平成22年2月定例会 第15回岩手県議会定例会 会議録

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〇5番(岩渕誠君) 民主党の岩渕誠です。
 2月定例会に当たり、登壇の機会をいただきましたことに感謝申し上げ、質問をいたします。
 最初に、チリ大地震と、それにより発生した津波で被害に遭われた皆様にお見舞いを申し上げますとともに、住民の安全確保や警戒に当たられた関係者に敬意と感謝を表したいと思います。
 このチリ地震津波について、まず質問いたします。
 今回の津波災害では、調査途中ではあるものの、水産関連施設に深刻な被害が発生していることが明らかになっています。養殖いかだはもちろんのこと、まさに刈り取り期を迎えたワカメやホタテ、カキなどを初めとする水産物の落下で漁家の経営を直撃するものと大きな懸念をいたしております。水産物被害の実態と今後の漁家支援について、現段階で見通しをお示しください。また、今回は幸いにして人的被害はなかったものの、避難率などに課題を残したと感じています。きょう3月3日は、昭和三陸大津波が発生した日でもあります。県として、今回の津波防災体制について課題を見出したのであれば、お示しいただきたい。
 次に、県財政と出資法人についてお尋ねいたします。
 今議会に提出されている新年度一般会計当初予算案は総額で6、987億円余りと、地方交付税の復元による歳入確保もあり、前年度比6.1%の伸びとなっています。いわて県民計画の着実な実行、とりわけ深刻な地方経済と雇用問題や地域医療への対応などについて、重点的に取り組む姿勢を予算案で示したものと知事は表明しております。地方に住む人々の現状を踏まえ、このタイミングでの積極的な財政出動は当然とり得るべき政策と思う一方で、県債残高が過去最大の1兆4、724億円に達し、過去債務の償還が平成27年度には1、396億円に上る見込みとなるなど、財政の硬直化が懸念されています。必要な財政出動と今後の財政再建という、いわば相反する二つの課題が横たわっているわけでありますが、同時解決につなげる魔法のつえがいつの時代にも存在しなかったことを考えれば、当面は、財政運営上の無理無駄を省き、効率的な予算執行と早期の投資効果の発現をこれまで以上に求められていることは言うまでもありません。
 こうした認識のもと質問いたしますが、財政の効率的運用を目指すとき、私は、出資法人が抱える基金の運用のあり方について可及的速やかに議論を始めるべきと考えます。私の調査によれば、県の出資法人が自主財源で積み立てた政策的基金等は、連結決算上の指導監督対象となる32法人で実に282億円余りに達すると認識しております。出資法人収支が県の連結決算対象となっていることを考慮すれば、基金の運用と出資法人のあり方は、県の財政運営上、注視すべきであることは言うまでもありません。
 ところが現状を見れば、その運用は、このところの超低金利政策の影響を受けて縮小傾向になっており、本来の政策目的に合致した事業の形成が成り立たなくなっているものがないか懸念するところであります。加えて、一部の公社基金では、基金運用によって行う事業が本庁が行う事業と内容が重なる、あるいはそれゆえに利用者の使い勝手が悪いなどの指摘も一部にあると承知しており、そのほかにも解決すべき諸問題があると認識しております。
 出資法人をめぐっては、これまでも組織や事業の見直しは進められてきましたが、県全体としての効率的な予算執行の観点から、出資法人の基金運用の方法と事業執行についても改革を進めるべきと考えますが、基金の運用の現状と課題認識も含め、達増知事に御所見を伺います。
 次に、他県との連携についてお伺いいたします。
 岩手県は前知事時代に、特に北東北3県の枠組みに重きを置いて連携を進めてきたことは御承知のとおりであります。知事同士が共通課題について話し合うサミットの開催や県幹部の人事交流はもとより、3県合体論など自治の形にまで踏み込んだ報告書の作成なども進められてきたところであります。実験的な、学究的な議論が重ねられてきたことも含め、北東北の枠組みでさまざまな取り組みを進められてきたことにはそれなりの意味があったかとは思いますが、産業分野に限って見ても、自動車関連産業の集積が岩手、宮城─いわば中東北を中心に進んでいるなど、取り組むべき課題が多様化、広域化し、取り巻く環境は大きく変わってきたと認識しています。北東北という枠組みを重視した他県連携から既に13年が経過する中、一度立ちどまって検証をし、現在の枠組みによるサミットの開催意義も含めた今後の他県連携のあり方について再構築していく必要があると思いますが、達増知事はいかがお考えでしょうか、お示しいただきたいと思います。
 次に、地域医療再生についてお伺いいたします。
 今、岩手県が抱えている地域医療の問題は大きく二つに分けることができると私は考えております。一つは、まさに病院経営の問題であり、もう一つは医療提供体制における量的、質的確保の問題であります。この二つが相まって医療危機を招いているものと思いますが、このうち、病院経営の問題については、社会保障費の抑制政策に起因した診療報酬単価の引き下げが直撃したことが大きな要因であることは、既に広く指摘されているところであります。
 こうした中、中医協─中央社会保険医療協議会は、新年度の診療報酬改定について、10年ぶりのプラス改定を答申しました。改定案の骨子は、中小病院の再診料引き上げや、医療クラーク配置加算の積み増し、難易度が高い手術や救急医療、産科、小児科、外科などへの配分増のほか、休日、夜間の外来診療を行う病院に対し、開業医が支援体制を組む場合の診察料も新設となっています。総じて、病院勤務医や病院サイドに配慮した内容の答申でありますが、こうした診療報酬の改定が4月から実施された場合、県立を初めとする県内の公立病院にどのような影響があるのか、また、この診療報酬改定をどう評価するのかお示しください。
 さて、もう一つの問題である医療提供体制については、絶対的な医師抑制政策や診療科目の地域偏在により、劇的な好転が見込めない状況が続いているものと認識いたしております。こうした中、国では、昨年3月、国立がんセンター中央病院の土屋了介院長を班長とする研究班が、専門医、家庭医のあり方について、家庭医、総合医は、幅広い疾患の管理だけでなく、生活、家庭環境の背景を踏まえた上で、予防や健康増進までを含めた医療を展開することから、地域に根差した医師として、それぞれの地域の特性に応じた連携や医療提供体制の中に位置づける必要があるとする報告書をまとめています。
 また、同時に、専門医については、多くの国が市場原理に任せず、何らかの形で医師配置の管理を国家レベルで行っているケースを紹介し、我が国の深刻な医師の地域間、診療科目間偏在の是正にも有効との示唆を行うなど、我が国の医療提供体制をめぐる課題解決の一つとして、総合医の育成と専門医の適正配置が必要であることを示した内容となっています。地域医療関係者の間では、専門医中の専門医である国立がんセンター中央病院長が班長となった報告書に、我が国が行ってきた専門医偏重の傾向を抜本から見直し、専門医の事実上の国家管理の導入と、総合医の地域医療への位置づけが明確になったことに、驚きと期待が寄せられているようであります。
 私が調査を行った兵庫県の八鹿病院や北海道の勤医協病院、そして我が県の藤沢町民病院など、総合医が活躍している医療機関のケースでは、深刻な医師不足に対応しながらも、救急医療や福祉にも対応できる幅の広い、かつ奥行きのある運営で、地域医療と福祉の充実に成果を上げているところも出ております。
 昨年の一般質問以来、私は、医師不足と高齢化が進んだ岩手に必要な医師として総合医育成を進めるべきと指摘を行ってまいりましたが、県でも地域病院担い手医師育成検討会を設置し、総合医育成に向けた議論が始まり、期待を寄せるところであります。特にも岩手では、総合医療のあり方を実践し、全国の模範ともなる成果を上げている藤沢町民病院と県立磐井病院が連携して総合医育成を進めるなど、医療現場が中心となり、国に先駆けた取り組みもスタートしています。しかし、こうした取り組みを成功させ、岩手に必要な地域医療福祉を本当に守っていくには、医師の養成段階からの意識づけと協力が必要です。総合医育成をめぐっては、残念ながら医師養成に当たる大学間で温度差があるとの指摘が数多く出されており、制度面はもとより、その必要性をめぐる認識でも、総合医を育成する環境が不十分だというのが実情ではないでしょうか。育成検討会が議論している段階ではありますが、総合医の育成に向けて、後期研修時の身分や研修プログラムの策定提言に、県としてどう向き合うおつもりなのかお聞かせください。
 また、あわせて、必要とされる総合医の人員を示し、いつまでにどれぐらい導入するのか、数値目標を持った計画を策定する必要があると思いますが、岩手医大を初めとする医師養成機関と総合医育成への協力の構築をどう進めるつもりか、御所見を伺います。
 さて、地域医療問題の最後に、住民との相互理解のあり方について質問いたします。
 昨年度来の県議会での議論などを踏まえ、県では、地域医療に関する懇談会を圏域ごとに開いて、地域住民との地域医療問題への認識の共有と役割分担など、今後のあるべき姿について検討を進めてまいりました。一定の評価はいたしたいとは思いますが、住民側は組織の代表にとどまっていて、一般住民の間では、いまだ医療提供側の現状についての理解が十分とは言いがたい状況が続いていると感じております。
 さきに紹介した藤沢町民病院の佐藤元美院長は、内科系総合雑誌において、議会や首長と対立する医療機関は必ず衰退すると述べていて、対立を生む原因として、住民は患者として診察室で医師には言えない不安や不満を選挙民として議員や首長には言いやすく、議員や首長は、その批判の矛先を医療機関へと向けるといった三すくみの構造を指摘しています。そう分析した上で、佐藤院長は、住民と議会、首長、そして医療機関の良好な関係づくりの必要性を説いているわけですが、その点から言えば、医療局も、県立病院も、もう一歩住民に近い立場での相互理解に向けた情報公開と意見交換を進める必要があります。具体的には、病院ごとに院長を初め医師たちに参加してもらっての住民懇談会や研修医の報告会などの開催です。藤沢町では、こうした取り組みを夜間にナイトスクールとして各地区を回って行ってきており、首長や議員はもちろん、住民と病院の間で信頼関係を築いているわけです。こうした取り組みを県でもさらに取り入れるべきと考えますが、いかがでしょうか。
 次に、第1次産業の振興と岩手ブランドの構築についてお伺いいたします。
 いわて県民計画における12月議会の委員会質疑で、達増知事は、農林漁業は岩手の成長産業であると明言され、観光や地域活性化などの波及効果も含む、すそ野の広い産業として支援する姿勢を示したことは大いに評価するところであります。国でも、戸別所得補償制度の実施を柱とする農政改革が新年度からスタートし、安心して生産に取り組める環境づくりに期待が寄せられています。
 農政改革の中で私が注目するのは、産地づくり交付金にかわる水田利活用自給力向上事業への対応であります。新しいこの制度では、水田を利用して作付させるホールクロップサイレージ用稲や飼料用米、米粉用米などの新規需要米について、10アール当たりの交付単価が8万円と設定されています。有利条件が示されたことで、農家の間では活用の可能性を探る動きが出ていますが、新規需要米への取り組みは、岩手にとっては、その農業特性から効果が見込まれると思います。ホールクロップサイレージ用稲も飼料米も、いずれも畜産、酪農と密接に関係しているわけですが、全国有数の畜産県である岩手にとって、制度活用による水田の有効利用と特色ある畜産振興、さらには有機堆肥の水田への還元による土づくりの向上など相乗効果も期待されると考えます。しかし、この効果の発現には新規需要米の受け皿の開拓が不可欠で、行政の取り組みも重要です。米粉用米の用途拡大とあわせて新制度に対応した県の今後の支援対策をお示しいただきたい。
 さて、いわて県民計画では、1次産業の振興策として、プレミアム戦略と6次化支援を打ち出していますが、このうち、プレミアム戦略については、意欲的な担い手にとって、技術力と愛情を注いだ成果が価格に反映される可能性もあるとして、生産へのモチベーションは高まっています。実際、昨年初めてマーケットに登場したプレミアムブランド米は、5キログラム2、800円余りの価格設定でも、県内では当初の販売予定数量のおよそ2倍を売り上げたほか、東京での試験販売でも食味評価が極めて高く、購買を考える人たちも多かったと承知しています。食味ランキングでも今年度産のひとめぼれの評価が総じて高い中、魚沼コシヒカリなどに対抗する岩手のフラッグシップ米として今後の取り組みを注目していますが、県として、米を初めとするプレミアムブランド戦略をどう進めていくおつもりか、お尋ねいたします。
 県では、あわせて6次化も進めて、単なる農産品から、付加価値の高い商品、製品へと食産業の振興を図る方針ですが、プレミアム商品も含め最大の課題は出口、つまり販売対策であることはこれまでも指摘されてきたところです。具体的な売り込み先として首都圏を想定するならば、もう少し小口化する必要がありながら、今、いわて銀河プラザなどで販売されている米は2キロ袋や5キロ袋が多く、顧客の立場に立った販売とは到底言えない状況です。せっかくいいものをつくっても、実際に口にする消費者のことを考えなければ、1次産業の従事者は浮かばれません。ぜひ、細かなところまで神経を配った戦略の確立をお願いいたします。
 また、岩手の食産品でも、工業製品でも、岩手県としての基準を決めて、その品を推奨したり、優先的にいわて銀河プラザなどへの出品ができるなどといった認証制度や統一ブランドの策定により、岩手産を前面に押し出した売り込みを図る考えはないでしょうか、御所見を伺います。
 販売戦略で言えば、ネットワークづくりも重要です。私は、先日、東京銀座において、地元農家の若い世代とともに農畜産物の販売を行ってまいりました。おかげさまで、地元から持ち込んだ高級和牛や野菜、果物がほぼ完売と、予想以上の成果を上げることができました。次代を背負う若き農業者の意欲が成功の原動力だったことは言うまでもありませんが、もう一つのかぎは地元出身者の皆さんの協力でした。朝早くから、ふるさとの若者たちのためにと、地元出身者だけでなく仕事仲間や友人を誘って出かけてくださり、自分とふるさととのかかわりを語る中で、どんなに地元の農産品がよいものであるかを語るなど、遠く離れても、なお冷めがたい郷土愛を間近で感じられました。私は、こうした皆さんの思いを受けとめ、協力体制をしっかりと築くことが、岩手のものをPRする上で極めて大事だと改めて教えられた気がいたしますが、オール岩手の力を発揮して物を売り込むための具体的な戦略に、岩手出身者や岩手ファンに参加してもらうことが不可欠と思いますが、この体制づくりについてお考えをお示しください。
 以上で壇上からの質問を終わります。
   〔5番岩渕誠君質問席に移動〕
   〔知事達増拓也君登壇〕
〇知事(達増拓也君) 岩渕誠議員の御質問にお答え申し上げます。
 出資法人の基金運営についてでありますが、県出資等法人の資金運用については、元本が確実に回収できる安全な資金運用を行うよう指導しております。各法人では国債等を中心に運用しているために、近年の低金利により運用益収入は大幅に減少しており、自主事業の実施に当たり基金の運用益を活用している法人にあっては、既存事業の縮小や見直しを余儀なくされているところもあると認識しております。
 県も、厳しい財政運営が続く中で、県と出資法人がそれぞれ担うべき役割を明確にし、県全体として効率的に県民サービスを提供できるよう、県と出資法人の事業の見直しを一体的に行うことが必要であると認識しております。このため、毎年度こうした検証を行っているところでありますが、平成23年度から平成26年度を推進期間とする次期アクションプランの策定に当たりまして、県と県出資等法人の役割分担や事業執行のあり方についても全面的に見直しを行う方針であり、その中で基金運用のあり方についても検討が行われることになります。
 次に、北東北3県連携の評価等についてであります。北東北3県は、その気候、風土、地理的条件が似通っており、共通する政策課題も多いことから、3県が連携して政策の推進や課題の解決に取り組んでいくことは意義があるものと考えており、これまで連携を積み重ねてきた北東北としてのまとまりは一つの貴重な財産であると認識しております。
 私が知事に就任して以降、北海道・北東北知事サミットは3回開催され、縄文遺跡群世界遺産登録推進本部及び北海道・北東北地球温暖化対策推進本部の設置、北海道・北東北食料・木材供給基地行動宣言の採択といった成果を上げているところであります。また、産業経済の活性化を初めさまざまな課題解決を図る上で重要と考える宮城県とは、これまで、中国大連経済事務所の共同設置や宮城県沖地震に備えた津波防災対策など、さまざまな分野で連携を進めていますが、東北全体としても、とうほく自動車産業集積連携会議や東北観光推進機構が設置されるなど、課題に応じた県レベルの連携を進めているところであります。
 また、私は日ごろ、他県の知事、また他県の市長との意見交換や連携、協力に努めているところでありまして、今後とも、広域連携による取り組みの検証を行いながら、地域資源の相互活用やスケールメリットの発揮などによって、地域全体の発展を図るため、北海道、北東北や東北全体など、県レベルでの連携を積極的に推進してまいりたいと考えております。
 その他のお尋ねにつきましては関係部局長から答弁させますので、御了承をお願いします。
   〔農林水産部長瀬川純君登壇〕
〇農林水産部長(瀬川純君) まず、水産関連施設の被害の実態と今後の漁家支援の見通しについてでありますが、現段階では、特に県南から県央海域でワカメ、カキ、ホタテなどの養殖施設が破損し、水産物の流失や落下などの被害が発生しているところであります。詳細な被害調査には少なくても1週間程度かかると見込まれますが、できるだけ早期に被害の実態を把握するよう努めてまいります。
 今後の漁家支援等については、早急な対応として、被害を受けた養殖施設については、生産物を最大限確保できるよう丁寧な復旧に努めているところであります。また、生産物や養殖施設の被害については、漁業共済制度によって被害額が補償されることから、補償金が速やかに支払われるよう、漁業共済組合に対し要請したところであります。
 施設の復興については、国の強い水産業づくり交付金や県単独補助事業を活用し、災害に強い養殖施設の整備を支援してまいります。また、運転資金等については、低利の制度資金の活用を促進するほか、県内金融機関へ資金の円滑な融通などを要請してまいります。さらに、今後の詳細な調査結果を踏まえ、国に対して必要な支援を要請するなど、市町村や関係団体などと連携しながら復旧、復興に取り組んでまいります。
 次に、新規需要米に対する県の支援策についてでありますが、新規需要米の生産振興については、米粉パンなど米利用の新たな可能性を拡大し、自給飼料の確保による畜産の振興、さらには水田の有効利用に資するものであり、これまで積極的に推進してきたところであります。今般のモデル対策において、新規需要米の交付単価が、自給力向上の観点から10アール当たり8万円とされたことから、農業者の関心は高くなっておりますが、新規需要米の生産拡大に当たっては、安定的な需要の確保や所得確保のための生産性向上、効率的な乾燥調整や保管の仕組みづくりが不可欠であると考えております。このため、県といたしましては、農協等と一体となって、需要確保のため、製パン業者と連携した商品開発、畜産農家や飼料メーカー等の需要把握に努めるとともに、低コスト生産のため、団地的な取り組みを基本として、直播栽培技術の普及や県オリジナル多収品種の作付拡大、安定供給のためカントリーエレベーター等貯蔵施設の活用の支援など、生産から流通にわたる総合的な取り組みを促進してまいります。
 次に、プレミアムブランド戦略についてでありますが、農林水産物のブランド化の推進については、消費者や市場から支持される付加価値の高いプレミアム商品の開発、PRを通じて、当該商品の販売促進はもとより、県産農林水産物全体の知名度及び評価の向上を図ることが重要と認識し、取り組んでいるところであります。これまで、民間や関係団体との連携のもと、安全・安心やおいしさに徹底的にこだわり、プレミアムブランド米を初めプレミアム短角牛、三陸岩手わかめなどを開発するとともに、県内外での商品PRを通じた販路開拓に取り組み、消費者等から高い評価、支持をいただいているところであります。今後は、プレミアムブランド米の取り組み強化に加え、雑穀や牛肉、水産物等について、関係機関と連携し、新たなプレミアム商品の開発を支援するとともに、食産業、観光産業と連携し、商品の品質の高さに強いこだわりを有する消費者、実需者等をターゲットとした積極的な販路開拓、情報発信により、県産農林水産物のブランド化を推進してまいります。
   〔総務部長菅野洋樹君登壇〕
〇総務部長(菅野洋樹君) 今回の津波防災体制についての課題についてでありますが、津波、大津波警報が発表された後、沿岸12市町村において3万1、635世帯、8万3、000人余を対象に避難指示が出されましたが、避難所に避難された人数は、2月28日15時時点で7、898人、避難指示対象人員の9.5%となっております。避難所のほかにも親戚宅等に避難された方も多数おられるとは聞いておりますが、避難率が低かったことが課題であると認識しております。
 市町村とも連携しながら検証を行い、今後の津波対策に生かしていきたいと考えております。
   〔医療局長田村均次君登壇〕
〇医療局長(田村均次君) 診療報酬改定による県立を初めとする公立病院への影響と評価についてでありますが、厚生労働省の公表改定率は、診療報酬本体でプラス1.55%、薬価等でマイナス1.36%、ネットではプラス0.19%と10年ぶりのプラス改定となり、過去4回連続のマイナス改定からしますと評価できるものと考えております。
 主な改定内容では、1点目として、病院勤務医の負担軽減に配慮されたものとなっており、医師の事務を補助する医療クラークに関する加算項目の追加や、既存項目の点数引き上げが行われたほか、急性期病棟における看護補助者の配置に係る加算が新設されております。
 また、2点目といたしまして、急性期医療に重点を置いた改定となっており、地域連携により救急搬送患者を紹介または受け入れた場合の加算の新設や、ハイリスク妊産婦の分娩に係る加算、救急患者の入院医療管理に係る加算などの点数が引き上げられた内容となっております。
 今回の改定では、主に急性期医療を担う基幹病院に重点を置いた改定内容となっており、また、地域病院におきましても再診料が引き上げられるなど、一定のプラス改定の効果が期待できるものと考えております。
 次に、住民との相互理解の醸成についてでありますが、県立病院においては、これまで、病院長や医師、看護師等の出席のもと、地域医療の現状や病院の運営状況等について理解を深めていただくため、地域懇談会などを行ってきているところであります。今年度は、1月末までに13病院で延べ61回開催し、2、563名の方々に参加いただいており、年度内にはすべての病院で開催する予定となっております。
 また、地域の実情を踏まえまして、市町村や地元関係機関と連携した病院運営につなげるため、医療局としても今年度から市町村連絡協議会を開催し、情報共有や意見交換を行っているところであります。
 議員御指摘のとおり、地域の方々と病院が相互に理解を深め、信頼関係を築いていくことは大変重要であると考えており、今後とも、地元市町村と連携しながら、県立病院や医師の置かれている状況などの情報発信や意見交換に積極的に努めてまいる考えであります。
   〔保健福祉部長千葉茂樹君登壇〕
〇保健福祉部長(千葉茂樹君) 総合医の育成についてでありますが、地域における中小規模の公立病院などにおいて、地域医療を担う総合的な診療能力のある医師を育成するため、昨年12月に、地域病院担い手医師育成検討会を設置し、議論を続けているところであります。今後、育成の仕組みや育成プログラムの方向性などについて取りまとめることとしておりますが、検討会で取りまとめました内容につきましては最大限尊重しますとともに、県と育成を行う病院がそれぞれの役割を十分に認識し、お互いに連携を図りながら、育成への取り組みを積極的に進めたいと考えております。
 また、数値目標を持った計画策定の必要性については、いわゆる総合医につきまして、現在、国や関係学会等においてさまざまな観点から検討がなされているほか、本県の検討会におきましても議論がなされておりまして、その位置づけや役割については多様なものがございます。また、その必要数については、県内の医療関係者の間では、当面の即戦力として20名程度は必要ではないかという意見があると伺っておりますけれども、国においては、今後、地域の医師不足や診療科偏在の状況について調査を行う予定とも聞いておりますことから、今後の国等の動向を見ながら、研究する必要があるものと考えております。
 さらに、医師養成機関との協力関係の構築につきましては、現在、岩手医科大学におきまして、地域医療に貢献する誠の医師の育成プログラムによりまして、地域の医療機関等での研修や実習等を実施しているところであります。
 このような卒前教育との連携のあり方につきましても、今後の検討会における育成プログラムの議論の方向性を見ながら、県としてどのような協力関係の構築が可能か、検討してまいりたいと考えております。
   〔商工労働観光部長廣田淳君登壇〕
〇商工労働観光部長(廣田淳君) まず、認証制度や統一ブランドの策定についてでありますが、県の認証制度の例としましては、主要原材料が岩手県産であり、県内の工場で生産され、品質がすぐれている食品を認証する岩手県ふるさと食品認証制度があり、これまで山のきぶどうなど29品目、64の商品を認定しております。また、いわて銀河プラザについては、原則として、最終加工を県内で行った県産品を取り扱うという出品基準を設け、県産品にこだわった商品を販売しております。
 ブランド化の取り組みにつきましては、他の商品や産地との差別化や高付加価値化をねらいとしまして、観光と物産におきましては、こちら、岩手ナチュラル百貨店、農産物におきましては、純情産地いわてのキャッチコピーを用いて情報発信に努めてきたところです。
 今後におきましては、岩手そのもののイメージアップをより一層図るため、新たなキャッチコピーやロゴマーク、認証制度などを含めた岩手を強くアピールしていく戦略について、これまでの取り組みを検証し、今後のあり方について県内外の産業界などの意見も聞きながら、関係部局と連携して検討してまいりたいと考えております。
 次に、販売ネットワークの構築についてでありますが、県外に居住する岩手出身者や岩手に理解や関心のある方など、岩手ファンと連携して県産品の販路拡大を図ることは、買うなら岩手のもの運動の趣旨とも合致するものであり、大変有効な手法と考えております。
 これまでも、いわて銀河プラザにおけます市町村主催の特産品販売イベントにおきましては、地元出身者の皆様の御協力をいただいており、県外での物産展においては各県人会の御支援をいただき、集客力を高めて売り上げの増加につなげている成功事例も出てきております。
 こうした取り組みをさらに広げるため、今後も各ふるさと会等の御協力のもと、県外事務所を中心として岩手ファンとのネットワークづくりに取り組み、イベントや商品情報の発信など、岩手ファンと連携した活動を積極的に推進してまいりたいと考えております。
〇5番(岩渕誠君) いろいろ御答弁ありがとうございました。
 今の部分で言いますと、前向きなものもありまして、農林水産部長の答弁の新規需要米のところで、カントリーエレベーターの支援が出てまいりましたけれども、これ大変重要なことだと思っておりますので、ぜひ積極的に進めていただきたいと思います。これは指摘、要望にとどめます。
 総務部長にお伺いをいたします。
 出資法人の改革に関連してなのでありますけれども、法人の基金運営とか、あるいは資産管理上で言いますと、現在、他県で表面化している問題は、日航株の問題だというふうに認識しております。空港行政の観点から保持している自治体とか、あるいは空港関係法人があるわけですけれども、御承知のとおり、上場廃止になって日航株は紙くずになったということなんですが、岩手県でも影響が懸念されるんですが、現状はどうなんでしょうか。それから、損失による経営への影響があるんでしょうか。まず、お答えをいただきたいと思います。
〇総務部長(菅野洋樹君) 日航株についてでありますが、岩手県空港ターミナルビル株式会社において、株式会社日本航空との相互の友好、信頼関係の構築や取引を円滑に進める観点から、JAL取引先持株会というのがございまして、ここに入会し日航株を保有しておりました。既に売却済みであると聞いているところでございます。
 また、今回、この日航株の保有につきましては、岩手県空港ターミナルビル株式会社が自己資本の中から定額を拠出して行っていたものでございまして、県が財政的支援を行っていたものではございません。また、今回の損失額は300万円余と聞いているところでありまして、直ちに同法人の経営に影響を及ぼすおそれはないものと考えております。
〇5番(岩渕誠君) やはり岩手でもあったなという感じがいたしますけれども、300万円余の損失、そして影響がないというお話でありましたけれども、県の財政運営上、出資法人といえども、これはあくまで自己資金ですよと言いながらも、やはり安全な運用に努めていただきたいと思いますし、先ほど平成23年度から26年度まで出資法人改革、全面的に基金運用も含めて見直すということでございますので、しっかりとここは見直しをしていただきたいと、このように思います。
 次に、医療局長にお伺いをいたします。
 診療報酬の改定については、来週ぐらいに全国説明会があると思いますけれども、その中に行かないとなかなか数字のところが出てこないのかなと思うんですが、収支部分で言うと恐らくプラスになってくるんだと思うんです。その中で、今回手厚い上乗せになっているのが医療クラークです。この医療クラークについては、現場からの配置要求も高いと承知しているんですが、今回のプラスの部分をどう生かしていくのか。量的な配置要求というのもあるんですが、それも大事だけれども、現在はどちらかというと、質的な部分でいろいろとクラークの向上をしてほしいという要望もあるようなんですが、この辺をどういうふうに対応されますか。
〇医療局長(田村均次君) まず、数字的な部分につきましては、現時点では詳細な分析ができないわけでございますが、今回の診療報酬改定のトータルでの改定率から試算しますと、4億円台の半ばぐらいが医療局としての増収分ではないかというふうに見込んでおります。
 それから、医療クラークの関係でございますけれども、医療クラークにつきましては、もう150人近くまで増員を重ねてきてございます。そういったこともございまして、医療クラークと、看護あるいは事務の他職種との役割分担ですとか、そういったことももう少し検証しなければいけないというふうに考えておりますし、それから、病院現場からも、研修をしっかりやってほしいとか、いろいろな要望が出てきておりますので、今回の診療報酬の改定の部分も踏まえまして、現場の意見も聞きながら、必要な検討を進めていきたいというふうに考えております。
〇5番(岩渕誠君) 4億円の半ばということで、収入がふえるということですから、収益的な収支、新年度の予算を見ていますと、ちょうどその部分ぐらいが赤字ということになっています。単純に比較はできませんけれども、ぜひ収支均衡に持っていくように御努力をいただきたいと思いますし、医療クラークについては、質的向上ということでよろしくお願いをしたいと思います。
 商工労働観光部長にお尋ねをします。
 いろんなキャッチコピーをつくっていろいろやっているという話なんですが、逆にコピーがあり過ぎてわけがわからないということなんですね。統一、シンプルにやったほうがいいと私は思います。
 それから、いろんなことのこだわりで、特に食に関して言うと、その購買行動が、こだわりで買っている人もいれば、当然味で買っている人もいるわけですね。
 ミシュランガイドというのがあります。私は読むだけで、そういったところには行ったことがないんですが、やはり味、これは岩手県として、あるいはいろんなコンクールをやっていますけれども、これはもうおいしいんですよと、これはもう岩手県ならではのもので、おいしいんですよということを前面に出して、ブランドやあるいは販売戦略を組んでいかないと。今だと、こだわりです、こだわりですと言われても、何のこだわりかわからない。やはり単純にこれはおいしいんだと、安全なんだという、いろんなこだわりがあっていいんですが、その味の部分がどうしても控え目になっていると。もっと自信を持って岩手のものはこんなにおいしいんだ、これこれこうだからおいしいんだということをぜひやっていただきたいと思うんですが、御所見があれば伺います。
〇商工労働観光部長(廣田淳君) 本県の食料品の食味につきましては、例えば米あるいは牛肉、日本酒、それぞれの業界からは高い評価を受けているものがかなりあると我々も考えておりますが、あに図らんや、必ずしも消費者の認知度に結びついていない、販路の拡大に結びついていないというふうに課題を考えてございます。全国なり国際的な中で、やはり知名度を高めていくというのが大事だと思っております。
 例えば、モンドセレクションのような国際的な権威のあるコンクールでの入賞とか、あるいは今お話にありましたミシュランガイドに載るとか、さらには料理雑誌への掲載、あるいは著名な評論家や料理人によります評価など、さまざまな手段が考えられると思います。
 いずれにしましても、先ほど御答弁しましたとおり、これまでの取り組みをしっかりと検証し、その成果を見きわめながら、これからの岩手県としてのブランドをどういうふうに形づくったらいいか、有効な方法について検討してまいりたいと考えております。
〇5番(岩渕誠君) わかりました。しっかりやってください。お願いしたいと思います。
 では、引き続き次の項目に進みたいと思います。
 教育問題についてお尋ねをします。
 端的にお伺いいたしますが、今年度、県内で初めて併設型の中高一貫校である県立一関第一高等学校附属中学校というのが開設しました。大変1期生たちの活動が高校生にもいろんな面で影響をよくしているというふうに思うんですが、この中高一貫校と第1期生のこれまでの評価についてお聞かせをいただきたいと思います。
〇教育長(法貴敬君) 中高一貫校の評価についてでありますが、一関一高附属中学校においては、中学校教諭と高校教諭が連携して、基礎、基本の定着を図りながら発展的な学習などにも計画的に取り組み、また、中高合同での学校行事や生徒会活動などを積極的に進めております。このような教育活動を通じて、第1期生は高い学習意欲を維持しながら学習活動に取り組むとともに、高校生との交流を通して、社会性やみずから律する心がはぐくまれてきているところであります。あわせて、高校生も、その自覚の高まりや中学生に対し範を示すという新たな意識が芽生えており、中高一貫教育としてのよさが出てきていると認識しております。
 今後とも、6年間のゆとりある学校生活の中で、生徒の個性を伸ばして豊かな人間性を育成することができますよう、高校と連携した教育課程の編成や指導方法の工夫など、教育実践を積み重ねながら中高一貫教育の一層の充実に取り組んでまいります。
〇5番(岩渕誠君) ソフト面ではかなり先生方も頑張っていると思いますし、何より生徒が一生懸命だと思うんですが、県教委さん、ハード面の整備はなかなか課題が多いですよ。非常に現在でも体育館とか運動場のスペースがないですよね。収容キャパが足りません。一部の部活動は校舎から遠く離れた体育館である外部の体育館とか、運動施設を借りて行っていますね。それも、あいている日に、ちょっと貸してくださいということで行っているというのが実態です。卓球部は、あいている教室を使ってやっていると伺っています。これが県立中学校で行われているわけですよ。来月はまた80人の新入生が来るんです。これは体育の授業とか部活に支障を来たすのは目に見えていると思うんですが、体育館整備の必要性というのは前からわかっていたはずなんですが、どう進めるつもりなんですか。
 学校開設はしたんだけれどもその後の環境整備を怠ったのでは、幾ら学校の校訓が不屈不撓と言っても、これは余りシャレにはなりませんですね。ぜひ善処を望みたいんですが、教育長、いかがですか。
〇教育長(法貴敬君) 今、議員御案内のように、非常に体育施設が貧弱だということを私自身も認識しておりますが、体育施設の拡充について現場から非常に強い希望があり、また、現在、体育館については、現有施設のもとで体育の授業に関しては、カリキュラム編成や時間割編成などの工夫によって、中学3年生がそろう完成年度においても基本的に支障がないというふうに考えていますが、運動部活動に関して、中学生と高校生の体格、体力、技量に違いが大きくて、種目によっては一定の制約があるものと認識しております。したがいまして、今後、県立学校全体で施設がありますので、その有効利用の可能性を探りながら、完成年度を見据えまして、生徒にとってよりよい環境を整えるという観点から、中高一貫校にふさわしい活動の場の確保について検討してまいりたいというふうに考えています。
〇5番(岩渕誠君) もう一歩踏み込んだ答弁を期待したのでありますが、残念であります。一関一高には遂げずばやまじという言葉がございまして、ぜひ体育館の整備、運動場の整備は、もう遂げずばやまじでございますので、一刻も早くやっていただきたいと思います。これは要望にとどめます。
 続いて、岩手・宮城内陸地震からの復旧、復興についてお尋ねをしてまいりたいと思います。
 おととし発生しました内陸地震から、2年がたとうとしております。来年度中には災害箇所の復旧工事がほぼ完了する見込みでありまして、早期復旧へのこれまでの関係者の御努力に敬意と感謝を示したいと思います。
 一方で、依然として5世帯で住宅再建ができない状況だと思っております。県として、残された避難生活者に今後どう対応するのか、被災者全体に対する生活再建への評価と課題についてお伺いしたいと思います。
 それからもう一点、この地震では市町村における被災者の相談対応など、行政対応について課題もあったというふうに私は思っております。と同時に、窓口での対応や総合的フォローの仕組みなどの課題解決の取り組みは、支援をいただいた全国各地での今後の被災者対策に生かされるべきであろうと思いますので、ここでやはり総括が必要だと思うんですけれども、その辺どのようにお考えでしょうか。
〇保健福祉部長(千葉茂樹君) まず、岩手・宮城内陸地震の被災者の支援につきましては、応急仮設住宅の設置を含む災害救助法による救助支援、精神保健福祉センター職員などによる心のケア活動を行うとともに、県単独事業といたしまして被災者住宅再建支援制度を創設し、住宅再建に向けた資金助成を行うなど、県として必要な措置を講じてきたところでございます。しかしながら、全県または各市町村での一定の住家被害数を要件といたします被災者生活再建支援法につきましては、当該支援法の適用を受けます市町村がある場合に、同一の災害で被災を受けたものの、要件を満たさなかったために同法の適用を受けられない市町村もありますことから、それらの市町村も対象となるよう、国に対して適用要件の緩和を要望したところであります。
 なお、被災者の住宅再建につきましては、一関市及び奥州市の5世帯のうち、既に着工している1世帯は3月に住宅が完成する予定でありまして、残る4世帯につきましては再建が4月以降になる予定でありますことから、被災者住宅再建支援事業費補助の来年度への予算繰り越しも含め、関係市と連携を行いながら引き続き支援をしていく予定でございます。
 次に、市町村における相談対応等についてでありますが、市町村におきましては、いち早く被災地の巡回一斉相談や被災高齢者にきめ細やかな福祉サービスを提供するなど、的確な対応があった一方、被災者のさまざまな相談に総合的に対応できなかったことや、罹災証明の発行におくれが生じたことなどの課題があったことも承知しているところでございます。
 県といたしましては、平成19年の能登半島地震の際に、石川県の市や町などで活用されました被災者生活支援カルテが、被災者に対して適切な支援を行うための情報管理手法として極めて有効であると考えておりまして、これまで釜石市においてその導入が図られていることから、県といたしましては、引き続き他の市町村に対して導入を働きかけていきたいと考えているところでございます。
 また、今回の災害対応につきましては、災害救助法に基づきました災害救助やさまざまな被災者支援の取り組み状況を国及び日本赤十字社などに状況報告をしております。国の災害担当者会議や日本赤十字社が発行いたします災害救助活動事例集などを通じまして、今後、全国の被災者対策に生かされていくものと考えているところでございます。
〇5番(岩渕誠君) いずれ、ことしの5月には国道342号が開通するという運びになったのを初めとして、いよいよ復旧から復興へと軸足は移っていくわけであります。県として本格復興に踏み出す時期を迎えて、地場産業の振興等、ソフト面での災害復興対策を地元の市町村と連携してどのように進めるつもりなのか、お示しをいただきたいと思います。
 その一つとして落橋した祭畤大橋なんですが、これを災害遺構として整備する計画になっております。お隣の宮城県では、荒砥沢をジオパークとして活用して、地震や防災教育の場として役立てようという動きも出ていると聞いております。祭畤大橋自体は、一関市が主体となって管理されることになっているようなんですけれども、県として災害発生以来収集した膨大かつ貴重な資料もあると思います。将来的にはこうしたものも含めて、しっかりとした記録として公開し、忘れてはいけない記憶として災害資料の整備保存、公開を進めるべきというふうに考えるんですが、御所見を伺いたいと思います。
〇企画理事(藤尾善一君) 地域産業の振興等の復興対策についてでありますが、まずは議員御案内のとおり、待望久しき国道342号、須川?真湯間の開通の機をとらえまして、秋田、宮城両県とも連携しながら、観光等の各種キャンペーンを展開するとともに、栗駒地域における将来とも安定的な誘客につながる紅葉シーズンの交通渋滞緩和対策や、豊富な高山植物や温泉群を活用した春季、夏季のトレッキングプログラム等の掘り起こしに取り組んでまいります。
 また、農業振興の面では、遊休農地を有効に活用したマコモダケ等の特産品づくり、あるいは骨寺村荘園におけるオーナー制等観光に結びついた農産物の販売促進、集客イベントを活用した産直施設の活性化などに対し積極的に支援しますとともに、産業化に向けたもちなどの地域食材を活用した商品開発の支援に取り組んでまいります。さらには、首都圏ネットワークを活用した農産物等のさらなる売り込み等を引き続き実施するなど、元気な被災地域を県内外にアピールしつつ、全国他地域との観光、物産両面での交流の活発化による持続可能な将来の実現を目指した復興対策を地元市や隣接県と連携をしながら進めてまいる考えであります。
〇総務部長(菅野洋樹君) 災害資料の整理保存、公開についてでございますが、県として災害発生以来、収集や取りまとめた資料は膨大なものがございまして、関係部局においてそれぞれ整理保存しているところでございます。随時、国や都道府県、関係団体に提供しているところでございます。今後に生かすべき貴重な資料でもございますので体系的に整理しながら、関係機関ともよく相談をさせていただいて取りまとめ、公開していきたいと考えております。
 また、崩落した祭畤大橋につきましては、現在、遺構として保存するための一連の工事を行っておりますが、5月末までには終了する見込みとなってございます。
〇5番(岩渕誠君) 災害遺構の近くにある、そういった資料はぜひ公開をして、防災教育や研修の場にもあわせてやっていけるような整備を、ぜひこれはお願いしたいと思います。
 次に、平泉の世界遺産登録についてお伺いしたいと思います。
 いよいよ再挑戦に向けて正念場を迎える年となりました。構成資産の絞り込みなどを経て、この夏にはイコモスの現地調査が実施される見込みであります。これを前に、県立柳之御所史跡公園がこの4月には開園する予定で、このための条例案が今議会にも提出されています。平和の希求と平等の思想を根底に持つ平泉の価値は極めて大きいということに岩手県民の一人として誇りを持つ一方で、それを具現化する遺跡、いわば目に見える建造物の大多数が失われてしまっている現状を見るにつけ、今回開園される柳之御所史跡公園への期待を寄せるものであります。この公園は、まさに平泉政庁跡として長年にわたって調査が続けられてきたものでありますけれども、史跡の復元については、今後どのように考えるのかお示しいただきたいと思います。
 まず、そこまでお聞きします。
〇教育長(法貴敬君) 柳之御所史跡公園整備と今後の政庁跡の復元についてでありますが、柳之御所遺跡の整備については、平泉遺跡群調査整備指導委員会の指導を得ながら、往時の姿を忠実に再現することに努めてきたところであり、これまでに園池や堀、井戸などの復元を完了したほか、建物については、基本設計をもとに復元CGを完成させたところであります。今後の史跡の復元については、現時点において、建物の構造がまだ解明できない部分が残っているということでありますので、引き続き指導委員会の指導を得ながら検討を進めていきたいと考えております。
〇5番(岩渕誠君) いずれ、平泉の文化遺産をわかりやすく伝えていくことというのは重要かつ必要だと思うんですが、柳之御所遺跡以外についての重要な遺跡をどう復元していくかということも、今後の平泉遺産の価値を高める上で重要と感じています。ただ、遺産のすべてを復元するということになりますと、これは財政的にも極めて厳しいというのも事実であろうと思います。
 そこで、IT技術を活用して低コストで遺跡を再現する取り組みというものも他県で試みられています。奈良県明日香村の川原寺では、東大の池内研究室とともに3次元CGを駆使したバーチャル遺跡復元プロジェクトなるものが進んでいると聞き及んでおります。平泉遺産への導入を検討する必要があるかと思うんですが、お考えをお示しいただきたいと思います。
 それから、平泉の価値を理解していくためには、もう一つ重要な要素があると思います。それはやはり平泉の価値の新発見ということになると思います。骨寺村荘園遺跡など、前回の申請時に構成資産となっていたものが今回外された背景には、主題との関連性が明確でなかったのではないかという指摘があるわけなんですが、この関連性を証明するには物的証拠が一番です。そのための調査発掘すべき場所というのは依然数多く眠ったままだと思っております。周辺遺産との強い結びつきを証明して、すそ野の広い文化遺産であることを再認識するためにも、さらに調査を進める必要があると思うんですが、いかがでしょうか。
〇教育長(法貴敬君) バーチャル史跡の可能性についてでありますが、平泉の文化遺産の価値を伝える上で、議員御案内の3次元CGを駆使したバーチャル遺跡復元プロジェクトについては、有効な手段になるのではないかと認識しております。しかしながら、このプロジェクトは現在実験段階であると聞いており、その研究の推移を見守ってまいりたいと考えています。
 それから、周辺遺産の調査についてでありますが、今回の推薦に当たっては、イコモスからの指摘や海外の専門家からの助言を踏まえて、推薦書作成委員会の検討を得て構成資産を絞り込んだところでありまして、骨寺村荘園遺跡等の4資産については、それぞれの課題を踏まえて、調査研究の成果が整理できた段階で追加登録を目指すとしたところでございます。
 追加登録に向けては、平成23年の世界遺産の審査状況を踏まえた価値証明を確実に行うことが必要となります。現段階では、これまでの推薦書作成委員会などで指摘された課題を解決するための調査研究の方針等について、国、県、関係市町が連携、協力し、検討を行っているところでありまして、今後、専門家からの指導を得ながら、一層の調査を進めていくこととしております。
〇5番(岩渕誠君) ぜひよろしくお願い申し上げたいと思います。
 平泉の世界遺産登録に向けては、やはり平泉の文化遺産そのものの価値を高めていくことと、それをわかりやすく伝えていくための情報発信の仕方も大事だと思いまして、最終的には県民の盛り上がりが何より必要だと思っています。県もこれまで紙芝居とか移動企画展、さらには知事みずから平泉授業の実施などで精力的に取り組んできておられますし、これは評価したいと思います。ただ、やはりもっと県民を巻き込んで、平泉の文化遺産はすごいんだぞということを共有していくことが必要だと思っています。
 去年、県南の住民を中心に、平泉の価値を自分たちのやり方で発信しようと、平泉をテーマとしたミュージカルを地元の一関と東京で上演して、好評を博しました。私も会場に駆けつけて、知事もごらんになっていただいたと思うんですが、大変すばらしいできばえでありました。先人の思いや平泉の価値をこれほどまでわかりやすく感動的に伝えることができるという、市民の力を実感してまいったんですが、こうしたソフトパワーを住民理解に活用することは、平泉を身近なものにし、さらに広げることにつながるはずであると確信いたします。県として、こうした民間のソフトパワーを活用して平泉の価値を県民とともに共有することを検討し、支援すべきと考えます。このミュージカルで生まれた楽曲も大変すばらしいものがありまして、テーマもしっかりしているんですが、こういったことに親しんでもらうことも、平泉を知ろうとする入り口になればと思うんですが、知事に御所見があれば伺います。
〇知事(達増拓也君) ミュージカル平泉は、私も昨年3月の一関公演を鑑賞いたしました。迫力ある歌や踊りなど完成度が高く、また、一つ一つの場面が感動的で、大勢の子供たちも参加しての県民の手による平泉の理念の発信に大いに感銘を受けました。
 県内では、このミュージカルのほかにも、地元で栽培した菜の花でつくった菜種油を中尊寺の不滅の法灯に奉納する取り組みでありますとか、夢灯り+in平泉の取り組みでありますとか、民間や地域の団体によります平泉に関連するさまざまな取り組みが広がってきております。このような民間の方々の自主的な活動の輪がさらに広がることによって、岩手に住む私たちが平泉の価値についてより身近なものとして親しみ、理解を深めていくことができるように、県としても、いろいろな機会を活用しながら県内外に情報発信するなど、世界遺産登録に向けた県全体の機運醸成に努めてまいりたいと考えております。
〇5番(岩渕誠君) ぜひ、いろんなところを入り口にしてやることが必要だと思います。今、県庁でいろいろ県民歌とか流れていますけれども、平泉の世界遺産登録を間近にして、これは平泉にかかわる楽曲を流すとか、あるいは小学校で取り上げてもらうとかということも非常に有効なことだと思いますので、それはぜひ御検討をいただきたいと思います。
 さて、そうした中で、新年度は広域振興局体制がスタートするわけでありまして、平泉の世界遺産登録については、地元の振興局が行政センター化いたします。地域支援部が集約されるということなんですが、これは、しっかりとサポートする体制を、県南局としてもこれまで以上に市町村と協働した形でお願いしたいんですけれども、企画理事、その辺、お考えがあればお示しをいただきたいと思います。
〇企画理事(藤尾善一君) 世界遺産登録に向けた県南広域振興局の取り組み体制についてでありますけれども、4広域局体制になりまして組織が大きく変わるということで、御案内のとおり、これまでの一関総合支局の地域支援部が本局に集約されるということでございますが、平成22年度は世界遺産登録の前年ということもございますので、非常に重要な年であると認識いたしております。したがいまして、市町との密接な連携のもとに、確実に世界遺産に登録されるように全力を傾けていく、それから、県民の機運の醸成に向けた情報発信等をさらに強化していきたいといったようなことで、平泉町とも協議をしながら、新年度からは、我が局に世界遺産推進課が5名体制であるわけでございますが、これを丸ごと平泉町の役場に駐在させまして、緊密なる連携のもとに、これまで以上に効果的な施策展開に頑張っていきたいと思っております。
〇5番(岩渕誠君) 今、大変貴重な御答弁をいただいたと思っております。県の世界遺産推進のための課が地元の町と一緒にやる、これは本当に心強い限りでございます。これは、世界遺産の登録を進めるというだけでなくて、新しい県と市町村のあり方を考える上でも、御決断いただいたことに大変感謝を申し上げたいと思います。その取り組みを成功させるように、本庁のほうもぜひ支援をしていただきたい、このように思います。
 最後に、入札制度についてお伺いいたしたいと思います。
 昨年12月、一関地方で行われていました県営建設工事で、落札、施工していた業者が突然経営破綻をいたしまして、工事が一時ストップいたしました。この業者は当時四つの県営工事を抱えておりまして、一つは破綻前日に完了検査を終えたもの、一つは工事途中、残る二つは、落札はしたものの作業はほとんど手つかずのままだったと承知しております。落札直後に経営破綻をするような業者が県営建設工事に入札していたということに驚きと懸念を覚えました。下請業者に対する支払いというものはもちろんなんですけれども、完成保証として工事を引き継いだ会社は、工期の厳守や資材調達コストの面で大変苦労を重ねているということは容易に想像されます。実はこの工事というのは私の事務所の前でやっていまして、後を引き継いだ業者さんは本当に御苦労されながら、一生懸命やっている。工期も決まっていて、引き継いだままなのでこれは大変だということなんですが、何とか頑張りたいということでやっている。本当に頭の下がる思いでおります。ただ、やはり経営の継続に著しく問題のある業者を入札段階で見きわめられなかったのか、非常に疑問であります。
 こうした問題は以前から全国的にも発生が懸念された問題で、国や一部自治体では入札ボンド制の導入が進んでいます。岩手県でも既に導入済みでありますが、試行段階であり、限定的な運用と承知いたしております。落札直後の経営破綻による諸問題が発生したことを踏まえて、県として、この事態をどうとらえているのか、入札ボンドを試行してみての評価と課題をあわせてお示しいただきたいと思います。私は、少なくとも、現行の本庁及び盛岡地方振興局発注という入札ボンドの試行の範囲をほかの振興局発注にも広げて、額的にも、今、2億円という金額がありますけれども、これを引き下げていく必要があると思うんですが、本格導入の道筋とあわせてお示しいただきたいと思います。
〇総務部長(菅野洋樹君) お話のありましたとおり、受注者の経営破綻は、工事完成のおくれ等の深刻な影響が発生いたしますので、発注者としても極めて遺憾な事態であると考えてございます。
 入札ボンドは、入札の段階で金融機関によるいわゆる契約履行能力の審査を活用いたしまして、施工能力を有する入札参加資格者を選定するものでございまして、全国では7団体が導入しているところでございます。
 本県では、平成19年7月に試行導入して以来、42件の工事において実施した結果、関係者の御協力も得て、おおむね順調に運用されてきております。入札ボンドの発行を受けた受注者が経営破綻した事例はございませんので、入札参加資格者の的確な選定や、工事の適切な施工確保の面で効果があるものと考えております。平成22年度からは、試行対象地域を全県に拡大する方向で検討してまいりたいと考えておりまして、この試行結果も踏まえまして、対象工事の拡大についてもあわせて検討してまいりたいと考えております。
〇5番(岩渕誠君) ありがとうございました。ただ、やはり原点に戻って考えていただきたいのは、落札をした直後に破綻をしているということです。これについては、やっぱりもっと県も発注者責任というものをしっかりと受けとめていただかないと、これは遺憾だという業者側の話だけで済む話ではないと思います。そこはしっかりと受けとめていただきたいんですが、いかがですか。
〇総務部長(菅野洋樹君) 発注者として、何よりも県民の皆様に適切な工事を適切な価格でいいものをつくっていただくという責任がございますので、その辺も踏まえ、今後とも努めてまいりたいと考えております。
〇5番(岩渕誠君) それでは、最後の質問として総合評価落札方式の配点について、環境とのかかわりでお尋ねしてまいります。
 県営建設工事を始め各種各級の工事では、既に環境に配慮した機材の導入などが進められてきておりまして、CO2排出の面でも努力が行われていると感じております。こうした取り組みなんですけれども、果たして、現在の総合評価落札方式の評点に反映されているのでしょうか。岩手県では、CO2排出削減のマイナス8%実現というものに取り組んでいます。民生部門に課題があるということは承知しておりますけれども、県として、最重要課題として環境分野での諸政策を進める中で、やはり環境面への貢献もインセンティブとして与える取り組みも必要じゃないでしょうか。検討の余地があると思いますが、御所見をお示しください。
〇県土整備部長(佐藤文夫君) 総合評価落札方式の環境面での評価項目では、ISO14001の認証を取得している企業につきまして加点しているところでございます。加えて、その評価項目の中にある成績評定におきましても、環境に配慮した資材の使用等々、建設企業にとって間接的なインセンティブとなるような仕組みになってございます。こうした項目のほかに、環境面の貢献にインセンティブを与える項目の評価について、必要に応じて検討してまいります。
〇5番(岩渕誠君) 終わります。ありがとうございました。(拍手)

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