平成27年9月定例会 第2回岩手県議会定例会会議録

前へ 次へ

〇31番(高橋元君) 改革岩手の高橋元であります。会派を代表し、質問いたします。
まず、私たち改革岩手は、民主、生活両党、社民系無所属並びに改革系無所属の超党派議員で構成する希望郷いわてを実現する会に加入する会員を中心に結集し、四国4県に匹敵する広大な県土と、その大半を山間地が占めるという地域特色の中にあって、少子化や人口流出に伴う人口減少、高齢化の進行、1次産業中心の県民経済構造等を起因とする他県にない事象、課題に鑑み、到来する岩手の未来を想像し、新しい地域社会や県民生活を創造して大胆に県政改革を進めていこうと、改選後の9月15日に結成いたしました。改革系の幅広い政策集団でありますので、今後ともよろしくお願い申し上げます。
東日本大震災津波災害から間もなく4年7カ月となります。改めまして亡くなられました方々に哀悼の意を表しますとともに、今なお応急仮設住宅やみなし仮設住宅で不自由な生活を送っておられる皆様に心からお見舞いを申し上げます。復興計画期間内での復興を議会の立場としてもなし遂げてまいりたいと取り組みを強化してまいります。
また、さきの関東・東北豪雨災害で亡くなられた方々の御冥福を祈り、被災されました皆様に心からお見舞いを申し上げます。一日も早い復旧、復興と災害前の平穏な生活を取り戻されることをお祈りいたします。
通告しておりました項目について順次質問いたします。
質問に入る前に、達増知事の3選をお祝い申し上げます。これまでの2期8年間、さまざまな県政課題に真正面から取り組み、特にも、2期目の4年間は、東日本大震災による未曽有の大災害に迅速な救援、災害復旧、復興に昼夜たがわず取り組んでこられましたことに敬意を表しますとともに、新任期4年間のさらなる職務精励に御期待を申し上げます。
10月2日の本会議において、新任期を迎えての所信演述がありました。知事演述を受けて、何点か御質問いたします。
まず初めに、達増知事の新任期における県政運営について伺います。
知事は、新任期に向け希望マニフェスト2015-2019を策定し、復興とふるさと振興を掲げ、希望が持てる暮らし、希望が持てる仕事、希望が持てる地域を実現するとして8項目の取り組みを示しましたが、これまでの8年間の取り組みについてどのように進化させようとお考えか伺います。
次に、これからの4年間は、県民計画の最終期間であるとともに、その先の岩手発展のための新計画を策定する準備期間ともなる重要な4年間であるとしております。人口減少、高齢化、財源枯渇、広大な県土など、克服できそうにない大きな課題とどう向き合うか、希望郷いわてを実現するキーワードは何か、知事の所感を伺います。
次に、25年先の2040年、人口100万人以上を目標に岩手県ふるさと振興総合戦略の最終案が示されました。しかし、何かしらわくわくするような、核となる壮大なプロジェクトとそのロードマップの作成等の意向を期待しておりましたが、総仕上げの4年間ということなのか、これまでの取り組みの延長線との感を抱き、少し残念な思いでありました。
そこで伺いますが、これからの岩手の経済的発展の機動力となる技術革新―イノベーションを何に求めていこうとしているのか、知事の考える岩手発展の核は何かを伺います。
私個人的には、希望郷いわての大きな柱として、ILC(国際リニアコライダー)と海洋研究の二つの国際科学技術研究拠点形成にあると思っております。ILC誘致に向けてさらなる運動、海洋に関する国際的研究拠点形成―海洋エネルギー、海洋研究拠点、洋上ウインドファームに県として大胆な戦略目標を立て、広く内外から投資と人材を誘導し、大きく目に見える取り組み、活動を展開する時期ではないでしょうか。知事の思い、県としての今後の取り組みを伺います。
二つ目の項目、東日本大震災津波からの復興について伺います。
東日本大震災津波災害から間もなく4年7カ月となります。第1期基盤復興3年間が経過し、第2期本格復興3年間と進み、本年はその中間年に当たり、陸前高田市の土砂運搬用巨大ベルトコンベヤー希望のかけ橋もその役割を終え、先月15日に稼動停止し、復興は新たなステージへと移行しました。また、宮古市田老地区では高台集団移転住宅地が完成し、分譲に向けた準備を進めていると聞きます。まちづくりの基礎、基盤整備が着々と進み、これから新たなまちが姿をあらわしてくるに違いないと心待ちしております。
一方、地権者の同意が進まず土地区画整理事業が進まない地域もあり、産業分野では、顧客、取引先の減少、または販路の喪失や業績の悪化、雇用、労働力の確保が困難と訴える事業者がふえてきている状況にあります。
8月に行われた平成27年度第2回いわて復興ウォッチャー調査によると、2月の前回調査に比較し、被災者の生活の回復度、地域経済の回復度における回復した、やや回復したの合計、及び災害に強い安全なまちづくりの達成度における達成した、やや達成したの合計はいずれも増加という結果にありますが、地域別に見ると、被害の大きかった沿岸南部の回復度は低い状況にあります。達増知事3期目は、復興基本計画の仕上げの期間でもあると思われます。安全の確保、暮らしの再建、なりわいの再生は、基本計画策定時の想定どおりに進んでいると判断しておられるのか、期間内である程度の仕上げが見込めるのか、知事の見通しを伺います。
次に、住宅再建についてでありますが、公営住宅は建設工事が進んできておりますが、戸建て住宅の再建は、住宅地の造成、ライフラインの整備などのおくれに加え、再建資金不足や工務店の空き待ち状態等により進んでおりません。
そこで伺いますが、公営住宅、戸建て住宅とも当初予定に比較してどう進展しているのか、住宅再建の進捗と今後の見通し、そして課題とその解決策をどう考えておられるのか伺います。
県が本年1月から2月にかけて内陸や県外に避難した全2、416世帯にアンケートを実施し、約8割の1、949人から回答を得たと聞きます。そのうち、避難先で既に生活再建をしていた世帯が30%、避難先の市町村でこれから再建しようと考えている世帯が27%、県内陸部に災害公営住宅を建設した場合、入居したい、入居を検討したいと回答した方が11%の205戸あったとのことであります。既に宮城県では360戸、福島県で214戸が被災者向けの災害公営住宅として内陸に計画されており、本県でも被災地以外での定住希望者の住宅支援の検討を始めたとのことでありますが、今後どのように進めていかれようとしているのか伺います。
次に、被災者支援でありますが、本県では昨年の自殺死亡率が全国ワースト1位という不名誉で悲しい状況となっておりますが、特にも、被災者支援を進めている中で、被災者の自殺についても懸念されるところであります。悲しみや孤独を募らせる被災者が多くおられ、被災者の生活支援のため生活支援相談員を配置し、自治会長や民生委員とともに被災者の見守りや話し相手、生活の支援を行っておりますが、災害公営住宅や応急仮設住宅の集約による転居などによって生活環境が変わり、コミュニケーションも崩れ、再構築に苦労しているとの話を聞きます。また、自治会長や民生委員など支援者の負担も増しており、被災者を支援する人のケアも必要とのことであります。生活支援相談員の不足もあるようで、拡充が望まれます。
県として、生活環境の変化や今後の生活への不安に伴うストレスなどによる被災者の心の健康状況をどう捉え、どのような心のケア対策を講じていこうとしているのか、また、生活支援相談員などの支援者への支援をどのように行っていくのか伺います。
第3項目、県北・沿岸振興について伺います。
県北・沿岸地域の人口減少は、県内他地域と比較して大きい状況にあります。その大きな要因として、産業の集積、特にも第2次産業の進出が少ないことによる県央部、県南部への就職流出にあると思われます。第1次産業が中心の地域であり、所得についても、平成24年度統計によれば、県央部285万円に対し県北217万円、沿岸234万円と大きな格差が現出しております。このような人口流出と所得格差をどのように捉え、その対応策をどう進めていくお考えか伺います。
我が国の高度成長期を牽引してきた工業地帯は、京浜工業地帯、中京工業地帯でありました。しかし、両工業地帯とも関東大震災や東海、東南海地震が想定され、港湾を含めて大規模災害が心配されております。そのような中、本県の沿岸部は、さきの大震災津波後における防潮堤、防波堤工事が急ピッチで進められており防災対策が万全なほか、三陸沿岸道路、釜石自動車道の全線開通間近であり、国道106号高規格化整備が加わり、JR山田線の鉄路復旧と交通インフラが充実してまいります。このインフラを有効に活用するためには、大規模な拠点港湾の整備が必要であると思います。仙台港と八戸港の間には大規模な拠点港がなく、今こそ京浜、中京地区の企業が災害時の機能移転先としてBCP―事業継続計画に組み込むような工業用地の整備や拠点港湾としての整備を提唱し、国や企業に勧めるべきと考えますが、知事の所感を伺います。
第4項目、就業人口不足対策について伺います。
2月定例会で就業人口減少対策について取り上げ、その対策を求めてきましたが、このほど岩手経済研究所が7月に実施した県内企業の人手不足に関するアンケート調査において、50.6%の企業が人手不足を感じていることが明らかになりました。不足傾向の業種は、医療、福祉が73.7%、運輸業64.3%、金属製品製造業62.5%、建設業55.9%、食料品製造業52.4%等となっているとのことであります。このアンケートにより人手不足の実態が初めて明らかとなり、深刻な状況が浮き彫りになったことを評価したいと思います。知事は、この実態をどのように捉え、今後どのような対策を検討していくお考えか再度伺います。
私の地元、北上職業安定所でのことし8月の有効求人倍率は2.13倍であり、特に誘致企業の集積が進む県南地域における求人倍率は平均して高い状況にあります。来春3月の高校卒業者の採用選考は9月16日に解禁され県内企業の入社試験がスタートいたしましたが、8月末現在の新規高卒者対象求人数は前年同期比453人増の4、306人となり、企業が計画どおりの人員を確保できるか難しい状況にあります。このような状況は少子化の影響で今後もっと深刻になるものと思われ、早晩県内企業が大きな悲鳴を上げることが予測され、県として早急にチームを編成して対応策を検討すべきと思いますが、どのように考えているのか伺います。
第5項目、いじめ防止対策について伺います。
県は、昨年4月に岩手県いじめ防止等のための基本的な方針を策定し、いじめ問題に取り組んできたと思いますが、昨年5月、滝沢市の中学校2年生の生徒の自殺があり、学校のいじめ認知が問題となりました。滝沢市教育委員会に第三者委員会が設置となり、その調査の結果いじめがあったと結論し、学校側の対応に課題があったと指摘されております。県教育委員会では、岩手県いじめ防止等のための基本的な方針に基づき、再発防止に万全を期して取り組んできたと思うところでありますが、本年、矢巾町の中学校2年生の男子生徒がいじめを苦に自殺しました。亡くなられた生徒の御冥福をお祈りいたしますとともに、悲しい出来事が再発したことは残念でなりません。このたびのいじめ問題による自殺を防ぐことができなかった要因をどう捉えているのか、昨年の滝沢市での中学生自殺の教訓がなぜ生かされなかったのか、再発防止に県としてどう取り組んでいくのか知事の所感を伺います。
今定例会に、いじめ対策を強化するために、県と県教育委員会は、調査結果を再検証できる再調査委員会の設置、関係機関が連携する対策連絡協議会の設置、県立学校の重大事態を調査する第三者委員会の設置の3条例を上程しました。県教育委員会は、昨年4月に策定した岩手県いじめ防止等のための基本的な方針により再発防止に取り組んできたと思いますが、県教育委員会のこれまでの取り組みの中でいじめ防止条例等は検討されておらず、県教育委員会が進めてきた基本的な方針だけではいじめによる自殺を防ぐことはできないと危惧しております。これまでの経過に対する知事の所感を伺います。
また、条例に基づくいじめ防止施策の展開に向けて、実効ある体制づくりも必要と思われますが、特命課長の配置等を含めどのように考えているのか伺います。加えて、県内市町村に県条例と同様な条例制定を求めていくのか、県としての考えも伺います。
第6項目、県立学校のICT教育について伺います。
国は、第2期教育振興基本計画に基づき、平成26年度から教育のIT化に向けた環境整備4か年計画を進めておりますが、教育のIT化に向けた環境整備として、教育用コンピューター、電子黒板、実物投影機、無線LAN整備、インターネット接続費用、教員の校務用コンピューター等が挙げられ、予算も単年度1、678億円、4年総額6、712億円の地方財政措置が講じられております。本県において、新年度から電子黒板の設置やタブレットの購入など、国の環境整備計画に基づく教育のICT化に向けた環境整備を積極的に行うべきと思いますが、どうでしょうか、伺います。
本県教育委員会は、平成27年度、県内各ブロックにおいて、県民との意見交換を進め、今年度中におおむね10年後を見据えた新たな高等学校再編計画(仮称)の策定を進めております。本県過疎地域において、少子化に伴い入学する生徒が減少する傾向が続き、小規模高校においては、各教科、科目等の専門性を有する教員を十分に確保できない事例が出てきており、教育機会の確保に格差が生じつつあるとともに、勤務する教職員も過重負担となっている現状にあります。2月定例会でも指摘しましたが、本県の地理的な要件や保護者の経済的な状況を考えるときに、過疎地における小規模校を一律基準に基づき統廃合するわけにはいかないと思われます。
このような状況を全てではないが解決する方策として、大規模校から教員を派遣しての出張授業やICTを活用しての遠隔授業が考えられます。文部科学省においても遠隔授業を授業として認める学校教育法施行規則の一部改正を行っており、このような動きを受け、遠隔授業等を本県でも早急に導入すべきと考えますが、知事の所見を伺います。
また、生徒の能力、適性、興味、関心、進路希望等が多様化する中で、より一層多様かつ高度な教育機会の確保が必要となってきており、加えて、MOOC―大規模公開オンライン授業や反転授業等ICTを活用した新たな取り組み、タブレット等を活用した新たな学習方法の導入が全国的に始まっております。本県県立学校におけるICT教育は、広大な県土を有する地域特性から、本来、他県に先駆けて取り組むべき課題でありますが、大きな予算を伴うこともあり、行政のトップリーダーの決断が必要でありました。しかし、教育委員会制度改革により総合教育会議が設置され、予算編成と執行権を持つ知事が教育に対してよりかかわりを持つことができるようになったことは意義深いものがあります。導入に当たって、まずは試験校を定め、ICT教育を展開して本県の将来の教育環境のあり方を調査すべきと思いますが、知事の所見を伺います。
第7項目、子供の貧困について伺います。
厚生労働省の推計によると、2012年の日本の子供の貧困率は16.3%ということであります。実に約6人に1人の子供が相対的貧困の状況にある家庭に育っているとのことであります。国において平成25年に子どもの貧困対策の推進に関する法律が制定され、本県では、いわての子どもを健やかに育む条例が本年7月より施行されております。現在、本県ではいわての子どもの貧困対策推進計画(仮称)が検討されておりますが、本県の子供の貧困を取り巻く状況や課題をどのように捉え、どのような対策を講じていこうとしているのか考えをお伺いします。
子供の貧困対策を進めるに当たっては、教育と福祉の連携が必要不可欠と考えられますが、いわて子どもの貧困対策推進計画(骨子案)におけるスクールソーシャルワーカーの平成25年度の配置人数は9人であり、わずか9人では対応できない状況にあります。人材育成を急ぐ必要があると思いますが、増員する計画はないか伺います。また、民生委員、児童委員による見守りや地域での支援体制をつくる必要があると思いますが、どうでしょうか、伺います。
第8項目、マイナンバー制度について伺います。
マイナンバー制度の個人番号通知が先週の5日から始まりましたが、被災地では住民票を移動しないまま応急仮設住宅などで暮らしている人も多数おり、カードを受け取らなければ、来年の1月以降、社会保障などの手続がおくれるおそれがあると言われます。県内の取り組み状況はどうなっているのか、県としての支援はどうなっているのか伺います。
日本年金機構の情報流出に衝撃を受けましたが、共同通信が行った調査では、サイバー攻撃の標的になった自治体が100に上ったとのことであります。総務省の調査でも、基幹系システムをインターネットから完全に分離している自治体は全体の1割に満たないということであります。県を初め、県内各自治体のセキュリティー状況はどのようなレベルにあるのか、また……
〇議長(田村誠君) 高橋元議員に申し上げます。申し合わせの時間を超過いたしておりますので、議事進行に御協力願います。
〇31番(高橋元君)(続) また、サイバー攻撃を受けた際に自治体が技術指導を受けられる体制整備が必要と思いますが、そのような検討をしておられるのか伺います。
今後において個人情報の部局内や自治体間での相互使用も想定され、そのための条例制定も必要とされます。県として、このマイナンバー制度の運用やセキュリティー対策に室等を組織して万全な体制を構築するべきと考えますが、どうお考えかお伺いします。
以上、会派を代表しての質問を終わります。御清聴ありがとうございました。(拍手)
〔知事達増拓也君登壇〕
〇知事(達増拓也君) 高橋元議員の御質問にお答え申し上げます。
まず、マニフェストに掲げた取り組みについてでありますが、今回の知事選においては、復興とふるさと振興を進め、希望郷いわてを実現するために八つの政策を希望マニフェストに掲げました。平成19年に知事に就任してこれまでの間、人口の流出や県民所得の低迷、雇用不足などの危機に正面から向き合い、産業振興による雇用の創出や医師の養成などに取り組み、着実に成果を上げてまいりました。また、この間、東日本大震災津波が発生し、復興委員会やいわて未来づくり機構に代表されるオール岩手の力を結集し、被災地の一日も早い復興に全力を挙げて取り組んでまいりました。
東日本大震災津波からの復興は、基盤復興の成果を土台に本格復興のステージに移行しており、復興の量の確保とあわせ、被災者の皆さんの心のケアや地域コミュニティの再生、まちのにぎわい創出など、復興の質の向上も図ってまいります。
また、雇用について、求人不足から人手不足の状況に課題が転換するなど、県内の社会経済環境には構造的な変化が見られます。こうした現状を踏まえ、長期、安定的な雇用の創出、拡大など、雇用の量の確保とあわせ、若者や女性の就業支援や職場定着の向上、労働環境の改善を初めとした質の向上を図ってまいります。
次に、課題への対応についてでありますが、人口減少や高齢化、財源枯渇などの課題については、その実態や要因を理解していくことが改善につながるものであり、こうした課題解決のためのビジョンや施策を県民の皆さんと共有することで、県民一人一人が希望を持つことができる希望郷いわてを実現することができると考えております。また、広大な県土についても、復興道路や三陸鉄道など交通ネットワークの整備が進むことにより、岩手の県土は縦横に結ばれようとしています。
現時点でキーワードを一言でお示しすることは困難でありますが、さきに申し上げましたように、課題の本質や解決の道筋を共有することが大切であると考えております。
次に、技術革新―イノベーションについてでありますが、現在策定中の岩手県ふるさと振興総合戦略では、人口減少に立ち向かう戦略として、雇用を生み出す産業の振興を掲げております。
産業の持続的な発展には新産業の創出が求められていますが、岩手の発展には、その基盤となるイノベーションを生み出す科学技術の振興が極めて重要であります。このため、本年3月には、新・科学技術による地域イノベーション指針を策定し、重点的に推進する技術分野として、ILCの実現を見据えた加速器関連や環境・エネルギーなど7分野を設定いたしまして、これらの分野をもとに研究、開発戦略を展開し、新産業の創出に取り組んでまいります。
また、国際科学技術研究拠点の形成は、科学技術によるイノベーションの創出につながります。世界に唯一建設されるILC―国際リニアコライダーは、素粒子物理学の研究拠点となりますので、県といたしましては、東北ILC推進協議会などの関係団体と連携した要望活動を強化し、国内外の方々の理解と関心を高める情報発信、環境整備の検討等を進め、その実現に全力を挙げて取り組んでまいります。
さらに、海洋研究拠点の形成については、釜石沖の海洋エネルギー実証フィールドでの波力発電装置開発プロジェクトの支援や海洋環境などに関する調査研究、洋上ウィンドファームの事業化支援などに取り組んでいるところでありまして、今後、さらなるプロジェクトの導入を図りながら、海洋研究の拠点形成に取り組んでまいります。
次に、復興基本計画の見通しについてでありますが、現在、第1期の基盤復興の成果を土台として第2期の本格復興に邁進しておりまして、海岸保全施設については約9割、災害公営住宅については約7割で着工し、被災した事業所については一部再開を含めて約8割が再開するなど、安全の確保、暮らしの再建、なりわいの再生それぞれにつきまして着実に進んでおり、基本計画期間内には、一部の大規模な事業等を除き、おおむね完成するものと見込んでおります。
一方、復興事業を進めるに当たり、他の事業との調整や資材の高騰、沿岸地域の企業の深刻な人手不足など、復興基本計画策定時には必ずしも予測していなかった課題も発生しておりまして、復興事業は現在ピークを迎えており、平成30年度にはおおむね復興計画の実現が図られるように、引き続き、市町村や国などとも連携を図りながら取り組んでまいります。
次に、住宅再建の課題と解決策についてでありますが、災害公営住宅の整備につきましては、9月末時点で、計画戸数約5、800戸のうち約4割が完成し、今年度末には約6割が完成する見込みです。
また、個人の住宅再建につきましては、加算支援金申請件数が補修等を含めて1万件を超え、今後宅地の供給が本格化しますことから、住宅再建が一層進む見込みです。
これらの住宅の建設が遅滞なく円滑に行われるように、工務店や職人、資材のあっせんを行う岩手県マッチングサポート制度を拡充し活用を促進するほか、住宅再建への補助や相談会等による情報提供に引き続き取り組んでまいります。
また、内陸での定住を希望する被災者の皆さんへの支援については、できるだけもとの居住市町村に戻っていただくことが望ましいと考えていますが、やむを得ず内陸にとどまることを希望する方々もいらっしゃいますので、内陸での災害公営住宅の建設について、沿岸市町村等との協議を進めてまいります。
次に、被災者等の心のケアについてでありますが、県こころのケアセンターへの相談は身体症状や睡眠の問題等の訴えが多く、その主要な要因は、健康問題や居住環境の変化等によるストレスと考えられます。このため、引き続き、県こころのケアセンターでは、医師による相談や専門職員による個別訪問を実施しますほか、市町村が行う心の健康づくりに専門的立場から協力してまいります。
また、生活支援相談員等の支援者の皆さんに対しては研修会や情報交換会を開催し、相談活動の課題や悩みについて学識経験者を交えて互いに助言する機会を設けるなど、その精神的負担の軽減に努めているところです。
今後とも、支援者のメンタル面のケアにも十分配慮しながら、被災者の生活環境等の変化に応じた見守り、相談支援を行ってまいります。
次に、県北・沿岸地域の人口流出と所得格差についてでありますが、県では、いわて県民計画において、すぐれた地域資源を生かした産業振興による地域経済の基盤の強化を柱の一つに掲げ、部局横断的な組織として県北・沿岸振興本部を設置し、全庁的な取り組みを行ってまいりました。
県平均を100とした1人当たりの市町村民所得の水準で比較しますと、県北地域は、平成18年度の78.8から平成24年度は85.1へ6.3ポイント上昇し、同様に、沿岸地域では、86.9から91.7へ4.8ポイント上昇するなど、県平均との乖離が縮小されてきておりまして、これまでの取り組みに復興需要も加わって、一定の成果があらわれているものと認識をしております。
一方、県北・沿岸地域の人口減少率は県平均を上回る状況が続いておりますので、若者の地元定着のための産業振興や雇用機会の確保、U・Iターン等の人口減少問題対策を重点的に実施する必要があると考えております。
このようなことから、現在策定中の岩手県ふるさと振興総合戦略におきましては、ものづくり産業や食産業、農林水産業など、地域の特色を生かした産業の振興による雇用の創出や所得の向上に取り組むこととしておりまして、これまで以上に、市町村を初め関係団体、企業等と連携を強化して、総力を挙げて県北・沿岸振興に取り組んでまいります。
次に、拠点港湾の整備についてでありますが、平成25年3月に策定しました岩手県重要港湾利用促進戦略に基づき、東日本大震災津波からの港湾施設の復旧、整備や、港湾貨物取扱量の拡大などに取り組んでまいりました。このうち、湾口防波堤については、国において、早期完成を目指し復旧整備が進められており、また、県が施工している公共岸壁の復旧工事については今年度で完了しますほか、大船渡港の工業用地の造成を進めています。
このような中で、復興道路の整備による物流の効率化を見据えて、フェリー航路開発計画の発表や企業の国内物流拠点の整備など、各港湾では新たな動きが見られます。この好機を捉えまして、県では、各港湾の特徴そして優位性をPRするために、県内外の企業へ訪問や東京都内でのセミナーなどに取り組んでいるところでありまして、災害時の機能移転の観点も含めて、今後とも、国と連携を図りながら、港湾の利用及び工業用地への立地を働きかけてまいります。
次に、人手不足の状況と対策についてでありますが、本県、特に被災地におきましては、人手不足が企業経営における重要な課題の一つとなっています。県としては、その対策として、企業収益を上げて正規雇用の拡大や賃金等の処遇の改善につなげていくという観点から、労働生産性の向上につながる設備等の高度化への支援やカイゼンの導入を進めています。
また、女性や高齢者を含めた全ての人が安心して就労できるように、長時間労働の抑制、休暇取得の促進などの働き方改革への取り組みを関係団体に要請しています。
さらに、人材の確保と定着を図るために、企業を対象とした各種セミナーの実施、新卒者等を対象とした就職面接会の開催などの支援を行っています。
これらに加えて、U・Iターンを促進するために、ことしから大手就職情報サイトの活用支援や情報発信の強化、就職相談体制の拡充などを行っておりまして、人手不足の対策に引き続き取り組んでまいります。
次に、企業の人員確保対策についてでありますが、来年3月卒業予定の新規高卒者への求人状況は過去10年間で最高となっておりまして、県では、各広域振興局に就業支援員を配置して、高校等と連携した就職支援や若年者の職場定着に取り組んでいるところです。
また、小学校から高校までの成長段階に応じて、地域の産業や企業を知り県内就職を動機づける取り組みとして、産業界や教育機関と連携して工場見学、出前授業、インターンシップなどの展開を支援しています。最近では、県内各地の小・中・高生がきたかみ・かねがさきテクノメッセを見学する機会を設けて、約1、700人の参加を得たところです。
さらに、県庁内に経済・雇用対策本部を設置して、全庁的に人材確保に取り組んでいますほか、今般の補正予算案には、経済団体や教育機関等との連携による全県的な推進体制を整備する経費を盛り込んだところでありまして、将来の岩手を担う若者の県内就職の拡大に努めてまいります。
次に、いじめによる自殺の防止についてでありますが、まず、矢巾町事案の要因等につきましては、7月26日にまとめられた学校調査では、昨年来、当該生徒から発せられていたサインに対し、学校全体としての情報の共有と組織的な対応に大きな課題があったことが明らかになっています。
また、滝沢市事案との関係についてでありますが、教育委員会においては、滝沢市における事案の発生を受け、市町村教育委員会に対して、学校いじめ防止基本方針の策定の徹底や取り組みの強化等を助言してきたところであります。しかしながら、結果的に滝沢市での教訓が矢巾町では生かされず、痛ましい事案が連続して発生しましたことは、本県におけるいじめ防止の取り組みが不十分だったということであり、県全体として重く受けとめなければなりません。
再発防止につきましては、矢巾町での事案発生以来、急遽開催しました総合教育会議における協議を踏まえて、いじめによる自殺の連鎖を断ち切り、二度とこのような痛ましい事案を発生させないために、県としてできる限りの努力をしていくこととしております。
具体的には、教育委員会が先般行いました学校いじめ防止基本方針の緊急調査を踏まえた基本方針の実効性の向上や教職員研修の充実、いじめ防止の啓発活動の強化などに取り組んでいくこととしております。
滝沢市、矢巾町の両事案を教訓として、子供たちの命を絶対に守るという信念を持ち、いじめのない学校づくりに向けて粘り強く取り組んでまいります。
次に、いじめ対策の強化についてでありますが、今議会に提案しています岩手県いじめ問題対策委員会条例などの3条例は、いじめ防止対策推進法に基づく所要の附属機関などを設置しようとするものでありますが、これらは、本県における一連の事案の発生を踏まえて、県議会の御理解をいただいた上で、いじめ問題に迅速かつ機動的に対応するため、必要な措置であると判断したものであります。
教育委員会の組織体制につきましては、現在、教育委員会事務局に、いじめ問題などの生徒指導を担う専担課を設けておりますが、今後の組織体制のあり方については、不断に検討されるべきものと考えております。
また、県内市町村における条例制定につきましては、一義的には、それぞれの自治体の主体的な判断に基づくものではありますが、県としては、市町村における今後の検討に資するため、条例案の成立後、できるだけ早期に、市町村に対し、県における条例制定の考え方や検討の経緯などについて情報提供を行っていくこととしております。
次に、県立学校のICT教育についてでありますが、まず環境整備については、急速に進展する情報化社会においては極めて重要であるとの認識のもと、本県では、これまで、生徒用コンピューターの配備、インターネット環境の整備、さらには、本県独自の校務支援システムの導入等に計画的に取り組んでまいりました。さらに、特別支援学校においては、タブレット型端末を用いた授業に関する教育的効果が高いことから、本年度から新たに高等部全てにタブレット端末を導入いたしました。
今後におきましても、本県の学校教育の充実を図るため、国の教育振興基本計画の動きやICT教育に対する評価の動向等も注視しながら、ICT教育の充実に努めてまいります。
次に、ICT教育の展開についてでありますが、地理的な要因などから、小規模校が点在する本県においては、教育の質の確保、生徒の多様な進路希望に対応した教育の提供、教員の負担軽減等の課題がありますが、この解決に向けて、今般の学校教育法施行規則の一部改正を踏まえた遠隔授業の導入は有効な手段の一つであると考えております。
ICT教育の試験的な導入については、現在、教育委員会において、国の事業導入も視野に、遠隔授業の試験的実施に向けて具体的な検討を進めております。
ICT教育は、特に経営資源の限られた小規模校において有効な手だてと考えますので、その充実に向けた環境整備に取り組んでまいります。
次に、子供の貧困対策についてでありますが、本県における公的支援の対象となっている子供の状況については、例えば生活保護世帯の子供や就学援助を受けている子供の割合は、最近3カ年ではおおむね横ばいの状況にあります。しかし、依然として経済的支援を必要とする家庭がありますことから、県民の生きにくさを解消していくことのためにも、子供の貧困対策は重要な課題であると認識しております。
このため、現在策定を進めているいわての子どもの貧困対策推進計画におきましては、重点施策として、教育支援、生活支援、保護者への就労支援、経済的支援、被災児童等への支援を掲げまして、子供の将来がその生まれ育った環境により左右されることのないよう、子供の貧困対策を総合的に推進してまいります。
次に、人材育成と支援体制の構築についてでありますが、スクールソーシャルワーカーは、家庭や行政、福祉関係機関と連携しながら、子供を取り巻く環境を調整する重要な役割を果たしています。
一方では、その配置に当たって、県内における有資格者などの絶対数が少ないという課題がありますが、今後におきましても、県社会福祉士会など関係機関とも十分に連携しながら、その確保に努めてまいります。
また、世帯の実情に応じた支援を行うためには地域での取り組みが重要であり、民生委員、児童委員が自治会や社会福祉協議会などと協働して、世帯の生活状況の把握や関係機関への情報提供などを行っているところです。
県としても、本年4月から施行された生活困窮者自立支援制度の円滑な運用を図りながら、地域における支援体制の充実に努めてまいります。
次に、マイナンバー制度の県内の取り組み状況についてでありますが、市町村では、住民票の住所と異なる場所でマイナンバーの通知カードを受け取れるようにするために事前に申請を受け付けており、県内では、9月までに約5、000人の被災者の方々を含め、約7、000人が送付先登録を済ませています。また、送付先登録をしていない県民も一定数いるものと認識しておりまして、市町村では、再送付や窓口での交付手続などについて広報に取り組むと聞いています。
県といたしましては、これまで、いわてグラフでの広報や事業者説明会の開催などによって制度全体の周知に取り組んでまいりましたが、今後におきましても、通知カードの受け取りについて広報番組で取り上げるなど、県民の皆さんに確実に交付されるように支援してまいります。
次に、自治体の情報セキュリティー状況についてでありますが、県、市町村ともに、外部からの不正な通信のブロックなどのセキュリティー対策は講じられておりますが、今般の日本年金機構の情報流失事故などサイバー攻撃の手段が年々高度化しており、さらなる対策が必要となっています。
このようなことから、県内全市町村では、マイナンバー法の施行までに住民基本台帳システムをインターネット接続から分離する対策を講じてきたところであります。
今後は、国の自治体情報セキュリティ支援プラットフォームを通じて、専門人材の技術的指導を受けながら、県、市町村ともに、さらなるセキュリティー強化に取り組んでまいります。
次に、県のセキュリティー対策等の体制構築についてでありますが、平成28年1月からのマイナンバー制度の運用に当たりましては、県の多くの部署においてもマイナンバーを収集、保管し、相互に利用することとしておりまして、個人情報の管理について厳格に行うことが求められています。このため、県におきましては、部局横断の連絡会議を設置して、条例の必要性やシステム改修などの検討を行ってきたところでありまして、今後とも、全庁一丸となって運営に万全を期してまいります。
〇議長(田村誠君) 次に、嵯峨壱朗君。
〔34番嵯峨壱朗君登壇〕(拍手)

前へ 次へ