平成26年9月定例会 第16回岩手県議会定例会会議録

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〇44番(佐々木大和君) 自由民主クラブの佐々木大和でございます。
 このたび一般質問の機会をいただき、まことにありがとうございます。通告に従い、順次質問をさせていただきます。よろしくお願い申し上げます。
 質問に先立ち、御嶽山の火山噴火により亡くなられた皆様に謹んで心から御冥福をお祈りいたします。
 質問に入ります。
 まず最初に、中小企業振興対策についてお伺いします。
 デフレからの脱却が日本経済にとって最大の課題となっていたときに、アベノミクスは大きな成果を上げました。しかし、大都市、大企業がリードする経済成長であり、中小企業や地方では、これからその対策を進めていかなければなりません。その一つとして、国会に提出された重要法案、小規模企業振興基本法が成立しました。アベノミクス効果を地方に波及するための施策であります。3月に閣議決定し、6月に国会で成立しました。2013年には新たに設立された企業が前年を5.8%上回り、11万社を超えたとの報道がありました。リーマンショックで減少した後、4年連続してプラスとなっています。これは、景況感の改善や景気回復への期待が背景にあると見られます。新設企業は、2011年に東日本大震災の影響を受けたものの増加し、安倍政権の経済政策アベノミクスが本格化した2013年には11万社に達しております。2009年から2013年の推移を都道府県別に見てみると、本県や東京、大阪、福島など13都府県が4年連続して前年を上回り続けており、この間の増加率の最も高かったのは、福島で70.2%増、岩手62.7%増、宮城56%増と続き、被災した東北3県の復興ぶりを反映しています。業種別では、太陽光発電など再生可能エネルギー関連を含む電気、ガス、熱供給、水道業はこの間に39倍になっており、また、高齢化に伴って高い需要が見込まれる医療、福祉事業だけが4年連続して増加しています。
 日本における企業及び従業員数を2014年の中小企業白書で見てみると、企業数は386万社、大企業は1万社、0.3%、中小企業385万社、99.7%、うち小規模企業は334万社、86.5%です。また、従業員数では、全従業員4、614万人、大企業1、397万人、30.3%、中小企業3、217万人、69.7%、そのうち、小規模企業1、192万人、25.8%です。小規模企業の定義は、製造業その他は従業員20人以下、商業、サービス業では従業員5人以下とされています。ここで示されたとおり、中小企業、小規模企業がよくならなければ日本経済はよくならないことが明快です。
 岩手県では、中小企業比率は99.8%、うち小規模企業比率は87.3%と、やはり小規模企業比率が高い実態が見えてきます。そして、岩手県の特徴は、平成18年度事業所・企業統計調査によると、卸売、小売業などの第3次産業の比率が全事業所数の83%であります。事業者の高齢化と後継者不在が同時に進行していることを考えると、住民生活を守るためにも、地域の商店などの小規模企業の支援、あわせて自立を目指す起業化への支援は喫緊の課題となっております。
 そこでお伺いします。
 初めに、岩手県では中小企業振興に関する条例制定に向けて取り組みを始めているようですが、小規模企業振興基本法との関連と、本県の条例の特徴について考え方を伺います。
 また、小規模企業振興基本法と同時に成立しました小規模事業者支援法の改正に伴う運用については、県、そして団体の指導力が期待されるところと思いますが、どう進められるのかお伺いします。
 また、これらの二つの法律は、被災地の商工業者の支援にも期待されていると思います。県では、大震災発生当初、いち早く修理、改修支援を行ってきました。その事業効果は大きいものがあったと思います。その後の人口減少を考えると、これから先のことについて不安を覚えるのですが、これらの法律と関係して被災地支援をどのように行っていくお考えかお伺いします。
 次に、内水面漁業の振興について伺います。
 我が国は、国土の7割に豊かな森林が広がり、その水源涵養機能などにより豊富な水に恵まれています。河川や湖沼においては、地域色のあるやなや刺し網などの漁法によりアユやウグイ等が漁獲され、また、養殖されるウナギやコイ等は各地域の食文化にも大きく貢献してきています。
 77%が森林の岩手県には、たくさんの川が流れております。北上川や馬淵川のように県を越えて流れていく大きな川と、北上山地から太平洋に流れる川などがあります。そこにはたくさんの魚などが生息します。山と川と海は、本州一大きな面積を持つ岩手県の誇りでもあり、宝であります。
 内水面水域の資源管理や環境保全については、地域の住民が参加した内水面漁業協同組合の活動により支えられており、水産動植物の放流や産卵場の造成、遊漁における秩序管理、また、河川清掃や外来生物の駆除等が行われています。一方、内水面水域における釣りは、河川や湖沼等に親しむ機会であるとともに、内水面漁業協同組合の活動資金になるものであります。
 このような中、平成26年6月の第186国会において、内水面漁業の振興に関する施策を総合的に推進することを目的とする内水面漁業の振興に関する法律が成立しました。この法律では、内水面漁業の振興に関し関係機関の責務や努力すべき内容を示すとともに、振興施策の基本となる内水面水産資源の回復や漁場環境の再生、内水面漁業の健全な発展などについて示されております。この法律の成立は内水面漁業に携わる方々が待ち望んでいたものでありますので、県ではこの法律をどのように受けとめ、今後、本県内水面漁業の振興に向けてどのように取り組んでいこうとしているのか伺います。
 次に、森林、林業の課題について伺います。
 1点目は、林業分野における人材育成についてであります。
 戦後の荒廃した山に活力を与えた植林事業は、半世紀を経て主伐期を迎えて、いよいよ国産材時代に突入します。大きな合板工場も内陸に立地し、年度内に稼動すると聞いております。岩手の林業が再生することは、北海道に次ぐ規模の森林県として必ずやり遂げなければなりません。
 県では、これまでもいろいろな施策を考えて実行してまいりました。その成果が確実なものとして見えてきた今、さらに進めていかなければならないことがあります。それは、これからの林業を担う人材の育成であります。全国には林業大学校が6校あります。群馬、長野、岐阜、静岡、京都、そして山陰の島根県です。岩手県では、岩手大学において古くから林学を教えており、県内はもとより、全国に有為な人材を輩出しています。加えて、林業県岩手で必要としているのは、現場で活躍する人材を育成することが重要課題と考えております。林業大学校は、アジアやヨーロッパからも学生が集まるグローバルな学校にすることが今の時期にマッチしたものではないかと思います。そして、東日本大震災で支援してくれた世界の国々に、日本の、岩手の林業知識を指導し普及することで、岩手の林業がグローバルに成長するスタートになると思います。林業大学校は、高等学校卒業者を対象とした、就業を目的とした専門的知識、技術を習得するコースが多く、修業年限はほとんどが2年間で、定員は10名、または20名が多いようです。東日本大震災からの復興、そして、その先にある発展を考えると、林業分野においても人材育成は全てに優先する課題と思いますが、いかがお考えでしょうかお伺いします。
 2点目は、林道の整備についてであります。
 林業振興のかなめは木材需要の拡大にあります。建築用材、合板、チップ、さらにはCLTなど新しい製品開発、バイオマス利用などの全ての木材が活用される環境が整いつつあります。しかしながら、木材価格の上昇は簡単に見通せる状況にはないわけですが、その上で振興策を進めていかなければなりません。そのためには、林道の整備、輸送費の問題など解決しなければならないことがたくさんありますが、その中で林道の整備方針についてお伺いします。
 3点目は、先ほどの答弁で県の方針は伺っておりますが、CLTについてであります。
 CLTは、1990年代からヨーロッパで開発や実用化が図られてきた新しい木質構造用材です。厚みのある素材で火災や地震に強く、本年1月にCLTはJAS―日本農林規格が施行されました。名称は直交集成板です。現在のところ、日本CLT協会には、岩手県ではただ一つ林業技術センターが賛助会員として加入していると聞いております。民間の参加が今のところはないようであります。私も団体活動を通じてたくさんの方々と話をしてきましたが、皆、中高層建築におけるALC―へーベルに代表される軽量気泡コンクリートにかわる素材として興味は示しておりますが、まだ課題が多いと言う方が多く、前に踏み出す人が余り見えないようです。岩手県の植林の特徴であるアカマツの需要を拡大するためにも必要な課題と考えております。杉、カラマツなどに加えて、岩手県の木、アカマツを植林した方々から、アカマツの主伐期はいつなんだ、100年待たせるつもりかというような声まで聞こえます。アカマツをCLTの用途にすることに強力に取り組んでほしいと思いますが、御所見を伺います。
 次に、復興の加速化について伺います。
 関東大震災から復興を担った後藤新平は、東京の発展の基礎をつくったと言われています。復旧、復興、発展の言葉どおり、東京は復活しました。そのときの道路や公共施設の整備を着実に東京の発展につなげています。本県の被災地の復興道路など、一気に何十年も前に進んでいくことになります。そこで、人口減少を食いとめ、発展していく地域にするためには、希望の光となる産業を立ち上げることが重要になってきたと思います。
 明治期に日本の産業革命を担い、500の事業を起こした渋沢栄一の活動は、新しい時代を迎える被災地復興に何か示唆するものがあるのではないかと思われます。渋沢は、経済の血液と言われる金融の大切さ、重要性を説いています。復興のまちづくりとは、社会的価値と経済的価値を同時に創造することだと思います。金融のグローバル化、投資のグローバル化に伴い、多くの省庁に張りついていた金融機関が金融庁に一元化されたことで資金調達の方法が狭くなったと思います。被災地にグローバルな産業を創造するため、また、地域産業を強化するためには、東京など大都市と差別化した政策が必要だと思います。
 そこで伺いますが、岩手の復興の加速化のため、大都市の10倍もかけて回収するような投資資金が必要だと考えます。そのために官民挙げての投資機関のような構想はないものでしょうか、御所見をお伺いいたします。
 次に、水産業の復興状況について伺います。
〔副議長退席、議長着席〕
 沿岸12市町村の111漁港のうち108が被災した東日本大震災から3年半が経過し、漁港の復旧が確実な歩みを見せていることに、関係各位に感謝と敬意を表します。県は、被災した全ての漁港を復旧すると直ちに発表し、沿岸の漁業者や漁業関係者に希望を与え、復旧、復興の大きな力になったことは本当によかったと思います。それがなければ、浜に住むこと自体を考え直して、転居や転職する人が多くなったと想像します。それでも、高齢化や、後継者がいないなどの理由で相当数の方々が再開をあきらめたと聞いております。現在の漁業への就業状況はどうなっているかお伺いします。
 また、漁船の新規登録数は7月末現在で6、434隻、平成27年度までの補助事業による整備目標数に対する整備率は96%になっています。被災を免れた漁船数1、740隻、その他の方法で調達された船2、285隻、合わせて1万459隻となっています。養殖施設整備台数は1万7、329台で、平成27年度までの整備計画数に対する整備率は99%になっています。これらの施設整備は確実に進んでいる中で、平成26年4月から平成26年6月までの産地魚市場水揚げ量は1万4、799トンであり、平成20年度から平成22年度まで、3カ年平均の同期における産地魚市場水揚げ量の71%となっております。さらに平成26年4月から6月までの養殖生産量は1万5、652トンであり、平成20年から3カ年における養殖生産量平均値の66%となっております。生産量の回復がおくれている原因と、今後の見通しについて伺います。
 また、本県の重要な魚種である秋サケについてでありますが、先ごろ公表された水産技術センターの秋サケの漁獲予報では、ことし沿岸に4歳魚で帰ってくる数量が大幅に減少する見通しであり、かなりの減産が見込まれるようですが、これは、平成23年の春に放流する予定のサケ稚魚が大震災によって被害を受けたことによるもので、これに伴って河川回帰するサケも減少するとの予想と伺っております。このままでは将来のサケ資源に影響があると考えられますが、サケ資源を維持していくために、今後どのように対応していくかお伺いします。
 次に、住宅の再建について伺います。
 復興実施計画における主な取り組みの進捗状況によると、8月末現在で応急仮設住宅等の入居状況は、約1万1、000戸に2万4、000人余が暮らしております。みなし仮設にも約2、600戸に6、800人余が暮らしております。3年半の歳月が経過し、仮設住まいの皆さんは相当な疲労感と不満がたまっております。
 安全の確保、暮らしの再建、なりわいの再生の3分野から成る復興事業は、確かな進捗状況を示しております。暮らしの再建については、災害公営住宅の整備もおくれておりますが、自立再建を目指す持ち家による住宅再建は、その地に永住して、まちづくりの核となる大切な方々が多いと思います。しかしながら、現状はいろいろな問題が出てきております。中でも、資材の高騰、人手不足、人件費の高騰は大きな障害となっております。限られた時間で事業を進めると起こり得る事態かもしれませんが、事業者からも、対応が難しくなっている、半年待ち、1年待ちというようなことまで聞こえてきます。復興事業は一斉にたくさんの事業を進めていかなければなりませんが、その中で、例えばこの1年、仮設住宅に住む人に焦点を合わせ、住宅再建を最優先に進めるというようなことも必要なのではないかと考えますが、知事の御所見を伺います。
 次に、国道340号の整備についてお伺いします。
 この路線は、北上高地を南北に縦断する道路で、陸前高田市を起点とし、遠野市、岩泉町、葛巻町を経て八戸市に通じる路線であります。東日本大震災の復興支援道路として整備が進められており、中でも、交通の難所であった立丸峠、押角峠のトンネル整備は地域住民の期待が大きい事業であります。これらのトンネル整備の進捗状況についてお伺いします。
 次に、県の財政運営について伺います。
 本県の実質公債費比率が平成24年度決算において18.6%になったことから起債許可団体となり、平成25年度から8年間、平成32年度までに実質公債費比率を18%未満にする公債費負担適正化計画がつくられました。その要因の分析を見ると、国の経済対策としての公共投資、また、本県の教育環境や社会インフラの整備、そして、全国で最も多い県立病院等に係る繰出金を挙げております。今後の財政運営方針、さらに、地方債発行に係る基本方針によると、当面、平成25年度の発行規模程度を維持していくとされています。東日本大震災からの復興のさなかにあって、大変な苦労と思います。
 しかし、復興を発展につなげ、県民に希望を与えなければなりません。その時期、この財政方針でよいのでしょうか。岩手県は、国の復興支援で沿岸被災地の道路や公共施設は着実に進んでいくと思いますが、市町村ではできないことを県の力でつくり上げ、復興、発展、希望へと向かわせなければならないと思います。そのために財政運営方針に知事の強いリーダーシップが求められていると思いますが、そのお考えを伺います。
 昭和31年の財政再建団体に指定された財政破綻のときには、県民に負担を求めて県民税等の増税がされたことがあります。8年間も規制を強めながらの財政運営になったわけですが、もっと早期に財政の健全化が図られないものでしょうか、知事のお考えを伺います。
 最後に、グローバル人材の育成について伺います。
 人口減少が進んでいく中で、高校の再編は避けて通れない課題となっております。本県の高等学校入学者数は、平成元年の2万2、000人余から減り始め、平成26年には1万2、000人余と1万人も減少しています。現在の学校数は、63の本校と分校1校であります。3学級以下の学校は27校あり、小規模校のあり方が重要課題となっておりますが、小規模校の存在意義は、地域の特性にマッチしたもの、あるいは専門性の高い就学目的が特化されたものになるのではないかと考えております。
 高等学校の進学率を上げるために1市町村に1校設置した時代を経て、高等学校の進学率は98.5%となってきました。学校とまちづくりを連動させて地域の人材育成を進めてきたのがこれまでのあり方だったと思います。東日本大震災の影響を受けて、高校教育の目的、岩手の高校教育の特徴をしっかりと見詰め直すことが重要だと思います。県土の均衡ある発展は県政の重要課題であり、復興なくして岩手の発展はないと言われるとおりであります。被災地でまちづくりが進む中、高校再編問題は、慎重に、大胆に進めてほしいと思います。
 その一つの方向性がグローバル教育ではないかと考えております。なぜ今、グローバル教育なのか。今日はいろいろな産業自体がグローバル化しております。高校生の進路の選択肢の中に海外の大学も入れるべき時代になってきております。確かに、海外の大学に進学する生徒は少数です。日本の大学受験をクリアする語学力と、海外大学が求めている語学力の質的な違いが海外への直接進学を困難にしていると思うのであります。そのために、留学生の多くがまず語学研修を経てから、やっと本来の学問に向かう場合が多いのです。そこで、海外の大学の教室で入学したその日から学問を語り合うことができるように、高等学校の体制づくりを進めていくべきと考えております。
 さらに、イノベーションとグローバリゼーションは世界の流れであります。地域の国際化も日々進んでいますが、高校再編にこれが欲しいと思います。ILC―国際リニアコライダーの誘致を目指す岩手県として、海外に留学生を送ることだけでなく、海外からの留学生を受け入れもできるのが当然ですが、さらに、世界中どこの国からも入学できる高校があることは、岩手のグローバル化の大きな前進となると思います。既に私学ではグローバルハイスクールを実践しているところもあります。また、高等学校ではありませんが、日本にも教員と学生の半数以上を外国人とし、教育と研究はもちろん、全て事務までも英語で行う沖縄科学技術大学院大学などの新しい取り組みがいろいろと始まっております。
 被災地は、たくさんの国から支援をいただいております。そして、強いきずなが生まれております。大震災復興のシンボルにもなるインターナショナルハイスクールは、復興の次にある発展、希望へとつながります。地方のトレンドを変えるためには、人の流れを変え、人を育てることに着目した施策に取り組むべきではないでしょうか、知事の御所見をお伺いします。
 以上で質問を終わります。ありがとうございました。(拍手)
〔知事達増拓也君登壇〕
〇知事(達増拓也君) 佐々木大和議員の御質問にお答え申し上げます。
 まず、被災地の住宅の再建についてでありますが、県では、東日本大震災津波からの一日も早い復興の実現に向けて、復興計画に掲げる安全の確保、暮らしの再建、なりわいの再生の三つの原則に基づき、県政史上かつてない規模の事業に、国、市町村とともに全力で取り組んでおります。
 住宅の再建については、平成24年10月に、岩手県まちづくり・住宅再建推進本部を設置し、復興庁岩手復興局の参画もいただきながら、土地区画整理事業や防災集団移転促進事業などの面整備、及び災害公営住宅に関しての資材高騰や人手不足など諸課題について情報共有等を図るなど、全庁を挙げて住宅再建を推進しているところであります。
 また、先ごろ、国土交通省主催の復興加速化会議が開催され、災害公営住宅の工事を確実、円滑に実施するため、入札不調対策としての工事発注の際の適切な工事費設定や、本県では既に導入している現場間での資材や人材を円滑に調達するためのマッチングサポート制度などを盛り込んだ災害公営住宅工事確実実施プログラムにより、施工確保対策に取り組んでいくことが示されたところであります。
 今後におきましても、復興に向けた三つの原則に基づき、早期の住宅再建を初め、水産業などの地域産業の再生に取り組むことにより、被災者一人一人が安心して生活を営むことができ、将来にわたって持続可能な地域社会の構築を目指す本格復興の取り組みを強力に推進してまいります。
 次に、県の財政運営についてでありますが、本県の財政運営は、過去の経済対策等に伴う公債費負担の増加などにより厳しい状況が続いていますが、東日本大震災津波からの復旧、復興事業については最優先で取り組み、県民一人一人が希望を持って確かな未来を描くことができる復興を進めているところであります。
 これら復旧、復興事業の実施に当たりましては、復興交付金や震災復興特別交付税などの国の財政支援措置により、公債費の負担を高めることなく進めているところであり、引き続き、財政支援の継続を要請しつつ、早期復興に向け、市町村と連携しながら全力で取り組んでまいります。
 また、復旧、復興以外の事業についても、限られた財源の重点的かつ効果的な活用に努めることなどにより、公債費負担の早期是正化を初め、財政の健全化を図りながら、地域経済の活性化など、希望郷いわての実現に向けた施策を着実に推進してまいります。
 次に、グローバル人材の育成についてでありますが、本県がさまざまな分野で急速に進みつつあるグローバル化社会に対応するためには、本年3月に策定したいわてグローバル人材育成ビジョンに基づき、岩手と世界をつなぎ、自立と共生の担い手となる多様なグローバル人材の育成が重要であります。
 また、東日本大震災津波発災以降、TOMODACHIイニシアチブやキズナ強化プロジェクトなど、これまでにないような各種支援プログラムにより、本県の子供たちが海外に出かけ、交流を深める機会、学ぶ機会もふえてきています。
 学校教育においては、小学校からの外国語活動の導入に始まり、中学校、高等学校と児童生徒の発達段階に応じた外国語教育が行われており、これまでの授業改善の工夫やALTの配置などを通じて、全体的なコミュニケーション能力のレベルが向上してきています。
 県教育委員会においては、現在、文部科学省指定のスーパーグローバルハイスクールの本県への導入や、外国語教育の一層の授業力の向上などに取り組んでいると承知しております。
 県といたしましては、これまでの状況を踏まえつつ、今後の取り組みをさらに工夫してまいりたいと思います。
 その他のお尋ねにつきましては、関係部長から答弁させますので御了承をお願いします。
〔商工労働観光部長橋本良隆君登壇〕
〇商工労働観光部長(橋本良隆君) まず、小規模企業振興基本法と中小企業振興に関する条例との関連等についてでありますが、小規模企業振興基本法は、小規模企業の活力発揮の必要性が増大していることから、その事業の持続的な発展を図ることなどを基本原則とし、小規模企業の振興に関する総合的かつ計画的な施策体系を構築しようとするものであります。
 本県の条例につきましては、小規模企業振興基本法の基本原則等を踏まえながら、震災からの本格復興や人口減少問題に対応できる県内経済が実現できるよう、現在、その具体的な内容について検討しているところであります。
 検討に当たりましては、商工業振興の主な担い手である中小企業、小規模企業が果たす役割を十分に認識し、経営基盤の強化に向けたきめ細かい支援施策を講じることや、県内事業者による地域資源を活用した商品やサービスを県民の方々が率先して購入、利用することを促すなど、多様な主体の参画や県民の理解、協力をいただくことなどが重要であると考えております。
 次に、小規模事業者支援法の改正についてでありますが、これまで、主として記帳や税務の指導を行ってきた商工会、商工会議所は、事業計画の策定などの支援や、そのフォローアップを行う伴走型の支援体制を整備するとともに、市町村や県、地域の金融機関等との連携を強化し、小規模事業者の活動を支援する体制を構築することとされたところであります。
 県では、これまで、商工会、商工会議所の支援体制を整備するため人件費や運営費の補助を行ってきたところであり、今後は、商工会、商工会議所が伴走型の支援に対応することができるよう、事業計画の策定等に関する職員の支援能力の向上を図るための研修等の取り組みを強化してまいりたいと考えております。
 また、今回の法改正では、商工会、商工会議所が小規模事業者の運営課題をみずからの課題と捉え、市町村や地域の金融機関と連携して課題解決に取り組むこととされていることから、県としては、商工会連合会、商工会議所連合会と協力して、こうした連携の取り組みを促進してまいります。
 次に、小規模事業者支援法の改正等と被災地支援についてでありますが、県では、これまで、被災事業者の早期の事業再開を図るため、グループ補助金などにより復旧費用の補助を行っているところであり、事業再開後に、売り上げの減少など経営課題を抱える事業者には商工団体等を通じて専門家を派遣し、課題解決のための助言などを行ってきたところです。
 被災地では、現在も仮設店舗の本設移行や商店街の整備など多くの課題を抱えており、これまで本設での事業再開ができず、単独では計画策定が困難な小規模な商工業者などに対して、今般の小規模事業者支援法の改正の趣旨を踏まえて、県、市町村、商工会、商工会議所などが連携を強化して支援していきたいと考えております。
 次に、復興の加速化についてでありますが、震災からの早期復旧を図るためには、被災企業の多様な資金ニーズに対応することが重要であり、県では、これまで、制度融資により長期、低利の資金供給を行ってきたほか、資金需要額の大きな案件に対しましては、岩手銀行と日本政策投資銀行が東日本大震災復興ファンドを組成し、投資や融資を行ってきたところであります。本年7月には、復興庁が、被災地の本格復興を推進するため、都市銀行、地方銀行、政府系金融機関など27団体からなる復興金融ネットワークを設立し、官民が連携してリスクマネーの供給を円滑に行う環境の整備に取り組んでいるところであります。
 今後は、このネットワークをもとにして復興・地域活性化ファンドの設立が検討されており、事業者に相当規模の長期資金が供給され、地域産業の活性化に資するものと期待されることから、県としても、被災地の支援ニーズに応え得る取り組みとなるよう、注視していきたいと考えております。
〔農林水産部長小原敏文君登壇〕
〇農林水産部長(小原敏文君) まず、内水面漁業の振興についてでありますが、本県の内水面水域は、アユ、ヤマメ等の漁業生産活動に加え、自然体験活動等の学習や人々の交流の場として、県民生活の向上に寄与しております。
 今般成立いたしました内水面漁業の振興に関する法律は、漁業生産力の発展とあわせ、国民生活の安定向上、自然環境の保全に寄与することを目的としており、国や県、市町村、内水面漁業者等がそれぞれの役割を担って振興施策に取り組むことにより、内水面漁業のさらなる振興が図られるものと受けとめております。
 国では、この法律に基づく基本方針を本年10月にも策定することとしておりまして、県としましても、関係機関の意見を聞きながら、法律に基づく計画を策定し、アユ、サクラマスの資源造成を図ることなどにより、内水面漁業の振興に取り組んでまいります。
 次に、林業分野における人材育成についてでありますが、戦後造林してきた人工林資源が本格的な利用期を迎えるとともに、県内に大規模な木材加工施設の整備が進むなど、本県の林業は、これまで育成してきた森林資源を本格的に循環利用していく段階を迎えております。本県の豊かな森林資源を有効かつ持続的に活用していくためには、林業の現場で活躍する人材の育成は重要な課題であると認識しております。
 県では、これまで、林業技術センターにおいて、林業従事者等を対象とした林業機械研修や森林組合等の職員を対象とした養成研修等を実施しますとともに、岩手県林業労働対策基金と連携して、林業の基本的な知識、技能を習得するための新規就業者を対象とした養成研修や、現場技能者の育成研修を実施するなど、幅広く人材育成に努めてきたところであります。
 今後、県内の木材生産量の増加が見込まれる中、実践的な技術を身につけた人材が一層求められてきますことから、林業技術センターの研修を現場に即して充実していくほか、林業事業体等のニーズを把握しながら、林業大学校を含めた実践的な研修を受けられる養成機関のあり方について、他県の養成機関の事例も参考に検討してまいります。
 次に、林道の整備方針についてでありますが、林道を初めとする林内路網は、造林、保育、素材生産等の施業を効率的に行うための林業生産基盤であり、本県の林業振興を図る上で重要なものと認識しております。
 循環的、持続的な林業経営を確保していくためには、森林施業の効率化、低コスト化や木材輸送コストの縮減を図る必要がありますことから、林内路網の中で基幹となる林道につきましては、平成18年度以降、第2期林道整備事業中期実施計画に基づき着実に整備を進めてきたところであります。
 現在策定を進めております平成27年度からの第3期林道整備事業中期実施計画では、林道整備を、平成23年度の森林法の一部改正を踏まえまして、森林所有者等が作成します森林経営計画に基づき、計画的に森林整備や木材生産が行われる森林及び林内路網とあわせて、効率的な森林施業を推進する区域として市町村が定めた路網整備等推進区域の森林、これらを主な対象として重点化を図ることとしております。
 今後、こうした林道整備とあわせて、市町村や森林組合等が整備します林業専用道や森林作業道が適切に配置されることにより、効果的な林内路網の整備を進めてまいります。
 次に、直交集成板いわゆるCLTについてでありますが、全国トップの資源量を誇ります本県アカマツをCLTへ活用する取り組みは、アカマツの新たな需要を生み出すものであり、大変意義のあるものと認識しております。国では、林業の成長産業化を加速するとし、CLT等の新たな製品、技術の開発、普及のスピードアップに向けた環境整備を行い、平成28年度には、CLTを用いた建築物の一般的な設計法を確立するため、現在、強度、耐火性、耐久性の試験や、地震に対する安全性の検証を進めているところであります。
 本県におきましても、林業技術センターが日本CLT協会に加入しましたほか、アカマツの用途拡大を図るため、今年度から独立行政法人森林総合研究所などの研究機関、木材加工事業体と連携し、県産アカマツによるCLTの製造技術の開発に取り組んでいるところであります。
 今後も、関係機関や日本CLT協会などの団体等と連携しまして、CLTを試作し、強度性能や製造コストの評価などを行い、アカマツのCLTの活用に取り組んでまいります。
 次に、漁業への就業状況についてでありますが、県内の漁業経営体数は、震災前の2008年漁業センサスでは5、313経営体でありましたが、2013年漁業センサス速報では3、373経営体と、大きく減少したところであります。これは、個人経営体が共同体としての漁協に集約されたことによりまして、見かけ上、減少した面はありますものの、漁業者の高齢化や後継者の不足など、震災前の課題が顕在化したものと認識しております。
 漁業経営体を専業と兼業に分けて震災前と比較しますと、兼業経営体は大きく減少しておりますものの、専業経営体は、後継者を確保するなどにより若干増加傾向にありますことから、意欲ある漁業経営体はおおむね経営の再開ができているものと認識しております。
 県は、今後とも、専業経営体の規模拡大や兼業経営体の共同生産体制づくりなどを支援し、就業の再開や漁業担い手の確保、育成に向けた取り組みを進めてまいります。
 次に、生産量の回復がおくれている原因と今後の見通しについてでありますが、まず、産地魚市場水揚げ量は、生産の回復に必要な漁船や定置網等の復旧はおおむね進んでおりますものの、平成25年度はサンマが不漁であったことなどから、震災前3カ年の平均と比較して64%の回復にとどまり、平成26年4月から6月は、春先の低水温の影響でイサダが不漁だったことなどにより、震災前の71%となっております。
 また、養殖生産量は、養殖施設が震災前の約7割にとどまっていることに加えまして、平成25年度は、カキ、ホタテが本格出荷に至っていなかったことから、震災前と比較して59%の回復にとどまり、平成26年4月から6月は、春先の低水温の影響でワカメの成長が停滞したことにより、震災前の66%となっております。
 今後の見通しでありますが、産地魚市場水揚げ量は秋サケの減少が懸念される一方で、サンマは前年を上回る見通しでありますことから、震災前の水準に近づくものと見込まれます。また、養殖生産量は、養殖施設が震災前の台数を下回っておりますものの、カキ、ホタテの出荷が本年度から本格化いたしますことから、着実に回復するものと見込んでおります。
 次に、サケ資源の維持についてでありますが、本県沿岸においてサケの稚魚を生産していたふ化場は、震災により壊滅的な被害を受けましたが、震災直後からの官民一体となった復旧の結果、今年度から震災前と同水準の約4億尾のサケ稚魚の生産が可能となったところであります。しかしながら、本県沿岸に回帰する秋サケは、震災年に放流された稚魚が主群となりますため、回帰尾数が震災前の5割以下と大きく減少する見込みでありまして、これまで以上にふ化放流に向けた親魚不足が懸念されるところであります。
 今後、資源を維持していくためには、確実に種卵を確保していくことが極めて重要と認識しております。このため、県と漁業関係団体が連携し、定置網で漁獲したサケの親魚としての活用や定置網等の垣網短縮による河川遡上の促進など、確実な種卵の確保に取り組むこととしておりまして、あわせて、各ふ化場での健康な稚魚育成の徹底を図ることなどによりまして、目標としている4億尾の稚魚放流の実現につなげ、将来にわたってサケ資源を維持していくよう努めてまいります。
〔県土整備部長佐藤悟君登壇〕
〇県土整備部長(佐藤悟君) 国道340号の整備についてでありますが、立丸峠工区につきましては2本のトンネル整備を計画しており、ことし8月に工区全体の着工式を開催し、現在、宮古市側の(仮称)小峠トンネルの掘削作業を進めており、9月末時点でのトンネル掘削延長が約90メートルとなっているなど、順調に工事が進んでいるものと認識しております。
 遠野市側の(仮称)大峠トンネルにつきましては、9月に保安林の指定が解除され、現在、一部区間の地層で確認された自然由来のヒ素を含有する岩石について、現地で雨ざらしにした状態でのヒ素の溶出状況を確認するための試験を行っているところであり、この試験結果に基づき適切な対策を講ずることとして、今年度中のトンネル工事の発注を目指して作業を進めております。
 次に、押角峠工区につきましては、全体工程の短縮を図るため、測量、調査、設計業務について、ことし7月に、これらの業務を一括してプロポーザル方式により発注し、現在、用地取得範囲を確定させるための路線測量やトンネル前後の土工部の詳細設計等を進めているところであります。
 また、用地測量業務につきましても、設計業務等と並行して作業を進めることにより全体工程の短縮を図ることとしており、今月中に業務に着手する予定としております。
 今後とも、立丸峠工区、押角峠工区の一日でも早い開通に向けて整備を進めてまいります。
〇議長(千葉伝君) 以上をもって本日の日程は全部終了いたしました。
 本日はこれをもって散会いたします。
午後4時39分 散 会
第16回岩手県議会定例会会議録(第3号)

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