平成24年12月定例会 第8回岩手県議会定例会 会議録

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〇20番(高橋但馬君) 民主党の高橋但馬です。
 このたびの12月定例会において、先輩、同僚議員各位より3度目の登壇の機会を賜りました。心より感謝申し上げます。
 また、東日本大震災津波から間もなく1年9カ月を迎えようとしていますが、被災地の自治体とそこで暮らす住民の方々は、今、あらゆる困難に直面しながらも、復興への道筋を歩もうとされています。この場をおかりしまして、被災された皆様並びに関係者の方々に、心よりお見舞い申し上げます。
 それでは、通告に従い順次質問いたします。一生懸命質問いたしますので、当局におかれましては、誠意あふれる御答弁をいただきますようお願いいたします。
 最初に、被災地における復旧、復興に係る県営建設工事についてお伺いいたします。
 現在、沿岸部を中心に、港湾などの復旧、復興工事が本格的に進められております。こうした工事の本格化に伴って、建設資材のセメントや生コンクリートの販売、出荷も大きく伸びてきております。一方では、需要の急増に伴い、生コンの原材料となる骨材と呼ばれる砂や砂利の不足が顕在化してきており、原材料不足を背景とした供給不安も台頭してきているところです。
 また、水産業復興を支える漁港においても本格的な復旧事業が進められていますが、県管理の31漁港に係る事業において、災害復旧に欠かせない波を弱めるための消波ブロック等の製作工事に必要なブロックヤードが不足しているのが現状です。そのため、漁港の背後の土地を借りるなどして対応していると聞いております。被災地のインフラの早期復旧に向け、必要な対策が早期に講じられることが望まれます。
 また、つくり置きができない生コンクリートは、遠方から運べないのが現状です。生コンは、時間がたつと化学反応を起こしコンクリートに変わってしまいます。工場では、購入者から注文に応じて、あらかじめ決められている配合で練りまぜているわけですが、この基準はJISによって定められていて、練りまぜを開始してから、通常は1.5時間、90分以内に荷おろしができるようにしなければならないとされています。このため、広大な岩手県では、内陸部から被災地である沿岸に生コンを運搬することができないのが実情です。
 他方、東日本大震災の被災地では、先ほど申し上げたとおり、コンクリートを大量に使用する港湾施設等の復興工事が、まさにこれから本番を迎えようとしています。
 先月、私は、被災地の県工事の災害防止協議会に出向き、現場の話を聞いてまいりました。契約当初18竏窒W竏鈀40Nの生コンの単価は1万2、200円でありましたが、現在の実勢単価は1万7、050円になっているとのことです。実に前年度比139%、約5、000円の値上がりをしている状況です。
 大量に生コンを使用する災害復旧工事では、工事期間中に5、000円の単価上昇に対応せねばならず、当初に予定した予算を大幅に超過してしまいます。公表されている山田地区の設計単価では、この価格高騰に合わせ、平成24年5月には1万4、700円、12月には1万7、200円と改定されていますが、さらに実勢単価が上昇していくことも考えられます。
 こうした中、東日本大震災での被害が大きい岩手、宮城、福島の3県については、公共工事標準請負契約約款第25条6項に規定するいわゆるインフレスライド条項を適用できることとされています。この条項は、予期することのできない特別の事情により、工期内に日本国内において急激なインフレーションまたはデフレーションを生じ、請負代金額が著しく不適当となったときに、請求日以降の残工事費用の増減額で請負代金額の変更を行う制度です。
 本県においても、平成24年2月に、各広域振興局長及び県土整備部所管の出先機関の長あてに、県営建設工事に係る東日本大震災の被災地域における賃金等の急激な変動に伴う請負代金額の変更等についての通知を行ったと聞いております。また、適用の条件としては、県内発注工事であること、平成24年2月20日以降に完成するものであること、工期が2カ月以上残っていることが必要と聞いております。
 しかしながら、ここで問題となるのが、スライド単価の適用は基準日以降の工事に係る分のみとされていることです。生コンを使用する工程がほぼ9割方終了し、業者側がスライド適用の申請をしないで、持ち出ししながら工事を続けてしまった場合、基準日前にさかのぼって適用することができないとなれば、事実上、こうした業者への救済策はないということになります。先ほども申し上げたとおり、インフレ条項の適用は、予期することのできない特別の事情があった場合に行われるものですが、条項の適用前に既に値上がりしたコンクリートを購入した代金の負担を強いられる、そして、それは業者のミスで起きているものではない、こうした状況は特別の事情が生じていると見てもよいのではないでしょうか。復旧、復興に向け一生懸命に取り組んでいる建設業者のためにも、かかった経費についてはさかのぼって適用できるようにするなど、県として、この非常時に見合った救済策を講じるべきと考えますが、御見解をお示しください。
 また、岩手県や福島県での工事や、国発注の工事でも同じようなことが起こる可能性があると考えられますが、これらにおいてはどのように対応されるのか、あわせてお示し願います。
 次に、障がい者就労についてお伺いします。
 本年9月の岩手県内における働く意欲を持つ障がい者の数は2、244人となっており、対前年比で15.3%の増加となっております。また、これに対する就職者数は、4月から9月までの累計で576人となっており、同様に前年比較で見ますと、41.2%の増加となっています。また、県立特別支援学校高等部卒業生の就職率も、平成21年度は20.5%、平成22年度は19.4%と、20%前後にとどまっておりましたが、平成23年度は24.7%まで増加いたしました。障がいのある方々の就労意欲の高まりが見てとれる状況となっておりますが、これは、平成18年4月の障害者自立支援法の施行も後押ししているものだと考えます。この支援法においては、障がい者の就労支援の抜本的強化が進められることとなりましたが、具体的には、新たな就労移行支援事業、就労継続支援事業の創設や雇用施策との連携強化といった内容が盛り込まれたところです。
 また、県においても、こうした法の施行を踏まえ、障がい者が希望する地域において経済的にも自立した生活を継続できるよう、一般就労への移行支援と福祉的就労の場における工賃水準の向上支援に取り組んでいると聞いております。
 このうち、一つは一般就労と言い、一般企業と雇用契約を締結の上、就労し、その対価として給与の支払いを受けるものです。平成24年6月1日現在の県内の民間企業における障害者雇用率は1.79%となっており、法定雇用率の1.8%はやや下回るものの、全国平均の1.69%を上回る状況になっています。また、障害者雇用率を達成した企業の割合も52.2%と、全国平均の46.8%を上回る状況となっています。
 二つ目は福祉的就労と言い、障がい者就労支援事業所と利用契約を締結の上、福祉サービスを利用しながら作業に従事し、その対価として工賃の支払いを受けるものです。県内就労支援事業所である就労継続支援B型事業所、授産施設及び地域活動支援センターにおける平成23年度の月額平均工賃は1万6、291円になっています。
 こうした状況を踏まえつつ、先日、県内のある障がい者支援施設の関係者からお話を聞く機会がありました。
   〔議長退席、副議長着席〕
 その施設では、就労継続B型の現員12名の平均年齢が60.3歳となり、年齢幅は43歳から77歳までと、全体として年齢層が少しずつ上がってきており、逆に介護が必要な方がふえてきているとのことでした。平均年齢が高くなり、また、希望される職種も容易に見つからないとなれば、就労につなげるのはなかなか困難であると考えます。また、地域移行の困難さからか、入所期間の長期化に拍車をかけている現状も見られます。
 私は、障がい者就労の促進に当たって重要なことは、社会連帯感に基づいて障がい者を受け入れるという風土をしっかりと醸成すること、また、ノーマライゼーションの理念の理解と具体化を社会全体で進めていくことにあると考えます。また、このためには、障がい者の地域移行を進めて、障がいに応じて福祉的就労の場を確保し、さらに一般就労へと進んでいくことができるような仕組みづくりが必要と考えます。
 そこで、まず、障がい者の地域移行と福祉的就労の促進について、基本的な考え方と取り組みについてお伺いします。その上で、一般就労についてはどのような具体的な促進施策に取り組んでおられるのかお知らせ願います。
 また、障がいのある人が地域で自立した生活を送るためには経済的な自立は不可欠であり、工賃の引き上げに向けた仕事の確保が大変重要となります。個々の就労支援事業所での仕事の受注量に限界があることが大きな課題となっています。共同受注の取りまとめの窓口の準備はどのようになっているのかについてもあわせてお示し願います。
 関連して、平成24年6月20日成立の国等による障害者就労施設等からの物品等の調達の推進等に関する法律が、本年6月27日に公布されました。障がいのある人の就労支援を行う施設や事業所が仕事の受注の機会を確保できるよう、供給する物品等に対する需要の増進等を図ることを目的としています。この法律の公布を受け、県がどのような調達方針を策定するのか、正直なところ、障害者総合支援法の施行のタイミングでもあるだけに、検討の時間が十分とは言えないのかもしれません。県として、現在どのように考えているのかお知らせ願います。
 次に、県有施設の利活用状況について伺います。
 あと3年と10カ月で、国内最大の国民スポーツの祭典である2016希望郷いわて国体が開催されます。本県では、平成23年3月11日に発生した東日本大震災津波から1年と9カ月、日々復興を目指し、全国から多くの支援を受けながら、安全の確保、暮らしの再建、なりわいの再生を復興の3原則に掲げて、県民一丸となって取り組んでいるところです。第71回国体は、復興への本格的な取り組みが進む平成28年に開催されることから、東日本大震災津波からの復興のシンボルとして位置づけられています。また、我が国最大のスポーツの祭典である国体を本県において再び開催することは、本県の競技力の飛躍的な向上やスポーツの一層の振興、発展はもとより、国体開催を通じて県民の健康と豊かな心を育み、岩手の歴史、文化、伝統や岩手の心を広く発信し、岩手の文化的魅力を高めることや地域の活力を高めていく、またとない機会となるものと期待されています。
 こうした中、このたび盛岡市では、岩手国体に向け、県立御所湖広域公園の広場を無償で借り受け、人工芝のサッカー場を整備する方針を固めたとの報道がありました。国体開催をにらんで、選手強化の環境づくりの一環として、サッカー競技ができる多目的運動場を整備する構想であり、御所湖広域公園の利活用を図る観点からも、ぜひ進めていただきたい事業だと考えます。
 また、御所湖広域公園内にある漕艇場ではカヌー競技、市立総合プールでは水泳、アイスアリーナでは体操、市立太田テニスコートではテニスと、中央競技団体の指摘事項はあるものの、スポーツ施設が集積する当該地域一帯を、国体開催までは選手の強化試合や練習に、国体期間中は練習会場に使用することは、選手強化やスポーツ振興の拠点化につながるものだと考えます。
 ところで、私は、県議会議員になって初めての一般質問で、県有施設の利活用状況として、多額の修繕費が見込まれ、平成16年度より休止になっているつなぎスイミングセンターの今後の活用方法について質問をいたしました。この質問に対し、当時の県土整備部長からは、つなぎスイミングセンターについて、平成16年度の休止後、ワークショップを開催し、地域の方々とともに跡地利用計画をまとめたが、その後のマーケティング調査で採算性の問題が指摘されたこと、並行して施設の処分、再整備について国と協議を重ねてきたが、国が定める処分制限期間が満了する平成28年までは県単独で実施せざるを得ない状況になっていること。以上のように、速やかな再整備が難しい状況にはあるが、処分制限期間が満了した後の利用計画について、それまでに、部分的に利用可能な施設の有効利用も含め、地域の方々とともに検討を進めていくこと。民間委託については、近傍に類似施設が整備されていることや施設が老朽化していることなどを勘案すると、スイミングプールとしての継続は難しいと考えていること等の答弁をいただきました。
 そこでお伺いいたしますが、その後の地域との検討状況や、施設の処分及び再整備について国との協議状況はどうなっているのかをお知らせ願います。
 私といたしましては、2016年の国体に向け、公園内に新たにサッカー競技が可能な多目的運動場が整備されることや、漕艇場ではカヌー競技が実施されることによってスポーツによる交流人口が大幅に増加し、多くの人々が御所湖広域公園に訪れることになるものと考えております。
 これまでの国体開催県の国体期間中の入り込み数の状況を見ますと、平成21年に開催されたトキめき新潟国体では、選手や監督、大会関係者、観覧者などを合わせて約77万人の方々が、また、平成22年のゆめ半島千葉国体では約69万人、昨年開催されたおいでませ!山口国体では約68万人の方々が開催地を訪れています。やはり国体は我が国最大のスポーツの祭典です。つなぎスイミングセンターの施設の処分、再整備について、国が定める処分制限期間が満了する平成28年までは県単独で実施せざるを得ない状況であるということは重々認識しております。平成28年は奇しくも希望郷いわて国体の開催年であり、多くの方々が開催地を訪れます。また、盛岡市が整備を予定している多目的競技場の向かいに、現状のような廃墟と化した施設があることもいかがなものでしょうか。つなぎスイミングセンターの活用について、県としてどのように考えているのかお知らせください。
 次に、観光振興について伺います。
 先月の16日に、盛岡市中央公民館におきまして、原発放射線による観光関係被害の損害賠償等に係る説明会が開かれました。この説明会において、東京電力株式会社東北補償相談センターは、東北5県における観光風評被害に関する賠償について、次のように述べています。
 弊社原子力発電所の事故により御迷惑と御心配をおかけしておりますことを改めて心よりおわび申し上げます。観光業に関する風評被害につきましては、東北地方以外から東北5県への観光が回避されたことについて、弊社事故との相当因果関係が認められる損害として賠償させていただきます。このように述べたところでありますが、この損害賠償の対象となるのは、東北5県に事業所が存在する法人または個人事業主で、主として観光客を対象として営業を行っている法人または個人事業主、例えば、ホテル、旅館、旅行業等の宿泊関連産業、レジャー施設等の観光産業、バス、タクシー等の交通産業、観光地における飲食業や小売業であります。
 東京電力による観光業者等への損害賠償の対象地域は、これまで福島県、茨城県、栃木県、群馬県の4県と、千葉県、山形県及び宮城県の一部の市町村に限られておりましたが、岩手県議会と関係団体によるたび重なる陳情活動の結果、対象地域が東北全体に拡大されたところであり、観光業もその復興に向けて着実な歩みを進めているところであります。
 しかしながら、東京電力株式会社が示した賠償期間は、東日本大震災津波が発生した平成23年3月11日から翌年の2月末までとなっています。この賠償期間について、私は問題があると考えます。この賠償は、あくまで福島第一原発事故により起こった風評被害に対する補償であります。賠償額の算定方法は、対象事業所に係る基準年売上高掛ける利益率掛ける本件事故以外の要因による売上減少率掛ける0.5となっております。平成23年度の売り上げに関しまして、震災直後の内陸宿泊施設のキャンセル数は24万人を超え、内陸部も深刻な経済の落ち込みによる二次被害が起きていました。これに対し、沿岸被災地への復興支援のために国内外から多くの方が訪れましたが、これら復興支援に来ていただいた方々は、被災地を助ける強い思いで来ていただいたのであり、観光で来たわけではありません。本当の観光業に関する風評被害が始まったのは、復興支援がなくなってきてからのことだと考えます。この点を含め、東京電力株式会社の観光風評被害に関する賠償について、県としてどのように対応していくお考えかお知らせください。
 次に、ツキノワグマ対策について伺います。
 ことしは例年以上に熊の出没情報が多かったところです。また、県内各地で多くの農作物被害、人身被害が発生いたしました。ツキノワグマの人里への出没要因は、ブナの実などの豊作、不作が影響していると言われていますが、近年のツキノワグマの餌を求めての行動圏は一層拡大してきているのではないでしょうか。
 WWF─世界自然保護基金では、ツキノワグマの行動圏について次のように記しています。ツキノワグマはお互いを排除する固定した縄張りを持たず、個々の行動圏が大きく重なり合うことが明らかになっている。そして、ほぼ決まった地域を行動圏とするが、ドングリなどの食物が不足すると、食物を求めて行動圏を広げる。その行動圏については、雄で平均100平方キロメートル、雌で平均40平方キロメートル。以上のとおりですが、他方、秋田県で行われた調査によると、平年は20ないし40平方キロメートルであった雌の行動範囲が、ブナの実やドングリが凶作の秋には100平方キロメートルを超えたことが報告されています。
 山手線の内側の面積はおよそ60平方キロメートルです。熊の大きな体は、多くのエネルギーを必要とするとともに高い移動能力を兼ね備えています。そして、縄張りを持たず、自由に移動することによって必要な食物を得ています。その時々で手に入る食物を求め、特に食料が不足するときには広い範囲を動き回ります。例年、山の食物が不足する夏、一部の熊は人里に出没し、果樹や飼料用トウモロコシなどを食害します。そして、秋になって山にドングリや木の実がなるようになると食害はおさまりますが、人里への出没がおさまらず、平常年の数倍のツキノワグマが出没することがあります。これが大量出没と言われ、社会的な問題となっているところです。
 このツキノワグマについては、我が国では個体群の絶滅が危惧されているところであり、本県においても、この捕獲については、野生生物保護の観点から、一定の個体数を守ることを前提にしています。ただし、本県を含む東日本は、生息している森林がおおむね連続しているため、環境省の絶滅のおそれのある地域個体群としてレッドリストには、下北半島を除いて地域指定はされていません。これに対して、西日本は、古くから進められてきた森林開発、そして戦後に進められた拡大造林等が熊の生息地を分断し、個体群を孤立させたと考えています。このように分断された個体群はほかのところに移動ができません。また、近親交配が続くと遺伝子の劣化が進み、絶滅してしまう可能性がより高くなるとされています。このため、西日本の地域はレッドリストに地域指定されているところであります。
 本県におけるツキノワグマの出没件数については、調査方法が平成23年度の年度途中から変更されたようですが、同一の調査方法のもとで比較可能な平成23年、平成24年の7月から10月の期間に限って見てみると、本年は昨年の828件を大きく上回る1、608件の出没情報が寄せられています。また、この人身被害、農業被害も現に発生しているところであり、県民の間には、住民の命と財産を守るための有効な手だてを求める声が強くあるところでございます。
 そこでお伺いいたしますが、まず、本県における近年の農作物被害、人身被害の発生状況はどうなっているか。そして、近年の熊の行動圏域、人里への出没原因についてはどのように分析しているのか。また、こうした被害の発生状況を踏まえ、県は、今後どのような対策を講じていく考えか、あわせてお示し願います。
 以上で私の質問を終わります。場合によっては再質問させていただきます。御清聴まことにありがとうございました。(拍手)
   〔知事達増拓也君登壇〕
〇知事(達増拓也君) 高橋但馬議員の御質問にお答え申し上げます。
 まず、障がい者の地域移行と福祉的就労の促進についての基本的な考え方、取り組みについてでありますが、障がいのある方の地域移行と福祉的就労を進めるためには、受け入れる場の確保はもとより、地域や事業所の方々の深い理解と、個々の障がい特性に応じて知識や能力を発揮できるためのきめ細やかな支援が必要であり、そうした体制が整うことにより、障がいのある方が地域の一員としてそれぞれの力を生かし、ともに助け合いながら生き生きと暮らすことができる、ともに生きる岩手が実現するものと考えています。
 このため、グループホーム等の住まいの場の整備を進めるほか、地域生活を支える生活介護事業所や就労支援事業所等の拡充を推進するとともに、福祉人材の養成及び資質向上に取り組んでいます。また、障がい者自立支援協議会においては、地域の福祉、医療、教育、労働等関係機関が連携し、障がい者個々の特性に応じたきめ細やかな支援を行っているところであります。こうした施策の充実を図り、今後とも、障がいのある方が、希望する地域において、必要なサービスを利用しながら生きがいを持ち、安心して生活できるよう取り組んでまいります。
 次に、御所湖広域公園のつなぎスイミングセンターの活用についてでありますが、平成16年に、施設の老朽化と利用者の減少により営業を休止し、その後の利用のあり方について検討を進めましたが、採算性からスイミングセンターとしての利用は困難であると判断し、平成20年度に大規模事業評価専門委員会に諮った上で、県として正式に廃止の方針を決定したところです。御所湖広域公園では、現在、乗り物広場やファミリーランドなどの公園施設の老朽化や利活用の状況などを調査し、重点的、効率的な維持管理や段階的な施設の更新について総合的に検討しており、この中でスイミングセンターの跡地利用についても考えていく予定です。
 次に、観光業の風評被害の損害賠償についてでありますが、今回の賠償方法については、東北5県の観光団体である全国旅館ホテル生活衛生同業組合連合会東北ブロック協議会と東京電力とがたび重なる交渉を行った結果、合意がなされており、これに基づき東京電力が東北5県を賠償対象地域に追加したところであります。
 こうした経緯を踏まえて、県としては、観光業への賠償が迅速に行われるよう、観光にかかわる幅広い対象者に対し、市町村及び観光協会等と連携して、事業者向けの説明会、相談会を開催するほか、賠償請求に係る広報資料を作成し、配布するなど、広く周知に努めているところであります。今後におきましても、早期かつ確実に支払いが行われるよう、観光団体等と連携して迅速な賠償請求を支援するとともに、あわせて個々の事業者の状況も踏まえながら対応してまいります。
 その他のお尋ねにつきましては関係部長から答弁させますので、御了承をお願いします。
   〔県土整備部長若林治男君登壇〕
〇県土整備部長(若林治男君) まず、インフレスライド条項の適用についてでありますが、復旧、復興工事が本格化する中、沿岸の一部地域におきまして、大量の生コンクリート需要に対応するため、骨材を県外から調達せざるを得ないなどの事情によりまして、価格が上昇していることは承知しております。このような建設資材などの価格上昇につきましては、労務単価や建設資材などの単価改定がなされた以降の残工事量に対し、改定後の価格によって設計変更を行ういわゆるインフレ条項の運用を本年2月20日に開始したところであります。現在継続中の工事におきましては、生コン等の資材調達の実情について受注者と十分協議しながら、受注者の不利益にならないように、インフレスライドの適正な対応につきまして柔軟な運用を進めてまいります。
 また、他県におけるインフレ条項の運用状況についてでありますが、国が策定したマニュアルを参考としておりますので、宮城県、福島県とも国の工事と同様な対応を行っていると聞いております。
 次に、御所湖広域公園のつなぎスイミングセンターについてでありますが、平成16年に休止して以降、ワークショップの開催やマーケティング調査を行いまして、採算性の面などから有料施設としての再開は断念いたしました。その後、取り壊し再整備につきまして、国との協議等を通じて検討を行った結果、財産処分の制限、財源などの課題がございまして、国が定める処分制限期間が満了する平成28年度以降でなければ困難と判断したところであります。再整備に向けまして、新たな利活用につきまして、地域や国との協議を進めようとしたやさきでありましたが、大震災が発生いたしまして、現時点では進んでいない状況となっております。
 現在、スイミングセンターの向かい側に盛岡市によるサッカー場の整備計画がありますこと、休止中の50メートルプールがニュースポーツ、バイクポロの練習場となっていることなどから、新たなニーズも生まれており、今後、国とも調整を進めながら、スイミングセンター跡地の有効な利活用につきまして、地域の皆様や関係機関と連携して検討を進めてまいります。
   〔商工労働観光部長橋本良隆君登壇〕
〇商工労働観光部長(橋本良隆君) 障がい者の一般就労促進のための具体的な施策についてでありますが、県におきましては、就業相談支援体制の確保、障がい者訓練の実施及び企業等に対する意識啓発を中心に取り組んでおります。
 就業相談支援体制の確保では、県が指定した県内9カ所の障害者就業・生活支援センターが、障がいのある方が抱える課題に応じて、就業に関する相談支援、障がい特性を踏まえた雇用管理に関する企業への助言及び雇用や福祉関係機関との連絡調整などを行っております。
 職業訓練では、県内の企業、社会福祉法人、NPO法人、民間教育訓練機関等地域の多様な委託先を活用し、障がい者の能力及び適性並びに地域の雇用ニーズに対応した委託訓練を実施しております。
 また、事務的職種の雇用を促進するため、特別支援学校生徒を職場実習で受け入れるほか、求職者を非常勤職員として雇用しております。
 意識啓発では、障がい者の雇用に積極的に取り組んでいる事業所に対する知事表彰や優良事例の紹介を県のホームページで行うなど、障がい者雇用のPRに努めているところでございます。
 引き続き、ハローワーク等関係機関と連携しながら、障がい者の一般就労が進むよう積極的に取り組んでまいります。
   〔保健福祉部長小田島智弥君登壇〕
〇保健福祉部長(小田島智弥君) 共同受注の取りまとめ窓口の準備状況についてでありますが、県では、福祉的就労に従事する方の工賃向上を図るため、障がい者就労支援事業所等に対して、中小企業診断士や商品開発の専門家等のアドバイザーを派遣するなど、事業所の経営改善や自主製品開発等に対する支援を行ってきたところであります。
 こうした取り組みの結果、平成23年度の月額平均工賃は、平成18年度から5年間で約18%増の1万6、291円となっておりますが、地域で自立した生活を送るためには、さらなる支援により一層の工賃の向上が必要と考えております。
 本県の事業所では、その規模等から、単独で企業等からの受注に対応できない場合が多いことから、共同受注窓口の設置は、こうした業務の受注に特に有効であると考えています。
 今年度策定する岩手県障がい者工賃向上計画におきましては、新たな共同受注窓口の設置を盛り込むこととしており、この受注窓口において、発注元となる企業のニーズの把握や事業所とのマッチングなど、具体的な取り組みを進めていきたいと考えております。
 次に、いわゆる障害者優先調達推進法に基づく本県の調達方針についてでありますが、地方自治法施行令において、障がい者就労支援事業所等の製品などを随意契約により発注できることとされており、本県では、平成21年度から、ハート購入として、事業所の製品や印刷物等の優先発注に率先して取り組んできたところであります。
 来年4月1日に施行される本法律は、民間企業に比べて競争力の弱い障がい者就労支援事業所に対し、国や地方公共団体等からの発注を一層推進するものであり、本法の趣旨を踏まえ、契約担当部局など関係部局との連携、調整を図りながら、現在の取り組みを一層充実する方向で検討してまいります。
 また、国から法施行までの準備スケジュール等が示されておりますが、国では、法施行に合わせて基本方針を策定する予定とのことであり、こうした取り組みに歩調を合わせ、本県の調達方針の検討を進めてまいります。
   〔環境生活部長工藤孝男君登壇〕
〇環境生活部長(工藤孝男君) まず、ツキノワグマによる被害状況についてでありますが、農作物被害は、デントコーンやリンゴを中心に、ここ数年は4、000万円台で推移しており、平成23年度は約4、700万円の被害が発生しております。
 また、人身被害は、平成5年度からの平均が年間12名程度であるのに対し、今年度は既に18名と、例年を上回るペースで発生しております。
 次に、行動圏域や人里への出没原因についてでありますが、山の実りが関係すると考えられておりますが、近年では、耕作放棄地の増加や里山の荒廃などにより、熊が人里近くまでおりてきやすい環境にあることや、狩猟者の減少により、銃で追われた経験がなく、人に対する恐怖心を持たない熊がふえたことなどが、出没の増加に影響しているものと認識しております。
 今後の対策についてでありますが、ツキノワグマの生息数は、平成21年度から24年度にかけて実施した大規模調査により、従来推定されてきた頭数より多いことが明らかになっており、また、人身被害が増加していること等に鑑み、今年度策定予定の第3次ツキノワグマ保護管理計画において、熊の捕獲頭数の上限を大幅に引き上げることや、平成6年度以降禁止してきた熊の春季捕獲について、地域を限定して認めることなどについて検討しております。
 また、熊が人里に近寄りにくい環境を整備するため、引き続き、生ごみ等の誘引物の適正処理や電気柵の設置、集落周辺の刈り払いなどについて、市町村と連携して取り組んでまいります。
 本県のツキノワグマ個体群は比較的安定しており、短期的に絶滅に瀕する可能性は低いと認識しておりますが、捕獲や餌の状況により常に生息数が変動するため、今後も個体数の調査を継続的に実施し、結果を保護管理計画や捕獲上限にフィードバックすることにより、保護と被害防止の両立を図ってまいります。
〇20番(高橋但馬君) ありがとうございました。
 まず、インフレ条項の件なんですけれども、先ほどの部長の答弁によりますと、インフレ条項適用のために協議をしっかりと業者側と進めていくというお話でありましたが、私の質問の部分というのは、これから業者等、インフレスライドを適用して、それから段階的に価格が上がったときに詰めていくという部分はいいんです、これからの部分はいいんです。もう既にとってしまって、もう進めてしまっている、それで、残り期間が2カ月もない工事であるとか、例えばもう七、八割生コンを打ってしまった、そういう業者、その業者というのは、要するに5、000円の価格の部分をもう背負ってしまっている。全て5、000円が価格に行くかどうかは別としてです。でも、背負ってしまっている。
 あともう一つ、沿岸で工事をやっている業者というのは、リアス式海岸で土地がないわけです。土地がないところで、生コンも入ってこない。例えばテトラポットを1日5個つくらなければいけないのを2個しかつくれないという状況であって、そこに、ただ、それをつくるための機械であるとか人であるとかというものは、5個つくるのと同じぐらいかかるわけです。プラス、例えばそれを遠方の広いストックヤードでつくって持ってくるため、その運搬費は見られない。となると、全て業者側の持ち出しになってしまうということになるんですね。
 県のほうでも、やっぱりこのなりわいの再生を掲げているという部分もありますし、業者としても、円滑な復興工事を進めるために我慢している部分もあると思うんです。ただ、やっぱり県としても、今回の工事というか、東日本大震災が起きてしまってこういう状況になっているわけですから、この非常時という部分、そして、これは特別な事情だという部分をもっと弾力的に考えていただきたいと思っています。
 そこで、専門的なことは部長に答弁をお願いすることとしますけれども、このことについて、知事に、県内の、やはりすそ野の広い建設業でありますから、それを少しでも救済するために、県としてこのように取り組みたいというお考えを示していただければと思います。
 あと、もう一点なんですけれども、つなぎスイミングセンターの跡地の部分ですが、これは、つなぎスイミングセンターにかかわらず、県の県有施設の利活用については、多分同じことが言えるんだと思うんです。ただ、今回に関してはたまたま、まだ報道での話でしかないので私も確定的なことは言えないのですけれども、もしあそこに多目的の運動場ができるとなると、今まで、あそこに漕艇場とかはありますが、観光客であるとか、利用していた方が通過していた場所だったかもしれないのですが、あそこに人が集まるということになるわけです。そうなったときに、やっぱりその背後に、どうしても老朽化で、もう色も剥げて、いろいろ色落ちとかがしている状況が見える、そして、何か鬱蒼と林が茂っている状況のあの県の施設を見たときに、逆に、岩手県は何をしているんだと思う観光客とか施設利用者が出てくると思うんですよ。
 それをどうにかするためにも、ただ、平成28年まで国に対して、28年前にあそこを例えば整備したり、手を加えてしまうと、その分のお金プラス償還金を国に払わなければいけないというのもわかります。なので、国体を機にという部分でもいいですので、県として、その方向で前向きに検討いただきたいと思います。その辺をお答え、お願いします。
〇知事(達増拓也君) 建設業者の経営が成り立つような支援ということでありますけれども、県営建設工事において、実勢価格を反映した設計価格とするために、設計労務単価や建設資材価格などが上昇した場合には、即時積算に反映させること、工事請負契約締結後に直近の単価適用年月で変更できること、被災地以外からの労働者を確保するために必要となる宿泊費や交通費など、実際にかかった費用を設計変更において計上できることなど、実情に即した対策を講じ、随時、特例通知として発表しているところであります。
 一日も早い復旧、復興事業をなし遂げるためにも、県内建設企業の果たす役割は極めて重要でございまして、今後とも、建設業者の経営が十分成り立つよう、実勢価格を反映した契約内容が確保されるように取り組んでまいります。
〇県土整備部長(若林治男君) 今、インフレスライド条項のお話がありまして、実際、何が今一番困っているかというものを把握しております。具体でいきますと、平成23年度の末に発注した工事において、生コン単価は1万2、000円ぐらいなんですけれども、それが今、工期がほぼ今年度末なんです。そこが5月、6月あたりから本格的に生コンを使い始めたというところで、ここの時点でもう単価差があった状況であります。今まだやっているところもあります。
 それは、やはりやむなき状況だと思いますので、受注者のほうに、既にこちらのほうからも、どういう工程、例えば、何月には何立米ぐらい打ったのだろうかというものを相談しながら、そこに対応しようということに今しておりますので、そこはそういう形で、明確に遡及適用と言えるかどうかわかりませんけれども、実際、工程上こういう形で使いましたというのがわかれば、それはきちんと対応していきたいと思っております。
 なお、受注業者のほうにはそれのお知らせをしておりますので、即、担当と詰めていきたい、対応させていただきたいと思います。
 それから、つなぎスイミングセンターでありますが、恐らく多目的なグラウンドができますれば、駐車場が多分なくなるんですね。若干少なくなるという状況なので、今のセンターのところに駐車場が少し必要になるということもありますし、どうしても平成28年度まではそういう状況があって、単独費にしても、取り壊し費については起債がきかないとか、いろいろ制約があって難しいのですが、私が考えるに、やっぱりスライダーのあの大きなあれがちょっと目に余る部分があるので、そのところの取り壊しについては、今後いろいろ相談しながら、例えば平成28年度の早いうちに壊すとか、そういう形で、とにかく限られた財源の中でどうやって対応するかは、皆さんとともに進めていきたいと思いますし、その後、どういう形で利活用するかを含めて、御相談を申し上げながら進めてまいりたいと思っております。
〇副議長(柳村岩見君) この際、暫時休憩します。
   午後2時51分 休 憩
出席議員(48名)
1  番 高 田 一 郎 君
2  番 佐々木 茂 光 君
3  番 小 泉 光 男 君
4  番 清 水 恭 一 君
5  番 名須川   晋 君
6  番 後 藤   完 君
7  番 佐々木 朋 和 君
8  番 佐々木   努 君
9  番 軽 石 義 則 君
10  番 神 崎 浩 之 君
11  番 城 内 愛 彦 君
12  番 福 井 せいじ 君
13  番 吉 田 敬 子 君
14  番 木 村 幸 弘 君
15  番 久 保 孝 喜 君
16  番 小 西 和 子 君
17  番 岩 渕   誠 君
18  番 郷右近   浩 君
19  番 喜 多 正 敏 君
20  番 高 橋 但 馬 君
21  番 小 野   共 君
22  番 高 橋   元 君
23  番 高 橋 孝 眞 君
24  番 岩 崎 友 一 君
25  番 工 藤 勝 博 君
26  番 及 川 あつし 君
27  番 飯 澤   匡 君
28  番 関 根 敏 伸 君
29  番 工 藤 大 輔 君
30  番 高 橋 昌 造 君
31  番 五日市   王 君
32  番 小田島 峰 雄 君
33  番 大 宮 惇 幸 君
34  番 熊 谷   泉 君
35  番 嵯 峨 壱 朗 君
36  番 工 藤 勝 子 君
37  番 斉 藤   信 君
38  番 小野寺   好 君
39  番 佐々木 順 一 君
40  番 及 川 幸 子 君
41  番 伊 藤 勢 至 君
42  番 佐々木   博 君
43  番 田 村   誠 君
44  番 渡 辺 幸 貫 君
45  番 樋 下 正 信 君
46  番 柳 村 岩 見 君
47  番 千 葉   伝 君
48  番 佐々木 大 和 君
欠席議員(なし)
説明のため出席した者
休憩前に同じ
職務のため議場に出席した事務局職員
休憩前に同じ
午後3時13分 再開
〇副議長(柳村岩見君) 休憩前に引き続き会議を開きます。
 日程第1、一般質問を継続いたします。高橋孝眞君。
   〔23番高橋孝眞君登壇〕(拍手)

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