平成26年12月定例会 第17回岩手県議会定例会会議録

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〇40番(伊藤勢至君) 希望・みらいフォーラムの伊藤勢至であります。
 平成26年12月議会に当たり、復興への取り組み真っ最中の知事を初め県職員の皆様に心からのエールを送り、復興への提案を含めて質問をいたします。
 達増知事は、11月15日、3期目の知事選挙への出馬表明をされました。被災地の県民、県議会議員の一人として満腔の賛意と敬意を表するものであります。
 私は、東日本大震災津波の発災から1週間後の3月18日、御多忙中とは思いましたが、知事と5分間、面談させていただきました。その前に、当時の副知事に対して、この時期は年度末の工事完成を目指している業者も多数あり、今回の震災のことで完成払いがおくれると二次災害が起こりかねないので、十分配慮していただきたい旨申し入れたことを報告し、Z旗を差し上げました。皆様御案内ことと存じますが、日本国の存亡をかけた日本海海戦の際に勝利提督となった東郷平八郎が、旗艦三笠に掲げた旗旒信号の一つで、皇国を岩手に、一戦を復興に読みかえて、岩手の興廃この復興にあり、各員一層奮励努力せよの気持ちで頑張っていただきたいとの思いを込めてのものでありました。知事は、あっ、Z旗と言いながら、手に取って見入っておられました。今回の大震災津波は大変な被害で、ここからの復旧、復興には相当の時間とお金がかかると予想されます。知事には、腰を据えて全力で取り組んでいただきたいと申し上げましたら、黙って深くうなずいておられました。時間がなく、そのまま、お互いに頑張りましょうと言いながら握手をしておいとまいたしましたが、あのときの知事の握手の力強さが今でもしっかりとこの右手に残っております。
 東日本大震災津波に対する知事の初動は立派であったと思います。即日、総合防災室危機管理監を通じて自衛隊へ出動要請を行っています。これは、防災関係での自衛隊との連携強化等を図るため自衛隊OBを総合防災室に入れていた先見の明によるところであります。2日目には、自衛隊ヘリに搭乗し、上空から沿岸部の緊急視察を行い、尋常ならぬ状況を見てとり、1週間後には135億円の緊急補正予算を知事の専決権で措置されました。これは、被災12市町村へ取り急ぎ、水、食料、医薬品購入の費用とするものでありました。また、緊急補正予算の措置にあわせて、400億円の債務負担行為も措置されております。これは、応急仮設住宅手配の費用でありました。
 そして、何よりも大事だったことは、岩手県の岩手県たるを示すべく、復興に向けた基本方針を、発災1カ月後の4月11日に発表していただいたことであります。この基本方針は、被災者の人間らしい暮らし、学び、仕事を確保し、一人一人の幸福追求権を保障すること、犠牲者の故郷への思いを継承することを二つの原則とし、後に策定される安全の確保、暮らしの再建、なりわいの再生を骨子とする復興基本計画につながるものですが、これが被災市町村のお手本となったのです。現場の対応に大わらわだった被災市町村においても、この方針の重大さに気づき、早いところでは4月20日に、遅いところでは6月末に復興の基本方針等を示すことができたのであります。
 大災害の対応として、初動の重要さが取り沙汰されますが、達増知事の初動はまことに適切なものであったと敬意を表します。そして、現在、この復興実施計画を、適宜適切に修正加筆しながら粛々と復興を進めておられます。しかし、復興はいまだ道半ばであります。計画を立て、着実に実行しているリーダーを、ここでかえる理由は全く見当たらないと県民は思っています。どうか、堂々と胸を張って前に進んでください。
 この際、3期目の知事選に臨んでの力強い思いを我々にも改めてお聞かせいただきたいと存じます。
 私は、発災直後から県の幹部に、最前線で、不眠不休で頑張っている職員に対して、給料を上げて応えるべきだと話してまいりました。モチベーションを上げて、今こそ、県民のために頑張れとかけ声をかけるのはわかります。しかし、県職員も人の子、家に帰れば一家の大黒柱となる一県民でもあります。
 ある幹部は、議員のおっしゃるとおり、私たちも本当に何とかしてやりたいと思います。でも、もし仮に、人事院勧告が出る前に岩手県が職員の給料アップをしたとすれば、永田町かいわいの人たちから、岩手県がそのくらい力があるなら、これからもどうぞ岩手は岩手でおやりくださいと言われかねず、それが県政万般に支障を来しかねないのでつらいところですということでありました。
 永田町の連中は、東日本大震災津波の現状をわかっていないなと思いました。しかし、ともあれ、本年8月に国の人事院勧告があり、県の人事委員会でもこれを了とし、7年ぶりの引き上げ改定になるようであります。
 復興道半ばの今、県庁マンの人間力を涵養するためにも、さらには、若い有望な人たちに県職員を目指してもらうためにも、今回の人事院勧告以後も、停滞したり下降したりすることがないように働きかけていくのも組織の長としての知事の重要な役割であると思いますが、いかがお考えでしょうか、お伺いをいたします。
 次に、ILCの誘致について伺います。
 我々東北そして岩手県民の中には、過去の歴史上、中央に対して5連敗だと嘆く方もおります。
 アテルイが坂上田村麻呂に敗れ、安倍一族が源頼義に滅ぼされ、藤原三代が源頼朝に滅ぼされ、九戸政実が豊臣秀吉に敗れ、おまけに戊辰戦争では、奥羽越列藩同盟として、薩長土肥中心の官軍に賊軍の汚名まで着せられて敗れたということであります。しかし、現在を生きる我々としては、歴史を直視し、これからの東北、岩手の行く先をおもんぱかり、次の世代に何を残せるかを考えていかなければなりません。
 国際プロジェクトILCが、東北の岩手の地を向いていることを厳粛に受けとめ、本県への誘致を勝ち取っていかなければなりません。
 東北ILC推進協議会の資料によりますと、ILCの建設段階から運用段階に至る30年間を通じた経済への波及効果は約4.3兆円、雇用創出は約25万人分になると見込まれ、ILC国際研究所には世界中から優秀な人材が集まるほか、国際会議や研究、研修、見学等による交流人口が増加し、人的な交流、技術研さん等を通じて人材の育成が促進され、人材と技術の集積拠点が形成されていく中で、東北各地の学術研究機関、先端企業との連携が進み、その波及は東北全域へと拡大していくとされております。この際、21世紀の東北連合を再形成し、過去の恩讐を越えて東北の底力を示すときであります。
 昨年5月、県議会有志10名で、スイスのCERNを視察してまいりました。国際推進組織の責任者であるリン・エバンス氏から2時間の御講演をいただき、100メートルの地下にある実験装置を見て、毎年2、000億円で運営していることや、そのスケールの大きさに驚くと同時に、今世紀最大の国際プロジェクトを岩手に誘致することが我々の使命であると痛感をしてまいりました。
 昨年、本県の北上山地を視察したエバンス氏は、北上山地の環境は完璧だと高く評価されたとの報道がありました。また、本年11月、知事がスイスのCERNを訪問した際に、エバンス氏は、北上に向けて設計のデザインを始めている。日本政府の早い決断が必要と、対応を急ぐべきだと強調されたとの報道もありました。
 私たちがCERNを訪問した際、研究所の広大な庭で、日本から行っている若い研究者と家族の皆さんと昼食をともにいたしました。若い奥さん方からは、子供の教育のこと、自分たちも空き時間に働きたいが言葉の問題などもあり、なかなか勤め先が見つからないことなどの本音を伺うことができました。スイスのスーパーでも納豆を置いているが、ワンパック500円だということに驚いたところであります。
 東北がまとまって動き、国に早い決断を求め、一方では、世界中から集まる研究者とその家族をどう迎えるか、からめ手からの対応も必要と考えますが、知事はどのようにお考えか伺います。
 次に、東北の2勝目を目指して、目の前の海を活用しての次世代エネルギーの開発について伺います。
〔副議長退席、議長着席〕
 私は、初当選以来これまで、地球の3分の2を占める海、目の前にある暖流と寒流がまじり合う海を、水産漁業とは別の観点から利活用に取り組むべきであると提案をしてまいりました。
 例を挙げますと、高知県が先駆けとなった海洋深層水、これは現在、宮古の建設業の会社が海洋深層水を使った宮古の塩を製造販売しており、漁協の製氷工場も深層水入りの氷をつくっております。また、岩手大学の熊谷教授の研究成果で、これも宮崎県に先取りをされましたが、リチウムイオン電池のリチウムを海水から採取することや、同じく岩手大学の森教授の研究成果となる将来の自動車は鉄からマグネシウムにかわり、そして、そのマグネシウムは海水中に無尽蔵に含有されているということ。さらには、東京工業大学の矢部教授の太陽光励起レーザーにより、マグネシウムを循環させ、マグネシウムと塩水の反応により発電をすることなどであります。
 日本の経済新聞に、燃料電池という文言が出たのは20年前でありますが、それがリチウムイオン電池車にかわり、電気自動車にかわり、今や水素燃料車となりました。
 そのような中で、本年8月3日、NHKで、“地上の星”を手に入れろ!核融合研究最前線という番組が放映されました。京都大学エネルギー理工学研究所所長の岸本泰明先生が率いる研究チームの活動状況の報道でありました。
 要約しますと、太陽や星のエネルギーの源である核融合反応を地上で実現した暁には、海水中に燃料となる重水素とリチウムが含有されていることから、人類は恒久的なエネルギーを手に入れることができるというものであります。そして最大のメリットは、現在の原子力発電の最大のネックとなっているストロンチウムなどの放射性廃棄物を出さないということであります。
 本年7月、海洋エネルギー実証フィールド、釜石沖、需要あれば追加という報道がありました。文部科学省では、2012年度から5カ年間の予定で、海洋エネルギーなどの研究開発の推進を含む東北復興次世代エネルギー研究開発プロジェクトを実施しております。これらのプロジェクトを抱き合わせて、核融合発電施設の建設場所提供などで三陸沿岸に新しい産業立地が可能となるものと思いますが、どうお考えか伺います。
 次に、県の防災対策について伺います。
 東日本大震災津波そして御嶽山噴火等により、国も県もいろいろと対策を講じてまいりました。東北地方整備局は、波浪計による津波観測情報を伝達する新システムを開発し、一定以上の潮位変化観測後、60秒後には津波観測情報を沿岸自治体に配信するとしています。
 活火山に関する県の防災対策では、岩手県は県内に3活火山を有することから、岩手山の火山活動に関する検討会を設置しておりますが、本年10月に開催した検討会では、モバイルメールの活用や、登山口への啓発看板設置などの案が提示されており、今後、登山者向け防災対策の検討を本格化させるとしています。また、11月6日からは、東北6県の自治体や関係機関が連携、対応を確認する防災訓練みちのくALERT2014が実施されております。いずれも時宜を得た取り組みであり、関係者の皆様に敬意を表します。しかし、私たちは、もう少し大きな範囲を想定しておく必要があると思います。
 平成20年6月14日、8時43分、岩手・宮城内陸地震が発生しました。東北地方では、死者17名、行方不明者6名、重傷者70名という大きな被害でありました。これまで、地震イコール津波イコール海岸と思い込んでいて、全く虚をつかれたなと思いました。そして、当時から話題となっていた宮城県沖地震発生の確率が、平成20年1月1日時点で、10年以内に60%程度、20年以内に90%程度以上、30年以内に99%であったものが、地震発生後、平成21年1月1日現在では、10年以内70%程度、20年以内90%程度以上、30年以内99%となり、平成23年3月に東日本大震災が発生したのであります。
 現在、学会では、首都直下型地震、東海、東南海、南海地震津波が取り沙汰されております。首都直下型地震の場合の被害想定も公表されているようでありますが、国民がパニックを起こさないようにするために、随分と低く抑えられている感がいたします。
 東北新幹線の上野駅は地下50メートルの深さにあります。一番新しい地下鉄大江戸線も深々度ですから、相当深いと思います。地下街も含めて、東京都の上水道本管直径2メートル、水圧2.5から3キロを考えると、地下鉄、地下街が全没する可能性さえあると思います。地上ではビルが崩壊し、多数の帰宅困難者であふれ、火災が発生、冬場の寒い時期であれば一層状況は厳しくなります。そのとき、東日本大震災津波の瓦れき処理に一番先に手を挙げてくれた東京に対して、岩手は何ができるのでしょうか。東京事務所との連絡はどうでしょうか。在京岩手県人会との連絡はどうしますか。支援は陸からですか、空からですか、海からですか。
 天明3年―1783年、長野県境の浅間山が大爆発を起こし、山体の3分の2が吹き飛んでしまい、噴煙は東北地方にも流れ、ちょうど稲の出穂期にしばらく太陽が隠れて、これが天明の大飢饉の元凶であり、三閉伊一揆の遠因ともなったと言われております。
 福島の原発事故の発生が7月から10月の台風シーズンであったら、東北はもっと大変なことになっていたかもしれません。日本は台風大国であり、この台風は必ず南からやってくるのです。北海道で台風が発生したとは聞いたことがありません。物資の準備や備えには限りがありますが、心の準備にはお金はかかりません。覚悟の問題だと思いますが、いかがでしょうか。
 次に、国道106号の大規模改修による観光客の誘致等について伺います。
 東日本大震災津波からの復興の目玉として国道106号が復興支援道路として事業化され、昭和45年の岩手国体以来の大規模改修が入ることになりました。これまで歴代の県議会議員や市町村長が、繰り返し、繰り返し取り組んできた要望に、一挙に解決の目途が立つことになり、関係者各位に対して心から感謝と御礼を申し上げます。
 現在の国道106号は、宮古市役所から盛岡市役所間が約94キロメートルでありますが、これが約85キロメートルに短縮され、所要時間が現在の105分から約90分となり、いよいよ三陸の夜明けが近いと感じております。平成30年代の前半には完成すると見込まれているところであり、また、立丸峠のトンネル化工事等の完成により、花巻空港と宮古の間もより近くなることから、まず打つべき手を打っていくべきであると考えます。
 まず、観光客の誘致を図らなければなりません。これまで県外から盛岡に着いた観光客が、案内所で、三陸へ行きたいが時間はどのぐらいかかりますかと聞いた場合、片道2時間かかりますと言われ、そうすると移動だけで4時間、つまり半日が潰れる。だったらほかに回ろうということになり、なかなか沿岸まで足が伸びませんでした。しかし、今度は違います。道の駅やトイレの整備を同時並行的に進め、あわせて、川井地区を通過するだけにならないような工夫も必要と考えます。観光の推進について、考えがあればお示しください。
 次に、宮古港の利用促進を図ることが、宮古、下閉伊の発展に必須の条件であると思ってまいりましたので、提言を含めて伺います。
 国道106号が約90分で盛岡と結ばれることで、宮古港は県都盛岡と一番近い重要港湾となります。その宮古港は、来年、南部藩御用達港として開港400周年を迎えます。
 宮古港では、幕末維新のころ、江戸幕府艦隊を率いて北海道に渡り共和国をつくろうとした榎本武揚に対して、これを許さないとして攻めてきた黒田清隆の新政府軍の軍艦甲鉄を奪い取ろうとして、土方歳三、甲賀源吾らが戦った日本で最初の海戦が行われました。
 また、第二次世界大戦のころ、伊号第一二潜水艦の艦長は、宮古市鍬ヶ崎出身の工藤兼男大佐であります。14年前の開港385周年の際には、当時最大級の補給艦ときわ9、000トン、2、000トン級の護衛艦と1、500トン級の潜水艦を入港させました。潜水艦はその後も数回入港しております。これらのゆかりを大切にし、この際、海上自衛隊の補給基地化を提案いたします。
 海上自衛隊の補給基地は、現在、長崎の佐世保、広島の呉、京都の舞鶴、神奈川の横須賀、そして青森の大湊の5カ所であり、横須賀から大湊までの間は広くあいております。隊員の方々もOB会である隊友会の皆様も、宮古が補給基地となり、水、果物、野菜などの補給と隊員の休養ができることは大変ありがたいと言っております。
 日本海が何かときな臭い今日、主な訓練海域は太平洋三陸沖のようであります。また、一旦出港すると、2カ月ぐらい携帯電話は一切使えないこともあり、海上自衛隊の中で一番手当が高いのが潜水艦乗組員だとも伺いました。東日本大震災津波の際も、余り知られていないことですが、当時、出港可能な艦艇は全て3県沖に出動させ、各港に小型艇を出して遺体捜索や支援物資の搬送、あるいは避難所から艦艇に招いてお風呂や食事の提供をいただいたのであります。
 本県には一本木の陸上自衛隊、山田町には航空自衛隊のレーダーサイトがあり、海上自衛隊の補給基地を誘致できれば、自衛隊三軍との密接なつながりを持てることになり、今後さらに何かあった場合に大きな後押しをいただけるものと思います。
 四つの重要港湾を構える県が、宮古市と手を携えて主導的に取り組むべきであると思いますが、いかがでしょうか。
 宮古港の神林マリーナは、再来年の岩手国体のヨット、セーリングの会場となります。少し狭いため、隣の木材港の一部を使用させてもらうと聞きました。この木材港は、現在ほとんど使われておりません。また、今後も南洋材が流通することはほとんどないであろうと考えるとき、木材貯木のための資格は残しつつ、漁業者との折り合いをつけて、宮古マリーナを東北一のマリーナとして整備し、盛岡広域圏50万人の港として、あるいは夏場に距離の関係で秋田港に行っていたヨット、ボート、シーカヤックなどを楽しむ方たちの使える場などとして活用していくべきであると考えますが、いかがでしょうか。
 さらに、これからの究極の娯楽旅行は、船を使っての旅、クルーズになると思います。最大1年航海世界一周の旅から、3泊4日北海道知床クルーズまで、コースも金額もまさにピンからキリまであります。定年まで勤め上げた御主人が、奥様への感謝を込めての東南アジア1カ月クルーズ、新婚旅行や子供たちに世界やアジアの広さを体験させるクルーズ、本当にいっぱいあります。宮古―盛岡間が約85キロメートルで結ばれた暁には、宮古港をクルーズの寄港地ではなく、出入港として活用することが可能となります。
 国立海上技術短期大学校と県立宮古水産高校の立地する宮古港は、若者が世界に羽ばたく港でありたいと思います。クルーズについては、県内最大のデパートの友の会会員をターゲットとするべきであります。少なくとも、5年後の状況変化を考えた上での答弁を期待します。
 次に、JR山田線の復旧について伺います。
 私は、これまで、JR山田線の草創期のエピソード、山猿発言を取り上げて発言してまいりましたが、大正9年7月の帝国議会の議事録の中には、そのような箇所を見出すことができませんでしたので、これまでの私の発言を撤回いたします。ただし、この逸話については、山田線の予算通過の翌月に原敬元総理とともに盛岡を訪れて講演をした元鉄道大臣の元田肇が、予算審査の際強硬に反対した貴族院の中村是公をやり玉に上げて、貴族院の中村是公ごときは、盛岡より山田に至る間はぼうぼうたる野原にして猿住める国なり、国家の巨費を投じて猿を乗せんとするやと極端な反対をなせり。余はこれに答えて、大森林や鉱山の天与の宝庫である、何の不利なるやと語ったという内容に尾ひれがついて広まったもののようであります。
 さて、発災から3年8カ月目が経過し、JR山田線の復旧について何らの進展がないことを心配しておりましたが、先週11月26日に、山田線の三陸鉄道への運営移管案に関して、赤字補填や運賃差額補填など、移管に伴う地元への協力金として、JR東日本が30億円を負担する意向を示しているとの報道がありました。山田線の運休は、宮古、山田、大槌、釜石の復興計画のネックになっており、原敬元総理も心配していると思います。報道された内容の再確認になるかもしれませんが、JR東日本が示した負担案の詳細や運営移管に向けた今後のスケジュールについてお伺いいたします。
 また、現在の磯鶏駅を、県立大学宮古短期大学部付近に宮古短大駅として移設し乗客数を確保するとともに、短大の学生たちにマイレール意識を持ってもらうためにも、経営に参画させるような取り組みが必要であると思いますが、いかがお考えか伺います。
 最後に、漁業取締船について伺います。
 去る11月19日、釜石市において、漁業者が待ち望んでいた漁業取締船第5代はやちねの竣工式がとり行われました。はやちねは総トン数64トンで、ウォータージェット推進器を二つ装備し、航行速力が47ノット、時速では約87キロメートルで、国内最高の漁業取締船と聞いております。はやちねは、沿岸域のアワビ密漁から沖合域の違反操業の監視、取り締まりに大きく貢献するものと期待しております。
 一方、もう一隻の漁業取締船岩鷲については建造から十数年が経過し、東日本大震災津波では陸上に乗り上げるなど、老朽化と耐久性が心配されるところであります。アワビの密漁や沖合の違反操業に対応していくため、また、本県の海岸線の長さ700キロメートルを考えれば、早急に岩鷲を代船建造し、高速船の2隻体制として密漁者から岩手の海を守るべきと思いますが、岩鷲の代船建造をどのように考えているのか伺って終わりにいたします。
 延長になりました。失礼しました。御清聴ありがとうございました。(拍手)
〔知事達増拓也君登壇〕
〇知事(達増拓也君) 伊藤勢至議員の御質問にお答え申し上げます。
 まず、知事選挙についてでありますが、東日本大震災津波という未曾有の非常事態が発生し、岩手県として総力を挙げて復興に取り組む中、引き続き、知事として県政を担わせていただきたいという思いから、去る11月15日に立候補の決意を表明したところであります。
 3年前の岩手県知事選挙に臨むに当たり、岩手県東日本大震災津波復興計画、そしていわて県民計画の推進を公約として掲げ、志を同じくする皆さんとともに運動を展開し、県民の負託を得て、2期目の任期に当たって両計画推進に全力で取り組んでまいりました。
 この間、県民の皆様そして県議会の皆様の御協力をいただきながら復興の基盤整備を進め、今年度からは本格復興期間に移行し、希望郷いわて国体・希望郷いわて大会を2年後に迎えるとともに、ILCや三陸ジオパークを初めとする岩手の未来を切り拓くプロジェクトも、現実的な展開が始まったところであります。
 東日本大震災津波からの復興は、必ずなし遂げなければならないものであります。岩手は一つ、復興に一つ、これをモットーに、本格復興の推進を中心に据えて県政を担ってまいりたいと思います。
 次に、職員給与についてでありますが、東日本大震災津波からの本格復興に向けて、職員はさまざまな創意と工夫を重ねながら懸命に対応してきていると認識しております。また、復興に当たっては、人材の確保や職員の勤務意欲の向上は大事な課題であると考えております。
 職員給与は、法に定める給与決定の原則に基づいて、国や他の地方公共団体職員の給与や地域民間給与との均衡を考慮して決定しなければならないものとされており、地域経済の回復と、これに伴う賃金水準の向上が本県職員の給与の改善にもつながりますことから、復興計画に掲げるなりわいの再生など、県内経済の活性化に努めていくことが必要と考えております。
 また、本県職員の通勤事情に鑑み、今般の給与改定において、本県独自の通勤手当の改定を行うこととしたところでありまして、今後におきましても、さまざまな視点から職員の勤務意欲の向上に取り組んでまいります。
 次に、ILCの誘致についてでありますが、県では、ILCの実現に向け、東北ILC推進協議会や北海道東北地方知事会、北海道・東北六県議会議長会議などと連携して、東北が一体となった要望活動を行ってきたところであります。また、外国人研究者とその家族の受け入れ環境整備につきましては、来日した海外の研究者への情報提供や意見交換を行っておりますほか、県庁内にワーキンググループを設置して、関係市や関係機関とも情報共有をしながら検討を行っております。
 先日、CRENの研究施設を視察いたしまして、ホイヤー所長らと会談してまいりましたが、ILCの学術的な意義や国際社会への貢献など、その重要性を再認識し、日本への早期の誘致について決意を新たにしたところであります。
 ILCの実現に当たりましては、日本政府の早期の決断を期待されていることから、経済界とも連携し、要人などへの働きかけや国への要望活動を強化するとともに、外国人の受け入れ環境の整備などを含め、地元としてあらゆる努力を惜しまずに対応していきたいと思います。
 その他のお尋ねにつきましては関係部長から答弁させますので、御了承をお願いします。
〔政策地域部長齋藤淳夫君登壇〕
〇政策地域部長(齋藤淳夫君) まず、次世代エネルギー開発についてでありますが、県では、海洋再生可能エネルギーについて、新産業の創出や地域振興を目指した取り組みを進めており、文部科学省の東北復興・次世代エネルギー研究開発プロジェクトにおいては、本県での実施を国等に働きかけ、来年度、東京大学等が波力発電装置を久慈市に設置し、実証研究を行う予定となっております。また、釜石市における海洋エネルギー実証研究の拠点化に向けまして、東京大学や地元関係者と連携し、研究開発プロジェクトの導入に向けて取り組んでいるところであります。
 核融合エネルギーにつきましては、燃料を生成する原料となるリチウムなどが海水中に豊富に存在することなどから、将来のエネルギー源として期待されております。現在、日本、EUや米国などによる国際熱核融合の実験炉―通称ITER―計画が推進されているほか、国内においても、岐阜県にある核融合研究所や大阪大学などで研究が進められていると承知しております。
 しかしながら、核融合エネルギーの実用化には、まだ相当の期間、恐らく数十年程度を要すると聞いております。県といたしましては、こうした最先端の研究、開発の動向を注視していく必要があると認識しております。今後、このような次世代エネルギー開発に携わる研究者等とのネットワークを強化するとともに、三陸の海の持つ多様な資源の活用による新たな産業創出や地域振興に向けて取り組んでまいります。
 次に、JR山田線の復旧についてでありますが、本年8月に地元市町村と確認した、三陸鉄道による運営を鉄道復旧に向けた有力な選択肢とする対応方針に沿って、県が窓口となり、JR東日本と条件面の詰めの協議を行ってきたところであります。
 先般の沿岸市町村首長会議において、県から地元市町村に対し、JR東日本の支援内容を提示したところであります。JR東日本からは、赤字想定額の補填、運賃差額の補填及び災害時、施設設備更新時の費用負担を勘案した一時金30億円の支援に加え、車両の無償譲渡、一定の軌道強化や施設整備、人的支援、地域活性化や利用促進への協力を行う意向が示されているものであります。
 県といたしましては、まずは、これらの支援内容を踏まえ、地元市町村にしっかりとした意思形成をしていただいた上で、年内に予定している沿岸市町村首長会議において方針の決定を行いたいと考えているところであります。
 次に、駅の移設などについてでありますが、現在、宮古市におきまして、団地や県立大学宮古短期大学部が位置する八木沢地区周辺に、災害公営住宅の建設も予定されていることなどから、当該地区における新駅設置の必要性について検討が行われていると聞いております。
 県におきましては、仮に三陸鉄道による運営案の合意が得られ、三陸鉄道が山田線を運営することになった場合、より需要が見込める地域に駅の移設や新駅の設置を行うことは重要な利用促進策の一つとして認識しているところであります。また、利用者の中心となり得る短大生や高校生を初めとした沿線住民にマイレール意識を持ってもらうことは極めて重要と考えられることから、県といたしましては、地元市町と連携しながら、御提案のあった取り組みについて検討してまいりたいと考えております。
〔総務部長小田島智弥君登壇〕
〇総務部長(小田島智弥君) 防災対策についてでありますが、東日本大震災津波を経験し、国内外の多くの機関、団体等から御支援をいただいている本県としては、大震災で得た教訓と経験を生かし、県内のみならず県外で発生する災害にも対応していくことが重要と認識いたしております。
 こうした認識のもと、県では、今後発生が懸念される首都直下型地震や南海トラフ巨大地震など、県外で発生した大規模災害に対し的確な応援が実施できるよう、平成26年3月に岩手県災害時応援計画を策定し、体制整備を図るとともに、今年度は、大規模災害に対し広域的に連携しながら対応できるよう、本県が担当県となり、北海道、東北ブロック8道県が締結する災害時相互応援協定の改定にも取り組んだところであります。
 さらに、議員御指摘のとおり、本県から遠い地域で発生している大規模な火山噴火等の災害が、気象条件などにより本県に大きな影響を与える可能性がありますことから、今後の災害対応に当たっては、災害に関するさまざまな知見や情報の収集、分析を行い、本県において不測の事態が生じないよう、万全の体制で対応してまいります。
〔商工労働観光部長橋本良隆君登壇〕
〇商工労働観光部長(橋本良隆君) 国道106号大規模改修による観光客の誘致についてでありますが、現在進められている宮古盛岡横断道路などの復興道路の整備は観光振興においても大きなチャンスであると考えており、アクセス時間の短縮を初め、沿岸地域での滞在時間の増加や移動の快適性の向上などにつながるものと期待しております。県としても、さまざまな機会を捉え、三陸ジオパークや三陸復興国立公園など、沿岸地域の豊富な観光資源とあわせて復興道路の整備によるメリットを発信し、沿岸地域への誘客に取り組んでまいります。
 また、沿岸広域振興局では、宮古市や地元関係者とともに、復興道路の整備により、道の駅を通過することとなる区界地区をモデルとした地域振興策を検討しているところであり、その検討状況も踏まえつつ、道の駅や産直施設、農村文化などを活用した魅力ある観光地づくりを促進し、内陸から沿岸への観光ルートとしての魅力を高めながら、観光客の一層の誘致に取り組んでまいります。
〔県土整備部長佐藤悟君登壇〕
〇県土整備部長(佐藤悟君) 宮古港の活用につきまして、まず1点目の海上自衛隊の補給基地化についてでありますが、本県では、訓練に伴う補給や広報活動の一環として、自衛隊の艦船等が県内の重要港湾4港に寄港いただいているところであります。補給基地化に当たっては、現時点では大湊から横須賀までの間に補給基地が必要な状況にはないと聞いておりますが、三陸沖等での訓練の際には、近くの港に休養や補給する場所が必要と聞いており、まずは着実に寄港いただくことが重要と考えております。
 自衛艦等の寄港は、地元の経済の活性化にも寄与するものと認識しておりますことから、寄港に際して円滑に岸壁が利用できるよう調整するほか、宮古市と連携し、自衛艦等の受け入れ機運の醸成や自衛隊へ寄港要請を行うなど、宮古港への立ち寄り回数の増加に努めてまいります。
 次に、神林地区へのマリーナの整備についてでありますが、宮古港の木材港は、南洋材の輸入量の減少に伴って利用が年々少なくなっているところであります。また、プレジャーボートについて、今年度実施いたしました実態調査では、係留、保管隻数が減少している状況であります。マリーナの整備に当たりましては、利用ニーズの把握や他の利用者との調整、整備や管理の方法、費用などを検討する必要がありますが、加えて、国道106号を初めとする復興道路等の整備により人や物の流れが大きく変わることも考慮する必要があるものと考えております。
 県といたしましては、当面は木材港の利用状況の推移を見ながらプレジャーボートの木材港への受け入れについて検討するとともに、現在、国が改定作業を進めている東北港湾ビジョンなどを踏まえながら、マリーナを含む宮古港のあり方について検討してまいります。
 次に、クルーズの出入港についてでありますが、県では、これまで、地元と連携し、クルーズ船社へのポートセールスや寄港時における歓迎行事などを実施してきており、震災により一時的に減少したものの、平成25年度には震災前と同じ寄港数まで回復してきております。
 こうした中、来年度においては宮古港を発着地とするワンナイトクルーズが計画されるなど、クルーズがより身近なレジャーとして定着してきていること、また、今後、被災地域の復興が進み、国道106号を初めとする復興道路の整備により観光地としての利便性の向上や交流人口の増加が見込まれることから、クルーズによる一層の地域活性化も期待できるものと考えております。
 宮古港は、大型客船が利用しやすい水深10メートル、延長555メートルの岸壁を備えていることから、今後とも首都圏で開催するポートセミナーにおいて船社に優位性をPRすることや、全国クルーズ活性化会議と連携し、寄港数の増加に向けた旅行商品の造成を働きかけるなどの取り組みとあわせ、将来的な出入港化の可能性についても研究を進めてまいります。
〔農林水産部長小原敏文君登壇〕
〇農林水産部長(小原敏文君) 漁業取締船についてでありますが、本県の沿岸には漁業者の貴重な収入源となるアワビが広く生息しており、密漁を防止する必要があること、また、沖合には好漁場が広がり、さまざまな漁船漁業が営まれ、その操業秩序を保つ必要があることから、岩鷲及びはやちねの高速漁業取締船2隻体制で、密漁や違反操業などの監視と取り締まりを行っております。
 漁業取締船岩鷲は進水からことしで17年目を迎え、老朽化が進んでおり、修繕費用がかさむなど、代船建造を検討する時期に来ていると捉えております。今後、岩鷲の代船の建造に向け、船の構造など具体的な検討を進めることとしております。
〇副議長(大宮惇幸君) この際、暫時休憩いたします。
午後3時19分 休 憩
出席議員(44名)
1  番        高  田  一  郎 君
2  番        清  水  恭  一 君
5  番        神  崎  浩  之 君
6  番        城  内  愛  彦 君
7  番        福  井  せいじ 君
8  番        佐々木  茂  光 君
9  番        佐々木     努 君
10  番        佐々木  朋  和 君
11  番        軽  石  義  則 君
13  番        吉  田  敬  子 君
14  番        後  藤     完 君
15  番        岩  渕     誠 君
16  番        郷右近     浩 君
17  番        高  橋  孝  眞 君
18  番        岩  崎  友  一 君
19  番        高  橋  但  馬 君
20  番        小  野     共 君
21  番        高  橋     元 君
22  番        木  村  幸  弘 君
23  番        久  保  孝  喜 君
24  番        小  西  和  子 君
26  番        五日市     王 君
27  番        喜  多  正  敏 君
28  番        工  藤  大  輔 君
29  番        嵯  峨  壱  朗 君
30  番        工  藤  勝  子 君
31  番        工  藤  勝  博 君
32  番        高  橋  昌  造 君
33  番        及  川  あつし 君
34  番        小田島  峰  雄 君
35  番        大  宮  惇  幸 君
36  番        飯  澤     匡 君
37  番        斉  藤     信 君
38  番        佐々木  順  一 君
39  番        及  川  幸  子 君
40  番        伊  藤  勢  至 君
41  番        樋  下  正  信 君
42  番        柳  村  岩  見 君
43  番        千  葉     伝 君
44  番        佐々木  大  和 君
45  番        佐々木     博 君
46  番        渡  辺  幸  貫 君
47  番        田  村     誠 君
48  番        小野寺     好 君
欠席議員(1名)
3  番        名須川     晋 君
説明のため出席した者
休憩前に同じ
職務のため議場に出席した事務局職員
休憩前に同じ
午後3時42分 再 開
〇副議長(大宮惇幸君) 休憩前に引き続き会議を開きます。
 日程第1、一般質問を継続いたします。嵯峨壱朗君。
〔29番嵯峨壱朗君登壇〕(拍手)

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