平成24年6月定例会 第5回岩手県議会定例会会議録

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〇15番(久保孝喜君) 社民党の久保孝喜でございます。
 国政の現状と復興課題についてお伺いをいたします。
 昨日、国政においては政権与党の分裂という事態が生じました。税と社会保障の一体改革と称する国民負担先行の消費増税を柱とする法案への賛否をめぐる結果としての分裂であります。民主党が2年10カ月前の選挙で、国民に示したマニフェストをほごにする道を選んだ野田内閣に、反旗を翻した結果としての政変劇でございました。大義がどちらの側にあるのかとの造反当事者の思いとは裏腹に、国民の間には必ずしも歓迎されず、被災地からもそんな暇があるのかという言葉が投げかけられ、支持率も低いとの報道もあるなど、世間的には、ややうんざりされている状況もあるようであります。
 達増知事は、この法案可決の際、衆議院のありようを政治的事故と称され、それまでの政権に対する批判的態度を一層強める発言をしておられました。そして、その延長上で、小沢氏との会談により、政治行動をともにするとの表明も行ったわけであります。
 改めてお尋ねをいたします。今回のこの政権与党の分裂をどう見ておられるのか。また、可決された消費増税及び社会保障関連法案を今後の復興に向けてどうとらえているのか、所見をお示しください。
 消費増税問題と並んで、この間の国政における大きな課題になり続けたものに、原発再稼動問題がございます。既に野田政権が再稼動を決定し、7月1日には起動され、間もなく電力供給されるとの報道があります。今なお、福島の地において困難な生活を余儀なくされ、あるいは原発を逃れて他県での避難生活を続ける人々が数十万にも及ぶというのに、事故の原因も特定されず、大飯原発の安全確認や安全対策整備もなされていない中、再稼動を決める神経は到底理解できないものでございます。しかも、一連の政府の物言いは、今後、停止中の原発を順次再稼動させる意思をも感じさせるものであります。
 本県は、紛れもなく原発事故においても被災県であります。そして、その影響は、県民の健康への危惧のみならず、生産活動の全領域に影響を及ぼし続けております。しかも、この先何年続くのか、だれにもわかりません。知事は、この原発の再稼動をどう受けとめておられるでしょうか、所見をお伺いいたします。
 原発事故による放射能の汚染が県民生活への損害としてある現実にとっては、何よりその発生源の収束が必要です。残念ながら、政府の収束宣言のペテンとは裏腹に、危うい事故対応がいまだに続いております。したがって、今現在は、この事故に起因するあらゆる損害をまずは金銭によって補償され、実損を補てんする姿勢が貫徹されてこそ、事故の責任をとる第一歩だということだと思うのですが、そうはなっていません。農業団体の請求はたなざらしにされているのかと思うほどに時間が経過した後、姑息にも値切られ仮払いとされて、いつの全額補償になるのかも示されず、農家の怒りを買っております。県や市町村の自治体分の請求などは1月に請求されたものが、半年もたとうというのに、いまだに1円も支払われておりません。ゼロ回答が突きつけられているありさまであります。
 知事に伺います。この事態にどう対処されるおつもりでしょうか、お考えをお示しください。
 以上、答弁を求め、以下は質問席から行います。
   〔15番久保孝喜君質問席に移動〕
   〔知事達増拓也君登壇〕
〇知事(達増拓也君) 久保孝喜議員の御質問にお答え申し上げます。
 まず、税と社会保障の一体改革をめぐる状況等についてでありますが、国民の生活が第一という民主党のマニフェストを支持する民意によって政権交代が実現したにもかかわらず、そのマニフェストに反するような法案が提出されたことでさまざまな混乱が起きているものであり、ぜひ民意に寄り添うような政治を進めてほしいと考えます。
 消費税の増税については、負担軽減策の実施が明らかではなく、増税によって日本経済全体が失速すれば、復興そのものが困難となる可能性があることや、増税時期が本県の復興計画における本格復興期間に重なることで、被災者の暮らしの再建やなりわいの再生の妨げとなることを懸念しています。
 また、社会保障制度改革については、高齢化が進む被災地を初めとする地方においても、子供から高齢者まで、すべての人々が住みなれた地域で生き生きと暮らすことができるような制度の構築が急務であると考えております。
 次に、原発再稼動についてでありますが、原発事故は広範囲に深刻な放射能汚染をもたらし、国民の安全性への信頼を大きく揺るがしたものと認識しております。まずは、国において原発事故の検証、総括をしっかりと行うとともに、過酷事故が発生した場合における国としての対応体制の整備や、関係地方公共団体との連携の仕組みを構築することが急務であり、これらが不十分な中での原発の再稼動は慎重であるべきと考えております。
 次に、東京電力株式会社に対する損害賠償請求についてでありますが、原発事故による被害については、当該事故の原因者たる東京電力が一義的にその責めを負うべきものであります。しかしながら、農林産物の損害については、これまで農業団体等から東京電力に約77億5、200万円の賠償請求を行っているのに対し、約48億6、300万円と、約62.7%の支払いにとどまっており、支払いまでの期間も2カ月から4カ月を要しています。
 また、自治体の損害についても、これまで県と市町村等が協調して東京電力に対し、平成23年度分として約8億7、200万円を賠償請求しましたが、現在に至るまで賠償に対する具体的な考え方が示されていません。
 このような状況は看過できないものであるとして、県としては、県内で発生しているすべての損害について速やかに賠償を行うよう、東京電力本店を訪れての要請や幹部社員との直接交渉等を重ねてきました。去る6月20日に行った市町村長及び県幹部職員と東京電力幹部社員との交渉においては、東京電力から、本年9月を目途に、自治体損害に関する賠償基準を示したいとの回答を引き出したところであります。
 今後も、市町村や関係機関、さらには他県等とも連携を深めながら、東京電力に対し、風評被害を含むすべての損害について広く責任を認め、速やかに賠償を行うよう、さまざまな機会をとらえて引き続き強く求めてまいります。
 また、国に対しても、十分かつ迅速な損害賠償が行われるよう、必要な措置を講じることを強く要望してまいります。
〇15番(久保孝喜君) 御答弁ありがとうございました。
 一昨日以来の政局絡みの点で二、三お伺いをしたいと思いますが、今回の一連の報道の中では、県民の声が幾つか拾い出されて報道されるというケースがございます。その中にあって、知事自身が政権与党に籍を置く知事として内外ともに承知していたわけでありますが、この今回の政変劇によって、知事自身のスタンスというものが県民にとっても非常に大きな関心事になってくるんだろうと思いますし、ひいては、それが復興にかかわる事業全体に影響が及ぼされるのではないかという危惧も、一方で生まれているのではないかという声もございます。その意味で、県民にこの政権与党との距離感というものが変わってくるんだろうと思いますので、その点に関する知事の見解をこの際お聞かせをいただきたいと思います。
〇知事(達増拓也君) 昨年の3月11日の東日本大震災の発生以来、復旧、復興という流れの中で1年4カ月たっているわけでありますけれども、ますます復興の必要性というものが、この岩手において民意として強く感じられていると思いますし、また、全国からも多くの支援、また、その思いが形になった支援が行われています。岩手における復興をきちんと実現していくこと、それは、日本全体から、今の日本国民が持っている日本かくあるべしというような思い、人と人との関係、こうでなければならないという思い、それを引き出していくということと対になっていると思います。
 大震災津波発生以来、時の政権は、そうした日本全体としての復興ということについてまだまだ取り組みが足りないと、国家プロジェクトとして主体的に政府も取り組まなければならないということを発災以来強く訴えてきたところであり、その姿勢には変わりがありません。
〇15番(久保孝喜君) 県民への見解表明というには、やや抽象的かなという感じもいたして聞いておりましたが、もう一点、それでは、知事のスタンスという意味で、これまで民主党に所属をしていたということを─今回離党という第1幕から、新党設立という第2幕へどうやら移りそうという報道があるわけでありますが、そうした新党ということを考えたときに、政治行動をともにするという表明をなさった知事は、現在の民主党所属の問題、あるいはこれからの新党へのかかわり方─一部報道では、新党の役員になるのではないかということすらも報道されておりますが、その点に関してはいかがでしょうか。
〇知事(達増拓也君) 丸5年間、知事を務めてきておりますけれども、この議会でもたびたび知事の政治姿勢ということで政党との関係を問われてきたわけでありますけれども、基本的に、行政は公平に、中立に、公正に行う、しかし、知事政治家個人としての活動は、これは自由にやらせていただくというスタンスでお答えしてきましたし、また、そのとおりに行動してきております。
 党籍の関係につきましては、民主党の一般党員、サポーターの資格を持っているということでありまして、それは私が今までやってきたような活動を自動的にすべきという義務ではなく、ある意味、私が持っている党籍以上に力強いといいますか、大きな活動を、例えば政権交代につながるような活動をしてきたという自負がございます。そうした自由な政治活動は今までもやってきたし、これからも続けていくべきものと考えています。
〇15番(久保孝喜君) どうも正面から受け答えがなかなかできていないわけですが、それではこの件に関してもう一つお尋ねをしたいと思うんですが、今回の国政における政変が、当然のことながら岩手県政、岩手県議会の中にも及ぶという意味での報道もございます。知事自身がこれから先、県政運営を行っていくに際して、これまでまさしく県議会の中にあっても、一定の影響力を持ってきたと思っておりますが、そういう今後の県議会内の動向については、知事はどのようにお考えになっておられるでしょうか。
〇知事(達増拓也君) 知事を初めとする執行部と議会との関係については、今までも、民意を受けて当選された議員お一人お一人を県民の代表として尊重し、予算や条例の議案の説明、そして議会での答弁は区別なく誠実に対応してきたところであり、今後もそれには変わりありません。
〇15番(久保孝喜君) 原発再稼動にかかわって一つお尋ねをしますが、今取りざたされている新党では、消費増税反対と同時に、脱原発ということが政治スローガンとして掲げられるというような報道がございます。そうだとすれば、この脱原発という看板政策、知事はそこにどのようにコミットされるおつもりなのか、その点もお尋ねをしたいと思います。
〇知事(達増拓也君) 脱原発という言葉は、これは語る人、使われる文脈によってさまざま異なる意味内容がございますので、私はその言葉は今までは使わないようにしてきたところでありますし、基本的には、まず岩手県として原子力発電所を誘致する考えはないという、岩手県のスタンスというところ、また、岩手県におけるエネルギー政策は再生可能エネルギーをどんどん振興していく、それを復興計画の中にも位置づけて、それをしっかり進めていこうということがスタンスであります。
〇15番(久保孝喜君) 今の知事とのやりとりの中で十分に意を尽くせないわけなんですが、私はこういうふうに思っているんです。
 今まで知事は、知事という職にあっては二つの側面があるんだと。一つは、自治体の長としての、首長としての立場、公正、公平ということも言われました。それからもう一つは、政治家としての立場だと、こういうことなんですが、この議会という場は、まさにそういう二面が、まさしく県民との間、我々も含めて、議会との間で正対をする場だと私は思っておりまして、ですから、政治的なあるいは政局的な動きに対する見解も含めて、もっと知事は率直に語っていただきたいという思いを今のやりとりの中で私は感じました。これからも機会があろうかと思いますので、そういう意味での知事の率直な意見のやりとり、思いのやりとり、キャッチボールというものをぜひ願っておきたいと思います。
 損害賠償請求の問題で1点お伺いをいたします。
 知事答弁では、精力的に東京電力本社も含めて交渉してきたのだというお話でございましたが、お話があったように、その実はなかなか達せられていないという現状がございます。
 そこで、これまでの請求事務あるいは対東京電力との交渉という問題において、一説では、東京電力は100人の弁護士を雇っているとかという話も、うそかまことか聞こえてくるわけですが、そういう意味での交渉力の強化、あるいは県としての請求事務の本体といいますか、そこの強化、拡大ということが一方では今求められているのではないかとも思います。ましてや、市町村を束ねて自治体の請求分などを一手に県が背負って請求をするという格好になっているわけですから、当然のことながらそういう厚みのある、交渉力のある対応というのが必要なのかなと私は思っておりますが、いかがでしょうか。
〇知事(達増拓也君) 今、県で対応している特別チームの設置上の所掌事務の具体的あるいは技術的なところについては、担当部長のほうに質問をしていただきたいと思いますけれども、基本的な考え方としましては、県としてはやるべきことをしっかりやって、市町村、関係団体と連携をし、また、他県との連携ということも今広がってきているところでありますので、東京電力に対して必要な損害賠償請求、あるべき損害賠償が一日も早く実現するよう努めてまいります。
〇15番(久保孝喜君) 震災対策の質問に移りたいと思うんですが、昨年、発災後1カ月目に、県は復興に向けた基本方針、二つの原則というものを発表なさいました。その一つは、一人一人の幸福追求権の保障だということ、それからもう一つが、犠牲者の故郷への思いを継承するんだと、こういうことでした。この幸福追求権という考え方はそのとおりですし、この文言こそが、これからの復興事業にあっても常に立ち返っていく原則なんだろうというふうにも思います。その点で、復興にかかわる幸福追求権の課題として、私は個人の二重ローンの問題、住宅に関する質問がきのうから随分とあるわけですが、特にもこれから先この個人の二重ローン対策という点で、行政が果たすべき役割あるいは機能というものが十分になされているのかどうかという点でお尋ねをしたいと思います。
 この個人の二重ローンの場合、住宅再建にかかわって非常に大きな問題だというのは、発災以来、知事もたびたびお話をされておりました。これまで県がどのように取り組んできたのか、まずその実績をお示しいただきたいと思います。
〇県土整備部長(若林治男君) まず、二重ローン対策で県は何をやってきたかというお話でございますが、まずは生活再建住宅支援事業において、既往の住宅ローンへの利子補給を行っております。具体的には、失った住宅の住宅ローンが残った状態で、住宅再建のために新たに借り入れを行う場合に、残った住宅ローンの5年間の利子について補助金を交付するというものであります。昨年度は、4市町村で補助事業を実施いたしまして、4件、約217万円の実績がありました。今年度は20市町村で事業を始めておりまして、6月末までに17件、約1、475万円の申請がございました。
 また、県ではないんですけれども、平成23年7月に、金融機関団体の関係者等からなります個人債務者の私的整理に関するガイドライン研究会においてガイドラインが策定、公表されまして、住宅ローンの返済が困難となった被災者が、弁済方法の変更や債務の減免などの債務整理を行う際の考え方が示されました。現在は、同ガイドラインを運営するための一般社団法人が設立されまして、コールセンターや個別相談会における相談を実施しておりまして、ことし6月15日までの間に、岩手県沿岸6市町で、計68回の個別相談会を開催しました。岩手支部への相談が474件、債務整理の申し出が75件、既に債務整理が成立したものが3件と聞いております。
 県といたしましては、既往住宅ローンの利子補給制度等について一層の周知を図るために、住宅再建相談会等の場で、被災者への情報提供を行っていく考えであります。
〇15番(久保孝喜君) 個人版の二重ローン対策として第三者機関がつくられて、今お話のあった個人債務者の私的整理に対するガイドラインというものによって機関が動き始めているということですが、今答弁にあったように、実質に債務整理が成立した件数は、6月15日現在でわずか3件ということであります。他県が膨大に多いというわけではもちろんないわけですけれども、しかし、決してこの被災の現実からすると、こうした二重ローンを抱えて、なおかつ整理が必要だと思われる方がこの程度の数ではもちろんないというふうにも思います。周知のあり方という点では、私はこれほど大きな問題であるにもかかわらず、たまたま第三者機関があるいは金融機関がというところが実質的に当たるために、行政の役割とか機能というのがほとんどないと言えば語弊がありますけれども、非常に小さなものになってしまっていないかという懸念があるわけですね。
 これは、被災者の皆さん方に配っている暮らしの安心ガイドブックというものなわけですが、その中にどういう説明があるかというと、わずか半ページほど。しかも、何やらごちゃごちゃと書かれていて、これが果たしてどういう意味を持つのかということすらもよくわからない。気をつけて読んでいけば、なるほど、これが個人の二重ローン対策なのかとわかる程度の話ということなんですね。コールセンターがありますからそこに電話してくださいというような話だけでは、この個人の二重ローン問題というのは、なかなか解決の方途には向いていかないのではないか。周知のあり方、相談業務のあり方、改善すべき点はまだたくさんあろうかと思いますので、その辺の方策について、今考えておられることがあったらお示しをいただきたい。
〇県土整備部長(若林治男君) まず、474件の申し出という事態が少ないのではないか。ですから、きちっと周知をしていく必要があると県でも考えておりまして、今後、各地域で住宅相談会をやりますので、これに加えながらきちっとやりたいと。
 経緯は、3月以降にふえています。それはなぜふえているかというと、2月15日に研究会が自由財源をふやしたんですね。99万円から500万円までふやしました。それが一つあります。それから、あとは3月で雇用保険が切れた部分があって、3月からふえてきたのかなと考えております。今、75件がいろいろ手続をしていると。準備中のものも84件ほどございまして、課題は何かといろいろ調べました。そしたら、やはり総体解決までに手間と時間をかなり要するんですね。弁護士とは相談するんですけれども、弁済計画の作成だとか将来収入の見込みだとか、そういうのをきちっと整理しなければいけないんです。例えば債権者である金融機関とやりとりしなければいけないとか、いろんなことで、弁済計画の作成におおむね3カ月から4カ月ぐらいかかるというのが実態でありまして、ここについて体制の補強を少し求めていかざるを得ないかなとは思いますけれども、国にもその旨を今後要望してまいりたいと考えております。
〇15番(久保孝喜君) 岩手弁護士会の皆さん方が、こういう実態に業を煮やしてといいますか、金融庁に対しても要望書を出したという報道もございました。要件緩和がされて相談件数もふえてきたということは喜ばしいことではあるんですが、依然として多くの被災者が、義援金やあるいは生活再建支援金でローンを支払っているなどということが往々にしていまだにあって、なおかつ、それが将来のまさに暮らしの再建にとって大きな障害にもなりつつあると、こういう問題意識は必要だろうと思いますし、行政としてこの問題をもっともっと私は深刻にとらえて、具体的な方針なりアクションプランなるものを市町村と合わせてもっともっと深めていただきたい。もちろん、国に対する要望、金融機関に対する要請、非常に大きな要素としてありますけれども、そういう立ち位置の問題として行政がもっと関与すべきだと私は思っておりますので、その点を強く申し上げておきたいと思います。
 次に、震災関連死についてお尋ねをいたします。
 今の問題と同じように、災害弔慰金の支給対象になるこの震災関連死が、被災3県と呼ばれる中にあって、岩手県が極端にその認定数が少ないということが指摘をされてまいりました。若干ふえつつあるという報道もあるわけですが、依然としてこれも周知の問題がございます。同じように、この手引の中でも、大して注目をされない─編集の方針もあろうかと思いますけれども、いずれ周知に本当に力を入れてきたのかと思うぐらいに、この周知の問題が非常に大きなネックになってきたという指摘があるわけですが、これまでの経緯と認定実績などをまずはお示しをいただきたいと思います。
〇理事(高前田寿幸君) 災害関連死についてでございますけれども、これまでも県と市町村が連携をいたしまして災害関連死の周知に努めてきたところでございますが、他県に比べ、避難所に避難された方が少なかったことや、避難所の開設期間が短かったことなどもございまして、本県の災害関連死の認定数は5月末現在で213件と、宮城県の732件、福島県の820件と比べて相対的に少なくなっているところでございます。
 このような中で、本年4月、岩手弁護士会から災害関連死の周知について要望がございましたことから、県といたしましても、改めて、市町村に対して住民への広報の充実を要請するとともに、県の広報紙やホームページを初め、テレビ、ラジオ等の広報媒体を活用し一層の周知に努めたところでございます。その結果、5月末の災害関連死の申し出件数は、4月に比べまして約150件増加したところでございます。
 県といたしましては、今後とも、市町村と連携のもと、災害弔慰金の適正な支給を促進し、被災者の生活再建を支援してまいります。
〇15番(久保孝喜君) 一般的には、報道などでは震災関連死と言われていますが、今、御答弁にあったように、正式には災害関連死と言うのだそうでありますが、いずれにしても、この災害関連死の認定数が、宮城県の3分の1、福島県の4分の1ぐらいの数字にとどまっているということでありますから、状況の違いというのはあったにせよ余りにも大きな差だ、こういう指摘だったわけですね。
 そこで、これまた二重ローン問題と同じように周知の問題もあるわけですが、私は、一方で認定にかかわる基準の問題があろうかと思います。きのうでしたか、県が国に基準を明示するよう請求を行うという新聞報道がございました。この、今まで県が認定の際に、いわば視点として、審査の視点として活用してきたものが、いわゆる中越地震の際に活用されていました認定基準というものだと説明をいただいておりますけれども、間もなく震災から1年4カ月がたつわけでありますが、この中越地震の認定基準によれば、死亡まで発災から6カ月以上たったものについては、ほとんど震災関連死ではないという、推定という言葉が使われていますけれども、そういう基準といいますか文言がございます。
 県が今、実際に認定作業に入っている際に、こうした中越地震のいわゆる認定期間の問題、発災から死亡までの期間の問題はどのようにとらえてこれまで審査に当たってこられたのか、この点をお聞きしておきたいと思います。
〇理事(高前田寿幸君) 審査に当たっての基準でございます。特に時間の関係でございますけれども、長岡市の基準で定めております、今、議員御指摘の死亡まで6カ月以上経過は震災関連死ではないと推定するということの基準につきましては、私どもとしては、一律に期間の経過だけで判断できないということで、これを採用しておりません。
〇15番(久保孝喜君) そういう態度は私は必要だと思います。新聞報道でもあるように、1年経過してもなお震災関連死と言わざるを得ない状況というのはまだまだたくさんあると思いますので、個々の状況に応じて、この審査を迅速に、かつ、ある意味で公平公正な審査対応というものを特に求めておきたいと思います。
 次に、放射能汚染測定検査体制についてお伺いいたします。
 この課題も、実は昨日以来たくさんやりとりがあったわけであります。農畜産物の汚染問題、この汚染を除去するといいますか除染するという問題と、それから、さらにその除染に至る過程での測定体制あるいは検査体制という問題が、実は根底にはあるという問題意識でお尋ねするわけですが、現在、こうした農畜産物の線量測定や、あるいは検体、サンプル数の問題などを含めて、県は、どのような課題認識をしておられるのか、あるいはその対策も含めて、まずはお聞かせいただきたいと思います。
〇農林水産部長(東大野潤一君) 放射能測定の検査体制等についてでございますが、ことしの4月から食品の放射性物質の基準が厳格化されました。今年度の検査対象品目や検体採取の市町村を拡大いたしております。また、検査体制につきましても、農業研究センターに新たにゲルマニウム半導体検出器を配備いたしました。さらに、国から新たに貸与を受けまして、簡易分析器を2台増設することにしております。この結果、簡易分析器は、農林水産関係11公所、17台になります。
 しかしながら、一斉に検査する必要がある米あるいは麦、あるいは全戸検査を実施しております原木シイタケ、ほだ木、こういったものでは、検査が短期間に集中いたしますので、県の検査体制を補完していくことが必要だという認識をしてございます。
 このため、米、麦類、あるいは魚類でも、国の機関あるいは国の委託検査機関を活用いたしております。また、原木シイタケ、ほだ木などでは、県内外の検査機関、民間の検査機関の活用などの方法で検査体制を確保してございますが、今後とも、産地として消費者から信頼が得られるような検査の実施に取り組んでまいりたいと考えてございます。
〇15番(久保孝喜君) これからの放射線対策を考える上では、今、部長から答弁のあったような検査体制の充実、拡大というのが、私は一つの大きなポイントになってくるとも思っておりますが、例えば、これまでのお話しあったように、あっぷあっぷ状態といいますか、かなりきつい検査の体制というものが現実にあったということなわけですね。
 その象徴的な例が、私ども議員にも情報として配付されました、例えば山菜の測定結果などを見ても、採取日から測定日まで9日間とか7日間かかっているという例が、実はこの春にもあったわけですね。山菜というのは、言うまでもなく旬のものですから、それが1週間以上もかかって測定をされるというについては、この測定が何のためにあるのかということすら疑いかねない、そういう事態にもなっているわけです。徐々に改善されているというのは承知しております。
 いずれにしても、そういうことで、検査体制そのものも実態上はパンク状態なのでないかとも思ったりしているんですが、その点では、この先の、現在、拡大策をとってきた現状で十分だとお考えでしょうか。
〇農林水産部長(東大野潤一君) 検査体制につきましては、今議会にも、検査費用について補正予算の計上をし、審議をお願いしてございますが、時期、時期によって検査を必要とするサンプル数が随分違いますので、やはり民間の検査機関も活用しながら対応していくといったことが必要だと考えてございます。
〇15番(久保孝喜君) 汚染地域として、特にも県南地域が状況として厳しいわけですけれども、その検査の機器あるいはマンパワーを含めて、私は、県南にそういう検査拠点というものを、この先何年か当然ながらやっていかなければならないわけですので、そういう検査機関を例えば県南に1拠点設けるとかという対策が抜本的にとられないと、民間へのお願いをするということも当然必要ですけれども、行政としての姿勢を示すという点でもそういう対策が私は必要だろうと思うんですが、いかがでしょうか。
〇農林水産部長(東大野潤一君) 現在の検査機器の配置でございますが、県南地域につきましては、農業研究センターにゲルマニウムの検出器を1台、それから簡易スペクトルメーターになりますけれども、これが中央普及センター、農研センターと同じ場所にありますが、そこに1台、そのほかに、県南広域振興局に1台、さらに、一関の農林振興センターに2台、計、簡易スペクトルメーターが4台配置されてございますので、現在その体制で検査を進めてございます。
〇15番(久保孝喜君) 十分かというふうにお尋ねしたわけです。これからのことも含めて、私は十分ではないと思うからこそ聞いているわけですが、この問題は、一つには、サンプル数の問題も実はあるというふうにも思います。つまり、国が示したさまざまな基準や何かでは、1市町村1サンプルだとかという言われ方もして、それでもなおかつ、今の検査が非常に厳しい状態になっているという問題意識があるものですからお尋ねしているわけですね。
 あのシイタケのほだ木の話でも、シイタケ農家全戸検査をしましたと言っても、農家の中には、ほだ場と称するほだ木がある場所はもちろん1カ所ではない、複数ある場合もあるわけです。そうすると、サンプル数や、あるいは測定ももっともっと充実しなければいけない要素というのがたくさんあるということが、この間のやりとりの中で私たちも知ることになったわけですね。
 そういう検査体制を広げ、あるいは測定体制を広げていけばいくほど、一方の検査体制というものが、それにくっついて充実されていかなければならないということからして、ゲルマニウム半導体検査機器などの充実拡大というものをもちろん求めたいわけですし、県南にそういう拠点があるということのアピールという問題は非常に大きいと私は思いますが、その点はぜひ考えていただきたいと思います。
 きのう以来お話のあった牧草にかかわってお尋ねしますが、この牧草にかかわっては、除染計画あるいは除染主体の問題、さらには、その牧草の管理場所の問題を含めて、いろいろやりとりがこれまでもございました。
 私ども議員に町村会から要望書というものが配付されました。当然、担当部局にも行っていようかと思います。今回の牧草の草地の除染にかかわって、現在、公社に委託をするあるいは農家が行う部分というものだけではなしに、酪農あるいは畜産農家全体の風評被害をなくしていくという方向を考えたときには、全県除染計画というものを立てるべきだという主張がございます。その際に、当然年月もかかるわけですし、費用もかかっていくわけです。
 その際に、今、市町村が実施主体になることも考慮に入れて、さまざまなランクの中で県全体が、県も、市町村も、そして農家も、そして公社もというような複合的、重層的な除染計画をつくることで、岩手の除染はしっかりやっている、岩手の農畜産物は安全だというような、そういう風評被害に対抗し得るメッセージを発することができるのではないかというのが、町村会の皆さん方の考え方のようであります。これに対する見解をお聞きしておきたいと思います。
〇農林水産部長(東大野潤一君) 牧草地の除染についてでございますが、現在、牧草地の除染につきましては、引き下げられた暫定許容値を超過している牧草地について、まず、除染するということで、今、各地域で除染の工程表を作成中でございます。
 私どもといたしましては、まず、このクリアしなければならないものの除染に注力していくことが必要だと考えてございます。
〇15番(久保孝喜君) 町村会の皆さん方の問題意識は、結局そういうことで、いわば現実の後追いだけでやっていくと風評被害はとまらないのではないかという心配ですね。これは担当部署でもよくよくわかっていることだろうと思いますが、そこを超える施策というものを判断しないのかというある種のいら立ちだと私は思って要請書を見たわけですが、そういう受けとめ方は、担当部署としてはないんでしょうか。
〇農林水産部長(東大野潤一君) 全県にわたる牧草地の除染でございますが、今、推進しようとしている牧草地の除染、1万5、000ヘクタールの除染でございます。これが全県の3分の1程度の除染になると記憶してございましたけれども、まず、これを進めなければ前に進めないと私ども考えてございますので、まず、これを確実にやるということが必要だと考えてございます。
〇15番(久保孝喜君) 放射線対策の問題では、昨年以来、私もたびたび発言をしてまいりました。防災上の問題、それから、今のような農畜産物の被害にかかわる問題、あるいは子供たちの健康の問題を含めていろいろ申し上げてきましたけれども、その都度、その都度、実は壁にぶつかるという思いがあるんですね。それは何なんだろうとずっと考えてきたんですが、私は、今回の牧草の除染も含めて、放射線対策の問題点、その根幹にあるものは、結局、放射線対策は基本的に国の仕事なんだということの大方針が県の側にはあって、したがって、対策は国の指示とか、あるいは国の対策を忠実になぞるということが前提になっているのではないか。それで、結果的に、独自の対応や独自の対策というものが、部分的にはありますけれども、県民が求めている姿にはなっていっていないという、実はそのジレンマがこういう形で起きているのではないかと私は思ってしまっているわけなんです。
 知事にお尋ねしますが、こうした放射線対策にかかわる基本的な考え方という点で、今お話ししたような国の問題だという、第一義的な考え方はもちろんそのとおりなんですが、現実に、その結果として県民が求めている、農家が求めていることが、残念ながら国の基準や枠組みというところに合わせようとすればするほど、どんどんかけ離れてしまっている、思いとはかけ離れていくというこの現実については、知事はどういう御感想をお持ちでしょうか。
〇知事(達増拓也君) 東京電力福島第一原子力発電所の事故に伴う汚染による被害に関しては、一義的には、原因者である東京電力の責任であり、そして、国策として進めてきたという理由で、国にも責任があるということは、去年のこの原発事故以降にできたさまざまな特別措置法でありますとか、それに関する基本的考え方でありますとか、そうしたところに明記はされてございます。
 それはそれとして本質論だと思いますけれども、一方で、地方公共団体には、住民の安全を守り、福祉を向上させていく使命があるわけでありまして、これをしっかり果たしていこうという観点からも、そうした法律ができる前から、あるいはできた後でも、県と市町村が連携しながら、測定、除染、そして、さまざまな対策を国の制度や予算を待たずに先行して取り組んでいるところもございますし、やはり住民に対する地方公共団体の責任ということをしっかり果たすという基本的な考え方で、この放射性物質関係の対策にも取り組んでいるところであります。
〇15番(久保孝喜君) この問題は、今、知事が指摘したように、まさに県民の暮らしや命、健康にかかわる重大な案件でありますし、復興にとって、この内陸部の放射能汚染という問題が惹起する課題というのは非常に根強い、しかも長期間にわたる課題だと。その点では、何が一番県民や、あるいは当事者が望んでいるのかというところに即応した判断なり政策の抽出なりということを果断に行っていただくということが何より必要だという点で、私は、どうも今までの流れはそれとは違うのではないかという危惧を持っていたものですからお尋ねしたわけです。担当部署ともに、ここの点については全力を挙げていただきたいと思います。
 次に、JR線の復旧についてお尋ねいたします。
 懸案になっております被災したJR山田線、大船渡線に関して、JR東日本からBRTの仮復旧を正式に提案してまいりました。報道を読んでいる限りでは、鉄路の復旧ということがいささかも担保されていないということでありますし、もしそうだとすれば、BRTは単なる駆け引きの材料でしかないというふうにも思われてならないわけです。つまり、お金を引き出すための駆け引きの材料なのかというふうにも思ってしまうほどに、何も担保されない中でのBRTという唐突な提案だと私は思いますが、こうした対応になってしまったこと、これまでJR側ともさまざまな形で、要請活動をしたり、あるいは協議の場があったろうと思いますが、今回のこの結果になったことについて、その対応に不足はなかったのかどうか、まずその点をお聞きしたいと思います。
〇政策地域部長(中村一郎君) JR線の復旧についてでございますが、県としては、これまで、鉄道の早期復旧が必要であるという認識のもとに、昨年末、宮城県、福島県と合同で、国に対しまして、鉄道の早期復旧に向けた財政支援の要望を行い、さらに、本年2月にも、沿線の市町とともに、JR東日本や国に対しまして要望活動をそれぞれ行ってきたところでございます。
 また、これまで山田線、大船渡線、それぞれの路線ごとに設置されております復興調整会議がございますが、これもそれぞれ3回開催されて、いろいろ検討してまいりました。
 さらに、JR東日本と沿線市町との個別協議の場などにおきまして、津波時の安全性の確保でありますとか、まちづくりとの整合性の課題などについても議論を重ねてきたところでございます。
 今後におきましても、両線の早期復旧がなされますように、沿線市町等とも連携しながら、JR東日本や国に対し要望活動を行うとともに、JR東日本や市町との個別協議をさらに促進し、また、復興調整会議の開催頻度につきましても増して協議を行いますように、主宰者であります国のほうにも要請をしてまいりたいと考えてございます。
〇15番(久保孝喜君) 今回のBRT導入の提案というのが、復興調整会議ではなくて公共交通確保会議だったという報道がございました。首長たちが集まるこの公共交通確保会議なるものが、最終的にはBRTの正式提案を受けて、そして、そこで検討されてキャッチボールをする、こういうことになるんだろうと思いますけれども、報道されている限りにおいて、このBRTの提案というのは、私は、実に沿線住民をないがしろにするものだと思って怒りにたえないわけであります。つまり、55キロぐらいですかの山田線の延長の中で、BRTと称される実態に沿うものはわずか10キロ程度だという話であります。現在の振りかえ交通、バス交通との兼ね合いも含めて、これを受け入れた途端に、BRTがひとり歩きをしていくという懸念は、だれしもが思う話であります。
 現実にこうしたBRTを提案された限りにおいては、検証して、反論をしていくということが私は必要だと思うんですが、そういう検証は、あるいはその検討手法をどうしようと考えておられるのかお尋ねします。
〇政策地域部長(中村一郎君) BRTにつきましては、山田線につきまして、6月25日に公共交通確保会議が開催されまして、提案されたところでございます。大船渡線につきましては、第1回目の公共交通確保会議が7月13日の予定でございますので、そちらのほうについては、まだ正式な提案がなされてはございません。
 ただいま議員のほうからお話がありました、このJRから提案のありましたBRTをどのように検証していくのかということでございますが、第1回目の公共交通確保会議におきましても、沿線の首長からは、特に山田線の場合には、先ほど議員がお話しあったように、全体の2割を下回るような軌道の利用ということで、それ以外は現在の国道45号を利用するということですから、むしろ既存の路線バスを圧迫するのではないかといったような懸念のお話も出されてございます。
 これにつきましては、今、沿線の市町とともに、JRの提案そのものに対していろいろ検討を進めているところでございます。具体的には、先ほどJRからお話があった提案の中で、定時性の確保というものが優位性の一つと説明されておりますけれども、それが現在の提案の中で本当にそうかどうかといったようなこと等も具体に確認をしてございます。
 そういったことも踏まえて、次の第2回目の公共交通確保会議の中では、地元の自治体としての考え方を取りまとめいたしまして、JRの側にお示しをしたいと考えてございます。
〇15番(久保孝喜君) 現在、本屋さんでは、被災鉄路というタイトルをつけた雑誌とか、鉄道ファンは全国に多いわけで、そういう雑誌がたくさんあるわけですが、その中で、どの雑誌を見ても、一番称賛されているのは三鉄の動きだったわけですね。発災以降のさまざまな取り組み、これはすばらしいという記事が大変多い。
 そういう中にあって、JR線のこの復旧の問題で幾つかの提言といいますか提案がさまざまな形で行われております。JR東日本の側から言われているように、これから先のまちづくりと連動しなくてはいけない、そのとおりだろうと思います。あるいは安全の確保、そのとおりだろうと思います。しかし、安全の確保といって、現行の波をかぶった線路の路線でそのままやるわけにはいかないという物言いもたびたびありますけれども、現実には、八戸線は現行ルートで復旧したわけですしね。そういう意味では、JR東日本側の論理というものも、いまいちよくわからないということがございます。
 そうした専門誌の中では、現地としては、現行ルートでの復旧を、暫定復旧をまず提案すべきだ、こういう言い方もあるわけなんですが、その上で、本格的なまちづくりと連動して部分的なルートの変更とかということを考えていただくようにしたほうがいいというような提案もあって、私は、これは一つの大きな提案だなとも見て、読んだわけなんですが、そうしたことも含めて、JR東側に具体的な提案というか提言という形で回答を示していくという作業も必要なのではないかと思いますが、いかがでしょうか。
〇政策地域部長(中村一郎君) ただいま議員のほうから、とりあえず現行ルートで復旧をしてはどうかといったようなお話がございました。今、個別の市町村ごとにいろいろ協議もしておりますが、それぞれの市町村のまちづくり計画の中で、例えばJR線を含めたその地域一帯をかさ上げするとか、場合によっては、まち全体をある程度移すというような関係で、路線そのものも少し動かさざるを得ないのではないかといったようなところの議論も出てきております。
 そういったこともございますので、必ずしもこれまでのルートで、当面、暫定的に復旧するということがいいのかどうかといったような議論もございますので、そこは十分、市町村またJR側とも協議をしながら、検討させていただきたいと考えております。
〇15番(久保孝喜君) いずれにしても、このJR線の復旧というのは、今後の復興全体の中にあっても、基幹的インフラとして非常に重要な課題だと思いますので、ここはしっかりJR側との交渉、協議というものに力を尽くしていただきたいと思います。
 次に、県職員の人員確保についてお尋ねいたします。
 この職員体制の問題というのは、単に人員という数の問題だけではなくて、いろいろな要素があるんだということは、これまでもるるお話があった点でございます。あるいは、放射線対策などを含めて、あるいは実際の復興事業にかかわる入札ミスの問題などでも惹起されたように、現場での人員配置あるいは職員の十分な体制ということがこれからの復興事業にとっても非常に重要だということは、そのとおりだろうと思います。
 現行の組織体制の課題も含めて、その認識と対策方針をまずはお示しいただきたいと思います。
〇総務部長(加藤主税君) 人員確保についてのお尋ねでございますが、東日本大震災津波からの復旧、復興は、現下の最優先の課題でございまして、必要な人員の確保に努めることは、これを左右する重要事と認識しております。このため、職員定数につきましても、復旧、復興業務に関連するものにつきましては、通常業務の定数とは別に管理することとし、絶え間なく人員確保の取り組みを進めております。
 復興事業が本格化する中で、専門技術を有する人材が不足してまいりますことから、各都道府県に職員の派遣を要請し、受け入れを行ったほか、任期つき職員の採用でございますとか、退職職員の再雇用といいました取り組み、これを地道にこつこつと積み上げて、さまざま職員の配置を図ってきているところでございます。
 今後とも、全国知事会を通じた一層の職員派遣を要請するといった取り組み、引き続き多様な方策によるマンパワーの確保に努めまして、円滑に復興事業を推進できる体制を整備していく所存でございます。
〇15番(久保孝喜君) さきの質問では、職員の資質に関するやりとりもございました。やる気と課題解決能力だという話もあったわけですが、これまでの県の職員配置あるいは人員確保という観点で言うと、9年間で1、000名の職員を減らしてきた、あるいは総人件費もかなりの比率で減らしてきたという歴史を持っているわけですね。その挙げ句の今回の大震災ということで、一時的なそういうマンパワーの不足というものが、局所的にあるいはあらわれたのではないかという思いも実は持っております。
 一方で、こういう職員の削減ということと軌を一つにして、非正規職員の増加という問題点も実はあるのではないかと思っております。現在の正規職員の数と、そして、非正規職員の数というのはどんな比率になっているのかという点で、もしおわかりになればお知らせいただきたいと思います。
〇議長(佐々木博君) 本日の会議時間は、議事の都合によりあらかじめ延長いたします。
〇総務部長(加藤主税君) 正規職員と非正規職員の比率についてのお尋ねでございます。
 正規職員、これは4月1日現在の数値ということになりますが、4、151人ほど在籍しております。これに非正規職員、非常勤職員、臨時職員等ございますが、全体で2、591人、全体で6、742人という数字になっておりまして、ざっと計算いたしますと、非正規職員の割合が4割弱という状況でございます。
〇15番(久保孝喜君) 時間がないのではしょって申し上げますけれども、こうした行政体の中の非正規職員の割合がこれほどまでに多いというのは、私は、ある意味で決して健全な姿ではないのではないかという思いもいたしております。なるほど一時的な業務量に応じた人員を確保するというのは当然必要なことですし、あるいはまた、さまざまな専門的知識のある方を期間を限って任用するということも当然あるでしょう。しかし、全体のバランスとして、果たして本当に今の現実が望まれる行政の姿なのかどうか、ここは篤と考えていかなくてはいけないというふうにも思います。
 総務省の調査でこの間発表になったわけですが、過去5年の間に転職した非正規労働者のうち、正社員になった割合が27%にすぎないということが報じられました。つまり、これはどういうことかというと、非正規で職を得た方々が、転職をして正規になろうと思っても、4分の1程度しか正規になれないという現実をあらわした数字であります。つまり、逆な言い方をすると、行政体の中で非正規労働者をどんどんふやすことは、社会の中にあって、正規職員になっていく数全体の量を減らしていくことにもつながっていきかねないというふうな、ちょっとこじつけがましい話で恐縮なんですが、官製によるこうした非正規労働者の増大というのは、ぜひとも今後の人員配置の中で大きなテーマとして考えていただきたい、そのことを申し上げておきたいと思います。
 次に、商業振興に係る資金貸し付けについてお尋ねいたします。
 県内の商店街振興組合などに、いわゆる高度化資金として県が資金貸し付けをする、アーケード等の商業施設を組合がつくる、こういうことがずっとやられてきたわけですが、ここに来て、商況の変化などを含めて、あるいは後継者難ということも含めて、商店街そのものの存続が危ういという状況になり、かつ、貸し付けられた高度化資金の償還がなかなかスムーズにいかないという事態に立ち至っている例があるとお伺いいたしております。
 なおかつ問題なのは、そうやって資金投下をした商業施設が老朽化する、安全上の問題が出てくる。しかし、償還資金そのものも返済できないわけですから、安全対策ももちろんできていかない。結果として、地域社会の中にあって、安全にかかわる問題として非常に大きな課題になるという負のスパイラルが実は起きているという事態の報告も聞いているところでございます。
 したがって、貸し手側の県として、こうした事態にどう解決の道筋をつけていくのかということも、私は非常に大きなテーマになってこようかと思いますが、一般論として、どのように取り組まれるおつもりでしょうか。
〇商工労働観光部長(橋本良隆君) 商業振興に係る資金貸し付けについてでございますけれども、商店街振興組合等では、議員からもお話がありましたとおり、買い物客等の利便性の向上、あるいはにぎわいの創出、そういう目的のために、高度化資金を利用しましてアーケード等の施設を整備してきたところでございます。これらの組合の多くは、高度化資金を完済するなど順調に返済をし、商店街の活性化を図ってきておりまして、一定の効果があったと認識をしております。
 一方、返済期限を延滞しているものもございまして、延滞額について見てみますと、平成22年度末時点で6億8、000万円余、平成23年度末時点で7億4、000万円余で、約6、000万円余が増加してきているという状況にございます。また、延滞をしている組合の多くは、借り入れ当時に比べまして組合員数が減少してきており、組合の運営も厳しくなってきていると考えております。
 また、老朽化をしてきているようなアーケード等の施設対応といたしましては、県といたしましては、貸し付けの当事者といたしまして、そういった場合には、性急に返済を求めるということではなくて、現地訪問等によりまして、それぞれの個別の事情をしっかりと把握をし、柔軟に対応するということにしております。
 また、必要に応じまして運営状況の診断というようなことも行い、償還猶予等返済計画の変更にも対処しながら、未償還額の減少につなげていきたいと考えているところでございます。
〇15番(久保孝喜君) 一部に未償還額がそのまま、ある意味、塩漬け状態になってしまっているという例もあるやに聞いておりますし、先ほど申し上げたような安全上の問題が惹起されている例もあるということですので、貸し手と借り手という関係を超えて、行政目的を持って貸し付けてきたわけですが、しかし、その結果として安全の問題が出てきた際には、何よりもこの安全の問題というのは非常に大きな課題だし、最優先課題になってくるという認識ということが表明されましたので、ぜひともそういう方向でお取り組みをいただきたいと思います。
 最後に、県立高校の再編問題についてお伺いいたします。
 被災現地の県立高校も含めて、内陸部の第2次再編計画の問題は、これまで震災によって凍結状態ということでずっと来ているわけですが、しかし、一方で、人口の問題やら少子化の問題というのは、震災にかかわらずどんどん進行していく、むしろ逆に、加速度的に広がっているということもございます。
 そういう中で、しかし、それではそうした数に見合う形での第2次再編計画を進めればいいのかということになれば、ちょっと待てという話に私はなるんだろうと思うんですが、今現在、凍結されている話を蒸し返して聞くのも何でありますけれども、これからの復興にかかわる課題でありますから、まずは、この検討について今どういうお考えを持って臨まれているのか、その見解をお示しいただきたいと思います。
〇教育長(菅野洋樹君) 県立高校再編問題についてでありますが、議員御指摘のとおり、次期県立高校整備計画の策定に当たりましては、県内各ブロックにおける大震災津波後の児童生徒数の動向、推移、こういったものを慎重に見る必要があると思っています。
 また、被災地における公共交通機関の復旧により通学事情の状況、いわゆる教育にかかわる環境整備の状況も十分に勘案する必要もございます。ただ、一方で、お話にあったとおり、県全体として見ますと、今後、少子化による中学校卒業生の減少が一層進行してくる、こういう現状がございまして、これに対応した、子供たちにとって─社会に出る直前の子供たちですので─最もふさわしい高校教育のあり方も不断に検討していかなければならないという課題もまたございます。
 現時点におきまして、計画策定に向けた検討時期についてまだお示しできる段階にはないと思っておりますが、被災地域の状況や本県における少子化の見通し等を見据えながら、しかるべき時期に、調整、検討してまいりたいと考えております。
〇15番(久保孝喜君) 先般、東日本大震災で転校した児童生徒数というのが、文部科学省から発表されました。かなりの数の、幼稚園児から小中学生の数だったわけですが、5月1日時点のようですが、岩手県は1、147名が何らかの形で転校をしているということが伝えられております。決して少なくない数字であります。
 今回の震災の問題、先ほど来お話のあったまちづくりの問題や、あるいはそれぞれの自治体においてどういう小中学校の配置があるのかということともかかわって、県立高校をどういう配置にしていけばよりよい環境になるのかということが大きな眼目になるわけですが、こうした児童生徒の転校実態が示すとおり、この先、人口減少とも相まって、復興期間中に具体的な住居を定め、あるいは仕事が定まっていくという、まさに地域社会が根づいていく過程というのをこの復興期間中にやるんだとすれば、県立高校の再編問題というのは、この復興期間中に示すなんということは私はあり得ないのではないかというふうにも思っているわけですが、その点についてはどのようにお考えでしょうか。
〇教育長(菅野洋樹君) 先ほど申し上げました。確かに被災地域の状況というものはしっかり見据える必要があろうと思っています。ただ、一方で、子供たちの状況、少子化が非常に進行しているという問題もございます。そういった中で、どういう環境で子供たちに高校教育を受けさせていけばいいのか、それが最もふさわしいのかというのは、不断にこれは検討していかなければならない問題だと思っておりますので、先ほど申し上げましたとおり、まだ具体的な時期を明示できる段階にはないと思っていますが、もろもろの状況を勘案しながら検討してまいりたいと思っております。
〇15番(久保孝喜君) 学校というのは、これまでもさんざん言われてきたように、地域の中にあっては非常に大きな要素を持つ機関でもあります。したがって、復興の期間中に、いたずらに地域対立を惹起したり、あるいは親御さんたちの心配を助長するような、そういう動きだけは少なくともこの復興期間中だけはしてほしくないという思いで、この第2次再編計画なるものは、復興期間中は凍結だというぐらいの思い切った政策判断というのが私は必要なのだろうという思いでお聞きをいたしました。教育現場を預かる者としての御見解はお聞きしましたが、なお、そこに意を用いてこれからに当たっていただきたいと思います。
 以上、質問を終わります。御清聴ありがとうございました。(拍手)
〇議長(佐々木博君) 以上をもって本日の日程は全部終了いたしました。
 本日はこれをもって散会いたします。
   午後5時2分 散 会

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