〇37番（斉藤信君）　日本共産党の斉藤信でございます。
　日本共産党を代表して、発議案第12号ＴＰＰ交渉参加からの即時撤退を求める意見書に賛成の討論を行います。
　そもそも、安倍首相によるＴＰＰ交渉参加表明は、昨年12月の総選挙での自民党の国民に対する公約に反する明白な公約違反でありました。
　自民党は、総選挙の公約では、１、政府が聖域なき関税撤廃を前提にする限り交渉参加に反対する。２、自由貿易の理念に反する自動車等の工業製品の数値目標は受け入れない。３、国民皆保険制度を守る。４、食の安全・安心の基準を守る。５、国の主権を損なうようなＩＳＤ条項は合意しない。６、政府調達、金融サービス等は、我が国の特性を踏まえる、の６項目を掲げていたのであります。
　重大なことは、その後のアメリカとの事前協議を通じて、公約違反の実態がいよいよ明らかになったことであります。
　４月12日には、アメリカとの事前協議合意を経て、４月下旬には、交渉11カ国全ての同意を取りつけるなど、交渉参加への道をしゃにむに突き進みました。
　安倍首相は、交渉参加の表明に当たって、交渉力を駆使し、守るべきものは守り、国益にかなう最善の道を追求すると述べました。しかし、アメリカとの事前協議では、米、乳製品、砂糖など、重要農産物の関税について、何一つ維持できるという保障をとることができませんでした。
　その一方で、日本の交渉参加の条件とされた入場料と呼ばれる牛肉、自動車、保険の３分野でのアメリカの要求を丸のみしたのであります。しかも、ＴＰＰ交渉と並行して、自動車、保険、投資、知的財産、規格・基準、政府調達、競争政策、衛生植物検疫などの非関税措置の撤廃、緩和に向けた日米２国間協議を行い、ＴＰＰ交渉の妥結までにまとめることを約束させられました。アメリカに続いて日本の交渉参加に同意したオーストラリアやニュージーランドも、全品目の高い自由化の実現こそ参加条件だと念押しをしています。
　この間の交渉の経過が示していることは、安倍首相の言う強い交渉力のかけらもない、アメリカ言いなりの姿であり、ＴＰＰ交渉に参加すれば農林水産物の関税撤廃が迫られ、我が国の農林漁業など守るべきものが守れないという実態ではないでしょうか。
　ＴＰＰ交渉への参加は、岩手県の農林漁業の死活にかかわる問題であります。岩手県の試算でも、米の生産額は50％、乳牛は100％、サケ・マスは57％減少し、農林水産額1､015億円の生産額の減少、これは全体の生産額の33％に及ぶものであります。その経済波及効果は1､438億円に及ぶとしています。岩手の製造業の柱である食料品製造業、地域経済に与える影響も甚大であります。
　東日本大震災の復興にも逆行します。被災地で復興に取り組んでいる漁協の組合長は、国の支援を受けて復興しても、ＴＰＰで潰されかねないと厳しく指摘をしております。
　政府の試算でも、農業生産額は３兆円も減少し、食料自給率は27％まで低下します。農業だけでなく、全産業で10兆5､000億円も生産が減少し、190万人の失業者が出るとされているのであります。
　非関税障壁の撤廃では、混合診療や医療への株式会社の参入、公共事業の地元優先発注の撤廃、食品の安全基準や自動車排ガス規制の大幅な緩和などが標的とされています。
　地球規模で食料不足が大問題になっているときに、自国の農業を壊し食料を外国に頼る国にする、そして雇用も地域経済も破壊する、こうした亡国への道を許してはなりません。
　安倍首相のＴＰＰ交渉参加表明から、アメリカとの事前協議、各国との協議の経過が示すことは、アメリカ言いなりに、アメリカの要求を丸のみしている日本政府の余りにも惨めな姿ではないでしょうか。守るべきものが守れないのがＴＰＰ交渉だということがはっきりしてきたのではないでしょうか。
　岩手県議会は、３月県議会の最終日に、公明党１人の反対だけで、ＴＰＰ交渉参加の撤回を求める意見書を採択いたしました。この間の経過は、安倍内閣の公約違反がますます明確になるとともに、アメリカ言いなりの交渉の実態であります。岩手県議会が改めてＴＰＰ交渉参加の撤回を求めることは当然のことであり、岩手県民の利益、岩手の農林漁業と地域経済の死活にかかわる重大な課題だと言わなければなりません。
　もし、この意見書に反対すると言うなら、ＴＰＰ交渉参加撤回という３カ月前の立場を変えるものとして、県民の厳しい審判を受けざるを得ないものであります。国民に対する公約は、政党、政治家にとっては、命ともいうべき大事なものであります。その公約、県民への約束をころころ変える政党、政治家は、県民の厳しい審判を受けざるを得ないものであります。
　今回のＴＰＰ交渉参加からの即時撤退を求める意見書の提案は、単なる手続の問題ではありません。この間の事前協議などの重大な情勢の変化に対応するものであります。岩手の農業と地域経済、県民の暮らしと命にかかわる問題だということを重ねて強調して、私の賛成討論といたします。
　御清聴ありがとうございました。（拍手）
〇議長（佐々木博君）　次に、大宮惇幸君。
　　　〔33番大宮惇幸君登壇〕