平成23年8月臨時会 第24回岩手県議会臨時会 会議録

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〇10番(木村幸弘君) 社民党の木村幸弘です。
 議案第1号岩手県一般会計補正予算(第5号)について質問いたします。
 1点目に、7月29日設置された原発放射線影響対策本部について伺います。
 6月22日、原発放射線影響対応本部が設置されていましたが、今回、対策本部へと改組した理由は何か伺います。
 対応本部設置から1カ月余りであったが、対応本部では、この間、具体的な取り組みとして何をやってきたのか伺います。また、改組の必要性について、どのような論議と課題があったのか伺います。
 知事は、今回の改組に当たり、みずから本部長に就任したわけですが、どのような認識のもとに、今後対策に当たっていくのか伺います。
 そもそも、知事は、今回の原発事故発生当初において、放射線被害の拡大についてどのような認識であったか伺います。
 2点目として、消費者対策と健康被害、内部被曝問題への対応について伺います。
 7月14日、福島県浅川町から出荷された牛肉が本県に流通したとの情報について、本県の初動対応について、翌15日報道されるまで、時系列でその対応がどうであったのか伺います。
 その後、16日には、汚染牛の一部、59.4キロが中部保健所管内で流通し、既に消費されたことが判明しました。以来、本県において相次いで流通、消費された実態について具体的に伺います。
 県では、こうした事態に対して、流通、消費に伴う特定公表をなぜしなかったのか伺います。
 内部被曝に関する件について、関係する知見やアドバイスを求めながら対応について検討するとしていますが、具体的にどの機関、部署で、どのような検討を行うのか伺います。
 食品衛生法の観点から、国によって定めた原子力安全委員会の指標値がいわゆる暫定規制値とされていますが、この暫定の扱いそのものに依拠した判断がひとり歩きし安全の根拠となっていることについて、どう認識しているのか伺います。
 3点目に、東京電力の賠償責任に対する本県の対応、対策について伺います。
 対象とすべき想定される被害実態をどのように把握し、その範囲をどういう点まで踏み込む考えなのかお伺いをいたします。
 4点目に、今後の放射線測定対策について伺います。
 放射線測定対象として、今後の計画では、農地の土壌汚染に対する調査方針が示されていませんが、具体的な対策について伺います。
 また、工業製品等の測定体制はどうなっているでしょうか。県工業技術センター測定体制は十分と言えるかどうかも、あわせて伺います。
 5点目に、環境放射能水準調査費について伺います。
 啓発セミナーの具体的開催内容及び啓発資料作成についての考え方を伺います。その際、その内容については、よもや、やらせのような偏った情報が発信されないと信じていますが、公正かつ適切な知見と、現実に発生している県内実態を包み隠さず示す必要があると思いますが、お伺いをいたします。
 以上、質問いたします。
〇知事(達増拓也君) 木村幸弘議員の御質問にお答え申し上げます。
 まず、原発放射線影響対策本部へ改組した理由についてでありますが、これまでも、総務部長をトップとする原発放射線影響対応本部において、全庁的な情報共有や対応方針の調整等を行い、それぞれの事案に応じて適切に対応してまいりました。先般、県内でも、牛肉から基準値を超える放射性物質が検出される事案が確認されたことを踏まえ、より一層、県民の安全・安心の確保や県産食材等の安全確保を図るため、知事を本部長とする原発放射線影響対策本部を設置したものであります。この組織体制の強化を通じて、県として、全力を挙げて、県民の安全・安心の確保と風評被害の防止に取り組んでまいります。
 次に、対応本部の具体的取り組みについてでありますが、対応本部においては、県における測定体制を把握した上で、優先すべき測定調査の対象や測定結果の公表のあり方等について、議論、調整を重ねてきたところであります。こうした取り組みは、対策本部を通じて、今後の対策の実施に生かされてまいります。
 また、必要な対策についても検討してまいりましたが、これは、対策本部の議論も経て今回の補正予算に反映されております。
 また、対策本部への改組の必要性についてでありますが、先ほど挙げました牛肉の問題など具体的な事案が確認され、県民生活への影響が懸念されますことから、これまで以上にトップと直結し、機動的な対応が図られる体制が必要と考え、知事を本部長とする対策本部の設置を指示したものであります。
 次に、本部長としての認識についてでありますが、県民の安全・安心の確保や風評被害の防止を図るため、県として全力を挙げて、放射線影響にかかわる測定及び迅速、適切な公表を行い、本県への影響等を把握し、的確な対策を速やかに講じる必要があると認識をしております。
 次に、事故発生当初における被害の拡大の認識についてでありますが、原発事故発生当初より、県民の安全・安心にかかわる極めて重大かつ異例な事態であることを受けとめ、被害が広がるおそれを懸念しつつ、多大な関心を持って事態の推移を注視してきたところであります。事故直後に、政府が広範囲に及ぶ放射性物質の拡散について、十分国民に情報を提供しなかったことにより被害の広がりを招いたという実態があり、こうした結果については残念に思っております。
 次に、賠償対象とすべき被害実態の把握とその範囲についてでありますが、今回の事案においては、県民生活のさまざまな分野で影響が生じておりますが、基本的に、事故との因果関係が成り立つものについては、幅広く原因者である東京電力が賠償責任を負うべきであります。また、国は、こうした東京電力の賠償責任が履行されるよう、必要な措置を講じる責任があると考えております。
 被害実態の把握については、関係者の声に耳を傾けつつ、市町村や農業団体など対策に当たる関係機関、団体の意見を伺いながら、きめ細かな把握に努めてまいりたいと思います。既に、国に対しては、風評被害を含め責任を持って賠償等が行われるよう、必要な措置を講じることを求めております。引き続き、こうした働きかけを強めていくとともに、市町村や関係機関、団体と連携して因果関係の説明に努め、十分な賠償等が得られるよう取り組んでまいります。
 その他のお尋ねにつきましては、関係部長から答弁させますので御了承をお願いします。
〇環境生活部長(工藤孝男君) まず、福島県浅川町から出荷されました牛の調査に関する初動対応についてでございますが、本件につきましては、7月14日に、福島県が高濃度の放射性セシウムを含む稲わらを牛に与えていたことを公表いたしました。同日正午、厚生労働省が仙台市に対し当該牛の調査を依頼し、同日夕方、仙台市が花巻市内に流通したことについて公表したものでございます。しかしながら、仙台市から本県への通報がファクシミリで、かつ、翌15日の0時47分となりましたことから、本県がこの事案について承知し調査を開始しましたのは、仙台市が公表した翌日の8時半以降となり、結果として、調査結果の公表が15日の午後4時30分ごろとなったものでございます。
 なお、仙台市からは、本県への早期情報提供について、認識はしていたものの、取材が殺到したことなどから、提供がおくれたということを伺っているものでございます。
 次に、本県において流通し消費された牛肉の放射性セシウムに汚染されたおそれのある牛肉の実態についてでございますが、昨日現在で本県に流通している旨調査依頼があったものは21件でございます。その状況につきましても、すべて確認がとれているところでございます。
 内訳につきましては、まず、販売、消費済みは15件でございます。そのうち、暫定規制値超過は2件、規制値以下は4件、消費されてしまったことなどにより検査ができなかったものは9件となっております。一方、全量保管が確認されたものは6件でありまして、そのうち暫定規制値超過が2件、規制値以下は4件となってございます。
 次に、流通、消費に伴う特定公表をしなかったことについてでございますが、今回流通調査の対象としている牛肉につきましては、仮に規制値を超える肉を販売していたといたしましても、当該施設には、規制値を超える牛肉であるかどうかについて知り得る状況にはなかったということであります。また、販売店名まで公表した場合、販売店へ及ぼす影響も懸念されるということ、さらには、規制値を超える牛肉を食べた場合の健康に及ぼす影響についてでございますが、例えば本県で発見されました牛肉の最大値でございますが、キログラム当たりセシウム694ベクレルとなってございます。これについては、1キログラム食べた場合の人体影響ということを算定いたしますと0.009ミリシーベルトとなりまして、これは一生分としての影響の数字で、預託線量率というふうな言い方をするわけですが、1キログラムの牛肉を食べた場合の、694ベクレルということなんですが、これは生涯に及ぼす影響が0.009ミリシーベルトということで、レントゲンが1回当たり大体0.05ミリシーベルトと言われておりますので、人体に及ぼす影響が極めて限定的であるということなどを総合的に勘案いたしまして、販売店名まで公表しなかったというものでございます。
 次に、暫定規制値に対する認識についてでございますが、国におきまして科学的根拠に基づいて設定されたものであると考えておりますが、一方で、規制値についてのわかりやすい説明が十分なされているとは言えない状況でありますことから、多くの国民が放射能について漠然とした不安を感じていると認識してございます。
 去る7月26日でございますが、国の諮問機関である食品安全委員会が、外部被曝と内部被曝を合わせた生涯の累積線量について、がんのリスクが高まるとされる100ミリシーベルトを超えないようにとの見解を取りまとめております。今後、国におきまして、必要に応じた規制値の見直しの検討を行うとともに、国民へのより一層の説明が必要であると認識しております。
 最後になりますが、環境放射能水準調査費についてでございます。
 原発事故の影響に関する情報につきましては、本来、国が説明責任を果たすべきものであると考えますが、国がさまざまなデータや暫定基準を示すものの、国民に対する説明が十分ではなく、また、多様な媒体を通じまして数多くの情報が飛び交っているということなどから、多くの県民が不安を感じていると認識しているところでございます。このため、県におきましては、放射能についての正確な知識と情報を提供することを目的といたしまして、県民向けのセミナーの開催でありますとか、啓発資料の作成、配布、さらには市町村職員、教職員向けの研修などを行うこととしております。セミナーでは、専門家をお招きいたしまして、放射線の影響などについて科学的知見に基づき、わかりやすくお話をしていただくこととしております。また、啓発資料につきましても、客観的な情報の提供という観点から作成したいと考えているものでございます。
〇保健福祉部長(小田島智弥君)内部被曝に係る検討に関してでありますが、食品の摂取による人体への影響に関する基準として、WHO等から実効線量、年間5ミリシーベルトが示されております。6月から7月にかけて、福島県で内部被曝がほかの地域に比べ高い可能性がある地域の住民を対象に行った県民健康管理調査事業の先行調査において、セシウムによる内部被曝については109例全員が1ミリシーベルト未満であり、相当に低いという調査結果が独立行政法人放射線医学総合研究所から報告されているところであります。こうしたことから、本県において、緊急的に内部被曝に関する調査、検査等が必要な段階にあるとは考えておりませんが、現在、福島県において先行調査に続き全県民調査が行われており、今後、その評価により、何らかの対応が必要とされる場合に備え、食品安全委員会、放射線医学総合研究所等の専門機関の情報を収集するなど、その必要性について検討してまいります。
〇農林水産部長(東大野潤一君) 農地土壌の放射性物質の測定についてでありますが、本県におきましては、消費者に安全・安心な県産農産物を提供するとの観点から、良質な堆肥等の投入などによる土づくりにも取り組んでまいりました。このような取り組みを継続していくためには、農地土壌の放射性物質の濃度分布を把握し、必要な対策を講じていくことも重要と考えております。このため、県といたしましては、県内農地の土壌の放射性物質の測定につきまして、効果的に実施するための態勢づくりに向けて検討を進めております。
〇商工労働観光部長(齋藤淳夫君) 工業製品等の測定体制についてでありますが、工業製品につきましては、岩手県工業技術センターにおいて、放射線取り扱いの有資格者を中心に放射線対策班を編成し、4月18日以降、輸出先の要請に対応して工業製品の放射線量測定を実施し、その数値を成績書として発行しております。
 8月8日現在で、中国、欧州向け製品など31件の検査を実施してきたところであり、今後も輸出先の対応などを注視しながら、必要があれば測定体制の強化も検討してまいりたいと考えております。
〇10番(木村幸弘君) まず最初に知事にお伺いいたしますが、この間、対策本部立ち上げに係る経過についてはわかりましたが、いわゆる対応本部設置以前ということになるんでしょうか、6月22日以前の県としての放射線測定や、さまざまな取り組み対応がどうであったかということがやはりはっきりと見えてこない。そういったさまざまな各部局での対応はあったわけでありますけれども、全県を挙げて組織的に取り組み等が進められた経過がどうであったのか。そして、その判断等は知事が行って、それぞれの取り組みをきちんと指示をされていたのでしょうか。
 それから、この間の本県の対応、対策が、対応本部を6月22日設置、そして今回の対策本部が設置されたこの時期を考えますと、全体として後手に回っていたというふうに思われてもいたし方ない。非常にモグラたたきのような形で、後手後手の対策になっていたのではないか、その点についての知事の所見を伺いたいと思います。
 それから、7月14日から福島県で発生した、流通した情報の問題でありますが、今お話を聞いてなるほどわかりました。ただ、新聞報道は、15日の朝刊に既に掲載をされていた。しかし、私はこの新聞報道を見て、地元振興センターに行って確認をしたところ、県からは何も情報が入っていない、しかも中部保健所長も新聞を見ていないために知らなかったと、そういうお話でございました。こうした対応が非常に問題だと思うんですけれども、改めて県庁内といいますか、危機管理の考え方が問われているのではないかと思いますけれども、再度、そうした部分で、その情報の伝達の仕組みも含めた対応について確認をしたいと思います。
 それから消費者対策、いわゆる消費者にも既に流通されたという問題ですが、けさも学校給食にも含まれていたという報道がされております。一連のそうした対応の中で、いわゆる販売店等を公表しなかったということでありますけれども、現在の県の対応は、確かに生産者やあるいは流通業者、そういったところまでは明確にその対応を進めているんですけれども、最後にそれを食べてしまっている消費者、この消費者に対する対策、対応が、きちんと出ていないのではないかと思えて仕方ないわけであります。そうした観点で、特定公表をする、しない─確かに販売店に対する風評被害も含めて問題があるとすれば、あえて公表しなくても、その販売店と協力、連携をした中で、どういう形で、その時点でどのような方々に、消費者に回っているのか、そういった徹底調査は行うべきであろうと思いますが、いかがでしょうか。
 それから、暫定規制値の問題です。今、御説明があったように、確かに国は科学的根拠に基づいて今回の暫定規制値を示していると思いますが、ただ、これはあくまでも厚生労働省も言っているように、当分の間の暫定規制値であります。現在、日本の輸入食品については、370ベクレルの規制値ということで、明らかにこの暫定規制値よりも厳しい規制値で輸入食品については対応している、そういった実態を考えますと、本当にこの緊急避難的な措置というものが安全という根拠が担保されているのかどうか、その点も含めて考えたときに、県はそうした規制値のあり方、ありよう、その認識をきちんと改めて考えた上の対応が必要ではないかと思いますが、お伺いをいたします。
 以上、再度質問いたします。
〇知事(達増拓也君) 原発放射線影響対応本部以前の対応についてでありますけれども、これは県幹部がさまざま情報交換、意見交換を行う場として平素から庁議や特定幹部の幹部会議があり、また、3月11日以降は災害対策本部の場もございましたので、放射能関係の報告や、また、それに関する情報交換、意見交換などはそうした場で行われ、必要な調整をそして対応を行っていたところであります。
〇環境生活部長(工藤孝男君) まず、危機管理の関係でございますが、先ほど申し上げましたとおり、実際、職員がファクスを見たのは翌日の朝ということでございまして、そこから始まったということでございますが、御指摘のあった情報共有あるいはふだんの危機管理に基づく職員の行動につきましては、さらに徹底を図ってまいりたいと考えてございます。
 また、既に流通、消費された牛肉についての消費者への対応ということでございますが、今回の牛肉の調査につきましては強制力を持った調査ではなく、任意調査という位置づけの中で進めておりまして、販売店のほうから名前の公表を絶対してくれるなとか、なかなか協力が得られない中で進めているという実態も実は一部ございます。
 御指摘のありました件につきましては、消費者の安全サイドに立つということは我々行政の基本でありますけれども、今後、御指摘も踏まえてどのような対応ができるのか、検討させていただきたいと考えてございます。
 最後に、暫定規制値の関係でございますが、我々も、国が定める、しかも各省庁ごとに定める暫定規制値が整合性がとれていないものがあるのではないかということについても常々感じております。
 例えば、飲料水についてはキログラム当たりセシウムが200ベクレルとなってございますが、プール等についてはさらに厳しい50ベクレルということで、非常にその辺、暫定規制値の定め方についてクエスチョンマークを感じることがございます。国が一定の知見に基づいて定めたものであろうということで、とりあえず我々とすればそれに従うしかないわけでございますが、国に対しましては、全体として整合性の図られた、かつ安全についても、一生100ミリベクレルという考え方も食品安全委員会から出されているようでございますので、そういったわかりやすい、国民が理解できるような形での基準の見直し、設定、そして説明といったものをこれまでも国に対しては求めているところでございます。
〇10番(木村幸弘君) 最後になりますが、先ほどの農地の土壌汚染の関係ですけれども、いずれ検討を進めているということでありますが、今回の収穫期前の米の検査等も含めてそうですが、最も基礎になる土壌がどういう実態になっているのかということは早急に調べていく必要があるだろうと思います。そういう意味では、いつ、どこで、だれが、何カ所、どういう形で測定をしていくのか、その方針を定めて明らかにしていただくように要望しておきたいと思います。
 そして、私どもでは、今回の福島原発の事故が発生した際、知事に対して3月30日、既にもう4カ月以上前に要請書を提出しております。第1に、本県の放射性物質拡散に対するモニタリングを強化してほしいということ、第2に、国の情報開示に対する適切な対応をしてほしい、第3に、放射性物質拡散の影響を想定した事態への備え、第4に、本県の姿勢として、汚染情報を適切に発信し、安全・安心の対応と風評被害の未然防止に万全を期すこと、以上の点について既に4カ月以上前に私どもは知事に要望を出しております。そうした点が早期に対処されていれば、今次の対応、対策について、あるいは検査機器の準備等の対応も含めて既にもうその体制が確立されて、さまざまな取り組みに対処できていたはずでもあります。そうしたことを考えると、国の責任が問われておりますが、しかし国は民主党政権であり、そういった国の政権同様に、知事としての危機管理能力も、あるいは指導力も発災当初からの対応から見れば非常に遅かったと思います。
〇議長(佐々木一榮君) 木村幸弘議員に申し上げます。発言時間が過ぎて……。
〇10番(木村幸弘君)(続) それを指摘して質問を終わります。
〇議長(佐々木一榮君) 次に、斉藤信君。

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