平成25年6月定例会 第10回岩手県議会定例会会議録

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〇15番(久保孝喜君) 小西議員の放射性物質対策の質問に関連してお尋ねいたします。
 1点目は、原発に係る情報連絡協定に関してでございます。
 この協定は、3月28日ということで協定されたようでありますし、相手方が東北電力、それで、その対象となるべき原発が女川と東通原発ということになっているようです。
 そこで、知事に伺いますが、福島の原発事故の経験に学べば、隣接県の原発施設とのこういう協定は、もとより、その稼働を前提にして、それを推進するかのような意味で聞いているわけではございませんが、少なくとも、県の安全に係る姿勢を示すという点で、この協定に取り組むということ自体は、私は、県民に対するメッセージとして非常に強いものがあるという観点でお聞きしますが、東通原発より岩手県境に近いところに青森県六ケ所村の核燃施設があるわけですね。そこの運営をしている日本原燃との間では、この東北電力と同様の協定を結ぶお考えがあるのかどうか、まず、その点をお聞きしたいと思います。
 それから、その協定の中身で、これは総務部長にお尋ねしますが、新燃料、使用済み燃料または放射性固体廃棄物の輸送中に事故が発生したときの情報、連絡、こういうことが協定書の中にうたわれているのですが、この協定書の表題にあるとおり、県民の安全確保ということを考えれば、輸送中の事故の際の情報というよりは、その輸送そのものの情報がまずはなければ、危機管理上の問題を含めて通常ならざる事態が想定されるわけですから、そういう意味での輸送の事前通告ということをこの協定の協議の際にどのように話されていたのか、その辺を含めて考え方を示していただきたい。
 それから、二つ目の点は、放射性物質の汚染に係る情報発信に関してですが、これも、まず最初に知事にお尋ねしますが、今、県政においても非常に大きな課題となっておりますこの汚染の拡大あるいは深刻な事態、暮らし、産業面を含めて、その現実があるわけです。この事態を、そもそも論としてお聞きするわけですが、県政における最大の環境問題と私は捉えるべきだと思っているんですが、知事は、そもそもこの問題をどのようにお考えか、その点をまずお聞かせいただきたい。
 それから、2点目は総務部長にお尋ねしますが、現在、さまざまなこの事故に係る損害賠償の問題が、ある意味、非常に行き詰まっているということもございます。自治体のかかり増し経費などの例は象徴的なわけですけれども、こういう賠償が十分なされていない現状の中で、しかし、汚染の実態、そしてその被害というものが現にある中にあっては、県土における暮らし、産業を含めて、汚染の実態をトータルで適宜に、県民に対しても、そして、東電を含めた電力事業者に対しても、今現在こういう汚染実態があって、なおかつ、こういう損害があるということをトータルとして常に示し続けるということが賠償責務を求める世論形成の上でも非常に重要だと思うんですが、その点でどのようにお考えか、まず、この点をお聞きしておきたいと思います。
〇知事(達増拓也君) まず、日本原燃株式会社との協定についてでありますが、岩手県地域防災計画原子力災害対策編に定める対策を迅速かつ確実に実施するためには、情報、連絡体制を原子力事業者との間で構築することが必要であります。日本原燃株式会社とも、東北電力株式会社と同様の協定を締結する必要があると認識しております。
 現在、日本原燃株式会社とは、東北電力株式会社との協定内容を踏まえ、協定締結に向けた協議を進めているところでありますが、日本原燃株式会社も情報提供には前向きに対応する意向を示しており、早期に必要な情報が得られる体制を構築できるよう取り組んでまいります。
 次に、放射性物質汚染の認識についてでありますが、原子力発電所事故による放射性物質の影響は、事故発生から2年3カ月以上過ぎた今日においても、本県県民の暮らしや環境、そして各種産業の風評被害に至るまで、解決すべき課題が広範囲にわたる問題として存在し続けていると捉えているところであります。
 県では、原発放射線影響対策本部で策定しました放射線量低減に向けた取組方針、また、県産食材等の安全確保方針に基づきまして、放射線の影響を受けやすいとされる子供の健康と食の安全・安心を重視し、放射線影響対策に取り組んできているところであります。
 引き続き、こうした取り組みを市町村等と連携して、県民の安全・安心の確保に努めてまいりたいと思います。
〇総務部長(小田島智弥君) 2点お尋ねがございました。まず、1点目でありますけれども、今般の東北電力との協定において、いわゆる核燃料輸送に係る事前通告、この規定がないわけだけれども、そういうことを安全性の観点から盛り込むべきではないのかということでございます。
 これにつきましては、実は、東北電力とのやりとりの中で盛り込まれなかったわけでありますが、この核燃料輸送に係る情報というのは、事前に公表することで核物質防護の実効性を損なうおそれがあるということで、その管理の徹底が求められたということで、3月28日に締結した協定からは除かれたものでございます。
 ただ、議員御指摘の点につきましては、私どもも問題意識は持ってございまして、今後、県としてどういう情報が得られ、どういう情報を公表できるのか、東北電力株式会社とは、引き続き話し合いを継続していきたいと考えております。
 それから、2点目でありますけれども、県土の汚染の状況等についてトータルとして現状を発信すべきではないかという御指摘でございました。これまでも、県としては、さまざまな放射線影響対策を実施するとともに、その行った結果や、あるいは県産食材の放射性物質濃度の検査結果等々、さまざまな形で情報発信をしてきたところでございます。
 ただ、先ほど議員の御指摘にありましたとおり、東電との賠償についてなかなか進んでいないというのは、特に自治体における除染等の経費、あるいは風評被害の経費等についてさまざま行っているものについて、なかなか認めてもらえないというような状況に今ございます。
 世論形成が必要であると思いますし、それを県民の方々にも知っていただく必要があるということで、この東電への請求等については、公開質問状という形で、見解の違いについて広くオープンにした形で回答を求めているところでありますし、そういうやりとりについては、逐次、可能なものについては、県のホームページ等々で情報発信をしているところでございます。
 いずれにいたしましても、県の取り組み、あるいはそういった取り組みの結果、払拭されているもの、風評被害を払拭するためにも安全であるものはきちんと公表していかなければ、お伝えしていかなければならないと思いますし、いろいろな意味でトータルの情報発信を県民の方々、それから県外にも情報発信していかなければならないと考えているところでございます。
〇15番(久保孝喜君) ありがとうございました。
 知事から、六ケ所村の再処理工場事業者と協定を結ぶ方向だということが言明されました。さらに言えば、私は、現在、廃炉が決定している福島第一原発は、これから廃炉に向けて何十年もかかるわけですけれども、その間の不測の事態だって当然リスクとして考えておかなければいけない。さらに、第一原発からさほど離れていない第二原発の問題だって、これは非常に重要だ。そうすると、東京電力との間でも同様の協定を結ぶべきだ、こういうふうに思うわけですね。
 さらには、青森県にはもう一つ、大間原発というものもございます。距離を考えると、当然のことながら、福島原発事故との関係で言うと、十分に県内への影響というのは想定できることでありますから、このJ-POWERとも、当然のことながら協定を結ぶべきだと思いますが、その点、改めてお尋ねしたいと思います。
 それから、この件に関して、輸送中の事故の話が、テロ対策、安全防護上の観点から輸送の事前通告は盛り込まなかったということなんですが、何も世間に向かって公表しろという話ではなくて、少なくとも県行政に対してその通告があれば、例えば消防なり防災機関との連携の中で十分に対応できるわけです。しかも、その情報が漏れるというのであれば、これはまさに公務員の守秘義務に反する犯罪ですから、犯罪を前提あるいは想定した中で県民の安全を二の次にするというのは、これはおかしな話に当然なってくるわけで、ぜひその点では、今後の協定についても、これはやるべきだと申し上げておきたいと思います。見解をお示しいただきたい。
 それから、情報発信に関してですが、トータルな情報発信ということで注目したニュースがございました。先月の初めに、政府が、毎年のことですけれども、環境白書を閣議決定したということになっております。この白書は、民主党政権時代とはちょっと打って変わって、かなり問題があるぞという識者の評価もあるわけですね。その最大のものは、現在の自公政権が原発再稼働に前がかりになっているということを含めて、環境問題に対してのリスクという記載が去年に比べて非常に少ないというようなことが指摘されております。昨年に比べて表現が後退している、そういう話があります。
 しかしながら、それでも、この放射線の影響については、実はこの環境白書なるものにトータルでかなり詳細にわたって記述されているという点では、私は見るべきものがあるのだろうと思うんですね。白書の冒頭に原発事故のことがるる書かれてあって、その影響を含めて記載がされているわけです。最初の第1章というのも、実はこの放射線対策の章立てになっている、あるいは除染についても、原子力行政についても、健康についても、それぞれ独立した章立てでいわば情報を出している、こういうことになっているわけです。
 これに対応する形で、県には、この環境報告書なるものがあるわけですが、これを実は改めて見て、ちょっとびっくりしました。この環境報告書の総論の中に放射性物質の汚染にかかわっての記述が極めて少ない。これは全体で106ページあるんですが、この放射性物質の汚染にかかわっての県の取り組みを含めて、書かれてあるのは1ページ足らずですよ。しかも、我々の暮らしにかかわるほとんどの領域、例えば森林、農地、海岸、大気、水、土地、自然との共生、そして資料編に至るまで、実はこの記載が全くないということに至っては、せっかくのこういうツールがありながら、そして、これが非常に大きな県政課題だと言いながら、知事のお言葉にあるように、県民生活にとっても非常に大きな課題だと言いながら、その記載が国の白書に比べても極めて少ないというこの現実。県民に対して発信していることと実際の事務事業がこれほど乖離しているということの象徴なのではないかと私は思うんですが、この点について知事の見解を求めたいと思いますし、あわせて、環境生活部長にもコメントを求めておきたいと思います。
 書いている内容も、実に事務的過ぎる、おざなりに過ぎる、安直であるという感想を私は持ちました。私たちは、被災県であって、なおかつ、この放射線の被害をまともに受けている当事者ですよ。そういう県が発するトータルとしてのこの情報発信がそういうことでいいんだろうか、こういうふうにも思うわけですけれども、その意思や意欲というものを感じさせる情報発信というものが今まさに求められていると思うんですが、いかがでしょうか。
〇知事(達増拓也君) 福島の東電の原発の現状については、これは、東京電力もさることながら、やはり政府として今どうなっているのかということをきっちり情報発信してもらわないと、これは国民全体として困ると思っておりますが、いずれ、まず、近いところの原子力施設に関する原子力事業者との間の関係構築を進めながら、遠いところについても勉強させていただきたいと思います。
 それから、環境白書は、そもそも原子力発電所事故問題、それに伴う放射性物質によるさまざまな問題については、一義的には東京電力に責任、そして、原子力発電政策を進めてきた国に責任があるということで、国の環境白書において、その実態についてきちっと説明されているというのは、特に環境省が、基本的に原発事故対策について、その放射性物質関係の対策の主任官庁になっているという実態を踏まえた国の対応かと思っております。
 県においては、県民生活の実態にあわせて、農業の現場、学校の現場、子供たちの現場、観光やさまざまな風評被害、それぞれの現場で、県民の安全と利益を守るための情報発信という観点からさまざましているところではありますけれども、御指摘を参考にしながら、鋭意工夫を重ねてまいりたいと思います。
〇総務部長(小田島智弥君) 核燃料輸送に係る事前通告について再度お尋ねがあったわけでありますが、議員御指摘のとおり、法律上の制約がございまして、核原料物質、核燃料物質及び原子炉の規制に関する法律の規定によって、プルトニウムやウラン等の防御対象特定核燃料物質については、地方公共団体等の職員は、正当な理由なく、その防護に関する秘密を漏らしてはならない、そういう法がありまして、法の趣旨に照らして、本当にそういうことが妥当なのかどうかということは、これは東北電力との話し合いの中で、さらに詰めさせていただきたいと考えております。
〇環境生活部長(風早正毅君) 再度の御質問をいただきました。まず、環境基本計画につきましては、平成23年度に計画を定めておりまして、10カ年の計画ということで、7本の基本の柱に基づいて、るる岩手県の環境問題全般について記載しております。これは、審議会の御意見も踏まえた上で策定しておるわけでございます。
 また、放射線の影響につきましては、当然のことながら、特出しをして、この環境基本計画とはまたさらに別の観点からも取り組みを、改めて全体的な取り組みを掲げておりまして、先ほど知事が御答弁させていただきました放射線の影響対策に関する取り組み状況ということで、かなりの枚数にわたる県の全般の施策について取りまとめた上で、公表しておるところでございます。
 いずれにしましても、議員御指摘のとおり、環境問題は、どれかが重くて、どれかが軽いという問題では決してございませんので、引き続き、環境生活部としても、きっちりと全体を見渡して対応を講じてまいりたいと考えております。
   日程第2 議案第45号災害公営住宅(陸前高田市中田地区)新築(建築)(第1工区)工事の請負契約の締結に関し議決を求めることについて
〇議長(佐々木博君) 次に、日程第2、議案第45号災害公営住宅(陸前高田市中田地区)新築(建築)(第1工区)工事の請負契約の締結に関し議決を求めることについてを議題といたします。
 提出者の説明を求めます。小田島総務部長。
   〔総務部長小田島智弥君登壇〕
〇総務部長(小田島智弥君) ただいま議題とされました案件について説明を申し上げます。
 議案第45号は、東日本大震災津波からの迅速な復興に向けて、災害公営住宅の建築工事に係る請負契約の締結に関し議決を求めようとするものであります。
 よろしく御審議の上、原案に御賛成くださいますようお願い申し上げます。
〇議長(佐々木博君) 以上をもって本日の日程は全部終了いたしました。
 本日はこれをもって散会いたします。
   午後5時40分 散 会
第10回岩手県議会定例会会議録(第4号)

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