平成24年12月定例会 第8回岩手県議会定例会 会議録

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〇6番(後藤完君) 希望・みらいフォーラムの後藤完でございます。本定例会におきまして一般質問のお時間をいただきましたこと、議員の皆様方に感謝を申し上げるものであります。
 東日本大震災津波から1年と9カ月がたとうとしております。今、一日も早い復旧、復興に全力を傾注していかなければならないという思いでいるところでありますが、国においては、予算執行に不可欠な公債発行特例法案がやっと成立の運びとなるなど、今まで地方交付税の配分が延期され、政府のしわ寄せが地方に及んでいることに非常に憂慮したところであります。また、地方を守るために早い時期の成立を望んでいたところでもあります。
 それでは、通告順に質問させていただきます。
 今まさに日本社会の持続可能な体制を取り戻し、日本経済を再生させるための経済再生戦略が求められておりますことは、御案内のとおりであります。このような状況の中にありまして、政府・与党は、予算編成の数字合わせやその財源の確保に追われ、政権公約でありますマニフェストの多くは先送りとなっているところでもあります。
 後期高齢者医療制度の廃止も、医師不足の解決策も、年金改革もなかなか進まない状況にあったり、手つかずの状態となっているところであります。また、マスメディアの批判も増大するばかりでありますが、それにつきましても、報道は政府内の足並みの乱れや発言の揺れ、財源問題を追及するばかりで、日本をどうしていくのかといった観点からの提言や真実の報道がほとんどない状況なのであります。このような事態に陥りましたことは、政府・与党がみずからのマニフェスト等の意味を十分に理解しておられないことに大きな要因があったのではないかと思うものであります。
 もう一つの問題点を挙げるといたしますれば、前政権の利害調整型政治にかわって、民意を吸収するシステムをまだ構築できていない点であります。そのため、勢いメディアで目立つ場当たり的なパフォーマンスばかりに走り、肝心の政策形成がおろそかにされてしまう傾向が出てきたことにあると思うものであります。
 今般の税と社会保障の一体改革に当たりましても、拙速に消費税の増税を優先する対応をとり、国民的な議論をせずに場当たり的な手法に終始しましたことは周知のとおりであります。
 また、TPPの交渉参加問題にいたしましても、今の日本の農業はこれに対応できる体力がないにもかかわらず、十分な国民的議論も、農業政策を顧みることもないままに決断しようとしていること、そして、医療や食の安全、共済、公共事業など国民生活への多大な影響が懸念される中で、無理やり推進していこうとする姿勢にあります。
 さらには、震災における原発事故によって放射性物質による汚染は想像以上のもので、さらに拡散し、拡大されているところでもあります。このような状況下におきまして、原子力発電の再稼働が果たして国策としてベストの対応なのか、慎重な対応が望まれるところであり、まさに脱原発に対する基本的な方針を打ち出し、国民的な議論の中で、段階的な解消を図っていくことが重要ではないのかと考えるものであります。
 もう一つ重要となりますのは、地域主権という考え方の推進であります。具体的には、自治についての基本理念である地域の問題はできるだけ地域住民で決定いたし、それが難しい場合は、包括する自治体や国、または議会等に委ねるという考え方、まさに補完性の原則に立脚して、国や都道府県の生活にかかわる行政サービスなど、すべての事務事業を原則として基礎自治体に移譲し、財源につきましては、義務教育、社会保障関係を除き、地方が自由に使える一括交付金として交付することにし、地方交付税は財源調整と財源保障機能を一層強化した新たな制度として創設されるべきものと思っているところであります。いろいろと事業仕分けなることも実施されたところでありますが、個別地域の問題が次々と出てきておりまして、これは、地域の事情が異なるにもかかわらず、あらゆる行政を中央政府の監督行政や補助金行政で縛っていくこと自体に無理があったことを示しているものであります。
 このような時代の転換点におきましては、国が個別地域の問題にかかわっているだけでは大きな戦略的転換はできないと思われるものであり、大胆に地方に権限と財源を移譲し、国全体を左右する政策に専念できるような体制にすることが肝要と考えるものであります。今、政局が混迷している状況下にありまして、知事におかれましてはいち早い対応を表明され、災害の復興を第一に政策展開されることを県民に対し意思表示をされたところであります。
 そこで知事にお伺いします。税と社会保障の一体改革と消費税増税、環太平洋パートナーシップの交渉参加、脱原発と再生可能エネルギー等の重要政策に対する地方行政のトップとしての基本的な考え方をお伺いいたします。
 次に、6次産業化のあり方についてお伺いします。
 当初、戸別所得補償制度は、莫大な財政負担を必要とすることも考えられますので、納税者や国民の合意が得られることが求められていたところであります。そこで、この制度を政策にどのように位置づけ、支給をどのような目的で行うか、また、どのような関連政策とともに展開すべきなのか、いろいろ議論があったところでもあります。そして、農林漁業の活性化と農山漁村の再生を含めたネーミングが検討されました結果、農林漁業を取り巻く経済的、社会的な状況を踏まえ、これまでの大規模効率化路線とは異なる1次産業掛ける2次産業掛ける3次産業で6次産業が打ち出されてきたところであります。
 6次産業化という用語は、今村東京大学名誉教授が提唱したものであります。その理念は、農業が1次産業にのみにとどまるものではなく、農畜産物の加工、食品製造業等の第2次産業や卸売業、飲食業、観光、宿泊業などの第3次産業まで踏み込んだ農企業の多角化と農業の総合産業化を展開することによって農村に新しい価値を生み出し、女性や高齢者にも新たな就業機会をつくり出すことができるとされていたところでもあります。これは、農業そのものの6次産業化というよりも、広い意味での農山漁村の6次産業化を実現しながら、地域での新たな業態への取り組みや近隣地域との分業や連携を通して、付加価値のより多くの部分を、首都圏のみならず、その地域に帰属させる地域自立経済圏の確立を目指すとしたものと聞いております。
 このため、個々の経営体がある程度大規模化し、6次産業化するスタイルと、卸売業者や食品メーカーがみずから農業に参入する方法もあれば、農家と栽培契約を結んで対応する形態もあると思われます。あるいは農家自身や農協がコーディネーターとして個々の農家を取りまとめて、産地全体で体制整備する方向もあると思います。いずれのスタイルでも地域ブランドの確立を目指し、地産地消だけではなくて直売所やインターネットなどを利用し、これを進める必要があります。当然のことながら、県においては、経営の高度化や雇用の創出を目指しました6次産業化誘導への各助成措置を講じられておりますが、農業者がスムーズに対応できるメニューとなっておられるのか、地域の状況に応じた内容となっておられるのか、現在の進捗状況と今後の推進の見通しについてお伺いいたします。
 次に、食の安全と消費者への信頼回復についてお伺いします。
 まず、売り上げと所得の低下という厳しい状況下にあります日本農業の再生を図るためとして、今般、直接支払制度や6次産業化の推進とあわせ、食品の安全と消費者の信頼確保が重要であると指摘されているところでありますが、昨年の東日本大震災津波における東京電力福島第一原子力発電所事故による食品の安全と消費者への信頼確保をめぐるいろいろな議論がある中で、10年ほど前のBSE対策以来の一連の農政のあり方や、その改革の手法について再検討がさらに必要だと言われているところであります。
 東日本大震災津波は農業にも多大な被害をもたらしたところでありますが、特にも、原発事故によりまして環境中に放出されました放射性セシウム137は、広島型原爆の168個分との試算があるところであります。しかし、事故発生の初期段階において、原発事故や放射性物質の飛散の状況につきまして情報が的確に国民に伝達されなかったことから、国産農産物の安全性に対する信頼感が揺らがされ、その不安感は、被災地の農林水産物を中心に買い控えと価格低落を招いている状況にあります。
 また、日本産を輸入していた諸外国の過剰な輸入規制措置が継続されているところでもありますが、食品の安全と消費者の信頼回復ができなければ、日本の食料、農業、農村の再生は難しいとされており、放射性セシウムの半減期が約30年と見込まれますところから、相当長期にわたる悪条件、悪影響に対処していかなければならないとされているところでもあります。
 こうした状況を踏まえまして、今、岩手の農畜産物をどのように消費者にアピールしていくのかが問われているところであり、まさに食の安全・安心を発信し、最善の努力をすべきときでもあると思われますが、県として、風評被害防止と食の安全に対して、長期的な対応を含めてどのように考えておられるのかお伺いいたします。
 次に、放射性物質による汚染状況と除染対策についてお伺いします。
 政府は、先般、革新的エネルギー環境戦略の閣議決定を事実上見送ったところであります。2030年代に原発稼働ゼロを可能とするとの目標を盛り込んだ新戦略ではありましたが、そもそも、核燃料、サイクル継続の矛盾を含んだ曖昧さが目立つものとなったところでありました。特にも、経済界や関係自治体の反発、原子力協定を結ぶ米国の懸念などを背景に閣議決定に至らなかったものであります。
 このような状況下ではありますが、今、原発事故の教訓を踏まえまして、原発ゼロの方向性を目指すのは当然のことと思われます。これを踏まえ、放射性物質による汚染状況、除染対策について何点かお伺いいたします。
 まず、放射性物質で汚染されました農林業系副産物の焼却についてお伺いいたします。
 汚染された牧草等については、一時保管が長期化した場合、火災や腐敗等の問題が生じるおそれがあることから、処理においては適正かつ早急に実施することが必要とされております。このため、保管が行われている市町村では、国の委託事業や県の補助事業を利用いたしまして、一般の可燃性廃棄物との混合焼却を実施し始めているところであります。一般の可燃性廃棄物との混合焼却を行うと、放射性セシウムが拡散するのではないかと心配する声もありますので、これらについての理解を深め、その結果のもと、保管されている農林業系副産物の処理を急ぐべきと考えられますが、混合焼却への住民理解と今後の焼却処理の見通しにつきましてお伺いいたします。
 次に、放射性物質の食品への影響について伺います。
 1キログラム当たり100ベクレルを基本とする食品の放射性セシウムに対する新基準値が4月から適用されておりますが、一部企業等においては国の基準より厳しい基準値を設定いたし、独自の販売を行う動きが見られるところであります。基本的に商行為は自由でありますことから、こうした取り組みを一概に否定することはできませんが、こうしたゼロに近ければ近いほどいいという考え方は、基準値以下の安全性が確認されている食品につきましても危険性が残っているとの誤解や風評被害を生むものと危惧されるところであり、生産県であります本県にとりましても死活問題であろうかと考えるところであります。基準値以下の食品は、食の安全上、何ら問題がないのだといった考え方を、まずは県民にしっかり浸透していくことが食に対する安心感を醸成し、ひいては風評被害の防止や農林水産業や食品産業の振興につながるものと考えるところであります。
 そこでお伺いしますが、県は、100ベクレルを基本としている現行の基準値を、食の安全・安心の面からどのように捉えているのか、また、そうした考え方をどのようにして県民に周知されていくのか、あわせてお伺いいたします。
 次に、放射性物質の基準値超え品目に対する対応についてお伺いいたします。
 さきに国の原子力災害対策本部より、原子力災害対策特別措置法に基づく変更指示があったところであります。岩手県には、9市5町に対し、露地において原木を用いて栽培されましたシイタケの出荷を差し控えるよう要請があったところであります。食品中の放射性セシウムの新規制値が本年4月1日から1キログラム当たり100ベクレルとなったこともあり、東日本のシイタケ栽培に大きく影響を及ぼしているところであります。また、シイタケ栽培には原木栽培と菌床栽培がございますが、キノコへのセシウム移行が顕著な原木や菌床用のおがくずに対しましては、食品の暫定規制値とは別の150ベクレルという指標値を林野庁が設定したところであります。4月からは原木、ほだ木の指標値が原則50ベクレルに引き下げられ、超えた場合は、生産者に対して使用自粛を要請することとしております。全国2位の7、135トンのシイタケ生産量の本県では、50ベクレルを超えるほだ木が365万トンと見込まれており、この処分につきましては、市町村に対し、県が処分費用を全額補助することとして、既に予算措置しているところであります。
 そこでお伺いします。原木シイタケの生産再開のための残る大きな課題は出荷制限の解除であると考えますが、今後、どのように出荷制限の解除に向けて取り組まれていかれるのかお示しいただきたいと思います。
 また、県内、大川、胆沢川、広瀬川、砂鉄川等から採取されました淡水魚、ウグイ、イワナ、ヤマメ等について出荷制限指示が継続されておりますが、今後、地元漁協に対してどのようなモニタリングをし、情報を提供していかれるのかお伺いします。
 あわせて、野生キノコやコシアブラ、ウルイ、ゼンマイ、ワラビ、セリ等の山菜に対する情報公開をどのように進め、また、産直等販売施設に対する指導をどのように実施されていかれるのかお伺いいたします。
 さらに、東京電力に対する賠償請求をどのように進めていくのか、あわせてお伺いいたします。
 次に、災害廃棄物の広域処理の現状と復興資材の活用方法についてお伺いします。
 大量に発生した災害廃棄物は、岩手県内の施設だけでは期限までに処理し切れないことから、広域処理をお願いしなければならないのですが、放射性物質に対する住民の不安の声などにより、受け入れが難航していたところであります。最近では、試験焼却や本格処理が開始されたというニュースが連日のように報道されているところでございますけれども、一方、県議会には先月末現在で968通の広域処理反対の陳情書が寄せられていますし、県にも反対の電話などが相当数寄せられているとお聞きしているところであります。こうした安全に対する疑問に応えるためにも県はしっかりと検査し、その結果を公表していくことが必要だと思いますが、広域処理をお願いしている災害廃棄物の安全はどのように担保されているのでしょうか。また、現在の広域処理の進捗状況はどのようになっておられるのか、また、今後の課題は何かについてお伺いいたします。
 そしてまた、国土交通省は3月27日、東日本大震災津波で発生した瓦れきや津波で海から陸上に打ち上げられた残留物のうち、コンクリートくずや土砂について、放射線や有害物質による汚染のない一定の品質基準を満たしたものに限り、宅地の造成に有効活用できるとするガイドラインを作成したところであります。これから本格化いたします宅地造成に有効活用することで、瓦れき処理の促進につながるとしております。造成の盛り土として活用できるのは、コンクリートくずと混合物から分別して取り出した土砂であり、ダイオキシンや原発事故に伴う放射性物質に汚染されていないこととされているところであります。今、不燃物の県内外処理が進まない状況下にあって、このような処理が可能であれば、今後の対応にも弾みがつくものと考えられますが、公共事業のみならず造成分野にも普及させることが効果的と考えます。国の指針を受け、公共事業や造成分野でコンクリートくずや土砂をどのように利用していくつもりかお伺いいたします。
 次に、被災者への支援情報の強化についてお伺いいたします。
 東日本大震災津波から1年と9カ月経過しようとしておりますが、現在、内陸や県外で生活されている被災者は6、000人超と聞いております。このうち県外には40都道府県に1、600人以上が避難されていると言われております。これらの数値は、全国避難者情報システムに任意で登録しておられる被災者のほか市町村が独自に取りまとめたものであり、実数はさらに多いものと予測されるものであります。
 避難者の方々は、復興の進みぐあいや見通しを見きわめた上で地元に戻りたいと考えている人も多いと聞いております。また、地元の復興の状況や雇用についての情報を知りたいという気持ちが非常に強いと言われております。県や被災市町村においては、行政情報や復興新聞を被災者に郵送するなど、情報提供に取り組んでいるところでありますが、被災者がどんな情報を求めているのか、ニーズを把握する必要があるのではないでしょうか。県外避難者への情報の共有とふるさとへの回帰について、県は各市町村と今後どのように進めていかれるのか、基本的なお考えを伺います。
 次に、被災者こころのケアセンターの開設と今後の対応についてお伺いします。
 県におかれましては、東日本大震災津波で被災されました人の心のケアに当たる地域こころのケアセンターを、3月28日、大船渡、釜石、宮古、久慈の沿岸4地域に開設したところであります。臨床心理士などの専門家が各地域センターに常駐した上、来所等による相談や、保健師、看護師等のチームが仮設住宅を訪問し、市町村や関係機関との連携のもと、被災者の支援を行っていると聞いております。県内外からの応援医師によるこころのケアチームが3月末で撤退するに当たって、この間の効果的な配置として評価するものであります。被災者が希望を持って生活ができるよう、支援を必要とする方の情報を引き継ぎ、相談を継続していく必要があると思いますが、県として、今後、被災者こころのケアセンターをどのように活用し、地域住民の方々の心の健康の支援にどのように取り組んでいかれるのかお伺いいたします。
 次に、集落営農への経営基盤強化の支援充実についてお伺いします。
 農林水産省は2月1日現在の集落営農実態調査の結果を公表いたしたところであります。これによりますと、集落営農はほぼ横ばいでありますが、法人数は10.7%増加し、法人割合も17.5%に拡大されているところであります。1集落営農当たりの平均農地面積は33.9ヘクタールとなっているところでありますが、一方、主たる従事者がいない組織が2割という、人材の確保が課題となってきている状態でもあります。経営基盤の強化や担い手確保など、地域、組織の実態に応じたきめ細やかな支援の拡充強化が求められているところでありますが、集落営農は、高齢化で担い手が不足する地域などで地域農業の担い手として大きな役割を果たしているところでもあります。また、景観の保全や農村文化の継承、農村コミュニティの維持など、多面的機能の発揮にも大きな役割を担っているところであります。こうした状況を踏まえ、今、集落営農のあり方をどのように捉え、どのような対応をされていくのかお伺いいたします。
 次に、震災関連による消費生活相談についてお伺いいたします。
 県民生活センターのまとめによりますと、昨年度の県内の消費生活相談のうち、震災に関連すると思われるものが531件と報告されたところであります。中には被災者をターゲットとした、震災でお金に困っている方にお金を貸しますとの勧誘から、法外な利息を請求されたものなど、悪質な事案も報告されているところであります。これはあくまでも窓口に生活相談されたものにすぎず、実際にはさらに多くの問題や悩みを抱えている方々がいるものと想定されるものであります。今後も震災に便乗した悪質商法に十分な注意が必要と考えるものでありますが、県として、被害の未然防止のため、各市町村や関係機関等とどのような体制づくりをし、対応されていかれるのか、また、情報の共有をどのように進めていかれるのかお伺いいたします。
 次に、被災地の雇用拡大についてお伺いします。
 東日本大震災津波で被災しました岩手、宮城、福島3県の沿岸部などを対象といたします失業手当の給付延長措置が平成24年9月30日で終了となったところであります。しかし、被災地での求人と求職のミスマッチが依然として続く中で、求職活動は難航している状況にあります。岩手労働局の発表によりますと、昨年10月からことし9月までに失業手当の延長措置を終えたのは本県では4、376人、このうち就職されましたのは3割程度とされています。また、延長給付を受けていた方のうち約7割は女性というのも、もともと沿岸部の基幹産業であります水産加工業に従事されていたことによるものであり、早い時期の再就職を希望されているところであります。緊急雇用や未経験の仕事にも取り組み、被災者自身が地域の再建にかかわる仕組みをつくることが重要とされてはおりますが、今、一番大事なのは、職業訓練など就業支援の強化ともされているところであり、雇用不安が被災者の生活再建と地域の復興に障害となることのないよう、環境整備を進めることが急務と思われます。
 そこでお聞きします。被災者の救援措置として、雇用の回復を今後どのように進められていかれるのかお伺いいたします。
 最後に、今、まさしく国内にあっては政局が不安定にあり、国外においても政治緊迫が続くなど、内外ともに情勢が厳しい状況にあります。このような状況下で何をなすべきか。大震災の復旧、復興に全力で取り組むことが最大の課題だと思います。このことが県民の安全・安心の確保に結びつくものと考えます。知事におかれましては、引き続き英断をもちまして県政に当たられますよう御要望を申し上げ、質問を終わります。ありがとうございます。(拍手)
   〔知事達増拓也君登壇〕
〇知事(達増拓也君) 後藤完議員の御質問にお答え申し上げます。
 まず、税と社会保障の一体改革等についてでありますが、消費税増税については、増税によって日本経済全体が失速すれば、復興そのものが困難となる可能性がありますことや、増税の時期が本県の復興計画における本格復興期間に重なることで、被災者の暮らしの再建やなりわいの再生の妨げとなることを懸念しております。
 社会保障制度改革については、高齢化が進む被災地を初めとする地方においても、子供から高齢者まで全ての人々が、住みなれた地域で安心して、かつ、生き生きと暮らすことができるような制度の構築が急務であると考えます。
 環太平洋パートナーシップ協定については、国において、成長戦略上どう位置づけるのか、関税撤廃がどのような効果を有するのか、農林水産業を初めとした必要な国内対応策をどう講じるのかなど、交渉に参加する前に行われるべき基本的な検討、議論が十分に行われていない現時点では、TPP交渉への参加には反対であると考えます。
 原発については、原発事故以降の国民の問題意識の深まりや再生可能エネルギーへの新たな意欲の高まりを踏まえ、原発のない社会の構築が進むよう、こうした意識の変化を極力生かしていくような取り組みが求められていると考えます。
 次に、災害廃棄物の広域処理についてでありますが、国が定めた災害廃棄物の放射性物質濃度は、安全に埋立処分できる8、000ベクレル以下を基準としていますが、ほとんどの受け入れ自治体では、発災前の基準である100ベクレル以下を採用しています。
 搬出に当たりましては、放射性物質濃度に加え、空間線量も測定し、問題がないことを二重に確認しており、これまで安全に焼却、埋立処理が行われているところであります。
 また、進捗状況についてでありますが、木くず、可燃物については6都県で本格受け入れが始まっており、県内処理と合わせて、おおむね期限内処理のめどが立ったところであります。
 さらに、県内で全量処理が困難である不燃系混合物については仙北市で、漁網については米沢市と金沢市で、それぞれ処理が始まったところであり、引き続き、国と連携しながら、期限内に処理が完了するよう努めてまいります。
 次に、被災地の雇用回復についてでありますが、本年10月の雇用情勢は、沿岸部の有効求人倍率が6月以降5カ月連続で内陸部を上回るなど改善してきておりますが、職種によって、量的または質的なミスマッチが生じており、マッチングの促進が課題と認識しております。
 県では、これまで、雇用回復のため、緊急雇用創出事業により当面の雇用の場を確保するほか、沿岸地区の就職面接会の実施回数をふやすとともに、あわせて、職業訓練の拡充を図り、被災者の就業促進に努めてきたところであります。
 一方で、雇用保険の給付終了後、就職に至っていない方も多いことから、ハローワークでは、担当制により、個別事情を踏まえた職業相談の実施や専門の相談員による仮設住宅等への出張相談を継続しているところです。
 県としては、今後も、復旧、復興に向けた建設機械等の操作資格を取得する特別訓練コースの実施や、雇用の需要が見込まれる介護福祉分野の職業訓練コースの充実に努めるとともに、関係機関と連携して、就職面接会の開催や、きめ細かな就職相談によりマッチングを促進し、あわせて、事業復興型雇用創出助成金の活用などによる長期安定的な雇用の創出を図り、被災者の雇用の回復に取り組んでまいります。
 その他のお尋ねにつきましては、関係部長から答弁させますので、御了承をお願いします。
   〔農林水産部長東大野潤一君登壇〕
〇農林水産部長(東大野潤一君) まず、6次産業化のあり方についてでありますが、県では、6次産業化の推進に当たり、基礎的なノウハウ等を習得するための研修会の開催や、事業計画の策定等を支援するためのいわて6次産業支援センターを核とした経営相談、具体的な事業展開への支援のほか、さらには、商品開発、販路開拓のための専門家の派遣や商談会の開催など、普及啓発から事業化まで、生産者の発展段階に応じた支援をしております。
 例えば、西和賀地域での特産のワラビを活用した菓子製造や、二戸地域での地鶏を活用したギフト商品の開発などの事業を支援しており、今後におきましても、6次産業化に意欲を持つ生産者が、地域の特色や強みを生かしながら、発展段階に応じた取り組みが進められるよう支援し、6次産業化のさらなる拡大と定着を図ってまいります。
 次に、食の安全と消費者の信頼回復についてでありますが、県では、これまで、放射性物質影響防止のための生産管理対策の周知徹底や牧草地の除染、牛肉の全頭検査、原木シイタケの全戸検査、米、大豆、野菜、魚類等の計画的な検査の実施など、消費者に提供する県産農林水産物の安全の確保に努めてまいりました。
 また、放射性物質の検査結果は速やかに公表するとともに、本県の食の安全確保のための取り組みをアピールする消費者向けの知事メッセージの発信や、県内外のイベントでの知事、副知事によるトップセールス、物産展や商談会での情報発信など、風評被害防止に取り組んでまいりました。
 今後とも、こうした取り組みを継続するとともに、新たに駅や空港などの広報媒体等を活用したPRや、風評が強いと言われる関西圏等での商談会の開催にも取り組むなど、県産農林水産物の安全の確保と消費者の信頼確保に努めてまいります。
 次に、放射性物質の基準値超え品目についてでありますが、シイタケの出荷制限の解除につきましては、林野庁からの助言を受けながら、まずは、基準値超過の生産者が少ない盛岡市を対象に、必要な調査の実施や基準値超過シイタケが流通しないための対策等の検討を進めており、さらに、林野庁と協議し、できるだけ早期に出荷制限が解除されるよう取り組んでまいります。
 また、出荷を制限しているウグイ、イワナ、ヤマメにつきましては、毎月1回、地元漁協の協力を得て検体を採取し、モニタリング検査を実施しており、結果が判明し次第、地元漁協へ情報提供するとともに、県のホームページ等で公表しております。
 野生のキノコ類及び山菜類につきましては、食品取扱事業者としての取扱品の安全性確保の観点から、産直施設、卸売市場及び集出荷団体に対して自主検査の実施を要請するとともに、自主検査で50ベクレルを超過した場合には、県が精密検査を実施し、その結果は、速やかに関係者に情報提供するとともに、公表しております。
 東京電力に対する損害賠償につきましては、生産者団体による取り組みが進められており、県は、これらの活動を支援するとともに、本年7月と9月には、知事が東京電力へ直接出向き、十分で確実な賠償を迅速に行うよう強く求めたところであり、引き続き、機会あるごとに、迅速かつ十分な賠償金の支払いを要請してまいります。
 次に、集落営農への経営基盤強化の支援についてでありますが、本県の農業、農村が将来にわたって活力を維持していくためには、担い手が不足する地域等においては、集落営農を推進する経営体を育成していくことが不可欠であり、これまで、農作業の受託や園芸品目の導入、加工、販売の取り組み等を促進し、集落営農の経営確立を支援してまいりました。
 さらに、集落営農が、持続的、安定的な経営体として発展していくためには、農地の貸借による経営規模の拡大や経営の多角化に取り組むとともに、若者を安心して雇用できる労働環境を備えた法人になることが重要であると考えております。
 このため、組織リーダーの育成や構成員の合意形成による法人化の取り組みを支援するとともに、園芸品目の導入拡大や6次産業化の促進により安定的な所得の確保を図るなど、集落営農の経営基盤強化を支援してまいります。
   〔環境生活部長工藤孝男君登壇〕
〇環境生活部長(工藤孝男君) まず、農林業系副産物の焼却についてでありますが、住民理解に当たりましては、混合焼却及び焼却灰の埋立処分が安全に行われることを、専門的な知識及びデータに基づきわかりやすく説明を行う必要があります。このため、住民説明会には県の職員も同席し説明を行うなど、市町村と一体となって住民理解の促進に努めております。
 また、市町村が専門家を活用する場合の経費についても、支援対象としているところであります。
 今後の処理の見通しについてでありますが、現時点で農林業系副産物を保管中の24市町村のうち、一関市、遠野市、八幡平市、矢巾町が、既に焼却処理を開始しております。
 4市町以外の大半の市町村においても焼却に向けた検討が行われており、処理開始までもう少し時間を要すると思われますが、少しでも早く進むよう、計画の作成、住民説明などについて引き続き支援してまいります。
 次に、食品の新規制と今後の対応についてでありますが、食品に含まれる放射性物質の基準は、国内外の放射線の影響を、健康影響に関する多くの文献をもとに検討を重ねた食品安全委員会の答申に基づき、国が、食品の国際規格を作成しているコーデックス委員会の指標なども踏まえ、安全性を十分に見込んで設定したものであります。現行の基準を遵守することにより食の安全・安心は確保されるものと考えております。
 県では、基準設定の考え方を含め、食品中の放射性物質による健康影響等について、県民に正しく理解を深めてもらえるよう、これまで、全戸配布のいわてグラフで2度にわたって特集を組んだほか、6回のリスクコミュニケーションの開催や県内各地での出前講座、独自リーフレットの作成、配布などの広報に努めてきたところであり、今後におきましても、引き続き、さまざまな機会を捉え、積極的な情報提供に努めてまいります。
 次に、震災関連の消費生活相談についてでありますが、県では、発災直後から、国、警察、市町村などと連携し、相談機能を強化するとともに、弁護士会と連携し、被災地での震災関連相談などを行ってまいりました。
 また、避難所や仮設住宅において、悪質商法被害未然防止の注意喚起や相談窓口の周知を行ってきたところであります。
 これまでに寄せられた震災関連相談は、被災に起因するローンの支払いや相続などの生活相談が大半を占めており、中には、闇金融の関連が疑われる貸付勧誘や詐欺的な利殖勧誘など、被災者の生活再建を阻害しかねない悪質な相談事例も見られますが、幸い深刻な被害事例はほとんど報告されていないところであります。
 震災関連の相談は減少傾向となっておりますが、今後とも、相談情報を注視しつつ、市町村の消費生活相談窓口を初め、被災者支援機関・団体などと連携し、被災者が消費者被害に遭わないよう努めてまいります。
   〔県土整備部長若林治男君登壇〕
〇県土整備部長(若林治男君) 瓦れきの宅地造成などへの活用についてでありますが、国のガイドラインでは、一定の品質が確保されたコンクリート殻や再生土砂を宅地の盛り土材料として用いることができるとされております。
 使用に当たりましては、品質や盛り土造成地の安定などの技術的課題のほか、コスト面や事業スケジュールとの調整等も課題となっております。
 また、一方では、宅地造成に必要な盛り土材料の調達に当たって、高台移転先となる造成地から発生する土砂につきましても有効活用を図るということを求められております。
 本年6月に県が作成いたしました復興資材活用マニュアルでは、土木や農地、防潮林などの復旧、復興工事への活用が提案され、既に災害廃棄物から分別された資材につきまして、一部地域で防潮林への活用を初め、それぞれの事業で必要とされる性状、品質、コスト、事業スケジュール等につきまして具体的に検討を行っておりまして、可能な限り活用を進めてまいります。
   〔理事高前田寿幸君登壇〕
〇理事(高前田寿幸君) 被災者への支援情報の強化についてでございますが、県では本年5月から、市町村と連携して、県外及び県内内陸等に避難されている被災者の方々に、地域の復興状況や被災者支援情報等を定期的にお届けするとともに、10月には、被災者の情報ニーズを把握するため、アンケート調査を実施したところでございます。
 この調査結果の速報によりますと、まちづくりの進捗状況や説明会の情報ニーズが最も高く、次いで、市町村の広報紙や住宅再建支援の情報などの割合が高くなっております。
 また、県外避難者のふるさとへの回帰を促進するためには、まずは一日も早い復興を実現することが重要であると考えており、防災のまちづくり、住環境の改善や雇用の確保、水産業を初めとした産業の再生などに取り組んでいるところでございます。
 今後とも、復興実施計画に基づく事業を着実に推進し、復興の取り組みを一層加速させるとともに、沿岸市町村と連携を密にし、まちづくりの進捗状況や住宅再建の支援情報など、被災者が必要としている情報をわかりやすく丁寧にお伝えすることにより、県外へ避難されている方々が、ふるさとに住み続けていただけるよう取り組んでまいります。
   〔保健福祉部長小田島智弥君登壇〕
〇保健福祉部長(小田島智弥君) こころのケアセンターについてでありますが、県では、被災された方々の精神的な負担の軽減等を図るため、発災直後から平成24年3月までの約1年間は、県内外から多数のこころのケアチームの支援を得て、心のケア対策を推進するとともに、中長期的に支援を継続するための拠点として、平成24年2月に岩手県こころのケアセンターを設置し、こころのケアチームの活動を引き継ぎながら、被災者一人一人に寄り添った心のケア対策を推進してきたところであります。
 このこころのケアセンターは、地域の医療や保健活動を通じて、住民に支援が行き届き、また、住民が援助を求めたときには、身近で気軽に相談できる体制の構築を目指しており、そのため、地域の関係機関と連携を図り、震災こころの相談室の運営や支援者に対する支援、さらには、市町村が行う全戸訪問への同行支援等の地域保健活動などを行っております。
 本年4月から10月までの主な活動実績としては、訪問や相談室による相談件数が延べ3、200件、市町村が行う保健事業への支援を約100回実施、心の健康に関する教育や人材養成研修を約430回開催したところであります。
 今後も、地域の実情に応じた心のケアの活動を長期的に継続していくことが必要でありますことから、医療が必要とされる方々への早期介入や継続的な訪問による見守りなどの個別支援とあわせ、住民の皆様を対象とした心の健康に関する普及啓発の実施、地域住民を支える支援者への支援など、住民一人一人が心の健康を大切にする地域づくりを支援することといたしております。
〇6番(後藤完君) 1点だけ再質問させていただきます。
 まず、食品の新規制値の施行後の対応に関してでございますけれども、放射線の影響を最も受けやすいのが乳幼児と妊婦という観点からお尋ねしますが、乳児用食品につきまして、国が新規制値を設定したところでありますが、この状況の影響を最も受けやすいのは、乳牛の飼養農家においてと思います。放射線汚染によりまして、粗飼料の生産基盤である牧草地の除染対策を現在実施しているところでありますが、生乳生産に直結するものでございますことから、規制値への十分な配慮をせざるを得ない状況でもございます。
 酪農関係者からは、おのずと、今後は購入粗飼料に全量依存せざるを得ないという声も言われているところであります。このような状況によりまして、既存の牧草地の未利用という、まさに空き地になってくるという問題が発生することが懸念されるところでございます。
 したがいまして、この農地の他分野の事業や、あるいは施設等への活用の可能性も含めた検討も必要となってくると思いますけれども、県は、この問題等につきまして今後どのように取り組んでいかれるのか、改めてお聞きしたいと思います。
〇農林水産部長(東大野潤一君) 除染牧草地の利活用対策についてでありますが、県では、放射性物質濃度の暫定許容値超過等の理由で利用自粛を要請いたしました牧草地につきまして、早期に牧草地が再利用できるよう、生産者の意向も確認しながら、除染工程表を策定し、県の農業公社に加えまして、作業機械を所有する畜産農家等の協力も得ながら除染作業を進めております。
 自給飼料基盤の確保は、酪農経営におきまして重要な課題と認識しております。早期に営農活動を軌道に乗せられるよう、引き続き牧草地の除染を進めまして、自給飼料基盤を再生し、酪農家の経営が安定していくように努めてまいります。
〇議長(佐々木博君) 次に、高橋但馬君。
   〔20番高橋但馬君登壇〕(拍手)

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