平成22年2月定例会 第15回岩手県議会定例会 会議録

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〇27番(大宮惇幸君) 民主党の大宮惇幸でございます。会派を代表し、達増知事の所信表明と新年度の岩手県政のあり方に対し質問をいたします。
 質問に入る前に、現地時間の先月12日、ハイチ共和国において発生した地震により、20万人を超える人々が犠牲になったのを初め、甚大な被害が発生したことに対し、心からのお悔やみとお見舞いを申し上げます。
 政府においては、人道的かつ国際協力の見地から、他国との協調のもと、我が国ができる最大限の援助と支援を行い、現地の生活再建と復旧、復興に貢献されますよう心から期待することを、ここに県議会民主党を代表して表明するものであります。
 さて、岩手県の平成22年度の一般会計当初予算案は、政権交代後初めてとなる予算編成となります。達増知事は所信表明の中で、将来に対する不安がこの国の大きな変化を求め、国民みずからが新しい政治を切り開いていこうという大きなうねりとなって本格的な政権交代という歴史的変革が起きましたと、政権交代をとらえています。その上で、真の地域主権のもとで、私たち地方政府は、次代を担う人材の育成や地域に根差した産業政策などの主役となり、住民に身近な公共サービスを提供するとともに、中央政府は、年金等の社会保障給付などの分野で地方政府をしっかりと支えるという行政システムの変革が必要と、これからの国と地方とのあるべき役割分担や仕組みについて言及されています。
 民主党は、国民の生活が第一を基本に置き、それを具現化させるための政権公約─マニフェストにおいて地域主権を掲げ、その第一歩として、地方自主財源の充実を行うことを国民とお約束してまいりました。
 鳩山内閣において編成した平成22年度の国の一般会計予算案においても、この中央から地方へという方向性を踏まえ、地方交付税の予算額は前年度比で1兆1、000億円の大幅増となり、およそ16兆9、000億円となりました。これに臨時財政対策債を加えた実質的な地方交付税総額は、過去最高となる24兆6、000億円に達しましたが、国は厳しい地方税収の減少に的確に対応するとともに、三位一体改革による地方交付税の削減や地域経済の低迷などで疲弊してきた地方財政に配慮し、地方交付税の復元、増額を求める地方の声にこたえたものです。本来、地方固有の税財源であり、財政調整機能と財源保障機能を果たすことで、我が国の地方行政を担保してきた地方交付税が、三位一体改革という名ばかりの地方分権改革と、小泉、竹中路線で進められてきた弱肉強食、切り捨ての政治手法と相まって、言われなき削減を強いられてきたことは、地方に住む私たちの暮らしを危機にさらすことと同じ意味を持っていたと言わざるを得ません。
 そうした経緯を踏まえ、また、厳しい財政事情の中でも、今回、地方交付税等の予算額が復元されてきたことについては、真の地方主権への第一歩と受けとめていますが、達増知事は、今回の地方交付税の増額など、国の予算における地方重視の姿勢をどのように受けとめられ、どのように県の予算編成に生かされたのか、お伺いします。
 また、あわせて、この地方財源の強化は今後の地域主権に欠かせないものであり、地方交付税の今後の見通しや、今後、制度化が見込まれるひもつき補助金を廃止して一括交付金化するなどの地方財政制度改革への所感と、岩手県としての取り組みをお示しください。
 次に、岩手県の財政についてお伺いいたします。
 岩手県の新年度一般会計予算案は総額で6、987億円余、伸び率にして前年度比6.1%増の積極型となっています。知事の言葉を借りれば、希望維新、希望郷いわて元年予算ということでありますが、これは、平成22年度に具体的に取り組む雇用環境、県民所得、地域医療、人口転出の四つの喫緊の課題解決と、岩手の未来を開く、ゆたかさ、つながり、ひとの基盤形成に向けた取り組みを進めるもので、現在の経済環境を考えれば、雇用確保や経済対策を中心に据えて、県民の暮らしや仕事の現場を少しでもよくしたいという意欲のあらわれと受けとめます。
 一方で、長期的視点に立てば、県債残高は過去最大の1兆4、700億円に膨らんでいます。これは、前知事時代に国の大型景気対策に呼応して行われた公共事業などへの投資によって増大したという要因が大きくなっていますが、前知事時代の財政運営のツケは、今後、多額の県債償還という形で財政の硬直化をもたらすこととなります。平成27年度には1、400億円程度にまで膨らむ見込みであり、中長期的な対策も必要となっています。財政出動をして経済雇用対策を行う一方で、財政再建に向けた布石を打たなくてはいけないという難しいかじ取りを迫られることになりますが、県としては、今後の財政見通しと財政健全化に向けた取り組みをどう行っていくつもりなのか、お示しください。
 鳩山内閣では、行財政の効率化に向けて事業仕分けの手法を運用しております。事業評価や政策評価などの手法を既に岩手県では導入しており、いわば仕分けについては先進的な取り組みも行っているわけでありますが、より効率化や健全化、そして県民目線での予算執行という観点から今後さらに公開度を高め、今後、県民視点を反映させるため、外部人材を積極的に登用した事業仕分け的作業を実施するお考えはないでしょうか、知事の御所見をお示しください。
 次に、4広域振興局体制への移行について伺います。
 知事は、さきの所信表明演述において、活力に満ちた地域社会を構築し、希望郷いわてを実現していくためには、オール岩手の力を結集した取り組みはもとより、地域の特性を最大限に発揮できる枠組みとしての4広域振興圏が明確な顔を持った圏域として確立され、地域の方々が安心して暮らせる確かな地域経済基盤を築いていかなければならないとして、その実現のための行政体制として、1広域振興圏1広域振興局体制をスタートさせるとしています。
 全国第2位の面積を誇り、それぞれの地域にそれぞれの誇るべき財産が数多く存在する我が県にとって、岩手という共通するアイデンティティーを共有しながら、それぞれの地域特性に合わせた発展の種を見出し、それを育てていくことが肝要であります。そのために、各圏域においては、広域振興局と市町村が自分たちの地域ビジョンを策定し、戦略を共有していく地域経営が求められるのであります。その上で、各地域がそれぞれ切磋琢磨することにより、必ずや地域の活性化と岩手の発展があるものと考えますが、新年度からスタートする4広域振興局体制について、市町村や地域住民との協働をどう進めていくつもりなのか、先行した県南広域振興局での状況を踏まえ、お示しください。
 一方で、この広域振興圏をめぐっては、現状においてもさまざまな分野で格差が生じていることは事実であります。特にも、県北・沿岸圏域においては、雇用環境や県民所得、地域医療、人口減少などで厳しい環境下に置かれています。県土の均衡ある発展は、岩手県政にとって長年の課題であり、また、いまだ解決に至らない懸案事項であります。県北・沿岸振興本部の設置などで、より重点化が進んでいることは評価をいたしますが、今後、広域振興局体制の中で、県北・沿岸地域の格差解消対策をどう進めるつもりなのか、御所見をお示しください。
 さて、新年度である平成22年度は、達増知事の任期の最終年度となります。達増知事の1期目は、地域医療の崩壊の危機や競馬組合の再建などを初め、前知事時代に問題解決を先送りしてきた重要案件に対し、逃げることなく正面からぶつかってきたものと感じております。確かに、県民世論を二分するようなものもありましたが、将来に対して責任を持つためには、批判を恐れず、果敢にその信じる道をみずから明らかにし、実行に移してきたことで、課題解決に向けた新しい岩手の希望が見えてきたものもあると感じています。そうした中で迎える達増知事の任期最終年は、県民の幅広い参画と英知を結集したいわて県民計画の本格的なスタートの年とも言えます。
 岩手の大地に新しい希望の種をまき、芽を出してきたものは大切に育てるという年となるためにも、知事みずから羅針盤と位置づけた、いわて県民計画の着実な実行が求められてくるのは言うまでもありません。
 そこで、ここからは、いわて県民計画を踏まえて、平成22年度の各種施策についてお尋ねしてまいります。
 まず、最初に、いわて県民計画に示された岩手の未来をつくる七つの政策のうち、最初に掲げられた産業創造県いわての実現についてお伺いいたします。
 新年度予算案を見れば、この分野では、国際競争力の高いものづくり産業の創造に向けて、技術者養成や開発力強化などで新規事業が見受けられるほか、次代につながる新産業の創出として、医療機器や海洋資源に着目した産業育成や、伝統産業の振興策として浄法寺漆を活用した企画開発支援に乗り出すなど、積極的な姿勢が見られます。さらに、これまで行ってきた自動車、半導体関連産業の集積促進や、食産業や観光産業の取引拡大に向けた予算が重点的に配分されているなど、岩手ならではの素材を生かして、さらに足腰の強い地域産業基盤を構築したいとの姿勢がかいま見られます。こうした投資の効果が、一刻も早く発現することに一層の努力を求めるものですが、今後の岩手における産業の目指す姿と、行政として果たすべき役割をお示しください。
 また、こうした産業基盤の確立は、雇用に大きく関係するのは言うまでもありません。アメリカのリーマン・ブラザーズの破綻に端を発した経済危機は、いまだもって回復には至らず、特にも、そのしわ寄せは地方の雇用環境を直撃したままです。岩手に生まれ岩手で育った若者たちが、今、ふるさとで暮らし続けたいと願っても、その希望はかなえられない状況があります。今、この瞬間も、新規学卒者を初め、不安な気持ちを隠しながら懸命に就職活動を行っている多くの人たちに、行政として、どう雇用、労働環境の改善に取り組んでいくつもりなのか、具体策をお示しください。
 次に、岩手の基幹産業の農林水産業の振興についてお尋ねします。
 いわて県民計画では、食と緑の創造県いわてを政策目標として掲げており、達増知事も、農林水産業はすそ野の広い成長産業であると、これまで議会審議の中で答弁しております。これは、第1次産業に従事する者にとって大きな励みとなる発言であり、その実現に向けて大きな期待を抱かせるものであります。成長産業とすべく、県でも、岩手の高品質で安心・安全な農林水産品を前面に出したプレミアム戦略と、新鮮でおいしい素材を生かしてさらに高付加価値を生み出すための6次産業化の二つの基本的な方向性を打ち出しています。この方向性は正しいものと評価いたしますが、最終的に成長産業として足り得るかどうか、成功のかぎは販売戦略にもあることは言うまでもありません。
 そこでお尋ねいたしますが、全国に誇れる岩手のブランドづくりに向けて、川上から川下までどのような一体的な取り組みを行っていくつもりか、お示しください。
 次に、共に生きるいわての実現について、地域医療の問題に絞ってお尋ねします。
 知事は、県民一人一人が、将来に向かって安心して暮らしていくためには、地域医療の確保が経済雇用対策と並ぶ最重要課題の一つでありますと、所信表明でその認識を明らかにしています。地域医療をめぐっては、昨年度以来、県立医療機関の無床化を発端として、過酷な勤務を余儀なくされている県立病院の勤務医などの実態や医師不足の現実が広く県民の知るところとなり、多くの議論がわき起こりました。
 私は、この厳しい地域医療をもたらした第一の原因は、政府が地方や現場の声を無視し、長年にわたって、医師養成と医療費の双方について抑制策をとってきたためであり、政府の責任は重大で、いわば人災とも言えるものだと認識しております。そして、ドミノ倒しのように、岩手のような地方の医療現場の弱いところにしわ寄せとなってきたというのが実態ではないでしょうか。もちろん、これまで、病院から診療所化になるなどした県立病院改革の際には、現在へと至る諸課題の萌芽が見られたものの、県立医療機関やそこで懸命に働く勤務医の実態については、行政も県民も相互理解に至ることなく、その本質の問題を避けてきてしまったということも、我々岩手全体で反省すべきことだと認識をしなければならないと思っています。
 ただ、今なすべきことは、過去における責任を追及することよりも、これから限られた医療資源を生かしながら、県民の命を守るために何をするべきか、県と市町村、医療関係者とすべての県民の英知を結集することでしかないのであります。言いかえれば、現実をしっかり受けとめた上で、将来に責任を持って、今、私たちが何をなすべきかを考えていくことが必要ではないでしょうか。その点で見ると、この1年で、県民が今置かれた地域医療の現状を理解し、住民みずからが何をすべきかを形にしたサポーターの会などが千厩などで誕生しています。こうした取り組みを広げていくことが、県民総参加で医療体制づくりを進める第一歩となると考えますが、新年度はどう取り組んでいくおつもりでしょうか。
 私は、依然として、医療を取り巻く環境への理解の促進と、自発的かつ建設的活動を県と県民が一緒に行っていくためには、現場の医療関係者からの発信も含めた相互理解の機会を重ねることが必要と思っていますが、この点でも所感がありましたならお示しください。
 一方で、医師不足は容易に好転する状況ではなく、一部で休診に追い込まれる診療科もある見通しとなっています。住民との対話や理解を求める一方で、やはり医師不足に対しての具体的な取り組みが必要であり、この点においても、医師の招聘活動や赴任した医師への地元の受け入れ態勢の構築などでの住民参加が必要であります。
 地域医療の崩壊したケースでは、医療機関と行政、そして住民がそれぞれの相互理解が進まず、医師への負担が増加し、ついには地域から医師がいなくなるというのが医療崩壊へとつながるパターンとなっている一方、地域医療や医師招聘に成功している藤沢町や遠野市などのケースでは、相互理解のもと、コンビニ受診の抑制や地域を挙げた医師への協力体制が構築されているなど、まさに住民の思い次第で地域の医療体制の成否が決まっているケースも少なくありません。医師招聘における住民参加のあり方についてどう取り組んでいくおつもりなのか、御所見をお伺いします。
 また、あわせて、地元出身の医師育成のための支援策について、学力向上対策など教育サイドからの観点も含め、お示しください。
 さらに、この地域医療の問題では、ドクターへリの導入に向けて、いよいよ本格的に動き出すこととなりました。このほか、厳しい財源の中で、医療機関への救急搬送に備えた道路整備という視点から予算配分を行うなど、ハード面からも県民の医療、とりわけ救急医療を支える姿勢を示していますが、新年度での整備見込みと今後の見通しをお示しください。
 次に、いわて県民計画で掲げた人材、文化芸術の宝庫いわての実現のうち、平泉の世界遺産登録関連についてお尋ねします。
 平泉の文化遺産は、登録延期という試練を乗り越え、来年の世界文化遺産登録を目指し、いよいよ詰めの段階を迎えています。中尊寺供養願文に記されたように、敵味方の区別はおろか、人と動物、植物など、すべての生きとし生けるものを差別なく弔い、浄土へと導きたいという奥州藤原氏初代清衡の願いは、現代にこそ必要な平等で平和な思想であり、それこそが平泉が受け継いできた歴史そのものであると思います。この思想的にすぐれた平泉の文化を世界に広く伝え後世に残していくことは、岩手に住む我々の世界に対する責務とすらも感じるところでありますが、世界遺産登録ということになりますと、再挑戦を余儀なくされているのが現実であります。しかし、これは否定的に考えるべきものではなく、より広く、わかりやすく世界に伝えるための準備期間を用意してもらったと考えるべきではないでしょうか。それだけ、大変すぐれた思想文化であり遺産であると思うのであります。ただ、やはり来年に向けて世界遺産登録になり得るかどうかは、学術的な見地からの判断でもあり、それに対応した万全の備えをする必要があるのも事実であります。夏には、イコモスの現地調査も見込まれていますが、県として、世界遺産登録に向けてどう取り組んでいくおつもりなのか、また、その見通しはどうなのか、前回の登録延期の反省と県民機運の醸成の観点も含めてお示しください。
 今回の予算案では、この平泉の世界遺産登録へのハード面での対応として、花巻空港整備も打ち出されています。世界遺産登録後を見据えたものであり、また、岩手全体の観光振興やビジネス面への影響も考慮した上での整備であるとは思いますが、改めて、その整備に至った背景と今後の効果についてお示しください。
 また、あわせて、休止が決まった名古屋便について、今後の復活の見通しをお示しください。
 最後に、任期最終年度に当たる新年度を迎えるに当たって、知事の決意をお聞きいたします。
 就任以来、知事は、岩手を襲ったさまざまな危機に対し、逃げずにそして恐れずに、正面から課題に接してきたものと思っております。そして、危機を希望に変えるため、岩手のさまざまな現場に飛び込んで地域の声を拾ってきたと思います。その姿勢は、安易にコンサルタントや大学教授などに頼ることなく、まさに解決策は現場にあり、そこで実際に悩み苦しんでいる人たちの中にこそ、解決する知恵とヒントを持っているということを示していると思います。
 南アフリカの元大統領で、ノーベル平和賞受賞者のネルソンマンデラは、27年に及ぶ獄中生活にも屈せず信念に生き、ついては、黒人差別がはびこる根源となったアパルトヘイトを廃止へと導く原動力となり、民族の和解と協調をなし遂げた偉大な政治家として知られています。
 マンデラには、獄中生活を支えた詩がありました。イギリスの詩人、ウイリアム・アーネスト・ヘンリーの詩、インビクタス─不屈であります。数々の困難に耐える姿を淡々とつづったその詩は、こう締めくくられます。
 我が運命を決めるものは我なり、我が魂を征するのは我なり。
 どんなに困難なことがあっても、どんなに過去のツケが現代に降りかかっているとしても、まさに岩手の運命を決めるのは私たち岩手の人たちであるということを、マンデラの生きざまとともに、この詩は私たちに教えてくれています。
 達増知事、任期最終年度を迎えるに当たって、知事は、岩手に降りかかるさまざまな困難に対して、どう挑んでいくおつもりでしょうか。その基本姿勢とともに、将来にわたる課題が多い中、どのように県政に携わるおつもりなのか、ここにお示しください。
 質問を終えるに当たって一言申し上げます。
 私ども民主党は、国の政権交代によって、今まで以上に責任ある立場として政治を進めていく覚悟であり、県当局に対しても、県民の生活が第一を基本に、県勢発展に向けてチェック機能を発揮させながら、県民の声を踏まえて、建設的で未来志向の議論、提言を行っていく所存であります。また、国政で野党となった自民党を初め、他会派、各政党とも、政策とその実現のための行動で切磋琢磨、よりよい競争をしながら、県民の暮らしの向上と未来に対する責任をしっかりと自覚し、活発な議会活動、政治活動を行っていくことを県民の皆様にお誓いして、会派を代表しての質問を終わります。
 御清聴ありがとうございました。(拍手)
   〔知事達増拓也君登壇〕
〇知事(達増拓也君) 大宮惇幸議員の御質問にお答え申し上げます。
 まず、国の予算における地方重視の姿勢の評価及び本県予算への反映についてでありますが、平成22年度の地方財政対策は、地方税収の減少に的確に対応するとともに、三位一体改革による地方交付税の削減や地域経済の低迷の結果、疲弊してきた地方財政に配慮し、かねてより強く訴えてきた地方交付税の復元、増額の要請にもこたえたものとして高く評価しております。
 本県の平成22年度当初予算編成におきましては、国の地方財政対策において、地方が自由に使える財源の大幅な充実が図られましたことに加え、国の交付金により造成した各種基金を活用するなど、厳しい経済、雇用情勢の中でも、地域経済、雇用や県民の生活を守るため、将来負担にも十分配慮しながら、必要な事業を積極的に措置することができたと考えております。
 次に、地方財政制度改革への所感と岩手県としての取り組みについてでありますが、平成22年度におきましては、地方交付税の大幅な増額が図られましたが、今回の地方財政対策による措置が単年度限りのものとされていますほか、三位一体改革によって失われた地方交付税の完全な復元までには至っていない状況にあり、恒久的かつ安定的な地方の財源の確保が急務であると考えています。
 真の地域主権の確立のためには、地方がみずから創意、工夫によって、それぞれの実情に合った住民本意の施策を十分に展開できるだけの財源の充実が何よりも肝要であり、今後、議論がなされる地方財政制度改革に対し、こうした地方の考え方が反映されるよう、全国知事会等とも連携しながら、あらゆる機会を通じて国に対して強く要請してまいります。
 次に、今後の財政見通しと財政健全化に向けた取り組みについてでありますが、平成22年度当初予算においては、厳しい経済、雇用情勢、深刻さを増す地域医療などの諸課題への対応や、希望郷いわての実現に向けて必要となる歳出予算を確保する一方で、将来の負担を過度に増加させないよう、臨時財政対策債を除いた県債発行額については縮減を行うとともに、財源対策的な基金の取り崩しを行わないこととするなど、財政の健全化に向けた道筋にも配慮しつつ編成したところであります。
 一方、地方交付税の大幅増などの今回の地方財政対策における措置が平成22年度限りのものであることを踏まえますと、平成23年度以降の収支見込みは、平成21年9月に策定した収支見込みと大幅な異同はないものと見込まれます。
 したがいまして、地方の財源を十分に確保できるような税財政制度改革を国に強く求めていくとともに、県債残高の規模を中長期的に抑制していくことを目指して、県として主体的に管理可能な地方債については、引き続きその発行規模を適切に管理していく考えであります。
 同時に、今後しばらく県債償還の増加が見込まれる中で、財政運営に支障が生じることのないよう、事務事業の見直しなど、より一層の行財政改革を推進し、持続可能な財政構造を構築していきたいと考えております。
 次に、事業仕分けについてであります。
 行政刷新会議による事業仕分けは、国の予算編成に当たって、政府が従来の枠組みにとらわれずに行財政資源を最適に配分していくための検討手法の一環として行われたものと承知しております。
 この事業仕分けには、議論が一面的、性急との指摘が一部にありましたが、総体的には、多くの国民の前で開かれた議論がなされ、国民の参加意識の醸成や、メディア等を通じて国の事業の積極的な情報提供がなされるなど、行政の透明性が向上したものと認識しております。
 本県ではこれまで、政策評価の実施に当たり、民間有識者から成る政策評価委員会からの御意見等を踏まえ、評価手法の改善に取り組んできていることに加えまして、県民協働型評価を導入するなど、県民参画を積極的に進めてきているところでありますが、今後、限られた行財政資源の中で、県民満足度を高める行政サービスを持続的に提供していくために、今後の国における取り組みなどをも参考にしながら、予算編成の手法や政策評価とのかかわり等を含め、県民目線での政策形成を行う取り組みを研究してみたいと考えております。
 次に、4広域振興局体制への移行に伴う市町村や地域住民との協働についてでありますが、地域の個性や特色を生かし、地域の価値を高める取り組みは一層強化していく必要があります。それぞれの振興局において、有識者や地域の方々で構成する懇談会や市町村との意見交換等を行いながら、ともに地域の目指す将来像を描き、そして、その実現に向けて取り組んでいるところであります。
 また、県南広域振興局では、北上川流域ものづくりネットワークなど広域的な産学官の連携により企業の人材育成や技術力強化を図っており、4広域振興局体制においても、引き続き県民や市町村の皆さんと地域のビジョンを共有しつつ、地域ニーズに応じた広域的な連携の成果を他の圏域にも波及させながら、さまざまな主体との協働による地域経営にしっかりと取り組んでまいります。
 次に、県北・沿岸地域の格差解消対策についてであります。
 今般の広域振興局体制の移行に当たりましては、限られた職員体制の中においても、県北、沿岸の両広域振興局に重点的に職員を配置するところです。広域的な産業振興を担う本局に加えて、きめ細かな産業振興を担う地域振興センターを設置し、両者が緊密な連携のもとに、広域振興局全体として実効ある産業振興に取り組んでいくこととしております。
 また、予算面においても、産業振興など地域の課題解決に柔軟かつ機動的に取り組めるよう、広域振興局の裁量で執行できる予算を大幅に増額したところであります。
 圏域振興の基本方向としては、沿岸圏域にあっては三陸沿岸のすぐれた海の資源や研究機関等の集積を生かした海洋産業の振興を、県北圏域にあっては食、温泉、いやしなどの特色ある地域資源を生かした食産業の振興、体験型の観光振興による交流人口の拡大や青森県南との交流、連携をより一層促進してまいります。
 今後とも、移動県庁を初めとして、私もできる限り現地に出向き、地域の方々や産業関係団体、市町村との対話を重ねながら、産業振興による所得の向上や雇用の創出、地域医療の確保などに努め、いわて県民計画に掲げた目標の達成に向け、全力で取り組んでまいります。
 次に、本県産業の目指す姿と行政の役割についてであります。
 今後の本県産業については、自動車や半導体関連産業などが柱となって、国際競争力の高いものづくり産業の集積が進んで県内経済の牽引役となっているとともに、本県の豊かな自然や県産食材を生かした食産業、観光産業などの地域資源型産業、次代を担う新産業など、地域の多様な資源と知恵を生かした産業がさらに活発に展開され、県内経済が力強く循環している社会を考えております。
 そのためには、中長期的な視点に立って、これら主要な産業分野における目指すべき方向性や戦略を明確に示すとともに、将来の本県産業を支える人材の育成、さらには、新たな産業や事業を展開していく基盤となる技術開発への支援を行うことが県の役割と考えております。
 こうした考えのもと、平成22年度は、三次元設計技術者などの高度技術、研究開発人材のほか、観光を担う人材の育成、今後、成長が見込まれる医療機器関連産業における製品開発支援や低炭素社会を見据えた次世代型デバイスの開発推進、食産業振興のためのロードマップの策定などに取り組むこととしております。
 次に、雇用、労働環境の改善に向けた取り組みについてでありますが、まず緊急の取り組みとして、長期失業者に対して、労働分野と福祉分野が緊密に連携し、相談体制の充実を図りながら生活、就労支援にきめ細かく取り組むほか、平成22年度においては、就職未定の高卒者に対して、ジョブカフェ等を活用し就職相談や就業体験などの支援を行うとともに、新卒者の雇用を促進するため、事業主への奨励金制度を設ける市町村に補助を行うなど、就職支援に取り組んでまいります。
 さらには、雇用対策基金等を活用して、県と市町村が一体となって新たな雇用の場の創出に努めていくほか、就業の支援についても、職業訓練コースの充実や介護雇用プログラムによる介護分野への就業の促進などを強力に進めてまいります。こうした取り組みに加えまして、中長期的な視点に立った産業振興を進め、地域経済の活性化を図りながら安定的な雇用の創出にも努めてまいります。
 次に、岩手の農林水産物のブランドづくりについてであります。
 いわて県民計画に掲げます食と緑の創造県いわての実現のためには、全国トップレベルの安全・安心産地を確立し、品質の高い農林水産物を安定的に供給するとともに、6次産業化、農商工連携やプレミアム商品の開発等により、農林水産物の高付加価値化、ブランド化を図ることが重要であります。
 そのため、これまで市場ニーズを踏まえ、生産者団体や民間企業とタイアップした短角牛、ヤマブドウ、雑穀、イサダなどの商品開発、高付加価値化の推進を初め、民間アドバイザーのノウハウを活用した首都圏量販店や外食等への販路拡大、さらには、昨年展開したMOW MOWプロジェクトなど、積極的な情報発信にも取り組んできたところであります。
 今後におきましても、生産性、市場性の高い産地形成を戦略的に進めるとともに、安全・安心やおいしさに徹底的にこだわったいわてプレミアムブランド米などプレミアム商品の開発、さらには、地域資源を活用した新商品開発、高付加価値化を促進してまいります。
 また、食産業や観光産業と連携し、こだわりの食材の情報発信を進めるとともに、生産者や関係団体、民間企業等の販路拡大の取り組みを積極的に支援するなど、川上から川下まで一体となり、本県農林水産物を全国に誇れるブランドとして確立してまいります。
 次に、県民総参加の医療体制づくりについてであります。
 住民本位の地域医療体制は、医療の現状に関する住民の関心が医療を支える行動につながり、医療機関や行政の取り組みと一体となることによって実現するものと考えられます。
 このため、一昨年11月に関係団体とともに県民みんなで支える岩手の地域医療推進会議を設立し、県民に対しさまざまな形で意識啓発を行ってきたところであり、また、本年度は各保健医療圏単位に地域医療に関する懇談会を設置し、この開催を通じて、地域住民、医療などの関係団体、行政の3者が医療の現状等について認識を深めながら、それぞれがなすべき行動や取り組み等について意見交換が行われ、提言として取りまとめられたところであります。
 このような中で、一関市千厩地域の住民による自主的な活動組織なども結成されてきましたことは、これまでの取り組みの成果の一つと考えており、地域医療を支える取り組みが県内に着実に広がっていることを強く感じております。
 このような地域住民の自主的な活動については、地域医療に関する懇談会からの提言にも多く盛り込まれていますので、新年度は、こうした活動を広く普及させるため、市町村を初め推進会議の構成団体と一体となり、各地域単位での取り組みを一層展開するとともに、広域振興局において具体的な支援を行っていきたいと考えております。
 また、こうした取り組みを進めるに当たっては、議員御指摘のとおり、医師を初めとする医療関係者が地域医療の実情等について地域住民に向けて繰り返し発信することがその理解を深める上で有効でありますので、医療関係者の参画と協力を得て実施していきたいと考えております。
 次に、医師の招聘における住民参加のあり方についてであります。
 ただいま申し上げましたとおり、地域の住民、医療機関、行政の3者が一体となった地域医療体制づくりには、それぞれの相互理解が極めて重要であると認識しております。現在、各地域の病院の医師と地域住民との対話による相互理解と信頼関係の構築、赴任医師の生活環境整備の支援など、住民参加の取り組みが市町村の支援のもとで広がりを見せつつあると考えております。
 医療を支える住民の熱意と活動は、病院勤務医の離職防止や新たな医師の招聘など、医師の定着や確保にも最終的につながるものと考えておりまして、県としても、県内市町村におけるさまざまな取り組みについて、相乗的な効果が期待できる連携や支援の方策を模索し、積極的に対応していきたいと考えております。
 次に、地元出身の医師育成のための支援策についてであります。
 県においては、これまで、本県出身の医学生が利用できる医師養成、修学支援制度として、岩手医科大学医学部の地域特別枠推薦入学者を対象とした医師修学資金貸付事業、岩手県国民健康保険団体連合会と共同実施している市町村医師養成事業、医療局が行います医師奨学資金貸付事業の3事業によって奨学金の直接貸し付けや事業に対する支援を行ってきているところであります。
 また、医学部進学志望者の増加を図るために、高校生を対象として医師の業務内容や県の医師奨学金制度等を紹介する医学部進学セミナーの開催等を行い、学力向上対策として、いわて進学支援ネットワーク事業の中で、高校間の垣根を越えた医学部志望者のための合同講座を開催して進路希望の実現に向けた支援を行っています。
 なお、地域医療に関する懇談会においても、医師の県内養成、定着に向け、中学生等を対象に、本県医療の実情、医師の職務、奨学金制度等についての周知を図り、医師を志す動機づけをより早期から行うことが必要との御提言もいただいておりまして、今後、こうした周知活動の実施や、さらには中学生、高校生の学力向上にもつながるような取り組みの強化についてもあわせて検討していきたいと考えております。
 次に、医療機関への救急搬送に備えた道路整備についてであります。
 昨年2月、救急車による搬送時の走行支障箇所について消防機関にアンケート調査を実施し、患者への負担が大きい急カーブや段差がある箇所などを把握したところであります。これらのうち、県管理道路の維持修繕系の支障箇所については、来年度末までにはすべて改善する予定です。また、局部的な急カーブや見通しが悪い箇所についても早期の改良に努めていくとともに、この他の抜本的な改良を要する支障箇所については、県内の道路整備状況も踏まえながら検討してまいります。
 県管理道路以外の国道、市町村道の支障箇所については、それぞれの道路管理者に情報提供するとともに、県と消防機関との連絡会議を3月までに設置して、継続して支障箇所等の把握に努めていくこととしています。
 今後とも、こうした取り組みを通じて道路の改善に努め、積極的に地域医療を支えてまいります。
 次に、平泉の文化遺産の世界遺産登録についてであります。
 平泉の文化遺産は世界的にもすぐれた価値を持っており、特に平和を願う理念は岩手の心に通ずるものがあり、人類共通の宝として、将来にわたってしっかりと守り伝えていかなければなりません。
 前回は登録延期となりましたが、すぐに再推薦に向けての活動を開始し、地域の皆様の御協力や苦渋の選択をいただきながら推薦書の改定を進めてきたところであります。
 前回の推薦書に対しては、世界遺産委員会やイコモスから、顕著な普遍的価値の証明が不十分であること、中国、韓国の事例を含め、特に庭園のさらなる比較研究を提示すること、文化的景観の主題設定は難しいことなどが指摘されていました。そのような指摘を踏まえ、今回の推薦書の改定に当たっては、8回にわたる有識者による推薦書作成委員会の開催に加え、国内外の専門家による現地調査や意見聴取などを行い、主題及び顕著な普遍的価値の再検討、構成資産の絞り込み、庭園の比較研究に関する国際会議への対応など、丁寧に取り組みを進めてきたところであります。
 推薦書は、先月、政府からユネスコに提出されましたが、登録審査は年々厳しさを増しており、その見通しは決して楽観はできません。今後は、提出された推薦書に基づいて審査が行われますが、当面は、ことし実施される予定のイコモスによる現地調査へ、関係者の方々と十分に連携し、気を引き締めて万全の対応を行うこととしております。
 登録に向けた県民の機運醸成のためには、世界遺産保存活用推進協議会において、県内の関係機関が協力し、平泉の文化遺産の保存管理や活用について取り組みを進め、景観に配慮した案内板の設置やボランティアガイドの養成などを実施してきたところです。
 また、県では、世界遺産関連事業を推進する部局横断プロジェクトチームを設置し、平泉の文化遺産巡回展の開催や、私も講師をしております児童生徒を対象とした平泉授業など、さまざまな取り組みを実施しておりますが、さらに関係部局が連携し、平泉の価値の普及啓発に一層取り組んでまいります。
 次に、花巻空港整備に至った背景と今後の効果についてであります。
 いわて花巻空港は、本県唯一の空の玄関として、産業振興や観光振興、国内外との地域間交流などにおいて極めて重要な役割を担っており、特に国際チャーター便については、いわて花巻空港の立地の優位性を生かして、近年、台湾からのインバウンド便を中心に毎年多くのチャーター便が運航されているところです。
 一方で、近年、チャーター便機材の大型化や受け入れ時間に対する海外航空会社のニーズの多様化に伴い、使用機材や受け入れ時間の希望にマッチせず、国際チャーター便の受け入れを断念した事例もあります。
 こうした課題に対応するため、大型機の就航を可能とする平行誘導路の整備や、受け入れ時間の拡大等に対応するための国際線専用チェックイン施設等の整備を着実に進めることにより、大型機材の乗り入れによる利用客の増大や就航地の拡大等が図られるものと期待しております。
 次に、名古屋便の復活の見通しについてでありますが、近年、本県での自動車関連産業の集積等に伴い本県と名古屋圏との経済的な結びつきが強まりますとともに、観光面での交流も活発化してきています中、岩手と名古屋を結ぶ航空路線については年間約10万人が利用し、両地域の交流を支える上で極めて重要な役割を担っています。こうしたことから、私みずから昨年12月、日本航空に対し名古屋方面への航空路線の確保を強く要望しましたほか、本年に入り前原国土交通大臣や神田愛知県知事などへも協力を要請するなど、関係者への働きかけを強めているところであります。
 今後も、早期に路線確保のめどがつけられるよう、県内外の関係者ともよく連携しつつ、全力を挙げて取り組んでまいります。
 次に、任期最終年度を迎えての知事の基本姿勢等についてでありますが、依然として厳しい経済、雇用情勢や深刻な地域医療の状況などを踏まえまして、平成22年度においては、県民の仕事と暮らしを守る上での緊急かつ重大な課題に全力を挙げて取り組むとともに、希望郷いわての実現に向けて、力強く第一歩を踏み出す年としたいと考えております。
 また、岩手が直面するさまざまな課題を乗り越えて、未来への歩みを確かなものとするためには、岩手の心を持つ人が多様なつながりを持ち、そして岩手の特性を生かした真の豊かさをはぐくみながら、地域社会のあらゆる主体が総力を結集し、地域の価値を高めていく地域経営を実践していくことが重要であります。
 このため、県民の幅広い参画と英知を結集して策定いたしました、いわて県民計画を羅針盤として、喫緊の課題である雇用対策、産業基盤の強化などによる地域経済の底上げ、医師確保や救命救急医療の高度化などによる地域医療の確保に全力で取り組んでまいります。
 また、中長期的な視点から、ものづくり産業や地域資源を活用した産業の振興による持続的で安定的な経済基盤の構築、安心な暮らしを支える医療、介護、福祉サービスの提供などのセーフティネットの充実、岩手の未来を切り開く子供たちを育てる人づくりなどに、県民の皆様と力を合わせ、まさにインビクタスが意味する不屈の意志を持って、希望郷いわての実現に向け全力を傾注していきたいと思います。
〇議長(佐々木一榮君) 次に、平沼健君。
   〔34番平沼健君登壇〕(拍手)

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