平成22年2月定例会 第15回岩手県議会定例会 会議録

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〇3番(小西和子君) 政和・社民クラブの小西和子でございます。
 このたび、3度目の登壇の機会を与えてくださいました先輩議員、同僚議員に感謝申し上げます。
 質問に先立ち、チリで2月27日に起きました大地震と、それに伴い発生しました津波により被害を受けられた方々に、お見舞い申し上げます。
 また、地域住民の安全確保に当たられた関係の皆様に対して、心から敬意と感謝を申し上げます。
 それでは、通告に従い、分割、一問一答方式で質問をいたします。
 初めに、平成22年度当初予算編成方針についてお伺いいたします。
 県の平成22年度当初予算は、国の地方財政対策の結果を受け、前年度から約400億円の大幅増となる予算編成を行ったとのことですが、やはり心配になるのは、将来の見通しについてであります。
 現在の約7、000億円の予算規模に比べて、平成23年度以降に見込まれる約700億円もの収支ギャップは余りに大きく、いたずらに県民の不安をあおることになっているのではないでしょうか。
 県は、平成22年度当初予算編成を経ても、将来の収支見込みは、昨年9月に作成した今後の収支見込みと大幅な異同はないとしており、県は今後やっていけるのかとの有権者の不安の声も聞こえてきます。
 平成22年度当初予算編成を行った結果、将来の収支ギャップがさらに拡大するようなことはなかったのでしょうか。また、収支ギャップの解消の見込みや、これを乗り越えていくための方策と決意について、知事にお伺いいたします。
 地方の財源を増大させる政府の地方財政対策により、県は、財源対策的な基金の取り崩しを行わずに、平成22年度当初予算の編成を行うことができたと説明がなされましたが、それは、地方交付税などの歳入の増加のみならず、給与の特例減額などの大幅な歳出削減が継続されているためであると推察されます。
 地方の自主財源が大幅にふえるのであれば、来年度予算でも給与の特例減額を行う必要はなかったのではないでしょうか。また、今後の収支見込みを改めて作成することのできない不透明な状況下において、平成23年度以降も給与の特例減額を続けていく考えなのか、あわせてお伺いいたします。
 次に、雇用、労働環境の整備についてお伺いいたします。
 知事は、知事演述の中で、就職内定率が低い水準にあることから、就職が決まらずに卒業を迎える新規高卒者への就職支援や、新卒者等を雇い入れる企業に対する支援を市町村とともに行うなど、雇用、労働環境の整備に取り組むと述べていますが、就職が決まらずにいる新規高卒者の思いを考えると早急な対応が望まれます。
 雇用状況が厳しい状況のままで、就職が決まらずに卒業を迎える生徒たちは、卒業と同時にアルバイトや非正規労働者にならざるを得ない状況であります。一たん非正規労働者となれば、正規労働者になることは困難であり、貧困の連鎖が続くと言われています。それを断ち切るためにも、県として新規高卒者の就職支援対策に全力を尽くす必要があると考えます。
 新規高卒者の就職内定状況について、どのように認識しているのか、また、就職未定のまま卒業を迎える生徒たちに対して、今後どのような方針で就職支援対策を行おうとしているのか、知事のお考えをお伺いいたします。
 知事演述では、新卒者等を雇い入れる企業に対する支援を市町村とともに行うとしていますが、その内容をお示しください。
 登壇しての質問は、以上で終わります。
   〔3番小西和子君質問席に移動〕
   〔知事達増拓也君登壇〕
〇知事(達増拓也君) 小西和子議員の御質問にお答え申し上げます。
 まず、将来の収支見込みについてです。
 平成22年度当初予算においては、厳しい経済、雇用情勢、深刻さを増す地域医療などの諸課題への対応や、希望郷いわての実現に向けて、必要となる歳出予算を確保いたしました。
 一方で、将来の負担を過度に増加させないように、財政の健全化に向けた道筋にも十分配慮しながら編成したところでありまして、今回の予算編成によって、将来の収支ギャップの見込みがさらに拡大するようなことは生じておりません。
 県財政がさらに厳しさを増して、県民に必要なサービスの提供や県内事業者への支援等に大きな影響が生じるような事態は、避けなければなりません。
 今後、平成23年度以降のアクションプランを策定する中で、将来の収支ギャップの解消に向けた具体的な対応が検討されていくこととなりますが、国に対する地方税財政制度改革の要請、県債残高の規模の中長期的な抑制、より一層の政策の選択と集中の徹底といった、これまでの歳入、歳出両面にわたるさまざまな取り組みに加えまして、力強い経済社会構造を構築し、多様な主体による公共サービスを担う仕組みづくりを図るなど、あらゆる取り組みを通じて、持続可能な財政構造の構築に向け全力を傾注してまいります。
 次に、新規高卒者に対する就職支援についてであります。
 昨年10月から12月に、市町村長、ハローワーク、学校などと一緒に求人確保キャンペーンを行いました。その結果、就職内定率は、1月末現在で84.3%と徐々に改善はしてきておりますものの、前年同期に比べますと依然低い水準にございます。高卒未就職者の皆さんに対する対策に重点的に取り組んでいるところであります。
 現在、未内定者については、卒業後も就職に向けた支援を継続することができるように、各学校を通じて、ジョブカフェ、ハローワークなどへの登録を呼びかけています。
 ジョブカフェでは、高卒未就職者の皆さんに対して、個別にカウンセリングを行って、その希望や適性に合わせた就業体験やセミナー等を実施し、国、市町村等の各種支援制度の周知を図り、きめ細かい支援を行える体制を整えているところであります。
 また、県を初め、市町村においても、非常勤職員等として、こうした高卒未就職者の皆さんを直接採用する準備も進めているところです。
 その他のお尋ねにつきましては、関係部長から答弁させますので、御了承願います。
   〔総務部長菅野洋樹君登壇〕
〇総務部長(菅野洋樹君) 給与の特例減額についてでありますが、三位一体改革など、近年の地方交付税削減の中、これまで歳入、歳出両面にわたるさまざまな対策を講じることにより、ぎりぎりのやり繰りをしながら毎年度の予算を編成してきたところでございます。
 職員給与の特例減額措置につきましても、この一環として、職員団体との協議を踏まえ、平成20年度から平成22年度までの3年間実施することとしているところでございます。
 平成22年度当初予算につきましては、地方交付税の増額等を踏まえ、財源対策的な基金の取り崩しを行わないこととするなど、将来の財政運営をも考慮して編成したところでございますが、景気の低迷等により県税収入が減少しているなど、本県の財政状況は依然として極めて厳しい状況にあり、職員給与の特例減額を継続することは、やむを得ないと考えたものでございます。
 今回の地方財政対策における措置が平成22年度限りのものであることを踏まえますと、平成23年度以降においても、県財政が引き続き極めて厳しい状況が見込まれるところでございます。
 ただ、一方、職員給与につきましては、人事委員会勧告のもとで決定されることが制度上の原則であること、また、特例減額を行うことによる職員の痛みは十分理解しているところでございまして、特例的な措置を講じずとも収支均衡が図られるよう、さらなる行財政改革を進めるとともに、地方交付税を含めた一般財源総額の確保について、国に強く要請してまいりたいと考えております。
   〔商工労働観光部長廣田淳君登壇〕
〇商工労働観光部長(廣田淳君) 新卒者等に対する就職支援対策についてでありますが、厳しい雇用情勢の中、新規高卒者の未就職者が極力生じないようにすることが重要であり、市町村と一体となって、地域における高卒者の就職支援と地元定着の機運を醸成するため、新年度におきましては、新卒者等ふるさと就職促進事業を新たに開始することとしたものであります。
 この事業におきましては、高卒未就職者等を雇い入れた事業所を対象としまして、奨励金及び補助金等の支援制度を創設して実施する市町村に対し、市町村の支援事業費に要する経費の一部を補助することとしております。
 現在、13の市町村が奨励金等の支援制度の創設を予定しており、県としては、これらの市町村とともに、新卒者の皆さんが、早期に就職できるよう支援していきたいと考えております。
〇3番(小西和子君) 新卒者に対する支援は急務となっており、県の果たすべき役割は大きいと考えます。今、御答弁いただきましたことを早急に実行に移し、着実な成果が出ることを期待するものです。
 あわせて、雇用、労働環境の整備のためには、雇用先の確保とともに、就職できるスキルを持った人材の育成の観点からの施策も重要と思われます。知事には、職業能力の開発、職業訓練の面でも積極的な施策の展開をされるよう要望して、次の質問に移ります。
 次に、安心して子供を産み育てられる環境の整備についてお伺いいたします。
 知事は、知事演述の中で、人口減少、少子高齢化が一層進行する中、子育てを社会全体で支えていくとともに、安心して生活できる福祉コミュニティづくりを進めていくことが必要であること。子育て応援大作戦の展開、保育サービスの充実など、子育て家庭に対する支援を充実すること。また、企業等による子育てにやさしい職場環境づくりの支援を図ることを述べました。
 しかし、国を挙げて少子化対策に取り組んでいるものの、対策の基本中の基本であります出産環境は、悪化の一途をたどっています。医療をめぐる厳しい現状の中、岩手県においても、産科医、医療機関の拠点病院への集約化が進められ、統廃合地域、空白地域の広がりは、妊産婦や家族に不安と負担を強いるものになっています。
 県内の出産環境の現状や課題をどのようにとらえ、どのような方針で対策を講じようとしているのか、知事にお伺いいたします。
〇知事(達増拓也君) まず、県内の産科医師数ですが、平成20年には97人となっています。ここ10年間で最も少なかった平成16年より8人増加していますが、人口10万人当たり36.9人と、これは全国32位でございます。また、分娩を取り扱う医療機関の設置状況ですが、現在、12市町村に41施設と平成16年に比べますと23施設減少しております。依然として、本県の出産環境は厳しい状況にあるものと認識しております。
 こうした状況を踏まえまして、県としては、平成21年から産科医に分娩手当を支給する医療機関に対して、その手当の支給に必要な経費の補助事業を実施しております。また、平成22年度当初予算案には、出産後NICUに入る新生児を担当する医師に対する同様の補助事業を盛り込んでおりまして、産科医等の定着と勤務環境の向上に努めているところであります。
 また、現在、県においては、総合周産期母子医療センターを中核として、地域周産期母子医療センター、協力病院、市町村等との機能分担と連携による岩手県周産期医療システムを構築して、ハイリスク妊婦や新生児に対する高度医療の提供などに対応しております。
 平成20年度には、そのシステムの中に、インターネットを介して妊婦健康診査や診療情報を共有する周産期医療情報ネットワークを新たに構築しまして、ハイリスク妊婦等の搬送の円滑な実施を図るとともに、市町村保健師等の家庭訪問による妊婦への保健指導の充実を図ってまいりました。
 国では、平成22年度、総合周産期母子医療センター等の運営に対する補助制度を拡充しておりまして、本県としても、これに対応して医療の高度化を推進することとしております。
 また、県立大学看護学部や県立病院と連携しまして、遠隔妊婦健診や胎児超音波検査等に対応できる助産師を養成し、産科医不在地域の市町村への支援などを推進してまいりたいと考えております。
 新たにこうした取り組みを加えまして、本県の産科医療体制にとって重要な課題であります安全・安心な出産環境の維持を図っていきたいと考えております。
〇3番(小西和子君) 御丁寧な御答弁ありがとうございました。
 身近な地域での健康な妊娠の継続と安心なお産には、医師、医療機関、助産所等、多機能な連携が求められます。同時に、妊産婦の最も身近にあり、妊娠から出産まで一貫した見守りや、出産後もケアしてくれる助産師の役割、活用は欠かせません。
 先ほどお話にもありましたけれども、妊産婦の安心・安全、それから医療現場の過重負担の軽減等のため、院内助産院や助産師外来等を設置して助産師の活用を図ってきたわけですが、広い岩手県での未設置地域は多く、早期の設置が待たれております。また、既に設置されている地域では、その存続に不安を抱いていることから、地域の安心にこたえられる機能、スタッフの充実を図ることが必要と思われます。
 そこで、現在の院内助産院や助産師外来、モバイル遠隔健診実施助産院等の設置の状況についてお伺いいたします。
〇保健福祉部長(千葉茂樹君) 産科のあります医療機関におきまして、助産師が正常分娩の助産等を行う、いわゆる院内助産所は、助産師が医師との役割分担のもと、妊婦健診や保健指導を行う助産師外来等の設置状況についてでありますが、県内の院内助産所につきましては、平成19年に県立釜石病院が設置して以来、現在までに県立宮古病院、県立久慈病院の2病院が加わり、計3カ所で設置されておりまして、院内助産によります分娩件数も、平成19年度159件から平成20年度383件へと増加しているところであります。
 また、助産師外来につきましては、平成17年度に3医療機関が設置しており、現在までに県立病院を中心に11の医療機関で設置されており、その利用者も、平成20年度延べ1、689人と前年度に比較いたしまして540人増加しているところでございます。
 また、モバイル遠隔妊婦健診につきましては、遠野市をモデル地域といたしまして、産科医不在地域での妊産婦の健康支援体制の整備を委託しております。助産師による遠隔妊婦健診の実施などを支援しておりますが、平成20年度の遠野市助産院ねっと・ゆりかごにおけます健診の延べ受診者数は217人となっているところでございます。
 県といたしましては、こうした院内助産所及び助産師外来の設置や遠隔妊婦健診の実施によりまして、産婦人科医の負担軽減と助産師自身のモチベーションの向上が図られますとともに、厳しい出産環境の中でありますが、妊産婦がより自宅に近い医療機関で健診や出産ができるよう取り組んでまいりたいと考えているところでございます。
〇3番(小西和子君) それでは、今後、市町村や民間の医療施設等を含む県全体として、産婦人科医師と助産師の確保に努めるとともに、助産師のスキルアップを図るなど、環境整備にどのように取り組むのかお伺いいたします。
〇保健福祉部長(千葉茂樹君) 産婦人科医師と助産師の確保や助産師のスキルアップなどの環境整備についてでありますが、本県における産婦人科医確保の取り組みとしては、これまで、国に対して、特に深刻な状況にあります産婦人科医等の特定診療科の医師不足を解消する施策を講ずるよう要望を重ねてきたところでありますが、国においては、今年度、新たに産婦人科医の処遇改善を図るため、医療機関が医師に分娩手当を支給する場合に、その経費を補助いたします産科医等確保支援事業を創設したところでありまして、県としても、当該事業を実施し、支援していくこととしております。
 また、助産師を含む看護職員の養成と県内定着を支援するため、昨年新たに、いわて看護職員確保定着アクションプランを策定したところでありまして、これに基づき、今年度から、助産師を目指す学生も利用できます看護職員修学資金の貸付枠の拡大とともに、貸付金額も引き上げたところであり、その結果、修学生が大幅に増加しているところであります。
 さらに、助産師の資質向上を図る取り組みとして、助産師外来や院内助産所の開設促進に向け、助産師のスキルアップを図ることを目的といたしました研修会も引き続き実施しているところであり、今後におきましても、助産師の養成、確保、専門性の向上の支援に努めてまいりたいと考えております。
〇3番(小西和子君) ありがとうございます。
 出産は、お母さんやその家族が子供をどう育てていくかの出発点であります。しかし、健診を受けない飛び込み出産や緊急搬送されるケースがふえています。就労環境の問題や妊婦自身の問題があるとはいえ、その多くは経済的な理由となっています。
 母体と赤ちゃんの健康を守るため、また、医療現場の過重負担を避けるためにも、内容の充実した健診の保障が必要です。国の妊婦健診の財政措置は2010年までであることから、継続した財政措置が必要です。県、国が一体となって財政措置を含む妊婦健診の充実に取り組む必要があると考えますが、御所見をお伺いいたします。
〇保健福祉部長(千葉茂樹君) 妊婦健診についてでありますが、平成20年度に創設いたしました妊婦健康診査臨時特例基金を活用し、国から示されております14回の妊婦健診のうち、既に市町村に交付税措置されております5回分を除きました9回分につきまして、当該基金から所要経費の2分の1相当額を市町村に助成しているところであります。
 この公費負担によりまして、妊婦健診の実施回数は、すべての市町村において、出産までに望ましいとされている14回に拡大されたところであります。
 この基金は、議員御指摘のとおり、平成22年までの措置とされておりまして、国からは、22年度中に平成23年度以降の取扱方針を決定するとの説明を受けております。
 県といたしましては、妊婦健診は、母体や胎児の健康の保持に重要な役割を果たしているものであり、また、妊婦の経済的負担の軽減が図られるという観点からも、公費負担は継続して実施されることが望ましいものと考えておりまして、国に対しまして、平成23年度以降も公費負担が継続するよう、既に本年度要望しているところでございますが、引き続き、制度の恒久化について要望してまいりたいと考えております。
〇3番(小西和子君) よろしくお願いいたします。
 日本の労働力人口は2006年から2050年までに2、400万人減少すると試算されています。女性が働きながら、出生率を下げない施策を打つ必要があると言われております。
 女性が働きやすい国ほど出生率が高いことに注目したいものです。2008年の合計特殊出生率で比較すると、日本が1.37、フランスが2.02です。今の日本では、夫婦で働いて収入が安定しなければ、子供を持つことも考えられない、経済的に厳しい家庭も多く見られます。
 もう一つの問題が2人目の壁です。男性が深夜まで仕事をしている間に、女性は孤独な育児で疲れ果て、このままでは2人目なんて無理と思ってしまいます。社会全体が働き方を見直し、帰宅時間を早めて、男性も家事や育児を行わない限り、少子化に歯どめはかからないのではないでしょうか。
 男女共同参画社会を目指す議員協議会で福井県を視察してきました。福井県は、女性の就業率、共働き率とも全国第1位です。合計特殊出生率は、2005年から上昇に転じており、2008年は1.54と全国第6位になっています。少子化の流れを変え、安心して子供を産み育てることのできる環境を整えるため、保育サービスの充実を初め、経済支援、結婚対策、さらには子育てに優しい地域社会づくりなど、結婚から子育てまでの総合的な施策を推進しています。
 そこで、知事にお伺いいたします。知事は、岩手県の現状をどのようにとらえているのでしょうか。また、来年度、本県における子育て家庭に対する支援や企業等による子育てにやさしい職場環境づくりの支援にどのように取り組まれるのかについて、具体的にお示しください。
〇知事(達増拓也君) 夫婦間の家事、育児関連時間の差を都道府県別に見たデータがございます。本県は3時間45分で、全国平均の4時間26分より41分短く、全国で最も差が少ない県となっております。
 一方、本県の労働者1人当たりの総実労働時間は、1カ月当たり156.4時間となっておりまして、全国平均の149.3時間と比べ7.1時間長く、都道府県別では長い方から10位となっております。
 したがいまして、本県においては、総実労働時間が長い状況にありながら、可能な限り夫婦が協力して家事や育児に当たっているものと考えられますけれども、いわて県民計画アクションプランでは、女性の家事労働時間に対する男性の家事労働時間の割合を高めることとしておりまして、男性の家事、育児への参加をさらに促進する必要があると考えております。
 男女がお互いに協力して家庭を築き、子供を産み育てることは、極めて重要でありまして、そのためには、それを支える地域や企業の取り組みを促進することも必要と考えております。
 そのことから、今年度内に策定することとしていますいわて子どもプラン、ここで、男女がともに家庭や子育てに夢を持ち、次代を担う子どもたちが健やかに育つ環境づくりを基本方針に掲げて、市町村や関係団体、企業等の理解と協力を得ながら、男女がともに子育てをする意識の醸成や子育てにやさしい職場環境づくりを推進することとしております。
 具体的には、新たに携帯電話からアクセスできるホームページでありますとか、漫画を活用した親しみやすい情報誌の作成でありますとか、子育て家庭等に対する情報発信の充実を図りますとともに、パパ子育て手帳の配布や市町村と連携した父親の子育て講座の実施などによって、男性の家事、育児への参加を促進することとしています。
〇3番(小西和子君) ありがとうございます。
 福井県では、企業における子育て応援の環境づくりの面で、次世代育成支援対策推進法に基づく行動計画策定が努力義務となっている中小企業がほとんどであるにもかかわらず、企業における仕事と子育てを両立できる職場環境づくりに取り組んでいました。
 福井市のソフトウエア開発会社ネスティでは、育児休業法施行の7年前から育児休業を取り入れたほか、介護者を抱える社員に対して在宅勤務を認めるなど、家庭と仕事の両立に積極的に取り組んできました。経営者は、能力を持った人材に長く仕事をしてもらうために制度を設けたのだというふうに話をしております。
 岩手県では、次世代育成支援対策推進法に基づく一般事業主行動計画の策定状況はどうなっているのでしょうか。また、計画の策定に向けて、各企業に対してどのように支援していくのかお伺いいたします。
〇保健福祉部長(千葉茂樹君) 一般事業主行動計画の策定状況についてでありますが、次世代育成支援対策推進法では、従業員の仕事と家庭の両立を推進するため、事業主に対して行動計画の策定について定めております。
 岩手労働局によりますと、平成21年12月末現在、策定を義務づけられております常時雇用労働者数301人以上の企業105社のうち104社が策定し、届け出を行っております。また、努力義務とされております労働者数300人以下の中小企業にあっては、226社が策定し、届け出を行っておりまして、平成21年3月末に比較いたしまして33社の増となっております。
 なお、平成23年4月からは策定義務が101人以上の企業まで拡大されますことから、一層策定支援を強化していく必要があるものと考えております。
 県では、これまで振興局職員が企業を訪問いたしまして策定の要請を行ったところでありますが、本年度新たに県長寿社会振興財団に専任職員2名を配置いたしまして、特に企業が集中しております盛岡地域の企業訪問を重点的に行うなど、支援の強化を図っているところであります。
 また、セミナーやシンポジウムを本年度、各地域におきまして5回開催するなど、さまざまな取り組みを促進しているところでもございます。
 また、知事から今、御答弁申し上げたところでございますが、本年度から表彰制度を創設しておりますし、また、来年度からは長寿財団の基金を活用いたしまして、育児・介護休業法の義務規定を超える取り組みを行う中小企業に対しまして助成を行うなど、さまざまな取り組みを強化してまいりたいと考えております。
〇3番(小西和子君) ありがとうございます。
 次世代育成支援対策推進法は、次代を担う子供たちが健やかに産まれ、育成されていく環境を社会全体として整えていくために成立したものというふうに承知しております。5年経過しました。来年度から後期計画に入ります。残り5年という時限法です。育児・介護休業制度の見直しがなされ、本年6月から施行されます。ぜひ周知を行いまして、実効あるものにする取り組みに力を入れていただきたいと思います。特にも県職員の皆さんから行動に移していただくことを要望いたしまして次の質問に移らせていただきます。
 次に、高等学校再編についてお伺いいたします。
 高校再編は、平成12年─2000年に策定した県立高等学校新整備計画が今年度で終了し、現在、県教委は、第2次長期構想検討委員会の最終答申に基づき、昨年12月24日に今後の高等学校教育の基本的方向(案)、高校教育基本方針(案)を公表しています。この高校教育基本方針に関する地域説明会を開催し、また、パブリックコメントを求めるなど県民の声を聞く姿勢は当然のことであり、評価します。
 そこでまず、今までの地域説明会でどのような意見が出されたのかお伺いいたします。
〇教育長(法貴敬君) 今後の高等学校教育の基本的方向(案)に対する地域説明会での意見についてでございますが、地域説明会は1月12日の二戸ブロックを皮切りに、2月19日の両磐ブロックまで県内9ブロックにおいて開催し、一般参加者172名のうち50名の方から115件の意見をいただいております。
 地域説明会では、学級定員40人について、教育効果の面や少子化を見通して少人数学級あるいは弾力的な定員としてほしいというもの、望ましい学校規模を4から6学級程度としていることに関して、地域の高校あるいは3学級以下の学校を存続させてほしいというもの、県内のブロック間における格差のない学校の配置、あるいはブロック内でのバランスに配慮した学校配置をしてほしいというもの、統合した場合の通学手段の確保や経済的な支援はぜひ行ってほしいなど、多岐にわたる御意見をいただいているところであります。
〇3番(小西和子君) ありがとうございます。
 憲法に定められている教育の機会均等、教育を受ける権利を保障するには、どのような地域、どのような家庭状況であろうとも、子供たちに高校教育を保障することは教育行政の責務であり、その観点から、県として責任を持って地域の高校は地域の要請のある限り存続させるべきであると考えますが、御見解を伺います。
 また、県教委は地域説明会において、具体的な高校配置については、1年間地域で意見交換の場を設け、地域の声を聞くことを表明しております。その実施形態、実施回数や実施時期、実施方法と地域の声をどのように生かすかについて具体的にお示しください。
〇教育長(法貴敬君) 高校の配置に係る地域の意見の反映についてでございますが、今後の高等学校教育の基本的方向(案)では、高校教育の目的達成に向けて、高校教育の質と教育基本法に定められた能力に応じた教育を受ける機会を保証することが必要であり、適切な教育環境を整備することとしているところであります。
 今後の県立高校の環境整備については、中学校卒業予定者数の減少が確実に見込まれ、学校の小規模化が進むと考えられる中で、長期的な視点で県全体を見通した学校や学科の配置に努めるとともに、ブロックごとの生徒減少の状況あるいは地域の実情なども考慮して進めることとしており、具体的な配置等については、来年度およそ1年間をかけて地域と十分意見交換を行いながら総合的に検討していくというふうに考えております。
 また、地域との意見交換の実施形態や意見の反映については、現在、将来の県立高校のあり方を示す総論部門となる今後の高等学校教育の基本的な方向の策定に向けて、現在、全力を尽くしているところであり、その総論を確定させた上で来年度以降の具体的な実施形態等の検討作業を進めていくこととしております。
〇3番(小西和子君) 100%近い高校進学率の中で、入学する生徒の多様化、多様な進路選択への対応、高校における特別支援教育の必要性など、現在の高校教育の役割を考えた場合、旧態依然とした40人学級や、望ましい学校規模は1学年4から6学級は、教育効果の観点から見直すべき時期に来ていると考えます。全県一律での40人学級とするのではなく、中山間地域など各地域事情を考慮した学級定数の見直しを図り、県独自での予算措置をすることにも配慮すべきであると考えますが、御所見を伺います。
 また、県民世論にも30人以下学級を要請する声が高まり、国においても40人学級を見直す動きがありますが、そのような国の動向についての知事の御見解をお伺いいたします。
〇知事(達増拓也君) 学級定員の見直しについて、国において、現在、学級編制や教員の定数の基準を定めている標準法の見直しが進められていることは承知しております。
 今後の高等学校再編における学級定員のあり方については、国の学級編制の見直し等の動向を十分に見きわめつつ、地域の方々との議論も踏まえて、教育委員会で適切に対応していくことが必要であると考えます。
〇教育長(法貴敬君) ただいま知事のほうから御答弁申し上げたように、国における制度の見直しというふうな検討の情報は入手しておりますけれども、現時点における高等学校の学級編制の標準は、現行法令上40人と定められております。
 学級定員については、国の動向を十分見きわめながら対応してまいりますが、標準法を超えて学級編制を行うことは、現時点では難しいというふうに認識しております。
〇3番(小西和子君) 地域産業、地場産業発展のためには、地域の産業に対応した高校教育の存在が不可欠であります。地元の高校の卒業生が地域産業を支える構造をつくり上げなければ地域振興にはつながらず、人口流出が続くと考えられます。
 また、2007年9月定例会において、ポスト高校再編について知事は、地域産業の活性化の視点を十分に踏まえた上で、将来を担う人材をどのように育てていくかという視点を重視すると答弁しております。
 地域に住み、地域の高校へ通うことにより地域の思いが育ち、地域のために尽くす人間が育つと考えますが、知事の御見解をお伺いいたします。
〇知事(達増拓也君) 少子化に伴って生徒の減少が急速に進む中で、地域に根差し、産業や地域づくりを先導する人をはぐくんでいくことが必要と考えます。
 現在、教育委員会において、このような視点も踏まえて、今後おおむね十数年を展望した今後の高等学校教育における基本的な考え方と方向性について検討中であり、パブリックコメントや地域説明会等を通じて広く御意見をいただきながらその取りまとめを進めていると承知しております。
 具体的な高校の配置については、今後、地域と十分意見交換を行いながら総合的に検討していくとも聞いておりまして、議員からお示しいただいた視点も含めて十分に議論を尽くしてほしいと考えます。
〇3番(小西和子君) ありがとうございます。
 青森県、秋田県、福島県の高校では35人学級が行われております。学級数も、青森県、秋田県では1学年2から3学級、福島県では1学年2学級で、中山間地域等への配慮がなされています。四国4県に匹敵する県土の岩手県でも、教育の機会均等の観点から、35人学級、1学年2から3学級を前向きに検討することを要望して次の質問に移ります。
 次に、岩手県子どもの権利条例についてお伺いいたします。
 昨年は、子どもの権利条約が国連で採択されて20年を迎え、日本が条約を批准してから15年になります。日本国憲法や子どもの権利条約は、子供はすべて個人として、また一人の人格としてたっとばれ、平和のうちに生活し、学習権を初め基本的人権を主体的に行使し、教育を受ける権利や勤労の権利を享受し、幸福に、かつ文化的最低限度の生活を営むことができ、主権者として適切な判断力を有する、そのような人間として育成されることを期待しています。
 しかし、我が国の子供をめぐる現実は、そのような子供の姿とはほど遠いと言わざるを得ません。それどころか、今日、子供の貧困は、深刻な社会問題になっています。
 朝食を食べられず栄養源は給食だけという子供、高熱が出ても病院に行けない子供、修学旅行に行けない子供、高校や大学への進学をあきらめる子供、また、いわれなき虐待に苦しんでいる子供、国民健康保険料、給食費、授業料などの支払いが困難で、医療や教育を受ける権利などを奪われている子供、このような子供がふえています。
 県内で小・中学校の学用品などを市町村が支給する就学援助の受給者数が急増しています。2008年度に受給した児童生徒は前年度と比べて461人ふえ9、091人、県立高校授業料全額免除と半額免除の対象者は252人ふえ2、607人、私立高等学校授業料減免対象者は97人ふえ816人です。昨年からの景気の悪化、母子世帯の増加が背景にあります。離婚した夫から養育費を受け取れない母子世帯は6割を超え、母親らは、援助なしで子育てはできないと窮状を訴えています。専門家は、就労と賃金の安定化など、総合的対策の必要性を指摘しています。
 そこでお伺いいたしますが、本県の子供の貧困の実態についてどのように把握し、その原因をどのようにとらえているかお伺いいたします。
 また、県では、子供の貧困を解消するために、母子世帯などに対してどのような支援を行うのかお伺いいたします。
〇保健福祉部長(千葉茂樹君) 子供の貧困の実態と原因についてでありますが、本県におけます公的支援の対象となっています児童生徒の状況は、ただいま議員からの御質問の中でも実態の一部についてお示しもございましたが、ほかに、例えば平成20年度の生活保護の教育扶助受給人員が828人で前年度より38人増加しており、また、生活福祉資金のうち教育支援資金の貸付件数は339件で、同じく89件増加しているところであります。また、母子世帯等につきましても、平成20年度の調査では、前回調査した5年前と比較いたしまして、母子家庭、父子家庭ともに就労収入が月額20万円以上の世帯が減少し、15万円以下の世帯が増加しております。これらの実態は、昨今の経済情勢や雇用環境が強く反映しているものと考えているところでございます。
 次に、母子世帯などへの支援についてでありますが、県におきましては、国が新たに策定いたしました子ども・子育てビジョンをもとに、平成22年度から新たに実施いたします子ども手当の受給、高校授業料の実質無償化、児童扶養手当の父子家庭への支給拡大など着実に実施いたしますとともに、本年度中に岩手県ひとり親家庭等自立促進計画を定めまして、母子家庭や父子家庭等の自立支援を総合的に推進することとしております。
 具体的には、現在、県単独で実施しております母子家庭への医療費助成制度につきまして、平成22年度から父子家庭を対象として拡大いたしますとともに、先ほど知事から御答弁申し上げました携帯電話からアクセスできるホームページの作成などによりまして、これらさまざまな支援策の周知をより強化して取り組んでまいりたいと考えているところでございます。
〇3番(小西和子君) よろしくお願いいたします。
 経済的貧困が子供たちの将来の夢を打ち砕き、そのことによって自分の可能性を否定し、社会とはこんなものだと受けとめて、自分の伝えたいことを感情的に、あるいは暴力によってしか表現できない子供がふえています。また、近年、虐待により子供の命が失われるなど、重大な事件が依然として後を絶たない状況であり、虐待問題は、社会全体で早急に解決すべき課題となっています。
 岩手県における3児童相談所が受けた2008年度の虐待相談件数は273件で、前年に比べて15件減少していますが、延べ人数は3、400人を超え、1日平均10人弱の子供を保護しております。市町村が受け付けた虐待相談は483件で、前年に比べ25件増加しており、県全体では依然として高い水準で推移しています。
 心身ともに健やかに産まれ育つことはすべての子供たちの権利であり、社会全体の責務です。現場からは、相談件数の増加に対応が追いつかず、根絶は大変困難であるという声がありますが、相談体制の状況と課題についてお伺いいたします。
〇保健福祉部長(千葉茂樹君) 相談体制の状況と課題についてでありますが、本県におけます児童虐待相談件数は、今、議員からもお示しございましたが、児童相談所への通告が若干減少している一方、市町村では増加しておりまして、県全体ではほぼ横ばいの状況になっております。
 しかしながら、児童相談所におけます相談内容は、家庭環境が複雑でさまざまな問題を抱えている困難な事例が多くなってきておりまして、一層迅速かつ専門的な指導、援助が求められていると考えております。
 このような状況を踏まえまして、これまでも児童福祉司の増員とあわせまして、虐待通告から48時間以内に家庭訪問等により児童の安全を確認できるよう全児童相談所に虐待対応専門チームを設置しておりますほか、児童相談所において児童福祉司にケース指導を行うスーパーバイザーを配置するなど、相談機能の充実も図ってきたところでございます。
 また、児童福祉司が適切な援助を行えるよう、定期的に有識者を招聘いたしまして所内研修を実施しておりますほか、専門研修に派遣するなど、その資質の向上にも努めているところでございます。
 今後におけます児童相談所の相談体制におきましては、平成22年度から児童福祉司1名の増員を検討しておりまして、市町村への相談支援にも適切に対応しつつ、児童福祉司や児童心理司、保健師等が一体となって、困難事例に対して、より専門的な対応ができるよう取り組んでまいりたいと考えております。
〇3番(小西和子君) ありがとうございます。
 青森県の児童福祉司は、かなり人数が多いというふうに聞いております。ということで、そこを目標に、ぜひまた増員について考えていただければと思います。
 日本の子供は、生活意欲や学習意欲など能動的意欲を支える自己肯定感が著しく低下し、世界でも最低基準になっていると言われています。能力が低いのではなく、やる気がない状態です。自己肯定感とは、自己評価、他者評価が合わさったものと言われ、また他者評価とは、周囲から大切にされている、存在を認められ愛されているという実感です。それが欠けていると言われています。
 対策としては、子供たちが能動的に活動し、やればできるという自信を持つことが自己肯定感を高めると言われています。そのためには、子供たちが経験を積みながら成長できる社会のシステムづくりが必要です。自己肯定感の回復は、日本の子供にとって最優先の課題と言えます。
 子供の参加と自己実現、それを支える大人社会のバックボーンとして、子どもの権利条例が果たす役割はとても大きいものがあると考えます。
 子どもの権利に関する条例を2002年に制定している北海道の奈井江町を調査してまいりました。条例に、生きる権利、育つ権利、守られる権利、参加する権利を掲げています。2003年に行われた奈井江町合併問題住民投票には、事前学習、意見交換を2年間にわたり行った小学校5年生以上の子供たちも参加しました。子供たちが熱心に合併問題を考えたことが親や大人によい刺激となり、町民総論議のきっかけをつくったとのことでした。奈井江町では、子供の声をまちづくりに生かすルートが公的に確保されています。そのことが地域を担う人材育成につながっていくと考えます。
 現在、日本では、子どもの権利条例を制定している自治体は60を超える程度とまだ多くはありませんが、少しずつふえています。県内では遠野市で、昨年の3月議会でわらすっこ条例が制定されました。さらに奥州市でもこの3月議会で制定予定と聞いております。秋田県では2006年に制定し、成果を上げていると聞きます。
 地域振興、地域活性化、地域に根差して活動できる人をはぐくみ、知事の唱える希望郷いわて実現のためにも、岩手県においても岩手県子どもの権利条例制定を検討してはいかがでしょうか、知事にお伺いいたします。
〇知事(達増拓也君) いわゆる子どもの権利に関する条例は、都道府県では全国15で制定されております。その内容を見ますと、まず、総合的に子供施策を推進する条例が秋田県を初め12道府県、犯罪や児童虐待の未然防止、権利擁護の手続などを定めるなど個別具体的な目的により制定された条例が3県という状況になっています。
 秋田県を初めとする12道府県においては、少子、子育て問題に取り組む県の姿勢を明らかにするとともに、県民総参加により子供が大切にされる社会や社会全体で子育てを支える環境づくりを推進することなどを目的として制定されており、その内容としては、例えば秋田県条例を見ると、子ども、子育て支援についての基本理念、県、事業者、関係機関、県民の責務や基本計画の策定、子供の権利救済の手続といったことが定められております。
 先ほど申し上げましたいわて子どもプラン、ここにおいては、基本方針、施策の基本方向、岩手の子供たちに期待する行動などを掲げ、また、各政策分野の具体的な推進方向や家庭、地域、企業、学校、行政それぞれの役割を盛り込むこととしております。
 今申し上げました秋田県を初めとする他の道府県の条例で定められている事項については、このいわて子どもプランにおおむね盛り込まれているものと考えていますことから、本県においては、まず、このいわて子どもプランの着実な推進を図っていくことと考えております。
 議員から御提言のあった岩手県子どもの権利条例については、今後、いわて子どもプランに掲げる施策の推進状況を評価しつつ、既に条例を制定している県内外の自治体において、その条例が果たしている機能や役割を検証、研究していくことがまず必要と考えております。
〇3番(小西和子君) この子どもプランというのは、他県の場合であると次世代育成支援行動計画の内容として扱われて、岩手県も同じだと思うんですけれども、本来である子どもの権利条例というのは、もともと子どもの権利条約を基盤として自治体独自で作成するものです。さきに述べましたけれども、日本でも15年前にこの条約を批准しました。条約には、生きる権利、育つ権利、守られる権利、参加する権利の四つの子供の権利を守ることを定めております。
 先ほども言いましたけれども、守られるだけの条例ですと子供は育ちません。自己肯定感が高まらないということで、この条例を通して子供の自己肯定感を高めるためにも、保健福祉部、教育委員会等、岩手県全体で扱う横断的な県条例であるべきと考えております。子供みずからが意見表明権とか、それから参加する権利とか、そういうことを保障されることが子どもの権利条約というふうにとらえておりますけれども、知事のお考えをお伺いいたします。
〇知事(達増拓也君) まず勉強させていただきたいというところではありますけれども、国連での議論でありますとか、国際的な子供の権利をめぐる議論なども私、関心ありますし、岩手においても、子供が主体的にいろいろな社会の活動、また世の中の動きにきちんと参画していく工夫というのは必要だと思っておりますので、参考にさせていただきたいと思います。
〇3番(小西和子君) ありがとうございます。ぜひ、子供みずからが行動する、そういう条例に持っていきたいものだと考えますので、よろしくお願いいたします。
 次に、女性に対する暴力への対策についてお伺いいたします。
 個人の尊厳と法のもとの平等が日本国憲法にうたわれ、男女平等の実現に向け、男女共同参画社会基本法の推進など、さまざまな取り組みが行われています。しかしながら、配偶者からの暴力が大きな社会問題となっており、人権の擁護と男女平等の実現にとって大きな妨げとなっています。
 こうした中、2001年には配偶者からの暴力の防止及び被害者の保護に関する法律が制定され、この法律を受けて岩手県では、2005年に本県のDV施策の基本方針及び実施内容について定めた、いわて配偶者暴力防止対策推進計画を策定し、DV防止対策を推進しておりますが、DV被害は後を絶たず、深刻な状況となっています。
 2008年度の県内配偶者暴力相談支援センター12カ所における相談件数は668件、盛岡女性センターでは710件と増加傾向にあります。
 このような実態をどのように受けとめているのかお伺いいたします。また、県の相談体制、相談員の研修の機会の保障についてどのように考えているのか、あわせてお伺いいたします。
〇環境生活部長(松川求君) 女性に対する暴力への対策についてでございます。
 相談体制につきましては、配偶者暴力相談支援センターとして、県では、平成14年度に福祉総合相談センターを、平成18年度に男女共同参画センター及び広域振興局等保健福祉環境部の計12カ所を指定いたしております。
 また、昨年6月に盛岡市がもりおか女性センターを指定しておりまして、全県で合計13カ所の配偶者暴力相談支援センターが設置され、DVに係る相談に対応している状況にございます。
 相談の状況は、県の支援センターでの状況を申し上げますと、センターが1カ所でありました平成14年度は270件、センターが12カ所となりました平成18年度が610件、平成20年度が668件と増加傾向にあるわけでございます。これは、相談機関が整備されてきたことによりまして、これまで家庭内に潜在していた配偶者からの暴力の問題が顕在化してきたものと考えておりまして、DV防止対策に関する社会的ニーズは高いと受けとめております。
 相談員の研修でございますが、これまで法知識や相談の受け方などに関する基礎的なセミナーや、DV被害者の心理、被害者及び子供への支援のあり方などに関する被害者支援講座など、相談員の業務経験や習熟度に応じた研修を企画し、実施してまいりました。
 今後も、こうした研修の機会を確保し、相談員の資質向上を図ってまいりたいと考えております。
〇3番(小西和子君) ありがとうございます。
 DV被害者の相談をしっかり受けとめること、これが重要だと考えます。また、一度暴力を身につけてしまった人が自分を変えることは、とても困難だとも言われております。被害者が、自立して生活できるまでの支援を続けることも欠かせないと考えます。
 福岡県久留米市では、DV対策における機関連携とワンストップサービスを行っています。ぜひ、岩手県でも、DV被害者の立場に立った支援、例えば、相談体制の充実や予算措置等を行っていただきたいものですが、御所見をお伺いいたします。
〇環境生活部長(松川求君) DV被害者への支援についてでございます。
 被害者の安全確保を最優先に、被害者の置かれた状況に即した的確な支援を行うことが重要と考えております。
 被害者が必要としている支援を的確に行うためには、警察、市町村など関係機関との連携、協力が不可欠でありますことから、今年度、全県的なDV対策のネットワークの構築を目指しまして、県や警察、市町村、医師会、民生児童委員などの関係機関により、岩手県DV防止対策連絡協議会を設置いたしました。
 また、各地域におきましては、それぞれの配偶者暴力相談支援センターを中心に、地元の警察署や市町村などの関係機関と、的確な被害者支援に向け情報交換や事例検討などを行っている状況でございます。
 今後、御質問にありました久留米市の方式なども参考とさせていただきながら、一層関係機関の連携を強化いたしまして、さらに、この被害者の立場に立った的確な支援がなされるよう努めてまいりたいと考えております。
〇3番(小西和子君) よろしくお願いいたします。それから、相談員の処遇改善等も、ぜひ行っていただければと考えます。
 また、2005年度の内閣府の調査では、DVは、配偶者間だけではなく、若い人たちの間でも多く起こっていることが明らかになってきています。
 2008年度、県内中学生を対象にした意識調査の結果、自尊感情の低さが目立ちました。その自尊感情の低さが、自分を大切にすることや他人を大切にすることの阻害要因になっているのではないかと考えられます。
 また、DVは、被害者の心身に深い傷を残すとともに、加害者の心にも深い傷を残します。若い人たちが、将来にわたり、被害者にも加害者にもならないための予防啓発が重要と考えますが、どのような取り組みを行っているのかお伺いいたします。
〇環境生活部長(松川求君) DVの予防啓発についてでございます。
 DVの発生を未然に防止するためには、予防啓発が重要でございます。特に、結婚前の若年層を対象に、男女の対等なパートナーシップでありますとか暴力のない交際について、意識啓発を図る必要があると考えております。
 こうしたことから、平成19年度に高校生などを対象とした、デートDV予防啓発ワークブックや指導者向けの手引を作成いたしまして、平成20年度以降、これらを使用して、高校等への出前講座でありますとか、教職員向けセミナーを開催するなどの取り組みを行っております。
 今後も、関係機関と連携しながら、若年層を対象とした予防啓発の取り組みを進めてまいります。
〇3番(小西和子君) ありがとうございます。
 また、DVの背景には、男性が主、女性が従といった性別に対する偏った考え方や男女間の社会的な力の差があります。若いうちにその考え方の偏りや力の差に気づき、性別によらず、互いに人格と人権を尊重するような教育があらゆる機会においてなされることが重要であると考えますが、小学校、中学校、高等学校では、どのような人権教育、男女平等教育が行われているのでしょうか、お伺いいたします。
〇教育長(法貴敬君) 小学校、中学校、高等学校における人権教育、男女平等教育についてでありますが、学校教育においては、児童生徒の発達段階に応じて、その教育活動全体を通じて人権尊重の意識を高める指導を進めており、小学校、中学校においては、学習指導要領に基づき、家庭科─中学校は技術家庭科ですが─などの教科や道徳を中心とした学習の中で、男女の平等意識の醸成やお互いの立場を思いやる態度の育成に努めており、また、高等学校においては、主として公民科、家庭科、特別活動などにおいて、男女の平等や相互の理解と協力の重要性について指導しており、特に家庭科では、固定的な性別役割分業意識を見直し、男女が協力して家庭を築くことの意義などの理解を深めているところであります。
〇3番(小西和子君) 学校生活では、名簿が大きな役割を果たします。男子を先、女子を後に並べる男女別名簿にすると、男子が先、女子が後という刷り込みが小・中・高等学校において1万回以上も繰り返されると言われています。
 学校で男女別名簿を使用している国は世界的に極めて少なく、1985年のナイロビ世界女性会議での調査では、18カ国中、日本とインドだけでした。
 児童生徒の名前を男女一緒にし、あいうえお順などに並べる名簿、それが男女混合名簿と言いますけれども、社会一般に使われている名簿のことです。男女に分けないで、男女一緒に作成した名簿のことを男女混合名簿と言います。
 男女混合名簿を使用し、性別にかかわらず平等に扱われることは、人権の観点からも大切なことであると考えますが、今後の取り組み方針とあわせ、知事の御所見をお伺いいたします。
〇知事(達増拓也君) 学校において、授業や行事などの教育活動全体を通じて男女平等の意識を高める指導を行っていくことは、重要であると考えております。
 各学校で使用されます児童生徒の名簿は、教育的効果、用途及び利便性などを考慮しながら、各学校が主体的に判断して作成されているものと承知しております。
 また、男女混合名簿については、平成20年9月に岩手県男女共同参画調整委員から県教育委員会に対して、各学校において男女混合名簿の使用について議論するきっかけとなり、主体的に判断するための資料として情報提供を行うよう勧告がなされたと報告を受けており、これを受けて県教育委員会が適切に対応しているものであります。
〇3番(小西和子君) では、岩手県がどのような状況かということをお知らせしたいと思います。
 2009年度、男女混合名簿を使用している全国の学校の平均は80%ほどです。岩手県は、小学校が32.7%、中学校が何と10.5%、高等学校が31.0%で、東北でももちろん最下位です。全国でも最下位グループに入ります。
 人権意識を高めるためにも、男女混合名簿を推進することを要望して、次の質問に移ります。
 最後に、並行在来線維持についてお伺いいたします。
 IGRいわて銀河鉄道は、2008年度から、県から約1億4、000万円の財政支援を受け、人件費や修繕費削減、検査周期延伸、列車運転区間削減など、徹底したコスト削減を行ったにもかかわらず、寝台列車の減便などで累積赤字はなお3億5、000万円を超えています。
 さらに、少子高齢化や沿線人口の減少、モータリゼーションの進展などによる利用者の減少傾向に歯どめがかからないだけに、経営環境が確実に悪化していくことが予想されます。
 このような状況下で、JR貨物の線路使用料を是正するため、貨物線路使用料の調整金の見直しについて、前原国土交通大臣等に知事による要請が3度にわたり行われましたが、その後どのように進んでいるのかお伺いいたします。
〇地域振興部長(加藤主税君) 先月、国土交通省政務官などで構成いたします整備新幹線問題調整会議、これが政府の現在の検討の場でございますが、ここにおきまして、関係道県に対するヒアリングが行われ、知事から、貨物線路使用料の調整金制度の抜本的な見直しを強く訴えたところです。
 この調整会議では、今後、順次、関係自治体、関係するJRや有識者などからヒアリングを行い、その後、議論、夏までに一定の結論を出すと伺っております。
 県といたしましては、この貴重な機会を逸することなく、本県の要求が確実に実現できますよう、今後も沿線市町村や関係者と一体となって全力で取り組んでまいります。
〇3番(小西和子君) ありがとうございます。
 今後、予想される経営環境の悪化により赤字がふえる場合、利用者への負担増になってはならないと考えます。県中央部や南部と県北部との交通格差をこれ以上広げてはならないと考えますが、知事の御所見をお伺いいたします。
〇知事(達増拓也君) IGRの経営状況は、御指摘のとおり、寝台特急列車減便等の影響により、今後、急激に悪化することが予測されておりまして、これに対処するため、最大の課題であるJR貨物からの適正な貨物線路使用料の確保に向けて、調整金制度の抜本的な改正を国に求めているところであります。
 一方で、沿線市町村や民間団体等とともに、利用促進のための協議会を組織して、輸送サービスの向上や誘客の促進などに取り組むこととしており、まずは、この両面から赤字の縮減に努めて、鉄路の維持を図っていく考えであります。
 仮に赤字が発生した場合でありましても、IGRの運賃が県央部等と比べて既に高い水準にあることを考慮しますと、これ以上の負担の増加は、利用者の減少も招きかねないことから、実施は困難ではないかと考えております。
〇3番(小西和子君) もうそろそろ時間ですので、本当に御丁寧な御答弁ありがとうございました。ぜひ、今、答弁いただいたことを実現させていただきたいと思います。
 以上で私の質問を終わらせていただきます。御清聴ありがとうございました。(拍手)

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