平成25年6月定例会 第10回岩手県議会定例会会議録

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〇33番(大宮惇幸君) 民主党の大宮惇幸でございます。
 先輩、同僚議員の御配慮により、一般質問の機会をいただきましたことに感謝をいたします。
 質問に先立ちまして、このたび、任期半ばで急逝されました故小泉光男議員に対し、謹んで哀悼の誠をささげ、御冥福をお祈り申し上げます。
 東日本大震災津波から間もなく2年4カ月がたとうとしておりますが、亡くなられた皆様の御冥福をお祈りするとともに、今なお応急仮設住宅などにおきまして厳しい生活を強いられている被災者の皆様に、心からお見舞いを申し上げます。
 震災津波発生からこれまでの間、復旧、復興に向かういろいろな場面で、岩手県人の力強さと温かい人柄に触れ、また、岩手に息づく結いの精神のようなものを感じてまいりました。被災された方々、それを支援する方々、それから、県、市町村の職員の方々の復興に向けた熱い思いと昼夜を問わない取り組みが、復興をここまで推し進めてきた原動力であると思っております。
 しかしながら、岩手の復興はまだまだこれからであり、被災された方々が以前のような暮らしを取り戻すとともに、県民みんなが明るく元気に暮らせる岩手県をつくり上げるには、残念ながら、まだまだ時間を要すると言わざるを得ません。
 そこで、最初に、復興への取り組みについて、知事にお伺いします。
 知事は、本年を復興加速年と位置づけ、基盤復興の取り組みを加速させるため1兆円を超える県予算を編成し、被災地の復旧、復興、被災者の生活の再建等に向けて、国や市町村と緊密に連携しながら取り組んでいるものと思います。
 今年度は第1期復興実施計画の最終年度に当たり、安全の確保、暮らしの再建、なりわいの再生の三つの原則に基づく基盤づくりの総仕上げの年であり、被災地においては、災害廃棄物の処理が48%まで進み、県と市町村が整備する災害公営住宅5、972戸のうち44%の事業に着手するなど、復興に向けて着実な進展も見られるところであります。
 その一方で、被災した沿岸市町村においては、復興に係る事業を推し進めていく中で、ハード事業を担う技術職員や埋蔵文化財調査を行う職員など、専門的知識を有する人材の不足や事業用地の確保が進展しないことなど、さまざまな課題に直面しているものと認識しております。
 県が策定した復興基本計画においては、平成23年度から平成30年度までの8年間を全体計画期間とし、さらに、具体的に実施する事業等を示した復興実施計画を3期に区分して復興の取り組みを進めておりますが、こうしたさまざまな課題がある中で、県民全体にとって安全で安心な防災都市、地域づくりによる復興を実現していく期間として十分なのか懸念されるところであります。
 そこで、知事は、復興の加速化に向けてどのような点を課題として認識し、どう取り組んでいこうとされるのかお伺いします。
 また、今年の2月から3月にかけて県内全域の住民を対象に行った復興に関する意識調査では、復興が遅れていると感じる、やや遅れていると感じると答えた人の割合が72.2%で、1年前の前回調査に比べ12.6ポイント上昇したことの結果が出ているところであり、過酷な条件で暮らしている被災地の方々からは、内陸地域との温度差を懸念する声や、震災の記憶の風化に対する不安の声も徐々に聞かれ始めているところであります。
 知事は、これまで、被災者に寄り添い、一人一人が希望を持って歩んでいくことのできる復興を推進すると表明しております。復興を加速化していくためには、こうした被災者の声に応え、何より岩手県が一体となって取り組んでいくことが重要と考えますが、今後の復興の取り組みについて、知事の決意をお聞かせ願います。
 次に、沿岸12市町村の人口減少問題についてお伺いします。
 本年4月、本県の人口が130万人を割り込んだとの発表がありました。平成16年4月に140万人を割った後、130万人台で推移してきましたが、ついに昭和23年以来65年ぶりに120万人台となったものであり、中でも、震災前の平成20年4月から本年4月までの5年間では、約135万5、000人から約129万6、000人まで減少し、減少数は約5万9、000人、減少率は4.4%でありました。
 東日本大震災津波によって甚大な被害を受けた沿岸12市町村では、人口の減少が特に深刻で、沿岸の人口は同じ5年間で約28万2、000人から約25万4、000人となり、減少数は約2万9、000人、減少率は10.1%と2桁の減少率になっています。沿岸部の人口は県全体のおよそ2割に当たりますが、この5年間の減少数は県全体の減少数の5割近くを占め、減少率は県全体の倍以上になったということであります。
 市町村で見ましても、この5年間で、陸前高田市は約4、200人減少し、減少率は17.8%、大槌町は約3、800人減少し、減少率は23.9%と大きく減少しており、今さらながら、東日本大震災津波が及ぼした被害とその影響の大きさに愕然とする思いであります。
 人口減少の多い要因には、出生数と死亡者数の差である自然減のほかに、転出者数と転入者数の差である社会減がありますが、沿岸部の場合は、大震災津波の直接の被害による自然減が膨大な数になっただけでなく、震災の後、内陸や県外に居を移した方々も多く、平成22年10月から平成23年9月までの社会減は約5、700人で、前年の約1、400人に比べますと約4倍の数になっており、多くの方々がふるさとを離れた、離れざるを得なかったのであろうと思われます。
 平成24年の社会減は約1、700人で、前年に比べ縮小はしましたが、依然として若者を中心に地元を離れる人が絶えない状況であり、また、若者の減少は将来の出生数の減少にもつながるため、今後、さらに人口が減少していくことが懸念されるところであります。
 そこでお伺いします。県は、沿岸12市町村の人口が今後どのように推移すると考えているのでしょうか。また、この減少に歯どめをかけるため、どのように取り組む考えなのでしょうか、知事にお伺いします。
 次に、人・農地プラン、いわゆる地域農業マスタープランについてお伺いします。
 日本のTPP交渉への参加については、これまでさまざまな議論がなされているところであり、県は、本県へのマイナス影響額として、県内農林水産物の生産額3、064億円のうち1、015億円が減少するとの試算結果を発表していますが、生産額の約3分の1が失われるという試算結果を見ますと、改めて、本県農業は危機的状況に陥るのではないかと大きな懸念を抱いているところであります。
 一方で、日本の農業の現状は、農産物の価格低迷に加えて、従事者の減少や高齢化がさらに進行し、産出額の減少傾向が続いておりますが、本県が、今後も我が国の食料供給基地として発展していくためには、TPP交渉への参加の有無にかかわらず、地域の農業を支える担い手の確保、育成が欠かせないものと考えております。
 国では、平成23年度に農業所得の減少や高齢化の進展などによる人と農地の問題を解決するための基本的プランである地域農業マスタープランの策定を推進することとし、また、今般、安倍政権がアベノミクス三本の矢の最後として打ち出した成長戦略の第2弾では、農業を重要分野の一つに据えて、農業構造の改善と生産コストの削減を進め、今後10年間で農業、農村全体の所得を倍増させるとしており、その実現に向けた具体的な方策が、今後、順次明らかにされるものと思われます。
 このような国の施策が打ち出される中で、本県農業を発展させていくためにも、地域の中核となる担い手を育成するとともに、担い手への農地の集積を進め、耕作放棄地の解消と発生防止により地域農業の競争力を強化することが必要とされているところですが、その中心となる地域農業マスタープランの取り組み状況についてお伺いします。
 さきの国の方針を受け、県では、地域農業マスタープランの作成を県下全域で進めており、私が住む雫石町でも、昨年から60を超える集落、地域において、プランづくりに向けた話し合いが進められております。
 このプランづくりは、今後の地域の担い手の育成、確保はもとより、地域農業の将来の行方を左右する重要な取り組みと認識しておりますが、現時点において、県内でのプランの作成状況はどうなっているのかお示し願います。
 プランでは、農地利用集積の取り組みを進めることが大きな柱となっていますが、県内における農地集積の現在の状況と目標はどうなっているのか、また、作成したプランに盛り込まれた農地利用集積への取り組みについて、県はどのように支援していくこととしているのか、あわせてお聞かせ願います。
 安倍政権が打ち出した成長戦略では耕作放棄地の解消を加速化するとしていますが、本県の耕作放棄地の実態をどのように把握されているのか、また、その解消に向けてどのような取り組みをされているのかお示し願います。
 また、本県は、他の都道府県と比較して基盤整備がおくれている上に、用排水施設等も老朽化しているものが多く、これらをしっかりと整備しないと、受け手がなく、集積も進まないと考えますが、県では、マスタープランの実現に向けて基盤整備をどのように進めていくのかお聞かせ願います。
 プランの中に地域資源を生かした6次産業化の取り組みなどを盛り込み、これを推進していくことは、本県農業の振興を図る上で重要なことと考えますが、これまで作成されたプランにおいて、どのような取り組みが盛り込まれているのか、また、その実現に向けどのような支援を行っていくのか、あわせてお聞かせ願います。
   〔副議長退席、議長着席〕
 次に、岩手競馬についてお伺いします。
 岩手県競馬組合は、平成18年11月に新しい岩手県競馬組合改革計画を策定し、平成19年3月に構成団体から、それぞれ、県が181億2、500万円、奥州市が82億3、800万円、盛岡市が65億9、100万円、合わせておよそ330億円の融資を受けて以来、平成19年度から、赤字は出さないこと、すなわち単年度ごとの黒字または収支均衡を存続の条件に、これまでの競馬事業を運営してきているところであります。
 このような中で発生した東日本大震災津波では、岩手競馬の施設も甚大な被害を受け、一時はその存続が危ぶまれましたが、国、地方競馬全国協会、JRA、全国の地方競馬主催者ほか、多くの競馬関係者や競馬ファンの方々のさまざまな支援のもと、競馬関係者が一丸となって取り組んだ結果、岩手競馬の早期の再開を実現しました。
 現在の岩手競馬の経営状況は、平成24年度において8、700万円の当期利益が見込まれているほか、本年度に入っても、インターネット販売が好調であり、全体でも計画を上回って推移しているなど、発売状況が好転し、経営安定化の兆しが見えてきているように思われます。
 しかしながら、一方では、収益率の高い自場発売で減少傾向が続いているほか、震災の影響により現在は支払いが猶予されている地方競馬全国協会の1号交付金についても、2年後の平成27年度からは、5年間分の猶予額を含めて支払いの義務が生じるなど、岩手競馬の経営環境は、依然として厳しい状況が継続するものと認識しております。
 このような状況を踏まえると、構成団体からの融資額およそ330億円を返済することはまだ当面は困難であると思われますが、それでも、やはり県が融資した多額の資金には県民の税金が投入されており、存廃議論を経て、収支均衡を条件に競馬事業を継続してから6年が経過した今、そろそろ償還計画を示す時期に来ているのではないかと考えます。このことについて、知事の御所見をお伺いします。
 次に、一般県道雫石東八幡平線の利活用についてお伺いします。
 一般県道212号雫石東八幡平線、通称奥産道は、昭和40年に事業に着手し、途中10年以上の凍結期間を経て昭和59年に工事再開となりましたが、自然破壊の問題などがあり、県は、平成10年11月、全長16.2キロメートルのうち、未着工区間3.1キロメートルを残して工事の再開を断念したという経緯があります。
 なお、それまでに投入された資金は、事業費ベースでおよそ46億円と非常に多額なものでありました。
 その後、工事断念区間3.1キロメートルを含む網張─松川間の活用計画が検討されたところであり、平成14年には、一般車両の乗り入れを、網張側については大松倉橋付近まで、また、松川側については松川大橋付近までとした上で、その間については車両が通行できない歩道で結ぶという第一期活用計画が作成され、現在に至っております。
 奥産道の当該区間は、十和田八幡平国立公園の核心地域に位置し、高い自然性と貴重な環境を有していることから、自然環境と共生する必要があることは異論のないところですが、また、一方では、その豊かな自然環境のよさをもっとアピールし、最近多くなってきている若い女性登山愛好者やシニアのトレッキング愛好者など、幅広い方々に八幡平の魅力を感じていただくことや、子供たちの環境学習を通じて岩手の自然ファンになっていただくことなどで、この道路の利活用の裾野を広げることも重要と考えます。
 八幡平と同じ日本が誇る山岳景勝地である上高地には年間120万人もの観光客が訪れるそうですが、平成8年からマイカーの通年全面規制を行ってきたところであり、さらに、平成16年からは、それまでの規制の対象外としてきたバスについても規制を開始し、土、日を中心に年間30日以上の観光バス規制を行っているほか、バス会社も協力して、上高地を通行するバスは、電気式ハイブリッドバスなど低公害車を基本とするなど、関係者が一体となって、恵まれた自然環境を守りながら多くの観光客を受け入れています。
 残念ながら、奥産道は3.1キロメートル区間が車道としては未整備のまま登山道で代替されているため、車両の通り抜けはできませんが、平成21年7月に、一般県道雫石東八幡平線活用検討委員会から、環境学習の場や自然との触れ合いの場として活用しやすいよう、現車両通行制限区域から連絡歩道入り口間に利便性向上施策が望まれるとの提言がなされていると聞いておりますので、例えば、電気バス等のシャトルバスを走らせるとか、利用者や時間を限定して通行を許可するなど、奥産道の完成している区間をもっと有効に活用すべきではないでしょうか。
 東日本大震災津波からの復興を加速し、岩手をさらに元気にするためには、観光の振興も重要な施策の一つであります。本県内陸部における観光振興のためにも、完成している区間における車道の通行制限を解除し、奥産道をさらに有効に利活用することが必要と考えますが、県当局の見解をお聞かせ願います。
 次に、3年後に迫った希望郷いわて国体についてお伺いします。
 平成28年に開催が予定されている希望郷いわて国体は、広げよう感動。伝えよう感謝。をスローガンに、大震災津波からの復興のシンボルと位置づけられており、復旧、復興に向かって力強く歩みを進める本県の姿を全国に発信するとともに、感謝の気持ちを伝える絶好の機会であります。
 県では、4月に国体・障がい者スポーツ大会局も発足し、鋭意、国体、障がい者スポーツ大会の開催準備に取り組んでいるところであり、今月24日には本県での開催が正式に決定され、8月には現行の準備委員会が実行委員会に移行する予定とも聞いております。
 東日本大震災津波で甚大な被害を受けた本県にとって、震災津波からの復旧、復興が最優先の課題であることはもちろんであり、復興を加速させようとする中で県財政が厳しい運営を強いられていることは承知しておりますが、希望郷いわて国体の実施目標の一つとしている、全ての県民にとって復興の力となる大会を目指し、市町村と県が気持ちを一つにして、オール岩手で希望郷いわて国体を成功させるためには、競技を開催する市町村が万全の準備ができる環境を県も一体となってつくっていくことが重要であると考えます。開催に向けこれからどのように取り組んでいくのか、知事のお考えをお聞かせ願います。
 万全な準備という点では、運営面だけの準備でなく、まず、会場となる施設や設備といったハード面の整備が必要であり、県、市町村がそれぞれ計画的に進めていることと思いますが、5月19日、県営体育館で行われた東日本学生体操選手権で、つり輪の革製ベルトが切れる事故が起き、ロンドンオリンピックの代表だった選手が肩を痛めるということがありました。国体での使用が予定されている施設ではなかったようですが、全国レベルの選手が集まる大会でこのような事故が起きたことは、まことに残念であり、それが老朽化によるものであったということで、3年後の国体開催に向けて不安を感じた人も多かったのではないかと心配しています。
 この6月定例会では、県が、事故があった設備の更新を含む施設整備費を一般会計補正予算案に計上していますが、その他の施設も含め、県営体育施設の設備等の点検状況とともに、老朽化した施設の今後の整備方針をお示し願います。
 また、今回の事故を受け、同様の施設を有する市町村等でも、改めて施設や設備の点検を行ったとの報道がありました。国体の競技会場となる市町村では、開催に向けて施設等の整備を進めているところと思いますが、それぞれの競技では、会場となる施設だけでなく、競技に使用する各種の用具など設備面での整備も必要であり、これらの施設、設備の整備と運営面での準備をしっかり行うことで、競技が円滑かつ安全に進められるものと考えます。
 市町村が行う施設や設備の整備に対する県の支援体制はどのようになっているのか、改めてお示し願います。
 以上で、私の一般質問を終わらせていただきます。御清聴まことにありがとうございました。(拍手)
   〔知事達増拓也君登壇〕
〇知事(達増拓也君) 大宮惇幸議員の御質問にお答え申し上げます。
 まず、復興の加速化に向けた課題への取り組みについてでありますが、復興を加速させるためには、膨大な事業を推進するための専門的な人材の確保、被災地のニーズにきめ細かに対応することができる財源の確保、そして、事業用地を円滑に確保するための手続の抜本的な簡素化が必要であると考えております。
 このため、まず、人材の確保については、復旧、復興事業が本格化する中、さらにマンパワーが必要となることから、県として引き続き任期付職員や再任用職員の採用の拡充に努める一方、総務省の派遣スキーム等に基づく職員派遣の要請、国による関係機関等との総合的な調整機能の強化や人的支援に係る財政措置の拡充等について、引き続き国に対して強く働きかけてまいります。
 次に、財源については、これまで、本県を初め、地方から要望、提言を繰り返し、その結果、財源確保対策や復興交付金効果促進事業の県への一括交付などの一定の措置が講じられてきたところでありますが、復興が完了するまでの間の確実な財源の確保とともに、地域の多様なニーズに対応するためにはさらに柔軟性の高い財源措置が必要であり、引き続き国に強く要望してまいります。
 また、事業用地の確保については、これまでも海岸防潮堤事業において財産管理人制度等の現行制度の活用を図ってきたところでありますが、膨大な筆数の事業用地を円滑に確保するためには、所有者不明土地の管理権限等を市町村に付与する大震災復興特例とも言うべき施策を講ずることが必要と考えており、引き続き国に対し強く働きかけてまいります。
 次に、復興への決意についてでありますが、未曽有の被害をもたらした東日本大震災津波から2年4カ月を迎えようとしております。本県においては、沿岸地域を中心に、死者4、672人、行方不明者1、149人というかけがえのない犠牲が数多く出ています。復興に当たっては、犠牲になられた方々のふるさとへの思いを引き継ぐこと、そして、応急仮設住宅等で不自由な生活を強いられている多くの被災された方々の暮らし、学び、仕事を確保し、一人一人の幸福追求権を保障していくことを基本として、着実に復興をなし遂げなければならないと改めて痛感しております。
 これまで、オール岩手の知恵と力を結集して策定しました復興計画に掲げる三つの原則、安全の確保、暮らしの再建、なりわいの再生に基づき、被災地の復旧、復興の第一歩となる緊急的な取り組みを展開するとともに、本格的な復興に向けた基盤づくりを集中的に行ってまいりました。しかしながら、復興をさらに加速していくためには、その隘路となっている専門的人材の確保、柔軟性の高い十分な財源の確保、事業用地を円滑に確保するための手続の抜本的な見直しが必要であり、国、市町村とともに、これらの課題の解決を図りながら、一日も早い復興の実現に向け取り組んでまいります。
 また、こうした取り組みに加え、岩手の未来を見据えた三陸創造プロジェクトとして、国際リニアコライダーや海洋エネルギー実証試験場の本県誘致に取り組むほか、洋上ウインドファームの事業化等を推進し、いのちを守り、海と大地と共に生きるふるさと岩手・三陸の創造の実現を目指します。
 さらに、今年度、被災地や有識者などの意見を踏まえながら第1期復興実施計画の実施状況の検証を行うとともに、若者、女性等がさらに活躍できるような視点をも踏まえた第2期復興実施計画の策定に取り組みます。
 次に、沿岸部の人口減少についてでありますが、国立社会保障・人口問題研究所が本年3月に示した日本の地域別将来推計人口によりますと、沿岸市町村の将来人口は平成52年に約16万人になると推計されているところであり、平成22年の27万4、000人と比較してマイナス41.6%と、全県のマイナス29.5%と比較しても高い減少率になると予想されています。こうした人口減少が続けば、地域経済の規模縮小や地域コミュニティの維持が困難になることなどが危惧されます。
 一方、最近の状況を見ますと、人口減少の主な要因である社会減は震災直後に比べ縮小しており、こうした傾向が本格的なものとなるよう、東日本大震災津波復興計画に基づき、安全で安心なまちづくりや、被災者の生活再建、水産業を初めとする地域産業の再生の取り組みを進めてまいります。特に、社会減を減らしていくためには雇用の場の創出が重要でありますことから、市町村と連携しながら、水産加工など食産業への支援や、今後、成長が期待される再生可能エネルギー関連産業の誘致等の取り組みをさらに進めてまいります。
 現在、県総合計画審議会に人口とゆたかさの二つの検討部会を設置し、人口減少対策、県民所得の向上や豊かさについて検討をいただいているところであり、その議論も踏まえながら、沿岸地域の一刻も早い復旧、復興はもとより、希望郷いわての実現に向け取り組んでまいります。
 次に、岩手競馬についてでありますが、平成24年度の岩手競馬は、自場発売が年間を通じて堅調に推移したことなどにより6年連続の収支均衡を達成できる見込みでありますが、現在、競馬組合は、東日本大震災津波による釜石場外発売所の喪失など大きな被害が発生しましたことから、農林水産大臣の同意を得て、地方競馬全国協会の1号交付金の支払い猶予を受けている状況にあり、事業収支改善計画に基づいて低コスト化や発売体制の強化を図っているところであります。現段階におきましては、交付金支払い猶予期間が終了し、支払いが再開される平成27年度に向けて、まずは経営体質の改善に取り組み、安定的な事業運営としていくことが重要と認識しております。
 次に、国体の開催に向けた市町村と一体となった取り組みについてでありますが、いよいよ開催を3年後に控え、準備作業も本格化してきたところであり、本年度から選手団、役員等の宿泊、輸送の確保や、医療、救護、警備、消防体制などの整備に向けた検討、協議を市町村、競技団体等と一体となって進めているところです。
 県としては、国体開催に係る市町村の負担を軽減し、開催準備を円滑に進められるよう、昨年度から施設整備に係る補助制度を設けるとともに、国や日本体育協会に対して、財政支援の拡充や競技施設基準の弾力的な運用などの要望を行ってきています。また、市町村が行うリハーサル大会及び本大会の運営に係る経費についても、市町村の意向や事情をお聞きしながら補助制度の検討を進めてまいります。2016年の希望郷いわて国体が、復興のシンボルとして、復興を進める大きな力になることができるよう、市町村初め、県民の皆様、企業、団体の皆様と力を合わせ、オール岩手で開催準備を進めてまいります。
 その他のお尋ねにつきましては関係部局長から答弁させますので、御了承をお願いします。
   〔農林水産部長東大野潤一君登壇〕
〇農林水産部長(東大野潤一君) まず、地域農業マスタープランの作成状況についてでありますが、県では、マスタープランを平成24年度、平成25年度の2年間で県内全域において作成するよう推進しているところであり、本年5月末現在、31の市町村305地区、作成予定地区全体の52%で作成を終えており、このうち、10市町村では全ての地区が作成済みとなっております。
 次に、農地利用集積の現状と今後の支援策についてでありますが、農地利用集積につきまして、いわて県民計画第2期アクションプランにおきましては平成26年度末までに8万9、000ヘクタールを集積することとしておりますが、平成23年度末の集積面積は8万419ヘクタールとなっております。県といたしましては、本年度新たに市町村に地域連携推進員を配置し、農地の出し手と受け手のマッチングを進めているほか、集積や連担化に協力する出し手に交付する農地集積協力金や、経営規模拡大を行う担い手に交付する規模拡大交付金も活用しながら、引き続き農地利用集積に向けた取り組みを支援してまいります。
 次に、耕作放棄地の実態と解消に向けた取り組みについてでありますが、本県の耕作放棄地は、市町村が平成23年に実施した調査によりますと、笹等の繁茂や原野化により作物の栽培が不可能な農地、いわゆる荒廃農地は6、046ヘクタールで、耕地面積の約4%に相当しており、このうち障害物の除去により再生利用が可能な農地は4、910ヘクタールとなっております。
 耕作放棄地の解消に向けましては、地域農業マスタープランの作成過程におきまして、農業委員会等の持つ耕作放棄地情報と担い手への集積情報を共有しながら出し手と受け手のマッチングに取り組んでいるほか、国の交付金等を活用し、再生作業や土壌改良、機械、施設の整備も進めており、今後とも、利用可能な農地が再生され、担い手が有効に活用できるよう取り組んでまいります。
 次に、マスタープランの実現に向けた基盤の整備についてでありますが、地域農業マスタープランの実現に向けましては、マスタープランに位置づけられた地域の中心となる経営体の経営規模の拡大や転作作物の生産拡大のための圃場条件の整備とともに、農業生産に不可欠な用水を安定的に供給できる水利施設の機能維持が重要と認識しております。このため、県といたしましては、経営規模拡大や生産コスト低減に向けた水田の大区画化や、麦、大豆や園芸作物の品質、収量の向上に向けた暗渠排水等の排水対策とともに、老朽化が進行する農業水利施設につきましては、計画的な補修、更新等の長寿命化対策を進めるなど、土地改良区等と連携を強化しながら、農業生産基盤の維持、整備に取り組んでいく考えです。
 次に、プランに盛り込まれた6次産業化の取り組み内容と支援策についてでありますが、これまで作成された各地区の地域農業マスタープランを見ますと、約4割の地区で地元農産物の加工や直売所での販売など6次産業化の取り組みが盛り込まれております。6次産業化の取り組みの実現に向けましては、農業改良普及センターによる事業計画の策定支援や、いわて6次産業支援センターによる経営相談、商品開発、販路拡大のための研修会の開催やアドバイザーの派遣のほか、本年度創設したいわて地域農業マスタープラン実践支援事業等による施設設備の整備など、計画策定段階から事業化まできめ細やかに支援しております。
 県では、引き続き、関係機関、団体と連携しながら、地域が目指す農業の実現に向け、マスタープランの作成とその実践を支援してまいります。
   〔県土整備部長佐藤悟君登壇〕
〇県土整備部長(佐藤悟君) 一般県道雫石東八幡平線、通称奥産道についてでありますが、平成19年6月から登山道までの連絡歩道とあわせて整備済み車道を歩道として供用してきた状況を踏まえまして、平成21年7月に一般県道雫石東八幡平線活用検討委員会から現車両通行制限位置から連絡歩道入り口間に利便性向上施策の実施が望まれる旨の提言を受けたところでありますが、あわせて、利活用による自然環境への影響をこれ以上大きくしないよう、車両制限位置は現在の位置とすべきであるとの提言をいただいているところであります。この提言を受けまして、平成24年度から網張側の車両通行制限区域におきまして、利用者を限定して車両の通行を許可する利便性向上施策を試行しております。
 今後につきましても、提言の趣旨を踏まえまして、利便性向上施策の試行を重ねながら、引き続き歩道として利活用を図っていく考えであります。
   〔国体・障がい者スポーツ大会局長松岡博君登壇〕
〇国体・障がい者スポーツ大会局長(松岡博君) 国体の開催に向けた、市町村が行う施設設備の整備に対する支援体制についてでありますが、平成22年度に市町村や競技団体と協議の上、競技施設整備計画を策定し、その後、毎年度見直しを行いながら、計画的に改修等の整備を進めているところであります。県としては、市町村における施設整備に要する経費の負担を軽減するため、昨年度、補助制度を創設し、今年度の予定も含め15の施設整備に対して補助を実施しているほか、スポーツ振興くじ助成金など有利な財源の確保に努めるとともに、国に対し、財政支援の拡充などの要望活動を行っているところです。また、日本体育協会に対し、施設整備の指針となる競技施設基準について弾力的な運用を認めるよう要望を行い施設整備に要する経費の縮減を図っているところであり、こうした財政的な支援に加え、国体・障がい者スポーツ大会局に技術系の職員を配置し、相談や助言を行うなど、技術面からも市町村をサポートしていくよう努めているところです。
 競技用具の整備については、今年度、競技に必要となる用具の種類、数量などの調査を実施して競技用具整備計画を策定することとしており、市町村の開催準備が円滑に進むよう、支援のあり方についても先催県の例を参考にしながら検討しているところであります。
   〔教育長菅野洋樹君登壇〕
〇教育長(菅野洋樹君) 県営体育施設の設備等の点検状況と今後の整備方針についてでありますが、設備等の点検につきましては、日常の点検はもとより、大会等が開催される際には、主催者や、必要に応じて専門業者とともに器具のセッティング及び点検を行っているところでありますが、今般の事故を踏まえ、一斉点検を実施するとともに、日常の点検内容の見直しや、必要に応じた専門業者への点検依頼、点検強化月間の設定など、一層の安全確保、今後の再発防止に向けて取り組んでいるところであります。
 県営の体育施設は、大半が昭和45年岩手国体を契機に整備された施設であり、その後、順次必要な改修、修繕や備品等の更新を行ってきているところではありますが、全体としては老朽化が進行していることは否めない事実であります。
 一方で、東日本大震災津波からの復旧、復興に最優先に取り組んでいるところであり、直ちに老朽化した施設の全面的な整備を進めることは困難な状況にありますことから、利用者の安全確保を第一に、指定管理者との一層の連携や、さらには専門業者等の点検などを踏まえつつ、その適正な維持管理に努めてまいります。
〇33番(大宮惇幸君) 再質問をさせていただきたいと思います。
 一般県道雫石東八幡平線、通称奥産道についてでありますけれども、本年1月でありますが、車道での全面開通や観光振興を目指して、八幡平市、雫石町、滝沢村の超党派で構成されております有志議員38名でありますけれども、道路促進議員連盟が設立されたところであります。地元では、多額の費用をかけた道路を活用すべきであるとか、自然環境に配慮した利用方法を考えるべきなどの意見のほか、雫石と八幡平を結ぶ奥産道を観光ルートとして期待する声もあるとうかがっております。
 平成8年度のトンネル調査の際の原生林の無許可伐採が判明し、平成10年度には工事の再開が断念されましたが、網張と松川を車道で結ぶ奥産道の全体計画は、当時の環境庁など関係機関との調整が図られた上で事業が進められていたものでありまして、このような経過を踏まえれば、自然保護の観点を十分に勘案しても、この地域を訪れる観光客の増加が図られるよう、さらなる利活用を進めるべきと考えるものであります。再度、当局の見解をお伺いします。
〇県土整備部長(佐藤悟君) 一般県道雫石東八幡平線のさらなる利活用についてでありますが、昭和40年10月に当時の厚生省から自然公園法に基づく国立公園事業の一部として承認を受けて事業に着手し、その後、自然保護の声の高まりを受けて、昭和58年度にトンネルを含むルートへの変更協議を当時の環境庁に対して行い、同意を得た上で工事を進めていたものであります。平成10年に道路工事の再開を断念した後、平成14年に整備済み区間の道路の利用に伴う人為的影響の軽減や自然環境の保全を基本的な考え方とする活用計画を策定し、これに基づき連絡歩道などの整備を進め、平成19年6月から整備済み車道、連絡歩道及び既設登山道を一連の歩道として供用したところであります。この利用状況を踏まえまして、一般県道雫石東八幡平線活用検討委員会からの提言をいただき、平成24年度から網張側で利便性向上の取り組みを試行しているところであり、今年度につきましては、盛岡管内の小学校や高齢者、障がい者施設へ情報提供を行うとともに、土、日曜日における実施日をふやすなど、利活用のさらなる促進に努めることとしております。
 今後につきましては、現在の試行状況を踏まえ、多方面の御意見を聞きながら検討してまいりたいと考えております。
   日程第2 発議案第1号特別職の職員の給与並びに旅費及び費用弁償に関する条例の一部を改正する条例
〇議長(佐々木博君) 次に、日程第2、発議案第1号特別職の職員の給与並びに旅費及び費用弁償に関する条例の一部を改正する条例を議題といたします。
 お諮りいたします。ただいま議題となっております案件は、各交渉団体会派の賛同を得た委員会提案でありますので、会議規則第34条第2項及び第3項の規定並びに先例により、議事の順序を省略し、直ちに採決いたしたいと思います。これに御異議ありませんか。
   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
〇議長(佐々木博君) 御異議なしと認めます。よって、さよう決定いたしました。
 これより、発議案第1号特別職の職員の給与並びに旅費及び費用弁償に関する条例の一部を改正する条例を採決いたします。
 本案は、原案のとおり決することに賛成の諸君の起立を求めます。
   〔賛成者起立〕
〇議長(佐々木博君) 起立多数であります。よって、発議案第1号特別職の職員の給与並びに旅費及び費用弁償に関する条例の一部を改正する条例は、原案のとおり可決されました。
〇議長(佐々木博君) 以上をもって本日の日程は全部終了いたしました。
 本日はこれをもって散会いたします。
   午後4時45分 散 会
第10回岩手県議会定例会会議録(第3号)

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