平成27年9月定例会 第2回岩手県議会定例会会議録

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〇知事(達増拓也君) 本日、ここに第2回県議会定例会が開会されるに当たり、今後の県政運営について、私の所信の一端を申し上げます。
私は、このたび、希望マニフェストを掲げ、三たび知事に当選いたしました。
改めて、岩手県を代表し、東日本大震災津波で犠牲になられた方々の御冥福をお祈りし、いまだ応急仮設住宅等で不自由な暮らしを余儀なくされている方々を初め、被害を受けた皆様に心からお見舞いを申し上げます。
今、東日本大震災津波からの復興事業のピークを迎え、これからの4年間で復興計画のゴールに向かうという重要な時期に県政を担当することとなり、改めてその責任の重大さを痛感し、身の引き締まる思いがいたします。
今回の選挙では、復興とふるさと振興を進め、希望郷いわての実現を目指すことをマニフェストに掲げました。
県内各地で、一日も早い復興を願い、日々取り組んでいる方々、元気なふるさとを次世代に引き継ごうと地域づくりに励んでいる方々、県外から岩手に入り、今も岩手のために活動しているボランティアの方々など、多くの人たちが頑張る姿に出会いました。地元の底力とさまざまなつながりの力により復興の量の確保と質の向上に努め、ふるさと振興を軌道に乗せるべく全力を尽くしてまいりますので、県議会議員各位並びに県民の皆様の御支援と御協力をよろしくお願いいたします。
平成19年、岩手が直面する危機を希望に変えることをスローガンに、私は、戦後民選となって以降、県政7人目の岩手県知事に就任しました。
人口流出や県民所得の低迷、雇用不足、地域医療の崩壊等の危機に対し、県政は正面から向き合い、産業振興による雇用の創出や奨学金を活用した医師の養成などに取り組み、着実に成果を上げてまいりました。
そうした状況の中、平成23年3月11日に発生した東日本大震災津波は、それまでの危機をはるかに上回る大きな危機でした。この未曽有の災害に際し、県は、県政史上かつてない規模と体制で復旧、復興に取り組み、平成26年度からの3年間を本格復興期間と位置づけ、現在、将来にわたって持続可能な地域社会の構築を目指し、復興に邁進しています。復興計画の第2期で掲げた事業はおおむね着実に進んでおり、今後は、第3期の準備とその実行を視野に取り組んでまいります。
一方、全国的な人口減少が、地方消滅ひいては日本消滅に至るのではないかという危機感を背景に、政府は、まち・ひと・しごと創生法を成立させ、昨年12月、まち・ひと・しごと創生総合戦略を策定しました。
岩手では、私の知事第1期就任後に策定したいわて希望創造プランにおいて人口減少対策を重点目標の一つに掲げ、いち早く取り組みを進めていました。
昨年6月、国の動きも踏まえ、岩手県人口問題対策本部を立ち上げ、年度末に人口問題に関する報告を取りまとめました。今月には、地方版まち・ひと・しごと創生総合戦略となる岩手県ふるさと振興総合戦略を策定します。東日本大震災津波からの復旧、復興、そして、ふるさと振興は岩手にとって喫緊の課題であり、同時に、岩手が主体的に取り組む地方自治の改革です。これまでの復興、人口減少対策の取り組みの成果を土台に、県の総力を挙げ、強力に推進してまいります。
本年6月、政府は、平成28年度以降5年間の復旧、復興事業の規模と財源を閣議決定しました。復興事業の一部で地元負担が拡大することとなったことはまことに残念でありますが、三陸沿岸道路の全額国費による整備の継続や復興交付金効果促進事業の一括配分の上限引き上げなど、その規模と財源はおおむね県の主張を酌んだものとなりました。今後も、市町村と連携しながら、政府に対し、被災地や被災者の実情をしっかりと説明し、市町村、県、国が一体となって復興に邁進してまいります。
これまでに災害廃棄物の全量撤去や三陸鉄道の全線運行再開を実現し、住宅再建補助制度の創設や医療機関の早期再開、さらには、漁港や漁船、養殖施設の復旧整備等、安全の確保、暮らしの再建、なりわいの再生の各分野の基盤復興の成果を土台として、岩手の復興は本格復興のステージに移行しています。工事のピークを迎えている海岸保全施設や災害公営住宅の整備など社会資本の復旧、復興に関しては、引き続きロードマップをお示しし、県民の皆さんの御理解をいただきながら、迅速に進めてまいります。
応急仮設住宅等での生活の長期化に伴う心と体の健康の問題や、将来の生活への不安など、被災者一人一人が抱える課題に寄り添った支援を進めてまいります。また、復興まちづくりの進展にあわせ、地域に根差したコミュニティーの再生や新たなまちのにぎわい創出に向けた取り組みを強力に進めてまいります。
さらに、三陸における交通ネットワークの整備や新たなまちづくりの進展による今後の環境変化を見据え、中長期的な視点に立った三陸地域の振興方策の具体化を図ってまいります。
こうした取り組みには、これまで以上に、県と市町村、国や民間の協力、そして何よりも県民の力の結集が必要です。若者や女性を初め、多くの県内外の方々の参画をいただきながら、誰もが社会の中でつながり、支え合うソーシャルインクルージョンの観点に立ち、全ての県民が希望を持てる復興を進めましょう。
ふるさと振興は、地方があらゆる人々にとって希望を持って生きていくことができる場になるための人々の暮らし方や働き方、結婚や子育てのあり方など、これまでの地方における社会、経済、行政の仕組みを改革していく取り組みです。
国が掲げる東京一極集中の是正とあわせ、岩手の人々が直面する進学や就職、結婚、出産、転居などの岐路に丁寧に向き合う施策を展開し、誰もが働きやすい、結婚しやすい、子供を産みやすい、子供を育てやすい、家庭を持ちやすいと感じる社会経済環境の実現を推進してまいります。
人々の生きにくさを解消し、岩手で働く、岩手で育てる、岩手で暮らす、この三つのふるさと振興の柱に沿った施策の着実な実現により、私たちの子や孫の世代につながる将来に希望への道筋をつけることが求められています。子供からお年寄りまで、あらゆる世代が生き生きと暮らす岩手、県外とつながり、新しい発想にあふれる岩手の実現を目指し、ふるさと振興の推進に全力を尽くしてまいります。
なお、ふるさと振興総合戦略については、これまでの県議会や有識者会議における議論、県内各層から寄せられた意見を踏まえ、今般、最終案をお示ししています。今議会等で出される御意見をもとに、さらに内容の充実した総合戦力をつくり上げ、県民総参加の取り組みを展開してまいります。
復興や地域振興の現場では若者や女性の活躍が著しく、県として、その活躍をさらに支援していくことが重要です。意欲ある若者や女性が、岩手で一段と力を発揮できる土台づくりを、行政と民間が一体となって進めてまいります。若者や女性がやりがいを感じ、生活を支える所得が得られるよう、産業界と連携した働き方の改善や、創業支援の充実に取り組みます。
こうした支援を官民挙げて推進するため、新たに、県を初め経済団体や教育関係者等で構成する推進組織を設立します。
県の調査では、男女の不平等感はいまだ根強く残っていることが示されています。男女共同参画の考え方を幅広い世代に普及し、男女が対等な立場で意見を交わすことのできる社会、ともに支え合う社会を形成していくことが重要です。いわて女性の活躍促進連携会議などを通じ、女性が生き生きと活躍できる取り組みを官民一体となって推進します。
広げよう感動。伝えよう感謝。をスローガンとする希望郷いわて国体本大会、希望郷いわて大会の開催まで1年となりました。希望郷いわて国体冬季大会はいよいよ目前に迫り、全国から多くの方々に来県していただき、復興のシンボルとなる両大会を成功させようとの思いが一層高まっています。大会の成功に向け、実施本部の設置など全庁的な職員体制を構築し、準備に万全を期してまいります。
両大会の盛り上がりが岩手のあらゆる地域に浸透し、一人でも多くの方がより深く参画することができるよう、スポーツの枠を超え、文化芸術とも連動した広がりのあるおもてなしと新たな趣向を加えます。デジタルコンテンツやメディアとの融合も図りながら、地方が主役となる東京オリンピック・パラリンピックの新たなモデルとなる人的、文化的な相互交流の実現を目指します。
130万人みんなの力で開催する両大会を成功させるとともに、地域振興の広がりを全国に発信していきましょう。
6年前、私は、県民総参加でいわて県民計画をつくり上げ、県民一人一人が希望を持ち、岩手全体に希望があふれる希望郷いわてを目指してまいりました。県勢発展のかなめは県民の皆さんであり、県民が岩手をつくり、また岩手が県民をつくるという考えのもと、県民が中心となった計画という意味でいわて県民計画と名づけました。
この計画に基づく第1期、第2期のアクションプランを実行する中では、岩手・宮城内陸地震、東日本大震災津波、そのほかにも多くの苦難が岩手を襲いましたが、県は、県民の皆さんやNPOの方々、企業、市町村や国と力を合わせ、これらの困難に立ち向かい、乗り越えてきました。
求人不足の解消や1人当たり県民所得の4年連続の向上、人口の社会減の6年連続縮小傾向など、岩手が直面する重要課題については、着実に成果が出始めています。
一方で、求人不足数の解消にもかかわらず、昨年度は人口の社会減が拡大に転ずるなど、従来の施策や県単独の取り組みでは解決が困難な課題が顕在化しています。
こうした課題の解決に向け国への働きかけを強めるとともに、復興計画や今後策定するふるさと振興総合戦略を包含するいわて県民計画第3期アクションプランを策定します。
これからの4年間は、県民計画の最終期間であると同時に、その先の岩手発展のための準備期間ともなる重要な4年間です。従来追求されてきた経済的、物質的な豊かさに加え、岩手ならではの豊かさや価値を大切にし、それらを共有していく取り組みも含め、次代を見据えたプランを県民の皆さんとつくり上げ、希望郷いわての実現を図ってまいります。
また、希望郷いわての実現をより確かなものにできるよう、新たに幸福度を行政評価の指標に取り入れます。岩手の詩人宮沢賢治は、世界が全体幸福にならないうちは個人の幸福はあり得ないとの言葉を残しました。こうした言葉が育まれる岩手の歴史や風土なども参考に、岩手ならではの幸福度を研究し、施策への反映に向けた具体化を進めてまいります。
復興とふるさと振興の力強い推進には、安定した財政基盤の確保が必要です。県の財政は、過去の公共投資のために発行した県債の償還が高い水準で推移するなど、依然として厳しい状況にあります。
こうした中、東日本大震災津波からの復旧、復興に関しては、平成28年度から、一部、自治体負担が拡大されることとなりました。しかし、断じて復興をおくらせてはなりません。引き続き、歳入歳出両面での見直しを行うとともに、新たに生じる負担に対する地方債の活用も検討しながら、知恵を絞り、工夫を凝らして、復興の推進と財政健全化に向けた取り組みを両立してまいります。
昨年来、いじめに関連して、県内の中学生がみずから命を絶つという痛ましい事案が発生しました。私は、本年7月に、教育委員会委員長とともに、命の大切さといじめが絶対に許されないことを県内全ての子供たちに向けて訴えました。亡くなった生徒の尊厳を起点に、岩手で同様の事案が二度と起きないよう対策を講じていかなければなりません。
今議会においても、いじめ対策にかかわる条例とともに、関係予算を提案しています。命を守るという信念を持ち、総合教育会議の場も活用し、いじめの根絶に向けて粘り強く取り組んでまいります。
今後4年間の復興とふるさと振興の具体的な取り組みは、復興計画の三つの原則と、ふるさと振興総合戦略の三つの柱に基づいた施策を総合的に展開してまいります。
まずは復興の推進です。
いのちを守り海と大地と共に生きるふるさと岩手・三陸の創造を目指し、復興計画の第2期、さらには第3期を通じて、ゴールに向かう復興の推進に取り組んでまいります。
計画の3原則の第1、安全の確保についてであります。
災害に強く、安全で安心な暮らしを支えるため、多重防災型まちづくりを推進します。海岸保全施設などの整備にあわせ防災文化を醸成するための取り組みを推進します。関係機関と連携し、高田松原津波復興祈念公園や津波伝承施設の整備を推進するなど、未曽有の大災害からの教訓を確実に継承し、将来に生かすことで、岩手の防災力の向上を図ります。県民の暮らしやなりわいを守るため、引き続き、放射線影響対策に取り組みます。農林業系副産物などの廃棄物処理を初め、市町村の課題に対し必要な支援を行ってまいります。また、東京電力に対し、市町村と連携しながら、今後も賠償請求を行います。
災害時の確実な緊急輸送や三陸沿岸地域の産業振興、水産業等の復興支援には復興道路は不可欠です。平成30年度までには東北横断自動車道釜石秋田線の釜石―花巻間が全線開通するほか、三陸沿岸道路でも多くの区間が開通します。また、三陸鉄道への移管受け入れが決まったJR山田線宮古―釜石間の復旧工事も本年3月から始まっています。点から線、線から面へ、岩手を一つにつなぐため、被災JR線の早期復旧をJR東日本に働きかけるとともに、復興道路などの整備を着実に進めます。
次に、暮らしの再建です。
まずは、住宅の確保を図ることが急務です。被災された方々が安心して暮らせるよう、平成30年度までに全ての災害公営住宅を整備します。また、住宅再建のための支援を継続し、持ち家再建を希望する方の負担軽減を図ります。恒久的住宅への移転が進む一方、もうしばらくの間、応急仮設住宅等で不自由な暮らしを余儀なくされる方々もおられるなど、それぞれ被災された皆さんの抱える事情により復興のスピードは違います。より一層親身になって寄り添うことが必要であり、子供からお年寄りまで被災者一人一人の事情に正面から向き合い、心身両面を支える取り組みを続けます。
健康面、経済面での不安を少しでも解消すべく、被災者の国民健康保険の医療費窓口負担等の免除について、さらに1年間延長します。
被災地の人手不足については、引き続き重要な課題です。若者の就業支援や職場定着向上、女性の再就職のための取り組みを行い、企業等の人材確保を支援します。
次に、なりわいの再生です。
沿岸地域の基幹産業である水産業に関し、地域再生営漁計画の実行を支援することにより、地域漁業の人や現場、新たな価値を創造し、漁業の再生を進めます。また、漁獲から流通、加工までの一貫した高度衛生品質管理サプライチェーンの構築や販路の回復、拡大、高付加価値化を推進します。
被災地域の経済を支える中小企業や商店街に関し、グループ補助金と県独自の資産復旧事業を両輪に被災企業の再建を支援するほか、まちづくりの進行に伴い本格化する商店街の再生について、将来を見据えた計画策定から事業の実施に至るまで、地元市町村と一体となって具体化を進めてまいります。
三陸の未来を切り開くため、地域資源を生かした観光など、産業振興や三陸ブランドの活用に向けた事業を総合的に展開する新たな推進体制の整備を進めます。三陸の物流や人々の移動にこれまでにない変化をもたらす復興道路の整備や三陸鉄道の完成にあわせ、三陸が一体となって盛り上がる新たなイベントを企画してまいります。
また、海洋生態系の研究を初め、三陸が有する海洋再生可能エネルギーを生かし、国際的な研究拠点の形成を目指します。
さらに、三陸を含め岩手の復興の象徴となり、地域と世界が直接結ばれる大きな原動力となるのがILC―国際リニアコライダーです。その実現により、日本全体はもとより、世界全体へ大きく貢献していきましょう。
ふるさと振興の三つの柱に沿った総合的なプロジェクトを県民総参加で進めてまいります。
まず、一つ目の柱、岩手で働く取り組みです。
有効求人倍率が岩手でも近年1倍を超える状況が続く一方、昨年、人口の社会減は拡大しました。長期、安定的な雇用の創出、拡大など雇用の量の確保とあわせ、労働環境の改善を初めとした質の向上の取り組みが重要です。特に、岩手の人口の社会減で顕著な若者の県外転出を防ぐため、若者がやりがいを感じ、生活を支える所得が得られる仕事を創出していく取り組みを推進します。
ものづくり産業や食産業、伝統産業など、仕事につながるあらゆる産業を振興し、雇用を創出します。これらの産業における雇用の質を向上させるためカイゼンの導入を進め、1人当たりの労働生産性を上げ、所得の向上を促進します。また、正規雇用の拡大や勤務時間を初めとした処遇の改善など、安心して働き続けることのできる労働環境の整備を促進してまいります。
こうした県内企業の魅力向上に加え、県内の若者への企業情報の発信が重要であり、県内で就業を希望する全ての若者の就職が実現できるよう、企業と若者のマッチングを強力に推進します。
経済活動のグローバル化が進行する中、多くの人口を有し、経済発展により購買力の高まっている東アジア地域は、県内産業の成長にとって大きなチャンスです。経済交流の拡大に向け、県産品輸出の一層の促進を初め、事業者の海外ビジネス展開の支援を進めてまいります。
岩手の基幹産業として、強い農林水産業と活力ある農山漁村の確立を進めます。
国の農地中間管理事業や、圃場整備事業の活用による担い手への農地集積の促進、米の県オリジナル新品種のブランド化などを進め、生産性、市場性の高い産地形成を推進します。
農林水産物の高付加価値化は、新たな雇用を生み出し、所得のさらなる向上をもたらします。あまちゃんで描かれたような6次産業化も推し進め、岩手の強い農林水産業をつくり上げます。また、地域コミュニティー機能の発揮等による地域資源の維持や都市住民との交流、移住、定住の促進による農山漁村の活性化を推進します。
交流人口の拡大については、産官連携のいわて観光キャンペーン推進協議会の活動などを通じ、オール岩手の体制で、国内外からの誘客を促進します。特に、岩手を訪れる外国人観光客の過半を占める台湾との定期便就航を実現し、一層の交流拡大につなげます。
岩手が有する自然環境や豊かな文化、歴史などに加え、魅力ある雇用の場を創出することにより、岩手に住みたい、働きたいと願う人々の思いに応えてまいります。
首都圏での情報発信や相談体制の強化による移住者の増加を目指すほか、移住後のフォローを充実し、住んでよかったと思っていただける魅力ある地域づくりを進めます。
次に、岩手で育てる取り組みです。
合計特殊出生率は依然として低い状況が続いています。この背景には、育児と仕事の両立が困難であることや出会いの機会の減少、子育てに対する支出の増加などの要因が指摘されています。働きにくさ、結婚しにくさ、子育てしにくさを解消していくことが重要です。就労、出会い、結婚、妊娠、出産から子育てに至るライフステージに応じた支援を切れ目なく実施してまいります。
企業と一体となって、長時間労働の抑制や労働条件の改善に取り組み、ワーク・ライフ・バランスを推進し、働きやすい、子育てしやすい環境づくりを促進してまいります。
今月から、盛岡市と宮古市で“いきいき岩手”結婚サポートセンター―i-サポの業務をスタートさせました。新しい出会いの形を岩手で生み出し、結婚を望む方々の希望に沿ったパートナー探しを支援します。
また、子供を持つことを望んでも、不妊に悩む夫婦も大勢いらっしゃいます。新たに不妊治療費助成を男性にも拡充し、妊娠、出産を望む方々を経済的に支援します。
さらに、来年8月から未就学児及び妊産婦に係る医療費助成の現物給付化を実現します。また、放課後児童クラブの充実、保育士・保育所支援センターの利用促進等により、子育てしやすい環境づくりを強力に推進します。
最後に、岩手で暮らす取り組みです。
商店街の活性化や人に優しいまちづくりの推進、通信インフラなどの利便性の向上を図り、まちの魅力を高めます。また、地域住民の足である路線バスや鉄道などの公共交通について、利用促進や利便性の向上、観光面での活用などを進め、交通基盤の維持確保を図ります。こうした基盤の強化とあわせ、地域おこし協力隊などの地域づくり人材や、消防団員など地域コミュニティーの担い手の確保を推進します。
エネルギーについて、風力、地熱など、地域の特性を生かした再生可能エネルギーの導入を進め、電力自給率の向上を図ります。
医療、福祉については、まず、県民の皆さんが健康で安心して岩手で暮らすことのできる地域医療の充実を図ります。岩手の医師数は依然として全国水準を下回っており、これまで充実してきた奨学金制度による養成と適切な配置により、医師の不足と偏在の解消を進めます。また、かねて岩手県が提案している地域医療基本法の実現を全国に呼びかけ、日本の地域医療のあり方を岩手から発信してまいります。
さらに、高齢者がより元気で安心して暮らすことができるよう、医療や介護、住まい、生活支援等のサービスが切れ目なく提供される地域包括ケアシステムを構築し、生き生き健康社会を実現します。
自殺は社会全体にとって大きな課題です。地域コミュニティーや企業、団体等さまざまな主体と力を合わせ、県民の皆さんとともに自殺対策を推進してまいります。
教育や文化、芸術、スポーツについては、次代を担う人を育て、心豊かで健康的な暮らしを実現してまいります。
東日本大震災津波の被災後、海外からの支援をいただき、岩手の子供たちは、ニューヨークやパリ、台湾など、多くの世界の人々とのつながりを持ちました。こうしたつながりも生かし、世界と岩手をつなぎ、地域に根差したグローバル人材を育成します。また、伝統文化、生活文化の継承とともに、若者を初め県民の皆さんが芸術を発表する場や鑑賞する場を提供し、県民一人一人が豊かな文化芸術とともに生きる地域社会を形成します。
プロ野球の菊池雄星、大谷翔平両選手やサッカー日本代表岩清水梓選手を初め、岩手発のトップアスリートの活躍が岩手に大きな夢や希望を与えています。こうしたトップアスリートの育成とともに、豊かなスポーツライフの振興や、スポーツを通じて内外の人々との交流が広がる地域づくりを進めます。
また、希望郷いわて国体、希望郷いわて大会の盛り上がりを、2019年に釜石で開催されるラグビーワールドカップ、2020年東京オリンピック・パラリンピックへと途絶えることなく継続させ、岩手にスポーツ文化を根づかせてまいります。
復興とふるさと振興を持続的なものとしていくため、人が人を育てる好循環をつくっていくことが重要です。岩手の将来を担う子供たちに生きる力をしっかりと身につけさせ、社会で輝く産業人材や地域づくり人材の育成、さらには、高齢者や障がい者などあらゆる立場や世代の方々が生涯にわたり学び続けることのできる環境づくりを進めてまいります。
本年7月、釜石市の橋野鉄鉱山が新たに世界遺産に登録されました。既に世界遺産に登録された平泉及び世界遺産暫定リストに登録されている一戸町御所野遺跡とあわせ、縄文から平泉の時代を経て近代に至る歴史を振り返ると、日本の歴史における岩手の役割の大きさに深く感じ入ります。特に、今般、世界遺産となった橋野高炉跡は、鉄の連続生産に成功した日本最古の洋式高炉として世界に高く評価され、岩手なくして日本の近代化なしとも言うべき誇りある歴史が広く知れ渡ることとなりました。
この橋野高炉跡は、鉄鉱石が豊富に採取できる環境があったという地理的要件に加え、盛岡藩の大島高任という人材なくしては実現しなかったであろう遺産です。
大島は、盛岡藩士として、藩政改革書を記し、殖産興業に始まり、義務教育の普及をうたい、後の日本の近代化路線を先取りする先進性を示しています。岩手の国を、土地は広大、天下無双と称し、山の金銀銅鉄、海の魚、塩、野の牛馬、田の五穀など、数え切れない産物を生かせば天下無双の富を得るとする改革書は、地域資源を生かし、発展を目指す今日の岩手にも通用する力強い指針です。
東京一極集中型の政策が地方消滅ひいては日本消滅に行き着くのではないかとの危機感が広がる中、今求められるのは、地方が主役になるような社会経済政策を地方主導で進めていくことです。
東日本大震災津波からの復興の取り組みを通じて得られた地元の底力とつながりの力で、岩手の力は大いに高まっています。大島や幕末の岩手が示した天下無双の志を持ち、新しい地方自治としての復興とふるさと振興を、県民の力を合わせて進めていきましょう。
私も、県民の皆さん一人一人とともに、県民総参加で岩手の未来を切り開いていくべく、これからの4年間、岩手の復興とふるさと振興に全力を注いでまいります。
ここにおられる議員の皆様並びに県民の皆様の深い御理解とさらなる御協力を心からお願い申し上げ、私の所信表明を終わります。ありがとうございました。(拍手)
日程第4 認定第1号平成26年度岩手県一般会計歳入歳出決算から日程第76 報告第10号平成26年度決算に基づく岩手県工業用水道事業会計に係る資金不足比率の報告についてまで
〇議長(田村誠君) 次に、日程第4、認定第1号から日程第76、報告第10号までを一括議題といたします。
提出者の説明を求めます。風早総務部長。
〔総務部長風早正毅君登壇〕
〇総務部長(風早正毅君) ただいま議題とされました各案件について御説明申し上げます。
認定第1号は、平成26年度岩手県一般会計歳入歳出決算であります。
歳入総額1兆875億7、700万円余、歳出総額9、829億7、700万円余で、差し引き残額1、046億円余から繰り越し財源額784億2、800万円余を差し引いた実質収支は、261億7、100万円余の黒字となっているものであります。
認定第2号から認定第12号までは、平成26年度岩手県母子寡婦福祉資金特別会計など11件の特別会計の決算でありますが、各特別会計とも実質収支は黒字または均衡となっております。
認定第13号から認定第15号までの3件は、平成26年度の公営企業会計決算であります。
これらの公営企業会計の決算につきましては、地方公営企業法第30条第2項及び第4項の規定に従い、監査委員の審査に付し、その意見をつけて、認定に付するものであります。
議案第1号は、平成27年度岩手県一般会計補正予算(第2号)であります。
これは、被災した港湾、河川等の復旧や漁港施設、災害公営住宅等の整備、公的医療施設の再建に要する経費など、本格復興の邁進に必要な経費のほか、世界遺産の理解促進や地域医療の充実など早期に取り組むべき施策に要する経費、高等教育機関との連携推進や中山間地域の基盤整備など地域資源を生かした施策の推進に要する経費として、総額386億1、500万円余の増額補正を行おうとするものであります。
補正の主なものは、高等教育機関連携推進費2、800万円余、重症心身障がい児等支援者育成事業費800万円余、一般財団法人クリーンいわて事業団施設整備資金貸付金4、600万円余、公的医療機関復興支援事業費補助2億7、700万円余、いわて就職促進事業費、これは、若年者等の県内就職を促進するため、関係団体の連携体制の構築を行うものになりますが、200万円余、活力ある中山間地域基盤整備事業費補助5、000万円、漁港施設機能強化事業費11億100万円余、児童生徒健全育成推進費、これは、いじめ防止啓発等を行うものになりますが、300万円余、河川等災害復旧事業費58億3、200万円余であります。
議案第2号から議案第8号までの7件は、平成27年度の特別会計の補正予算でありますが、これは、それぞれの事業計画の変更等に基づいて所要の補正をしようとするものであります。
議案第9号から議案第11号までの3件は、予算の補正に伴う建設事業に要する経費の一部負担及び一部負担の変更に関し議決を求めようとするものであります。
議案第12号から議案第22号までの11件は条例議案でありますが、これは、岩手県いじめ再調査委員会条例など3条例を新たに制定するとともに、岩手県の事務を市町村が処理することとする事務処理の特例に関する条例の一部を改正する条例など、8条例の一部をそれぞれ改正しようとするものであります。
議案第23号から議案第41号までの19件は、災害復旧などの工事の請負契約12件及び変更請負契約7件の締結に関し議決を求めようとするものであります。
議案第42号は、財産の取得に関し議決を求めようとするものであります。
議案第43号は、訴えの提起に関し議決を求めようとするものであります。
議案第44号は、和解の申し立てに関し議決を求めようとするものであります。
議案第45号及び議案第46号の2件は、損害賠償請求事件に係る和解及びこれに伴う損害賠償の額を定めることに関し議決を求めようとするものであります。
議案第47号及び議案第48号の2件は、平成26年度の岩手県電気事業会計及び岩手県工業用水道事業会計の未処分利益剰余金の処分に関し議決を求めようとするものであります。
報告第1号は、職員による自動車事故に係る損害賠償事件に関する専決処分について、報告第2号は、公立大学法人岩手県立大学の業務の実績に関する評価結果について、報告第3号は、地方独立行政法人岩手県工業技術センターの業務の実績に関する評価結果について、報告第4号は、地方独立行政法人の常勤職員数について、それぞれ御報告するものであります。
報告第5号は、地方公共団体の財政の健全化に関する法律の規定に基づき、平成26年度決算に基づく健全化判断比率について報告するものであります。
報告第6号及び報告第7号は、平成26年度決算に基づく流域下水道事業特別会計及び港湾整備事業特別会計の資金不足比率について、報告第8号から報告第10号までの3件は、平成26年度決算に基づく公営企業会計の資金不足比率について、それぞれ御報告するものであります。
以上でありますので、よろしく御審議の上、原案に御賛成くださるようお願いを申し上げます。
〇議長(田村誠君) 以上をもって本日の日程は全部終了いたしました。
本日はこれをもって散会いたします。
午後1時48分 散 会

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