平成24年12月定例会 第8回岩手県議会定例会 会議録

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〇23番(高橋孝眞君) 自由民主クラブの高橋孝眞です。
 まず、今回、一般質問の機会を与えていただきました先輩そして同僚議員の皆様に感謝を申し上げますとともに、被災地が一日も早く復興をなし遂げ、被災された方々が暮らしの安定を取り戻されるよう祈念申し上げ、通告に従い、順次質問いたします。
 まず、希望郷いわてについて伺います。
 知事は、みずからの政策理念をあらわすキーワードとして希望郷いわてというキャッチフレーズを多用しております。希望郷いわてにつきましては、これまでもたびたび一般質問で取り上げられており、私自身もさきの2月定例会において知事に伺ったところでありますが、今回、改めてお伺いいたします。
 東日本大震災津波を境として、我々自身の価値観や取り巻く環境は大きく変わってしまいました。大震災津波からの復興に係る諸課題は無論でありますが、大津波による原発事故に端を発した再生可能エネルギーへの転換の問題や、本県産業の屋台骨を支える自動車産業までもが我が国から姿を消してしまうのではないかと思われるほど激動する昨今の経済情勢、また、一段と進行する少子高齢化の影響など、我が国は今、明治維新や終戦直後の混乱期を別にすれば、かつてないほどの激動期を迎えており、本県も、これまで誰も経験したことがないような困難な状況に直面しているのではないかと考えられます。県政にとって、より一層力強いかじ取りが必要とされているのではないかと思われるところであります。
 希望郷いわての実現とは、県政にとっての最重要課題である大震災津波の被害からの復興を含め、県民の誰もが将来に明るい希望を持ちながら生き生きと暮らすことができるような岩手を創造することにほかならないように思われます。言いかえれば、大震災後に新たに生まれた諸課題や新たな価値観をも取り込みながら本県の将来像を改めて描き直し、実現していくという長期にわたるまことに大きな取り組みと言えるのではないでしょうか。
 つきましては、改めて知事に次の3点について伺います。
 1点目、知事が今、希望郷いわてというキーワードに託す本県の将来像とは具体的にどのようなものでしょうか。
 2点目、知事は希望郷いわての実現に向けて鋭意取り組まれているとは思いますが、このように理想として描く状態とのギャップが拡大している状況を克服し、希望にかえていくための突破口になり得るような新たな戦略の柱はあるのかお示しいただきます。
 3点目、知事の取り組みは、みずからが描いている本県の将来像に比べてどの程度実現されつつあるのでしょうか。
 以上、具体的な例を踏まえて、県民の方々にもきちんと理解いただけるよう明確な御説明をお願いします。
 次に、国際リニアコライダーについて伺います。
 国際リニアコライダーは、世界の最先端技術を集約した超精密素粒子衝突実験装置であります。その開発、設置には極めて巨額の経費を要するため、世界でただ1カ所に共同で建設されることとされており、現在、アメリカのシカゴ近郊、スイスのジュネーブ近郊、そして日本の九州北部と本県県南部の北上山地の4カ所が候補地と言われておりますが、その中でも、とりわけ我が国への建設が有力視されていると聞いております。
 言うまでもなく、本県のみならず東北は今、東日本大震災津波からの復旧そして復興に向け、地域が一丸となって懸命の取り組みを行っておりますが、本県そして東北の再生にはなお長い時間を必要とすると思われます。今後、長期間にわたりふるさとの再生に取り組んでいくためには、ここに住む者が将来にわたって夢と希望を持ち続けることができるような国家的な一大プロジェクトの誘致が必要なのではないでしょうか。
 ILCの建設は、国際的な基礎物理学の実験の場としてのみならず、建設から運用まで30年間において、約25万人分とも言われる大きな雇用創出効果、産業全体、とりわけ本県を含む東北全体の産業への大きな雇用創出効果、加速器技術やそれらに連なる新産業分野の研究者、技術者の能力の向上、域外からの研究者、技術者の流入による高度産業人材の育成と集積、そして新産業の形成によるさらなる雇用機会の創出を可能にするとも言われており、まさに将来の本県と東北全体の産業と地域の構造を大きく変えるものと期待されております。また、ILCに関連する技術の応用も考えられるところであり、一例を挙げると、中性子ビームを核廃棄物に照射することにより、不安定な原子核を安定的な原子核に変える技術の研究も進められているとのことであり、このような技術は、原発事故による放射能の除染にも活用できるものではないかと期待されるところであります。
 今、まさにILCの建設地の選定が大詰めの時期に差しかかっていると言われており、我々東北に住む者が明るいふるさとの将来像を共有するためには、ILCの本県への建設が現実のものとなるよう、あらゆる努力を傾注すべきではないでしょうか。的確な情報提供を行うことにより、県民各層の共通認識のもとに、県民レベルでの運動を展開することはもとより、隣県宮城県を初めとする東北各県との連携により、本県と東北地方の優位性をアピールするなど、国や経済界に強い働きかけを行うことが必要と考えます。
 そこで知事に伺いますが、ILCの本県への建設の実現は、まさに知事が言う希望郷いわての実現に決定的な影響を与えるものであり、本県と東北の復興に絶対に欠かせないものと考えますが、いま一つ具体的な取り組みの形が見えてこないことに危惧を感じております。知事自身を含めて、県として、これまでどのような取り組みを行い、そして、今後、ILCの誘致実現に向けてどのように取り組んでいくお考えなのか、具体的にお示し願います。
 被災地における用地取得について伺います。
 昨年3月11日の東日本大震災津波の発災以来、1年8カ月余り時間が経過しました。被災市町村では復興整備計画を策定し、計画区域内の土地利用方針を定め、復興整備事業に取り組みつつあると聞きます。その中で特にも重要と考えられるキーポイントの一つが、復興整備事業の根幹をなす用地取得であります。沿岸各地では、震災後の売買実例がほとんどないこと、地価の基準となる地点が震災により大きく変わっていることなどから、さまざまな試行錯誤の段階を経て、防災集団移転事業の事業実施エリアの標準的な地価をさまざまな知見と手法を駆使することにより決定し、その結果を逐次周囲に波及させていく方法を採用していると聞きます。
 しかし、震災により多くの方々が亡くなった被災地域においては相続権者が各地に散在しており、過去において歴代の登記の手続が行われていない例も多く、円滑な事業の実施を妨げる要因となっている実態もあるとのことであります。
 そこで伺いますが、県では、被災市町村の地価の決定を加速し、用地取得を推進するため、市町村に対しどのような支援を行っているのでしょうか。
 さらに、用地取得については、地価が決定されても、土地に設定された抵当権が障害となり、市町村による用地取得が進んでいないと聞くところであります。隣県宮城県では、金融機関との交渉により、市町村が土地を買い取った場合、代金を直接金融機関に対して支払うことにより、速やかな抵当権の処理を実現していると聞きます。県として、どのような対応をしていくのか伺います。
 原発に係る安全協定について伺います。
 このたびの東日本大震災津波に伴う東京電力福島第一原発の事故により、福島県の被災地においては、飛散、漏出した放射線の影響のため、いまだに行方不明者の捜索や瓦れきの撤去も十分に行われていない地域もあるとのことであり、被災者の方々の避難も既に長期間に及び、まさに市町村の地域の機能が根こそぎ失われているという未曽有の事態に瀕しております。被災者の方々の生活の安定と一日も早い帰宅、被災地の復興がなし遂げられるよう、心から願わずにはいられません。
 本県には原発の立地こそありませんが、宮城県の東北電力の女川原発からは県境まで約40キロメールと近く、また、青森県の東北電力東通原発からは約80キロメールの距離にあり、万一の事故の際には、東京電力福島第一原発の例をまつまでもなく、本県にも深刻な被害が及ぶことが懸念されるところであります。原発が立地する県においては、原発の設置者である電力会社との間で安全協定を締結し、万一の場合の対応を具体的に定めておりますが、被害が広範囲に及ぶ原発事故の特性から、立地県の隣県においても災害協定の締結を検討すべきではないかと考えます。
 中国電力島根原発と隣接する鳥取県では、昨年12月に中国電力との間に、防災重点地域圏外としては全国で初めて安全協定を締結したと聞いております。本県の場合、宮城県の女川原発については当然でありますが、県境との距離が遠い東通原発についても、燃料輸送が海路により行われていること等を考慮すれば、やはり安全協定の対象とすべきではないかと考えられるところであります。現在、県では東北電力との間で安全協定の締結を検討していると聞きますが、各県における安全協定の締結状況と本県における現在の進捗状況はどうなっているのでしょうか、また、想定される協定はどのようなものなのか伺います。
 農林水産業問題について2点伺います。
 まず、経営体の育成について伺います。
 先月、県から平成24年度政策評価等の実施状況報告書が公表されました。これによると、農林水産業のうち、特に、農林水産業の未来を拓く経営体の育成の政策項目においては、総合評価がやや遅れとなっております。その内容を見ると、高齢化等の理由により認定農業者が減少したことに伴い、認定農業者への農地集積が進んでいないこと、あるいは農業経営改善計画の認定が進んでいないこと等が挙げられております。要は、地域の農業振興上、最も重要な課題の一つである地域農業の核となる経営体の育成がおくれているということであり、その傾向は林業や漁業においてもおおむね同じようであります。
 知事は、希望郷いわての実現を旗印に県政を推進しているわけでありますが、いかに本県の産業構造が変わろうとも、農林水産業が本県の地域構造の根幹を担う重要産業であることに変わりありません。経営体育成のおくれは、まさに本県農林水産業の死命を制するとも言え、希望郷いわての実現にも大きな影響を与えるものではないでしょうか。すぐにも強力な取り組みが必要と考えられるところであります。知事は、この経営体育成の問題についてどのような姿勢で臨み、どのように目標を達成していくのか伺います。
 オリジナル水稲品種の育成について伺います。
 本県ではかつてオリジナル水稲品種の育成に積極的に取り組み、耐冷性にすぐれたかけはしや良食味米であるゆめさんさなどの優良な品種を育成したことも記憶に新しく、現在でも県内の一部の地域においては継続的に作付が行われていることと承知しているところであります。
 しかし、本県における大きな問題点は、作付面積が品種ごとに限定されるため生産量も少なく、品種としていかにすぐれた特性を持っていても、そのよさを消費者に対し十分に訴求できず、結局のところ、品種としての寿命も短命なものに終わっているのではないかと思われるところであります。
   〔副議長退席、議長着席〕
 一方で、他県においては現在でも継続的に新たな品種が開発されており、例えば山形県でははえぬきからつや姫、北海道ならききら397からゆめぴりかへと評価の高い品種が継続的に育成されております。また、新潟県のコシヒカリは、新潟と言えばコシヒカリと言われるように、新潟県の代名詞であるばかりでなく、今や米全体の代名詞にまでなっております。
 本県がすぐれた品種を持ち、一定規模での生産が可能となれば、米のみならず本県産農産物を売り込む場合の牽引車としての役割も期待できるのではないでしょうか。現在の本県におけるオリジナル水稲品種開発の取り組み状況はどうなっているのか伺います。
 自殺対策について伺います。
 本県における自殺者が減少に転じているとのことであります。県における自殺者の推移を見ると、平成22年の467人、平成23年の401人、平成24年10月現在の304人と明らかに減少傾向にあり、心配された東日本大震災津波に関連すると見られる自殺者も、昨年の17人から本年は、10月までではありますが、5人と、同様に減少の傾向を示しております。自殺者がこのまま減少するかどうかはなお予断を許しませんが、本県は秋田県と並んで全国でもトップクラスの高い自殺率を記録していることを考えると、自殺者数が減少に転じたことは非常に喜ばしいことであります。しかし、一方で本県の自殺率は平成23年において人口10万人当たり28.3人であり、依然として全国第2位の状況となっていることからも、今後とも注意深くその推移を見守り、対策を実施していかなければならないと考えるところであります。
 人の命はこの上なくとうといものであります。みずから命を絶とうとする人たちに対して手を差し伸べ、新たな人生を力強く生きていただくため、自殺者数が限りなくゼロに近づくまで対策の手を休めるわけにはいきません。県として、自殺者が多い原因をどのように捉えているのでしょうか。また、今後、県としてさらなる自殺防止を図るためどのような対策を講じていくのか伺います。
 教育問題について2点伺います。
 まず、小中学生の学力問題について伺います。
 初等、中等教育の重要性については今さら申し上げることはないと思われます。人生のこの時期における教育は、人が社会生活を歩むために不可欠な知識や教養、そして豊かな人間性の礎となる極めて重要なものであります。
 ところで、隣県秋田県の小中学校の学力は全国的にも常にトップクラスを維持していると聞きます。それに対して本県の小中学校の学力は、小学校時は全国でも比較的上位にあるものの、中学校に進むと、教科によっては学力が伸び悩んでいるものもあると聞くところであります。秋田県は本県の隣県であり、全国的に見れば、地域環境や経済状況、地域社会における人間関係、家族環境などもおおむね似通っているものと考えられます。それにもかかわらず、このような差が生じるということは、家庭学習を含めた学校教育の取り組みのどこかに差が生じているということではないのでしょうか。
 県教育委員会として、このような差が生ずる原因をどのように分析しているのでしょうか。要は、次世代を担う子供の教育にかかわることであります。秋田県の現在の状況が決して一朝一夕で達成されたものではないことは想像にかたくありませんが、秋田県との差をしっかりと捉え、対策を講じていくことが必要と考えます。県教育委員会の対応について伺います。
 次に、小規模高校について伺います。
 西和賀高校を例に挙げると、同校は、言うまでもなく、旧湯田、沢内地区における唯一の高等学校でありますが、過疎や少子化の影響もあり、生徒の減少に苦しんでいるのが実情であります。ちなみに、本年4月の入学者は定員80人に対して50人ですが、一方で、本年3月における西和賀町内の中学校卒業生の進学動向を見ると、卒業生数52人に対し、西和賀高校への進学が17人、北上地区が21人、盛岡地区が9人、それ以外が5人となっており、地元への進学者が卒業者数の3分の1に満たないことがわかります。湯田、沢内地区は地理的にも北上や盛岡にも近く、現実に人の往来や経済的な結びつきも強く、特に北上は同一学区でありますし、これらの地域へ進学することもうなずける部分はありますが、しかし、裏を返せば、他と比べて地元の学校に魅力が少ないから地元の高校へは進学しないということも原因として考えられるのではないでしょうか。
 現在、県教育委員会と地元の高等学校では、生徒確保対策として、中高連絡会、一日体験入学、高校説明会等においてPRに工夫されているようですが、地元からの入学者をふやすためには、学校の魅力づくりを積極的に行うことにより、生徒のさまざまな希望をかなえることができる教育内容を整備する以外にないのではないかと考えるところであります。
 魅力ある教育内容を実現するためにはそれなりの数の教職員や予算も必要であり、一定以上の入学者が集まればこそという問題もあることは十分承知しているつもりであります。小規模校の存廃は地域の活力の問題にもつながるものであり、小規模校を抱える県内市町村に共通する深刻な悩みでもあります。このような小規模校をめぐる問題を県教育委員会としてどのように考え、どのように対応していくお考えなのか伺います。
 県立病院の経営問題について伺います。この問題についてはさきの2月定例会の一般質問でも取り上げたところでありますが、県立病院は地方公営企業である以上、経済性を発揮し、自立した経営を行うことが求められることは言うまでもありません。近年、県立病院のあり方についての議論がクローズアップされておりますが、本来、県立病院が企業としてどのような経営努力や改善を行っているかにも大いに注目していく必要があるものと考えるところであります。
 現在、全国の地方公営企業は、国が主導する地方公営企業の会計制度改革の準備を鋭意行っていると聞いているところであります。この一連の制度改革の中に、資産の収益性の低下を、投資の回収が見込めなくなった場合、帳簿価格にその価値の下落を反映させるいわゆる減損会計の考え方が新たに取り入れられ、また、退職給付引当金制度の設置が義務化されているところでありますが、医療局の場合、平成24年4月現在の職員数は4、300人余に及び、その退職給付引当金の金額は、間近の試算では約285億円にも上るものとされており、この引当金の金額だけでも十分驚くに値するものでありますが、問題なのは、その全額を一般会計からの繰り出しにより積み立てる必要があるのではないかという点であります。周知のとおり、本県の一般会計の状況は7、256億円にも上る膨大な借金を抱え、その償還に要する費用だけでも年間840億円余にも及んでおり、さらには長期化する景気の低迷等による一般財源収入の減少などの影響により、非常に苦しい運営を迫られている現状にあるため、引当金の負担は到底困難なものではないでしょうか。
 花巻厚生病院や北上病院など病院統合によって生じた未利用資産の整理の問題など、真摯に検討すべき重要課題は多いと考えられるところであります。また、東日本大震災津波により甚大な被害を受けた沿岸部の県立病院の再建問題についても、地元住民、特にも被災者の方々の心情は十分に察するものでありますが、将来的な利用と利便性に十分配慮した上で統合を図っていくべきではないかとの考えもあるところであります。
 県は、医療局が抱える県立病院の経営問題をどのように考えているのでしょうか。安易に次の世代にツケを回すのではなく、経営状況を抜本的に改善するため、実施可能な改善策は積極的かつ大胆に採用していくべきではないかと考えます。
 県が、県民の命と健康を守るということは県に課せられた最も重要な責務であり、一定の財政負担も必要やむを得ないことは理解できるところであります。しかし、それでもやはり経営と財務体質の健全化への最大限の努力はなされなければならず、思い切った対応を行うべきではないでしょうか。このような県立病院の経営の現状について県当局はどのように認識し、今後、どのような方向で改革、改善に取り組んでいくお考えか医療局長に伺います。
 以上で私の質問を終わりますが、知事初め各部局長の皆様には誠意ある明快な御答弁をお願いいたします。御清聴ありがとうございました。(拍手)
   〔知事達増拓也君登壇〕
〇知事(達増拓也君) 高橋孝眞議員の御質問にお答え申し上げます。
 まず、希望郷いわての将来像についてでありますが、いわて県民計画では、一人一人の希望が実現し、ひいては岩手全体に希望があふれる姿を希望郷いわてという言葉に込めて、基本目標としています。
 この具体的な姿を県民一人一人が、共に支え合いながら生き生きと働き、安心して暮らし、楽しんで学んでいくことのできる希望あふれる社会としているところであり、東日本大震災津波の発生後においても、変わることのない実現していきたい岩手の未来であると考えております。
 次に、新たな戦略の柱についてでありますが、震災を乗り越え、真の復興をなし遂げ、その先にある希望郷いわてを実現するためには、緊急的な取り組みはもとより、岩手の将来を見据えた中長期的な取り組みが重要であると考えます。
 そのため、復興計画では、三陸地域の復旧、復興はもとより、長期的な視点に立ち、新しい三陸地域の創造を目指す観点から、これを体現するリーディングプロジェクトとして、三陸創造プロジェクトを掲げています。
 また、いわて県民計画においては、本県の産業や暮らし、歴史、文化、地理的条件など、本県の強みや岩手らしさを生かして未来の岩手を創造する取り組みとして、岩手の未来を切り開く6つの構想を掲げています。
 このプロジェクトや構想に掲げている国際リニアコライダーの誘致などによる世界をリードする国際研究交流拠点の形成、太陽光発電や洋上風力発電、地中熱、太陽熱などの再生可能エネルギーの導入促進、三陸の海の資源を活用した新産業の創出などの取り組みを具体的に進めていくことにより、希望郷いわての実現をより確かなものとしていきたいと考えます。
 次に、希望郷いわての実現についてでありますが、県では、希望郷いわての実現を目指すいわて県民計画の具体的な行動計画であるアクションプランについて、その進捗状況を政策評価レポートとして毎年11月に取りまとめ、県議会に報告するとともに、広く県民に公表しています。
 今回公表した平成24年度の政策評価レポートでは、順調またはおおむね順調と評価された政策項目が全体の72.1%となっています。具体的には、例えば環境の分野において、住宅への太陽光発電設備の設置を初めとした再生可能エネルギー導入の取り組みが進められるなど成果が上がっている一方で、農林水産業の分野において、震災や夏期の高温の影響等により、農林水産物の生産量や販売額が低下するなど、進捗のおくれも見られるところであります。
 このように、政策評価で明らかとなった課題やとるべき対策を予算編成過程を通じて翌年度以降の政策に適切に反映させていくサイクルを回し、着実に希望郷いわての実現に近づけてまいります。
 次に、ILCの誘致実現に向けた取り組みについてでありますが、県では、ILCを復興の象徴として位置づけ、本年7月に東北ILC推進協議会が策定したILCを核とした東北の将来ビジョン等をもとに、機会あるごとに、政府や関係国会議員等に対し、国としてILCを国家プロジェクトとして位置づけ推進するよう、要望活動を行ってきたところであります。
 また、ILCの誘致には、国への働きかけとともに、地元の理解と熱意、東北全体での協力体制づくりが欠かせないことから、関係団体とともに、数多くの講演会等を開催してきたほか、北海道東北地方知事会による国への提言、宮城県との共催による県際連携セミナーの開催などの取り組みを進めています。
 今後も、誘致推進組織等との連携を図りながら、周知啓発活動と多様な媒体による情報発信、東北が一丸となった国への働きかけを進め、北上山地が国内の最終候補地に選定されるよう最大限努力してまいります。
 次に、農林水産業の経営体の育成についてでありますが、本県の農林水産業は、高齢化の進行等による従事者の減少など、生産構造の脆弱化の進行が見られますが、農林水産業が、将来にわたって地域経済社会を支える産業として、持続的に発展していくことが重要と認識しております。
 このため、経営体の育成に関しては、経営の高度化、生産の効率化等による高い所得を安定的に確保できる経営体の育成を図るとともに、新規就業者など新たな担い手の確保育成に切り組むこととし、地域農業マスタープランの作成と実践を通じた地域の中心となる経営体への農地の利用集積や、青年就農給付金の活用など新たな担い手が参入、定着できる環境整備、地域牽引型林業経営体等による森林施業の集約化、がんばる養殖復興支援事業の導入など養殖漁業者の経営再建、後継者確保や生産作業の共同化、省力化や経営規模拡大などを推進し、新たな担い手が参入、定着するとともに、意欲と能力のある経営体が、効率的で安定した経営を展開する農林水産業を目指していく考えであります。
 その他のお尋ねにつきましては、関係部局長から答弁させますので、御了承をお願いします。
   〔県土整備部長若林治男君登壇〕
〇県土整備部長(若林治男君) まず、被災地における用地取得についてでありますが、県では、市町村が行う復旧、復興事業における土地評価を支援するために、市町村の要望を踏まえまして、標準的な地点106カ所を対象といたしまして、一括して不動産鑑定評価を行ったほか、岩手県の被災地における土地価格の情報連絡会議を設置いたしまして、国、県、市町村などが実施した不動産鑑定評価の情報共有と情報交換を進めてきたところであります。
 各市町村におきましては、県の一括不動産鑑定評価などを参考といたしまして、防災集団移転促進事業等の土地評価を行い、順次、住民に対して土地価格を提示しているところであります。
 また、用地取得の本格化に伴い、所在者不明や相続未処理などにより、取得に多くの手続や時間を要する土地が多数見込まれますことから、これまで、国に対して、所有者不明土地の市町村管理制度や土地収用手続の迅速化を要望してきたところであります。
 これを受けまして、国においては、現在、関係省庁による連絡会を設置いたしまして、所有者不明土地などの具体的な事例をもとに、事業認定の迅速な申請処理など、必要な処置について検討を進めているところであります。
 県といたしましては、市町村事業を含めた復旧、復興事業を迅速に推進するため、引き続き市町村と連携いたしまして、事業用地の適正な評価に努めるとともに、国との連絡会等を通じて、用地取得の課題を共有し、対応策を検討するなど、市町村に対する支援を進めてまいります。
 次に、抵当権の処理についてでありますが、復旧、復興事業に関する事業用地の抵当権の抹消を行うためには、抵当権者からの承諾を得る必要がありますことから、国及び県の共催によりまして、9月に岩手県復興に向けた金融関係機関による意見交換会を開催し、県内各金融機関に対して協力を要請したところであります。
 また、市町村における防災集団移転促進事業の用地取得を推進するため、今月の中旬になりますが、金融機関や市町村を対象といたしまして説明会を開催することとしており、その中で、住宅金融支援機構が提案いたします抵当権抹消に関する具体的な対応策を説明いただきながら、金融機関と市町村が連携して、速やかな抵当権の処理が実現するよう努めてまいります。
 県といたしましては、今後とも、防災集団移転促進事業による住宅再建が円滑に進められるよう、関係機関と連携しながら市町村を支援してまいります。
   〔総務部長加藤主税君登壇〕
〇総務部長(加藤主税君) 原発に係る安全協定についてでございますが、原子力施設の立地していない34都府県のうち、原子力事業者と協定等を締結しているのは18府県となっております。
 なお、東北電力は、青森県及び宮城県以外の県との協定等は締結しておりません。
 県といたしましては、防災対策を進める上で安全協定の締結が必要と考え、東北電力との間で事務レベルの打ち合わせを進めてきたところでございますが、県議会におきまして、原子力事業者との安全協定の締結等を求める旨の請願が採択されたこと等も踏まえまして、正式に協定締結に向けた協議を開始したところでございます。
 現在、策定作業中でございます県地域防災計画の原子力災害対策の策定時期に合わせ、年度内の締結を目指し協議を進めてまいります。
 また、協定につきましては、原子力災害が発生した際に実効ある防災対策を講じられるよう、必要な事項を盛り込んだものでなければならず、他県の例も参考としながら、情報連絡のあり方等につきまして、県としての考え方を十分に説明し、協議を進めてまいります。
   〔農林水産部長東大野潤一君登壇〕
〇農林水産部長(東大野潤一君) オリジナル水稲品種の育成についてでありますが、県では、品種開発の選抜のスピードを速めるため、岩手生物工学研究センターにおいて、大規模DNA配列解析装置、次世代シーケンサーを活用して、遺伝子の特性を調べる技術、ムットマップ法を開発し、この技術を用いて、良食味に関する遺伝子を特定できるようになりました。
 本年度は、県農業研究センターにおきまして、この技術を活用し、これまでに交配を実施して得られた候補の中から、より食味のすぐれたものを選抜しているところであり、今後、日本穀物検定協会の食味官能試験なども経て、平成26年度を目標に、コシヒカリを超える良食味品種の候補を得ていくこととしております。
   〔保健福祉部長小田島智弥君登壇〕
〇保健福祉部長(小田島智弥君) 自殺対策についてであります。
 まず、自殺者が多い原因についてでありますが、自殺の要因は、経済、生活問題や健康問題などが複雑に関係しておりますことから、自殺者が多い原因を一概に述べることは困難でありますが、警察統計によれば、自殺の原因、動機としては、男性では、健康問題、経済、生活問題が、女性では健康問題の割合が多くなっており、男性の経済、生活問題については、いわゆる働き盛り世代に多いことから、所得の低さや失業等の経済、雇用情勢なども自殺者数に影響しているのではないかと考えられております。
 また、健康問題については60代以上に比較的多いことから、本県の高齢化の進展も自殺者数に影響している要因の一つと考えております。
 次に、今後のさらなる自殺防止のための対策についてでありますが、今後は、昨年度策定した岩手県自殺対策アクションプランに基づき、県、市町村、民間団体等が一体となって、電話や面接等による各種相談支援やゲートキーパーや傾聴ボランティア等の人材養成、各種広報媒体を活用した普及啓発等の取り組みや被災地における心のケアの取り組みを一層推進するとともに、多様な相談機関のネットワークの強化を図っていくこととしております。
 また、サロンづくりや、うつスクリーニング、勤労者へのアプローチなどを行う包括的な自殺対策プログラム、いわゆる久慈モデルについて、全市町村でそれぞれの地域特性に応じて実施されるよう、技術的、財政的支援に取り組んでまいります。
 加えて、現在、各保健医療圏ごとに地域自殺対策アクションプランの策定を進めているところであり、これに基づいて、市町村や民間団体等との密接な連携を図りながら、自殺防止に向けた対策を推進してまいります。
   〔医療局長遠藤達雄君登壇〕
〇医療局長(遠藤達雄君) 県立病院の経営の現状と今後の取り組みについてでありますが、医療局においては、安定した経営基盤を確立し、県民に良質な医療を持続的に提供するため、平成21年度から平成25年度までを計画期間とする岩手県立病院等の新しい経営計画を策定し、経営改善に向けた取り組みを進めているところであります。
 平成23年度決算は、診療単価の増加などによる収益の確保、診療材料の廉価購入などによる費用の抑制により2年連続で経常収支が黒字となったものの、東日本大震災津波被害による特別損失などを加えた純損益では赤字となり、平成23年度末の累積欠損金は205億円余となったところであります。
 また、過般、地方公営企業の会計基準が昭和41年度以来大幅に改正され、平成26年度事業から適用されることとなりましたが、このうち、例えば退職給付引当金につきましては、その計上が義務づけられたところであり、在職職員が全員退職すると仮定した場合の退職手当支給額を以前試算したところによりますと、所要額は285億円余となり、これを一括費用計上した場合、累積欠損金は490億円余に増嵩するなど、県立病院を取り巻く経営環境は、今後さらに厳しさを増すものと認識しております。
 こうした状況を踏まえて、平成26年度を初年度とする次期経営計画の策定に当たっては、現在策定作業が進められております県の次期保健医療計画の考え方などを踏まえ、圏域内における県立病院の役割や他の医療機関との機能分担と連携、医師不足の解消、安定した経営基盤の確立など、多岐にわたる課題について、外部有識者の方からも意見を伺うなど、今後本格的な策定作業に取り組むこととしており、現行の経営計画の取り組み実績や患者動向などを総合的に勘案し、被災した病院の再建を基本としながら、幅広い視点からの検討を進めてまいります。
   〔教育長菅野洋樹君登壇〕
〇教育長(菅野洋樹君) まず、小中学生の学力問題についてでありますが、本県の国語、理科につきましては、小学校、中学校ともに全国の平均正答率を上回っております。ただ、一方、中学校の数学については、年々上昇傾向にはありますが、いまだなお、全国の平均正答率を下回り、引き続きの課題と捉えており、授業改善を進めながら、基礎基本を繰り返し定着させる指導が必要であると考えております。
 なお、授業がわかると肯定的に答えた生徒の割合は年々上昇しており、日常的に授業改善を行う教員がふえているものと分析いたしております。
 秋田県の教育施策や指導方法の特徴についてでありますが、教科の課題について重点を定めて集中して取り組むこと、基礎的な問題を毎日、宿題として課すとともに補充的な指導に力を入れていること、校長等による授業参観を頻繁に行っていることなどが挙げられます。
 このような秋田県の教育施策は、本県においても学ぶべき点は多く、同様な取り組みを進めているところであります。このことに加え、例えば中学校数学において、本県の分析結果から基礎計算力に課題があることが明らかになったため、数と式の領域を重点指導領域として設定し、今年度作成した基礎精選問題を各学校に提供するなど、改善に向けた新たな取り組みを進めております。その改善の成果を来年度以降もさらに分析し、学習指導の充実に取り組んでまいります。
 また、教員相互の授業参観をこれまで以上に推奨し、より子供の思考力を培う指導を目指すなど、互いの授業力をさらに向上させることにより、わかる授業につなげることにも取り組んでまいりたいと考えております。
 次に、小規模高校についてでありますが、いわゆる小規模高校であっても、地域からの御協力や支援をいただきながら、限られた教員配置の中で、生徒や教員の努力により各校の特徴を生かした教育活動を展開し、進学や就職、部活動などに実績を上げているという評価もいただいております。
 一方で、生徒数が大幅に減少した場合、学校の活性化や教育活動等への影響が懸念されるものであり、社会に出る一歩手前の高校教育における、生徒にとってよりよい教育環境を整えていく観点から、一定の生徒数は必要であろうと考えております。
 本県においては、今後とも、少子化による中学校卒業生の減少が進行していく見通しであることから、そのあり方につきましては、地域との一層の連携や学校間連携の推進等、魅力ある教育内容の整備も含め、地域の皆様方の御意見も伺いながら、次期高校整備計画の策定とあわせて検討してまいりたいと考えております。
〇議長(佐々木博君) 以上をもって本日の日程は全部終了いたしました。
 本日はこれをもって散会いたします。
   午後4時6分 散 会

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