平成24年6月定例会 第5回岩手県議会定例会会議録

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〇48番(佐々木大和君) 自由民主クラブの佐々木大和でございます。このたび一般質問の機会をいただき、まことにありがとうございました。通告に従い順次質問をさせていただきます。よろしくお願いいたします。
 まず最初に、チャイナ・インパクトと東日本大震災津波に伴う諸課題についてをお伺いします。
 日本は経済大国としての自信とプライドを強く持ってきました。そして、今日、中国の台頭は我々日本人に大きなインパクトを与えています。
 大阪万博が開催され、岩手県で国体が開かれた昭和45年、日本は、世界第2位の経済大国ドイツを抜いて、アメリカに次いでGDP世界第2位になりました。戦後25年でそこまで成長したことが日本人にとって大きな自信となって今日の繁栄を築いてきました。上海万博を契機に中国がその日本を追い抜き、世界第2位の経済大国となりました。このことは、アメリカに次ぐ経済大国を自負してきた日本にとって、従来のアイデンティティー─存立基盤を失わせるだけの大きなショックであることは間違いありません。中国に抜かれたことを日本人は日本の落日と悲観的に考えがちです。しかし、それではいけない。これを歓迎して、さらなる日本の発展につなげる必要があります。追いつき追い抜くこと自体を問題視するのは、隣国ならではのジェラシーでしかありません。
 日本の輸出先が、2009年、アメリカを抜いて中国が首位に躍り出ている現実があります。この現実を認識する必要があります。2010年の世界GDPシェアは、日本が8.7%、中国が8.5%、合わせて17.2%であります。トップのアメリカが24.6%なので、アジアの隣国がアメリカに迫る経済圏をつくったことになり、これからのインド、韓国などの経済成長とともにアジア圏の台頭は目覚しいものがあります。この環境を生かしながら成長することが日本の課題であることは間違いないと思います。また、経済大国日本は、こういう中で格差が一層大きくなったことも否定できません。
 東北は、経済的にも、社会的評価も、決して我々住民が満足できる評価を得てきたとは思いません。日本における岩手も、今日までの歴史的評価は決して高いものとは言えず、もっともっとアイデンティティーを高め発展し、繁栄しなければなりません。日本の大きな流れの中で、岩手県は、国と同じ方向を向くだけでは、その繁栄はあり得ません。
 振り返れば、我が国では、明治の開国以来、富国強兵、殖産興業、まさに大日本主義に進んできています。日清戦争、日露戦争を経て大東亜共栄圏を築き、満州開拓などを行い、太平洋戦争の終結で本来の日本に返ったとの感もあります。明治初期、3、000万人の国がアメリカと対等に世界戦略を進めることが無理と言われてもしようがないところであります。日本らしさを失うことなく、真に国民の幸せのために政治は進めていかなければなりません。
 国難とも言える今次の大震災は、改めてこのことを思い起こさせる機会となりました。130万県民がそれぞれ存在意義を持って、この岩手で暮らせるように多面的社会を構築する必要があるものと考えます。地域社会で、みずからが発想する産業とともに岩手と世界を結ぶ産業の創造を県に期待するところがあります。
 チャイナ・インパクトの時代において、岩手が独自でアイデンティティーを発揮し、成長著しいアジア圏との経済、観光物産、文化の交流拡大を図る必要が高まっている状況で、県のアジア戦略はどのようになっているのか知事にお伺いします。また、最近の大連事務所、ソウル事務所の活動はどうかお伺いします。
 東日本大震災津波の発生により、被災沿岸地域一帯で多くの死者、行方不明者が発生しました。1年後、3月11日の被災状況は、死者1万5、854人、行方不明者3、155人、負傷者2万6、992人、避難した人34万3、935人、建物全半壊38万3、246戸となっております。このうち岩手県は、死者4、671人、行方不明者1、249人、避難者数5万4、429人となっています。死者、行方不明者では約3分の1が岩手県であります。
 被災12市町村での人口は、特に大槌町、陸前高田市がマイナス18%、マイナス14%と非常に大きくなっています。改めて大震災津波被害の大きさを感じるとともに、復興元年のスローガンを掲げた知事の指導力、リーダーシップに期待するところが大きいと思われます。復旧、復興の努力を通じて深まったきずなとして100万人規模のボランティア、募金額では国内4、400億円、海外175億円、126カ国からの海外支援物資が集まり、国内外からの支援に本当に感謝してもし切れないほどのものがあります。これにこたえて岩手県沿岸も立派に復興を果たし、日本における役割を担い、世界平和に貢献できる地域として再生しなければなりません。
 沿岸市町村の人口動態を見ると、今回の大震災によることとあわせて、県北・沿岸地域には、昭和の合併以後、過疎化が進行しており、県は、県北・沿岸振興本部を設置するなど地域間格差の是正を目指してきたところであります。
 新しい広域圏の人口の推移を見てみると、昭和30年─1955年には、一番人口の多いのは県南広域圏で58万7、000人、2番目が県央広域圏の33万7、000人、3番目が沿岸広域圏の33万人、4番目が県北広域圏の17万3、000人であります。県央広域圏と沿岸広域圏は33万人台でほぼ並んでいました。平成23年─2011年になりますと、県南広域圏では50万5、000人、県央広域圏が48万2、000人、沿岸は20万5、000人、県北は12万1、000人となっています。増加した広域圏は県央のみで14万5、000人の増、減少は、最大の沿岸で12万5、000人、県南で8万2、000人、県北で5万2、000人となっております。沿岸の減少分が県央に移動したとの見方もできます。市町村別で見ると、人口増加の一番は盛岡市で12万7、000人、次いで滝沢村が4万5、000人、北上市が2万4、000人、矢巾町が1万3、000人、紫波町が3、000人であります。この5市町村以外はすべて減少しております。県央圏以外で増加したのは北上市のみという実態が見えます。
 この状態は、貿易自由化の影響と鉱工業の技術革新の影響がストレートにあらわれたことなのかもしれません。戦後の復興のため木材輸入が始まり、農畜産物、水産物も自由化が進み、FTAのみならずTPP参加が議論されている中で、新しい農林水産業のあり方が求められております。宮城県では、産学官連携による新しい農業、さらに6次産業化した新しい経営形態の創造と、大変革の時代に向かっているように見えます。
 これまで、岩手県では県土の広さを生かした産業づくりが唱えられてきました。畜産県岩手、日本の食料基地を目指す岩手、森林県岩手とスローガンを掲げ、県土の均衡ある発展を目指してきましたが、先ほど示した人口で見ると、昭和の合併時、県央・県南エリアと県北・沿岸エリアは6対4の人口比であったのが、平成合併が行われた今日では7.5対2.5からさらに8対2となる方向に向いています。
 石橋湛山は日本の保守政治が誇る自由主義者の一人であります。戦間期に唱えた小日本主義は大東亜共栄圏における国策と矛盾し、戦後の自立主義による憲法改正論は日中米ソ平和同盟の理想に反するのではないかとの疑問がありました。これに対し、最近の石橋湛山論では、小日本主義ではなく、自立主義こそ、戦後の自民党総裁、総理大臣として政界の頂点をきわめた石橋湛山の一貫した不変の柱だったと解き明かしています。自立主義は自立能力のある強い民族を想定しており、石橋湛山は、日本人の根底にそれがあると確信していたと思われます。大日本主義とは、領土拡張と保護政策とをもって国利民福を増進せんとするものとし、小日本主義とは、主として内治の改善、人の自由と活動力との増進によって国利民福を増進しようとするものであります。石橋湛山は、大英国主義と小英国主義、英国における保守党と自由党が互いにこのことを政策の基本に置いて競い合っている現状に照らし、日本の帝国主義一辺倒の姿勢を批判し、相反する政党が欲しいと訴えたとされます。
 白河以北を統治し、その中心の平泉に都を構えた藤原文化は鎌倉幕府に敗れました。兄弟に和平が結ばれることはなかった歴史をつくりました。判官びいきが生まれ、文化は残ったが、地域は変わりました。明治維新となり、吉田松陰の描いた果てしない夢に向かって日本は世界に羽ばたき、世界第2位の経済大国にまで成長しました。そして、今また変化のときが来ています。大日本主義と相反する小日本主義は、大震災を受けた東北、そして我が岩手県が参考にすべきテーマになっているのかもしれません。
 国が開かれることによって光と影が生まれます。地域の小さな社会にも自立したものが存在し、国が変化しても地域社会の生活や経済活動が守られるということが必要ではないかと思います。今次復興とあわせて県北・沿岸の従来課題を解決し、希望の持てる県北・沿岸地域をつくらなければ、地域間格差の是正の命題は解決しないと思います。
 農林水産業は既に先進国では成長産業に生まれ変わったと言われております。岩手県では、自動車産業などのものづくり産業を成長産業として育成しているところですが、チャイナ・インパクトの時代、県は新しい成長産業分野をどのように育成しようと考えているのか、知事にそのビジョンをお伺いします。
 復興を待つ沿岸住民からは、行政はもっとスピード感を持って進めてほしい、何をやるにも規制が多過ぎて遅々として進まない、大胆な規制緩和が必要だなどと多くの意見が寄せられています。沿岸住民の重要ななりわいの一つである水産業においては、高齢化や進まない復興の現状を考えて、漁業者の3割が離職されるとのことでもあり、復旧、復興のスピードを加速化することが必要です。
 そこで伺いますが、沿岸被災地では、高台移転等宅地が新たに開発されるに当たり、農地転用、農振解除、埋蔵文化財発掘調査などの多くの諸手続が必要となり、復興へのおくれが懸念されることから、これらの簡素化や弾力的な運用を求める声が市町村から多く寄せられてきています。規制緩和に向けた特区制度の活用も含め、スピード感を持って国等に強く要望すべきと思いますが、県では、これらの課題をどのように認識しているのか、また、課題解決に向けて具体的にどのように取り組もうとしているのかお伺いします。
 社会資本の復旧・復興ロードマップが、5分野で具体的な整備スケジュールが示されました。被災者の生活設計に必要なことであり、その取りまとめの御労苦に敬意を表したいと思います。
 災害復興公営住宅について、県は3、000戸を2014年度までに完成させると示されました。RC5階建てを中心に、7階、8階もあるようですが、県内建設業者への配慮はどのようになっておりますか。仮設住宅建設に際しては、緊急性を重視した余りに県内業者の出番が少なかったのではないかと思います。地域経済復興のためにも、県内建設産業育成のためにも、県内業者にチャンスを与えることが大切と考えますが、いかがでしょうか。
 また、県産材活用の面からの検討はどうなっておりますか。県産材を利用している合板やチップの工場が復旧を果たし、今、稼働し、軌道に乗り始めており、建築資材として出番のときを迎えております。県内産材をぜひ生かしていくべきであります。2、300戸の市町村が整備する災害復興公営住宅の一部が木造となっているようですが、県としての対応を伺います。
 あわせて、住宅産業は自動車産業並みに高度化が進んでおります。建て売りなどの住宅業者を入れていくことが、今の産業構造から見ても必要と考えます。民間が建設する住宅を買い取る手法は、県のマンパワー不足を補う上でも必要であります。県内の民間住宅業者の育成にもなる買い取り方式はどのように進めるつもりか伺います。
 次に、森林・林業再生プランの推進についてお伺いします。
 10年後の木材自給率50%以上を目指す国の森林・林業再生プランは、我が国の森林、林業政策を、森林造成から木材利用、持続的な森林経営に転換するものであり、森林資源が豊富な本県にとって追い風になるものであります。しかしながら、プランの実質的な初年度であった昨年は、本県は大震災に見舞われたところであり、もし、プラン推進におくれが出ているのであれば早急に挽回し、全国有数の森林県として、森林・林業再生プラン実現に向けて率先して取り組んでいく必要があると考えております。
 プラン推進を法制面で具体化するため、昨年、森林法が一部改正され、本年4月から森林経営計画制度がスタートし、今後、森林整備の補助対象は、この計画策定森林に限定されることとなりました。森林整備の補助を継続して受けられるよう、速やかに森林経営計画を策定しなければなりませんが、森林経営計画制度の早期定着に向けてどのように取り組んでいくのかお伺いします。
 プラン推進は震災復興とも密接に関係し、沿岸の市町村では、復旧、復興で生じる木材需要に対し、県産材を安定的に供給することが地域の活性化を図る上からも重要であります。森林・林業再生プランを進める中で、復旧、復興への県産材利用をどう進めようとしているのかお伺いします。
 また、プランでは、森林から産出される木材を最大限に活用するものとしており、豊富な森林資源を有する本県において、木材を建築材料からエネルギーまで最大限に活用することが重要と考えております。いわゆるA材─製材用、B材─合板、集成材用、C材─パルプ、チップ用の活用、特にC材を含めた林地残材の活用について、どのように進めようとしているのかお伺いします。
 次に、岩手県の電力自給率の向上対策についてお伺いします。
 県の推計によると、平成22年度の電力自給率は24.6%であります。平成15年度が28.7%で最も高くなっていますが、その後、年々低下傾向にあります。郊外型大型店舗の増設やオール電化住宅の普及などにより電力需要が増大したことが、相対的に低下したものと分析しています。今、エネルギー開発がいろいろと取り上げられており、自給率の向上を目指し、積極的に取り組むべきときだと考えます。
 再生可能エネルギーの推定利用可能量としては230億6、800万キロワット時の電力利用が可能とされておりますが、自給率の向上に向けて県はどのように計画されておりますか。
 国の調査によると、再生可能エネルギーの推定利用可能量の全国第1位は北海道で、全国比約3割を占めており、本県は第2位で、全国比7.1%の発電の可能性が示されております。この発電可能量230億キロワット時は、県内発電量23億7、000キロワット時の約10倍であり、県内の消費電力量97億キロワット時を大きく上回る数値で、今後、経済性の問題などが検討されると思いますが、大変興味を引くものであります。太陽光、水力などに比べ風力発電が全国第2位の利用可能量で最も多くなっております。これまで企業局や釜石市、葛巻町などで実践しており、今回の調査結果からも岩手県の風力に期待が示されていますが、県の風力発電導入に当たっての考え方はいかがですか。
 岩手県には河川、小川、沢、用水路など小水力発電のエネルギーに利用できる豊富な水資源があり、古くから身近なエネルギー源として水車による脱穀、製材などに活用されてきたところであります。小水力発電は二酸化炭素排出量が少なく、地域で自給できるクリーンなエネルギーとして注目され、本県でも農業用水路は企業局などで運用されているところです。県では、農業用水、河川、ダム、上下水道など地域におけるさまざまな適地での普及を進めようとしておりますが、再生可能エネルギーとしての小水力発電の現状についてどのように認識されており、今後どのように導入を進めるお考えなのかお伺いします。
 また、火力発電等の深夜の余った電力で水をくみ上げ、昼間の需要のピーク時に放水して発電する揚水発電の価値が注目されているところであります。沖縄県では海岸部の台地から海面までの落差を利用した、最大出力3万キロワット時の海水揚水発電所が運転されております。本県の沿岸の海岸部においても同様の立地条件を満たす場所が数多くあると思われます。県では、海水揚水発電を含め揚水発電の現状についてどのように認識され、今後どのように取り組むのかお伺いします。
 最後に、JR岩泉線、山田線、大船渡線についてお伺いします。
 JR東日本は、2010年7月に押角竏抽竡闡蜷・ヤで発生した列車脱線事故により岩泉線全線で運転を見合わせ、バスによる代行輸送を行ってきましたが、去る3月30日、岩泉線を鉄道として復旧することを断念し、会社の責任において、バスにより地域の交通を確保していきたいと公表したところであります。
 県では、地元岩泉町、宮古市と協議し、鉄道での早期復旧を求めること、JR東日本から示された復旧費用の検証を行うことなどを合意したところであり、6月28日にJR岩泉線安全対策費用検証委員会を設置し、JR東日本の地質調査結果や、約130億円の費用の妥当性について、専門家を交えて検証すると報道されています。
 国道340号は道幅が狭く、急カーブ、急勾配で、特に冬期間は道路状況が悪化し、鉄道の代替道路とはなり得ません。地元住民は代行マイクロバスによる長時間の乗車を余儀なくされ、こうした不便な生活が既に1年11カ月の長期間にわたっております。
 ついては、県は、基本的にどのような考え方でこの課題に対応するのでしょうか。また、JR東日本及び国等に対して、これまでどのような取り組みを行ってきたのでしょうか。検証委員会は9月までに検証結果をまとめるとされていますが、その後、JR東日本と交渉することになると時間がかかることになります。地元住民は鉄路復旧の一刻も早い結論を待ち望んでおります。問題の早期解決に向けた今後の具体策はどうでしょうか、知事に御所見をお伺いします。
 東日本大震災津波被害からの県内の鉄道復旧については、三陸鉄道が、現在、北リアス線の久慈竏駐c野畑間及び宮古竏衷ャ本間は運行が再開されているとともに、国の新たな復旧支援制度を活用し、平成26年4月の全面再開に向けて復旧工事が進められています。また、JR八戸線は、避難路を整備の上、3月から再開されているところであります。
 一方、JR山田線宮古竏抽・ホ間及び大船渡線気仙沼竏註キ間は、駅舎、線路、橋梁の流失など甚大な被害を受け、不通となっています。両線は地域住民の日常生活に欠かすことができない路線であるとともに、鉄路復旧を進めている三陸鉄道と連結し、観光路線としても極めて重要な路線であることから、早期復旧に向けて、県、市町村が一体となって取り組んでいかなければなりません。
 先般のJR山田線公共交通確保会議において、JR東日本は山田線のBRTによる仮復旧案を提案したところであり、沿線自治体首長から、鉄路の復旧は担保されるのか、BRTのメリットはどうかなどの質問があったが、JR側は鉄路での復旧の明言を避けたと報道されております。鉄道は、被災沿岸市町村の復興計画、まちづくりと一体となって議論していかなければなりませんが、鉄道の不通後、既に1年3カ月が経過し、沿線の住民は、代替バスの本数や所要時間などの不便に耐えて利用しているところであります。ついては、県は、JR山田線、大船渡線の復旧に向けての取り組みを加速化するため、これまでどのような取り組みを行ってきたのでしょうか。また、早期復旧に向けた今後の具体的な方策についてお伺いします。
 20世紀という時代は、人間こそ一番偉い存在だという思い上がった考えが頭をもたげてきました。そして、自然への恐れが薄くなった時代と言ってもいいと思います。同時に、人間は決して愚かではありません。思い上がるということとは、およそ逆のこともあわせ考えた、つまり、私ども人間とは自然の一部にすぎないという素直な考えであります。このことは古代の賢者も考えたし、また、19世紀医学もそのように考えました。ある意味では、平凡な事実にすぎないことを、20世紀の科学は、科学の事実として人々の前に繰り広げて見せたのです。
 ここで起こった東日本大震災津波。21世紀の人間は、より一層、自然の恐怖を知り、自然を尊敬することになるでしょう。そして、自分に厳しく相手に優しいという自己を確立し、助け合って生きていくのであります。
 岩手の沿岸が立派に復興することを祈って質問を終わります。御清聴ありがとうございました。(拍手)
   〔知事達増拓也君登壇〕
〇知事(達増拓也君) 佐々木大和議員の御質問にお答え申し上げます。
 まず、県のアジア戦略についてですが、中国を初め、巨大な人口を抱え著しい経済成長を背景に購買力が高まっている東アジア地域は、極めて有望な市場であり、この地域との経済的な連携を強化していくことは、本県産業の成長と震災からの早期復興にもつながります。
 また、最大市場の中国においては、高所得者層を中心に本物志向が高まっており、長い歴史やすぐれたわざに培われた南部鉄器等の伝統工芸品や日本酒など、本県の持つ個性や強みを生かした経済交流がますます重要となっています。このため、県としては、大連、ソウルの両海外事務所を東アジア地域における拠点として経済交流事業を展開しているところです。特にも、上海万博出展を契機とした中国経済人等とのつながりなど、これまで培ってきた人的ネットワークを有効に活用しながら、東アジア地域への県内企業のビジネス展開の支援や、安全・安心な県産品のPR、物産展の開催などによる県産品の販路拡大、民間との協働による観光客の誘致に戦略的に取り組んでまいります。
 次に、新しい成長産業についてでありますが、本県の地域経済を持続的に成長させていくためには、自動車産業や半導体関連産業など、国際競争力の高いものづくり産業の振興や、地域の特性、資源を最大限に生かした産業の振興により、県外から安定的に外貨を獲得する域外市場産業を強化するとともに、得られた所得を県内で循環させていくことが重要であります。
 これまで、本県が中国を初めとする東アジア諸国に向けて取り組んできた県産品の販路拡大や観光客誘致については、十分な手ごたえを感じているところであり、今後においても、第1次産業や観光産業など、本県の高いポテンシャルを生かせる分野は、域外市場産業として大きな可能性を持つ成長産業ととらえることができます。特に、こうした国々における安全・安心な日本の食品に対するニーズは引き続き高まっていくものと考えられますことから、加工機能の強化や企業間連携等により農林水産物の付加価値を高め、これらの製品の販路開拓を進めてまいります。
 また、平泉の文化遺産を復興のシンボルとして、世界遺産登録効果の維持、継続を図るとともに、防災やジオパークの取り組みを通じて、三陸エリアの観光地としての魅力をさらに高めるなど、中国を含めた海外からの観光客誘致に積極的に取り組んでまいります。
 次に、JR東日本による岩泉線廃止表明への県の対応についてでありますが、JR岩泉線は、急峻な山々に囲まれた交通難所において、安全で確実な公共交通機関として地域住民の、特にも、交通弱者である高齢者や通学生の日常生活にとって極めて重要な路線であるとともに、観光路線として欠かすことができない貴重な交通手段であります。また、沿線の市町では、これまで1万人を超える署名や、900人以上が参加する決起大会が行われるなど鉄道の復旧を強く望んでおり、県としましても、JR岩泉線の早期復旧を求めていく考えであります。
 こうしたことから、JR東日本及び国に対しては、平成22年度以降、JR岩泉線の早期復旧を要望してきたところであり、本年5月にも、JR岩泉線の早期復旧と地元との協議の場の設置について、県と沿線市町が合同で要望したところであります。
 JR東日本では、鉄道による再開を断念した理由として、安全対策に約130億円の費用がかかることと利用者が少ないことを示しているところでありますが、県としては、このたび設置したJR岩泉線安全対策費用検証委員会におきまして、費用の妥当性について9月末を目途に検証を行うとともに、並行して、利用促進等の岩泉線の課題についてJR東日本と地元との協議を進め、早期復旧につなげたいと考えております。
 その他のお尋ねにつきましては、関係部長から答弁させますので御了承をお願いします。
   〔商工労働観光部長橋本良隆君登壇〕
〇商工労働観光部長(橋本良隆君) 海外事務所の活動状況についてでありますが、大連、ソウルの両海外事務所は、東アジア地域における経済交流や観光客誘致の拠点として、これまで培ってきた人的ネットワーク等の財産を活用し、積極的に活動を展開しております。
 具体的には、大連事務所では、昨年12月に、中国の大手食糧商社に対する副知事によるトップセールスの実施、本年3月には、大連市において本県の日本酒を紹介する商談会を開催するなど、県産農林水産物や加工食品、工芸品等の対中輸出や、中国における県内企業の事業展開の取り組みを支援しております。
 また、ソウル事務所では、昨年9月に韓国の日本食品輸入業者を本県に招聘し、水産加工品などの輸出に結びつけているほか、本年3月には、現地旅行代理店との観光ビジネス商談会をソウルで開催するなど、観光客誘致を推進しております。
 今後とも、本県地域産業のさらなる活性化や震災からの早期復興に向け、海外事務所の人的ネットワークの強化と活用を図りながら、東アジア地域を対象とした経済交流や観光客誘致に取り組んでいきます。
   〔理事高前田寿幸君登壇〕
〇理事(高前田寿幸君) 土地利用の再編等に係る規制緩和についてでございますが、復興整備事業の円滑かつ迅速な実施に向けて、規制や手続の特例等を含む復興特区制度の有効な活用を図るため、制度の柔軟な運用が必要であるとともに、現在、各種復興の取り組みにマンパワーを重点化させている関係市町村の事務負担を軽減させるためにも、事務手続の一層の簡素化等を図ることが重要であると認識しているところでございます。このため、県といたしましては、さらなる規制緩和を図るため、復興特区制度の柔軟な運用や事務手続の簡素化等について引き続き国に対して要望するとともに、市町村の復興整備計画の作成や許認可等の協議、同意を得るための協議会の開催等を支援し、復興特区制度を活用した手続のワンストップ処理や許可基準の緩和等を図り、市町村の復興整備事業の円滑かつ迅速な実施を促進してまいります。
   〔県土整備部長若林治男君登壇〕
〇県土整備部長(若林治男君) まず、復興住宅の県内業者への発注についてでありますが、復旧、復興工事につきましては地域の企業を優先することを考えておりまして、災害公営住宅につきましても、県内企業においても施工実績が多いことから、条件付一般競争入札のほか、設計施工一括発注なども検討しておりまして、県内に本店がある建設業者であることを参加資格にすることを基本に進めてまいります。
 次に、県産材の活用についてですが、県としては、より早く、より多くの災害公営住宅を建設することを重視し、建設用地が限られている現状においては、RCづくりや鉄骨造を中心に建設を進めていく方針であります。ただし、十分な用地が確保できる見込みがある場合には、木造の災害公営住宅を建設することも考えておりまして、具体的には、野田村におきまして木造の災害公営住宅を30戸建設する予定であります。
 なお、市町村におきましては、建設戸数2、292戸のうち、403戸を木造で建設することとしておりまして、今後とも、県産材の活用が図られるよう取り組んでまいります。
 次に、買い取り方式による民間業者の育成についてでありますが、災害公営住宅における買い取り方式は、公募で選定した事業者と県が協定を締結した後に事業者が自己資金により公営住宅を設計、施工し、完成後に県がそれを買い取るという仕組みでありまして、設計から完成までの期間短縮が図られるという利点があります。
 一方で、財産取得という現制度では、着手時点での前払いができないため、信用力が高い大手の企業でないと参入しにくいという課題もございます。このため、現在、買い取りのほか、直接建設においても同様の期間短縮ができます設計と施工を一括して発注する方法などにつきまして具体的に検討しておりまして、その方法でも、県内の建設業者を参加資格にすることを基本と考えておりまして、県内の民間住宅事業者の育成にも資すると考えております。
   〔農林水産部長東大野潤一君登壇〕
〇農林水産部長(東大野潤一君) まず、森林経営計画制度への対応についてでありますが、今年度から開始された森林経営計画制度は、森林施業の集約化や計画的な木材生産に欠かせないものであり、県では、昨年度から各種会議や研修会等を通じて、作成主体となる森林組合等への周知と作成指導に取り組んでまいりました。
 また、森林経営計画は、面的なまとまりが認定の要件となることから、小規模な森林所有者の場合は森林組合などが所有者を取りまとめる必要があるため、地域で計画作成を担う森林施業プランナーの養成や森林の調査、境界確認等に要する経費への助成、樹種や林齢など、計画作成に必要な森林情報の提供などの支援をしているところであります。
 今後とも、計画を認定する市町村と連携して制度の周知徹底に努め、県内全域で森林経営計画の作成が進むよう取り組んでまいります。
 次に、森林・林業再生プランと震災復興への県産材利用促進についてでありますが、森林・林業再生プランでは、公共建築物などへの木材利用や地域材住宅の推進による木材利用の拡大を目指しておりますが、県では、震災復興での公共施設、公共工事での県産材利用を積極的に推進するため、本年4月に、県の木材利用推進行動計画の見直しを行ったほか、市町村に対して県産材の利用促進を働きかけております。
 また、建築サイドが求める木材製品を安定的に供給できるよう地域の製材所間の連携を促すほか、乾燥施設の整備への支援や技術指導を行うなど、復興住宅等への県産材利用も促進し、震災復興での県産材利用の拡大を図ってまいります。
 次に、県内木材の最大限の活用策についてでありますが、森林から産出される木材を有効かつ最大限に活用することは、林業、山村の活性化、森林の適切な整備、保全につながっていくものであり、重要な取り組みと認識しております。
 森林伐採により産出される丸太は、製材品向けのいわゆるA材、合板や集成材用ラミナ向けのB材、パルプ、チップ向けのC材と、大きく三つに区分されております。このうち、A材やB材につきましては、建築サイドが求める、より確かな品質の木材製品として供給できるよう、木材加工施設の整備を進めております。また、C材につきましては、製紙用チップとしての活用に加え、震災以降、再生可能エネルギーとしての活用の動きが活発化していることから、木材バイオマスコーディネーターによる指導、助言を行うなど、木質バイオマスエネルギーとしての活用も促進し、林地残材も含めて、県産材が最大限に活用されるよう取り組んでまいります。
   〔環境生活部長工藤孝男君登壇〕
〇環境生活部長(工藤孝男君) まず、本県の再生可能エネルギーの利用可能性についてでありますが、再生可能エネルギーの利活用を推進するため、県では、本年3月に策定した岩手県地球温暖化対策実行計画において、再生可能エネルギーによる電力自給率を、平成22年度の18.1%から、平成32年度には約2倍の35%とする目標を掲げているところであります。
 再生可能エネルギーの固定価格買取制度に係る調達価格及び調達期間の案が示された4月ころから、民間事業者を中心に、メガソーラーや風力発電などの大規模発電施設の立地の動きが活発化し、洋野町や一関市においては、メガソーラーや大規模風力発電の計画が進められているところであります。
 これまでの積極的な企業訪問による情報収集やマッチング、さらには新たに創設した県単融資制度の紹介など、大規模発電施設の立地に向けた取り組みを進めてきたことが、これらの立地に結びついたものと考えております。さらには、防災拠点施設や住宅、事業所等への導入も支援しているところであり、総合的な取り組みを通じて、再生可能エネルギーによる電力自給率の向上を図ってまいります。
 次に、風力発電への対応方向についてでありますが、本県は、北上高地を中心にポテンシャルが高く、事業者が強い開発意欲を示すなど、今後の再生可能エネルギー導入の核として位置づけているところであります。しかしながら、風力発電は出力が不安定であることから、電力系統への接続に当たって一定の受け入れ枠に基づく募集、抽選方式がとられているため、その接続に制約があること、また、用地関係法令との調整や環境アセスの手続に時間を要し、開発期間が長くなることなどの課題が挙げられております。
 このような状況を踏まえ、県としては、電力系統の広域的な運用の実現や送配電部門の中立性を確保するなど、全国的視点での電力システムの構築や制度改革の推進を国に要望するとともに、復興特区を活用した規制の特例措置の提案を行うなど、風力発電導入の環境整備が図られるよう努めてまいります。
 次に、小水力発電についてでありますが、県内には出力が1、000キロワット未満の小水力発電は18カ所設置されているものの、設置コストや近くに配電線がないため系統連系が困難などの課題があり、適地が限られる面があったところであります。こうした中、本県では、豊富な水量と高低差に富む地形条件の中に多数存在する農業水利施設への導入の可能性について、平成21年度から県内24カ所で調査を実施しているところであり、その結果を土地改良区や市町村に提供しながら、導入に向けた啓発に取り組んでいるところであります。
 また、下水道終末処理場では、放流水の落差を利用した発電施設の建設を進めており、さらには、企業局では、現在、河川を利用した二つの水力発電所の建設や新たに建設可能な地点の調査、検討を行っているところであります。
 小水力発電は比較的安定的な電源であり、課題であった採算性の面でも、固定価格買取制度や国の支援制度などにより導入環境が整ってきたことから、コスト面での再検証を進めながら、小水力発電の普及促進を図っていく考えであります。
 次に、揚水発電についてでありますが、その多くは電力会社が夜間の余剰電力を活用して揚水を行い、電力需要の多い日中に発電を行うことで、昼夜の電力の需給バランスの調整に活用するという特殊な発電形態であります。
 海水揚水発電につきましては、海が下部の調整池としての機能を果たすため、その設置が不要になるというメリットはあるものの、陸上部に設置する上部の調整池の海水浸透防水対策や海水飛散による生態系への影響、金属材料の腐食等の課題も挙げられているところであります。
 いずれにいたしましても、揚水発電につきましては、安価な余剰電力の確保を含めて、多面的な検討が必要であると考えているところであります。
   〔政策地域部長中村一郎君登壇〕
〇政策地域部長(中村一郎君) JR山田線、大船渡線の復旧についてでありますが、JR東日本は、鉄道の復旧に当たり、津波時の安全性の確保やまちづくりとの整合性、復旧費用の負担が課題との考えを示しております。このため、県としては、これまで復興調整会議の場などにおいて、防潮堤の整備予定状況や、市町の復興計画と鉄道の復旧についての議論を重ねてきたところであります。
 また、復旧費用は、第一義的にはJR東日本が負担すべきものと考えますが、まちづくりに合わせたルート変更やかさ上げなどの費用についてはJR東日本は国に対し財政支援を求めており、県としても、宮城県、福島県と合同で、国に対し、鉄道の早期復旧に向けた財政支援の要望を行ったところであり、また、本年2月にも、沿線市町とともに、国に対し財政支援等の要望を行ったところであります。
 今後も、安全性の確保やルートの位置などの課題については、JR東日本と市町との個別協議を促進し、また、復興調整会議の開催頻度をふやして協議を行うよう、主催者である国に対して要請をしていくとともに、地域の復興という観点から、両線の早期復旧がなされるよう、沿線市町と連携をしながら、国に対し引き続き財政支援等の要望を実施してまいります。
 また、鉄道が復旧するまでの間の代替交通の確保についても、鉄道復旧について協議する復興調整会議とは別に、地元自治体が中心となって公共交通確保会議を設置して協議を始めたところであり、二つの会議を迅速に進め、鉄道の早期復旧と復旧までの間の沿線住民の足の確保がなされるよう、協議、調整を進めていきたいと考えております。
〇議長(佐々木博君) 次に、郷右近浩君。
   〔20番郷右近浩君登壇〕(拍手)

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