスタンスをとるのか、知事のありようについては白紙委任、今後4年間については白紙委任という意味で誰も推さないというスタンスをとるのかとか、それぞれ説明責任があるのだと思うと述べられております。また、報道によりますと、8月8日の知事の後援会事務所開きの後の記者会見で、知事を支援する県議が、自民党が候補者を擁立しなければ、達増氏への白紙委任に等しい。今後4年、自民党は達増県政を批判する資格はないと言い切ったと話したと掲載されておりました。知事選を政党とのかかわりのみで捉え、議員個々の権利さえも否定するような、二元代表制という地方自治の基本を全く理解しない非常識な発言にも驚きましたが、その延長線上での見解ともとれるこうした知事の発言に大きな疑問を感じたところであります。
そこでお尋ねいたしますが、知事はどのような考えで白紙委任という言葉を使われたのでしょうか。また、知事のありようについて、今後4年間について白紙委任という考え方は、憲法で定める二元代表制を否定するものだと考えます。知事はどのようにお考えでしょうか。
これからの4年間、本格復興、人口減少問題への対応、完全国体の開催、ILC誘致など、本県が対応しなければならない大きな課題が山積しております。これらの課題を解決していくために県内の市町村や国の協力は不可欠でありますが、知事演述を見る限り、国、市町村との連携への積極的な思いが見受けられないように感じました。特に国とのかかわりについては、課題の解決に向け国に働きかけを強めるという程度の記述でありましたが、先ほど述べた課題は全て国との連携があって初めて実現するものと考えます。被災地の国民健康保険の医療費窓口負担等の免除についても提案されておりますけれども、その財源は、県の負担部分を含めて実際は全て国からの交付金から成る復興基金で成り立っているものであり、国とのかかわりは、善悪とか好き嫌いではかれるものではありません。
次に、知事の政権交代に関する姿勢、発言についてお尋ねしたいと思います。
知事は、政権交代を岩手から目指そうとしているのかのような姿勢、そのこと自体は政治家達増拓也氏自身の政治信条として何ら異を唱えるものではありません。しかしながら、言うまでもなく政治家達増拓也氏は岩手県知事であります。知事として必要以上に政権交代を主張するといった現在の政治姿勢が国とのかかわりで県政運営に及ぼすであろう影響をどのように考えているのかお尋ねしたいと思います。
最後に、知事演述の結びの中で、東京一極集中型の政策は、地方消滅、ひいては日本消滅に行き着くのではないかとの危機感が広がる中、今求められているのは、地方が主役となるような社会経済政策を地方主導で進めていくことと述べております。これが実現すれば大変すばらしいと私も思っております。
そこで、改めてその意味するところ、そして、どうすればこういった社会経済政策を実現していくのか知事の考えをお聞かせ願いたいと思います。
時間が残りましたが、以上で自由民主クラブを代表しての質問を終わらせていただきます。御清聴まことにありがとうございました。(拍手)
〔知事達増拓也君登壇〕
〇知事(達増拓也君) 嵯峨壱朗議員の御質問にお答え申し上げます。
まず、県政運営2期8年の評価についてでありますが、平成19年に知事に就任して以来、県民一人一人が希望を持ち、希望あふれる岩手の実現を目指して県政執行に当たってまいりましたが、平成23年3月に発生した東日本大震災津波以降は、その思いに加えて、一日でも早い復興を願う被災者の皆さんの思いに応えることを常に念頭に置いて県政の推進に努めてまいりました。
取り組みの成果については、毎年度、政策評価に明らかにしているところでありますが、求人不足の解消や1人当たりの県民所得の4年連続の向上、人口の社会減の平成25年までの6年連続縮小など、本県が直面する重要課題について着実に成果が出ているところであります。一方、有効求人倍率が1倍を超えているにもかかわらず、昨年は人口の社会減が拡大に転ずるなど、新たな施策が求められる課題も顕在化しておりまして、今後4年間におきましては、こうした課題解決に向けて適切に対応していく必要があると考えております。
次に、3期目4年間に挑む決意でありますが、私は、今回の選挙に当たって、復興とふるさと振興を進め、希望郷いわてを実現することをマニフェストに掲げました。東日本大震災津波からの復興事業は、海岸保全施設や災害公営住宅の整備など、社会資本の復旧、復興のピークを迎えています。今後も、こうした復興の量とあわせて、心と体の健康の問題や将来への生活の不安など、被災者の皆さん一人一人が抱える課題に寄り添った支援や、地域に根差したコミュニティーの再生など、復興の質の向上を一層進めてまいります。
また、全国的な人口減少が地方消滅、ひいては日本消滅に至るのではないかという危機感を背景に、国においては、昨年、まち・ひと・しごと創生総合戦略を策定したわけでありますが、そうした国の動きにも呼応して、岩手におきましても今年度を初年度とするふるさと振興総合戦略を策定し、推進していくこととしております。岩手で働く、岩手で育てる、岩手で暮らすというこの三つのふるさと振興の柱に沿った施策を着実に実現して、元気なふるさとを次世代に引き継いでいきたいと思います。
東日本大震災津波からの復旧、復興、そしてふるさと振興は岩手にとって先延ばしが許されない喫緊の課題でありますので、引き続き、これまでの復興、人口減少対策の取り組みの成果を土台に、県の総力を挙げて強力に推進し、希望郷いわての実現を目指してまいります。
次に、ふるさと振興総合戦略といわて県民計画の関連性、連動性についてでありますが、いわて県民計画は、県政全般にわたる政策や施策の基本的な方向を総合的かつ体系的に定めている計画であるのに対しまして、ふるさと振興総合戦略は、国のまち・ひと・しごと創生総合戦略に対応して、人口減少に歯どめをかけることを目的として策定するものであります。この総合戦略は、県政全般を対象としたいわて県民計画のうち、関係する分野を展開するための計画であり、今後策定するいわて県民計画第3期アクションプランに包含されるものであります。第3期アクションプランの策定に当たりましては、ふるさと振興総合戦略に掲げる施策も含めて、今後4年間に取り組む施策の工程表を示すとともに、総合戦略と共通の指標によって進捗管理を行うこととし、二つの計画を一体的に推進し、ふるさと振興を軌道に乗せていきたいと思います。
次に、幸福度についてでありますが、まず、生きにくさについては、全国的な人口減少問題の背景であると考えておりまして、それを一つ一つ丁寧に解消していくことで希望を持つことができる暮らしの実現を図っていきたいと考えています。
幸福度については、幸福感の度合いをアンケートにより調査する主観的指標や、幸福度に関連する統計データを用いた客観的指標の設定などが考えられるところでありますが、今後、有識者等の意見もお聞きしながら検討を進めていきたいと考えています。したがいまして、現在の県民の幸福度などについては申し上げることは困難ですが、今後、本県において幸福度指標を導入することにより明らかにしていきたいと考えております。
次に、県財政についてでありますが、中期財政見通しによりますと、平成28年度当初予算では272億円の収支ギャップが見込まれており、今後も厳しい財政状況が続くことが見込まれますが、東日本大震災津波からの復旧、復興については決しておくらせてはならず、また、財源が限られる中にあっても、希望郷いわての実現に向けた施策を着実に推進する必要があります。これらの財源確保については毎年度の予算編成過程において具体的に検討していくこととなりますが、歳入面では、地方創生のための新型交付金等を有効活用するほか、県税徴収の強化や未利用資産の売却など、あらゆる手法によって歳入の確保に努めるとともに、国に対し、地方一般財源総額の確保等について引き続き要望してまいります。また、歳出面では、事業効果や効率性等を踏まえて、事務事業を1件ごとに精査して、一層の選択と集中を図ることによって限られた財源の重点的かつ効率的な活用に努めてまいります。
次に、補助金の交付等に関する条例についてでありますが、補助金については適正執行の確保が必要であり、これまで、新たな組織体制の整備や事務処理マニュアルの整備等を行いましたほか、今年度におきましても、補助金交付要綱等における立入検査規定の統一、補助金等審査委員会の設置、内部考査を復活させるなど、さまざまな補助金等の適正執行対策を講じてきているところであります。こうした対策の成果も見ながら、引き続き、補助金の執行の適正化という目的の達成のために、条例の制定も含めてあらゆる方策について検討してまいります。
次に、恒久住宅への移行支援についてでありますが、被災された方々が抱える課題はそれぞれ異なりますことから、一人一人丁寧に寄り添いながら、一日も早く安心して暮らすことができるように支援することが何よりも重要であります。このため、県では、市町村に対して被災者の方々の住まいの意向把握の徹底を要請していますほか、住宅再建相談会の開催や、生活設計の専門家を派遣して個別相談を行うなどの支援をしているところでありまして、さらに、本県独自の施策として、市町村と共同で持ち家再建に対する補助を行っているところであります。
今後も、被災者の方々の意向を丁寧に把握して、一日も早く全ての方々が恒久的な住宅で新たな生活を送ることができるように支援をしてまいります。
次に、水産業の本格復興に向けた取り組みについてでありますが、水産業は沿岸地域の重要な基幹産業であり、漁業生産を一刻も早く再開して、漁業と流通、加工業を一体的に再生する必要がありますことから、これまで、生産基盤の復旧整備や漁業活動の支援に全力で取り組んでまいりました。その結果、産地魚市場の水揚げ量は震災前の約8割、水揚げ金額は震災前の水準まで回復したほか、ほぼ全ての漁港で水産物の陸揚げや漁船の安全係留が可能になるなど、本格復興に向けた取り組みが着実に進んでおります。
今後は、養殖業等のさらなる生産の増大を図るために、養殖作業の効率化や経営規模の拡大、サケ資源の早期回復に向けた確実な稚魚の放流などの取り組みを支援してまいります。また、水産加工業におきましては、衛生品質管理の徹底を図るとともに、商品力や販売力の強化などの取り組みを支援して、業績の回復、向上に努めてまいります。さらに、水産物の陸揚げ作業等の効率化に向けた浮き桟橋等の整備や、漁港における防災、減災を図るための防波堤、岸壁の耐震、耐津波強化等の整備を一層進めるなど、将来にわたって持続可能な、意欲と希望を持てる水産業の復興に邁進してまいります。
次に、漁業の担い手の確保についてでありますが、県では、震災後、漁業協同組合を核とした漁業、養殖業の構築を図るために、漁業者の皆さんの要望に基づいて漁船や養殖施設などの生産基盤の整備を進めるとともに、エゾイシカゲガイの養殖やアワビの種苗放流などへの支援を行ってまいりました。また、漁協の戦略、戦術となる地域再生営漁計画の策定を支援するとともに、漁業就業フェアの県内での開催や地域漁業の情報発信、市町村と連携した新規就業者の受け入れ体制の構築などを進めてまいりました。
県では、今年度中に新たな漁業担い手育成ビジョンを策定することとしておりまして、地域再生営漁計画に基づく熟練漁業者等による技術指導や住居のあっせんなど、総合的な担い手確保、育成の取り組みを支援してまいります。
次に、水産物の販路の拡大、回復についてでありますが、県では、震災の影響で失われた水産物の販路の回復、拡大を図るため、商談会や産地見学会などを通じた量販店、飲食店等とのマッチングや、生産者と民間企業との連携による商品開発等の支援を行っています。また、水産物の輸出拡大に向けては、経済成長著しく、日本食への関心が高まるアジア地域等をターゲットに、輸出コーディネーターを通じたマッチング機会の創出や海外量販店でのフェア開催などに取り組んでおります。
今後とも、関係機関、団体等と連携しながらこうした取り組みを積み重ね、国内外への本県水産物の販路の回復、拡大を図ってまいります。
次に、いじめの現状認識についてでありますが、今般の矢巾町事案では、当該校におけるいじめの認知に当たって、学校全体としての情報共有や組織的な対応に課題があったことが明らかになっております。いじめの認知については、矢巾町における事案をきっかけに、全国のそれぞれの自治体、学校ごとの捉え方に差があるのではないかとの認識のもとに、現在、文部科学省において平成26年度調査の再調査が行われていると承知しております。児童生徒に安全・安心な学校生活を送ってもらうためには、いじめはどの子供にも、どの学校でも起こり得るという考え方を校内で共有するとともに、教職員と保護者、地域との連携を図りながら、個々のいじめをしっかりと認知して、その解決に取り組むことが重要であると考えております。
次に、今後の対応についてでありますが、7月14日に開催しました総合教育会議における協議を踏まえて、二度と痛ましい事案を発生させないために、県としてできる限りの努力をしていくこととしております。
具体的には、各学校のいじめ防止基本方針の実効性を向上させる取り組みや、教職員研修の充実、いじめ防止の啓発活動の強化などに取り組んでいくこととしております。
また、今議会に提案しています条例に基づいて、第三者による調査機関である岩手県いじめ問題対策委員会と岩手県いじめ再調査委員会を常設化することによって、重大事案などに迅速かつ機動的に対応してまいりたいと考えております。
このような取り組みを通じまして、痛ましい事案の再発防止に向けて粘り強く取り組んでまいります。
次に、医師不足についてでありますが、県内の人口10万人当たりの医師数は、盛岡圏域では全国平均を上回っているものの、県北・沿岸地域などその他の圏域では下回っており、各地域において安定的に良質な医療を提供していく上で、産婦人科や小児科を含む全ての診療科での医師不足と地域偏在への対応が最大の課題であると認識しております。県では、これまで、医師の絶対数の確保のため、即戦力医師の招聘や奨学金による医師の養成などに取り組んでまいりました。
平成20年度に創設しましたいわゆる地域枠を含む三つの奨学金制度の現在の貸付枠は毎年度55名で、これまでに351名に貸与しておりまして、これらの制度を活用した医師については、来年度から、順次、地域の医療機関等で勤務することとなります。
現在、中小医療機関への一定期間の勤務を含む配置基本ルールに基づいて、奨学金制度の運用主体と大学で組織する配置調整会議において、専門医資格の取得など、奨学金養成医師のキャリア形成にも配慮しながら、地域偏在の解消に向けて適切な配置調整を進めているところです。
また、産科や小児科の限られた医療資源を効率的に活用するために、当直医等が専門医の助言を受けながら診療できる小児医療遠隔支援システムを運用しているほか、地域における安全・安心な出産を支援する超音波画像伝送システムの導入など、ICTを活用した医療連携を進めてまいります。
次に、県立病院についてでありますが、地域における医療提供体制を維持していくことは、公的医療機関であります県立病院の役割であると認識しており、医師不足等の限られた医療資源の中で、基幹病院においては、二次救急や高度・専門医療等の地域住民の生命にかかわる医療を中心に担い、地域病院及び地域診療センターにおいては、初期救急やプライマリーケアなど地域住民に身近な医療を担うこととしています。
今後におきましても、現行の20病院、6地域診療センターの体制を基本として、地域の医療ニーズを十分に踏まえながら、県立病院のみならず、福祉、介護を含めた地域と連携を進めて、県民に良質な医療を持続的に提供していきたいと考えています。
また、医師の適正な配置については、これまで関係大学に対して繰り返し医師の派遣を要請するとともに、臨床研修医の確保などに取り組んできたところでありまして、さらに来年度からは、奨学金による養成医師の計画的な配置が始まる見通しとなっています。
現時点では、全ての県立病院に必要な医師を直ちに配置することは困難な状況にありますが、基幹病院に医師を重点的に配置し、県立病院相互の連携や応援体制を強化することにより、県立病院間の機能分担等を図りながら、地域に必要な医療提供体制を確保してまいります。
次に、安全保障関連法案と県政運営の関係についてでありますが、安全保障関連法の関係で、県として事務の執行が求められているものは今のところないと理解しております。一方、マスコミの調査では、国民の多くが今般の安全保障法制に反対であるとの結果も出ており、また、岩手県議会においても、安全保障関連法の廃止を求める意見書が可決されたところであります。
県民が高い関心を有する問題でありますことから、私も意見を求められた場合を含めて、真摯に発言してまいりたいと考えています。
次に、私の発言の真意についてでありますが、東京に向かって放たれた希望の矢とは、復興とふるさと振興による希望郷いわてを実現するため、また、安全保障関連法案に反対する意思を示すため、岩手県内に満ち満ちたエネルギーが希望の矢となって、岩手県民だけではなく、国民の多数にもつながっていくようにという思いを述べたものであります。また、8月20日の知事選告示日を新しい時代が始まる記念すべき日になるようにという趣旨で、このように申し上げたものであります。
次に、白紙委任についてでありますが、今般の知事選は結果として無投票となりましたが、私は、新人候補の立候補断念という事態に対して、それが白紙委任という意味なのかそうではないのか、関係者自身が説明することが適当だという趣旨で申し上げたものでありますので、その場合、白紙委任の意味についても、白紙委任する当事者あるいは白紙委任しない当事者が説明することが適当であると考えております。
次に、政権交代の主張についてでありますが、私は、現在、必要以上に政権交代を主張しているつもりはありませんが、一般論で申し上げますと、地方自治体の首長の政治姿勢が、国とのかかわりにおいて何らかの有利、不利につながるとすれば、それは、その国の政権が全体主義的になっている危険性を示すものであり、その政権の交代の必要性が客観的にも増すものと考えます。
次に、地方主導の社会経済政策についてでありますが、県では、今般の総合戦略の策定に当たり、産学官や金融、労働、言論の分野、また、地域づくりを担う住民代表の方々からなる岩手県ふるさと振興有識者会議を立ち上げて、これまで活発な議論を重ねてまいりました。また、県の総合計画審議会やいわて未来づくり機構、県の各種審議会を通じて、岩手の各界を代表する方々に広く御議論いただきましたほか、市町村や県民の方々からも、多くの貴重な御意見が寄せられて、総合戦略の策定段階から地方が主役となる取り組みを進めてきたものであります。
今後の実行に当たりましても、総合戦略に掲げるビジョンや施策を県民全体で共有して、企業や団体、NPO、そして県民の方々それぞれが主体的に取り組む県民総参加のふるさと振興を進めてまいりたいと思います。
〇副議長(工藤大輔君) この際、暫時休憩いたします。
午後2時42分 休 憩
出席議員(47名)
2  番 臼 澤   勉 君
3  番 千 葉 絢 子 君
4  番 ハクセル美穂子 君
5  番 菅野 ひろのり 君
6  番 柳 村   一 君
7  番 阿 部 盛 重 君
8  番 佐 藤 ケイ子 君
9  番 佐々木 宣 和 君
10  番 川 村 伸 浩 君
11  番 田 村 勝 則 君
12  番 工 藤   誠 君
13  番 高 田 一 郎 君
14  番 吉 田 敬 子 君
15  番 佐々木   努 君
16  番 千 葉   進 君
17  番 佐々木 朋 和 君
18  番 名須川   晋 君
19  番 軽 石 義 則 君
20  番 神 崎 浩 之 君
21  番 城内 よしひこ 君
22  番 福 井 せいじ 君
23  番 佐々木 茂 光 君
24  番 高 橋 孝 眞 君
25  番 木 村 幸 弘 君
26  番 小 西 和 子 君
27  番 工 藤 勝 博 君
28  番 高 橋 但 馬 君
29  番 小 野   共 君
30  番 郷右近   浩 君
31  番 高 橋   元 君
32  番 関 根 敏 伸 君
33  番 岩 崎 友 一 君
34  番 嵯 峨 壱 朗 君
35  番 中 平   均 君
36  番 五日市   王 君
37  番 斉 藤   信 君
38  番 小野寺   好 君
39  番 飯 澤   匡 君
40  番 渡 辺 幸 貫 君
41  番 佐々木 順 一 君
42  番 田 村   誠 君
43  番 伊 藤 勢 至 君
44  番 工 藤 勝 子 君
45  番 樋 下 正 信 君
46  番 柳 村 岩 見 君
47  番 千 葉   伝 君
48  番 工 藤 大 輔 君
欠席議員(1名)
1  番 千 田 美津子 君
説明のため出席した者
休憩前に同じ
職務のため議場に出席した事務局職員
休憩前に同じ
午後3時2分 再開
〇副議長(工藤大輔君) 休憩前に引き続き会議を開きます。
日程第1、一般質問を継続いたします。飯澤匡君。
〔39番飯澤匡君登壇〕(拍手)

前へ 次へ