平成23年6月定例会 第23回岩手県議会定例会 会議録

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〇4番(小野共君) 民主党・ゆうあいクラブの小野共でございます。
 まず、今回の一般質問の機会を与えてくださいました先輩、同僚議員の皆様に感謝を申し上げます。
 そして、何よりも3月11日の大震災により、理不尽に命を奪われ、被災され、つらい思いをされているすべての方々に、心からお悔やみとお見舞いを申し上げます。
 それでは、本会議におけますさきの質問と重複する部分もありますが、通告に従い、順次質問をいたします。
 岩手沿岸の歴史は、自然災害とそれに伴う復興の歴史でありました。明治29年6月にはマグニチュード8.5という巨大地震が三陸沿岸を襲い、岩手だけで1万8、158人の方が犠牲となりました。その37年後の昭和8年には釜石沖でマグニチュード8.1という地震が発生し、巨大津波が三陸を襲い、死者1、522名、行方不明者1、542名という大惨事となりました。その27年後の昭和35年には、チリ沖で起きた地震が三陸沿岸を襲い142名の方が犠牲となりました。
 去年の一般質問でも申し上げましたとおり、岩手沿岸住民の所得の低さの大きい要因の一つが、これら過去の自然災害に起因するものであります。30年置きにやってきた大災害は、沿岸住民の生命と財産を奪い、富の蓄積をより困難なものにしました。
 必然的に、過去の岩手沿岸市町村の行政施策の中心は、破壊された社会資本の整備であり、津波などの自然災害からまちを守るための港湾の整備であり、所得向上のための沿岸基幹産業である水産業の振興であり、そして、内陸地域あるいは誘致企業などの地域外経済との連携でありました。
 特に、社会資本、港湾の整備は、沿岸地域の存亡にかかわる大問題でありました。過去、沿岸の住民が断続的に港湾と道路の整備を国と県に要求してきたのは、当然のことでありました。過去、岩手沿岸住民の生命と財産を守るための社会資本の整備の住民陳情というものを、国と県はどれだけ真摯に受けとめ、認識していたのでしょうか。
 震災の6日前に開通いたしました三陸縦貫自動車道釜石山田道路の釜石市内4.6キロの先行整備区間道路は、住民の期待をもはるかに超えた大きな大きな役割を果たしました。震災発生時には多くの避難者と自動車がそこに避難でき、当日夜からは、瓦れきの山と化し通行不能となった国道45号の代替道路として、都市機能を残しておった釜石の西側と釜石の北側地域、そして大槌町を結ぶという大きな大きな役割も果たしました。国道45号の西側のさらに高い場所を走るこの縦貫道は、その地理的優位性を十分に発揮いたしました。震災から4カ月、どれだけ多くの救急車、消防車、緊急車両が、分断された45号を横目にあの道路を走ったでしょうか。
 県は、三陸縦貫自動車道、三陸北縦貫道路、八戸・久慈自動車道、東北横断自動車道釜石秋田線、そして宮古盛岡横断道路の5路線を復興道路と位置づけ、3年間での重点的な整備、5年以内の全線開通を国に働きかけるとしております。
 6月14日に行われました参議院の震災復興特別委員会の主濱参議院議員の質問に対し、大畠国土交通大臣が答弁の中で、ぜひともこの道路の完成に向けて、第2次補正予算等に組み込んで、議員からの要請にできる限りこたえていきたいと答弁いたしております。
 質問いたします。
 まず、今回の大震災に関する知事の率直な認識を聞かせてください。3月11日を境に、知事の社会観、人生観、そして行政観がどのように変わったのか、もしくは変わらなかったのか、それを聞かせてください。あわせて、岩手の復興にかける知事の決意を聞かせてください。
 2点目、今、申し上げた五つの復興道路の5年以内の全線完成の見込みをお示しください。
 復興計画についてお聞きいたします。
 先日、県は、岩手県東日本大震災津波復興計画の復興基本計画案を策定いたしました。復興計画は二つの計画で構成されており、一つは、今申し上げた復興に向けての目指す姿や原則を示す復興基本計画であり、もう一つは、施策や事業、工程を示す復興実施計画であります。計画をその性質で分けるとすれば、復興に関する基本的な考え、思想をつかさどる計画が基本計画であり、具体的な事業、施策をまとめるのが実施計画ということになります。
 この復興計画では、平成30年度時点での岩手の目指す姿を、いのちを守り海と大地と共に生きるふるさと岩手・三陸の創造としており、計画の項目は、防災、交通、雇用、保健・福祉、教育・文化、農林水産業、観光など、実に多岐にわたり定められております。わかるとおり、この復興計画には、自治体に必要なすべての項目が網羅されており、被災した12の自治体の集合体にとってのまさに総合計画というものであります。
 疑問に思うことは、現在の行政運営の最高指針であるいわて県民計画と、この今申し上げました沿岸12市町村の復興計画との整合性をどうとるのかということであります。
 先ほど申し上げた復興計画の平成30年度の目指す姿からは、岩手を防災機能の強化された、産業の再生されたまちにするというメッセージが読み取れます。しかし、一方で、いわて県民計画における沿岸広域圏域における同じ平成30年度の目指す将来像は、三陸から世界へ挑む産業が躍動し海陸の交流拠点としての機能を担う地域とされており、このフレーズからは、内陸、そして世界とつながる拠点としてのまちというメッセージが読み取れます。つまり、復興計画といわて県民計画の岩手沿岸地域の目指す姿が全く異なっておるということです。加えて、総合計画のうたう、この世界とつながる交流拠点という将来像は、現時点で平成30年度の将来像として本当に現実的なのでしょうか。
 被災した沿岸12市町村の総人口は27万3、368人であり、これは岩手県総人口の2割を占めております。市町村数で言えば、被災した12市町村は、県内34市町村の3分の1にもなる数です。
 これら被災地域の総合計画とも言うべき復興計画の策定は、当然に県内他地域にも波及するはずであります。県内地域の経済と文化、行政すべてが連動して動いている以上、被災地域の新たな総合計画とも言うべき復興計画の策定は、当然、全体の計画であるいわて県民計画の変更につながってしかるべきだと考えます。
 質問いたします。
 県の行政の最高指針であるいわて県民計画と復興計画との整合性をどうとるのか、それを聞かせてください。
 2点目、5月の後半から6月の初旬にかけて、県主催の基本計画に関する市町村長、副市町村長、関係団体との意見交換会が県内で行われました。しかし、現時点で基本計画に対する意見は、計画期間に関するものを除きほとんどなく、意見交換会での質疑の中心は、例えば、行政は被災した土地を買ってくれるのか、壊れた漁港、港湾施設をいつ修復するのか、二重債務の支援はできるのか、あるいは三陸鉄道、JRはいつ復旧するのかなど、市町村、被災住民の関心は、いつ、そしてそれが可能なのかどうかといった、より具体的なこの2点に集中しております。
 基本計画は、その性質上、より抽象的な概念、目標で構成されており、結果的に、現在、住民が知りたいより具体的な情報については言及がありません。結果として、住民が望んでおることと行政が住民に与えることができるものに大きな乖離があります。住民と行政との間で需要と供給のギャップが大きく、しかも3月11日の被災以降、そのギャップが、ある程度の期間が過ぎてもなかなか埋まらないというのが実情です。
 被災地の住民の要求は果たしていつ通るのか、要求が通らないなら、なぜそれが通らないのか、この情報をできるだけ早く住民に開示すべきであります。現在、住民が行政に対し感じている不満の最大の要因は、この情報の不足にあると思うのです。
 質問いたします。
 基本計画に関する限り、その計画の性質上、議論の余地がある問題があるとは思えません。9月に策定予定であるという実施計画をより具体性のある計画とし、前倒しで進めるべきだと考えますが、当局の見解をお示しください。
 被災地域の建築制限について、県の方針をお聞きいたします。4月の中旬ごろから、県は、被災市町村に建築制限をかける条例の制定を求めております。建築を制限する方法は法律上三つあり、一つは建築基準法第39条によるもの、一つは同法第84条によるもの、もう一つは被災市街地復興特別措置法第7条によるものです。
 県が被災市町村に提供した資料によれば、建築制限の方法として、県は、危険回避の観点から、建築基準法39条による条例制定が妥当であると考えております。加えて、実際の条例制定の主体は県ではなく、被災住民と被災地域の事情をよく理解しておる市町村であるべきとの方針をとっております。
   〔副議長退席、議長着席〕
 例えば、釜石地域におきましては、建築基準法第39条が適用された場合、建築が制限されるであろう浸水区域に住む世帯は約5、000世帯、1万5、000人であります。これは、実に釜石市民の3分の1の世帯、人口数であります。
 岩手沿岸地域の市町村におけるまちづくりと人口の分布にはそれほどの違いはなく、つまり、ほかの11の被災市町村においても、この条例の制定は、かなり多くの住民に影響を与えるということになります。影響を与える住民の多いか少ないかが行政判断の基準の一つであるべきだと申しているのではありません。正しい判断というものは、されるであろう批判の多い少ないに左右されるべきではありません。
 疑問であるのは、県は、これだけ多くの住民に影響を与える建築制限を、被災市町村に条例制定の情報提供をしておきながら、この建築制限と連動すべき予算と施策については、ほとんど言及がないということです。
 被災市町村が、この建築基準法第39条を根拠とする条例を制定した場合、住民または事業者は、安全が確保されるまで住居を建設することができなくなります。または、事業者が事業所を建築する場合、ある一定の条件が課されることになります。それでは第39条の建築制限期間の条件である安全という状態が確保されるまでの間、住民あるいは事業者はどこにいればいいのかという現実的な問題が当然出てきます。そして、それでは、災害危険区域に指定されていない土地に移転するとすれば、そのための費用はどうなるのか、そして、あるいは行政が条例を制定したのだから、行政がそれに伴う費用を負担すべきではないのかなどといった疑問、要求が当然出てくると思います。
 私が申し上げたいのは、建築制限を市町村に促すのであれば、同時に、これら建築の制限に派生する費用と建築制限に伴う県の施策を同時に情報提供すべきではないのかということです。
 釜石市におきまして、先日、津波浸水区域の土地の価格を単純に坪5万円で計算したところ2、000億円ほどとなりました。2、000億円です。この金額は、実に釜石市の年間予算の10倍をはるかに超えております。例えば、釜石市単独での被災地域の土地の買い上げは、財政再建団体への移行の可能性を十分にはらんでいるということです。言うまでもなく、市町村単独での浸水土地の買い上げは不可能です。
 行政による土地の買い上げではなく、防災集団移転促進事業を使った場合、当該市町村の財政負担は事業費の4分の1となっております。しかし、たとえ4分の1の負担でも、浸水規模を考えた場合、被災市町村にとって現実的な数字でないのは言うまでもありません。
 質問いたします。
 先ほど申し上げたとおり、建築制限を市町村に促すのであれば、同時に、これら制限に派生する費用と建築制限に伴う県の施策を情報提供すべきだと考えます。条例制定に関する県の方針を聞かせてください。
 2点目、現在、国の歳入の約半分が国債で賄われており、公債費が当然のように歳出を硬直化させておる現在の国の財政状況下、幾ら緊急事態といえど、国費で整備できる被災地域の社会資本は限られていると考えるのが現実的であると思うものであります。現実的な話を聞かせてください。
 被災土地の現時点での防災集団移転促進事業による買い上げの可能性と見通し、加えて、集団移転に対する国の補助率のかさ上げの見通しを聞かせてください。
 県道26号大槌小国線の整備についてお尋ねいたします。既に御存じのとおり、この道路は、大槌町を起点とし、宮古市小国で国道340号に接続する道路であり、大槌から遠野市、盛岡市に到達する最短ルートであります。この道路の整備につきましては、平成11年以降、地元住民とともに釜石選挙区の阿部敏雄先生が、一般質問のたびに取り上げてきた大きな地域課題の一つであります。阿部先生は、このたびの大震災により犠牲になられた県民の一人となってしまいました。心から御冥福をお祈りいたします。
 平成11年策定の岩手県総合計画の中で、県は当時、山脈の壁を貫く峠道整備プログラムという計画を打ち出しております。この計画で整備計画箇所として指定されている箇所が県内で五つあります。県内で五つの峠です。
 その一つが、主要地方道大槌川井線土坂峠であり、整備方法はトンネルと明確に記載されております。ちなみに、残りの四つの整備計画箇所は、国道281号平庭峠のトンネルと大坊峠の登坂車線、国道455号早坂峠のトンネル、国道283号仙人峠のトンネル、主要地方道一関大東線のトンネルということであります。既に周知のとおり、この平成11年の総合計画で計画された五つのトンネルのうち、完成していないのは土坂峠トンネルと平庭峠のトンネルの二つであります。
 計画発表の翌年、平成12年から、県では、環境調査や測量などを進め、同年の9月には、県は5.2キロの調査ルートを公表いたしました。この5.2キロの計画区間のうち、道路拡幅などにより早期に整備効果が期待できる一部区間の1、100メートルについては、平成14年度から工事が着工しております。しかし、肝心のトンネルを含む残りの区間の整備は進まず、当局の答弁は、今後の予算の動向を見きわめながらとの答弁に終始しております。
 今回の地震と津波により、我々国民の自然災害とそれに対する防御と対処の方法に関する考えが大きく変わったのは、そのとおりであると思います。物理的には、我が国は四つの異なったプレートの真上にある小さな島国であり、地球が活動している限りやむことのない地球内部のプレートの活動は、必ずその蓄積されたエネルギーを発散するときが定期的にやってきます。このプレートの真上に位置する我が国、我々国民は、生きている限り、地震とそれに伴う津波を体験するということは全くの必然であり、私を含め、まさか津波が来るとは思わなかったという認識が、単なる思い込みであったということを、これ以上ないくらい強烈に思い知らされたというのが現実であると思います。
 これに対し、住民の生命と財産を守るために行政に何ができるのかを改めて考え直す必要があります。想定外の災害という概念の想定外というものの範囲をどれだけ狭めることができるのかが、これからの防災への、災害への対策をつくる基本哲学となるはずです。
 今回、県土を横断する道路の重要性が改めて見直されました。沿岸市町村は、程度の差こそあれすべて被災し、社会と行政が完全には機能しておりませんでした。社会基盤が失われ孤立した沿岸の被災市町村へ、内陸から人と物を運ぶ安全な道路の確保が重要でした。
 県土を横断する道路は、都市機能を失った被災市町村に命を届けてくれました。県土を縦断する道路と横断する道路、どちらも命の道路でありますが、それらの役割は、それぞれ違っております。言えることは、国の道路建設着工の是非の判断が、全国一律、走行時間短縮、走行経費減少、交通事故減少、利用台数、これらだけによるものというのは、どう考えても無理があると思うのです。
 質問いたします。
 先ほど申し上げたとおり、震災の前と後では、我々国民の災害に対する防御と対処に対する考えが変わったはずです。県では、県土を横断する道路の役割をどう認識しているのか、それを聞かせてください。
 2点目、平成11年策定の総合計画に土坂峠のトンネル化が計画されております。しかし、周知のとおり、まだ着工もしておりません。当時の土坂峠のトンネル化の計画の根拠を示してください。また、これからの土坂峠トンネル化の見込みを聞かせてください。
 3点目、関連いたしまして、市町村道の道路整備について、県の考えをお伺いいたします。
 今回の震災におきまして、通行不能となり、まちの機能を麻痺させたのは、国道、県道の幹線道路だけではありません。その市町村の住民が日々の生活のために使う、その市町村内で完結しておる細かい道路網の一つであります地域の生活道路も大きく破壊されました。
 道路の建設、維持については、基本的に、県道は県、市道は市、町道は町というように行政区分が分かれているというのは存じております。しかし、このたびの災害で、被災市町村内で破壊された道路が余りにも多く、加えて、犠牲になられた市町村職員も多く、市町村が主体となって道路を整備する予算と職員が十分ではないのが現状です。しかし、早急に整備する必要がある市町村道が多くあるのも事実です。
 そこで、これを何とかある一定の基準を設け、県事業あるいは県代行で市町村道を整備する必要があるのではないかと思うものです。県の見解を聞かせてください。
 漁業、水産業の復興についてお伺いいたします。県の復興基本計画案によれば、6月6日現在、農業、漁業、工業、商業、観光業など、県内の産業の被害額が4、795億円ほどになっております。このうち水産業、漁港被害がおよそ2、360億円になっており、これは、実に被災した12市町村の当初予算の合計額を超えており、今回の県内の産業の被害額の半分が漁業被害であるということになります。
 先月、6月3日に社団法人日本経済調査協議会の水産業改革高木緊急委員会が、東日本大震災を新たな水産業の創造と新生にというレポートを発表いたしました。このレポートの中で高木委員会は、新規算入を促進し、沿岸漁業の活性化を図るため、漁業権を民間企業などにも広く開放すべきとの提言をしております。これは、宮城県の村井知事が国の復興構想会議に提案しておりました養殖漁業に民間の投資を呼び込むという水産業復興特区構想によく似ているように見えます。
 そもそも、ある一定の海域で漁をするためには、都道府県知事から免許された漁業法が定める漁業権が必要であり、この漁業法の中に、漁業権が免許されるための優先順位が定められております。現在の法律では、この第1順位の人または法人にしか漁業権は免許されない仕組みになっております。
 しかし、6月25日に復興構想会議が発表した復興への提言によれば、水産業に関する提言は、村井知事の提案よりはよほど柔軟な提案となっており、漁業の再生には、漁業者が主体的に民間企業と連携し、民間の資金と知恵を活用することも有効であるとの表現にとどまっております。
 そもそも漁業という職業は、岩手沿岸の中で、単にお金を得る手段としてだけではなく、その地域の生活習慣と密接に絡み合い、そこに住む人々の思想、哲学に影響を与え、岩手沿岸の文化そのものとなっております。今回の高木委員会のレポートと村井知事の国への提言は、客観的にその地域の文化となった漁業に根本的に手を加えようとするものであります。賛成、反対を申し上げているのではありません。より吟味すべきではないのかと思うものです。
 質問いたします。
 今回の復興構想会議のこの提言について、基本的に、県ではどのように考えているのか聞かせてください。
 2点目、岩手の漁業、水産業のあるべき姿を現実的な形として県ではどのように考えているのか、それを聞かせてください。
 以上で質問は終わります。答弁によりましては再質問をさせていただきます。
 御清聴ありがとうございました。(拍手)
   〔知事達増拓也君登壇〕
〇知事(達増拓也君) 小野共議員の御質問にお答え申し上げます。
 まず、東日本大震災津波に関する認識と決意についてでありますが、東日本大震災津波の発生以来、それぞれの被災地で、多くの苦難に直面しながらも、家族やふるさとへの強い思い、かたいつながりを持ってそれを乗り越えてきた県民一人一人の姿に、深く胸を打たれ、改めて岩手の人の魂の強さを感じました。
 また、東日本大震災津波で被災地の市町村が甚大な被害を受け、行政機能の多くを失うなど大きな危機に直面している中で、他の市町村や都道府県の支援を得て機能を復旧し、連携によって自治の力を高めていくという動きが軌道に乗りつつあり、地方自治の進化において新たな1ページを開いたと考えております。
 さらに、県民はもとより、全国や海外から被災者一人一人に寄り添うボランティア活動を初めとしたさまざまな支援の手が差し伸べられており、地球的な規模での社会のつながりを認識したところであります。
 今回の災害を通じて、被災地はもとより、我が国、外国も含めて、一人一人の中で何かが変わったと感じております。それは、人に優しく、より志高くという生き方を目指すものであり、そうした新しい生き方をしようという人たちや地域社会への貢献を志す多様な団体などとのつながりを大切にして、それを深めていくことが重要と考えております。
 今回の東日本大震災津波は、明治以来、本県の歴史の中でも経験したことのないような大災害となっていますが、この困難を克服し、必ずや本県の復興を実現するため、幅広いつながりを復興の力として、かつてないほどの努力と工夫をもって、県民と一緒に全力で取り組んでいく決意であります。
 次に、いわて県民計画と復興計画との整合性についてでありますが、復興基本計画案では、県民計画に基づく施策の推進を基本としながら、復興に関する事項については復興基本計画に基づき推進するものとしており、計画案は広範囲な分野の施策を記載しているものの、例えば子育て環境の整備や児童生徒の学力向上などの施策は掲げていないところであり、これらの施策は県民計画に基づいて推進しているものであります。
 復興基本計画案の策定に当たっては、県民計画に掲げる地域経営の考え方やつながり、人という視点を計画案でも重要な考え方として盛り込むとともに、県民計画の六つの構想として掲げた海の産業創造いわて構想の取り組みは、計画案では三陸創造プロジェクトにおいて海洋研究拠点の形成として掲げるなど、広範囲にわたり整合性を図っているところであります。
 また、県民計画の中では沿岸広域振興圏における取り組みの基本方向として、海陸の交通ネットワークの機能強化を通じた世界とつながる拠点整備や、精密機械関連産業の立地集積等を掲げていますが、これらの取り組みは、復興基本計画案で中長期的な取り組みとして掲げている災害に強い交通ネットワークの構築や、牽引役となる産業の集積等と軌を一にしているものであります。
 議員から御指摘ありました沿岸広域振興圏の将来像については、今後のいわて県民計画のアクションプランの策定とあわせまして長期ビジョンの具体的内容の確認も行い、県総合計画審議会などからの意見をお伺いしたいと考えております。
 加えて、当該アクションプランの策定に当たりましては、復興の取り組みと県内各圏域との関係に十分配慮する必要があり、特に沿岸地域の復興には内陸地域の活力が不可欠であるという認識のもと、沿岸、内陸地域が連携し、一体となって東日本大震災津波からの復旧、復興を進め、さらにはその先にある希望郷いわての実現につながるものにしていきたいと考えております。
 その他のお尋ねにつきましては関係部長から答弁させますので、御了承をお願いします。
   〔県土整備部長若林治男君登壇〕
〇県土整備部長(若林治男君) まず、復興道路の完成見込みについてでありますが、6月に国の復興構想会議がまとめた提言の中で、太平洋沿岸軸の緊急整備や太平洋沿岸と東北道をつなぐ横断軸の強化を重点的に整備を進めるべきとされたところであります。7月1日には、国土交通省において、三陸沿岸の縦貫軸のルートについて8月中を目途に確定する方針が示され、その際、国土交通大臣から、その整備について10年ぐらいをめどに完成させる目標を持って取り組むとの発言があったところであります。三陸沿岸の縦貫軸について完成目標が示されたことは大きな前進と考えますが、県では、釜石秋田線などの横断軸も含めた復興道路の早期全線開通を引き続き国に強く働きかけてまいります。
 次に、被災地における建築制限についてでありますが、防潮堤の倒壊や地盤沈下などで被災前に比べて危険性が高まっている地域があり、安全確保やまちづくりの視点から、何らかの形で建築制限を行っていく必要が生じるものと考えております。
 これまで、各市町村に対しまして、建築制限の手法と、制度の目的や内容、制限できる期間などについて説明を行ってきたところです。建築制限にもさまざまな手法があり、例えば用途を商業系に限定する、建築物の構造を規制するなどがあります。全面的な規制を行う場合には、移転を促進させる事業とあわせて実施することが適切でありますが、市町村の復興計画において検討していく必要があるものと考えております。県といたしましては、今後とも市町村における復興まちづくりの支援を行ってまいります。
 次に、主要地方道大槌小国線の整備についてでありますが、まず、県土を横断する道路の役割についてですが、県では、県土を横断する道路は、地域間の連携強化を図る役割や産業振興を支える役割などを持つとともに、緊急輸送道路として災害時における緊急物資などの輸送を支える大きな役割を持つものと考えておりましたが、今回、改めて再確認したところであります。
 次に、土坂峠トンネル化の根拠と見込みについてでありますが、平成11年に策定いたしました岩手県総合計画では、実現したい岩手の将来像として、ネットワークが広がり、交流、連携が活発に行われる社会を掲げ、県北・沿岸と内陸地域などの各地域を結ぶ道路網の整備が必要とし、土坂峠のトンネル化を位置づけたところであります。
 今回の東日本大震災津波において、大槌小国線は震災時における避難道路や内陸からの緊急物資の輸送道路として有効に機能したところであるが、土坂峠のトンネル化につきましては、現在国で検討しております防災機能の評価のあり方を注視しながら、県全体の道路整備計画の中で、交通量の推移などを見きわめながら総合的に判断してまいりたいと思います。
 次に、県による市町村道の整備についてでありますが、災害復旧事業の代行につきましては、東日本大震災津波により被害を受けた道路などの公共土木施設の災害復旧工事等につきまして、被災した地方公共団体にかわって国または県が工事を実施できる制度が、この4月に創設されたところであります。また、従来からの県代行による市町村道の整備につきましては、山村振興法などの特別立法対象地域で、事業の必要性、緊急性、重要性が高く、用地取得や物権補償が完了した箇所の中から総合的に検討して実施しているところであります。県といたしましては、これら方針を踏まえながら、道路の復旧や整備への対応が困難な市町村から要望がある場合、その実情に応じて検討してまいります。
   〔理事平井節生君登壇〕
〇理事(平井節生君) 復興計画の前倒しについてでございますが、これまでも本県では、被災地域の実情を見ながら、公共施設の復旧や水産業、商工業などの産業の再生など、必要な施策、事業については3度にわたる補正予算で対応してきたところでございます。また、国に対して水産業の再生や二重債務問題の解消等の四つの提言を初め、まちづくり特区や岩手・三陸交通ネットワーク特区等からなる九つの復興特区の提案等を行ってきております。それらの提案等は県の復興基本計画案に基礎を置くものですが、国の復興構想会議による復興への提言にも取り入れられたところでございます。
 今後は、早期に成案を得ることを目指し、復興基本計画案を磨き上げてまいります。同時に、復興実施計画の策定作業を進め、8月上旬にはその案を示したいと考えております。なお、その過程におきましても、国の予算要求スケジュール等を勘案し、適時的確に要望活動等を行ってまいります。
 次に、防災集団移転促進事業についてでございますが、防災集団移転促進事業は、市町村が事業主体となり、災害等により住民の居住に適さなくなった区域を移転促進区域と定め、この区域から集団で移転する方の土地の買い取りや移転先の住宅団地の用地の造成等に対して国の補助を行う事業でございます。
 この防災集団移転促進事業による土地の買い取りの見通しについてでございますが、補助限度額が低いことや、被災した土地の買い取り価格が低くしか設定できないこと及び移転促進区域内に所在するすべての農地及び宅地を買い取る必要があること等、今回の災害に適用するに当たっては課題と制約があるところでございます。このことから、本事業の拡充について、国の復興構想会議の場でまちづくり特区の一環として提案を行ったほか、制度の所管である国土交通省等国にも複数回要望してきており、復興構想会議の提言にも盛り込まれたところでございます。今後とも、制度拡充の実現と予算の獲得を目指し、国の補正予算編成のタイミングも見計らいつつ、要望活動等をしてまいります。
   〔農林水産部長東大野潤一君登壇〕
〇農林水産部長(東大野潤一君) 国の復興構想会議の提言についてでありますが、国の復興構想会議は、去る6月25日に内閣総理大臣に対して復興の提言を行ったところであり、沿岸漁業、地域の復興に向けては、漁協、漁業者による共同事業化により、漁船、漁具などの生産基盤の共同化や集約を図っていくことが必要との提言や、漁業者と民間企業との連携促進については、漁業者が主体的に民間と連携し、必要な地域では、地元漁業者が主体となった法人が漁協に劣後しないで漁業権を取得できる仕組みを特区手法として活用などの提言がされたところであります。
 本県は、復興構想会議において、本県水産業が、沿岸地域の集落を形成し、地域コミュニティの中心となって発展してきたことから、地域コミュニティの再生のためにも、水産業の中核をなし、漁業権の管理主体でもある漁業協同組合を核として、漁業者による共同事業化などにより水産業を再生すべきと提案し、復興への提言にその旨盛り込まれたところであり、本県の水産業の成り立ちや地域での役割を考えれば、本県の提案の趣旨に沿って水産業の再生に取り組んでいくことが必要と考えております。
 次に、岩手の漁業、水産業のあるべき姿についてでありますが、本県の漁業は、沿岸漁業や養殖業を主体として地域の漁業協同組合が漁場を管理し、漁業者を指導する等により生産活動が行われ、地域の流通、加工業といわば車の両輪となって地域コミュニティと深くかかわり合いながら発展してまいりました。このようなことから、さきに取りまとめた県の復興基本計画案にあるとおり、地域コミュニティとのかかわりを考慮しながら、漁業協同組合を核とした漁業、養殖業の構築と、産地魚市場を核とした流通、加工体制の構築を一体的に進めていくことや、地域づくり等を踏まえながら漁港等を復旧、整備していくことが本県水産業再生の方向と考えております。本県の漁業、水産業は、沿岸地域における重要かつ基幹となる産業であり、沿岸地域の復興の礎となるものであることから、水産業関係者が意欲と希望を持てる水産業の再生に向けて着実に取り組みを進めてまいります。
〇4番(小野共君) 再質問をさせていただきます。
 3月11日のあの被災から4カ月が過ぎようとしております。被災地におきましては仮設住宅の着工あるいは完成も進みまして、既に避難所から引っ越しをした方もいらっしゃいますし、民間アパートあるいは公営アパートに入った方もいらっしゃいます。しかし、その一方で、まだ避難所でつらい思いをされている方も数多くいらっしゃる。これが現状でございます。
 3月11日、あの日、私の話をいたしますが、2月定例会の予算特別委員会の終了後、10時まで控室におりました。遠野市から県道35号の笛吹峠を通って釜石に帰ろうと思いまして、夜10時に控室を出ました。盛岡を出発いたしました。あの日、あの時間、県のほうあるいは控室のほうには、仙人峠道路が地震により崩落したという情報が入ってまいりましたものですから―結局事実ではございませんでしたが―仙人峠を使って帰ろうとは思いませんでした。結局、釜石の鵜住居に入ったときに、国道45号と、内陸と沿岸を結ぶ横の道路であります県道35号も瓦れきでつぶれておりました。12時ぐらいに鵜住居に着いたのでありますが、それ以上先には進めなく、夜、真っ暗な中で30台ぐらいの車がそこに、道路に路上駐車しておりまして、その車の最後尾に着きまして、朝までそこで時間をつぶしました。つぶしましたというか、そこにおりました。
 市町村同士をつなぐ道路というのが災害にとってどれほどの効果をあらわし、どれほどの役割を果たしたのかというのは、行政に携わる人たち、そして政治に携わる人たちが全員、あの日以来、強く強く認識されることになってきていると思います。
 被災地を歩いておりまして、多くの住民の方々から聞かれるのは、行政の取り組みが遅いという話でございます。行政の対応が遅いという話でございます。私の印象といたしましては、確かに規則に縛られているという感じはいたしますが、被災地の行政の職員は本当によくやっているというのが私の認識でございます。結局、被災地の行政の職員も被災しております。被災地の行政の職員も家族を亡くし、家をなくし、大切な人を亡くした行政の職員たちが多くおります。当然、亡くなった行政の職員の人たちも多くおります。この同じ人たちが、同じ住民である、家族を失った、大切な人を失った、そして家を流された一般の住民の方々の世話をしておるという、これが現状です。
 基本的に、私は、3月11日、あの時点で、被災した行政に対し、完璧な被災の体制をつくり上げる、これを要求するのは果たして妥当だったんだろうかと思うものであります。あのとき、行政にできる最高の体制をつくったのではないかと思うのが私の認識であります。そして、さまざまな批判、指摘があるのは存じております。その批判、指摘を行政に反映させ、より高度な、あるいはより住民の需要に沿った体制をつくり上げていけばいいというのが私の認識であります。
 そこで、客観的に県の認識を聞いておきたいと思います。県では、瓦れきの処理、市町村の復興計画の進捗状況、仮設住宅の進捗状況、避難所から仮設住宅への避難の状況、これらの進捗状況を含め、現在の県内の復興、復旧のスピードをどのように認識しているのでしょうか。早いとの認識なのか、それとも遅いとの認識なのか、それともよくやっているという認識なのか、それを聞かせていただきたいと思います。
 そして、今回の定例会でもさまざまな指摘、あるいは県に対する、行政に対する批判があるのは当局のほうでも御存じだと思います。その批判がされる原因は何だと思うのか、それを聞かせていただきたいと思います。
 基本的に、物資の供給にいたしましても、ライフラインの復旧にいたしましても、被災地の道路を含め社会資本があれだけ壊されている状態の中で、私は、かかる時間というのは、どうしてもやっぱりかかるんだろうと思います。これは、客観的に見て、やっぱりかかるものはかかるんだろうと思います。それで、行政の対応が遅いという認識がされることに対して、その原因は何であると認識しているのか、現時点での県の認識を聞かせてください。
 もう一点、3点目なんですが、基本的なことを聞いておきたいと思います。復興における国の役割、県の役割、そして市町村の役割、この三者の役割をどのように考えているのでしょうか。例えば復興、復旧に何らかの不具合であるとか批判があったときに、それはなぜ、そしてどこに責任の所在があるのかというのは、私はやっぱり前もって明確にしておく必要があると思います。基本的に考えておりましたのは、対応が早いというのはどういうことなんだろうか、あるいは遅いというのはどういうことなんだろうかと。私は、被災直後から、釜石市と沿岸広域振興局の災害対策本部に詰めておりました。毎日詰めておりました。彼らは確かにいっぱいいっぱいでありました。その中で、果たして早いというのはどういうことなんだろうか、遅いというのはどういうことなんだろうかと思っておりました。その三者の、国と県と市の役割をどう認識しているのか、それを聞かせてください。
〇理事(平井節生君) まず、復興、復旧のスピードについてでございますけれども、今回の災害により、沿岸部においては、市町村職員を初め多くの公務員も被災し、さらには、市町村によっては庁舎が被災するなど、未曾有の災害に対応する十分な体制が整わない中、瓦れきの処理や仮設住宅などさまざまな対応が求められたわけでございます。被災市町村においては、昼夜を問わず応急対策や復旧、復興に取り組むなど、それぞれの段階に応じ、できる限りの対応をしてきたものと認識しております。
 しかしながら、今回の東日本大震災津波の被害の広域性、甚大性から、県や市町村において対応できる範囲を大きく超える国家的な災害が生じたということであり、県においては、対応におくれが生じた面もあったと認識しております。このため、県としても、沿岸地域の職員を増員し、県南(後刻「沿岸」と訂正)広域振興局等に復興担当の特命課長を設置するとともに、行政機能が大きく毀損した市町村に職員を派遣するなど、人的な支援も行ってきたところで、今後とも早期の復旧、復興に向けて支援を続けていきたいと考えてございます。
 先ほど、県南広域振興局に復興担当の特命課長と申しましたが、沿岸広域振興局等でございます。失礼いたしました。
 次に、復興における国、県、市町村それぞれの役割についてでございますが、市町村は復興、復旧の主体であり、地域特性や住民の意向を踏まえて第一線において取り組みを進める役割を担っており、県は、そのような市町村の自主的な復興を積極的に支援するとともに、広域行政を担う地方公共団体として、広域的な課題や複数市町村をまたぐ事業についての計画作成や実施を担っており、また、今回の災害においては、復興のために必要な制度や財政措置を国に提案するというのも大きな役割であったと認識しております。国は、復興の全体方針を示し、財政的支援や必要な制度設計及び事業の実施を行う役割を担っていると考えております。
 県といたしましては、今回の東日本大震災津波におきましては、市町村を支える機関として、被災により行政機能が大きく損なわれた市町村の行政機能回復のための人的支援、避難所の運営、物資搬送業務などの支援を行ってきたところでございます。また、広域行政を担う主体として、被災された県民からの相談対応、生活再建に向けた支援や、被災市町村が策定する復興計画等の指針としての役割を担う復興基本計画案の策定などを進めております。さらに、復興構想会議における提案等を通じまして、国によるさまざまな支援や事業実施と、復興のための財政措置について提案をしてきたところでございます。
〇議長(佐々木一榮君) 以上をもって一般質問を終結いたします。
   日程第2 議案第1号平成23年度岩手県一般会計補正予算(第4号)から日程第11 議案第10号財産の処分に関し議決を求めることについてまで
〇議長(佐々木一榮君) この際、日程第2、議案第1号から日程第11、議案第10号までを一括議題といたします。
 これより質疑に入ります。質疑の通告がありますので、発言を許します。斉藤信君。

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