平成23年6月定例会 第23回岩手県議会定例会 会議録

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〇11番(久保孝喜君) 社民党の久保孝喜でございます。
 東日本大震災から間もなく4カ月がたとうといたしております。日本の歴史のみならず、やがて世界史にも記されるであろうこの大災害に直面した私たちは、同時代に生きたその存在証明をかけて、復旧、復興への道のりを確かなものとする作業に取り組まなければなりません。そして、この大災害により失われた命の大きさ、失われた暮らしの広がりを決して忘れることなく、鎮魂の思いを、生きて暮らす確かな足取りへと転化していかなくてはなりません。
 国内外から寄せられた善意や温かなメッセージ、声を失う変わり果てた風景の中で黙々と作業に取り組む自衛隊員の姿、内陸部で救援物資の仕分けに汗するボランティアの姿、そのどれもが、これから続く長い復興の道程において、私たちが寄る辺とする原点です。
 県職員初め、被災自治体の職員の皆様や、今なお避難生活を強いられている多くの県民の祈りや願いにこたえる歩みを、政治が、自治体がつくり出していかなくてはなりません。
 政府の復興構想会議、知事もメンバーの一人としてまとめた提言では、悲惨のなかの希望という副題がつけられました。その前文には、この国の戦後をずっと支えていた何かが、音をたてて崩れ落ちたとあります。この大震災の持つ時代的性格、文明論的側面が表現をされております。
 日本経済がその低迷のやみから抜けられず、世界の中で凋落し続け、あえぎ、政治が統治能力の劣化を指摘され、社会の病理がもたらす不安感が増幅をしているこの時代に、今回の大震災は起きました。
 達増知事に端的にお伺いいたします。
 知事は、この大震災をどのように受けとめられたのでしょうか。そして、行政のトップとして、地方自治のありように即して何を教訓として感じ取られたでしょうか。さらには、それらを踏まえ、復興にかける知事の決意をお聞かせください。
 次に、いわて県民計画と県の復興計画についてお尋ねいたします。
   〔議長退席、副議長着席〕
 現在、県民のパブリックコメントに付されている復興計画案、当然ながら今議会の中心的テーマでもありますが、厳しくも長い復興の道程を照らす羅針盤として、県民期待の文書となるものであります。成案に向けて多くの声が寄せられることを願うものでございます。
 さて、いわて県民計画は一昨年末に策定をされ、復興計画案が目標年次とする平成30年度までの同時期、県政の基本方向と施策を網羅するものであり、当然ながら、復興計画案には、県民計画の方向、施策を推進することを基本としてと、その序章に明記をされております。県民計画が行政上の上位計画であり、その前提の上で復興がなされていくという理屈は正しいのですが、今回の大震災のもたらしたものは、県民計画の前提とする本県の現状や課題、その認識を突き抜け、根拠とする大部分の現実を奪い取ってしまったのではないでしょうか。したがって、県民計画が定める県政方向や施策の重点項目、進行速度や目標のとり方などなど、本質的変更が迫られているものと認識せざるを得ません。
 そこでお伺いをいたします。
 第1に、県民計画上の現状認識、その強みと弱みの分析に係る変化をどのようにとらえておられるでしょうか。
 第2に、岩手の未来としたその方向性に、今日、ずれは生じていないのかどうか。
 第3に、県民計画の進行管理と復興事業の優先度との関係をどう整理されようとしているのか。
 第4に、本年度からのアクションプラン策定の当初方針はどうなされるおつもりなのか。以上、知事の御所見をお伺いいたします。
 登壇しての質問は以上であります。この後は、質問席からとさせていただきます。
   〔11番久保孝喜君質問席に移動〕
   〔知事達増拓也君登壇〕
〇知事(達増拓也君) 久保孝喜議員の御質問にお答え申し上げます。
 まず、大震災をどのように受けとめたかについてでありますが、今回の東日本大震災津波では、かつて経験したことのない甚大な被害が出ており、犠牲となった方々の御冥福をお祈りするとともに、これらの方々のふるさとへの思いを忘れることなく、被災された方々の幸福を追求することを保障するよう、全力をささげようとの思いを強くいたしました。
 一部の市町村では行政機能が失われるなど、極めて厳しい状況に置かれ、国、関係機関の協力はもちろん、県内市町村や全国の自治体からの物資の提供、人的応援によって災害に対処できたものと認識しております。
 こうした経験から、隣接自治体や圏域を越えた自治体による応援が必要であること、また、国は、こうした応援が効果的に行われるよう制度を整え、十分な支援策を講じる必要があることを教訓として感じました。全国の自治体が自主的な判断で支援に取り組む姿は、地方自治の新しいモデルとなり得るものであり、それぞれの団体が自立しつつ、いざとなれば助け合うという、地方自治の新しい展望を開くものと期待しています。
 次に、復興にかける決意でありますが、今回の東日本大震災津波を通じて、近隣自治体や圏域を越えた自治体間の連携を初め、被災地はもとより、我が国全体、海外の国、地域も含めて、人に優しく、より志高くという新しい生き方をしようという人たちや、地域社会への貢献を志す多様な団体なとどの復旧、復興に向けた多様なつながりが大きく広がっています。それを大切にして深めていくことが重要と考えています。
 今回の大震災津波は、明治以降、本県の歴史の中でも経験したことのないような大災害となっていますが、この困難を克服し、必ずや本県の復興を実現するため、幅広いつながりを復興の力としながら、いのちを守り海と大地と共に生きるふるさと岩手・三陸の創造に向けて、県民と一緒に全力で取り組んでいく決意であります。
 次に、いわて県民計画と復興計画の位置づけについてでありますが、いわて県民計画は、全県的に取り組む施策を総合的に盛り込んでいる計画であるのに対し、復興計画は、復興に重点化し、優先的に取り組む施策を盛り込んだ計画であります。
 上位計画であるいわて県民計画においては、岩手の可能性としての強みや、課題としての弱みを把握した上で、ゆたかさ、つながり、ひとを岩手の未来を切り開く三つの視点として掲げ、私たちが実現していきたい岩手の未来に向け、各般の施策を展開してきたところでありますが、大震災津波発生後においても、強み等の前提となる地域資源の状況は大きく変わらないことから、いわて県民計画の基本的な方向性は変わらないと考えております。
 一方、発災により、雇用環境の厳しさや水産資源のブランド確立のおくれなどの弱みがさらに顕在化していることから、迅速かつ的確な取り組みが必要であり、また、本県産農林水産物等への全国からの需要の拡大や被災地支援による交流の拡大などについては、本県の強みや可能性として、より取り組みを強化していくべきものと認識しております。
 さらに、三陸縦貫自動車道等はこれまで整備がおくれていましたが、今回の災害において命の道として機能したことから、国において復興道路としてその重点的整備が打ち出されるなど、本県の新たな強みが創造される可能性も出てきているところであります。
 このようなことから、復興計画では、こうした課題や最近の国の動向等にも対応して、安全の確保、暮らしの再建、なりわいの再生の三つの原則を掲げ、取り組みを重点的に行うこととしております。
 また、今後策定が見込まれるいわて県民計画アクションプランは、長期ビジョンの具体的内容の確認とあわせて、県総合計画審議会等からの意見をお聞きすることとし、具体的には、復興に当たって内陸地域の活力が沿岸地域を支えていくことにも配慮しつつ、個々の施策や取り組みごとに復興との優先度や関連度を判断しながら策定されるものと考えております。そして、その進行管理については、県条例で定める政策評価制度により行っていくこととしています。
 このように、いわて県民計画は、長期的な視点に立って、発災、そして復興により変わることのない地域資源を活用した岩手のあるべき姿を示しているものであり、復興の方向と軌を一にするものでありますことから、大震災津波からの復旧、復興、さらにはその先にある希望郷いわての実現に向けて、両計画を着実に推進していきたいと考えております。
〇11番(久保孝喜君) 御答弁ありがとうございました。
 知事の決意についても、幾つかのフレーズで大変共感をするところもございます。今回の震災を奇貨として新しいつながりが生まれ、そして自治体同士の連携ということも含めて、自治の姿の展望がある種切り開かれているという現実は私も同感ですし、こうしたことが、本来、私たちが望んでいる地方分権、地域主権の考え方に近づいていく大きなきっかけになればいいなというふうに私自身も思っております。
 また、知事の決意についてもお伺いをいたしました。まさに多様なつながりなどを含めた復興に大きな期待を寄せているという思いは受けとめたところでございますが、そうした知事の決意が、行政のトップとして県職員などはもとよりですが、地方自治体、基礎的自治体である市町村、あるいは県民にどう受けとめられていくかということがとても重要なわけです。
 きのうの質問の中にもありましたが、そこにちょっと触れなくてはならないと思うんですが、昨日発売をされました週刊誌の記事などをめぐって、県民の間にも心配が広がっているんだろうと思うんですが、そうしたことに実はきのう段階で、県として正式に抗議文を出すということが表明をされております。この知事の県職員に対するメール問題は、前にも一度、例の平家物語でしたかのメールの際にも週刊誌に載ったという経緯があったわけですけれども、その際の対応と比べても今回の対応はちょっと特異な感じがするんですが、この辺について県民にどう思いを伝えるかということも含めたトップとしてのあり方に即して言えば、今回がなぜこうした対応をせざるを得なかったのかということも、ひとつつけ加えて御説明をいただいたほうがよろしいのではないかなと思うので、お答えをいただきたいと思います。
〇知事(達増拓也君) 突然の質問でちょっと正確に思い出せるかどうかあれなんですけれども、当該記事の中には、例えば県が発災当日、被災地に全く人を出さなかったというような、明らかに事実と反し、かつ、まさに議員がお取り上げになった市町村と県が連携、また、他の市町村や県や国とも連携しながら、被災地、被災者支援をしっかりやっていくという活動そのものを否定するような内容が含まれておりまして、そういったところを県として認めた格好になりますと、今後の被災者支援、復旧、復興というのに差しさわりがあるのではないかということで、今、事務的に県の担当弁護士さんとも相談しながら対応を準備している状況と報告を受けています。
〇11番(久保孝喜君) そうした対応をとられるということは、そうですかと聞き置くしかないわけですけれども、いずれにしても、トップリーダーのさまざまな振る舞いというのが、県民に対する、行政に対する信頼感だとか、あるいは一つにまとまっていくための大きな要素であることは間違いのないことですので、これからもぜひともそこに意を用いて活躍をいただきたいと思っております。
 県民計画との関係は、当然そういう御答弁だろうなと思ってお聞きをしましたが、いずれにしても内陸部の経済をどう回していくのか―後で触れますけれども―そことの関連を含めて全体の県民計画との整合を、限られた財源の中で、あるいは国との調整の中で、自治体との連携の中でどう取り組んでいくかというのは大きな課題になってくると思いますので、慎重な運営をぜひともお願いを申し上げたいと思います。
 そこで次の質問に入ります。
 大震災の復旧、復興に関する次の質問は、これもきのうの段階で議論をされていたところだったんですが、間もなく4カ月を迎えようとして、この際、対策本部なりあるいはどの部署でもいいかと思うんですが、やっぱり中間総括をきちんとするべきなのではないかと。県の対応にどういうよさがあったり、あるいはまずさがあったりということを含めて、実は市町村自治体の中でもさまざまに声が上がっているわけですね。私たち議会がそれぞれの沿岸部に出向いていった際にも、かなり手厳しいお話を実はいただいてきているわけなんです。
 きのうの議論を聞いてみますと、県の対応に大きな瑕疵がなかったというふうに聞こえてしまったわけですけれども、しかし、やっぱり、それぞれの場面場面の対応で、県の不足していた点が何だったのかということを謙虚に中間総括をしていくということは、これから本格的な復興に向けてはどうしても私は必要なことなんだろうと思います。その点で、一定の中間総括、そのための論点というようなものを整理していただくのがいいのではないかと思っているわけですが、その点でお答えをいただきたいと思います。
〇総務部長(加藤主税君) これまでの県の対応の中間総括ということでございますが、今現在、中間総括という形できちっと文書にしたものを持っているわけではございません。これまでの対応を振り返りまして、災害対策本部、その支援室等を所管しております総務部等で取りまとめていると申しますか、考えております部分を申し上げたいと思います。
 発災直後におきましては、人命救助を最優先として迅速な救助活動を行ったわけでございますが、一方、大規模停電及び通信網の断絶等が続きまして、沿岸被災地の状況の把握は困難をきわめまして、道路網の寸断、燃料不足、物流の混乱等といった要因もございまして、被災地への支援物資の輸送など、被災者に対する支援におくれを生じた面もあったと認識しております。しかしながら、災害対応体制を強化いたしまして、自衛隊を初めといたします関係機関の御協力を得まして、被災者に対する食料、水等の支援物資の供給を確保することができました。以降、ライフラインの復旧や市町村の行政機能の回復と相まちまして、被災者に寄り添い、きめ細かな生活支援に取り組んできたところでございます。その際、必要となってまいります予算、人員等の手当てにつきましても、順次講じてまいりました。このような対応を顧みつつ、今現在、中間段階ということでございますが、十分な検証、分析を行いまして、今後におけます大規模災害対策の強化につなげていく必要があると考えております。
 論点ということでございます。考えられる論点といたしまして幾つか挙げさせていただきますと、被害の甚大さに応じました部局横断的な県の災害対応の体制―今回も講じたところでございますが―それをどう制度化して組み上げ運営していくのか、被災地の正確な情報を迅速に把握するために、大規模災害時におきましても機能するような、そういう通信体制をどう構築していくのか、甚大な被害を受けても、被災地の行政が機能し災害対応に当たれますよう、関係機関や自治体相互の支援の仕組みをどう確立していくか、こういったことが考えられるのではないかと今現在認識しております。
〇11番(久保孝喜君) 何より県の側が謙虚にこれまでの取り組みについて冷静に―総括という言葉を使いましたけれども―検証を行って、これからの本格復興に向けていただきたいというのが趣旨でございます。
 先ほど申し上げた、議会で―先月の中旬だったでしょうか、沿岸部に出向いた際には、県に委託すると何でこれだけ瓦れき処理が遅いんだとか、かなり口をきわめて県の対応に対する不満というのが実は出された。私たちはそれをじかに聞いてきたわけです。そういう思いもあるんだということは、県職員の皆様方に直接はあるいは話されていなかったことなのかもしれませんし、あるいは今は是正されているのかもしれませんけれども、そういう声もいただいたということはぜひ覚えておいていただきたいし、それから、ある沿岸の首長経験者が政策情報紙の中でこういうふうに書いている。私は大変ショッキングでした。
 県の存在が今回の復旧の中で障害になったと言っているわけです。さらに言葉をきわめて、県はもう要らないとまで言ってしまっているという記事があって、私は本当にこれはびっくりしましたし、ショックでした。つまり、県がやっていることの意味というのが、残念ながら首長経験者と言われるような方々にとってもまだそういう理解、あるいはそういう感情になっているのかという点で非常に私はショックでしたので、それらを含めて、ぜひ謙虚に、そして速やかな検証が私は必要なんだろうと思っております。
 次に、これも市町村段階からさまざま言われてきたことで、沿岸部のある方が、今回が想定外の災害だとすれば、その対応も想定外でやってくれないかと。従来型の手続の、あるいは従来型のスピードの、従来型の段取りのということを言われた日にはやっていられないというような声が上がったわけです。
 知事は、これは記者会見だったと思うんですが、4月の段階で、今までやったことのないようなことでもちゅうちょするなと、県職員の皆さんにどんどんやれと言っているというふうなお話がございました。この枠組みにとらわれない支援というのは、きのうも議論があったところですが、法や制度の枠組みにとらわれない支援方法だとか、あるいは復旧、復興に向けたさまざまな取り組み、実際にそういう形で従来型の枠にとらわれない検討とかが行われたことというのは実際にあったんでしょうか。その実例をお示しいただきたいと思います。
〇総務部長(加藤主税君) 枠組みにとらわれない支援につきましての実例ということでございます。幾つか挙げさせていただきます。
 在宅避難者という概念に着目いたしまして物資等の支援に早い段階から取り組みましたところ、災害救助法の救助費の適用対象とする取り扱いが事後的に認められたという例がございました。また、被災地から内陸部の旅館、ホテルに避難者を移送する取り組みをいち早く進めましたところ、これに要する経費につきまして、要援護者に限らず避難者一般につきまして、これも災害救助法の救助費の適用対象とする取り扱いが事後に認められたという事例がございました。
 仮設住宅用地につきましては、早期の確保を図るため、公有地にこだわらず、民有地を借り上げてこれに充てる、そういう対応を進めましたところ、これを追認いたしまして補助対象にしましょうという国の通知が後に発せられたという事例もございました。
 また、水産業関係の補正予算、先般お認めいただいたものでございますが、これにつきましては、漁家や水産業関係者の意見に耳を傾けまして、漁期を考慮いたしまして、国の補正予算を待つことなく計上に踏み切ったところでございます。今般の国の2次補正予算におきましては、まだ一部の事業ということになりますが、これにつきまして、後からということになりますが措置される方向になっている、こういった、国の制度がない中で先んじた対応を行った例もございました。
 これらは一例ということになりますが、従来の発想にとらわれないさまざまな取り組みが各部局において行われたものと考えております。
〇11番(久保孝喜君) そういう実例があったとすれば、本当にこれから先、市町村が思っているさまざまな懸念みたいなものを払拭するためのまさに発信力が実は問われていくのではないかと思っていますので、ぜひ強力に取り組んでいただきたいと思います。
 次に、市町村の復興計画と県行政の関係についてお尋ねいたします。
 一つは、これから本格化してくるであろう市町村の復興計画ですが、そこに県がどのようにコミットしていくのか、どういう支援があり得るのか、あるいはその際の広域振興局の役割はどのように考えているのかという点をまずお尋ねしたいと思います。
〇副知事(上野善晴君) まず、市町村の復興計画づくりへの支援についてのお尋ねでございますが、市町村の復興計画は、被災市町村がみずからの被災状況や土地利用の状況、それから産業構造などの地域の特性を考慮いたしまして、国、県などの関係機関と十分に連携した上で作成することが必要と考えております。
 こうしたことから、県といたしましては、災害危険区域の基礎データ、浸水エリアのシミュレーションなどまちづくりに関する各種データの提供や技術職員の派遣、水産業の再生に向けた漁協との調整や水産業者の合意形成支援など、被災市町村と一体となって、その策定段階に応じ、計画策定の支援に取り組んでいるところでございます。
 次に、広域振興局の役割についてでありますが、まず、沿岸及び県北広域振興局は現地災害対策・復興本部と位置づけられておりまして、本庁や国の考え方を踏まえつつ、現地の要望に即座に対応する一方、現場の意見や課題等を本庁や国に申し入れる、いわば本庁と市町村の橋渡しの役割を担っていると考えておりまして、部局横断的な総合力や機動力を生かして、現地の状況などを踏まえた具体的な支援活動を行っているところでございます。
 具体的には、広域振興局の副局長などが市町村が設置する復興計画策定委員会などの委員として審議に参加するほか、広域振興局内に市町村担当者を置きまして、建築や都市計画などの技術職員を市町村に派遣するなど、相互に情報共有を図りながら被災市町村と一体となった策定作業の支援を推進しております。
 他方、災害対策本部員会議や復興本部員会議など―これは盛岡で本庁でやるわけでありますが、その場におきまして、市町村の計画策定も含めた現場での課題などを踏まえまして、現状や対応策について、広域振興局のほうから本庁に対しまして報告あるいは提言を行っているところであります。
 今後とも、広域振興局におきまして、市町村と密接に連携しながら、本庁と市町村との橋渡し役を適切に果たすことを基本といたしまして、市町村の復興計画策定の進捗状況に応じましたきめ細やかな支援を行っていく必要があると考えております。
〇11番(久保孝喜君) 市町村が復興計画をこれから本格的につくり始めていく、そこにサポートをしていくという作業は大変重要なことになってくるだろうと思います。
 そこで、沿岸被災現地の復興にとって、これはさんざん言われてきているわけですが、1次産業の再生をどう図っていくのかということが基盤的な課題に実はなっているということです。
 この1次産業の再生にかかわって、私からは農業の件でちょっとお話ししておきたいんですが、冠水をしたり、あるいは流失した田んぼ、畑というのが、これはある資料によれば―農林水産省の調べだと思うんですが―、例えば大船渡市は49.3%、それから陸前高田市が62.1%あると言われております。こうした大変な、先ほど田村議員からも御指摘がありましたけれども、農地の復旧や回復という点での整備をこれからどんどん進めていかなければならないこの時期に、ここに来て、また例のTPPの問題が再燃してきたという報道が幾つかあって、大変気になっているところでございます。さらには、最近の報道では、米の先物試験上場という問題が、降ってわいたようにといいますか、起きております。被災県が1次産業の再生に向かって今まさに歩みを始めようとしているときのこうした動きに、被災県としてはやっぱりいち早くメッセージをきちんと出す必要があるのではないかというのが私の思いなんですが、その点で知事の所信はいかがなんでしょうか。
〇知事(達増拓也君) まず、環太平洋パートナーシップ協定については、5月17日の閣議決定で、政策推進指針として交渉参加の判断時期は総合的に検討となり、また、米の先物取引の試験上場については、価格の乱高下や需給調整への影響が懸念されているところであり、今後の国の検討状況や取引の動向などを注視していく必要があると認識しております。
 被災地域の農林水産業は、それぞれの地域経済を支える基幹産業として大きな役割を担っているわけでありますので、県の復興基本計画案に掲げる取り組みを着実に推進していくことが重要と考えておりまして、農林水産業をめぐるさまざまな動向にかかわらず、被災地域の生産者が意欲と希望を持って農林水産業の復旧、復興に取り組めるよう、国に対しても必要に応じて提言をしていく考えであります。
〇11番(久保孝喜君) 必要に応じてというのは、まさに今のこと、今の時期なのではないかと私は思っておりまして、ぜひ強いメッセージというのをいち早く出していくことが被災地の方々へのある意味応援にもなると、私はそういうふうに思っておりますので、ぜひとも果断な判断とスピード感のあるそうした発信をぜひこれからも心がけていただきたいと思っております。
 次の質問に入りますが、震災対応と日常業務―内陸部の事業との関係で、先ほどの県民計画がまさに全体を網羅した計画であり、その進捗は被災地の復興と相まって同時並行でもちろんやっていくのだ、こういうお話がございました。そのとおりだろうと思うんですが、そこで、現実に、現在、内陸部事業が凍結されたり先送りされたりしている事態の中で、これらに当たる方向性、これから先の方針がどういうことになるのかにかかわってお聞きするんですが、沿岸部へかなりマンパワーがシフトされているということを聞いていますし、その上で、これから先の内陸部でのさまざまな事業などを考えたときに、マンパワーとしては十分なのかどうかということをまずお聞きしたいと思います。その実態と、あるいはこれからの見通しなどもあわせてお聞きできればと思います。
〇総務部長(加藤主税君) 内陸部での事業等を含めました、それに当たるマンパワーについてのお尋ねでございます。
 災害対応のための休止または縮小可能な業務の選別、見直し等を実施いたしまして、これまでに内陸部から沿岸部の広域振興局や市町村に40名の職員を異動ないし長期派遣するとともに、他の都道府県等から68名の応援職員を受け入れまして、被災地の復旧、復興といった業務に当たってきております。このような対応によりまして、内陸部の事業を含めまして、当面対応が必要となります事務事業の推進を図ってまいりました。今後、沿岸部の復旧、復興がさらに進むにつれまして、一層のマンパワーの投入が必要となる可能性があると認識しております。
 こうした中におきましても、内陸部におきまして、保健医療・福祉の確保、産業や観光振興など、県民の暮らしや仕事を守る取り組みをたゆまず進めていく必要がある、こういう基本認識をいたしております。このため、引き続き業務の見直しを進めますとともに、他の都道府県等からの応援職員の受け入れ等を積極的に行いまして、適切な事務執行体制の確保に努めていきたいと考えております。
〇11番(久保孝喜君) 今のマンパワーの問題とあわせて、事業の実際の動きがどうなっていくかというのが大変注目もされているところですが、こうした凍結事業などの回復にかかわって、どういう方針を現在お持ちなのか、その中身をお示しいただきたいと思います。
〇総務部長(加藤主税君) 災害対応のための休止事業等の選定でございますが、震災前に企画していた事業をそのまま行うべきか、取りやめが適当かどうかということに基づき判断したものでございまして、これによりまして、県として復旧、復興に向けた作業に傾注できるようにする、そういう目的で行ったものでございます。
 そうした中におきましても、内陸部における必要性、緊急性の高い事業につきましては取りやめとせず、滞りなく執行する、そういう方針といたしたところでございます。
 こうした方針の中で、やむを得ず凍結事業というか―私どものほうでは執行保留と整理しておりますが―執行保留としたものにつきましては、これは方針というよりも区々ということになりますが、関係機関との協議を行いつつ、事業の内容の見直し、あるいは執行体制等の状況をきちんと確認しました上で、再度、執行の可否につきまして判断を行いまして、必要な事業につきましては実施に移している、こういう形でやらせていただいております。
〇11番(久保孝喜君) 今後の内陸部の地域経済の問題が、被災地のほうに目が向いている段階の中で、非常に厳しい雇用環境の問題と相まって、これから先、大きな課題になってくるだろうと私は思っております。県の事務事業を実施する施策などもこれら内陸の地域経済とは非常に深くかかわっているわけですので、的確な判断を求めてまいりたいと思っております。
 それでは、大きな2番目、自然再生エネルギーの関係についてお尋ねいたします。
 まず最初に、原発災害に対する基本認識を知事にお伺いいたすわけですが、きのうのやりとりの中でも、知事の答弁でなかなか理解しにくい点も多々私自身はあったわけなんですが、国策によって進められてきた原子力発電所、原子力エネルギーというのが、今回の震災、原発事故によって、どういう形でこれから私たちがエネルギーというものを考えていくかということを突きつけた大きな出来事だったわけですよね。そういう点で、きのうは朝日新聞のアンケートの話が出ておりましたけれども、私もそれを用意してお聞きしようと思っていました。重複は避けますけれども、達増知事がこれまで、震災前にお感じになっていた見方と震災後の判断の違いというのがもしあるのであればその点もお答えいただけばと思うんですが、基本的な認識はいかがでしょうか。
〇知事(達増拓也君) まず冒頭、私個人、政治家個人として3月11日前と以降で原子力関係について何か違いがあるとすれば、科学的、技術的な根拠に基づいて慎重に考えて検討していかなければならないとさらに一層思うようになったところが違いだと思っております。
 さて、県としての考え方でありますけれども、まず、我が国はエネルギーの大部分を海外に依存しており、これまでエネルギーの安定供給の確保や環境への適合、経済効率性という観点からエネルギー政策を進めてきました。国では昨年6月、このような観点から、発電電力量に占める原子力の比率を平成19年度の26%を平成42年までに50%へ拡大することなどを柱とするエネルギー基本計画を策定しました。
 しかしながら、今回の福島第一原発の事故により原子力の安全性に対する国民の信頼性が大きく揺らぎ、経済効率性の確保に比重を置いて進められてきた原子力政策とエネルギー政策全体の見直しを余儀なくされているところであります。見直しの方向としては、省エネルギーの推進や、これまで環境への適合やエネルギー自給という面ではすぐれるものの、安定供給やコスト面から課題が大きかった再生可能エネルギーの利用拡大が示されています。
 本県は、これまで地球環境に優しく、かつ安全な再生可能エネルギーの導入に積極的に取り組んできたところであり、国のエネルギー政策の見直し方向は、県の復興基本計画案に掲げる再生可能エネルギー導入促進の考え方と合致するものと考えています。
 今後、固定価格買い取り制度の創設や再生可能エネルギー導入促進特区の実現など、国の具体的な施策を通じて、太陽光や風力発電など、本県における再生可能エネルギーの導入に努めてまいります。
〇11番(久保孝喜君) 今回の原発事故の問題は東日本全体の復興計画にも大きな阻害要件になっていると言われておりますし、先ほど申し上げたとおり、エネルギー政策全体の見直しの方向が打ち出されている、しかも脱原発というのが何やら政治問題化しそうであるというような現状にもございます。そういう環境の中だからこそ、例えば知事自身が好むと好まざるとにかかわらず、新聞社等のアンケートなどにも、結果、県民がどういうふうにそのメッセージを受けとめるのかという観点で、知事自身の判断はある種、胸に秘めつつも、どういうメッセージを送ればいいのかという点でこうしたマスコミ対応なども私はあっていいんだろうというふうに思うんです。
 この一覧表を見ると、例えば原発立地県以外でいうと東京都と岩手県の知事だけが無回答となっていますから、これは一体どういうことなのとだれにも聞かれるわけです。そういう点で、無回答とするか、あるいはマル・バツにするかは別にしても、どういう形であれ、きちんとその際にメッセージを出すということが私は必要なのではないかと思うんですが、大変恐縮ですが、その点でいかがでしょうか。
〇知事(達増拓也君) その手のアンケートは、知事アンケートと言いつつ政治家個人としての意見を求めているのか、あるいはその県の公式見解を求めているのかわかりにくい、判然としないことが多く、読む側として、それが政治家個人の意見なのか県の公式見解なのか誤解を招くおそれも多々あると思っているため、政治家個人の考え方というのは、これはまさに自由に、言いたいとき言いたい場所で言いたいような形で言えばよく、また、誤解を招くことをおそれて言わないことを選択するというのも政治家個人のまさに政治活動でありますのでそれは自由と考えているんですが、県の公式見解と思われる可能性があることについては、その都度、県として、その時点での組織的な考え方を確認しながら対応するようにしておりまして、無回答とか、あるいはどちらでもないと答えたときにも、県としてはこういうふうに考えているという、マルでもバツでもない、右か左かで割り切れないような県の考え方を書いて提出していることが多いんですけれども、それは報道されないことが多いというのが実態でありますので、県民がその辺をさらに誤解しないように、県の持っているホームページでありますとか、県のそういう情報伝達手段を通じて、きちんと県の公式見解を県民に誤解されないように伝えていく工夫を今後していきたいと思います。
〇11番(久保孝喜君) 今の答弁を聞いても、知事が再三これまで議会の中でも、政治家たる個人と、それから知事たる公職とを切り分けてさまざまお考えになって判断をされているということは十分承知いたしておりますが、しかし県民にとってはその二面性をきっちり分けてとらえているわけではなくて、一人の達増拓也知事として見ているということも判断の中にぜひ私は入れてほしいと思っているところでございます。
 続いて、この間連で、放射性物質の拡散に対する対応についてお伺いいたします。
 これは発災以来、原発事故がかなり進んだ事態の中で非常に県民の心配の種でもあるわけなんですが、この拡散に対する県の放射線被害という観点での対応方針、あるいはその測定も含めた監視体制という問題も含めて、県全体の方針というのは、いつ、どこで、どのように決められたものなのかということをお尋ねしたいと思います。その際の責任部署はどこになったのかということもあわせてお示しいただきたいと思います。
〇総務部長(加藤主税君) 放射性物質の拡散に対する県の対応ということでございます。
 県では、原発事故の発生以来、関係部局におきまして必要な測定、調査を行い、国が示す基準に照らしながら、科学的、技術的根拠に依拠するよう意を配りつつ、それぞれの事案に応じた適切な対応に努めてきたところでございます。その際、内容いかんによりまして、庁内における適時の報告、適正な意思決定を行ってきたものでございます。
 今回の事案は極めて特異な推移をたどっておりまして、現在までのところ県民の健康に影響を与えるレベルではないと認識しておりますものの、影響が多方面に及ぶおそれを排除し切れない面がございます。このため、全庁的な連携、調整を強めることといたしまして、危機に至らない前段階の事象についてということでございますが、全庁的に整合性のとれた対応を図るべく、危機管理一般を所管する総務部を中心にいたしまして、測定等を通じまして一定の技術的な知見を有しております環境生活部の支援を得まして、庁内の情報共有や統一的な対応に向けて取り組んでいるところでございます。こうした全庁的な調整を踏まえまして、それぞれの部署におきまして所管の業務につきまして適切な対応に努めていただいているということでございます。
〇11番(久保孝喜君) 今の答弁では、いつ、どの段階でというのがちょっと抜けていたように思うんですが、時系列でお答えできるのであれば、何月何日時点でこういうふうにしましたというのがもしあればお示しいただきたいと思います。
〇総務部長(加藤主税君) 対応方針ということでございますが、さまざまな事態、推移をたどっておりますし、いろいろな形で報道等も多々されておりますが、いろいろな事象があったということでございまして、3月以来、その際さまざまな場面場面におきまして適切な対応方針を決定してきたということでございます。
 全庁的な連絡調整につきましても適宜行っておりましたが、そういった定式化したものといたしましては、6月22日に総務部長―私でございますが―、私をトップというかヘッドといたしまして、関係部局長で構成いたします放射能影響事案の対応本部というものをつくりまして、その中で調整等を行っているという段階でございます。
〇11番(久保孝喜君) 議会の中でのさまざまな放射線問題のやりとりの中で、これまで県当局がペーパーで出してきた対応指針、対応状況の中に、例えば放射性物質の測定に関して、今後の対応は県全体の取り組み明確化後、検討するというような文言があるんですね。これは5月17日の段階なんです。発災後2カ月以上たって、なおこの測定環境をどうしていくのかということが県の段階でまだ明確になっていないということを、はしなくもこれは示しているわけです。しかし、連日の報道で、県民も含めて疑心暗鬼、さまざまな不安を感じているというのはそのとおり。今も連日そうした報道があるわけですので、県とすれば、法的な枠組みや、あるいは要請されている事項というのはそれぞれ国との関係であるんだろうと思うんですが、今、市町村の段階では、そうした声にこたえて、やるべきこと、あるいはやれることをやろうといって自主的な測定をしたりということが今どんどん広がっているわけです。だからこそ国は、先般、きのうの新聞でしたか、今度の2次補正でモニタリングポストを全国250カ所ふやすとか、あるいはその情報を統合するシステムをつくるというふうに変わってきておるわけです。しかし、この方針とても実際に稼働するのは夏以降の話になっていきますので、そうすると、その間をどうしていくのかという方針も一方では必要になってくる、こういうことだろうと思うんです。
 なおかつ6月末の段階で、これまた、ややショッキングな話、別にあおるわけでも何でもないんですが、事故発生から2カ月間の外部被曝量というのを日本原子力研究開発機構という機関が新聞発表、公表いたしました。新聞等にも載っているこの地図ですけれども、これによれば、私もホームページで見ましたけれども、東日本全域にわたって青い網がかかっている。つまり一定の線量が降下しているということが―まあ、これは予測ですけれども、これの知見を超えるような資料を何も持ち合わせていないのでこれを信ずるしかないというところもあるんですけれども、そうすると、現実に放射性物質が降下している、被曝している可能性が高いという前提の中で県民の安全をどう守るかというところに行政が目を向けるのは当然のことなわけです。
 そのための測定体制をどうつくっていくか。そういう点でこれまでもいろいろ指摘してまいりましたが、現実に、例えば私の調査の中で、御回答をいただいた資料の中にも非常に奇妙な回答も幾つかあるんですね。それは、例えば今、モニタリングポストを文部科学省の委託でやっていると。しかし、いわゆる生活環境での具体的な線量の測定というのは、なかなか全域ではやり切れていないと。それはマンパワーの問題もあるでしょうし、設備や機器の問題もあるでしょう。ところが、それらを補完して可能であろうと思われる役所も実はあるんですね。例えば消防署には、サーベイメータがそれぞれ2台ぐらいずつ配置されています。県は、県の保有する機器で測定ができない分野とかできないエリアだとか、あるいはそういう簡易的な測定でも変化量だけはきちんととれるわけですから、その変化量をいち早く察知するために、そういう消防署などの機器も活用するだとかということができないのかという私の問いに、こういう回答が来ました。
 一般的な大気中の放射線量を測定する仕様となっていないと。仕様となっていない。ところがその附属の資料では、ちゃんと空間線量をはかる器械を持っていますというのもまた別にくっついてきていたんですが、このやりとりの性格はよくわかりませんけれども、少なくとも、そのさまざま保有をしている機関の協力をいただいて、これだったらできるよねと、ここぐらいだったらこういう形で協力してやれるよねということを統合して指示を出す、方針をつくるということができていなかったのかということを非常に私は疑問に思うわけなんですが、その点はいかがだったんでしょうか。
〇総務部長(加藤主税君) そういった統合的な体制についてでございますが、まだそこまで見出すに至っていないというのが率直なところでございます。現在の測定体制、測定がどこまで可能かどうか、そういったところをそれぞれの測定能力を有する機関等を含めましてどのような体制が可能なのか、そういう調査、調整等、そういった視点も持ち合わせておりまして、ただいま検討中ということでございまして、そういう中で、どういったものをどういう優先順位でやっていくのか、そういう整理を進めている最中ということでございます。
〇11番(久保孝喜君) いや、いかにも遅いなと私は思います。本当に私は、これはある意味びっくりしたんですが、福島の原発事故で、例の水素爆発と言われる爆発事故があって、その直後から実は自主的に、これは自主的にです。本当に自主的に、消防署が定時観測を始めているという例が実はあるわけですね。3月15日の段階から、毎日、2回にわたって、定時で、同じ場所で、サーベイメータを使って空間線量をはかっているという例があるわけですよ。そういう個々の努力だとか個々のそういう取り組みを統合していくのが、従来から言われていた県の役割だったんじゃないでしょうか。そう考えると、今の時点で、なお統合する方針を持ち合わせないということは、実に遅いと私は思いますし、怠慢とは言いませんけれども、これは早急にやるべきだと思います。
 それから、市町村段階でも、学校の敷地だとか、子供たちのいるところで行っているという例もありますので、そうすると、そういう情報もきちんと統合できるような環境をつくるとかということだって、これから先、必要なんだろうと私は思います。
 知事がいつか答弁なされたように、風評被害などというようなことを未然に防止するためには測定環境をきちんととって、それを公表することで安心感を発信できるということはそのとおりだと思うので、そういう思いにこたえるような仕掛けをぜひ早急につくっていただきたいと思っております。
 それから、一つだけ、国の2次補正で、先ほど申し上げたモニタリングポスト250カ所増設という話がありますが、これは、例えば岩手の場合はどうなるのかというような情報はあるんでしょうか。その点、確認の意味でお尋ねをしたいと思います。
〇環境生活部長(工藤孝男君) 県におきましては、独自にモニタリングポスト3基、そしてサーベイメータ8基、それと放射性物質の種類、濃度を調べるためのゲルマニウム半導体検出器1基を既に発注済みでございますが、国の文部科学省の2次補正予算におきましてモニタリングポストが250、さらには可動式のモニタリングポストも予算計上されていると承知しておりまして、それについてもぜひ県のほうにも配備してほしいということで、文部科学省のほうにはお願いしているところでございまして、検討するという答えをいただいているところでございます。
〇11番(久保孝喜君) 放射線測定に関しては単なる空間線量だけではなくて、水質―水道水だとかあるいは土壌だとかということが非常に注目をされているわけですが、この土壌の問題で言うと、農林水産省が8月中に、土壌に関する放射能の汚染度マップというのをつくるということが報道されておりました。当然、岩手の土壌も検査になるんだろうなと新聞報道を見ていたら、実は岩手県がこれから外れているということなんですよね。福島県、宮城県、栃木県、群馬県、茨城県、千葉県。福島原発から盛岡が大体250キロぐらいの距離があると。同じ距離に千葉県があるというふうに、同心円ではそうなるわけですので、当然、現在の放射能拡散がやや南側にシフトしているということはそのとおりでしょうけれども、しかし、先ほど原子力研究開発機構が示したあの拡散マップによれば、岩手県全域も当然その範疇に入っているということからしても、こうした土壌の調査を国にきちんと依頼するというようなことも、多分話はあったんじゃないかなと私は思うんですけれども、これは全く岩手県にはどうなのかと、やるのかやらないのかみたいなことはなかったんでしょうか。
〇農林水産部長(東大野潤一君) 本県については、検査については農林水産省のほうから要請はございません。
〇11番(久保孝喜君) ないならないで結構なんですが、むしろ担当部局としては、こういった事態の中でぜひ国においても調べてほしいと、国の責任において調べてほしいということは、ぜひとも私は言うべきだろうと思いますので、その点お話をしておきたいと思います。
 それでは、時間がなくなってまいりましたので、次のエネルギー政策のほうに入ってまいりたいと思います。
 再生可能エネルギーの問題については、きのうもやりとりがございました。知事は、政府の復興構想会議に提案をした例の九つの特区提案の中の一番目にこの再生可能エネルギーの問題を取り上げておりまして、私も実にこれは時宜を得た提案だろうなと共感をいたしているところなんですけれども、この提案が県の復興計画案の中での大きな柱には、残念ながら今の段階ではなっていないと思っておりまして、成案の段階でこうした再生可能エネルギーの問題を大きな柱建てにしていくという方向性が私は望ましいのではないかと思っているんですが、その点で知事の認識はいかがなんでしょうか。
〇知事(達増拓也君) 再生可能エネルギーの位置づけについては、復興に向けた三つの原則、安全の確保、暮らしの再建、なりわいの再生のそれぞれを図る上で重要になるものであります。こうした考えに基づいて、長期的な視点に立って三陸地域の創造を目指す三陸創造プロジェクトの中に、環境やまちづくり、産業などの分野を超えて、太陽光発電や風力発電など、県内に豊富にある再生可能エネルギーの導入促進等を進める環境共生・自然エネルギー分野の主な取り組みというものを盛り込んだところであります。
 さらに、プロジェクトの具体化に向けて、国の復興構想会議に対して、岩手復興特区の一つとして、再生可能エネルギーを先導的に導入していく上での課題と対応策をまとめた再生可能エネルギー導入促進特区を提案したわけであります。その中に、被災地域の再生可能エネルギー資源を活用した発電施設や地域供給体制の整備、バイオマス資源等を地域で活用するシステムの構築などを盛り込んでおります。
 今後、産業としての再生可能エネルギー活用の効果といった観点も含めて、県議会の御意見やパブリックコメントなども踏まえてさらに検討を行って、復興基本計画の最終案に反映させていきたいと考えております。
〇11番(久保孝喜君) 再生可能エネルギーの導入問題では、これまでも議会の中の議連などを通じて私も勉強させていただいてまいりました。岩手が非常に再生可能エネルギーのポテンシャルの高い県であるという内外の評価もあるということもお聞きをしております。そういう点で、今、注目もされているトレンドなわけですけれども、しかし、岩手の独自性ということから言っても、この再生可能エネルギーを復興の際の大きな柱にしていっていいし、そういう動きをぜひともつくられればいいなと思っている一人でもございます。
 そこで、特区にかかわってもう少し聞きたいんですが、この九つの特区は再生エネルギーと若干離れる部分もありますが、復興計画案との関係で言うと、これから先どういう整理をされようと。つまり、例えば国に提案をしていますと。国の中で一定程度の枠組み、特区についても記述はされましたけれども、具体的にそれをどうするかというのはこれから先の話になりますよね。そうすると、その特区が認められていくという過程の中で、復興計画案の中に差し込んでいくという形をイメージすればいいのか、どういう整理を私どもがすればいいのかということについて、少し御説明をいただきたいと思うんですが。
〇知事(達増拓也君) 特区の構想は、県の復興基本計画が先にあり、そこの中に盛り込まれたものを再編成、整理して提出している格好になっておりますので、内容的には共通のものになっております。したがいまして、特区として制度的に認められたものは、認められ次第、計画の実行として、どんどん事業化して実行できるような仕組みになっております。
〇11番(久保孝喜君) 国においての特区にかかわる復興構想会議の提言の中にもきちんと書かれてありますし、県が提案した趣旨なども書き込まれているという点では、知事のおっしゃるように、一定の評価をしたいなと私も思うんですが、そこで、この復興構想会議と前後して、例の自然エネルギー協議会に対して県が参加するということが表明されておりますけれども、この自然エネルギー協議会への期待というものは一体どこにあるのかということをお話しいただければと思います。
〇環境生活部長(工藤孝男君) 自然エネルギー協議会への期待ということでございます。
 同協議会につきましては、自然エネルギーの普及、拡大を目的といたしまして、自然エネルギー導入のための政策や制度のあり方等について協議を行い、国などへ提言を行うとともに、先進的な取り組み事例でありますとか、課題などの情報交換を行うことを目的といたしまして、今月の13日に設立総会を開催する予定となってございます。
 太陽光や風力、地熱などを活用いたしました大規模発電事業を行う場合には、発電コストの問題でありますとか、電力事業者の送電線への接続への制約などさまざまな課題がございます。この協議会におきましては、こういった必要な政策、制度の議論といたしまして、国などへ働きかけるということにしてございます。
 再生可能エネルギーの利活用に向けた環境整備が、同協議会によって進むということを期待しております。
〇11番(久保孝喜君) 再生可能エネルギーの問題は先ほど知事からお話があったように、産業政策としての側面もあるいは環境政策としての側面も、さらには雇用の問題にも直結をしていくという、非常にすそ野の広いことなわけですよね。そこで、この自然エネルギー協議会が標榜する例えばメガソーラーの問題だとか、これまでの方針にもあったわけですけれども、さまざまな自然再生エネルギーをこれから県がどういうふうに強化をしていくのかという点でお尋ねをしたいと思うんですが、その際の切り口として、エネルギーの自給率ということがあるんだろうと思います。
 現在、岩手県のエネルギー自給率は大体25%だと。しかも、そのうちの7割が自然エネルギーであるという、そういう強みというか、現状があるわけですよね。先ほど言ったように、昨年の10月、議会の中の勉強会で、自然エネルギー白書2010というものをもとにして勉強会をやった機会があったんですが、日本で初めて出された自然エネルギー白書の中でも、岩手が持っているポテンシャルの高さを非常に高く評価をしているわけです。
 そこで、けさの新聞に県幹部の発言として、例えば原発のあり方を含め、東北のエネルギーはどうあるべきかを県境を越えて議論する場が必要ではないかというふうにコメントが出されております。どなたかが発言されたんでしょうけれども、これはある種、共通認識になってくるのではないかなと思うんですが、この点に関して、エネルギー自給を含めた今後の政策展開をどのように考えるかをお示しいただきたいと思います。
〇環境生活部長(工藤孝男君) 今後のエネルギー自給を含めた政策の展開についてでございます。
 本県は、これまで新エネルギービジョンに基づきまして、地球環境に優しく、かつ、安全な再生可能エネルギーの導入に積極的に取り組んできたところでございます。しかしながら、国等の助成制度や余剰電力買取制度により、近年普及しております住宅用太陽光発電を除きますと、小水力あるいは風力、地熱発電などにつきましては、コスト面あるいは立地条件の制約などから、なかなか導入が進んでいないというのも一方では現状でございます。
 今回の東日本大震災津波によりまして、被災市町村を中心として大規模かつ長期間にわたる停電がもたらされました。この結果、県民生活に多大な影響が及んだところでございまして、先ほどお話がありましたとおり、今後、本県に豊富に賦存する自然エネルギーを最大限に活用して、エネルギーの自給率の一層の向上を図るということが必要であると再認識しているところでございます。また、非常時におきまして、地域が一定のエネルギーを賄えるような自立分散型の仕組みということの必要性についても認識したところでございます。
 これらの状況を踏まえまして、復興基本計画に再生可能エネルギー導入促進の考え方を盛り込み、固定価格買取制度の早期成立でありますとか、再生可能エネルギー導入促進特区の実現など、必要な制度の創設、規制緩和などを国に対して要望するとともに、今後、全県を視野に入れて導入促進に向けた具体的な取り組みについても検討を進めたいと考えてございます。
 また、他県との連携についてでございますが、自然エネルギー協議会、各県が入ってございますが、この中で北海道・東北ブロックにつきましては、岩手県のほかに北海道、秋田県、山形県、福島県も参加してございますので、こういった機会を通じて意見交換をしながら、連携できるところは連携しながら進めてまいりたいと考えております。
〇11番(久保孝喜君) 北東北3県の中でも、わけても青森県とか秋田県は、自然再生エネルギーの自給率の非常に高いところですし、そういう点では学び合える点も多々あるんだろうと私は思っております。
 今、お話の中にありました、結局、県の体系、自然再生エネルギーの政策体系を考えていくときに、今の新エネルギービジョンの改定、見直しというのが、どうしてもこの環境の変化の中で必要性として出てくるんだろうと思いますが、最後にその点についてはどのようにお考えなんでしょうか。
 あわせて、この再生エネルギーの問題は、先ほど来申し上げているとおり、環境政策でもあり産業政策でもあり、それから政策的観点での選択ということもありますけれども、もう一つは、まちづくりや村づくりを含めた自立的な自治をつくっていくための一つの大きなツールにもなっていくということが言われております。そういう意味では、分権型社会を形成していく際の非常に大きな理念、柱になっていくんだろうと私は思っていますので、その点で復興の理念とも大いに重なってくると私は思っていまして、そうしたことを含めて、県の政策体系である新エネルギービジョンの見直しということは、そういう意味では非常に今こそやらなくてはいけないというふうに思うんですが、そこを聞いて終わりにしたいと思います。
〇環境生活部長(工藤孝男君) 新エネルギービジョンの改定の件でございます。
 平成22年度末で失効してございまして、今年度、本県の地球温暖化防止に向けました実行計画を策定することにしておりまして、その中に一元化いたしまして取り込んだ形で新エネルギービジョンを策定するということで考えてございます。もちろん、現在の置かれた状況あるいは国の動向、こういったものを踏まえながら、より再生可能エネルギーの利活用を促進するという観点から、検討を進めたいと考えているものでございます。
 また、被災地の再生、復興に向けたまちづくりという観点についてでございますが、コミュニティ単位に、例えば一つの災害時においてエネルギーの自給ができるような仕組みづくり、スマートグリッドとかいろいろ新しい技術があるそうでございますが、そういったものを、これはまだ構想の段階でございますが、例えばメガソーラーでありますとか風力、そういったものと地域をつなげながら一つのエネルギーの自給が可能になるような、一定のエネルギーの自給が可能になるような、そういった防災まちづくり的な考え方、そういったものも取り入れながら、今後、幅広く御意見をいただきながら検討を進めたいと考えております。
〇11番(久保孝喜君) いろいろと御答弁ありがとうございました。震災の復旧、復興に向けた大きな目標の中で、ぜひとも謙虚な県政運営ということに意を用いていただいて今後とも奮闘していただきますようお願いして、私の質問を終わります。(拍手)
〇副議長(小野寺研一君) この際、暫時休憩をいたします。
   午後3時26分 休 憩
出席議員(46名)
1  番 吉 田 敬 子 君
2  番 工 藤 勝 博 君
3  番 高 橋 但 馬 君
4  番 小 野   共 君
5  番 岩 渕   誠 君
6  番 郷右近   浩 君
7  番 高 橋   元 君
8  番 喜 多 正 敏 君
9  番 岩 崎 友 一 君
10  番 木 村 幸 弘 君
11  番 久 保 孝 喜 君
12  番 小 西 和 子 君
14  番 高 橋 博 之 君
15  番 及 川 あつし 君
16  番 亀卦川 富 夫 君
17  番 高 橋 昌 造 君
18  番 中 平   均 君
19  番 五日市   王 君
20  番 関 根 敏 伸 君
21  番 三 浦 陽 子 君
22  番 小田島 峰 雄 君
23  番 熊 谷   泉 君
24  番 嵯 峨 壱 朗 君
25  番 飯 澤   匡 君
26  番 大 宮 惇 幸 君
27  番 千 葉 康一郎 君
28  番 新居田 弘 文 君
29  番 工 藤 大 輔 君
30  番 佐々木 順 一 君
31  番 佐々木   博 君
32  番 田 村   誠 君
33  番 工 藤 勝 子 君
34  番 平 沼   健 君
35  番 樋 下 正 信 君
36  番 柳 村 岩 見 君
37  番 阿 部 富 雄 君
38  番 斉 藤   信 君
39  番 及 川 幸 子 君
40  番 佐々木 一 榮 君
41  番 伊 藤 勢 至 君
42  番 渡 辺 幸 貫 君
43  番 吉 田 洋 治 君
44  番 小野寺 研 一 君
46  番 佐々木 大 和 君
47  番 菊 池   勲 君
48  番 小野寺   好 君
欠席議員(1名)
45  番 千 葉   伝 君
説明のため出席した者
休憩前に同じ
職務のため議場に出席した事務局職員
休憩前に同じ
午後3時48分 再開
〇副議長(小野寺研一君) 休憩前に引き続き会議を開きます。
 日程第1、一般質問を継続いたします。高橋元君。
   〔7番高橋元君登壇〕(拍手)

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