平成23年6月定例会 第23回岩手県議会定例会 会議録

前へ 次へ

〇28番(新居田弘文君) 民主党・ゆうあいクラブの新居田弘文です。
 私は、ただいま議題となっております発議案第2号発電・送電分離の法制化と次世代送電網の導入を求める意見書に反対の立場で討論をいたします。
 初めに、このたびの東日本大震災津波によりまして被災されましたすべての皆様に心よりお見舞いを申し上げますとともに、不幸にして亡くなられました皆様に哀悼の誠をささげたいと存じます。そして、一刻も早い復旧、復興を願っております。
 特にも、この地震と津波によって、東京電力福島第一原子力発電所では、従前の安全神話を覆す大事故が発生し、いまだ収束の見通しさえ立っていないのが実態で、避難生活を強いられ、住民がいつもとの生活に戻れるかわからない状況にあり、また、周辺では放射性物質の飛散によって農畜産物への影響や隣県への影響も日を追って拡大しつつあり、風評被害による経済的影響も無視できない状況にあります。
 この原発事故に対しての原因究明は、今後、時間をかけて慎重に行われることとなりますが、建設に係る安全基準等や事故が起きてからの処理など、国及び東京電力の対応については、国民の納得が得られる状況ではないと思っております。
 さて、ただいま議題となっております意見書についてですが、提出者は法制化の必要性について幾つか理由を挙げておりますが、その理由についての疑問点について指摘させていただきます。
 まず、技術革新により小規模でも効率よく発電を供給できる方法が確立されていることから、発電、送電を分離し、発電事業の新規参入を認めて競争させることで電気料金を下げることが可能であるとの主張ですが、特に発電事業の新規参入により電気料金価格を下げられることに期待しておりますが、現実の発電コストは、液化天然ガスの火力発電に比べ、風力で2倍、太陽光で4倍に達し、あえてつけ加えますと、今、話題になっておりますメガソーラー発電は2万キロワットの設備費が約100億円、他方、5万キロワットの火力発電設備費が30億円であり、土地代を除いた設備費は、1キロワット当たり、メガソーラーで50万円に対し、火力は1万円ということになり、しかも、メガソーラーは夜間はお休みで昼間も天気次第ですから、バックアップ電源が必要でさらに費用がかさむことになり、つくればつくるほど電気代が高騰するという指摘もあるところです。
 送電部門を開放すれば、太陽光、風力、地熱、バイオマスなどの小規模電力を地産地消する分散型電力供給システムへの移行が可能となり、地震などの災害に強い社会の基盤づくりにつながることが期待されるとありますが、太陽光や風力などの再生可能エネルギーは、天候などの気象条件により出力が変動するため電力品質に与える影響は大きく、品質の高い電気を必要とする企業等、例えば半導体や精密機器工場に悪影響を及ぼすことのないよう拡大していく必要があることから、送電部門を開放したからといって、すぐに再生可能エネルギーの導入可能となるわけではなく、むしろ、品質のよい電力の安定供給により、産業の振興によって地域の雇用の安定確保と国民生活の安定に資することが求められております。
 自然エネルギーに蓄電池を組み合わせたスマートグリッドの開発は我が国でも急速に進んでおるとしておりますが、これは、スマートグリッドの議論以前から存在していることでありますが、現在、一部地域でメーカー等が中心となって実証実験を行っている段階であり、まだ研究段階であること。
 自然エネルギーを生かした発電事業は、雇用の創出を通じて地域活性化にも大きく寄与すると主張されていますが、自然エネルギーは、建設段階における雇用創出には寄与するものの、その運営は少人数で行われるものが多く、恒久的な雇用の確保をするという観点から見ると、地域活性化につながるレベルは限定的と言わざるを得ません。
 しかしながら、将来的には自然エネルギーへの依存度を高めることは当然の流れでもあります。政府のエネルギー基本計画でも、2030年には、再生エネルギー等の発電量を現在の9%から約20%に引き上げる計画でもあります。
 昨日、八幡平市と地熱発電事業者による地熱発電事業化に向けての具体的検討を行うことで合意されたと報道されていますが、時宜を得た動きでもあります。今後、さらに、再生エネルギーの拡大のためには、自然エネルギーで発電した電気を電力会社に固定価格で全量を買い取らせる制度の確立とさらなる技術の進展が求められていますし、狭い日本で東と西とでは周波数が違うため電力の融通にも限界があるなど、電気をめぐってはさまざまな問題を抱えているのが現状であります。
 以上のことから、ただいま指摘した事項を含め、国全体の発電量や、消費する立場の一般生活者及び産業界など広い立場から総合的な議論が求められております。本日、ここで、当該意見書を即刻判断することは拙速であるとの指摘を払拭できないものであり、この際、慎重に審議すべきことであるから、直ちに発電・送電分離の法制化を求める意見書を提出することには反対するものであります。
 以上をもって反対討論といたします。(拍手)
〇議長(佐々木一榮君) 次に、木村幸弘君。
   〔10番木村幸弘君登壇〕

前へ 次へ