平成23年12月定例会 第3回岩手県議会定例会会議録

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〇11番(城内愛彦君) 自由民主クラブの城内愛彦です。
 今回の一般質問の機会を与えてくださいました先輩議員の皆様に感謝を申し上げますとともに、3月11日に発生しました東日本大震災津波によりとうとい命をなくされた方々に衷心より哀悼の意を表します。また、被災された多くの方々にお見舞いを申し上げます。
 私は宮古市出身で、この震災津波の被災地出身の者として、被災された方々の一日でも早い復旧と復興を願い、この壇上に立たせていただきました。達増知事を初め県当局の積極かつわかりやすい御答弁をお願いします。
 それでは、通告に従って順次質問させていただきます。
 震災津波発生後、県内はもとより、日本じゅうそして世界じゅうの皆さんに多くの支援をしていただいたことにまずもって感謝を申し上げます。あれから暑い夏をしのぎ、初めての冬を迎えるにつけ、県内の仮設住宅にお住まいの方々あるいはみなし仮設住宅、そして県内陸部に避難している多くの被災された皆様に改めてお見舞いを申し上げます。厳しい冬、ともに力を合わせて乗り切りたいと思います。
 さて、質問に入りますが、三陸沿岸は世界でも有数の漁場として有名であります。親潮と黒潮がぶつかり、温暖域でとれる魚も、また寒冷域でとれる魚も、四季を通じて我が岩手県沖で漁場を形成しているわけであります。その魚は、春先のマス、サバ、夏はスルメ、秋はサンマ、そしてサケが年末にかけてとれ、1年を通じて前浜は活気があるわけであります。また、県内漁業は、とる漁業から育てる漁業へと形態をシフトする中にあって、養殖漁業も盛んで、春先のワカメに始まり昆布へと、また、カキ、ホタテ、ホヤへと移り、磯漁業では春の海藻がとれ、夏にはウニがとれ、年末には干鮑のもとになるアワビがとれます。
 県内水産業はそのすそ野が広く、取り巻く関連業種は造船、燃油、漁具、漁網と、その周りで恩恵を受ける業種がたくさんあり、漁のよしあしが浜の経済を左右すると言っても過言ではありません。生産、加工、流通と一体となって産業を形成してきたところであります。
 3月11日以来、沿岸部の被災した水産業を初めとする多くの企業の皆様は、地域復興のため立ち上がろうと頑張り始めたことは周知のことであります。岩手県沿岸の産業のシンボルは前浜の活気であり、水産業が元気でなくては沿岸の復興につながらないのであります。
 そこで、知事にお伺いします。知事は、震災津波の甚大な被害から必死に立ち上がり、前に進もうとしている水産業の現状をどのように認識し、水産業の早急な復旧に向けてどう取り組もうとしているのかお伺いいたします。
 2点目は、被災した漁船の数とその復興状況についてであります。磯漁業に使う小型船の数、定置網などに使う中型船の数、イカ釣り等の被災した船の数、そして復興状況はどのようになっているのか伺います。
 3点目は、特にも県沿岸部では磯漁業に従事する方が多く、その荷揚げ場の被災状況と復旧状況について伺います。あわせて、船揚げ場についても同様の趣旨で伺うものであります。
 4点目は、県内のつくり育てる漁業の中心でもある養殖ワカメ、昆布、カキ、ホタテの被害状況と、来年度に向けた施設の復旧状況はどうなっているのか伺います。
 5点目は、定置網の被害状況についてであります。定置網の復旧におくれがあると聞いているところでありますが、復旧のおくれの原因について伺うものであります。
 6点目は、県管理と市町村管理の漁港の被害状況と復旧の見通しはどのようになっているのか伺います。
 次の質問に移ります。県道重茂半島線についてであります。
 この県道は、宮古市津軽石地区から重茂半島を回り、山田町大沢地区へと続く主要地方道であります。3月11日発生の津波により津軽石地区から白浜地区まで津波に襲われ、また、重茂地区でも音部地区、里地区、千鶏、石浜、川代と集落に大きな被害をもたらしました。山田町大沢地区も甚大な被害を受け、集落と集落を結ぶ県道が寸断され、通信網も途絶え、被害状況を伝えるすべがなくなり、まさに動脈が寸断され、孤立状態に陥ってしまい、けがをした人を救うための命の道路が寸断されたのです。また、この重茂半島線は本州最東端に位置し、古くから肉厚ワカメや重茂の焼きウニなどが有名で、漁業が盛んな地区です。太平洋側に突き出た岬には優良な定置網や養殖施設などが多く、その海産物を出荷するための産業道路でもあり、小学生から高校生までが通学する道路でもあります。震災津波から9カ月がたとうとする今、地域に暮らす人たちにとってなくてはならないこの道路の一日も早い復旧が強く求められています。復旧に向けてどのように取り組むお考えか、知事に伺うものであります。
 次の質問に移ります。県内の港湾被害状況についてであります。
 県内には四つの重要港湾があり、それぞれが地域に根差した、なくてはならないまさに地域にとっても重要な港湾であります。そこには、その利便性を生かした企業が立地し、地域はもとより沿岸部全体の活力になっていました。3月11日以降、離職、休職、失業した方々も多く、その雇用の点から考えても、復興につなげるには早い手当てが必要と考え、以下の点について質問いたします。
 1点目は、被害の件数とおおよその金額であります。今回の大震災津波により県内の各港湾施設も大きな被害を受けておりますが、被害件数は何件で、その復旧にはどの程度の費用を要すると見込んでいるのか伺います。あわせて、その見通しについても伺います。
 2点目は、今後の港湾における当局の津波防災の考え方について伺うものであります。津波に対する防災の基本は早目の避難であることは言うまでもありませんが、港湾で働く方々や利用されている方々の避難対策を今後どのように考えているのか伺います。
 3点目は、リアスハーバー宮古について伺います。この施設は、平成11年、岩手インターハイヨット競技会場として先駆けて宮古港神林地区に整備され、地区の漁業者とプレジャーボート関係者との混在利用地区で、従前は、NPO団体の指定管理のもと整然と利用されていました。被災後、指定管理も解かれ、管理が行き届かない状況にあり、早晩の復旧が関係者から強く望まれています。施設の復旧、整備と今後の管理方法についてどのように対処していくのか伺います。
 次に、被災した企業の復興支援について伺います。
 沿岸地域の働く場、産業の復興なくしてコミュニティ形成や新たな町の創造はあり得ず、町そのものの存在すら危ぶまれます。さきに日銀盛岡事務所が発表した10月の岩手県金融経済状況によると、県内経済は一部に大震災の影響が残るものの、県全体として見れば、ほぼ震災前の経済活動の水準にまで持ち直している。被災地における生産再開も広がりを見せ始め、着実に持ち直し続けているとしていますが、その実感がわかないのが本当のところではないでしょうか。
 そこで、沿岸の雇用回復の観点からも、中小企業の復旧、復興支援は優先すべき課題と考え、質問するものであります。
 まず、沿岸の被災した企業に対し、県がこれまで取り組んできた復旧、復興支援について伺います。また、その成果をどう認識しているか、あわせて伺います。
 2点目は、補助金の採択を受けない企業や、土地利用規制の関係から本格的復興にすぐ着手できない事業者も含め、県は今後どのような支援策を展開していくつもりなのか伺います。
 3点目は、沿岸の被災企業の中で、大船渡市の合板会社が事業再開を断念したとの報道が先日ありましたが、こうした事態は、雇用の面だけでなく本県の木材流通への影響も大きいと考えるものであります。他の木材関連会社においてもこのような事態にならないよう、林業振興の面からも県としてしっかり対処することを望むものでありますが、県の今後の対応について伺います。
 次の質問に移ります。県内の障がい者の雇用状況について伺います。
 一昨年起こったリーマンショックに端を発した経済不況は県内の産業にも少なからず影響を及ぼし、また、近年、たび重なる地震等で観光産業を中心としたサービス産業も相次ぐキャンセル等で大きなダメージを受けてきた折、今年3月には、東日本大震災津波による甚大な被害により県内、特に沿岸部の雇用の場が失われてしまいました。多くの方々が職を失い、懸命に復興の道を歩んでおられます。そういった中で、障害者自立支援法による施設で働く方々の仕事は大変少ない状況にありました。
 そこで、質問の1点目は、障がい者自立支援施設で働いている方々の仕事の受注状況はどのように推移しているか伺います。
 2点目は、障がい者の方々の民間企業における雇用状況はどのようになっているのか伺うものであります。そして、雇用状況の改善に向けてどのように取り組むのか、あわせて伺います。
 次の質問に移ります。県北・沿岸地域の繁殖牛農家の状況と課題について伺います。
 県北・沿岸地域は、やませや山間部といった農業にとって条件のよくない地域として知られています。その形態は畜産と田畑を組み合わせた複合農家が多く、とりわけ肉牛繁殖は重要な振興品目であると考えておりますが、近年、子牛価格が軟調ぎみで、農家にとっては収入に結びつかない状況にあり、さらには、今般の東京電力福島第一原発の事故による影響も懸念されているところであります。
 そこで伺うものであります。肉牛繁殖農家は、なかなか収入に結びつかないことなどから後継者もなく、ますます厳しい状況にあると聞いております。肉牛繁殖農家の戸数の推移と経営状況をどうとらえ、県としてどのように対応していくのか伺います。
 質問の3点目は、原発事故により子牛取引価格に影響が出ていないかどうか伺います。
 次の質問に移ります。沿岸部の海水浸水圃場の復旧状況と来年度に向けた見通しについて伺います。
 沿岸部では平地が少なく、その平地に稲作や畑作など生活に必要な農地が点在していました。前段で質問しました漁業と、または畜産と合わせた複合的農地が点在していたのです。今般の津波において平地の農地も津波により被害を受けました。一度塩水がかかると、従前の作物はなかなかつくれない状況になります。高齢の農家の方々は、その復旧を進めることができない状況にある中、来期の作付の準備をしなければならない時期に差しかかってきました。ここで復旧がされなければ耕作放棄地をふやすことになりかねないことから、質問するものであります。
 質問の1点目は、津波被害に遭った農地の被害面積はどれぐらいか、あわせて復旧状況はどのようになっているのか伺います。
 質問の2点目は、来年度に向けた米の作付見通しと、耕作を断念する方があれば、その状況もあわせて伺います。
 次の質問に移ります。東日本大震災津波の被災市町村への人的支援についてであります。
 震災津波の被災市町村では、失われた行政機能回復に努めるほか、瓦れき処理を初めとする復旧作業が急ピッチで進められているところでありますが、軒並み通常の予算を上回る仕事量が発生し、その仕事をこなすだけの人材が不足していることから、被災市町村ではいち早く県や県内外から多くの支援を受けて不眠不休の復旧作業を進めてきました。また、国において3次補正も決まり、いよいよ市町村も復旧から復興へと新たなまちづくりがスタートしました。それぞれの市町村では、将来のまちづくりについて住民と熱心な話し合いを繰り返しながら復興計画の策定に取り組み、年内にはすべての被災市町村の計画ができ上がると聞き及んでいます。今後、それぞれの被災市町村では、復興計画に基づいて住宅地や商業地の再整備など新たなまちづくり、道路、港湾、学校、公共施設など住民の生活に必要不可欠な社会資本の再建など、復興に向けた作業を行っていく必要があります。
 政府の復興構想会議の五百旗頭議長は、8月か9月には第3次補正予算と関連法案が成立し、秋が深まるころには被災地においてつち音を立てて復興作業が始まると期待したが、率直に言って遅いと述べたというように報道されております。このように、政府の対応を一因として大きくおくれた復興事業は、寒さ到来とともにようやく本格化し、来年度にかけて沿岸部の市町村にもつち音が響き始めると期待するものであります。
 さらに、このような復興事業とともに応急仮設住宅などで生活を余儀なくされる被災者への生活支援に関する作業も引き続き行っていく必要があります。
 質問の1点目は、現時点で被災市町村に対して必要な職員が派遣されているか、県の認識を伺います。
 質問の2点目は、被災市町村における復興計画が策定され、本格的な復興を進めていくに当たっての一番の問題点は、多岐にわたる事業を同時に進めていくためのマンパワーの不足であるとの声を耳にしているところであります。今後、復興事業の推進にはこれまで以上に職員が必要となると考えられますが、県ではどのように把握しているのか伺います。
 質問の3点目は、市町村では相当な数の職員が必要になると見込まれる中で、今後の職員の派遣について、県としてどのように支援していくのか伺います。
 次の質問に移ります。震災津波のメモリアル公園についてであります。
 私の出身地宮古市では、過去の津波被害を後世に伝える石碑があります。重茂半島にある姉吉地区の石碑は有名でありますが、その石碑には、此処より下に家を建てるべからずと刻んであり、地区の方々はその伝えを守り、今般の津波では人的被害がなかったことは新聞等でも取り上げられました。また、宮古市田老地区においては、経験をもとに紙芝居でその悲惨さを伝えるなど活動をしている方がおられます。
 三陸沿岸はこれまでもたびたび津波被害に遭ってきました。明治29年の津波では、傾向としてはその悲惨さが伝えられ、昭和8年の津波では教訓が伝えられております。昭和35年のチリ地震津波においては写真等による映像が多く残されました。3月11日発生の津波は、時代の変化の中で、また、津波発生が日中ということもあって多くの写真と動画が残されました。震災津波を経験した我々は、次の世代に残された多くのデータとあわせて津波防災意識を伝えていかなければならないと考えます。
 そこで伺いますが、被災各市町村にメモリアル公園を設置すべきと考え、質問します。
 質問の1点目は、被災された沿岸部各市町村では、現在、復興まちづくり計画の策定を進めているところであり、進みぐあいの違いはあるとしても、土地利用計画の形もおおむね見えてきているところであると認識していますが、それぞれの市町村の復興計画にメモリアル公園の位置づけがあるのか伺います。
 質問の2点目は、県の取り組みについて伺います。国の第3次補正予算の成立を受けて、県の復興計画実施に掲げるメモリアル公園等整備事業について、国営公園の誘致を含め市町村のメモリアル公園構想をどのような考えで実現しようとしているのか伺います。
 以上、壇上からの質問を終わりますが、答弁によっては再質問させていただきます。御清聴ありがとうございました。(拍手)
   〔知事達増拓也君登壇〕
〇知事(達増拓也君) 城内愛彦議員の御質問にお答え申し上げます。
 まず、水産業の現状認識と早急な復興に向けた取り組みについてでありますが、これまで、県といたしましては、漁船や定置網、養殖施設等の再整備、サケふ化場や産地魚市場及び水産加工等関連施設の復旧、整備への支援のほか、漁港や漁場の瓦れき等の撤去や防波堤等の応急工事の実施など、緊急的な取り組みを進めてきたところであります。産地魚市場が再開し、サンマやサケが水揚げされるなど、復旧、復興に向けた取り組みは水産関係の方々の努力によって着実に進んでいるものと認識しております。
 水産業の復興に向けては、その両輪である漁業と流通、加工業を一体的に再生することが必要と考えており、今後とも、国の復興施策を十分に活用しながら、荷さばき施設等の共同利用施設や水産加工場等の関連施設、岸壁や防波堤などの漁港施設等の本格的な復旧、整備を進め、早期に再生できるよう取り組んでいく考えであります。
 次に、重茂半島線の復旧の取り組みについてでありますが、本路線は、宮古市と山田町を結び、重茂半島の産業や生活を支える重要な幹線道路でありますが、東日本大震災津波により19カ所が被災いたしました。このため、発災直後から仮設道路などの応急工事を実施し、3月23日に全線で通行が可能となったところであります。被災箇所の復旧については、国の災害査定を10月下旬に終え、順次工事発注の準備を進めています。
 県といたしましては、白浜から堀内の約2.4キロメートル区間で進めてきた改良工事とともに本路線の早期の復旧を図ってまいります。
 その他のお尋ねにつきましては関係部長から答弁させますので、御了承をお願いいたします。
   〔農林水産部長東大野潤一君登壇〕
〇農林水産部長(東大野潤一君) まず、漁船の被災状況と復興状況についてでありますが、昨年12月末現在の登録漁船隻数1万4、303隻に対しまして、被災した漁船の隻数は登録漁船数の9割を超える1万3、271隻となっており、ほとんどが主にアワビ漁やワカメ等養殖漁業に使用される5トン未満の小型船で、1万2、916隻が被災しましたが、10月末現在で約1、600隻が復旧しております。また、定置網やイカ釣り漁業等に使用される5トン以上の漁船の被災隻数は294隻で、約50隻が復旧しております。
 次に、荷揚げ場や船揚げ場の被災状況と復旧状況についてでありますが、磯漁業に供する小型漁船が荷揚げに利用する物揚げ場と船を陸上保管する船揚げ場の被災状況は、物揚げ場の一部は倒壊、損壊、船揚げ場は張りブロックの飛散、舗装工の損壊、さらに地盤沈下など、そのほとんどの施設が被害を受けている状況にあります。
 施設の復旧につきましては、これまで地盤沈下対策として物揚げ場のかさ上げ等の応急工事を実施してきており、今後におきましても、関係漁協等と協議しながら、順次、物揚げ場や船揚げ場の本格的な復旧工事を進めていくこととしております。
 次に、養殖の被害状況と施設の復旧状況についてでありますが、ワカメ、昆布、カキ、ホタテを含む養殖水産物のほとんどが流失するとともに、養殖施設は約2万6、000台、131億円の被害が発生しておりますが、今年度中には被災前の約4割の復旧を見込み、来年度には各漁協が必要とする養殖施設の整備にめどをつけたいと考えております。
 次に、定置網の被害状況と復旧状況についてでありますが、発災時の3月にはほとんどの漁場で操業が終了し、漁網やロープなどの関係資材を陸上の倉庫等で保管しておりましたが、その多くが津波で流失しております。このため、各漁場では秋サケ漁に向けて復旧に取り組み、操業再開の意向を示している107カ統のうち、11月21日現在、約4分の3が操業しておりますが、漁船や漁網等資材の確保のおくれなどから年度内の操業が難しい漁場もありますので、来年度には操業再開できるよう引き続き支援してまいります。
 次に、漁港の被災状況と復旧見通しについてでありますが、漁港の被害は、県内111漁港のうち108漁港が被害を受けており、防波堤の倒壊、消波ブロックの飛散、岸壁の損壊、航路、泊地への瓦れき等の堆積、地盤沈下などの被害が発生しております。
 漁港管理者別の被害は、県管理の全31漁港が被災し、被害額は1、700億円余り、また、市町村管理の80漁港のうち77漁港が被災し、被害額は770億円余りとなっております。
 今後におきましては、現在進めております国の災害査定を年内をめどに終え、関係市町村、漁協と協議しながら、順次、本格復旧に着手してまいります。
 次に、被災した木材関連企業への対応についてでありますが、県では、被災後直ちに林業関係団体と連携して岩手県林業関係災害対策連絡会議を設置し、木材加工施設の被災状況や復旧に向けた情報収集を行い、国に対して手厚い支援を要望してきたところであります。その結果、国の第1次補正予算では、早期に稼働が可能な工場に対する復旧補助金等が措置され、これにより、既に宮古市の合板工場や久慈市の製材工場では操業を再開しているほか、販路を失った原木等を流通させるための支援を行ってきております。
 引き続き、国の第3次補正予算で措置されております製材工場等の木材加工施設の本格復旧や、原木等の流通コスト支援の拡大に向けた取り組みを進めていく考えであります。
 次に、県北・沿岸地域の繁殖牛農家の現状と課題についてでありますが、県北・沿岸地域の肉用繁殖牛の飼養戸数は、平成22年で1、043戸と5年前と比べ小規模農家を中心に31%減少しており、また、平成22年度は、配合飼料価格の高どまりなどにより厳しい経営状況にあると認識しております。
 県では、農家の経営体質強化のため、繁殖牛の導入や自給飼料の増産、キャトルセンター等の外部支援組織の育成など、規模拡大や生産性向上を支援してきております。
 また、原発事故の子牛取引価格への影響について、県内和牛子牛市場価格で見ると、4月から6月の平均で39万円であったものが、牛の出荷制限が指示された8月、そして9月には約35万円まで下落しましたが、その後、牛の検査が開始され、肥育農家での子牛の導入が再開されたことに伴い10月以降回復し、11月では約40万円となっております。
 次に、農地の被災面積と復旧状況についてでありますが、宮古市など沿岸部の11市町村で725ヘクタールの農地が津波により被災しましたが、瓦れきの撤去や除塩作業などを行い、今年度は8市町村の水田7.5ヘクタールで水稲の作付がされたところであります。
 被災の大きい農地につきましては、現在、瓦れきの撤去を進めており、瓦れき置き場となっている16ヘクタールを除いて年度内には撤去を終える見込みとなっております。また、国による災害査定と並行して、農地の復旧、整備の方向性や営農再開に向けた農家の意向調査を進め、地元調整が整ったところから順次復旧工事に着手しておりますが、来年の作付時期までに原形復旧として整備可能な農地面積は、被災農地の3割に当たる約220ヘクタールと見込んでおります。
 次に、米の作付の見通し等についてでありますが、現在、営農再開に向けた意向調査を進めておりますが、早期の営農再開に意欲があり、農地の早期復旧が可能な場合には、市町村等関係機関、団体と連携し、農業機械の確保や育苗準備など営農再開を支援していくこととしており、復旧見込みの農地約220ヘクタールのうち8割弱が水田となりますが、できる限り作付ができるよう取り組んでいく考えであります。
 一方、早期の営農再開を希望せず、生活が安定してから再開したい、あるいは今は再開を考えられないなど多様な意向があることから、今後さらに農家の意向を十分聞き取りながら、これらの農家が望む営農ができるよう、また、農地が有効活用されるよう、農地の利用計画や担い手の確保について集落での話し合いを進め、地域の営農体制を構築していく必要があると認識しております。
   〔県土整備部長若林治男君登壇〕
〇県土整備部長(若林治男君) まず、港湾の被害件数と復旧費用についてですが、県が担当いたします港湾施設の災害につきましては、重要港湾4港、地方港湾2港の計6港湾につきまして7月から10月までの間に計8回の査定が実施されまして、145件、283施設で復旧費用が約167億円とされたところであります。
 なお、国が担当いたします湾口防波堤を含む港湾施設は、現在、直轄災害として査定中と聞いております。
 また、復旧の見通しについてですが、県では、今後、本格的に復旧工事に着手することとしており、復旧に当たりましては、湾内の静穏度確保や利用者の安全性の観点から防波堤や護岸などの外郭施設から優先的に取り組むことといたしまして、施設利用に支障が生じないよう配慮しながら、おおむね2年以内の港湾機能の復旧を目指します。
 次に、港湾における津波防災の考え方についてでありますが、震災後、重要港湾ごとに開催いたしました港湾復興会議におきまして、港湾利用者から津波発生時の避難について不安を訴える発言がなされるなど、港からの安全な避難が課題の一つとして明らかになったところであります。
 県といたしましては、津波に対しては避難が原則と考えており、港湾内の事業所などにおける定期的な避難訓練などの取り組みが重要と考えております。また、所在市町における復興まちづくり計画を踏まえながら、港湾における安全な避難のあり方や避難施設などについて、関係者と連携を図りながら検討してまいります。
 次に、リアスハーバー宮古についてでありますが、東日本大震災津波によりまして甚大な被害を受けたところであります。護岸や係留施設などにつきましては、9月下旬に査定を終え、現在、災害復旧工事の発注に向けて詳細設計等の実施をしております。また、管理棟や艇庫につきましては、国の補助事業による復旧を目指して事業申請並びに設計等の準備も進めております。
 なお、ハーバー内の静穏度を確保するための防波堤につきましては直轄災害として国が復旧することになっておりまして、その工事の進捗と合わせて、県の施設については平成24年度より順次復旧工事に着手いたしまして、平成25年度末を目途に復旧に努めたいと考えております。
 また、施設が復旧した後の管理につきましては、指定管理者による管理を再開したいと考えております。
 次に、市町村の復興計画におけるメモリアル公園の位置づけについてでありますが、これまでに計画策定を終えております9市町村と、行政素案や中間案を公表しております2市町を合わせた11市町村のうち、復興計画や素案などにメモリアル公園を何らかの形で位置づけておりますのは6市町村ございます。
 次に、市町村のメモリアル公園構想の実現に向けた県の考え方についてでありますが、県では、復興計画の中で、メモリアル公園を津波防災文化の醸成と継承のために必要な施設として、復興まちづくりと一体となって整備すべきものと位置づけておりまして、中期的な取り組みとして、国、県、市町村が適切な役割分担のもとで着実に整備されるよう検討を進めております。
 この中で、国営公園につきましては、早い段階から候補地を選定して誘致に向けた要望や働きかけを行う必要がありますことから、被災市町村の意向を確認の上、今回の甚大な被害を象徴する土地であって、一定の規模が確保できること、津波防災の歴史文化遺産と言える高田松原を擁していることなどから、陸前高田市の高田松原地区を県内候補地として、先般、知事から国に対して要望したところであります。
 その他の地域につきましては市町村が主体となって実施していただくものと考えておりますが、県といたしましては、第3次補正予算の成立を受けて国が実施いたしますメモリアル公園などのあり方検討調査と並行いたしまして、市町村の意向を確認しながら、メモリアル公園構想が着実に実現できるよう必要な支援を検討してまいります。
   〔商工労働観光部長齋藤淳夫君登壇〕
〇商工労働観光部長(齋藤淳夫君) まず、被災した企業の復興支援についてでありますが、県ではこれまで、事業再開に意欲のある企業に対しまして、長期低利の融資制度のほか、修繕費補助やグループ補助による早期再建に向けての支援、中小企業基盤整備機構による仮設店舗、工場での操業支援に加え、二重債務問題に対応する相談センターや債権買い取りを行うファンドを創設するなど、現場の状況に即しましてさまざまな支援策を講じてきたところでございます。
 グループ補助につきましては、これまで433億円を予算措置し、11グループ144者に対しまして126億円を交付決定しております。残りにつきましては今月中に交付決定を行うこととしております。
 また、修繕費補助につきましては、現在、約300者に対しまして市町村補助と合わせまして約10億円を交付決定しております。
 一方、仮設店舗、工場につきましては、既に54カ所391区画が完成しており、年末までにはさらに20カ所160区画の完成が見込まれております。
 次に、今後の支援策についてであります。
 土地利用規制をこうむる事業者につきましては、今、申し上げたとおり、中小企業基盤整備機構が仮設店舗、工場の整備を県と連携しながら進めているところであります。グループ補助につきましては、まだ希望があることや、申請準備が整わず申し込みを見送るグループが見込まれることから、国に事業費の増額とともに来年度以降の制度の存続も要望しております。また、グループ補助の対象とならない事業者のための修繕費補助につきましても、利用希望が多いことから、今議会におきまして予算の増額を提案しているところでございます。
 今後も、現場の声をよく聞きながら、必要な措置を国に働きかけるとともに、県としての所要の支援策を講じてまいりたいと考えております。
 次に、障がい者の方々の民間企業における雇用状況についてでありますが、岩手労働局によりますと、平成23年6月1日現在、本県における障害者雇用促進法に基づき報告義務のある56人以上の企業に雇用されている障がい者数は2、185.5人でございまして、実雇用率は、法定雇用率1.8%に対し1.77%となっております。ちなみに、全国の実雇用率は1.65%であります。
 また、本県の法定雇用率達成企業の状況は、対象企業数744社に対して384社となっており、達成企業の割合は51.6%となっております。一方、全国の達成企業の割合は45.3%であります。
 しかしながら、今回の震災により事業所が被災し、離職を余儀なくされた障がい者の方々もいると聞いておりますので、県といたしましても、今後も引き続き企業の復興支援による雇用の場の回復と、障害者就業・生活支援センターによる就労支援や企業に対する障がい者雇用の普及啓発など、一人でも多くの障がい者の方々が企業への雇用へと結びつくよう取り組んでまいります。
   〔保健福祉部長小田島智弥君登壇〕
〇保健福祉部長(小田島智弥君) 障がい者就労支援事業所で働いている方々の仕事の受注状況についてでありますが、平成22年度における障がい者就労支援事業所1事業所当たりの平均売上高は約1、422万6、000円となっており、平成21年度と比較して約58万3、000円、4%の増となっております。
 平成23年度の売上高は現時点では把握できておりませんが、沿岸地域を中心に、障がい者就労支援事業所の被災による自主生産製品の製造不能、商業施設の被災による有力な販売経路の喪失、さらには提携企業の被災による請負業務の打ち切りなどの影響が出ていると承知しております。
 このため、県では、被災した就労支援事業所の施設設備の復旧を行っているほか、県下全域の就労支援を担っている障がい者就労支援振興センターの被災地支援サブセンターを大船渡市に設置し、沿岸地域の産業事情に精通した3名のコーディネーターによる新規事業の開発支援、自主生産製品の販売促進、民間企業の業務委託のマッチング等の取り組みを行っております。
 この取り組みを強化するため、被災地域の就労支援拠点の増設に必要な経費について今議会の12月補正予算案として提案しているところであります。
   〔政策地域部長千葉茂樹君登壇〕
〇政策地域部長(千葉茂樹君) まず、被災市町村への職員派遣の現状についてでありますが、東日本大震災津波により行政機能が大きく損なわれました市町村に対しましては、その回復のための人的支援が何よりも重要であると考えているところでございます。
 県では、このような考えのもと、発災直後から行政機能回復のための職員派遣を開始いたしまして、その派遣後におきましても繰り返し市町村を訪れ、そのニーズの把握に努め、適切な時期に必要な職員を派遣するよう調整を行っているところでございます。
 また、派遣内容につきましても、個別の事務事業の実施のほか、市町村からの求めに応じて副町長や部局長などの幹部職員に派遣するなど、市町村の意思決定支援やマネジメント強化にも対応しているところでございます。
 このような派遣調整により、これまで沿岸10市町村に対して170人の職員の派遣決定を行っており、現時点ではそれぞれの市町村の要請にこたえているものと考えているところでございます。
 次に、今後の復興事業のための派遣職員数についてでありますが、被災市町村の行政機能の回復のためには、今後もなお職員の派遣が必要であると考えておりまして、平成24年度の派遣につきましては、12月1日現在で133人の派遣要請が寄せられているところでございます。
 また、議員御指摘のように、今後におきましても、これに加え、復興計画策定後のまちづくりや復興特区制度の創設等に伴う新たな行政需要が生じ、被災市町村における業務量は大きく増加するものと推測しているところでございます。
 例えば、今後、具体の姿が明らかとなります土地区画整理や集団移転などのハード事業の実施に当たりましては、現在、検討作業中ではございますが、規模的には数百人規模の技術職が必要になるものと想定しているところでございます。
 次に、今後の職員派遣に係る県の支援についてでありますが、被災市町村におけます行政機能回復のための取り組みは相当の期間にわたるものと見込まれておりますことから、既に来年度の職員派遣の調整作業を進めており、今後とも被災市町村の実情や要請を踏まえながら、引き続き必要な職員数の確保、派遣に努めてまいりたいと考えております。
 一方、復興事業に関する人材の確保につきましては、全国的な支援体制の構築が不可欠でありますことから、一昨日、知事から総務副大臣等へ、国等の関係機関による継続した人的支援の強化や復興まちづくりの推進に向けた人材面を含む全面的支援を要望したところでございます。
 復興まちづくりの推進に関する事業につきましては、国が技術職の派遣スキームを構築すると伺っておりまして、県といたしましては、こうした仕組みも有効に活用することで事業実施に必要な人材の確保に努め、被災市町村の推進体制が整うよう支援してまいりたいと考えております。
〇11番(城内愛彦君) 何点か再質問させていただきたいと思います。
 まずもって重茂半島線についてでありますが、この道路は、今般の津波被害と地震によりまして地盤沈下が著しい状況にあります。また、そういう中にあって、これから春先に向けて北風が吹く。特にも、宮古湾内の状況は決してよくない。北風が吹くことによって北に向いた道路に水が上がる状況が続くという状況であります。
 そういう中にあって、地域の方々の今回の津波に関しての要望をちょっと御披露したいと思いますが、堀内地区から、白浜の頂上から舘の間の熊の平地区へのトンネルができないものか、海等やっぱり危険な状況で、子供たちを通学あるいは通勤、仕事もそうなんですけれども、そういう状況というのは避けたいという話を承ってきました。その辺についての検討はないのか伺いたいと思います。
〇県土整備部長(若林治男君) 現在、重茂半島線におきましては、地盤沈下がありまして頻繁に水が上がるということが指摘されております。現在、白浜から堀内間の整備を進めておりますので、その改良工事で若干その縦断を上げるとか、そういうことでまずは対応したいと考えておりますが、議員御指摘のトンネル整備につきましては、─大体3キロぐらいあるでしょうか─大規模な事業になることが予想されておりまして、今後、費用対効果等の検証は進めますが、今の時点では事業化についてはちょっと難しいと考えております。
〇11番(城内愛彦君) 残念な話になりました。ちょっと私は期待をしておったんですけれども。
 この地域は漁業が盛んですし、後継者もしっかりと根づいています。漁業経営体としてもしっかりとした、全国に発信できるようなモデル地区でありますので、ぜひその辺もお酌み取りいただきながら、しっかりとした前向きな検討をしていただきたいと思います。
 次に移りますが、被災した農地についてであります。
 今般、大面積が浸水しておる、中には瓦れき等も置かれておる、そういう状況下において、当面の間、復旧ができない状況は今のお話で十二分にわかりました。今後は、思い切って圃場整備等もしながら大規模化を図るような、そういった計画はないものか、その点についてお伺いしたいと思います。
〇農林水産部長(東大野潤一君) 津波で被災した農地の復旧対策の具体的な取り組みでございますけれども、沿岸地域の農地は区画が小さく、農道あるいは水路なども未整備なところが多いということ、また、農業従事者の減少あるいは高齢化の進行といった状況もございます。したがいまして、単なる原形復旧では生産性の向上が期待できず、営農の継続も懸念されると認識しております。
 このため、県では、生産性、収益性が高い農業の実現に向けまして、地域の意向も確認しながら、災害復旧にあわせて、沿岸地域の特性に応じた区画整理あるいは農地の利用集積、これを一体に進めたいと考えております。現在、宮古市の摂待地区を初め、多くの地域で関係市町村あるいは農家の方々と話し合いを進めているところでございます。
〇11番(城内愛彦君) 次の質問に移ります。
 任期付職員については本当に認識が一致したということで、ぜひこれは前向きに市町村の相談に乗っていただきたいと思います。
 メモリアル公園についてでありますが、今の答弁で陸前高田市というお話が出ましたが、私は、私の地元であります田老地区、これをぜひそういったものにしていただけないかと思います。この地域は、御存じのとおり、万里の長城とも言われるような防波堤をつくって、これまで震災を伝えてきたところであります。世界的にもある意味、情報発信をしてきました。
 私は昨年、阪神・淡路大震災のつめ跡を見てきました。9月1日でありましたが、15年たって、ある意味観光という面も残しながら、その地域では情報発信をしておったところであります。これから、この三陸沿岸が復興するに当たって、しっかりと被災の跡を後世に伝えるべく、また、いろんな意味で全国から支援をしてくださった方々にお礼の意味も兼ねて、この沿岸地域の情報発信をする、被災の状況を発信するというのは大事な役割であります。その中心はぜひ田老にと思うんですが、田老も入れていただけないものか再度お伺いして、私の質問を終わりたいと思います。
〇県土整備部長(若林治男君) 宮古市では10月末に復興計画の基本計画が策定されまして、現在、各地区で住民参加による検討会を開催して推進計画を策定していると聞いております。今後、市の推進計画の中で明らかになっていくものと考えておりまして、その時点で検討していきたいと思います。津波といえば田老という代名詞でありましたので、メモリアル公園という中ではなくて、そういう概念だけではなくて、地区全体がメモリアルという方向で進めることも一つの視点かと思います。
〇議長(佐々木博君) 次に、高橋但馬君。
   〔17番高橋但馬君登壇〕(拍手)

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