平成22年2月定例会 第15回岩手県議会定例会 会議録

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〇39番(吉田洋治君) 政和・社民クラブの吉田洋治でございます。
 質問に先立ち、現地時間1月12日に発生いたしましたハイチ大地震は非常に被害甚大であり、ハイチ共和国国民の皆様に、心よりお見舞い申し上げます。
 私は、会派を代表し、いわて県民計画及び県政の諸課題について順次質問してまいりますので、誠意ある御答弁をお願いいたします。
 最初に、いわて県民計画についてお伺いします。
 達増知事は、平成20年2月定例県議会において、みずからの任期を、原則2期8年が適当であると考え、県民と県行政との信頼を構築する上でマニフェストに明示し、県民の皆様とお約束したところと明言しました。その上に立ち、県民総参加によるいわて県民計画を策定、10年のスパンで重点的に取り組む七つの政策分野、そしてアクションプランでは42の政策項目、97の目標数値を設定しました。このプランは、知事の任期に合わせ、2年、4年、4年で策定したとしており、いわゆるマニフェストサイクルと連動させる考え方を示しております。
 そこでお伺いします。
 来年4月は統一地方選挙、改選まで1年余りとなりました。増田知事時代の平成11年に策定した、みんなで創る夢県土いわてを基本目標とする岩手県総合計画からどのように変遷し検証したか。そして、人口減少とグローバル化が進展する中で、21世紀の豊かさ、岩手らしさを追求し、誇りある岩手をつくるため、達増カラーを随所に散りばめたいわて県民計画に取り組む知事の基本姿勢と、希望郷いわての実現に向けた力強い決意をお伺いします。
 また、県民総参加の基本理念を実現するため、岩手県I援隊運動を提唱しております。県職員一人一人が、土佐を脱藩した坂本龍馬のつもりで脱県せよと県職員に呼びかけ、知事みずからも脱県するとし、公務員意識から脱皮して、民間の皆さんと対等に向き合い共同行動する、私も同感であります。過年度2年間の決算不認定事案もあり、県民から信頼される県職員の意識改革について、知事のお考えをお示しください。
 次に、平成22年度予算編成に関する提言と要望への対応についてお伺いします。
 私ども政和・社民クラブでは、県政の進むべき道を常にただし、県民とともに歩むべく、広く県民の意見を県政運営に反映していこうと取り組んでいるところです。そのような考えに基づき、平成22年度予算編成に当たっては、厳選の上、11項目にわたる提言、要望をまとめ、去る12月に知事に対して提出いたしました。産業、雇用、地域医療などの諸問題が、これまでにない緊急かつ重大な課題として県政にのしかかってきている今日にあって、我が会派の提言、要望を知事はどのように受けとめ、どのように予算編成等に反映したのか、まず総括的にお伺いいたします。
 次に、今回提出した11の提言、要望のうち、特に2点に絞って県の対応をお伺いします。
 第1点は、地域医療の確保における市町村との連携等についてであります。
 昨年2月、まさに県民世論を二分する激論を経て、県立病院5地域診療センターの無床化が決定されました。引き続き深刻な医師不足が続く中、限られた医療資源を有効に活用し、良質な地域医療を提供していくためには、従来の医療は県、福祉は市町村という垣根を取り払い、県と市町村との連携を強化していかなければならないと考えます。特に、医師不足について、いわて県民計画においても、地域における医師不足が一層深刻化し、地域別、診療科別の偏在も問題であるとされております。医師の絶対数や病院勤務医師の確保が求められるとともに、地域においては、高齢者や慢性的な疾患を持った患者などに対して、日常的に総合的な診療を行う医師が望まれていると考えますが、こうした現状を踏まえ、今後の医師確保対策について、知事の基本的な考え方をお伺いします。
 県は、これまで、地域医療に関する懇談会などの取り組みにより、地域の実情と早急に打開すべき課題を共通認識の上、十分に把握されてきているものと期待を込めつつ注視しておりますが、今後、県としてどのような取り組みを進められようとしているのでしょうか。
 また、我が会派では、今後、さらなる県と市町村の協力体制を構築することが求められているとの認識のもと、市町村に対して地域医療を担当する専門の課を設置することを促すよう、県に提言したところであります。また、その際、市町村に新たに設置した課に、県の保健福祉部職員を派遣するなどの踏み込んだ対応を行うよう付言しております。これは、言うまでもなく、地域医療の現場で考え行動することこそ重要であり、医師確保対策と並行して、今現在、地域に存在するありとあらゆる医療及び福祉資源をどのように活用し、また、どのように補い地域医療を成り立たせていくか、地域住民に不安のない医療サービスを提供していけるか、これを模索し実現していくことが急務であると考えるからであります。
 県と市町村が真剣になって連携、協力し合い、一刻も早く、地域住民が納得いく医療の確保を実現していただきたいと切に願うものでありますが、知事は、我が会派の提言をどのように受けとめられ、どのような対応を図ろうとされているのか、お伺いします。
 第2点は、企業誘致と農産物の活用についてであります。
 現下の厳しい社会経済情勢において、雇用確保はもちろんのこと、懸念される二番底の不安を払拭し、地域経済を上昇カーブへと押し上げていく有力な原動力の一つとして企業誘致の推進が挙げられることは、これまでの北上川流域を中心とした誘致企業の集積が本県の地域経済を力強く牽引し、ものづくり産業の育成強化を誘導してきた経緯を見るとおり、明らかであります。
 かつては、右肩上がりの日本経済を追い風に、また、経済の空洞化が叫ばれる中にあっても、高速交通網及び関連道路等を初め、電力、水道などインフラの着実な整備の進捗を背景に、安価で良質な土地と、本県ならではの勤勉で実直かつ優秀な人材をセールスポイントに、地域間競争に打ち勝ち、着々と立地企業の獲得が進んでまいりました。
 そこでお伺いしますが、今日、いよいよ経済環境の悪化が深刻化している中にあって、今後とも企業誘致を進め、また、現在立地している企業が撤退、縮小に向かわぬよう対策を講じていく必要がありますが、県では、今後の企業誘致策及び立地後のフォローアップ対策としてどのような施策を講じようとしているのでしょうか、お示し願います。
 我が会派では、本県は食料供給基地を標榜しており、安心・安全な農産物の生産が強みであることを踏まえ、この強みを企業誘致に活用することを提言いたしております。それは、食料自給率が低い都市に本社を置く企業を誘致するに当たり、本社を含めた全社員の1年分の米を毎年確保することを約束することで双方の実利がマッチングし、強力な企業誘致のインセンティブになると期待されます。また、同時に、本県の安心・安全な農産物を首都圏にアピールすることにもつながると思います。
 今後の企業誘致に際しては、本社も含めた全社員の1年分の米を毎年確保することを条件とするよう提案をしてきたところでありますが、県としては、この提言をどう受けとめ、どのような対応を図ろうとしているのか、お伺いをします。
 次に、県立療育センター機能の充実と超重症児者等への対応についてお伺いします。
 1月29日、通常国会初の鳩山首相の施政方針演説は、いのちを守りたい。いのちを守りたいと願うのですから始まり、命を強調し、来年度予算を、いのちを守る予算と命名しました。今、病気と闘いながら特別支援学校で学ぶ子供たち、難病や超重度の障がいと闘い、克服しようと命と向き合っている弱い立場の子供やその家族にとって、何と心強く期待を抱く言葉ではなかったでしょうか。
 県立療育センターは、平成19年4月、肢体不自由児施設、都南の園を中核として、障がい児者の療育について一層の充実を図る目的で開設されました。県では、今年度30年余を経過し、老朽化が著しいセンターの修繕工事を実施し、新年度予算には整備調査費を計上しておりますが、長年の懸案であることから、積極的な対応を願いお伺いをします。
 県立療育センターの機能を充実するため、老朽化が著しいセンターの移転、新築計画の推進、医療部門の高度化を初め、医療機器の整備並びに医療スタッフの充実を早期に実現することが求められますが、今後の対応方針についてお示し願います。
   〔副議長退席、議長着席〕
 また、超重症児及び準超重症児の入院施設の整備、在宅超重症児者に対する訪問看護、訪問リハビリ、あるいはホームヘルパーの派遣について、公費でも回数と時期をふやしていただきたい。さらに、障がい児の療育に対するきめ細かな対応を進めるため、関係する医療機関、福祉施設の連携等、ネットワークの構築を早期に確立するべきであります。
 私は、ノーマライゼーションの理念に基づき、障がいを持つ人々や、高齢者も格差を感じない、お互いに支え合う福祉立県を目指すべきだと提唱しますが、知事の御見解をお伺いします。
 次に、雇用問題についてお伺いします。
 県内の景気動向は、個人消費や住宅着工、そして公共投資も低調に推移するなど全体として低迷し、先行きに明かりが見える状況になく、岩手県の労働市場は依然として厳しい状況が続いております。
 平成21年12月現在の有効求人倍率は0.35倍であり、前年同月より0.11ポイント下回っております。また、昨年12月末現在の新規高卒者の就職内定率は78.4%であり、県内に就職を希望する高校生がいまだに就職先が決まらずに、不安の中で卒業を迎えようとしております。社会へのスタート時点でつまずくことは、人生に大きな影響があることは言うまでもありません。
 このような経済や社会情勢の中、国と市町村を含めた連携により、岩手県としてもサポートしていくことが非常に大切なときであると考えます。岩手県として、県内の新規卒業者の就職内定状況を含めて、労働市場の現状と生活実態をどのように把握しておりますか。加えて、そのことに対するまさに緊急対策を具体的にどのように進めているのか、お聞きいたします。
 また、産業人育成や求職者支援などのために、職業訓練は必要不可欠なものであると考えます。しかし、先般厚生労働省が発表した2010年度末に県内5施設の廃止は、大きな衝撃でございました。広大な県内の地理的条件や経済的理由などからして、県内どの地域においても均等な職業訓練の機会の提供は、生活支援も含めて、行政で実施しなければならないことであると考えます。今後、どのように職業訓練の場を県内均等に提供されるのか、お聞きいたします。
 また、情報処理技能者養成施設等の国による運営継続の要望に対して、国からは、可能な限りその運営を地方公共団体等にゆだねていくとの回答があったようであります。それを受けて、知事はどのように対応していこうとしているのでしょうか、お伺いをします。
 最近、貧困は個人だけの問題ではなく、政治や社会の問題として提起され始めております。働けど働けど我が暮らし楽にならずでは、希望が持てる岩手県とはなり得ません。額に汗して働き、努力したら報われる社会を、次の世代につなぐ極めて大事なときであります。困窮した県民が実感できるワンストップ対応をさらに充実することが喫緊の課題であり、県経済雇用対策本部長である知事の御所見をお伺いします。
 次に、岩手競馬の存続、再生についてお伺いします。
 岩手競馬は、平成19年4月に新計画のもとで新たなスタートを切り、平成19年度、20年度と黒字を達成して、今年度も厳しい経営環境の中で、3度のコスト調整により、3年連続の収支均衡が確実な見通しとなったと承知しておりますが、このことは、競馬関係者が一丸となって、岩手競馬の継続に取り組んできた成果でもあります。
 来る4月3日には、平成22年度の岩手競馬が開幕しますが、今後も厳しい環境が続くと見込まれ、今月17日の競馬組合議会で示された来年度の収支計画では、岩手競馬の発売額は、新計画の想定で280億円だったものが209億円と見込まれており、世界的な景気後退があったにせよ、新計画の策定当時には、だれもが想定できなかった厳しい水準となっています。来年度もこのまま売り上げの減少が続き、仮に発売額が計画どおりにならない場合、新計画前の平成18年度と比べ、約3分の2まで経費を切り詰めている中、これ以上のコスト削減は限界に近く、このままでは、これまで3年間の改革、改善の努力にかかわらず、平成19年3月の議論の再現になりかねないとの懸念があるなど、来年度は岩手競馬にとってまさに正念場とも言うべき年と考えられます。
 岩手競馬の継続のためには、今後もあらゆる手だてを尽くしていく必要がありますが、来年度において、発売額が計画どおりにならない場合も想定しながら、どのような事業運営を行い4年連続の収支均衡を達成していくのか、管理者である知事のお考えをお示し願います。
 また、現在の岩手競馬の収支構造は、1、場外発売所等の施設経費、2、馬券発売のためのコンピューターシステムの委託経費、3、レース映像の放映等の委託経費など、施設賃借料や業務委託料が大きな支出を占めており、現在のコストカットの手法では、これまで以上の大きな削減は期待できません。平成24年度から導入される共同トータリゼータシステムのようにこれまでのシステムを見直し、より効率性の高いコンパクトな運営形態に改めていくことが、大幅な収支の改善に効果が高いものと考えられます。したがって、岩手競馬の将来に向けて、現在の運営形態の抜本的な見直しや、発売向上や業務改善につながるような新たな投資に取り組むことこそ、今の岩手競馬に最も必要と考えられますが、知事の御認識をお伺いします。
 質問の最後に、2010年世界地熱会議と新エネルギーの導入についてお伺いします。
 私が所属する環境福祉委員会は、全国調査の一環として大分県の九州電力八丁原地熱発電所を訪れ、バイナリー発電など地熱利用の取り組みを調査したところであります。現地では、発電所の所長さんを初め関係者の歓迎を受け、発電所のビデオ上映による概要説明、発電現場の実態調査あるいは展示館など、予定時間を大幅に超える充実した調査でありました。
 大分県では、地熱発電出力が約15万キロワット地熱日本一をアピールし、別府温泉など観光事業とセットにした新たな地熱開発を推進しておりました。翻って、本県での地熱発電出力量は10万3、500キロワットであります。岩手県新エネルギービジョンで目標としている12万キロワットの86.3%の達成率であることから、今後の地熱開発への取り組みについて積極的に行動を起こすべきであります。
 本年は、5年ごとに開催される西暦2010年世界地熱会議が、4月25日から30日までインドネシアのバリ島で開催されます。世界の地熱開発や関連する業界、学界の発展を助けるため世界じゅうの地熱関係者が集まり、研究成果の発表、技術製品の紹介、情報交換などが行われます。
 10年前の世界地熱会議はアジアで初めての開催となり、大分県と岩手県の2会場で行われました。本県会場となった滝沢村の岩手産業文化センターには、60カ国から専門家約1、300人が集まり、32の分科会で熱心な討議が行われました。会場の敷地内に、冷暖房を賄う地熱ヒートポンプのデモンストレーションの施設を設置するなど、21世紀の活力を岩手から発信したものと思います。
 そこでお伺いしますが、私は、ぜひ世界地熱会議に本県から担当者を派遣し、情報収集に努め、過去10年の検証と、今後、地熱日本一を目指し、観光立県いわてと連動させる施策の展開を積極的に図るべきと考えますが、知事の御見解を伺います。
 また、政府は、国内の温室効果ガスの排出量を2020年までに25%削減、目標達成に向けロードマップづくりに着手しましたが、そうした状況を踏まえ、新エネルギー・産業技術総合開発機構─NEDOでは賦存量調査事業をさらに強化する方針と聞いております。これまで、八幡平市の安代地区でのボーリング調査、また、沿岸の宮古市重茂半島の閉伊崎の岩脈に火成岩が賦存し温泉の出る可能性ありとの学識者もおられ、本県は地熱の宝庫でもあり、NEDOへの調査要望を推進してはいかがでしょうか。
 また、県では2010年、三陸沿岸の洋上風力発電の可能性についても検討に入るとしております。本県の電力自給率は約25%で、75%は青森県内を初め他県に依存しておりますが、岩手は再生可能エネルギーが豊富にあり、地域の活性化と県勢発展、そして危機を希望に変える絶好のチャンスであります。世界に誇れる環境王国を目指すという知事の御見解をお伺いいたします。
 以上で私の代表質問を終わります。御清聴まことにありがとうございました。(拍手)
   〔知事達増拓也君登壇〕
〇知事(達増拓也君) 吉田洋治議員の御質問にお答え申し上げます。
 まず、いわて県民計画に取り組む基本姿勢と決意についてであります。
 平成11年に策定した岩手県総合計画は、自立、参画、創造による持続的な地域づくりを理念に掲げ、地域の資源を生かしながら、民間の活力や地域の潜在力を引き出す取り組みを展開してきたところであります。
 一方で、急速なグローバル化など社会経済情勢が大きく変化する中で、人づくりを初めとする長期的な課題や雇用環境の改善、地域医療の確保などの喫緊の課題にしっかりと対応していくためには、県民とともに将来に向かって岩手の目指す姿を描き、その実現に向けて一緒に行動することが重要であり、今般、県民の幅広い参画と英知を結集していわて県民計画を策定したところであります。
 いわて県民計画では、県民、企業、NPOや行政など、地域社会を構成するあらゆる主体がともに支え合いながら総力を結集して、希望の実現に向けて取り組んでいくことが大切と考え、基本目標としていっしょに育む希望郷いわてを掲げました。
 ふるさと岩手には、豊かな自然や歴史、風土、その中で培われた伝統文化、実直な岩手の人など、全国に誇れる独自の価値があります。こうした価値を見詰め直し、磨き上げ、人と人、人と地域などさまざまなつながりをはぐくみながら、さらにその価値を高め、岩手らしい豊かさとして未来へ継承していく取り組みを県民の皆様と力を合わせながら進めていくことで希望郷いわてを実現していく決意であります。
 次に、県職員の意識改革についてであります。
 県民と行政が協働しながら希望郷いわてを実現していくためには、県民からの不信を払拭し、県政への信頼を得ることが重要であります。この考えのもと、知事以下全職員が心を一つにし、常に物事を県民目線で正しくとらえ、さまざまな課題に積極果敢に取り組んでいくため、職員のあるべき姿や行動基準、具体的には、規律を重んじ、県民から信頼される職務遂行の徹底等を定めた岩手県職員憲章を策定し、職員の意識改革と行動の実践に取り組んできております。
 さらに、いわて県民計画の実現に向けて昨年11月から岩手県I援隊運動を展開しており、県及び県職員が既存の枠組みを超えて、独創力と行動力を発揮しながら県民と一緒になってクリエーティブに活動する取り組みを進め、既に官民の枠を超えたさまざまな活動を展開しております。
 今後におきましても、職員研修や日常の業務マネジメントによる職員憲章に掲げた行動の徹底はもとより、I援隊運動のさらなる推進などにより、県民からの信頼を高める職員像の実現に取り組んでまいります。
 次に、提言、要望に対する受けとめと予算への反映についてであります。
 昨年12月9日にいただきました平成22年度予算編成に関する提言と要望については、地域医療の確保や科学技術の振興など重要な課題への提言や斬新なアイデア等があり、予算編成において大いに参考としたものであります。
 平成22年度当初予算編成におきましては、御提言いただいた内容を初め、政策評価結果や県政懇談会等を通じた県民の皆様や地域からのニーズを的確に把握した上で事業を企画立案し、政策の優先度や事業の効果、効率性を十分検討の上、予算の編成を行ったところであり、喫緊の課題であります厳しい経済、雇用情勢、深刻さを増す地域医療などの諸課題への取り組みや希望郷いわての実現に向け、県民の生活を守り、県民一人一人が未来に向け、希望を持って歩み出せる予算として編成できたものと考えております。
 次に、今後の医師確保対策についてであります。
 県においては、これまで医師確保対策アクションプランに基づいて奨学金制度による医師養成に取り組みますとともに、県外からの医師招聘、県内の臨床研修体制の充実による初期臨床研修医の受け入れ拡大や女性医師の就業支援等に取り組んできたところであります。
 しかしながら、本県の地域医療の現状は、厳しい勤務環境による病院勤務医の不足や医師の地域偏在と診療科偏在など、依然として厳しい状況にあると認識しております。このため、平成22年度においては、岩手医科大学医学部定員増に伴い奨学金制度の貸付枠を拡充することとしたほか、勤務医の勤務環境の向上や処遇改善などの医師確保対策を一層強化して取り組むこととしたところであります。
 また、特に地域における中小規模の公立病院などにおいては、地域医療を担う総合的な診療能力のある医師が求められていますことから、昨年12月、地域病院担い手医師育成検討会を設置したところであり、今後、育成の仕組みや育成プログラムの方向性等を取りまとめた上で、県と育成を行う病院が連携しつつ、平成22年度から募集を行い、平成23年度には育成を開始したいと考えております。
 次に、地域医療の確保における県の今後の取り組みについてであります。
 去る1月27日に両磐圏域で開催された地域医療に関する懇談会を最後にすべての保健医療圏で懇談会が終了し、意見交換の結果を提言として取りまとめていただいたところであります。
 県としては、これら提言の具体化に向け、まずは地域住民の皆様に理解していただくことが重要であると考えており、各圏域で開催しているシンポジウムなどを通じ、その周知を図っているところであります。
 また、提言の内容のうち各主体が速やかに実施することができる内容についてはみずから積極的に取り組んでいくほか、相互に連携した取り組みについては、保健所がコーディネート役となり、推進していくこととしております。
 こうした各地域における具体的な活動に対しては、広域振興局における支援はもとより、県の新規事業などにより積極的に促進していくとともに、地域において医師や行政職員を講師とした医療に関する勉強会を開催するなど、関係団体と一体となった取り組みを一層展開していくこととしています。
 さらに、提言のうち、その実現に向けて議論を深めることが必要なものについては、各圏域の医療連携推進会議など、それぞれのテーマにふさわしい協議会等の場で具体化に向けた検討を進めながら、地域が一丸となり、地域医療を支える取り組みを推進していきたいと考えております。
 次に、県と市町村との連携についてであります。
 地域医療に関する懇談会で取りまとめられた提言には地域医療を支えるための市町村の取り組みも数多く含まれておりまして、その主体的な対応が強く期待されていると認識しております。したがって、先月開催された県と市町村長との意見交換会においても、提言の具体化に向けた積極的な取り組みを要請したところであります。
 また、県と市町村との連携を推進するため、現在、各地域で連絡協議会を開催し、地域医療に関し意見交換を行うとともに、相互理解と情報共有を深めているところであります。
 このような中、例えば遠野市のように市民医療整備室を設けて県と連携した医師確保の取り組みを行うなどの先進的な事例も生じてきておりまして、大変心強く感じているところであります。
 県としては、こうした地域の実情に応じた市町村の取り組みの展開を図るため、市町村との連携を一層強化し、地域医療提供体制の確保に向けた取り組みを推進していくこととしております。
 次に、今後の企業誘致及びフォローアップについてであります。
 企業誘致に当たっては、これまでも私が率先して企業へのトップセールスを行ってきたところでありますが、今後も、岩手の人材の優秀さや活発な産学官連携、地元企業との取引支援の充実などを強くアピールしながら、引き続き誘致活動により一層力を入れてまいります。
 また、既立地企業へのフォローアップにつきましては、経済産業省の企業立地満足度調査によれば全国第2位の高い評価をいただいており、今後とも、私自身の訪問のほか、本庁と振興局や市町村とが一体となったきめ細かな訪問活動等により、企業のニーズや要望に速やかに対応してまいります。
 次に、農産物を活用した企業誘致についてであります。
 企業の進出に当たっては、補助や融資等の優遇制度もさることながら、用地やインフラ、県や市町村などのスピーディーな対応やワンストップサービスなど、総合的な観点から判断されているものと聞いております。
 御提案のありました米などの農産物につきましては、むしろ岩手に進出した後に企業から高い評価を得ることが多く、近年、首都圏や中京圏の本社等において販売会も開催されていますので、今後もこうした機会を積極的に設け、本県の農林水産物をアピールしてまいりたいと考えております。
 次に、県立療育センター機能の充実に向けた対応方針についてであります。
 いわて県民計画においては、子供から高齢者まで、また、病気や障がい等の有無にかかわらず、それぞれの力を生かし、ともに助け合いながら生き生きと暮らすことができる、共に生きるいわての実現を目指しているところであります。
 私は、病気や障がいと闘い、克服しようとしている子供たちのかけがえのない命を守っていくための拠点を整備することはそのための方策の一つであると考えております。このため、拠点となる療育センターの整備については、学識経験者や御家族の方々などの熱心な御議論をいただきながら、平成21年3月に岩手県立療育センター整備基本構想を策定し、施設整備の基本方向を取りまとめたところであります。
 同センターの改築整備に当たっては、多額の財政負担を伴うほか、医療スタッフの確保を初めさまざまな課題がありますことから、学識経験者や関係者からの御意見を伺いながら、今後は、障がい児療育の拠点にふさわしい機能の充実等に向け、検討を進めることとしております。
 次に、超重症児等への対応についてであります。
 超重症児等は濃密な医学的管理を必要としますことから、県内の療育関係者や御家族からの入院施設整備の要望も踏まえ、昨年、療育センターに対する利用ニーズを改めて調査したところであります。今後は、この調査結果をもとに、療育関係者や関係機関などから御意見を伺い、療育センターにおける超重症児等への対応について検討していきたいと考えております。
 また、在宅の超重症児等に対する訪問看護などの利用回数、時間帯については、関係法令により一定の制限がありますが、私もこれら超重症児等に対し、きめ細かな支援が行われることが重要であると認識しておりますので、今後、国に対し、制限緩和について必要な要望をしていきたいと考えております。
 次に、お互いに支え合う福祉立県の実現についてであります。
 先ほど御答弁申し上げましたとおり、いわて県民計画においては共に生きるいわての実現を目指しております。具体的には、福祉コミュニティの確立をその政策の一つに掲げ、地域における保健、医療、福祉等の切れ目のない包括的な地域ケア体制の整備や、できるだけ身近な地域で相談から支援まで完結できるサービス提供体制の構築等を通じ、障がい者や高齢者の方々が安心して暮らせる地域づくりを進めることとしております。これらの取り組みを進めることが議員御提唱の福祉立県の実現にも通じるものと理解しております。
 次に、労働市場の現状と対策についてであります。
 有効求人倍率が昨年2月から11カ月連続で0.3倍台で推移するとともに、新規高校卒業予定者の内定率も例年に比して低いなど、依然として厳しい雇用情勢が続いており、一方、求職者の方々からは生活費などの相談が多くなってきております。
 このため、就職未定の高卒者に対しては、ジョブカフェ等を活用して卒業後も継続して就職支援に取り組むほか、新卒者等を採用する事業主への奨励金制度を導入する市町村への補助を行うなど新卒者の雇用環境の改善に努めますとともに、求職者の方々の実情に応じて、きめ細かく生活相談や就労支援に取り組んでいくこととしております。
 次に、均等な職業訓練の場の提供についてであります。
 県内どの地域においても、すべての求職者及び在職者等が職業訓練を受けられるようにすることは極めて重要であり、県としては、関係機関と役割分担しながら適切な訓練体制を維持していくよう努めてまいります。
 また、今般の情報処理技能者養成施設等の廃止問題は独立行政法人改革の一環であると聞いておりますが、引き続き国などから情報収集を進め、関係自治体と十分意見交換をしながら適切に対応してまいりたいと考えております。
 次に、ワンストップサービスの充実についてであります。
 これまでもいわて地域共同就職支援センターやいわて求職者総合支援センターにおいて職業紹介と生活相談などをあわせて行っており、また、岩手労働局や福祉関係機関などと連携した生活、就労相談などにおいてもワンストップサービスの取り組みを進めてきたところであります。
 今後は、さらに地域ごとの協議会設置など、福祉分野と労働分野の窓口の連携を強化し、失業に伴い多くの悩みを抱える方々にきめ細かく対応できるよう、相談支援体制の整備を推進することとしております。
 次に、岩手競馬の存続、再生についてのお尋ねであります。
 まず、来年度の事業運営についてでありますが、4月開幕から好スタートを切ることができるよう、まずは3月下旬の特別競馬を来年度につなげる春競馬と位置づけ、積極的な広報宣伝により、多くの競馬ファンに来場いただけるよう取り組んでまいります。
 来年度は、何よりもまず売り上げの確保に全力を尽くしてまいりますが、今年度も首都圏等での積極的な情報発信や主催者間の連携、交流が売り上げに一定の成果を上げていますことから、来年度は、新たに全国交流競走のダービーグランプリの開催や、来年度から始まる牝馬重賞レースの全国シリーズへの参画など、全国的な広報を展開しながら魅力あるレースの提供に取り組むとともに、インターネットで全国のファンに新たな競馬の楽しみ方を提供する重賞式勝馬投票券の発売を開始しますほか、他の地方競馬主催者との連携強化により、発売先を広げていくことで売り上げの確保を図ってまいります。
 また、競馬組合を初め、構成団体や競馬関係者、さまざまなサポートをいただいている方々が一致協力し、そのつながりを県内外の企業や団体、個人に広げながら岩手競馬の魅力をPRし、積極的に営業活動を展開してまいります。
 こうした取り組みを通じ、発売計画を確実に達成していく一方、厳しい経営環境について競馬関係者が認識を共有し、仮に発売額が計画どおりにならない場合にあっても、できるだけ早い段階で収支不足を解消させ、余裕を持って年度後半に入ることができるよう、必要な調整を行いながら事業運営の安定化に取り組んでまいります。
 岩手競馬は、非常に厳しい経営環境の中にあって、競馬関係者が一丸となった努力が実を結び、新計画のもとで3年連続の黒字を達成する見込みであり、さらにその道筋が確かなものとなるよう、来年度も岩手競馬に携わる方々と力を合わせ、収支均衡の達成に向けて全力で取り組んでまいります。
 次に、運営形態の抜本的な見直しについてであります。
 岩手競馬は、現実的な売り上げ見通しに対応したコスト管理を徹底し、毎年度、着実な収支均衡を積み重ねていくことが基本であり、来年度も堅実な改革、改善を進めてまいりますが、こうした取り組みと並行して、岩手競馬を将来にわたって継続、発展させていくための方策について、今後さらに検討を進めていくことが必要と考えております。
 このため、これまで検討した民間委託拡大や1場体制への移行という抜本的な改革の手法など、この3年間の改革、改善に向けたさまざまな取り組みを踏まえつつ、各主催者間の連携強化の取り組みも含め、岩手競馬の事業運営のあり方全般について検討を深めてまいります。
 また、岩手競馬の継続をより確かなものにしていくためには、現在の施設設備の更新や経営改善のための設備投資など、将来につながる新たな投資が必要と考えられ、県議会の御意見なども伺いながら、岩手競馬にとって効果的な投資のあり方と、そのための財源確保の方策についても幅広く検討してまいります。
 次に、地熱発電の過去10年の検証と今後の施策の展開についてであります。
 地熱エネルギーは二酸化炭素をほとんど排出せずに安定した電力を供給できる資源であり、平成10年に策定した新エネルギービジョンにおいて積極的な導入を促進する新エネルギーの一つとして位置づけ、平成22年度末の導入目標を12万キロワットとして開発調査への協力などの取り組みを行ってきました。しかしながら、投資環境の変化等から、平成8年の葛根田地熱発電所の2号機の運転以来、新規立地はない状況です。
 世界地熱会議が本県で開催された平成12年以降においては、八幡平市の2カ所で新エネルギー・産業技術総合開発機構─NEDOによる開発促進調査が実施され、現在も民間事業者による事業化のための調査が続けられていますが、計画どおりの蒸気量が確保できないことや建設等に多額の費用を要するなどの課題があり、新たな開発に至っていません。
 現在、国においては、地熱発電に関する研究会を設置し、投資環境の整備や開発コストの低減のための方策など、地熱発電の事業性を向上させるための環境整備について検討を進めていると聞いています。県では、こうした国の動向や世界地熱会議の状況を注視するとともに、全国知事会の場などを通じ、国に対して地熱開発の促進が図られるよう働きかけていきたいと考えております。
 議員御指摘のとおり、地熱発電の出力量は大分県に次いで本県は全国2位ですが、本県には我が国初の松川地熱発電所がありますことから、地熱開発の促進を図る一方で、地熱開発の先進県であることを積極的に発信し、本県のイメージアップや観光振興に役立ててまいります。
 次に、地熱調査の要望についてであります。
 NEDOによる地熱調査は、これまで昭和55年の八幡平市東部地域における広域的調査を初めとして、湯田地域や岩手山西部地域などで地熱発電にかかわる調査検討が行われてきたところです。今年度、NEDOで過去の調査の結果、地熱資源として有望と考えられる全国24地点について立地環境評価や地熱資源評価に関する現況調査を実施しています。調査箇所には本県の松川東部地区と葛根田東部地区が含まれておりまして、これらの中から事業化の可能性の高い箇所については、来年度以降、事業化に結びつける戦略的調査を実施する予定と聞いています。
 県としては、NEDOの現況調査結果を注視し、必要な協力を行うとともに、地熱開発の適地にかかわる情報収集に努め、有望箇所についてはNEDOに対し調査の実施を働きかけてまいります。
 次に、再生可能エネルギーの導入についてであります。
 本県には、地熱や太陽光、風力、木質バイオマスなどの再生可能エネルギー資源が豊富に存在しており、これらを発電や熱エネルギーとして利用していくことは地域経済の活性化を図るとともに低炭素社会への転換を進めるものであり、環境と共生する持続可能な地域社会を形成していく上で重要な課題と考えています。
 こうしたことから、新年度において、公共施設や民間施設への新エネルギーの導入促進を図る地球温暖化対策等推進事業や排出量取引の普及等により木質バイオマスの活用を促進する緑のクレジット創出促進事業、洋上風力や波力などの海洋再生可能エネルギーの利用可能性に関する調査研究を行う海洋研究拠点形成促進事業等を実施することとしています。
 こうした取り組みにより積極的に再生可能エネルギーの利用を促進し、環境産業の育成や林業振興、観光資源としての活用など、地域経済の活性化に結びつけてまいります。
〇議長(佐々木一榮君) 以上をもって本日の日程は全部終了いたしました。
 本日はこれをもって散会いたします。
   午後4時22分 散 会

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