平成26年2月定例会 第14回岩手県議会定例会会議録

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〇15番(岩渕誠君) 希望・みらいフォーラムの岩渕誠です。
 登壇の機会を与えていただきました全ての皆様に心から感謝し、県政の重要課題について、会派を代表して達増知事にお尋ねします。
 質問に入るに先立ち、先般の大雪災害で犠牲となられた方々に心からのお悔やみと、被災した皆様にお見舞いを申し上げます。
 質問に入ります。最初に取り上げるのは、県政最大の課題である東日本大震災津波からの復興についてです。
 あれから3年がたとうとしています。犠牲となられた方は5、106人、いまだ行方がわからない皆さんは1、124人、そして、今なお3万3、000人を超える方々が仮住まいを余儀なくされており、改めて哀悼の意をささげ、お見舞い申し上げます。
 私は、復興に当たって、思い半ばで犠牲となった皆さんと、ふるさとで生き続ける決意を持ち日々を過ごしている被災者の方々と、それぞれの思いを形にすることが、今最も求められていることだと思いますが、残念ながら、各種モニター調査を見ると、被災者の思いを満足させるほどに復興が追いついていないのが実態であります。
 新年度から本格復興期間に入りますが、私は、どんなにハード整備が進もうとも、そこで持続的に仕事を得て、暮らし続ける人が集わなければ、ふるさとの再生はないと確信します。だからこそ、雇用の確保と地場産業を中心とする経済の再生は、復興の重要な鍵になると同時に、被災者の思いを形にする大きなポイントでもあり、その実現のためにどれだけ重点的に施策を展開できるかが、将来の被災地の姿を決定づけると考えます。
 知事は、本格復興期における県の果たすべき役割と政策的優先度について、どうお考えかお示しください。
 ところで、復興は住民と基礎自治体である市町村、そして、県と国などが、果たすべき役割をそれぞれ果たし、一体となって課題に対処しなければならないのは言うまでもありません。しかし、本格的なまちづくりを進めようというこの時期になって、果たすべき役割を放棄する動きが出ていることに憤りを感じざるを得ません。
 一つは、鉄路の復旧問題であります。JR東日本は、先月に入って、突然、JR山田線宮古−釜石間について、三陸鉄道への経営譲渡の提案を行いました。厳しい経営環境にありながら、住民の期待と果たすべき役割に対し誠実に向き合い、この4月に全線復旧をなし遂げる三陸鉄道の姿勢と比して、JR東日本のそれは、民間企業であるという点を割り引いても、余りにも利己的であり、鉄路の復旧を求める地元の意向を逆手にとり、復興における社会的責任を十分に果たさないものだと言わざるを得ません。
 過去、岩手県は、国鉄民営化、そして東北新幹線八戸延伸に伴って2度も苦渋の決断を迫られ、多額の負担をし、第三セクターを設立して今日まで住民の足の確保に努めてきました。JR側から復旧経費や当面の赤字補填の提案はあるものの、詳細な運行区間の経営状態を示すこともなく、将来的には極めて重い負担も予想されます。
 また、過去には転換交付金やJR貨物を通じた支援があったものの、今回の問題では、政府は、地域とJRの問題だとして積極的な対応をとろうとしていないことは、地方切り捨てに加担することであり、極めて遺憾であります。
 JRは、十分な社会的責任を果たすべきと思いますが、現在、BRTによる運行となっているJR大船渡線の一部区間とあわせ、今後の鉄路の復旧とJRの提案に対し、県はどのような考えなのかお示しください。
 果たすべき役割という観点で引き続き質問します。
 沿岸の被災住民の切実な願いは、やはり仮設住宅を出て、一日も早く新しい住まいで新しい暮らしをスタートさせることです。新年度は高台移転に向けた取り組みが前進することが期待されていますが、大きな障壁も待ち構えています。それは用地取得の問題です。この問題は復興をおくれさせている最大の要因とも指摘されていますが、政府は、この問題に対しても、法律面での抜本的な課題解決ではなく、運用面での是正で対応しようとするなど、県や市町村に責任を転嫁する姿勢に終始しています。
 県と岩手弁護士会による土地収用法の特別措置法等の提言や陸前高田市などが求めている土地管理を一時的に自治体に委ねる特例措置の創設なども、国は、憲法を盾にしていまだ否定的なままです。本来、憲法は国民を守るために生かされるべきものです。一日も早く暮らしの再建に踏み出したい被災者の願いを知るとき、国の姿勢は余りにもそれとはかけ離れたもので、今や復興のおくれは人災とも言える状況です。
 この状況について、県はどのような認識を持ち、国と被災自治体との間のギャップをどう埋めるおつもりか、お示しください。
 ところで、この大震災からの復興財源規模を、国は、民主党政権から安倍政権に移り、それまでの19兆円から25兆円に引き上げました。一定の評価はいたしますが、この財源措置は平成27年度までしか見込んでいません。しかも、既に9割が措置されていて、本格復興期の後半以降については、計画はあれども財源がないというのが実態であります。加えて、復興交付金の基幹事業についても、支出可能なのはハード事業中心の40事業に限られたままで、にぎわい機能の創出のほか、地方経済の再生などの分野では事業そのものがないなど、いまだ被災地の要望に沿うものではありません。
 また、復興交付金の効果促進事業で活用可能な事業についても、復興庁は査定に終始し、十分な支援策にはなっていません。国には筋の通った復興哲学がないのではとの疑念が消えません。
 今回の大震災からの復興に当たって、何を考えなければならないかと言えば、それは、人口減少や少子高齢化が進む地域での復興であるということです。現在の国のメニューは、あくまで原状復帰が大前提であり、人口減少や少子高齢化の課題に対応して医療福祉や教育、地域経済の再生などに向けた被災地の構想が、国から理解を得られないケースが相次いでいます。未来に投資する創造的復興こそが岩手にとって必要ですが、現状では、国の制度や予算に合わせた、いわば縛られた枠の中での復興を余儀なくされることを強く懸念しています。
 大震災からの復興は、地方で生き続けるために必要なことをやり遂げる道のりかもしれません。自立した地方をどうつくるか、今後の分権社会をどう進めるか、まさに本格復興期間は正念場であり、この観点に立って言えば、県の果たすべき役割は非常に大きいものがあります。
 知事の復興哲学と自立した地方の確立のために県として復興の中で何をなすべきか、そして、今後の県として必要な復興予算の見通しについて認識を伺います。
 次に、復興の課題のうち放射能対策についてお尋ねします。
 福島第一原発の事故は、依然として暗い影を落としています。放射能汚染に対する東京電力への賠償請求額は、県内組織を通じて県が把握しているだけで実に378億円余りに達し、さらに、岩手県としての対策予算は、新年度を含めると238億円を超えるなど巨額に達しています。一方で、賠償済み額は行政経費で半分に達せず、農林水産業でも8割にとどまるなど、十分な被害回復はされていません。
 また、放射能に汚染された牧草や稲わら等の処理完了時期は依然見通しが立たないほか、河川や道路脇の草は、刈り倒し処理を余儀なくされ、さらに、汚染側溝汚泥の処理ができないため、県南地方では洪水被害の原因になっているところも出るなど、目に見えない影響は広がったままです。
 いまだ一部地域で出荷停止が解除されない原木シイタケも、深刻な影響が出ています。県も、これまで、施設栽培への誘導策のほか、新年度予算では、新規に原木などの生産資材の導入支援事業が盛り込まれるなどしていますが、一方で、生産者の意欲は低下したままで、その原因の一つが取引価格の暴落です。震災前の県の干しシイタケはキログラム当たり平均4、500円台だったものが、昨年の特別入札では1、300円台と3割にも達しないなど、出荷停止地域以外にも深刻な影響が出ています。
 シイタケに見られるこうした価格の低迷のみならず、販売シェアを他の産地に奪われるなど、風評被害は依然続いており、廃業に追い込まれる人は相次いでいます。
 放射能物質に汚染した廃棄物の処理をどう進めるか、指定廃棄物に対する国の動向はどうか、そして、風評被害対策にどう取り組むつもりか、あわせて、子供たちへの健康を守るための取り組みについてもお示しください。
 さて、東日本大震災津波が私たちに突きつけた課題の大きな一つは、危機管理のあり方だったと私は思っています。そこで、ここからは危機管理について現状と課題を取り上げます。
 大きな犠牲と混乱、多くの失敗と成功の中で、東日本大震災での岩手県の危機管理対応は、さまざまな教訓を生みました。災害時の要援護者、いわゆる災害弱者への対応や都道府県を越えた被災者の緊急移送、広域での災害対応、そして、防災から減災という発想の転換等、岩手の体験が国の災害対策基本法の改正にも盛り込まれることになったことについては、高く評価するところであります。
 岩手県内においても、みずからの経験に基づきさまざまな災害対策上の見直しが進められてきましたが、行政としての事業継続計画、いわゆるBCPが東北の他県に先駆けて策定され、また、広域防災拠点整備で具体的な整備箇所が示されたことについても評価すべきものと思います。しかし、危機管理の問題では、具体的災害想定をどうするかということに触れなければなりません。
 今、喫緊の課題として想定し、具体的行動をとらなければならないのは、東海、東南海、南海連動型地震への対応ではないでしょうか。この災害想定では、岩手県が直接の被災地になることは想定されていませんが、流通網の寸断やサプライチェーンの停止は数カ月に及ぶと警告する専門家もおり、岩手県への物流も停滞することで、食料やエネルギー不足は、東日本大震災での経験を上回るとの指摘も出始めています。
 今現在は、首都圏から中京、関西圏、西日本での人的被害想定に目を奪われがちで、ともすると岩手県での危機感は余りないのかもしれません。事実、県の地域防災計画でも、事業継続計画でも、被害想定は県内の直接被害が中心です。
 しかしながら、想定外がもはや許されない中にあって、大震災を経験した岩手だからこそできる備えと構えがあるはずです。また、あわせて産業と人口ともに集積地での災害に備えて、東北の役割、位置づけをしっかりすべきときだと感じます。
 既に、自動車産業界は、サプライチェーンの継続に向けて想定される被災地以外での事業展開も進めており、先日調査に訪れた大手自動車部品メーカーデンソーも、岩手工場の役割について大きな期待を表明しました。
 大震災での経験と想定被災地のバックアップ機能の役割など、県として早急に対策を講じ、国に対しても発信すべきと考えますが、御見解をお示しください。
 さて、ここからは教育についてお尋ねいたします。
 昨年、国会で、いじめ防止対策推進法が成立しました。岩手県内のいじめの現状は、平成24年度には2、286件の認知件数に上り、前の年度の実に6.9倍に達しています。また、厚生労働省研究班の調査によれば、大震災発生時に保育園児だった子供に引きこもりや暴力などが見られ、4人に1人は医療的ケアが必要な状況との報道もありました。
 岩手の子供たちは、震災津波の後の環境の変化で、今どんな状況に置かれているのでしょうか。いじめが増大しているということ、そして、被災地での気がかりなデータは、大人が正面から向き合って、大人社会の責任として解決していかなければなりません。
 岩手県として、いじめや被災地の子供たちの心のサポートについて、どう対処していくお考えなのかお聞かせください。
   〔副議長退席、議長着席〕
 次に、国際リニアコライダーの建設実現と再生可能エネルギーの導入促進という震災後の県内の新産業創出に向けた二つの大きな柱について伺います。
 言うまでもありませんが、国際リニアコライダーは、国内唯一、いや、事実上世界でただ一つの具体的な建設地として北上山地が候補に挙がっており、また、再生可能エネルギーも国内で2番目と言われる開発可能性を秘めており、いずれも他県にはない岩手ならではの特色あるものです。
 国際リニアコライダーに関しては、国は、いまだ慎重姿勢を崩していないとは言うものの、新年度政府予算案でも5、000万円の調査検討費が初めてついたことは、北上山地での建設実現に向けた大きな一歩と捉えたいと思います。
 建設候補地としての誘致表明まで時間がかかる見通しとはいえ、その間に岩手県がなすべきことは山ほどあります。まずは、県内外での理解の醸成であり、海外の研究者を初めとする受け入れ環境の整備が必要です。新年度予算案を見ても、この点は、知事部局の体制充実を図り、情報発信などが盛り込まれていますが、環境整備と建設への後押しの一つとして、日本での建設受け入れを要望する海外研究者への働きかけも必要ではないでしょうか。また、環境整備としては、立地予定の県南自治体や気仙沼市などとのさらに踏み込んだ協力も不可欠です。
 現在、リニアコライダー建設実現に向けたグランドデザインは東北ILC推進協議会が策定したものがありますが、実態は大手民間シンクタンクが手がけたもので、建設候補地として絞られた段階では、さらに詳細、かつ地域の役割を明確にした建設実現までの環境整備工程表を作成する必要はないでしょうか、お考えをお示しください。
 再生可能エネルギーについて、県は、既に県内発電量におけるその割合を現在の2倍となる35%にまで引き上げる計画を掲げており、その実現に向け、再生可能エネルギーの導入に対する支援策などとして、新年度も関連予算を72億円余り計上しています。
 一方で、私は、再生可能エネルギーの課題も見えてきたと思います。一つは、現在、太陽光を中心とした開発計画のうち、どれだけが実際に事業化に着手しているかについて総点検する必要があるということです。
 御承知のとおり、再生可能エネルギーについては国の固定価格買取制度がありますが、事業計画が国に承認された時点での買い取り価格が適用される仕組みのため、計画が先行して事業開始がおくれるケースもあります。新規参入した企業が多いことから、資金調達に苦慮したり、資材価格の値下がりを待ってコストを圧縮して事業を始めたいとする思惑もあるとされていますが、こうしたケースを放置していくことは問題があると言わざるを得ません。優良事業者を保護し、土地利用の健全性を確保する観点からも、行政としての指導も必要と考えます。
 また、県が国に対して提言し続けてようやく実現したものの一つが農地転用の規制緩和による再生可能エネルギーの普及拡大ですが、法制度として整備されたものの、運用面では依然として高いハードルを設ける形で、農村部での有効な土地利用として十分機能するか不透明さも残っています。海洋エネルギーの開発とあわせ、さらに積極的に取り組むべき課題と思いますが、県の認識をお示しください。
 次に、農業政策の大転換についてお尋ねします。
 国は、昨年秋から突然、減反制度や戸別所得補償制度の廃止などを柱とする新たな農業政策にかじを切りました。十分な議論もなく、また、現場の疑問が残るままでの拙速な転換ですが、国の目指す将来的な農政全体の姿は見えておらず、現場の不安と不満は高まっています。
 国が示した集落の栽培モデルでは、新たに飼料用米を作付した場合は10万5、000円が交付されることなどで、集落全体の所得はプラスに転じるとするものでした。しかし、実際には、休耕田を復田した上に飼料用の専用品種を作付するという前提も、復田そのもののハードルは高く、肝心の専用品種の種もみは確保不能、さらに主食用米との混入対策も現状では難しいことから、机上の空論との厳しい声が上がっています。
 さらに、日本型直接支払制度にしても、今の制度でさえ補助金交付手続が煩雑なところに、さらに書類を求める形になっていること、農地中間管理機構についても、集落単位での合意形成が一つの条件になっていることによる弊害、さらには、農地を出したとしても、条件不利地の場合は集約しなくてもよいことになっており、結果として耕作放棄地の拡大につながるのではないかとの指摘が相次いでいます。
 制度的には岩手に有利な条件は少ない気がしますが、現実対応として、この制度を最大限活用しなければならないのも事実であり、県にも相応の努力と工夫が求められます。
 まず第1に、日本型直接支払制度については、増田県政時代に決定して以来、これまで県が認めてこなかった一部の共同作業について交付金の対象とすることが必要であります。知事の英断を求めます。
 農地中間管理機構の課題としては、現実として、平場で基盤整備された地域と中山間地で基盤整備がされていない地域では、農業振興にさらに大きな格差が生じることが容易に見込まれ、中山間地を多く抱える岩手にとっては、農地の荒廃と地域農業の崩壊が懸念されます。打開策の一つとして、ただでさえ整備率の低い中山間地では、身の丈に合った岩手型の基盤整備を進める必要があると思いますが、県の見解をお示しください。
 国の農政転換の中で唯一希望を見出すとすれば、それは輸出の拡大をうたっているところです。知事は、その経歴を生かして、これまで県産品の売り込みを主目的とした外交に取り組んできており、台湾からの定期チャーター便実現やアジアでの取引拡大に成果を上げていることに、敬意を表するところです。復興支援への答礼、ILCの理解促進とともに、世界無形文化遺産に登録された和食も含め、岩手の農林水産物のトップセールスを知事外交の柱として、さらに取り組んでいただきたいと思います。
 来年のミラノでの国際博覧会のテーマは食でありますが、国は、この国内向け企画書の中で一言も復興に触れておりません。極めて残念です。被災県岩手として、食料供給基地岩手として、1次産業の復興と餅に代表される岩手の食文化を含め、海外に向けたアピールを一層強化すべきと思いますが、見解を伺います。
 さて、この2月定例会では、平泉の文化遺産を生かそうという平泉世界遺産の日条例が提案されています。平泉文化を築いた奥州藤原氏は、中央から自立し、独自の文化を花開かせましたが、最後は、中央政府に武力弾圧されました。藤原氏しかり、アテルイしかり、私たちの先祖は、抗う民として中央政府から討伐の対象とされてきましたが、このみちのくの地で、自分たちが豊かに平和に過ごしてきた暮らしを守ろうとしてきたにすぎません。
 私たちは今、震災からの復興の途上で特別なことをしてもらおうとしているわけではなく、ただ、私たちの暮らしとふるさとの将来をかけて物を申しているだけです。私たちの誇れる岩手を将来に残していくためにも、県議会会派希望・みらいフォーラムは、県民の良識と見識、そして、まじめな思いに立脚した政策提言をこれからも行っていくことと、岩手の思いの正当性とその思いを形にするため一層の努力を行うことを県民の皆様に誓い、質問を終わります。
 御清聴ありがとうございました。(拍手)
   〔知事達増拓也君登壇〕
〇知事(達増拓也君) 岩渕誠議員の御質問にお答え申し上げます。
 まず、本格復興期における県の役割についてでありますが、復興に当たっては、被災地の基礎自治体である市町村が、地域特性や住民の意向を踏まえて具体的なまちづくりに取り組む一方、県は、いのちを守り、海と大地と共に生きるふるさと岩手・三陸の創造を目指し、市町村に共通する課題解決や広域的な政策の推進、全国や海外との連携の役割を担うものと考えます。
 また、本格復興期における政策的優先度についてでありますが、復興まちづくりの推進などによる地域の社会経済インフラの復興が本格化する一方で、被災者の応急仮設住宅等での生活の長期化への対応が重要となってくるものと認識しております。
 このため、本格復興を具体的に進める第2期復興実施計画においては、住民一人一人が復興の主役となる参画や、多様な主体の連携によるつながりの視点、そして、雇用の確保や地域経済の活性化等によって実現される持続性の視点を重視し、被災者一人一人が安心して生活を営むことができ、将来にわたって持続可能な地域社会の構築を目指す本格復興への取り組みを進めてまいります。
 次に、今後の鉄路の復旧についてでありますが、沿線各市町が鉄道復旧を求めていることや、JR線と三陸鉄道がつながることでさまざまな相乗効果が発揮されることから、県としても、鉄道の早期復旧が必要と考えています。
 JR東日本は、これまで鉄道復旧を表明していませんが、JR山田線については、1月末に三陸鉄道による運行が新たに提案されたところです。今回の提案については、早期の鉄道復旧や自治体の負担増を回避するといった観点から、沿線市町、三陸鉄道とともに、先般、JR東日本が対応すべきと考えられる事項をまとめ、JR東日本に提示したところであり、今後も、沿岸市町村及び三陸鉄道と検討、協議をして対応してまいります。
 また、JR大船渡線については、BRT仮復旧により当面の交通が確保されていますが、先般、JR東日本が提案してきたルート変更の課題などを整理しながら、引き続き、JR東日本に対し鉄道復旧を求めてまいります。
 次に、用地取得の問題についてでありますが、昨年11月に国に用地確保に係る特例制度創設の要望を行った際には、復興を進める上で事業用地の円滑かつ迅速な取り組みが重要な課題であるということについて改めて認識をいただくとともに、特例制度について、具体的な用地取得困難事例を示しながら、引き続き協議を進めているところです。
 しかし、今なお3万3、000人を超える被災者の方々が、応急仮設住宅等での不自由な生活を余儀なくされており、その一日も早い解消が最重要課題の一つであることから、復興事業に係る用地の円滑かつ迅速な取得を可能とする措置が、ぜひとも必要であると考えております。
 県が創設を要望している特例制度は、県事業のみならず、高台移転地の造成工事や、まちづくり連携道路など、市町村が行う復興事業にも大きな効果が期待できるものです。
 今後、市町村が進める復興まちづくり事業が本格化する中、市町村においては、いまだ権利者調査が進んでいない案件が約6、000件もありますことから、調査が進むにつれ新たな取得困難事例の増加が懸念されるところです。
 こうしたことから、県としては、事業用地についての市町村が抱える課題を把握するとともに、国に対して、その実態を丁寧に説明しながら、特例制度の創設を強く働きかけてまいります。
 次に、復興哲学と復興予算の見通し等についてでありますが、大震災津波からの復興に当たっては、被災者の人間らしい暮らし、学び、仕事を確保し、一人一人の幸福追求権を保障すること、また、犠牲者の皆さんのふるさとへの思いを継承することを基本的な方針として掲げ、復興に向けた取り組みを進めてまいりました。これは、地方自治法が掲げる地方自治の目的、住民福祉の増進、これを究極的な形で推し進めることであり、自治の確立、強化にほかならないと考えております。また、復興は活力ある地域を復活させることであり、地域資源を発掘し、磨き上げ、地元の底力とさまざまなつながりによって地域振興を進める開かれた地域主義が岩手の進む道であり、復興のあるべき姿と考えております。
 一方、今後の県として必要な復興予算の見通しについてですが、県では、被災当初、国、県、市町村を含む本県全体として復興費用をおよそ8兆円と試算したところであります。国においては、平成28年度以降の国の復興財源フレームをいまだ示していませんが、今後、本県における国、市町村を含めた復興に要する費用の全体を明らかにした上で、被災各県等と連携し、必要な復興財源の確保について、引き続き強く要望してまいります。
 次に、放射性物質に汚染された廃棄物の処理についてでありますが、まず、農林業系副産物については市町村等の焼却施設において焼却処理が進められているところであり、国に対し、処理が終了するまで財政支援を継続するよう要望するとともに、引き続き市町村への技術的支援を行ってまいります。
 道路側溝汚泥については、奥州市において一時保管施設の設置が進められるなど新たな動きが出てきており、重点調査地域に指定された3市町における一時保管設備の整備について、引き続き財政支援することとしております。
 河川や道路の草木等の野外焼却自粛の解除については、市町村から要望が出されており、きのう、専門家委員会を開催し、焼却自粛を継続する必要はないとの方針となったところであります。今後、県としては、この方針を踏まえて対応することとしております。
 指定廃棄物については、宮城県など5県については最終処分場の設置に向け調整が行われておりますが、本県では、指定廃棄物の発生量も少ないことから、既存処理施設を活用し、8、000ベクレル以下に管理しながら、着実に処理を進めてまいります。
 次に、農林水産物に係る風評被害対策についてでありますが、県では、これまで、消費者に対して県産農林水産物の安全・安心をアピールするなど、風評被害の解消に取り組んできた結果、牛肉や生シイタケの市場価格についてはほぼ震災前の水準に回復しておりますが、干しシイタケについては市場価格が低迷しているほか、関西圏ではワカメなどの海藻類で風評被害がいまだに続いております。
 このため、首都圏での取り組みを継続するほか、新たに関西圏を対象として、消費者に向けた鉄道広告の掲出や、シェフなどの実需者を対象とした産地見学会の開催などに取り組み、消費者の信頼回復と県産農林水産物の販路の回復、拡大を図ってまいります。
 次に、子供たちの健康を守るための取り組みについてでありますが、県では、これまで、主に県南部の子供を対象に放射線内部被曝健康影響調査を実施しており、今年度もこれまでと同様の手法により継続調査を実施し、現在、結果について取りまとめを行っております。また、昨年度から、一関市、奥州市、平泉町の県南3市町において、県補助事業を活用した内部被曝検査も行われているところであります。
 県としましては、放射線の影響を受けやすいとされる子供の健康を重視するとの方針のもと、内部被曝状況の継続的な把握を行うため、これらの事業について、必要な経費を平成26年度当初予算にも盛り込んだところであります。
 次に、危機管理についてでありますが、議員御指摘のとおり、南海トラフ地震等の発生に伴う物資や燃料の生産、供給の全国的な停滞によって直接的な被害が及ぶことが想定されない本県においても、県民生活や企業活動への大きな影響が懸念されるところであります。
 県としては、こうした事態に対し的確に対応できるよう、災害時応援協定を締結する団体等との平時からの連携強化に努めるほか、現在取り組みを進めている企業間連携による機能強化の促進や工場の複数拠点化に向けた企業誘致活動など、さらなる取り組みの強化に努めてまいります。
 また、東日本大震災津波の被災県としての経験と教訓を生かし、南海トラフ地震等、他地域において大規模な災害が発生した場合に的確に被災地を支援できるよう、現在、応援計画の策定を進めているところであります。これらの本県の取り組みについて、東北各県と情報を共有し、広域的に連携して対応できるよう調整を進めていくとともに、国に対する提言等も連携して行ってまいります。
 次に、岩手の子供たちの状況についてでありますが、東日本大震災津波以降継続して実施している心とからだの健康観察の結果によれば、県全体として徐々に回復傾向を示しております。しかしながら、平成25年度は、沿岸部の小中学校における要サポートの児童生徒の割合が前年度より増加しております。このことから、住環境や運動場、遊び場の減少等、被災地における子供たちを取り巻く環境は、なお厳しい状況が続いているものと認識しております。
 次に、いじめや被災地の子供の心のサポートについてでありますが、いじめはいかなる理由があっても絶対に許されない行為であるという認識のもと、社会が総がかりとなっていじめの問題を克服することを目指していく必要があります。このため、昨年9月28日に施行されたいじめ防止対策推進法に基づき、本年度中に県いじめ防止基本方針を策定し、関係部局が一体となっていじめの未然防止と根絶に取り組んでまいります。
 また、幼児、児童生徒の心のサポートにつきましては、子供たちを取り巻く環境の変化に対応し、スクールカウンセラーやスクールソーシャルワーカーを増員するとともに、いわてこどもケアセンターの機能とあわせ、子供たちの支援に全力で取り組んでまいります。
 次に、ILCの建設実現についてでありますが、ILCを実現するためには、まずもって国民の理解が不可欠であるとの認識から、これまでも、講演会やシンポジウムの開催、テレビ、ラジオによるILC実現の意義の発信、普及啓発用DVDの作成、配布など、県内外でさまざまな理解促進活動に取り組んでまいりました。また、北上サイトが国内候補地に選定されましたことから外国人研究者の関心も高まっており、建設候補地周辺の生活環境情報をインターネットで発信するため、英語版、フランス語版、中国語版の動画を製作しているところであります。
 さらに、海外において、直接情報発信するため、来年度にはフランスにおいて、北上サイトの紹介や海外研究者との意見交換、外国政府や要人の方々への働きかけを行うなど、ILCの実現に向け積極的に活動を展開してまいります。
 次に、ILCのグランドデザインについてでありますが、ILCは多くの国が参加する国際プロジェクトであり、建設地周辺には、外国人を含めて数千人に及ぶ研究者等が居住することが見込まれ、県の総力を挙げてILCの受け入れ環境の整備などに取り組む必要があります。このため、現在、庁内に、外国人研究者の子弟の教育、医療の体制整備、まちづくり、産業振興の四つの組織横断的なワーキンググループを設置し、検討を行っているところです。
 一方、政府のILC日本誘致の方針が決定されていないなど、ILC実現の道筋が現時点では明確になっていない状況でありますが、ワーキンググループで明らかになった具体的な課題について、関係市や大学、民間団体等とも連携しつつ、それぞれの役割に応じた検討を進め、国の調査検討状況やILC計画の進捗状況に応じ、しっかりと工程を見定め、取り組んでまいります。
 次に、再生可能エネルギーについてでありますが、国においては、昨年9月に本県が行った復興特区の提案も踏まえて、農林漁業の健全な発展と調和のとれた再生可能エネルギーの導入促進について検討を進め、11月に新たな法律を公布しました。この法律は、今後、省令や基本方針等を定めた上で、今春に施行される予定でありますことから、県においては、本制度の活用に向けて、市町村が新法に基づき行う計画作成を支援してまいります。
 また、本県に豊富に賦存する再生可能エネルギー資源を積極的に活用し、導入を推進していくため、本年度作成を進めている導入支援マップやポータルサイトなどを活用し、地域に根差した取り組みを掘り起こしていくとともに、事業者等との意見交換を進めながら、風力や地熱などの有望地点での開発を推進し、再生可能エネルギーによる電力自給率倍増に向け取り組みを強化してまいります。
 次に、日本型直接支払制度についてでありますが、本県の美しい田園風景は、農村に暮らす人々が農業を営みながら農地や農業用水を守ることにより育まれてきましたが、農業従事者の減少や高齢化が進行する中にあっても、農業、農村が持つ多面的機能の発揮を支える地域共同の活動を継続していくことが重要であります。このような観点から、今回創設された農地周りの草刈りや水路の泥上げ等の共同活動を支援対象とする農地維持支払いの所要額を平成26年度当初予算に盛り込んだところであります。
 県といたしましては、この制度の導入により、地域ぐるみの保全管理活動による多面的機能の維持、増進に加え、農地の管理作業の負担軽減による農地集積の促進などが期待できるものと考えており、本制度が円滑に導入されるよう、市町村等と連携し、地域の実施体制づくりに取り組んでまいります。
 次に、中山間地域における岩手型の基盤整備についてでありますが、本県農地の約8割を占める中山間地域は本県農業にとって重要な地域でありますが、高齢化、過疎化が進行する中にあって、担い手の確保や農地の利用集積が喫緊の課題であります。こうした課題を解消するためには、農地や農道など生産基盤の整備が不可欠であります。
 県といたしましては、急勾配、農地分散など中山間地域特有の条件を勘案しながら、大区画にこだわらない区画形状の選択や用水路単独での改修など、地域のニーズに合わせたきめ細かい整備により、農地の有効活用や農業経営の効率化が図られるよう取り組んでまいります。
 次に、海外に向けたアピールの強化についてでありますが、復興支援を通じて育まれた国内外とのつながりを大切にし、より深めていくことが復興推進の大きな力となります。震災の記憶を風化させず、継続的な支援を喚起するためにも、さまざまな方法で情報発信することが重要であり、その一環として、海外への訪問に際して直接復興支援への御礼を述べ、復興を通じて未来に向かって進む岩手の姿を発信してまいりました。
 このような考え方を基本として、今年度は、米国などにおいて、復興支援への感謝や復興の取り組みの発信、そして県産食材を活用した食の提供によるPRを行ってきたところであります。来年度におきましては、フランスで復興報告会を開催し、欧州の国々に対し岩手の復興の今を伝えるとともに、ILCの実現や世界ジオパークの認定に向け関係者の理解を深め、さらなる機運醸成を図るため、この機会を生かし欧州の関係機関へPRを行うなど、さまざまな分野で本県を積極的にアピールしていきたいと考えております。
 また、ミラノ国際博覧会については、来年5月から6カ月間、イタリアのミラノで開催される予定で、日本政府においては日本館の出展に向けた取り組みが進められていると承知しておりまして、本県としても、餅を初めとした岩手の食文化や農林水産物のアピールについて、どのような取り組みができるか検討していきたいと考えております。
〇議長(千葉伝君) 傍聴者への配慮から、しばらくお待ちください。
 次に、田村誠君。
   〔47番田村誠君登壇〕(拍手)

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