平成23年12月定例会 第3回岩手県議会定例会会議録

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〇9番(後藤完君) 民主党の後藤完でございます。
 本定例会におきまして、一般質問の貴重なお時間をいただきましたことを先輩、同僚議員の皆様に感謝を申し上げるものであります。
 そして、東日本大震災津波、さきの台風等により被災されました皆様方に心よりお見舞いを申し上げるものであります。今、一日も早い復旧、復興を果たしていかなければという思いであります。
 それでは、通告順に質問させていただきますが、さきの質問者の皆さんと重複する項目もあると思います。お許しをいただいて進めさせていただきます。
 まず、私たちは、ふるさと岩手の復旧、復興に向けて全力で取り組んでいかなければなりません。そのためには、被災地に権限と財源と、そして人材を集中させて、スピード感のある対応をしていくことが重要であります。今般、東日本大震災の被災地を規制緩和や優遇税制で支援する復興特区法が7日に参議院本会議で全会一致で可決、成立いたしたところでありますが、産業の集積を図る上で、障害となります規制を撤廃し、雇用の創出のための特区を新設すべきであります。
 特にも、本県の基幹産業であります農林水産業の復旧、復興は喫緊の課題でもあります。また、原発事故による放射性物質の地域農林水産物への風評被害に対しましては、十分な対応の中で地方からの安全宣言を発信していくべきであります。原子力発電の安全神話が崩れました今日、国民的議論の中で、自然エネルギー、再生可能エネルギーへの段階的転換を図っていくべきと考えるものであります。名実ともに希望郷いわての創造につながる政策として取り組んでいくべきであります。
 そこで知事にお尋ねいたします。今まさに地方の自治力を高め、地域を地域で守ることが肝要と思われますが、地域主権の確立に向けてどのようにお考えか、基本的な御見解をお伺いいたします。
 次に、農業振興についてお伺いいたします。
 ここ数十年来、農政の変化を見ますと、米の増産から生産調整へ、転作面積のネガ配分からポジ配分へ、政府管理から農業者の自己責任へと方針が変化してきましたことは周知のとおりであります。今、このことの是非や責任を論ずるものではございませんが、注視しておりますことは、農業、農村の問題を解決するためには、もはや農政の範疇ではおさまり切れない事態となってきているという懸念であります。
 しかしながら、農林水産業は、米、肉、乳製品、野菜や果物、そして魚介類などの食料、生糸等の天然繊維、建築資材となる木材など、私たちが生きていく上での必須の衣食住を供給してまいりました唯一の産業なのであります。このように多面的な機能を持つ、重要な役割を果たしてまいりました農林水産業を、今まさに歴史から学び、再生を図っていくことに全力を尽くすことが大事なことと考えます。このためには、何といっても生産基盤の整備と環境条件の充実が急務と考えております。
 国では、10月に我が国の食と農林漁業の再生のための基本方針・行動計画を定め、その中で、農地集積を加速化し、平地で20ヘクタールから30ヘクタール、中山間地域では10ヘクタールから20ヘクタール規模の経営体が大宗を占める構造を目指すとしております。一方でTPPへの交渉参加をする方針が示されたところであり、今後の我が国の農政の先行きがなかなか見通せない状況となってきております。
 そのような中、農林水産省の農業農村整備予算は、平成22年度に前年比6割以上のマイナスとなって以来厳しい状況が続いておりまして、農業者の要望に沿った整備もままならない状況となってきております。
 本県は北上川流域に主要な水田地帯が広がっておりますが、東北管内において最も整備水準が低くなっており、中でも奥州地域におきましては20アール区画以上の水田の整備率が56%程度と、他地域より低位の状況にあるところであります。
 しかしながら、第1次産業は本県の基幹産業であります。食料供給基地としての役割を今までどおり担っていくことが重要であると考えますが、なお厳しい予算状況の中であっても、水田地帯における生産基盤の整備をどのように推進されていくのかお伺いいたします。
 次に、6次産業化についてお尋ねいたします。
 このように農業情勢が厳しい中にありまして、従来の主食一本やりの生産から加工、販売まで一貫した付加価値を高める体制整備、まさに農林漁業者、2次産業者、3次産業者との融合、連携によるニュービジネスの創出による6次産業化への展開が求められていますことは御案内のとおりでありまして、このために県におきましては、経営の高度化や雇用の創出を目指した助成措置を講じられておりますが、その関連事業につきまして、現在の進捗状況と今後の見通しについてお伺いいたします。
 そして今、農業後継者が少なく、農業就業人口も高齢化が進み、大変な時代を迎えているところであります。この中で、当面は生産基盤を整備し、効率的で働きやすい農地や農業用施設にしていくことがとても大切なことでありまして、集落営農を推進するための基本的な対応でもあります。
 まずは土地改良事業を推進していくことが望ましいのでありますが、従前に事業実施されました整備地区にありましては、老朽化が著しく、改良、修繕を余儀なくされているところもたくさんあります。特にも用水施設等が傷んでおりまして、機能不全に近い状態となっているところでは早急な対策が求められているところであります。
 そこで伺います。このような老朽化した農業水利施設の改修整備につきまして、現在の事業の取り組み状況と支援の見通しについてお伺いいたします。
 次に、放射性物質の除染処分対策についてお伺いいたします。
 文部科学省は、広域の放射線物質の影響を把握するため、航空機のモニタリング調査を実施されました。11月11日に結果が公表されたところでありますが、この結果、奥州市、一関市、平泉町の県南3市町で毎時0.2から0.5マイクロシーベルトを検出したとなっております。国が放射性物質汚染対処特別措置法の対象とする年間1ミリシーベルト、毎時0.23マイクロシーベルトを超す可能性があることが明らかになったところであります。このことは、検出されました市町村が国による汚染状況重点調査地域指定の検討対象となるものでありまして、国の全額支援により所要の除染を促すものであります。県や当該市町村が要否の検討をするものでありまして、県民の安心感の確保のためにも徹底した除染対策に努めなければならないと思いますが、今後の除染対策についてどのように検討されているか、また、今後の対応の見通しにつきましてもあわせてお伺いいたします。
 次に、堆厩肥の安全対策について伺います。
 本県農畜産物への安全性を示すためにも、放射性物質調査を長期的、定期的に実施する万全の体制を県が主体的に構築していくことが望ましいと考えます。このたびの対応といたしまして、肉用牛の出荷遅延牛への支援金の交付や消費者への不安払拭のための牛の全戸全頭検査の実施、稲わらの測定調査の実施など早い対応に感謝を申し上げるものでありますが、家畜飼養から生じます堆厩肥につきましては、さきに暫定許容値が定められ、許容値を超えた堆厩肥の利用、譲渡が制限されたと聞いているところであります。制限されました堆厩肥はどの程度だったのか、現在の状況はどのようになっているのか、現在、流通している製品化された堆厩肥に問題はないのかお尋ねいたします。
 この堆厩肥は、農産物全般にわたる貴重な有機質肥料でありまして、古来からの日本農業のわざでもあり、農耕文化でもあります。結果によっては県内の水田農業や園芸作物の生産に相当の影響が出ると思いますが、今後の堆厩肥への対応についてどのようにお考えかお伺いいたします。
 あわせて、現在、汚染され、ストックされている稲わら、牧草等の処分対策につきましても、どのように検討されているかお伺いいたします。
 次に、原発事故による被害が拡大している酪農家への経営安定支援についてお伺いいたします。
 事故以来、牧草の利用自粛を要請されていない地域におきまして、自家生産牧草を給与した乳用牛から牛肉の暫定規制値を超える放射性セシウムが検出される事態が発生いたしております。牧草の調査を実施した結果、国の暫定許容量を超えるものとなっており、県の出荷自粛要請により乳用廃牛が滞留し、酪農経営における搾乳牛の円滑な更新に支障を来している状況にあります。また、酪農現場における経済的損失と精神的苦痛は、はかり知れない事態であると考えます。
 さきの農林水産部やマスコミ報道等によりますと、肥育農家に対する遅延対策として創設されました緊急支援事業の対象に加えるとして、出荷遅延支援金として交付するとあります。支援金は1頭当たり14万円以内としており、本年4月から6月までの本県成牛市場の平均売却価格で、県畜産協会を通じまして繁殖農家、酪農家に交付されるとあります。
 そこでまず、市場に流通させない乳用廃牛の全頭買い上げはできないのか、また、一時集約のための飼養施設を確保したとお聞きしておりますが、その内容についてお伺いいたします。
 そして、自給飼料基盤の除染対策でありますが、農林水産省の農地土壌の放射性物質除去技術によりますと、表土の削り取りや反転耕による汚染土壌の埋め込みなどの除染技術が示されています。県単事業の創設も含めまして、牧草地の除染対策の今後の取り組みについてお伺いいたします。
 次に、環太平洋連携協定への交渉参加についてお伺いいたします。
 さきに政府は、貿易やサービスの自由化を図るとして、TPPへの交渉参加に向けて関係国との協議に入るとの方針を明らかにしたところであります。今、農林水産業を初め、医療や食の安全、共済、公共事業など、国民生活への多大な影響が懸念されるとして全国的に疑問の声と議論が集中しているところでもあります。さらには、交渉参加には参加9カ国の同意が必要でありまして、日本に対して厳しい条件が突きつけられますことが予想されるものであります。特にも、今の日本の農業はこれに対応できる体力がないのでありまして、今後の食料自給率の低下につきましても懸念されるものであります。まさに今は、強い日本農業の再生を図るため、十分な議論と政策展開が急務であろうと考えるものであります。
 この間、国民的な議論のないままに進められておりますことに対し、非常に残念でありますし、慎重な対応と検討がさらに必要ではないのかと思うものであります。今般の交渉参加につきまして知事の所見をお伺いいたします。
 次に、再生可能エネルギーについてお伺いいたします。
 最近のエネルギー需要、脆弱なエネルギー供給構造、地球温暖化を初めとする環境問題、原発災害などを踏まえて、再生可能エネルギーの導入対策など総合的な推進が望まれているところであります。エネルギーの安定供給や環境と調和したエネルギー需給構造の構築に向けまして、バイオマスや太陽光、風力等の地域資源を活用した導入に対し、十分な支援措置を講ずることが重要と考えられます。
 電気事業者による再生可能エネルギー電気の調達に関する特別措置法の成立を踏まえまして、コストが高いと言われている再生可能エネルギーは、全量買い取りにより対応が可能とされております。しかし、地熱や風力につきましては、地形的な関係から送電コストが高いことや開発に規制があること、そして太陽光や風力は自然条件に左右され、出力が不安定なために大容量蓄電池等の併設が必要との課題があると言われております。
 そこでお伺いします。県内の再生可能エネルギーの発電設備の導入実績や、消費電力量と発電電力量の推移はどのようになっているのでしょうか。また、現在、国においてはエネルギー基本計画の見直しや革新的エネルギー・環境戦略の策定作業等が進められているわけでありますが、県としてはどのようにして再生可能エネルギーによる電力自給率の向上を図っていくお考えかお伺いいたします。
 次に、私学助成についてお伺いいたします。
 本県の児童生徒数は急激な減少傾向にありまして、私立学校の現場におきましても同様であります。学校運営に当たりましては懸命の努力をいたしておりますが、状況は極めて厳しいものとなっているところであります。各私立学校におきましては、いろいろと知恵を出し合い、特色のある学校づくりに取り組んでいるところでもあります。教育条件の向上と修学上の経済的負担軽減のため、私立学校に対する運営費助成の拡大が望まれているところでもあります。特にも、経済的な理由によりまして就学困難な生徒が在学しております私立高校に対しまして、現在も県による授業料の減免補助がなされておりますが、同制度をさらに充実、拡大し、助成をすることが人材育成の面でも大きな役割を果たすものと思われますが、どのようにお考えでしょうか。
 また、次世代を担う子供たちの生命を守り、安全を確保するため、原発事故による放射性物質の空間線量を計測し、不安を払拭するための除染対策が必要と思われますが、幼稚園、小中学校におきましては市町村が、県立高校は県が事業を実施いたしますが、私立高校はそれぞれの対応となります。私立学校の空間線量調査、除染、土壌等の処理に要する経費に対しまして公立校と同水準の対応はできないのか、支援対策についてお尋ねいたします。
 次に、被災地における地域包括ケアシステムの構築とマンパワーの充実支援に向けた取り組みについてお伺いいたします。
 震災により、沿岸地域の市町村の特別養護老人ホームや、老人保健施設、高齢者グループホーム等の入所居住系の高齢者介護・福祉施設は、全半壊あるいは一時使用不能のものを含めまして14施設となっておりましたが、現在、約半数程度が修復あるいは移設してサービス提供を再開しているところであります。震災前3、758床ありました入所定員から見ますと、現在は約94%が回復している状況でもあります。また、地域包括支援センターの状況では、社会福祉士や保健師等の皆さんが死亡や行方不明となる人的被害や建物流失や各種データ流出などの物的被害を受けておりまして、現在は他県等からの支援をいただきながら仮設住宅の訪問、相談業務などを実施しており、徐々に地域包括支援センターの機能が回復してきているところであります。
 しかしながら、震災により増大する業務に追われまして介護予防事業への取り組みがおくれるなど、専門職員の確保や職員体制の充実強化が必要となってきていると聞いております。まず、これら課題解決のため、被災いたしました地域包括支援センターへの支援を初め、仮設住宅における要援護高齢者等に対する相談、支援体制の構築など、地域包括ケアの推進に全力を尽くすことが緊急の課題と考えられますが、県はどのような取り組みをしているのかお伺いいたします。
 次に、ダム周辺環境整備についてお尋ねいたします。
 何かと知名度が高くなっております胆沢ダムであります。本ダムは、我が国初のロックフィルダムとして昭和28年に石淵ダムとして建設されたものでありますが、以後、着実に増加する水需要への対応が困難となりまして、ダムのかさ上げ要望が高まりまして、昭和63年からは現ダムの9倍の容量を有する国直轄の胆沢ダムとしての建設が開始されたところであります。
 洪水調節、河川環境の保全、農業用水、生活用水の安定供給、水力の発電等を目指し、平成11年から本体着工がなされまして、まさに半世紀の時を費やし、平成25年には試験湛水後、完成の運びであります。まさにこのことは、流域市町村を初めとする地域の念願である水需給の安定的確保を図る一大事業でもあります。
 完成後は、水資源の有効活用を図るため、周辺環境整備が必須となっているところであります。今、地域の住民による自主的な活動と御協力によりまして22世紀ブナの森づくりという植林事業を十数年来続けておりまして、6、000本からの植栽をしながら涵養水源の確保に努めているものであります。今、流域市町村の整備主体が問われているところでもあります。
 国、県、市町村とも財政状況がとても厳しいところであります。あわせて震災への復興財源に苦慮されているところでもあります。このような状況下ではありますが、地域の実態に即した整備促進を図り、地域住民のよりどころとなる対応が望まれているところでもあります。
 しかしながら、ダム建設推進のため設置されました橋梁を初め、学習施設、生態系保全施設等の関連施設が数多くあります。完成後は、国や地権者からの譲渡を受けまして、今後のダムの保全、管理、景観、環境の整備に活用すべきという地域住民の総意がございます。県においては、周辺環境整備に対する支援措置等につきまして検討されておられるのでしょうか。流域市町村においては、この財源確保に対する相応の負担と決意が必要となってくるものであります。
 そこでお伺いします。地域活性化のための環境整備の実施に向けまして、県の対応と指導をどのようにお考えか、あわせて既存施設等の取得に対する財政支援は可能かお伺いいたすものであります。
 最後に、今般の大震災の復旧、復興の取り組みに大変な御努力をいただきました県当局や、御協力をいただきました関係者の皆さんに感謝を申し上げるものでありますが、発災直後の知事の特徴的な対応としましては、被災市町村に対する行政機能支援、燃料確保のための国への上申、復興院構想の提言、被災地からの内陸部への一時避難の確保、がんばろう!岩手の宣言、漁港を核とした水産復興スキーム、復興道路の早期整備の要望、いわての学び希望基金の設立、二重ローン対策の国への提起、仮設住宅の早期完成など、事細やかに対策を講じていただきました。
 しかしながら、これら対策につきまして、なかなか県民の皆さんに理解していただけない状況下にあったのではないかと思っているところであります。今、岩手が取り組んでいる状況、これから対応していく復旧対策につきまして、マスメディアの活用も含め広報広聴活動を進めながら周知を図り、県民の理解と協力を求めるのが肝要と思われます。長いスパンでの復興対策となることと思います。答えは現場にある、まさにそのとおりであります。私どもも全力を挙げてふるさと岩手復興のため支援をしてまいります。
 知事におかれましては、引き続きの英断と勇気を持たれまして、希望郷いわての創造に向かい県政の執行に当たられますよう、エールと期待を込めて御要望申し上げ、質問を終わります。ありがとうございます。(拍手)
   〔知事達増拓也君登壇〕
〇知事(達増拓也君) 後藤完議員の御質問にお答え申し上げます。
 まず、地域主権の確立についてですが、現在、県政の最重要課題として取り組んでいます東日本大震災津波からの復旧、復興に当たりましては、被災市町村において、住民の意見、提言をしっかり聞きながら復興計画の策定を進めているほか、今までにない主体的かつ大規模な県内外の自治体との連携や、行政、民間等の枠を超えた連携、協働の取り組みの進展が見られますとともに、現場の要望、提言が国の復興基本方針や復興関連の予算、制度等に反映されるなど、地域の底力が十分発揮されており、今まさに岩手の自治力が高まりを見せていると実感しているところであります。
 こうした動きは、岩手において地域主権が大いに発揮されていると言えるものであり、今後においても、復興計画の策定を進めている市町村を中心に、地域住民の一人一人に寄り添う復興への取り組みを着実に推進していくことが地域主権の一層の確立につながるものと考えます。
 こうした取り組みが復興を加速させますことから、県としても、市町村と一体となって、復興特区制度の活用などを図りつつ、地域が主体性を発揮した復興を全力を挙げて推進していく考えであります。
 次に、環太平洋連携協定への交渉参加についてでありますが、TPP協定については、農林水産分野を初め国民生活のあらゆる分野、特にも東日本大震災津波からの復興への取り組みに大きな影響を与えることが予想されるにもかかわらず、国民に対する情報提供が不十分であり、国民的議論が進んでいない状況にあります。国においても十分な検討、論議が行われない現時点において、TPP交渉への参加に係る方針を表明したことは問題があると思っており、現時点での交渉への参加には反対であると考えるところであります。今後におきましても、東日本大震災津波からの復興を見据え、国におけるTPP交渉の動向を注視しながら、各分野における本県社会経済への影響を的確に把握していくほか、国民的議論の中では、県民や関係者の意見も十分反映されるしっかりとした検討が進められるよう、必要に応じ国に対して提言等を行っていきたいと考えております。
 その他のお尋ねにつきましては関係部長から答弁させますので、御了承をお願いします。
   〔農林水産部長東大野潤一君登壇〕
〇農林水産部長(東大野潤一君) まず、農業生産基盤の整備推進についてでありますが、本県が我が国の食料供給基地として責務を果たしていくためには、農業生産基盤の整備の着実な推進により、効率的、安定的な農業経営を下支えするとともに、水源の涵養など、農業、農村が有する多面的機能を維持増進していくことが重要であると認識しております。
 一方、農業農村整備事業をめぐる国の予算は依然として厳しい状況にあり、県内各地域から、事業工期のおくれや新規採択の見送りなどを心配する声が上がっております。このため、県といたしましては、従来からの補助金や農山漁村地域整備交付金などの予算の確保に努めるとともに、事業の重点化や建設コストの縮減などさまざまな工夫を凝らしながら、農業、農村の基盤づくりを推進していく考えであります。
 次に、6次産業化の推進についてでありますが、県では、6次産業化のモデルとなる事業体を育成していくことが重要と考え、平成21年度から6次産業化にチャレンジする事業者を支援する事業を実施しており、これまで44事業者が取り組み、104人の雇用が創出されるとともに、畜産農家による直営レストランの運営など、これまで県内になかった6次産業化ビジネスが展開されております。
 今後におきましては、6次産業化の発展段階に応じた支援を目的に設置したいわて6次産業支援センターを核として、全県的、専門的な視点からの支援を行うとともに、広域振興局等の地域単位での地域の特性を生かした6次産業化の取り組みも支援することなどにより、県内各地で取り組みが活発に展開されるよう、その拡大、定着を図ってまいりたいと考えております。
 次に、農業水利施設の改修整備についてでありますが、県内で昭和30年代以降、盛んに整備されてきた基幹的農業水利施設の老朽化が進行しており、例えば水路約1、400キロメートル、ポンプ場約50カ所のうち、平成22年度末には水路の約2割、ポンプ場の約6割が耐用年数を超過するなど、農業水利施設の改修整備が喫緊の課題となっております。老朽化した施設につきましては、これまでも、地元負担の軽減に配慮しつつ、整備のための国の補助事業を導入しながら順次改修を行ってまいりました。
 県といたしましては、全面的な改修といったこれまでの手法に加え、定期的な機能診断により緊急性の高いものから順次補修、更新する手法も取り入れるなど、基幹的農業水利施設の長寿命化対策を計画的に進めていく考えであります。
 次に、堆厩肥の安全対策についてでありますが、県内で利用、譲渡が制限された堆厩肥は約5、000トンで、これを保有する畜産農家は128戸となっており、これらの堆厩肥につきましては、区分保管を行うなど適切に管理されているところであります。また、県内の畜産農家が生産し、流通している堆厩肥は、利用、譲渡が制限されていない地域で生産されたもの、利用、譲渡が制限された地域におきましては、県が行う個別検査により暫定許容値以下であることが確認されたものであり、利用の安全性は確保されているものと考えております。堆厩肥につきましては、今後とも有効活用する必要があることから、牧草や粗飼料、堆厩肥の継続的な検査の実施などにより、農業者が本県産の堆厩肥を安心して利用できるよう取り組んでまいります。
 汚染稲わら、牧草の処分対策につきましては、国に対し、8、000ベクレルを超過する稲わら等の最終的な処分方法を早急に示すよう求めております。
 一方、国から処分方法が示されている8、000ベクレル以下の稲わら等につきましては、処分が必要な稲わら等が保管されている市町のうち、2市で本焼却または試験焼却が、3市町では圃場へのすき込み処分が進められております。
 県といたしましては、さきに予算化いたしました利用自粛牧草等処理円滑化事業により、引き続き、市町と連携しながら、適切な処分が進むよう取り組んでいく考えであります。
 次に、酪農家への経営安定支援についてでありますが、原発事故に起因する損害につきましては、肥育牛と同様に出荷滞留している廃用牛も含めて、原因者である東京電力が損害賠償すべきと考えており、県といたしましては、賠償金が支払われるまでの間の資金繰り対策として、県単独事業の肉用牛肥育経営緊急支援事業の対象に廃用牛を追加し、酪農家を支援することとしたところであります。
 また、一時集約するための飼養施設では、滞留している廃用牛を対象に、空き牛舎を利用した金ケ崎町の施設で120頭、盛岡市玉山区外山の県施設で90頭、2カ所合わせて最大210頭程度飼養することが可能となっております。
 牧草地の除染対策につきましては、本県では、牧草の利用自粛を要請している地域等を対象に、来年度以降の牧草の利用ができるよう放射性物質の低減対策を検討するとともに、国に対し、牧草地の除染技術を早急に提示するよう要望してきたところであります。
 今般、国から、牧草地の除染技術につきまして、9月に農林水産技術会議から公表された農地土壌の除染技術の適用の考え方を基本とするとの見解が示されたことを踏まえ、土壌の上層部と下層部を入れかえる反転耕等により牧草地の除染を実施していくこととしております。今後、対象となる利用自粛地域等の市町と連携しながら、来年度の牧草ができるよう取り組んでいく考えであります。
   〔環境生活部長工藤孝男君登壇〕
〇環境生活部長(工藤孝男君) まず、今後の除染対策についてでありますが、放射性物質汚染対処特別措置法の基本方針では、航空機モニタリング調査結果等で、追加被曝線量が年間1ミリシーベルトに相当する毎時0.23マイクロシーベルト以上の地域が存在することが国の汚染状況重点調査地域の指定を受けるとされております。この地域指定を受けた市町村は除染実施計画を策定し、放射線量が毎時0.23マイクロシーベルト以上の区域について、国の財政支援を受け、除染等の措置を行うこととされており、県では、除染を行う場合の放射線量の基準でありますとか、国の具体的な支援等について確認を急いでいるところでございます。
 汚染状況重点調査地域の指定につきましては、市町村長の意見を聞いた上で、年内に告示される予定であると聞いており、除染実施計画については地域指定を受けた市町村が策定することとされておりますが、県としても、市町村と情報を共有しながら、計画の策定や除染の実施を支援してまいります。
 一方、地域指定を受けた市町村であっても、放射線量が低く対象とならない区域や、地域指定を受けない市町村においても、局所的に放射線量が高い箇所の除染を行う必要があることから、本年9月に県が策定した放射線量低減に向けた取組方針に基づいて、県の支援のもとに除染等を進めていくこととしております。
 また、国に対しては、除染を行う場合の放射線量の基準を明確化することや、特別措置法に基づく除染の対象とならない地域の除染についても、要した経費について、既に実施済みの経費も含め財政支援の対象とするよう引き続き求めてまいります。
 次に、再生可能エネルギーの導入についてでありますが、県内の発電設備の導入実績は、平成13年度の38万2、000キロワットから、平成22年度には48万7、000キロワットと、出力ベースで10万5、000キロワット、約27%の増加となっております。消費電力量については、電化製品の普及などによる電力需要の増加に伴い、平成13年度の84億8、000万キロワットアワーから平成22年度には96億5、000万キロワットアワーと、約14%の増加となっております。
 一方、発電電力量については、地熱発電が発電効率の低下に伴い発電量が減少傾向にあるものの、風力発電等の設備導入が進んだことから、全体では平成13年度の22億6、000万キロワットアワーから平成22年度には23億7、000万キロワットアワーと、約5%の増加となっております。
 また、再生可能エネルギーによる電力自給率の向上についてでありますが、現在策定中の地球温暖化対策実行計画案では、再生可能エネルギーによる電力自給率を現状の約18%からほぼ倍増の35%とする目標を掲げているところであります。この目標を達成するためには大規模発電施設の立地が重要であり、このため、1点目といたしまして、再生可能エネルギー特別措置法に基づく適切な買い取り価格や買い取り期間などの実現。2点目といたしまして、国の第3次補正予算を活用した必要な支援。具体的には、環境省の地球環境保全対策費補助金、経済産業省の再生可能エネルギー発電設備等導入支援復興対策事業費補助金など、再生可能エネルギー導入促進のための各種支援制度の積極的な活用。3点目といたしまして、復興特区制度の活用による土地利用規制などの緩和措置の具体化などを進めることとしております。
 こうした取り組みを通じて、これまで実施してきた大規模太陽光発電に係る適地調査や風力、地熱発電の開発計画の聞き取り調査などを活用し、市町村等との連携のもとに、自然環境との共生にも配慮しながら再生可能エネルギーの導入に努めてまいります。
 次に、私立学校における除染対策への支援についてでありますが、現在県が進めている放射線調査・低減事業においては、市町村が事業を実施した場合、費用の2分の1を県が補助しているところであります。また、私立高校につきましても、同じく県が設置者に2分の1を補助しており、この設置者負担分については、市町村の判断によりまして市町村が負担することも可能としているところであります。
 県としては、市町村立及び私立のいずれの施設につきましても、県が費用の2分の1を負担することにより、地域における放射線量の測定及び低減措置の実施を促進しているものであり、さらに、実施に当たりましては技術的な助言など必要な支援を行っているところでございます。
   〔総務部長加藤主税君登壇〕
〇総務部長(加藤主税君) 私立高校に対する授業料の減免補助の拡充についてでございますが、本県の授業料減免補助制度につきましては、平成22年度の高等学校等就学支援金制度の開始を契機に見直し、国の制度の対象外となりました私立高等学校専攻科に生徒を通わせる低所得世帯や離職等により家計が急変した世帯に対して一定額の支援を行うほか、低所得世帯に対して、就学支援金に上乗せして支援を行うこととしたところでございます。
 さらに、本年度からは新たに生活保護世帯の入学金を補助対象に加え低所得世帯の支援に努めたほか、東日本大震災津波に係る被災世帯に対しても、入学金、授業料等の減免補助を行っているところでございます。
 これらの施策を進めてきた結果、平成22年度におきましては経済的理由による退学者はゼロとなっていること、また、被災世帯の生徒が、被災にもかかわらず学業を継続できることなど一定の成果が上がっていると考えておりまして、今後とも、経済的に修学が困難な生徒の支援に努めていく考えであります。
   〔保健福祉部長小田島智弥君登壇〕
〇保健福祉部長(小田島智弥君) 被災地における地域包括ケアシステムの構築等についてでありますが、震災直後から被災地の介護保険施設や要介護高齢者等の状況把握に努め、被災した施設入所者等の移送支援や介護職員の派遣調整、老人福祉施設の災害復旧などの介護サービス提供体制の早期復旧に向けた取り組みを行うとともに、地域包括支援センターについては、特に被害が甚大な大槌町などの早期の機能回復を図るため、現地拠点に専門スタッフを配置し、戸別訪問による高齢者の安否確認や巡回車両による相談対応、ニーズ把握のための活動用車両の提供を行ってきたほか、沿岸の被災市町村に対し、流失したデータ、資料の整備、復旧の支援やセンター職員等を対象とした研修を実施するなど、業務支援を行ってきたところであります。
 また、仮設住宅等における要援護高齢者などへの対応につきましては、生活支援相談員や日本社会福祉士会等の専門職能団体との連携を図りながら、高齢者等サポート拠点を活用した総合相談の実施や、デイサービス、ふれあいサロンの開設など、被災地の実情に応じた取り組みを支援しているところであります。
 さらに、県内老人クラブやレクリエーション協会等の関係団体と連携、協力して、高齢者世帯への訪問活動、世代間交流ふれあいフェスタやふれあい運動教室を開催するなど、高齢者の孤立化や閉じこもり防止と新たなコミュニティでの生きがいづくりの促進を図るとともに、冬期に向けて、高齢者の生活機能低下や生活不活発病などが危惧されますことから、介護予防教室の開催や高齢者健康生活便利手帳の配布など介護予防や認知症対策の取り組みを行い、被災地における高齢者が住みなれた地域で安心して暮らすことができるよう支援しているところであります。
   〔県土整備部長若林治男君登壇〕
〇県土整備部長(若林治男君) 胆沢ダムの周辺環境整備への対応についてでありますが、奥州市では庁内に胆沢ダム周辺整備事業調整委員会を設立いたしまして、周辺整備の事業工程や財源などについて協議を行っていると聞いております。また、胆沢ダム工事事務所では、水源地域ビジョン策定委員会をあす設立し、水源地域の自立的、持続的な活性化を図るための取り組みを今後検討していくということにしていると聞いております。
 県といたしましては、国や奥州市と連携いたしまして、水源地域の活性化の支援のあり方を検討していきたいと考えております。
 また、既存施設取得に対する財政支援についてでありますが、市が学習館などの既存施設を取得する際に県が支援する制度そのものはありませんが、県といたしましては、必要に応じ奥州市と連携を図りながら、既存施設の取得などに関しての支援を国に働きかけてまいりたいと考えております。
〇9番(後藤完君) 2点ほどお尋ねをしたいと思います。
 まず最初に、汚染されました稲わら、牧草、堆厩肥の処分でありますけれども、ストックされておりますけれども、焼却や埋め立て等を考えている状況であります。地域住民の合意形成がうまくいかないために、そのままの状況で保管されている。まさに道路沿いにあったり、いろんな面で危険性を伴っている。子供たちを初めとして非常に健康被害に対してのおそれがあると聞いております。市町村の責任でやられる分ではございますけれども、移動されない状況に対しましての県の指導や対応について、もう一度お尋ねを申し上げたいと思います。
 それから、自給飼料基盤の除染対策でございますけれども、自給飼料につきましては、畜産経営に対しましては低コストや安全性の確保に重要な役割を担ってきたと思っております。汚染された牧草地を一刻も早い時期に除染して供給できる環境を整備してやることが、まさに畜産経営に対して有利になるだろうと考えております。その除染方法についてはいろいろあると思いますけれども、草地更新をどのような対応でなされておられるか、今後予定されておられますか、再度お尋ねを申し上げたいと思います。
〇農林水産部長(東大野潤一君) 汚染稲わら、牧草、堆厩肥の処理方法の指導と支援の関係でございますが、まず、処理方法の指導につきましては、埋却や一時保管を行う場所の選定、あるいは埋却に当たっての地下水の汚染や雨水への流入防止、また、一時保管に当たっての飛散防止や遮へい措置などにつきまして、担当者会議の場や直接市町に出向きまして提示しております。また、この処理につきまして市町村が事業主体となってございますが、これに要する経費については、先ほど申し上げました利用自粛牧草等処理円滑化事業により県が負担、支援するということにしております。
 次に、除染対策の事業制度の活用についてでありますが、先般、国におきまして、予備費を財源といたしまして、放射性物質の除去を図ることを目的に放射線量低減対策特別緊急事業が創設されてございます。この事業では、処理が必要な廃棄物の焼却や埋却、一時保管等のほかに、反転耕やロール耕などの牧草地の除染対策にも活用できるとされてございますので、これらの事業も導入しながら支援していくこととしたいと考えてございます。
〇議長(佐々木博君) 次に、神崎浩之君。
   〔10番神崎浩之君登壇〕(拍手)

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