平成26年9月定例会 第16回岩手県議会定例会会議録

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〇42番(柳村岩見君) 議席番号42番、自由民主クラブの柳村岩見でございます。今定例会において一般質問の機会をいただきました先輩、同僚議員の皆様に感謝を申し上げます。
 この夏、各地において台風11号、12号による平成26年8月豪雨により家屋、農地の浸水や土砂災害が発生し、5道府県ではとうとい人命が失われるなど大災害に見舞われました。特に8月20日発生した広島土砂災害では多くの人命を失う大災害となりました。それぞれの被災地の皆様にお見舞いを申し上げますとともに、亡くなられた方々の御冥福をお祈りいたします。一日も早い復旧、復興を御祈念申し上げます。また、9月27日に発生した御嶽山の噴火により甚大な被害が生じております。お亡くなりになられた方々の御冥福をお祈り申し上げますとともに、被災された方々に対し心からお見舞いを申し上げます。
 質問は、項目、要旨通告とともに全文通告、わかりやすい質問とし、最初から再質問を用意するなどはいたしておりませんので、明快なる御答弁をお願い申し上げます。
 まず、知事の県政運営についてお尋ねいたします。
 達増知事には、1期目の任期を終えようとしていた、平成23年3月11日14時46分18秒と言われておりますが、三陸沖、牡鹿半島の東南東約130キロメートルの海底を震源とするマグニチュード9.0の東北地方太平洋沖地震が発生。この地震により巨大な津波が発生。岩手県沿岸部において壊滅的な被害を受けました。被災から3年半が経過いたしましたが、県政課題の第1が震災からの復旧、復興でありますから、岩手県知事があの日、あのときどう感じ、どのような決意をされたかは大変大事なことであり、改めてお尋ねいたします。
 県では、平成25年を復興加速年と位置づけ、今年を本格復興推進年として鋭意復旧、復興に向けた事業を最優先に取り組んでおります。知事を初め職員の皆様の御努力に対して敬意を表しておきたいと思います。
 岩手県東日本大震災津波復興計画の取組状況等に関する報告書、第1期、平成23年度から平成25年度までの取り組み、いわて復興レポート2014によれば、目標はおおむね達成したが、県民が復興を実感できる程度まで進捗していないと報告されております。県民の復興に対する感じ方をこのように報告しなければならなかった要因を知事はどのように認識され、今後どのように復興を進めていかれようとしておられるのかお尋ねいたします。
 被災市町村から、また、県においても東日本大震災津波からの本格復興に当たっての提言、要望が国に対して行われております。この中で、国の復興財源のフレームは、集中復興期間である平成27年度までしか示されていないことに対して、復興事業を計画的に実施するために、復興が完了するまでの間の十分な財源フレームを早期に示すとともに、所要の財源確保を図るようにとの要望があります。
 詳細には、特例的な財政支援の継続、地方負担分に対する財源措置の拡充、取り崩し型復興基金の追加的な財源措置等であります。既に国や政権政党の責任ある立場の方々の発言として、このことに対して、平成27年のしかるべき時期に方向を示す、切り捨てることはない、十分考えている等の発言があるところであり、平成27年中盤には方針が示されると思います。
 この一連の要望活動の中で、岩手県は余り来られないとの話を聞くところであります。もちろん、要望活動はされていると思います。要望にも幅があって、型どおりの要望もあれば、心情に迫る要望もあると思います。私は、未曽有の被災県岩手県の知事としては、よほどしっかりした要望活動が求められると思います。今後の決意についてお尋ねいたします。
 次に、東日本大震災津波からの復興について何点か絞ってお尋ねいたします。
 先般、報道で、東日本大震災で被災し、応急仮設住宅に入居している住民の移転先に関する希望調べの結果、予想を上回る多くの世帯で意向が不明であることが報じられました。未定や検討中との回答と、回答のない数が相当数とのことであります。
 応急仮設住宅等からの移転先については、平成26年9月時点で県がまとめた資料によると、住宅被害のあった沿岸11市町村において、住宅再建を要する被災者世帯数1万9、166件中、再建調査に答えた世帯が1万5、588件となっております。未回答数は3、578件となりますが、調査に回答した中に1、152件の決めかねている世帯があって、再建方法の意向未定総数は4、730世帯となっております。
 それぞれ長年にわたってつくり上げてきた生活の場、なりわいの場、まちを失った被災地の方々にとっては、簡単に応急仮設住宅からの先々について判断できないことは容易に想像ができます。復興のおくれで新しい地域やまちをイメージできない、資金難の問題を抱えて移転先を見通せない方々が多いのが現実と思います。
 まず、このデータから見てとれる現状をどのように分析されておられるかお尋ねいたします。また、被災地に、被災された方々に寄り添っていくためには、真にこの方々に寄り添って意向を丁寧に聞き取っていく必要があります。その取り組みについてお尋ねいたします。
 次に、店舗兼住宅を再建する事業者において、住宅資金の借り入れに伴う担保権の設定が店舗分を含む建物全体に及ぶため、補助金等に係る予算の執行の適正化に関する法律第22条財産の処分の制限に抵触し、当該担保権の設定ができず、店舗兼住宅での再建ができない事例が生じている件についての認識と解決策の方向性についてお尋ねいたします。
 住宅部分の担保権設定を可能にするような措置が必要と考えます。被災前、多くの店舗兼住宅が存在したわけですし、当然、再建の手法においても該当する事案が一定件数あると考えます。県としての要望活動や見通しについてお尋ねいたします。
 津波により被災、浸水し、移転跡地となる宅地においては、防災集団移転促進事業により買い取りが進められているわけですが、これらの土地は連担していなかったり、全てが売却希望地でないことなどから買い取る土地が点在しており、移転跡地において新たな土地利用を図る際の大きな懸念材料となっているケースがあります。こうしたことから、点在する土地の集約等を伴う被災移転跡地を活用したまちづくりを円滑に進めるための新たな方策や手法の提示、既存制度の改善策が要望されております。この点についての認識、解決手法についてお尋ねいたします。
 次に、人口減少対策についてお尋ねいたします。
 人口はいろいろの要因を持ちながらふえたり減ったりします。その要因を、世界では気候の変化を挙げる人もいれば、それだけでは説明ができないとして養える食糧を挙げる人、水を挙げる人、経済成長を挙げる人、生活様式の変化、将来への希望を言う人もあります。それだけに静止人口を目指すべきだという論があって、それが政府が示した50年後1億人維持という人口目標であります。
 人口増加対策として移民政策がとられた時代を経て、第二次世界大戦では多くのとうとい人命を失ったのですが、戦後のそれぞれの国策があって増加に転じた時代を迎えました。乳幼児死亡率の改善、食生活を含む生活改善運動、医学の発展、医療制度の改善等により、日本人の平均寿命は女性が世界第1位、男性が第4位という長寿国となり、日本民族が世界でかち取った勲章であります。このことから考えると、人口減少対策での難病やがん、岩手県の脳卒中対策などを除けば、長寿の部分については順調に進んでいると考えるべきだと思います。
 岩手県の人口のピークは、昭和36年の144万9、000人、直近の平成22年の国勢調査では133万人。平成9年以降、人口減少が続いております。現在の状況が続けば、平成52年は93万8、000人まで減少すると見込まれております。
 これらのことから、県では、6月17日、知事を本部長とし、各部局長計25人で構成する岩手県人口問題対策本部を設置。同日、第1回会合を開いて、人口減に対し各部局で横断的に情報を共有し、課題解決に向け全庁で取り組むとされました。知事は、この対策本部の設置で、必要な施策については来年度当初予算に盛り込めるよう早急に検討する、復興とはふるさとを消滅させないこと、定住促進、少子化、子育て支援について全庁で取り組みを強化すると述べておりますが、改めて、人口減少に対する所見と、人口問題対策本部に期待し、果たさなければならない使命についてお尋ねいたします。
 県の人口問題対策本部と、先行して設置された副部長級による人口問題研究会や岩手県・市町村人口問題連絡会議との連携や位置づけについてもお尋ねいたします。人口問題対策本部の会合は既に4回開催されており、その議論の展開と中間取りまとめが9月26日に公表されたところですが、その中間取りまとめの概要と今後の検討方向についてお尋ねいたします。
 また、国においては、人口減少対策など地方創生の司令塔である政府のまち・ひと・しごと創生本部が設置され、初会合の中で、東京一極集中に歯どめをかけるため、次元の異なる政策を結果が出るまで実行するという基本方針を決定いたしました。秋の臨時国会に地方創生法案を提案し、年内に国の長期ビジョンと総合戦略を策定するとしております。加えて、交付金の創設、来年度予算への反映で地方自治体が自由に使える財源の確保の必要性は認めながらも、一律ではなく、やる気のある地域を重点的に支援するとしております。人口減少対策など地方創生の推進のため、やる気のある地域となる議論や予算編成に向けてスピードある議論が求められると考えますが、御対応についてお尋ねいたします。
 喫緊の農業問題、平成26年産米の概算金についてお尋ねいたします。
 全農岩手県本部は、9月10日に開いた運営委員会で、平成26年産米を出荷した農家への前払い金である概算金を決定し、発表いたしました。それによると、1等米60キロ、主力銘柄ひとめぼれ8、400円と、前年比較2、800円の減額で、過去最低であった平成22年産米の8、700円をも下回った大変厳しいものでした。ひとめぼれの概算金は2年連続で下落し、前年比較2、800円減は平成22年の3、600円減に次ぐ大幅な落ち込みとなりました。ほかの主食うるち米は、あきたこまち7、900円、前年の3、300円減、岩手県オリジナル品種いわてっこ、かけはし、どんぴしゃりがそれぞれ7、100円で、前年の3、800円減少となっております。もち米では、ヒメノモチ9、500円、前年比較1、000円の減、もち美人9、000円、同比較1、500円減、こがねもち1万200円、同比較1、680円の減となりました。
 概算金は、米の消費動向や在庫状況、適正な備蓄量、その年の作柄予測等によって決定され、米卸などへの予想取引価格から経費を差し引いた額をあらかじめ支払うとされております。全農岩手県本部が設定し、農協独自に上乗せ加算することがありますが、当年産米の販売が完了した後に清算し、販売状況などに応じて組合員に差額を支払う場合がありますが、当然、実際の販売価格にも影響を与えるものであり、大幅な下落は生産農家の資金繰りに、今後の生産意欲に大きく影響を与えるものであると考えます。ほとんどの稲作農家では耳を疑い、これほど採算ベースを割り込む価格はこれまでになく、農家が稲作を続ける意欲を失うほか、国民の主食である米の生産をこのまま放置していいのか、早急な対策が求められると思います。
 そこで、大幅な概算金の下落を予測できませんでしたか、お尋ねいたします。
 私は、自分の身の回りを見ていて、家庭の食事でも外食でも、米の消費量の減少がすごいスピードで進んでいると思います。それだけに主食以外への利用拡大も叫ばれてきましたが、これまでどのように取り組んでこられたのでしょうか、お尋ねいたします。また、新品種開発、ブランド化の取り組みはどうなっていて、今後、その政策、対策をどう進められ、スピード化していかれるかお尋ねいたします。
 米概算金の大幅下落への激変緩和対策として、複数の農協が概算金上乗せ決定を発表し、ほかにも検討している農協もあると聞いておりますが、状況をどのように把握しておられますか、お尋ねいたします。また、県では、概算金の大幅下落に対して、前回、概算金が大幅に下落した平成22年に講じた対策を検証しながら対応策を講じるとしておりますが、このたびの対策と、平成22年に実施したつなぎ融資の実績と評価についてお聞かせください。
 経営所得安定対策では、制度的に一定の要件を満たす農業者に対して、収入減少による農業経営への影響を緩和するため、米、麦、大豆等の当年産の販売収入の合計が標準的収入を下回った場合に、その差額の9割を補填する米・畑作物の収入減少影響緩和対策、ナラシ対策と、平成26年限りとされているナラシ移行のための円滑化対策があると思いますが、この二つの制度の内容と加入状況、平成22年度の実績について御説明ください。
 また、国では、農林水産業・地域の活力創造プランを取りまとめ、産業政策と地域政策とを車の両輪として、農業、農村全体の所得向上を目指すこととしており、このことを横にらみにしての展開も求められるところですが、このプランを踏まえ、県では農業所得の向上に向けどのように対応していくのかお尋ねいたします。
 北海道東北地方知事会では、9月19日、農林水産省に対して米価下落対策についての緊急要望をされました。その内容と、込められた気持ちについて、これは知事にお尋ねいたします。
 また、県は、平成26年産米概算金大幅前年下落問題で各種団体から緊急要望を受けております。この中で、県町村会からの価格安定に関する国への働きかけや、県による生産者への資金融資などを求める要望等に対してどのように対応されるかお尋ねいたします。
 次に、木材産業の振興についてお尋ねいたします。
 地域経済再生の切り札として、雇用の受け皿として、林業への期待がかつてないほど高まっております。実際、林業資源が豊富な先進国では、林業は国や地域を支える重要な柱となっており、ドイツでは、林業、木材関連産業は国の最大の雇用を抱える産業群となっております。
 日本では、長く林業が厳しかったのは、戦後の復興特需で木を切り尽くしてしまった。枕木、電信柱がコンクリート製品に変わった。建物が木造から耐火構造のRCに変わった。需要低迷とともに木材の貿易自由化、担い手の減少、高齢化等、状況を語る切り口はいろいろですが、低迷が続いております。
 岩手県の森林の公益的機能の価格は、平成14年の林業技術センターの算定では2兆6、398億円とされ、これは本県の平成26年度当初予算1兆167億円の2倍強に当たります。まさに本県にとってかけがえのない貴重な財産であります。本県では戦後に造林した杉、アカマツ、カラマツの人工林が収穫期を迎えており、木を育てる時代から使う時代を迎えております。このような時代に県産材を積極的に利用することが、森林を適切に整備及び保全することにつながり、この貴重な財産である森林の価値を高めていくことと思います。
 岩手県では、平成15年に岩手県公共施設・公共工事木材利用推進行動計画を策定し、国よりも早く公共施設、公共工事で率先して木材を使うこととし、被災地における災害公営住宅の木造化、また、教育施設では、県立花巻農業高等学校の木造化や高田高等学校の体育館の内装木質化等に取り組んでいることは高く評価したいと思います。木材利用においては非常にいい風が吹いていると感じております。木材産業において静かにはっきりと革命が起きていて、国産材の輸出の増加、木材自給率の改善、木材価格の改善等が進んでいると考えております。この勢いをさらに発展させる取り組みが必要と考えますが、知事は、木材産業において、現状、変化、将来をどのようにイメージされておられるかお尋ねいたします。また、木材産業の状況と変化について、具体的にそれぞれのデータを示しながら御説明ください。その上で、岩手県の木材産業の振興を今後どのように進めていこうとされているのかお尋ねいたします。
 以上で私の一般質問を終わります。答弁次第によっては再質問をさせていただきます。御清聴ありがとうございました。(拍手)
〔知事達増拓也君登壇〕
〇知事(達増拓也君) 柳村岩見議員の御質問にお答え申し上げます。
 まず、大震災津波の発災時の決意等についてでありますが、東日本大震災津波は、これまで数多くの災害に見舞われてきた本県にとっても、かつて経験したことのない大災害であり、多くのとうとい命と財産が奪われました。防潮堤を越え、土煙を上げながら建物や車を容赦なく押し流していく黒い濁流、津波による瓦れきで覆い尽くされた市街地や陸に打ち上げられた幾多の漁船など、想像を絶する惨状を目の当たりにしました。日々の暮らしが営まれてきた沿岸の街々の変わり果てた姿を前に、私は、その犠牲と被害の大きさを胸に刻み、追悼や慰霊の深い思いを復興への起点とし、犠牲になった方々のふるさとへの思いをしっかりと引き継ぐこと、被災された方々の人間らしい暮らし、学び、仕事を確保し、みずからの幸福を追求できるようにすること、この二つを強く決意したところであります。平成23年8月に策定した復興計画におきましても、人命が失われるような津波被害は今回で終わりにするとの強い思いを県民的に共有し、いのちを守り、海と大地と共に生きる、ふるさと岩手・三陸の創造を目指す姿として掲げました。一日も早い復興の実現に向け、被災者の方々を初め、県民全体の地元の底力、そして日本全国、さらに世界に広がるさまざまなつながりの力、これらを原動力に、県政史上かつてない規模の大事業を全力で推進してまいります。
 次に、県民の復興の実感と今後の復興の推進についてでありますが、県民の方々が十分に復興の実感を得られていないのは、応急仮設住宅等での生活が長期化する中で、防潮堤の復旧、整備、災害公営住宅の整備、さらには、復興まちづくりと合わせた商店街や公共施設等の再建などが、いずれも復興を実感できる程度までは進捗していないことが主な要因と認識しております。
 このため、本年度からの本格復興期間においては、これまでの基盤復興の取り組みの成果を土台とし、地域の社会経済活動の基盤となる復興まちづくりを概成させ、被災者の生活の安定と住宅再建、地域産業の再生に取り組むことにより、被災者一人一人が安心して生活を営み、復興を実感することができるように、将来にわたって持続可能な地域社会の構築を目指す取り組みを強力に推進してまいります。
 次に、復興財源に関する国への要望活動についてでありますが、集中復興期間の延長と復興財源スキームの早期提示についてはこれまでも国に対して要望を重ねてきたところであり、本年7月には、青森、宮城、福島各県とともに、復旧、復興のための財政支援の継続と財源の確保について、関係省庁に対して要望を行ったところであります。また、先ごろ竹下復興大臣来県の際にも、復興財源の確保について要望を直接伝えました。
 国からは、集中復興期間後であっても、真に必要な財源は確保するという方向性が示されているところでありますが、本格復興の推進によりさまざまな事業が進展していく中で、復興が完了するまでの間、復興交付金や震災復興特別交付税などの特例的な財源措置をこれまでと同様に継続し、新たな地方負担が生じることのないよう、あらゆる機会を捉え、市町村や他県とも連携しながら、引き続き国に強く要望してまいります。
 次に、人口減少に対する所見と人口問題対策本部の使命についてでありますが、人口減少は、将来の問題というよりも、今、目の前にある課題であり、以前から人口減少問題を重要な政策課題として捉え、雇用、労働環境の整備を初め、仕事と子育ての両立支援などに取り組んでまいりました。本年6月には人口問題対策本部を立ち上げ、総合的な対策を検討できる体制を整えました。こうした中、政府は、まち・ひと・しごと創生本部において、東京一極集中の是正などに関して大胆な政策をまとめていくとしており、県としては、地方からの人口流出の流れを逆転させるまたとない機会と捉えております。
 県の対策本部としましても、先般、出生率の低迷への対策や若年層の人口流出対策などについて早急かつ重点的に取り組まなければならない施策の方向性などを取りまとめた中間報告を公表したところであります。今後、この報告をたたき台に県内各層から意見をいただき、人口減少に対する施策を総合的に取りまとめていくこととしています。人口問題に対しては、県が総力を挙げて取り組むほか、国や市町村、民間企業などさまざまな主体が協働してその対策に取り組んでいく必要があると認識しております。
 次に、米価下落対策についての要望等についてでありますが、米は、生産者や産出額ともに多い本県農業の柱であり、米価の下落は、生産者のみならず、地域経済に及ぼす影響も大きく、極めて深刻な問題であります。今般の米価の下落については、全国的な米の需給緩和によるものでありますことから、まずは国による対応が必要と考え、また、米づくりに真摯に取り組んできた本県の生産者が安心して米づくりが行えるようにとの思いで、過剰米の市場からの隔離、経営所得安定対策の十分な予算確保や交付時期の前倒し等について国に対して緊急要望を行いました。
 また、町村会からの要望については、米価下落の影響を受ける生産者の資金繰りに対応するため、米価下落緊急対策資金の創設に係る補正予算案を今議会に提出していますほか、総合的な需給対策等に関しては、10月下旬に行われる北海道東北地方知事会議の場も活用しながら、必要な対策を国に求めていくこととしております。
 県といたしましては、今後においても、生産者が意欲を持って稲作経営を行っていくことができるよう、県産米の消費拡大や販売促進活動の強化、新たな生産、販売戦略の策定、生産コストの低減や飼料用米の導入支援などについて、関係団体と連携しながら取り組んでまいります。
 次に、木材産業の現状と将来像についてでありますが、我が国の木材産業は、合板に占める国産材割合の上昇や木質バイオマス発電による未利用資源の活用、木材輸出の拡大などの動きが見られ、国産材の需要が伸びていますほか、新しい需要につながるCLTの活用に向けた取り組みも始まったところであります。
 本県の木材産業は、東日本大震災津波により沿岸地域の木材加工施設が被災し、県内木材製品の生産量は大きく落ち込みましたが、その後、復旧、復興の取り組みにより震災前の水準に戻りつつあり、生産体制は着実に回復してきています。本年4月からは、木質バイオマス発電施設が本格稼動し、本年度中には内陸の合板工場の稼動が予定されているなど、今後も木材需要は拡大するものと考えています。
 戦後造成した人工林が成熟し、本格的な利用期を迎えている今こそ、こうした環境の変化を的確に捉え、本県の豊富な森林資源を循環利用し、林業、木材産業を成長させる好機と認識しております。そのため、森林から生産される木材を製材品や合板、製紙用チップ、木質バイオマス燃料などに余すことなく活用する、いわゆるカスケード利用を一層進めることとし、CLTの活用など新しい需要も育てながら、生産体制の整備や必要とされる木材の安定供給に取り組んでまいります。こうした取り組みを通して、林業、木材産業が成長することにより、人口減少が課題となっている山村地域においても、産業と雇用が生み出され、地域が活性化していく姿を目指していきたいと思います。
 その他のお尋ねにつきましては関係部局長から答弁させますので、御了承をお願いします。
〔復興局長中村一郎君登壇〕
〇復興局長(中村一郎君) 住まいの再建についてでありますが、沿岸被災市町村が行った住まいの再建の意向調査結果では、議員御指摘のとおり、全体の約4分の1が未回答または検討中となっており、復興のおくれや家族の年齢、健康、さらには資金の問題などにより住宅再建方法を決めかねている方が多いものと考えております。
 未回答の方の中には、住まいの再建について、ひとりで悩み、どこにも相談できない方もいらっしゃると考えられることから、県では、生活相談や見守り活動を行う生活支援相談員、健康調査等を行っている市町村の保健師の皆さんとも協力し、必要な支援につなげるよう連携を強化してまいります。また、被災者の方々が身近なところで気軽に相談できるよう、応急仮設住宅の集会所等に出向いて開催する住宅再建相談会に生活設計の専門家を派遣するなど、市町村等関係機関と連携し、被災者一人一人に寄り添った支援を行ってまいります。
〔商工労働観光部長橋本良隆君登壇〕
〇商工労働観光部長(橋本良隆君) 店舗兼住宅の再建における担保権についてでありますが、グループ補助金を活用して店舗兼住宅を再建する場合に、住宅ローンに係る抵当権の設定について国から承認を得ることが難しい状況にあり、県としても店舗の復旧そのものにも支障を来すものと認識しております。
 このため、県では、本年6月に国に対してグループ補助金を活用した店舗兼住宅の抵当権設定の特例措置を要望したところです。また、この要望に先立って、中小企業庁に対し個別に要望を行ったところです。その後も、国には機会あるごとに被災地の実情を説明するとともに、柔軟な対応について要望しているところです。国からは、この問題について対応を検討していると聞いており、引き続き、補助事業が円滑に進むよう柔軟な対応を求めていきたいと考えております。
〔県土整備部長佐藤悟君登壇〕
〇県土整備部長(佐藤悟君) 被災移転跡地活用の方策についてでありますが、これまで各市町村では、早期の宅地供給を目指して防災集団移転促進事業等による団地の整備に力を入れてきたところでありますが、宅地造成工事がある程度進んできたことから、各市町村では、順次、浸水区域の土地利用ニーズの把握等に着手しております。土地利用計画の策定を進めるに当たりましては、それぞれの地域の地理的条件がさまざまであり、土地需要の見通しも不透明であることなどが課題と認識しております。また、事業により買い取った土地が点在することも移転跡地利用を難しくしている一因であると考えております。
 一部の市町では、移転跡地を利用する手法として、土地区画整理事業を導入し商業や産業系の土地利用を計画したり、漁業集落防災機能強化事業により土地を買い取り、水産関連用地として活用する取り組みを進めております。このほか、敷地の集約化に主眼を置いた柔軟な区域設定や、公共減歩を伴わない、いわゆるやわらかい土地区画整理事業の活用や、土地の権利関係はそのままにして、買い取った土地と個人の土地を取りまとめて一体的に事業者等に貸し付ける方法などが考えられます。
 県といたしましては、先進事例やさまざまな制度の活用などの情報提供を行うとともに、移転跡地の利用に係る課題を整理し、必要に応じて国に制度の柔軟な運用について要望していくなど、引き続き市町村の支援に取り組んでまいります。
〔政策地域部長齋藤淳夫君登壇〕
〇政策地域部長(齋藤淳夫君) まず、人口問題対策本部と研究会、県・市町村連絡会議の連携や位置づけについてでありますが、県人口問題対策本部は、県としても人口問題に対する施策を全庁的に検討するため、知事を本部長として設置したものであり、一方、人口問題研究会は、対策本部の下部組織として、本県人口の自然減や社会減に関する分析や今後の施策の方向性の検討を行っているものであります。また、7月には岩手県・市町村人口問題連絡会議を設置し、人口問題に関する情報共有や各市町村における少子化や人口流出に対する取り組みなどについて意見交換を行ったところであります。
 次に、先ごろ公表した人口問題に関する中間報告についてでありますが、今回の中間報告は、本県の人口の現状と将来推計に関する分析や、人口減少に伴い克服すべき課題を整理したほか、人口統計等の客観的データをもとに、結婚、妊娠、出産、子育ての各ライフステージに応じた少子化に関する支援や、就職期の若者の流出防止やU・Iターンを促す施策など、特に早急かつ重点的に取り組まなければならない事項について施策の方向性を取りまとめたものであります。今後、この中間報告に基づき国に対して提言を行っていくとともに、市町村や民間の方々などから御意見を伺い、総合的な施策の検討を進め、年度内に取りまとめを行っていく予定であります。
 次に、国の地方創生との関連についてでありますが、先ほどの中間報告におきましては、本県の人口減少の課題として若年女性の人口減少と出生率低迷や進学、就職期における県外転出を取り上げ、各ライフステージに応じた少子化対策や若年層を中心とした人口流出、U・Iターンの促進対策に注力することとしております。こうした施策については、国のまち・ひと・しごと創生本部が掲げる若い世代の就労、結婚、子育ての希望の実現や東京一極集中の歯どめなどの基本的視点にも共通するものであり、施策の実現に向けて国に積極的に働きかけるなど、熱意とスピード感を持って取り組んでまいりたいと思います。
〔農林水産部長小原敏文君登壇〕
〇農林水産部長(小原敏文君) まず、平成26年産米の概算金についてでありますが、西日本や関東の早場米地帯では、8月上旬に3、000円前後の、また、北陸の米主産地では、8月中旬に2、000円前後の引き下げと報じられたところであります。本県におきましても、平成25年産米の契約・販売率が前年を下回っていた状況等を踏まえますと、ある程度の引き下げは想定されたところでございます。
 先般公表されました概算金の額については、全農岩手県本部におきまして、厳しい販売環境を見据え、平成26年産米の早期完売に向け、柔軟に販売活動を展開するため決定されたものと聞いてございます。
 次に、米の消費拡大等についてでありますが、米の主食以外への利用拡大では、県はこれまで、米を原料とする加工食品の開発支援や米粉の普及に取り組んできたところであります。その結果、県オリジナル品種きらほを活用した冷凍サバずしや結の香を使った日本酒が開発され、高い評価を得ております。一方で、米粉を用いたパンや麺、菓子等につきましては、商品化は進展しておりますものの、近年、利用は伸び悩んでいる状況にございます。このため、今後とも、きらほ、結の香等の加工に適した品種につきましては、需要に応じた生産の拡大を進め、商品化や販路拡大を支援しますとともに、米粉については、生産者の6次産業化の取り組み支援などを通じ、一層の利用促進を図ってまいります。
 また、米の新品種開発とブランド化の取り組みでは、現在、平成29年度の市場供給を目指し、県産米のフラッグシップ米としてコシヒカリを超える良食味米の開発を進めており、今年度中には品種候補を絞り込み、平成27年度から現地での栽培試験を行うこととしております。さらに、あきたこまちより食味、収量性等にすぐれたなかて品種につきましても、現在、開発を進めております。
 また、これらオリジナル品種を牽引役とした県産米のブランド化につきまして、本年度内に策定予定の新たないわて純情米の生産、販売戦略に位置づけ、生産者等と一体となって展開することとしており、消費者や実需者に支持される全国トップクラスのブランド米産地を確立していきたいと考えております。
 次に、米概算金の大幅下落への対策についてでありますが、一部農協では、米の概算金に60キロ当たり400円から1、200円の上乗せを決定したほか、他の農協におきましても、現在、上乗せを検討中であると聞いております。また、このほか、肥料や農薬代の値引きを決定した農協もございます。
 県としましては、生産者や関係団体からの要望等を踏まえ、まず、米価下落の影響を受ける農業者の資金繰りに対応するため、JAいわてグループと連携して米価下落緊急対策資金を創設することとしたところであります。また、各広域振興局等に相談窓口を設置したほか、中山間地域等直接支払交付金の早期支払い、多面的機能支払交付金制度の導入等を進めますほか、生産対策として、経営規模の拡大や直播栽培の導入等による大規模低コスト生産、ナラシ対策への加入、飼料用米への転換を進めますとともに、消費、販売対策として、中食、外食事業者や給食事業者の新規開拓、いわて国体関連イベント等を活用したPRなど、県産米の品質の高さやおいしさをアピールしていくことにしております。
 平成22年度に実施したつなぎ融資の実績と評価ですが、貸付実績は全体で116件、4、973万円余であったところであります。貸付開始が12月下旬であり、農業者の年末の資金繰りに十分対応できなかったとの声もありましたことから、今回は早期に対応することとしたものでございます。
 次に、経営所得安定対策等についてでありますが、米・畑作物の収入減少影響緩和対策、いわゆるナラシ対策は平成18年度に創設された制度で、経営規模が4ヘクタール以上の認定農業者、及び20ヘクタール以上で共同販売経理等の要件を満たす集落営農組織を対象としてございます。この制度では、米、麦、大豆の販売収入が国から示される標準的収入を下回った場合に、その差額の9割が農業者の拠出金と国の交付金により補填されます。
 一方、ナラシ移行のための円滑化対策は、ナラシ対策に加入できない農業者の平成27年産からのナラシ対策への円滑な移行を目的とした平成26年産限りの措置となっております。この制度では、農業者の拠出を求めず、ナラシ対策の国の交付金の5割相当額が補填されるもので、その額はナラシ対策の3分の1程度となるものでございます。
 平成26年産米の加入面積の割合でございますが、ナラシ対策で38%、円滑化対策で54%となっており、92%がいずれかの対策の対象となっております。
 また、平成22年度の実績でございますが、現在のナラシ対策と米価下落を補填します米戸別所得補償モデル事業があり、加入面積の割合は92%で、補填額の総額は約69億円となってございます。
 次に、国の農林水産業・地域の活力創造プランを踏まえた施策展開についてでありますが、県ではこれまで、持続的に発展できる地域農業の確立に向け、国の農林水産業・地域の活力創造プランと方向性を同じくします本県独自の地域農業マスタープランに基づきまして、地域の中心となる経営体への農地集積や園芸の産地づくり、6次産業化の取り組みなどを進めているところでございます。
 今後におきましても、各地域のマスタープランの実現に向け、農地集積による土地利用型作物の生産の効率化やキャトルセンターの活用による畜産の規模拡大、施設団地の整備や集落営農等によります園芸作物の生産拡大、地域特産物等の加工、販売による高付加価値化などの取り組みを支援しまして農業所得の向上を図ってまいります。
 次に、木材産業の振興策についてでありますが、我が国の木材輸出は中国、台湾向けを中心に増加してきており、平成25年は約26万立方メートルと平成24年の約2倍となり、県内におきましても平成26年から輸出の動きが見られるところであります。
 国内の木材自給率は、平成25年は28.6%と10年間で約10ポイント上昇しており、また、県内での木材需要におきます県産材比率は、平成25年が79.2%と10年間で約21ポイント上昇しております。
 全国平均の木材価格は、杉の中丸太で見ますと、ここ10年、1立方メートル当たり約1万1、000円から1万4、000円の間で推移し、県内でも同様の価格で推移してきておりましたが、昨年は、消費税増税前の住宅特需などの影響もあり、2割から3割上昇したところでございます。こうした基調を的確に捉えまして、県としましては、木材のカスケード利用を一層進めることとし、製材や合板用のA、B材の利用促進に向け、木材加工施設整備への支援や品質、性能の確かな製品供給のための技術的支援を行っていくほか、製紙や木質バイオマス用のC、D材の利用促進に向け、チップ製造施設や木質バイオマス利用施設整備への支援などに取り組んでいくこととしております。さらには、新たな製品の製造技術の開発や、木材製品の輸出を目指している事業体への支援、木材の安定供給に向けたストックポイント整備への支援などに取り組み、木材産業の振興を図ってまいります。
〇議長(千葉伝君) 次に、飯澤匡君。
〔36番飯澤匡君登壇〕(拍手)

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