平成25年6月定例会 第10回岩手県議会定例会会議録

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〇36番(工藤勝子君) 自由民主クラブの工藤勝子でございます。
 質問に先立ちまして、このたび御逝去されました故小泉光男議員に哀悼の意を表し、御冥福を心からお祈りいたします。
 今定例会において登壇する機会をいただきましたことに感謝を申し上げながら、通告に従い順次質問してまいりますので、当局の明確かつ積極的な御答弁をお願いいたします。
 まず最初に、東日本大震災津波からの復興についてお伺いいたします。
 東日本大震災津波から2年4カ月になろうとしております。今年度は復興加速年としてスタートし、ようやく高台の宅地造成や災害公営住宅の起工式、安全祈願祭など明るい話題も聞こえてくるようになってきましたが、いまだに3万7、000人を超える被災者の方々が不自由な応急仮設住宅等で生活を強いられております。これから3回目の厳しい夏を迎えようとしておりますが、被災者の最大の願いは、一日も早く応急仮設住宅から退去し、自宅での快適な生活を送ることだと思います。
 復興計画によると、平成27年度までに災害復興公営住宅が完成する見込みですが、高台移転のための用地を確保するなどインフラの整備を進めなければ持ち家も建てられない状況にあります。災害公営住宅では一部で入居が始まったところもありますが、まだまだその数は少なく、防災集団移転事業等による宅地の供給もほとんど実現されていません。
 このような状況の中で、被災者の方々は、先の見えない生活に将来への希望を失いつつあるのではないでしょうか。一刻も早く被災者の方々がもとの生活を取り戻すための基盤となる災害公営住宅や宅地の整備を進め、被災者の方々が次の展望を描けるステージを用意することが、今求められている行政の最大の役割だと思いますが、これらの事業の課題と今後の見通しについてお伺いいたします。
 災害復興公営住宅や防潮堤の整備等についてお伺いいたします。
 県が公表している社会資本の復旧・復興ロードマップによると、市町村ごとに災害復興公営住宅や防潮堤の整備スケジュールを示しておりますが、現在、計画どおりに進捗しているのか、計画どおりに本当に完成できる見込みなのか、その点についてお伺いしながら、進捗がおくれているとすれば、その課題と解決に向けた対応策についてお伺いいたします。
 県営建設工事における入札不調の原因と対策についてお伺いします。
 県は、復興計画に基づき災害復旧復興工事を進めていますが、平成24年度の県発注工事において、入札者がなく入札取りやめとなった入札が、発注件数1、651件の12%に当たる203件発生しており、被災地の復旧、復興への影響が懸念されているところであります。どのような工事で入札不調が多く発生しているのか、その原因と対策についてお伺いいたします。
 次に、国際リニアコライダーの誘致についてお伺いいたします。
 国際リニアコライダーについては、研究者で組織されるILC立地評価会議が、科学技術及び社会経済的観点から客観的に評価を行い、8月にはその評価結果が示され、建設候補地が一本化されると伺っております。また、日本学術会議においてもILCについての検討が進められております。このような状況のもと、今後の誘致に向けた方針と、最後の詰めとしてどのような誘致活動をされようとしているのか、あわせて、日本に誘致することを強力に進める活動についてお伺いいたします。
 野生鳥獣被害対策についてお伺いいたします。
 野生鳥獣による本県の農作物被害は、ここ数年、3億円前後と横ばいで推移してきておりますが、遠野市では公共牧野を中心にニホンジカによる甚大な被害が発生しております。また、ニホンジカの生息域は県内各地に拡大しており、県南部においては、これまでなかったイノシシの被害が確認されるなど、新たな鳥獣被害も含めて農林業被害の拡大が懸念されているところであり、有害捕獲の担い手不足などとあわせ、本県の鳥獣被害をめぐる情勢は厳しい状況にあると認識しております。
 そこで、農林業における被害の実態と、被害防止に向けてどのような対策を講じているのかお伺いします。
 次に、豊かな森林づくりについてお伺いします。
 初めに、松くい虫の被害状況とその対策についてお伺いします。
 本県は、県土の77%を森林が占め、北海道に次いで広い面積を有する森林県であります。特にアカマツは県内全域に分布し、本県は古くから全国的に有名なアカマツ材の産地として知られており、さらにナンブアカマツは県の木にも指定され、本県の景観を構成する要素としても県民に親しまれているところであります。
 ところが、本県のアカマツ林においては、松くい虫被害が初めて確認された昭和54年以降、30年以上にわたり県が被害対策を講じてまいりましたが、現在も多くの被害が発生し、被害区域が拡大している状況にあります。本県の貴重なアカマツ資源を守るとともに、有効に活用することにより、本県の豊かな森林が適切に管理されると考えます。
 そこでお伺いしますが、松くい虫対策について、現在の被害状況、松くい虫被害対策を進める上での課題と被害拡大防止に向けた県及び市町村の取り組みについてお伺いします。また、あわせて、アカマツ材を有効に活用することが重要と考えますが、今後の県産アカマツの需要見込みについてもお伺いいたします。
 次に、農業振興策についてお伺いします。
 環太平洋パートナーシップ協定について、本年3月に安倍首相はTPP協定交渉への参加を表明し、その後、交渉に参加している11カ国において日本の参加が承認されたことを受け、今月には日本が初めて交渉会合に参加する見込みと伝えられております。
 これまで県は、TPP協定交渉への参加については、農業を初めとする地方の経済、社会に大きな打撃を与え、東日本大震災津波からの復興の妨げになるおそれも大きいと考えられることから、TPP交渉参加には賛成しかねる姿勢を貫いてきたことは承知しておりますが、TPP交渉参加の現実味を帯びてきた今、改めて、参加することによる本県農業に与える影響が懸念されるところであります。
 そこで伺いますが、2010年世界農林業センサスによると、本県の農業就業人口は9万人弱と、5年前の11万4、000人に比べ約2割減少しているほか、65歳以上の割合は63.5%と、5年前の60.5%に比べ3ポイント上昇しているなど、従事者の減少や高齢化が進行しており、本県農業の生産構造が脆弱化してきているものと考えられます。
   〔議長退席、副議長着席〕
 こうした状況を踏まえ、将来にわたり足腰の強い岩手型農業の確立に向けた今後の取り組みについてお伺いいたします。
 また、県では、いわて県民計画第2期アクションプランにおいて認定農業者等への農地集積を推進することとしております。現在、国の方針を踏まえ、県内各地域で農地を担い手に集積し、農業活性化を加速するための地域農業マスタープランの作成や実践が行われていると承知しておりますが、その作成状況と課題についてお伺いいたします。
 一方、グローバル化の進展に伴い、本県の経済もこれまで以上に海外とのかかわりが強くなってきており、高品質で、そして安全・安心、信頼のできる県産農林水産物の輸出機会の拡大についても期待されているところであります。県では、これまで、東南アジア地域を中心に米やリンゴ、水産物等の輸出に取り組んできたところでありますが、今後の輸出拡大に向けた課題と取り組みについてお伺いします。
 次に、地方財政の課題についてお伺いします。
 政府は、去る6月14日に経済財政運営と改革の基本方針、いわゆる骨太の方針を閣議決定し、この中で財政健全化への取り組みを示したところであります。
 地方財政においては、国の取り組みと歩調を合わせて抑制を図るとともに、地方の安定的な財政運営に必要な一般財源の総額を確保するとしておりますが、地方交付税の別枠加算の解消など、さまざまな制度改革が既に議論となっているところです。国と地方が一体となった財政再建は喫緊の課題ではありますが、もともと財政力の弱い地方公共団体や東日本大震災津波の被災自治体には一定の配慮がされるべきと考えております。
 そこでお伺いしますが、現在の本県の財政の健全性はどういう状況なのか。地方財政の制度改革によってどのような影響があると認識しているのか。また、制度改革の作業が具体化していく中で、県はどのような対応をしていくのかお聞きいたします。
 以上、演壇からの質問を終わらせていただき、この後は質問席に移り再度質問いたしますので、よろしくお願いいたします。
   〔36番工藤勝子君質問席に移動〕
   〔知事達増拓也君登壇〕
〇知事(達増拓也君) 工藤勝子議員の御質問にお答え申し上げます。
 まず、災害公営住宅建設事業等の課題と今後の見通しについてでありますが、災害公営住宅については県全体で5、972戸を整備する計画となっており、県では2、823戸、市町村では3、149戸を整備することとしています。
 大きな課題となっている用地の確保につきましては、防災集団移転促進事業等で整備予定の宅地を合わせ8割程度までめどが立ってまいりましたが、残る用地の早急な確保に加え、資材や労働者の確保などが課題となってきているところです。
 また、宅地の整備については、本年6月までに、防災集団移転促進事業が54地区全てで国土交通大臣の同意を得て15地区で造成工事に着手し、漁業集落防災機能強化事業は全40地区中10地区で着手し、うち2地区では住宅の建築が可能となっています。土地区画整理事業は、18地区のうち14地区で都市計画事業の認可を得て換地計画などの具体的な事業計画策定を進めるとともに、4地区で造成工事に着手しております。
 こうした宅地の整備は、事業着手のための手続から用地買収や工事などの実施段階に移行してきており、土地の権利関係の調査や迅速な用地確保に加え、造成工事で発生する土砂の調整や、資材、労働者の確保などが課題となってきております。
 県としては、これらの課題に対応するため、災害公営住宅における敷地提案型買い取り方式の活用や、施工確保対策連絡調整会議等を通じて円滑な工事の実施に努め、一刻も早く被災された方々が安心して暮らすことのできるよう、市町村とともに災害公営住宅の建設や宅地の供給に取り組んでまいります。
 次に、国際リニアコライダーの誘致に向けた方針と誘致活動についてでありますが、現在、国内の研究者グループが設置したILC立地評価会議において、東北地域と九州地域双方の地質などの科学的、技術的な観点と、研究者の居住環境などの社会経済的観点で評価を行っているところであり、県では、東北大学や東北ILC推進協議会等と協力して、これらの評価に必要なデータの収集、提供を行うなど、高い評価が得られるよう最大限努力してきたところであります。今後におきましても、政府への働きかけを行うとともに、ILCの意義や地元の熱意などについて広く御理解をいただくような取り組みをしてまいりたいと思います。
 その他のお尋ねにつきましては関係部長から答弁させますので、御了承をお願いします。
   〔県土整備部長佐藤悟君登壇〕
〇県土整備部長(佐藤悟君) 災害公営住宅や防潮堤の整備状況についてでありますが、現時点では、社会資本の復旧・復興ロードマップでお示ししているとおり、災害公営住宅については、県が整備するものは平成26年度末まで、市町村が整備するものはおおむね平成27年度末までに完成させるよう鋭意取り組んでいるところであります。また、防潮堤については、同じく平成27年度末までに完成させるよう取り組んでいるところです。
 これらの事業を進めていくに当たりましては、用地の取得に時間を要することや、資材、労働者等が不足することなどの課題がありますが、災害公営住宅については、敷地提案型買い取り方式の活用、防潮堤については、土地収用制度の活用などにより迅速な用地取得に努めるとともに、施工確保対策連絡調整会議等を通じて円滑な事業の推進に努めてまいります。
 なお、今後事業を進めていく中で完成の見通しが変わってくるような場合には、地元市町村などと十分に調整を図りながら、ロードマップの見直しを行ってまいります。
   〔総務部長小田島智弥君登壇〕
〇総務部長(小田島智弥君) まず、県営建設工事における入札不調の原因と対策についてでありますが、平成24年度に入札不調となった203件の工事のうち、2、500万円未満の小規模な工事で118件と不調が多く発生しております。一方、1億円以上の大規模な工事においても41件発生しており、このうち29件が、潜水士や船舶を使用する海中作業を伴う防波堤等の工事となっています。
 これら入札不調の原因として、事業者の方々からは、技術者や作業員、建設資材の不足やそれらの経費の上昇などと伺っているところであります。
 このため、入札制度について、工事の施工実績要件や技術者の施工経験要件を緩和するとともに、沿岸地区における工事へ、近接する内陸の業者の参加を認めるほか、復興JVの対象工事の拡大や技術者の雇用要件緩和等の対策を講じているところであります。
 さらに、工事の設計や積算におきましても、小規模工事の一括発注、労務費や資材価格の高騰に対応するための変更契約等の対策を講じているところであります。
 次に、地方財政の課題についてでありますが、現在の本県財政は、復旧、復興に向けて多額の財源が必要なことに加え、社会保障関係経費の自然増や、今後数年かけて県債償還がピークに達するなど、中長期的に厳しい局面が続くものと見込んでおります。
 また、現在議論されている地方財政の制度改革についてでありますが、財政制度等審議会において、リーマンショック以降行われている地方交付税の別枠加算の解消などが議論されていると承知しております。
 これが廃止された場合、地方交付税の臨時費目として設定されている地域経済・雇用対策費約80億円を初め、多くの算定費目において需要額が削減される可能性があり、非常に大きなマイナスの影響があるものと認識しております。
 県税など自主財源の乏しい本県にとっては、別枠加算の廃止は、地方交付税の大幅な減額につながりかねず、地域経済の停滞をもたらしかねないことから、県としては、政府予算要望を初め、あらゆる機会を捉えて、地方の一般財源総額の確保について国に求めてまいります。
   〔農林水産部長東大野潤一君登壇〕
〇農林水産部長(東大野潤一君) まず、野生鳥獣被害対策についてでありますが、ニホンジカやツキノワグマの生息域が県内各地に拡大し、飼料作物や水稲、果樹等の食害により、平成23年度の被害額は約2億9、000万円、平成24年度は5億2、000万円と増加する傾向にあります。
 このため、県では、市町村被害防止計画の作成を促進し、国庫補助を活用した侵入防止柵等の整備を進めるとともに、本年度から、新たに国の交付金を活用し有害鳥獣捕獲経費への助成を強化したほか、他県で効果を上げている被害防止対策技術の実証、普及や鳥獣被害対策アドバイザー等を招聘しての指導者養成など、被害の低減に向けて取り組んでおります。
 次に、松くい虫の被害状況とその対策についてでありますが、本県では、ここ数年の猛暑の影響などにより被害が拡大傾向にあり、平成24年度の被害量は前年度比8%増の4万2、000立方メートルとなり、今年度に入っても、住田町、雫石町、滝沢村で新たに被害が確認されるなど、特に被害先端地域での拡大防止が喫緊の課題と認識しております。
 このため、被害先端地域では、防除監視員のパトロール強化等による被害木の早期発見、市町村と連携した早期駆除、感染が疑われる松も含めた被害木の徹底駆除に取り組んでおります。
 このほか、被害が進んだ地域では、重要な松林を中心に、薬剤による予防措置やアカマツ林の樹種転換も図っており、今後とも、本県の重要な森林資源であるアカマツ林の保全と松くい虫被害の拡大防止に取り組んでまいります。
 次に、今後の県産アカマツの需要見込みについてでありますが、県産アカマツ材は、東日本大震災津波の影響により生産量が一時減少したものの、その後、回復しており、平成24年も全国生産量の約3割を占める全国トップの生産量で、特に、優良なアカマツ材は、全国で松くい虫被害が拡大していることもあり、希少性が増し、全国各地から需要がある状況です。
 また、県内では、製材、合板、製紙用チップなどの需要があり、需要量は、年ごとに増減はあるものの、基調としては増加傾向にあり、県内の集成材工場では、アカマツの集成材製品を開発するなど、利用拡大に向けたさまざまな取り組みも進められております。
 このようなことから、今後の県産アカマツ材の需要は堅調に推移するものと考えており、県としても、加工施設設備の整備への支援等を通じて利用拡大を図っていく考えであります。
 次に、足腰の強い岩手型農業の確立に向けた今後の取り組みについてでありますが、本県農業は、地域経済を支える基幹産業の一つとして、持続的な発展を図っていくことが重要と認識しております。
 このため、県では、青年就農給付金の活用による若い農業者の確保、育成や、高い所得を安定的に確保できるリーディング経営体の育成を図るとともに、高温期でも安定的に農産物を供給できる産地づくりや、地域資源を生かした6次産業化などの取り組みを推進しております。
 また、先進的な農業経営者を育成するアグリフロンティアスクール等の新たな取り組みも進め、意欲と能力のある担い手が地域を牽引する農業の実現を目指して取り組んでまいります。
 次に、地域農業マスタープランの作成状況と課題についてでありますが、本年5月末現在、31市町村で作成予定地区数の52%に当たる305地区で策定を終えておりますが、策定が進んでいない地区を見ると、戸数の少ない地区等では、担い手の確保が難しいことや、地区の話し合いを誘導する推進体制が不十分なことなどが課題となっております。
 このため、県では、担い手のいる他地域との連携や集落営農組織の育成を進めているほか、地域事情に通じたJAのOB等を地域連携推進員として配置し、地区で話し合いを促進しております。
 引き続き、関係機関、団体と連携しながら、園芸品目の作付拡大や6次産業化などの取り組みも含め、全地区でマスタープランの作成、実践が進み、地域農業の活性化が図られるよう支援してまいります。
 次に、今後の輸出拡大に向けた課題と取り組みについてでありますが、本県の農畜産物や水産物の輸出拡大に向けましては、国内他産地との競合も考慮しながら、新たに進出しようとする市場に合った品目の絞り込みや販売チャネルの開拓、拡充に取り組んでいくことが課題と認識しております。
 このため、商社等の専門家で構成する輸出コーディネーターの人的ネットワークの活用や現地実需関係者等からの情報収集、海外実需者との商談会、バイヤー招聘などにより、現地の消費動向や販路形成の可能性を分析、見定めながら、現地小売店等でのフェアの開催などを通じて消費者の反応を現地で確認し、その後の取り組みに反映させるなど、輸出環境や現地の状況等を十分に踏まえた実効性のある展開となるよう取り組んでまいります。
〇36番(工藤勝子君) それでは、質問席から再度質問させていただきたいと思っております。
 御答弁ありがとうございました。それでは、時間も70分という時間で限られておりまして、全ての原稿を読むのはかなり無理だなと思って、今、考えておりました。そこで、絞って質問してまいりますので、ぜひよろしくお願いしたいと思います。
 人口流出でございます。
 東日本大震災の津波によって多くの命が失われてしまいました。現在、人口は約1万8、000人減少していると言われているところでもございます。これが、やはり被災市町村の地域経済に与える影響というのは非常に大きいと危惧しているところでありまして、特にも、若い世代の人たちが、仕事の関係、それからいろいろ、住居の関係で出ていると思っておりますが、この人口流出に対する対策について、知事は、どのように認識されて対策をとろうとしているのかお伺いいたします。
〇知事(達増拓也君) 平成23年の大震災後、被災市町村の人口が大きく減少しましたが、翌平成24年は、震災の影響が残っているものの、ほぼ震災前と同程度の減少幅になっているところであります。
 地域社会にとりましては、人口が減少することによって地域活力の低下などが懸念されるところであり、県としては、東日本大震災津波復興計画に基づいて、地域産業の再生や安全で安心なまちづくり、被災者の生活再建などを推進しているところです。
 特に若者の流出対策としては、何よりも雇用の受け皿づくりを進める必要があり、沿岸地域ならではの特性を生かした産業振興や今後成長が期待される再生可能エネルギー関連産業の誘致等の取り組みを初め、商業、各種サービス業など地域密着型の産業再生を加速してまいります。
 現在、県総合計画審議会に、人口とゆたかさの二つの検討部会を設置し、人口減少対策、県民所得の向上や豊かさについて検討いただいているところであり、その議論も踏まえながら、被災市町村からの若い世代の人口流出への対応に取り組んでまいります。
〇36番(工藤勝子君) 次に、二重ローン問題の現状と課題についてお伺いしたいと思っております。
 事業が再開したのは8割程度と伺っているところでもあります。ところが、一部の事業の再開という人たちもこの中に含まれておりまして、今後、事業を本格的に再開するには、いろいろな課題があるのだろうと思っておりまして、今までこの二重ローン問題に県としてどのように取り組んできたのか、現状と課題についてお伺いいたします。
〇商工労働観光部長(橋本良隆君) 二重ローン問題の現状と課題についてでありますが、県内の事業所に対する債権買い取りは、これまでに、岩手産業復興機構で63件、国による東日本大震災事業者再生支援機構で65件、合わせて128件となっております。
 今後、支援を進めていく上での課題といたしましては、仮設店舗、工場で営業している事業者などは、本設のための用地確保のめどが立たず、資金需要が本格化していないことから相談段階にあるケースが多く、これら事業者が本格再開を果たすまでは、資金調達面できめ細かく配慮していくことが必要と考えております。
 そのため、岩手県産業復興相談センターでは、昨年に引き続き、ことし5月から仮設施設を個別訪問しニーズを拾い上げており、資金繰りに不安を抱えている事業者には、返済猶予や新規融資が行われるよう、事業計画の策定支援や金融機関との調整、交渉を進め、資金繰りの円滑化に取り組んでいるところであり、県としても、センターと連携してその促進に努めてまいります。
〇36番(工藤勝子君) 次に、雇用対策についてお伺いいたします。
 平成25年5月の有効求人倍率1.01ということでありまして、18カ月連続で全国の平均を上回っているところでもございます。被災地の事業者からは、人材確保が非常に困難という声が聞こえてまいりました。特にも水産加工業では、幾ら求人をかけても集まってこないという現状もあると聞いております。
 それでは、雇用対策の現状と今後の課題について、どのように考えているのかお伺いいたします。
〇商工労働観光部長(橋本良隆君) 雇用対策の現状と課題についてでありますが、沿岸被災地におきましては有効求人倍率は高い水準で推移しているところでありますが、正規雇用など安定的な雇用に対する求職者のニーズが高いことから、県におきましては、事業復興型雇用創出事業の活用などにより、長期安定的な雇用の創出に取り組んでいるところでございます。
 課題といたしましては、特にも水産加工業などにおける労働力確保が引き続き重要と認識をしており、ことし4月から6月にかけて、釜石、大船渡、宮古、久慈の沿岸4地区で事業者や関係機関との意見交換会を開催し、課題や対応策について協議したところでございます。
 その内容を踏まえ、住宅確保やU・IターンのPRなど、地域外から人材を呼び込むための対策を新たに講じるとともに、企業と求職者とのマッチングを進める工場見学会や面接会の開催、さらには、生産工程改善のためのトヨタ生産方式の導入促進等を継続して行い、沿岸地域の労働力の確保に努めてまいります。
〇36番(工藤勝子君) 次に、制度改革についてお伺いしたいと思っております。
 復興計画において、安全の確保、暮らしの再建、なりわいの再生の三つの原則を上げております。そのほかにおきましても、いろいろな形の中で、災害公営住宅を初め、防潮堤の整備も進んできていると思いますけれども、まだまだ復興はこれから先と私は実感しております。
 事業用地の取得について、所有者の不明、相続未処理のいろいろな事情等により長期化していることが挙げられると思っております。
 そういう中において、住宅再建・復興まちづくりの加速化措置により、土地収用手続の効率化など一定の措置を講じているところでもありまして、具体的な例として、釜石市の片岸海岸のモデルケースもございます。
 一刻も早い生活の再建が求められている中で、そして、住民の安全を守るための防潮堤の整備、道路の整備、そして新しいまちづくり、これを早急に進める必要があると思っております。
 そこで、県は国に対して、制度の運用の改善についてどのような提案を行っているのかお聞きいたします。
〇理事(佐々木和延君) 復興の加速化に向けた制度改善についてでありますが、事業用地の確保について、国が本年4月に取りまとめた住宅再建・復興まちづくりの加速化措置では、土地収用手続の効率化など一定の措置が講じられたところでありますが、基本的に現行制度の運用改善にとどまっておりまして、復興の加速化のためには、大震災特例とも言える手続の抜本的な見直しが必要であると考えております。
 今後、復興事業の本格化に伴い、用地交渉が同時期に集中するとともに、相続未処理案件などの権利調整も相当数見込まれ、用地取得に膨大な労力と時間を要することから、先月26日に、国に対して、用地取得のさらなる加速化や、早期の工事着工に向けた特例措置として、事業認定などの土地収用手続の迅速化や所有者不明土地等の市町村等による管理、処分を要望したところであります。
 今後も引き続き、復興を加速化させるための抜本的な制度改正やさらなる柔軟な運用、改善について、国に対し具体の働きかけを行ってまいりたいと思っております。
〇36番(工藤勝子君) さきに東日本大震災復興特別委員会で、それぞれの被災市町村を4班に分かれて訪問いたしまして、実情を聞いてまいりました。その中において、やはりマンパワーが不足しているというのが、それぞれの首長から述べられました。結局、今後の復興を進めていく上では、財源の確保はもちろんのこと、人材の確保、そして、被災地の実情に応じた予算執行や復興特区等のいろいろな柔軟な運用が必要だと考えております。
 まだまだマンパワーが不足しているという被災市町村の要望に対して、今後、県としてマンパワー不足に対してどのように対応していくのか、さらに、来年度以降、この人材が確保できる見通しなのかお伺いいたします。
〇政策地域部長(中村一郎君) 本年度は10の被災市町村から昨年度の確保数を252人上回る573人の要請がありまして、その9割に当たる519人を確保したところでありますが、必要数は充足できていないという状況にございます。
 県では、これまで、県内の内陸市町村や全国の市町村等への要請などによりまして派遣職員の確保に取り組んできたところでありますが、各自治体とも、行財政改革により厳しい人員体制の中で派遣しており、各自治体から、これまで以上の大幅な派遣拡大は難しいものと考えております。
 今後は、これまでの自治体派遣の取り組みの継続をお願いするとともに、県による任期付職員のさらなる採用、派遣、復興庁による採用、派遣職員の確保、さらには、民間企業に対する派遣の要請などの取り組みを強化してまいります。
 来年度以降につきましては、今後、その必要数を取りまとめることとしておりますが、今年度と同規模あるいはそれを上回る規模となることも想定されますことから、先ほど申し上げました取り組みを強化しながら、引き続き、復興に必要な人材を確保してまいるよう努めてまいりたいと思います。
〇36番(工藤勝子君) マンパワーについてですけれども、今現在、民間から支援いただいている分がありますでしょうか。その点について、1点だけお聞きいたします。
〇政策地域部長(中村一郎君) 現在、市町村のほうに民間企業から派遣いただいている人員は、ちょっと今、手元に正確な数字はございませんが、十数名派遣されている状況でございます。
〇36番(工藤勝子君) やはり今後は、なかなかそれぞれの全国の自治体からの支援というものも難しくなってくるだろうと思いますので、ぜひ民間の活用ということも積極的に進めていただければと思っております。
 今後の復興交付金の見通しと国への要望についてお伺いしたいと思います。
 東日本大震災復興交付金は、平成23年度、第3次補正によって処置され、被災地の復興地域づくりに必要なハード事業の幅広い一括化、地方負担の軽減等を内容として、5省40事業にわたる基幹事業として関連する効果促進事業を対象にしているところであります。これまで当該交付金事業による防災集団移転促進事業等の高台移転や災害公営住宅等の整備が行われ、被災地の復興に一定の貢献をしてきたものと認識しております。
 この復興交付金について、6月25日に復興庁から第6回の交付可能額の通知があったところでありまして、本県では8市町村、事業費として約218億円の交付金事業が認められたと伺っております。
 その一方で、事業主体となる市町村からは、復興のステージが高まってきておりまして、さまざまなニーズが生じてきております。当該交付金事業のメニューが必ずしもニーズと合致しないことや、復興庁による審査が次第に厳しくなっているなどの声も聞こえているところでございます。
 被災地の沿岸市町村においては、復興を加速化していくためには、復興交付金等の復興財源を十分に確保し、柔軟に運用していくことが重要と思われますが、今後の復興交付金の見通しとその活用に対して、国にどのような働きかけをしていくのかお伺いいたします。
〇理事(佐々木和延君) 今後の復興交付金の配分の見通しと国への要望についてでありますが、6月25日に通知を受けました第6回の復興交付金事業計画に対する国からの交付可能額は、県、市町村合わせて257億円余の計画を提出したところでありますが、来年度以降の分も合わせ、交付金としては183億円余、事業費ベースでは218億円余の交付となっております。
 今回配分に至らなかった事業につきましても、例えば災害施設の遺構など、なお一層の住民との合意形成など、事業の熟度に対する復興庁の審査が厳しかったものですから、その辺を高め、復興に必要な事業費の確保に努めてまいりたいと思ってございます。
 また、各被災地における復興の進捗に伴い必要となる新たな事業についても、復興が完了するまでの間に確実に配分されるよう求めるとともに、現在の復興交付金事業は、地域の復興に不可欠な産業振興、観光振興など、なりわいを直接支援する基幹事業がないなど、被災地のニーズに対応し切れていないことから、制度の拡充と、なお一層の柔軟な運用を強く求めてまいります。
〇36番(工藤勝子君) やはりこの復興交付金がなければ、岩手県の三陸沿岸の復興というものはなし得ないのだろうと、私はそのように思っております。いろいろと復興庁の審査も厳しくなってきているという点があるのだろうと思いますけれども、では、どういうところが今回チェックされたのか、わかる範囲内でお聞かせいただければと思います。
〇理事(佐々木和延君) ただいま申し上げましたとおり、田老町の─特定の町村名を出してはあれですけれども、災害施設の遺構等について、宮古市等について、住民が本当に被災遺構としてみんな必要としているのか、そういう熟度はどうなのか、あるいは、財産としての管理の扱いは今後どうなるのか、維持費についての維持の見通しはあるのかというあたりが、かなり厳しい審査で、市町村の財産の取り扱い、あるいは住民の要望の熟度、その辺のところが今回争点になった主な点でございます。
〇36番(工藤勝子君) ありがとうございました。
 次に、児童生徒に対する心のサポートや体力づくり等の課題についてお伺いいたします。
 被災地の児童生徒の教育環境の現状についてお伺いします。
 恐ろしい津波を体験し、親や兄弟等を失った児童生徒に対する心のサポートについては、長期にわたり支援していく必要があると思います。スクールカウンセラーのさらなる充実とともに、スポーツ活動を通して心身を鍛えながら、力強く目標を持って前に進んでほしいと願う中で、勉学の環境整備とともに運動ができる環境整備が求められておりますが、知事は、被災地における児童生徒の現状をどのように捉えているのかお伺いいたします。
〇知事(達増拓也君) 被災地の児童生徒は、困難な状況に置かれながらも、さまざまな分野において元気に活躍する姿を見せてくれており、岩手の将来を担う人材として力強く成長していると感じております。
 一方、沿岸被災地では、仮設校舎を使用している学校や校庭の使用が制限されている学校があるほか、仮設住宅から通学している児童生徒も多くいるなど、今なお厳しい状況が続いているものと認識しております。
 このように、被災地の子供たちを取り巻く教育環境は、依然として多くの課題を抱えていますことから、国内外からの御支援をいただけるよう、引き続き、子供たちの状況を広くお伝えするとともに、被災地全体の復興に努めてまいりたいと考えております。
〇36番(工藤勝子君) 児童生徒の心のサポート対策でございます。
 学校に行っていれば、子供たちは、同じ仲間がいっぱいいるわけですので、知事がおっしゃいましたように、元気に、活動的に行動しているというお話もございますけれども、これが一旦、仮設住宅なり自宅に戻ったときのこのギャップというのが非常に大きいという話を聞いております。家庭に戻ったときの子供の心の傷というのはまたよみがえってくるような形で、非常に厳しいと言われています。
 今後、被災した児童生徒の心の健全を確保するためにどのような対策を講じようとしているのかお伺いいたします。
〇教育長(菅野洋樹君) 児童生徒の心のサポートについてでありますが、東日本大震災津波の発災以来、教員研修、人的支援等、心と体の健康観察の実施を三つの柱として心のサポートに取り組んでまいりました。
 まず、教員研修では、子供たちに一番身近で接する教員の対応力を向上させるため、専門的知見を有する臨床心理士等の協力を得ながら研修プログラムを作成し、各学校や市町村教育委員会のニーズに応じた研修を実施しております。
 次に、人的支援の実施につきましては、通常のスクールカウンセラーの配置に加え、全国の臨床心理士等の支援をいただきながら、沿岸部の教育事務所に11名の巡回型カウンセラーを配置し、重層的な支援体制を整備しているところでありますし、加えて、岩手大学、岩手県立大学、盛岡大学に県内の高等学校や幼稚園等でカウンセリングを実施していただいております。
 さらに、毎年9月、心とからだの健康観察のアンケート調査を実施し、児童生徒の状況を把握するとともに、子供たちみずからがセルフケアの力が身につけられるよう指導、援助を行っているところでございます。
 児童生徒の心のサポートにつきましては、阪神・淡路大震災の経験を踏まえ、長期間にわたるサポートが必要不可欠でございますので、中長期的な視野に立った息の長い支援の実施に努めてまいりたいと考えております。
〇36番(工藤勝子君) ぜひ、今後ともスクールカウンセラーの増や相談窓口を拡充しながら、子供たちの心のサポートを続けてほしいと思っております。
 さらに、児童生徒の体力づくり等の課題についてお伺いしたいと思います。
 被災した沿岸地域の学校においては、グラウンドに仮設住宅や仮設校舎が建設されたことなどにより、今なおグラウンドの使用に制約を受けている学校が、小、中、高合わせて39校あると伺っております。仮設グラウンドの整備等については、条件が整い次第、整備していくものと理解はしておりますが、用地確保の問題、さまざまな課題により速やかな整備促進には至らず、時間がかかるものと思われております。このように、体育館やグラウンドなどの子供たちの運動環境に制約がある中で、児童生徒の体力づくりやクラブ活動、スポーツ振興における課題についてお伺いいたします。
〇教育長(菅野洋樹君) 被災地における児童生徒の体力づくりやクラブ活動、スポーツ振興につきましては、運動環境に制約を受けている学校等があることから、その運動環境の整備と、運動面での適切な指導を行う指導者の養成、確保が課題でございます。
 運動環境の整備につきましては、条件が整い次第、その整備に努めているところではありますが、整備が進むまでの間は、廊下や教室など限られた状況でもできる運動プログラムを提示し、その普及に努めているほか、自校のグラウンドなどでは運動部活動が十分に行えない中学校、高等学校に対しまして、体育施設などへ移動して部活動を行う際のバス等の借り上げ経費を支援しているところでございます。
 適切な指導を行う指導者の養成、確保につきましては、各種の実技講習会等を開催し、学校体育の指導者の指導力向上を図るほか、地域のスポーツ指導者を活用し、小学校への体育実技アシスタントの派遣や、中学校、高等学校の運動部活動への指導者の派遣などを行っているところでございます。
〇36番(工藤勝子君) どうぞ、子供たち、児童生徒のために一層の運動、スポーツができる環境を整えていただきたいと、そのように思っております。
 次に、県営建設工事における入札不調についてお伺いします。先ほども質問させていただきました。課題として、資材や作業員の不足の現状が述べられました。
 県内の主要資材の需給見通しを見ますと、平成25年3月末に、国、県、市町村の公共工事で使用する生コンクリートについて集計したデータでは、平成25年度に釜石地区で2万7、000立方メートル、平成26年度に宮古地区で23万7、000立方メートルが不足する見込みでございます。捨て石についても、平成25年度に釜石地区で約45万立方メートル、大船渡地区では41万立方メートルが不足するなど、沿岸各地域において相当量が不足する見込みであると聞いております。
 また、現場で従事する作業員につきましても、これから本格化する復旧復興工事に伴い、人手不足が相当生じることが予想されております。このような資材や作業員の不足に対し、県はどのように認識し、対策を立てられているのかお伺いいたします。
〇県土整備部長(佐藤悟君) 建設資材につきましては、特に海中工事で使用する捨て石などが相当量不足しておりますほか、今後、宮古、釜石、大船渡地域では生コンクリートの不足が見込まれているところであります。捨て石などにつきましては、地元からの調達を最優先に行いながら、不足分を県外から調達するほか、生コンクリートは、これまで既存工場での増産体制の整備や宮古市赤前地区への復興生コンクリート工場の誘致、コンクリートプラント船の活用などの対策を講じてきたところであります。今後、宮古、釜石地域での国によるコンクリートプラントの建設や、コンクリート二次製品の活用などの対策を講じることとしております。
 また、作業員については、具体的な不足数を把握することは困難ですが、建設業協会との意見交換におきましては、特に型枠工や鉄筋工が不足していると伺っているところであります。作業員の不足に対しましては、広域的な人員確保がしやすくなる復興JV制度の活用や、被災地以外からの労働者確保に要する宿泊費等を工事費に計上するなどの対策を講じているところであります。
〇36番(工藤勝子君) 次に、設計や積算の見直しについてお伺いしたいと思います。
 建設資材の価格につきましても、例えば宮古地区の生コンクリートの単価は、被災前の1万2、000円から現在では2万200円と約7割も上昇するなど、沿岸地域で著しく価格が上昇しております。労務単価につきましても、人手不足により、遠隔地から時間と費用をかけて作業員を確保するなどの対策を講じている業者もあると仄聞しております。このように資材価格や労務単価が高騰している現状下の中で、設計や積算について、県では見直しをしたと伺ってはおりますが、実際にそれが現実に積算、設計に反映されているのかどうかお伺いしたいと思います。
〇県土整備部長(佐藤悟君) 復旧復興工事の本格化に伴い、特に沿岸部の生コンクリートなどの資材価格が著しく上昇しているところであり、毎月実勢価格の動向を把握し、随時、建設資材の設計単価の改定を行っております。また、設計労務単価についても、昨年度と比較して全ての職種において大幅に上昇しているところであり、国からの改定通知を受けまして、本年4月には労務単価を速やかに改定しているところであります。
 県では、急激な価格上昇に伴う単価改定、いわゆるインフレ条項の適用や工事請負契約締結後の最新単価への変更、被災地以外からの労働者確保に要する宿泊費等の工事費への計上、遠隔地からの建設資材の調達に応じた積算など対応してきたところであり、今後とも国や関係機関と連携し、工事価格等の適正な算定に努めてまいります。
〇36番(工藤勝子君) それでは、業界からの要望と対応についてお伺いしたいと思います。
 入札不調について、今年度は、まだ工事の発注が本格化していないことから、5月までの入札取りやめ件数は7件、8%と発生率は低い状況ではございますが、今後、大規模な復旧、復興工事の発注が本格化した場合、入札不調を発生させないために、建設業者が安心して応札できるよう、工事の施工を確保することが非常に大事だと考えられます。
 県では、建設業界との意見交換を行っているとのことでございますが、入札不調についてどのような要望があり、どう検討されているのかお伺いいたします。
〇県土整備部長(佐藤悟君) 建設業界と意見交換をしております。その場では、技術者や労働者確保への不安、資材確保への不安などについて意見がありました。そのほかに、工事の早期発注や平準化、なるべくならして発注してほしいというようなこと、さらには指名競争入札や随意契約の活用等について御要望をいただいたところであります。
 県ではこれまで、人手不足に対しましては、入札参加資格に係る施工実績や技術者の施工経験の緩和、技術者の専任配置や雇用要件の緩和、復興JVの活用、労働者の宿泊費や移動に係る費用の工事費への計上、また、資材不足に対しては、遠隔地からの資材調達に係る輸送費の計上、また、迅速な発注に対しては、緊急を要する工事を随意契約により発注するなどの入札不調対策を講じてきたところであります。
 今後におきましても、施工確保対策連絡調整会議や業界、団体の皆様方との意見交換などを通じて課題等を把握しながら、入札担当部局と情報共有を図り、必要な対策に取り組んでまいります。
〇36番(工藤勝子君) いろいろ入札不調についてお伺いいたしましたけれども、今後、復旧、復興を進める上で、やはり建設業界の人たちが元気と申しましょうか、そういうことを出して自分たちが復興していく、担い手になるんだという心意気を持って取り組んでいかなければ、なかなか進まないんじゃないかと思っております。そして、やはり多くの業者が入札に応札して、その中で競争性を高めながら、よりよい技術力の高い工事が完成していく、そういうものを目指していただければと思いますので、お願いしたいと思います。
 次に、国際リニアコライダー誘致に係る今後の取り組みについて再度質問させていただきたいと思っております。
 その中で、国際都市構想の取り組み状況でございます。東北ILC推進協議会が策定したILCを核とした東北の将来ビジョンによると、ILCの運用開始段階では、国内外からILC関連の職員、研究者とその家族が約1万人に上ると推計されております。本県に誘致された場合、世界の物理学者等が岩手に移り住むことになりますが、どういうまちづくりをしていくのか、国際都市構想、グランドデザインの取り組み状況についてお伺いいたします。
〇知事(達増拓也君) 東北ILC推進協議会におきましては、昨年7月、ILCを核とした東北の将来ビジョンを策定し、ことし4月には国際科学技術研究都市形成についての官民連携可能性調査報告を取りまとめました。
 その中では、まちづくりのコンセプトとして、1、静ひつ冷涼な国際研究都市、2、自治体、市民の地域づくりと連携した都市づくり、3、東日本大震災からの復興を意識した都市づくり、4、国際協力、産学官協力による事業の推進が掲げられています。
 また、この調査報告では、既存市街地の活用によるネットワーク型まちづくりや民間活力導入について調査研究されていますことから、今後は、関係市町村、民間団体等とも議論を重ねながら、国内候補地の一本化後に策定するまちづくりのロードマップの中で具体的な検討を深めていきたいと思います。
〇36番(工藤勝子君) それでは、この都市構想については、今後の課題と申しましょうか、これからつくり上げということと捉えてよろしいでしょうか。
〇知事(達増拓也君) 先ほど申し上げましたまちづくりのコンセプト、静ひつ冷涼な国際研究都市、自治体、市民の地域づくりと連携した都市づくり、東日本大震災からの復興を意識した都市づくり、そして国際協力、産学官協力による事業の推進、これらはそれぞれかなり中身豊かなコンセプトでございまして、そういう意味ではかなり進んでいると言っていいと思います。
 一方、市町村や民間団体等との幅広い主体との連携ということが重要な要素でございますので、そういったところとの検討を深めていきたいというところでございます。
〇36番(工藤勝子君) 今回この質問を入れましたのは、まだ本格的にILC誘致の活動が活発化にならないときに、議会のほうで勉強会をしたときに、誘致と同時に、物理学者、科学者、そしてその家族、子供たち、こういう人たちが約1万人も来る中で、岩手県としてどういう都市づくり、グランドデザインを誘致と一緒にしますかということが大事だという話をうかがいました。
 それで、今回問うという形の中で、誘致を進めながら、この岩手でこのような設計ができている、グランドデザインができているということを一緒に示していかなければならないという話を聞いたので取り上げたところでもございます。ぜひ、今後とも、誘致を進めるに当たりまして、このような国際都市構想づくりというものをしっかり提案していくことが大事だろうと思っておりますし、知事におかれましても、このことも誘致にあわせて一緒に進めていただければと思っておりますし、最終の詰めに入っている段階だと思っております。新聞で、8月まで候補地の確定が延びたという話もあります。また、岩手県に決まるというようなこともあるかもしれませんけれども、その中において、国ではまだ日本に誘致するとはっきり表明しているわけでもありませんので、今後、知事はどのような行動を示していくのか、もう一度お伺いいたします。
〇知事(達増拓也君) 先週水曜日も下村博文文部科学大臣にお目にかかりまして、この後の研究者の皆さんの立地の決定を踏まえて、日本政府としてのILCの建設決定を早急に決めていただきたいということを申し上げました。それに対しまして下村大臣からは、今、並行して日本学術会議のほうにもILCの方針について検討してもらっているということで、その両者を踏まえて、秋の臨時国会には政府としての正式な意向表明するようにもっていきたいということでしたので、今後も、こうした政府への働きかけということを行いながら、また、岩手県としての立地環境の実態の情報共有、そして県民の熱意の発信ということをしていきたいと思います。
〇36番(工藤勝子君) それでは、庁内関係部局との一体的な取り組みについてお伺いしたいと思っております。
 ILCの誘致に当たっては、情報発信の充実やまちづくりの検討など多方面から取り組みが必要と思われます。現在、政策地域部内にILC推進監など3名の職員体制で誘致に向けた活動業務を行っておりますが、政策地域部だけでなく、広報担当部署など庁内関係部局との一体的な取り組みや連携が必要だと思いますが、どのように認識されているのかお伺いいたします。
〇政策地域部長(中村一郎君) ILCの誘致のための検討事項は多岐の分野にわたりますことから、県では、平成22年度から、関係部局担当者をメンバーといたします連絡調整のための会議を開催いたしまして、課題の共有と解決に向けた検討を行ってまいったところでございます。国内候補地の一本化後につきましては、全庁的なワーキンググループの設置などによりまして、庁内の関係部局が一体となってILC建設の実現に向けて取り組んでまいりたいと考えております。
 さらに、政府が日本誘致に踏み出すためには、本県の北上山地が最適な候補地であることに加え、震災からの復興や日本再生にILCが大きな役割を果たすということを政府や国民の皆さんに幅広く理解していただくことも重要でありますことから、広報担当部局とも連携いたしまして、多様な媒体を活用した情報発信にも努めてまいりたいと考えております。
〇36番(工藤勝子君) 政策地域部だけでの課題ではないのだろうと思っております。結局、このような国際的大プロジェクトであります。全庁挙げて全部の部局で取り組む課題というのはあるんじゃないかと私は思っておりまして、今後、そういう部分も議会等に示していただければと思っております。
 そこで、広報担当部署だけではなくて全庁を含めて情報を共有しているのか、その点についてもお伺いいたします。
〇政策地域部長(中村一郎君) 先ほどもお話しいたしましたとおり、関係部局のメンバーの連絡調整会議も必要な都度開催させていただいておりますので、全庁的に課題は共有しながら、一体で進めてございます。
〇36番(工藤勝子君) 現在、職員は3名で当たっているわけですけれども、私は前の議会のときも提案したんですけれども、本当に3名で十分なんですか、県庁の意気込みを感じられますかと。私は、3名で対応するのは、そういう意気込みにも非常に欠けるんじゃないか、もっと大きな部署として取り扱うべきではないかという提案をいたしましたが、職員体制についてどう考えているか、今後の課題についてお伺いいたします。
〇政策地域部長(中村一郎君) 国内候補地が決定された後につきましては、環境影響評価でありますとかまちづくり、外国人研究者の受け入れ態勢等、多岐にわたる分野を具体的に検討していかなければならないと考えてございます。これらにつきまして政府の動向等も十分踏まえながら、しっかりと対応のできる組織体制についても検討してまいりたいと考えております。
〇36番(工藤勝子君) ぜひ、全庁挙げて取り組んでいただいて、職員もこの部署にふやしていただきたいという要望をしたいと思っております。
 次に、野生鳥獣捕獲の担い手対策についてお伺いいたします。
 先ほども質問いたしましたが、野生鳥獣捕獲の担い手対策について、農林業被害をもたらす非常に有害な野生鳥獣捕獲の主要な担い手である狩猟者については、その役割がますます重要になってきているにもかかわらず、本県の狩猟免許所持者数は、昭和45年が2万1、000人、平成2年が5、400人、平成23年が2、800人と年々減少している状況であります。しかも、60歳以上の割合が、昭和45年が6%だったのに対して平成23年では67%と、これは全国的な傾向でもございますが、高齢化が急速に進んでいる状況にあります。こういう中において、若年層の狩猟人口の拡大、野生鳥獣捕獲の担い手対策にどのように取り組まれるのかお伺いいたします。
〇環境生活部長(風早正毅君) 県民に対する普及啓発の取り組みとして、野生鳥獣被害対策に取り組む地域を対象とした各種研修会や広報などによる狩猟免許制度の周知に加え、昨年11月には国との共催により狩猟フォーラムを開催し、若年層を中心に狩猟の魅力を多面的にPRするなど、制度の普及、周知に努めているところであります。
 また、狩猟免許を取得しやすい環境整備に向けた取り組みとして、現役世代の農業者の狩猟免許取得促進を念頭に、本年度、狩猟免許試験を農閑期の2月に追加実施するとともに、試験実施に合わせて予備講習会を開催するなど、合格率の向上にも取り組みながら受験機会を拡大することとしております。これらの取り組みに加え、捕獲の担い手確保のための施策などを充実するとともに、集中的な財政支援を行うよう国に対して要望しているところであります。現在、国においては、担い手の確保を含む鳥獣保護法の抜本的な改正に向けた検討作業を開始しており、その動向も踏まえながら、引き続き担い手確保対策に取り組んでまいりたいと考えております。
〇36番(工藤勝子君) ぜひ若い人たちがこの狩猟に取り組まなければ、ますます農業被害というのは拡大してくるのだろうと思っておりますので、非常にこれが、特にニホンジカは全県下に広まるのが目に見えている状況でありますので、どこかで食いとめなければならないと思っております。私は遠野でとめたいという話を議会でしました。しかし、もう遠野ではとまりません。二戸のほうなり青森のほうでも目撃情報が出ている状況であります。こういう対策をしっかり進めていただきたいと思っております。
 次に、食害対策についてお伺いいたします。
 平成24年度に林野庁東北森林管理局が実施した調査報告書によりますと、早池峰山周辺地域においてニホンジカの生息と食痕が確認され、今後、早池峰山周辺の希少高山植物にニホンジカによる食害に及ぶことが懸念されていると指摘されております。この希少植物は、将来の世代に残さなければならない岩手の貴重な宝であります。希少高山植物を野生生物から守るため、今後の食害対策についてどのように取り組まれるのかお伺いいたします。
〇環境生活部長(風早正毅君) シカの生息数の増加に対しまして、希少な高山植物の保全を図るため、個体数低減に向けた早急な対応が必要であると認識しております。今年度は早池峰山周辺地域においても県による捕獲の実施を予定しておりまして、市町村が実施する有害鳥獣捕獲の取り組みとも連携し、効果的な捕獲に取り組むこととしております。あわせて、狩猟期間の延長など個体数低減に向けた規制緩和や、シカの逃げ場ともなっている鳥獣保護区の見直しによる可猟区域の拡大についても進めてまいりたいと考えております。
 現在、策定に向けた検討を進めている第4次シカ保護管理計画においても、農林業被害対策に加え、早池峰山周辺地域の現状を踏まえたシカの食害対策を盛り込むこととしており、東北森林管理局や市町村など関連機関と連携しながら取り組んでまいりたいと考えております。
〇36番(工藤勝子君) 農林業被害であれば、また次の年、種をまけば栽培もできます。牧柵を張れば予防することもできます。しかし、全域が国定公園になっている早池峰山にまさか牧柵を回すわけにもいかないでしょうし、結局、南アルプスなどはクロユリが全滅したとも話を聞いております。ハヤチネウスユキソウは古代からのものでありますので、今後とも行動計画を立てながら、しっかり県で策定して守っていただかなければならないと思いますので、ぜひお願い申し上げたいと思います。
 次に、知事の政治姿勢についてお伺いしたいと思っております。
 知事は、このたび、欅の会の会長に就任されました。簡潔にお聞きいたします。理由は何でしょうか。就任にどのような意義があると感じているのかお伺いいたします。
〇知事(達増拓也君) 去る6月30日に欅の会の役員総会が開かれ、達増拓也を会長にということが決定されました。私は、既に欅の会の会員でありましたので、会の決定を尊重し、その決定に従って会長に就任したものであります。
 欅の会の目的は、小沢一郎氏の政治活動に賛同し、さらなる飛躍を期待する会員個人相互の親交と研さんを通じ、自由で創造性あふれる自立国家の確立に寄与することとされており、自由で創造性あふれる自立国家の確立に寄与というところに意義があると思います。
〇36番(工藤勝子君) 簡潔に聞きます。会員としてどのような活動をされてきましたか。
〇知事(達増拓也君) 小沢一郎氏の政治活動に賛同し、さらなる飛躍を期待する会員個人相互の親交と研さんを通じ、自由で創造性あふれる自立国家の確立に寄与するという活動をしてまいりました。
〇36番(工藤勝子君) ありがとうございました。以上をもちまして私の一般質問を終わりたいと思います。それぞれの関係部局、知事を初め御答弁をいただきまして大変ありがとうございました。今後とも岩手県発展のために皆さん方のお力を結集して、私たち県議会と一体となって頑張らなければ復興が進まないと思っておりますので、今後ともよろしくお願いいたします。ありがとうございました。(拍手)

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