平成23年8月臨時会 第24回岩手県議会臨時会 会議録

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〇2番(工藤勝博君) 地域政党いわて工藤勝博です。議案第1号平成23年度岩手県一般会計補正予算(第5号)について質問いたします。
 まず最初に、原発放射線影響対策本部の設置についてお伺いいたします。
 3月11日の大震災により東京電力福島原子力発電所で未曾有の事故が発生いたしました。建屋が爆発し、はかり知れない放射能が拡散し、大惨事となったことは言うまでもありません。発災から既に5カ月になります。放射線被害の初めは、関東地方の野菜、茶葉でありました。いずれは東北地方でも危惧されておりましたが、それが現実となり、大変な事態となっております。
 その一つには、原発事故後に水田から収集された稲わらを給餌された牛肉から暫定基準値を超えるセシウムが検出されました。県では、牧草地で検出された時点でこの事態を予測できなかったでしょうか。遅ればせながらでも原発放射線影響対応本部から原発放射線影響対策本部に衣がえしたことは評価いたしますが、なぜもっと早くから事の重大さを認識し対応してこなかったのかお聞きいたします。
 次に、放射線影響対策特命チームが8月5日に設置されております。組織体制の中に外部の専門家等をアドバイザーとして委嘱するとあります。どの分野の専門家なのでしょうか。また、何名なのでしょうか。
 次に、放射線対策補助事業についてお伺いいたします。
 市町村等が行う学校等の放射線量の測定に要する経費及び土壌の除染に要する経費を2分の1補助するとあります。なぜ2分の1なのでしょうか。また、他県の実情はどうでしょうか。
 本県の学校、幼稚園、保育園、児童館は約1、800施設あります。すべての施設での測定の目途はいつまででしょうか。
 次に、測定場所等の基準はどのように考えられているのでしょうか。また、基準値を超えた場合にはどのような対策を講ずるのかお伺いいたします。既に取り組んでいる市町村もあります。どのような対応になるでしょうか。
 次に、県産牛肉安全安心確立緊急対策についてお伺いいたします。
 放射性セシウムによる牛肉の汚染問題から消費者の不安を払拭し、安全・安心な牛肉の供給体制を整備することは急務であります。出荷制限による風評被害も懸念されており、市況の低迷が生産者の経営を圧迫し、危機的な状況にもなっております。そこで、出荷制限の早期解除に向けたスケジュールを示すべきではないでしょうか。
 昨今、畜産農家は、BSE、口蹄疫、年末年始の豪雪被害、そして3月11日以降の停電、飼料の供給不安等たび重なる難題を抱えながらも経営を維持しております。さらに原発事故に伴う放射能汚染という不測の事態を乗り越えるには、県としてどのような指導、支援をなされるのかお伺いいたします。
 放射性セシウムに汚染された稲わらを牛が食べ、その肉が流通した問題は農林水産省の失策と言われております。稲わらの保管の仕方など、現場を知らない、見ない行政のあり方がこの事態を招いたのだろうと私は思います。県産牛肉の安全・安心確保のため、適切な情報をどのように発信するのかお伺いいたします。
 以上です。
〇知事(達増拓也君) 工藤勝博議員の御質問にお答え申し上げます。
 まず、原発放射線影響対策本部の設置についてでありますが、東北、関東において我が県以外に原発問題関係の対策本部を設置しているのは、宮城県が7月、稲わら問題発覚後に設置したケースと、埼玉県が3月14日に計画停電などへの対応を目的として危機対策本部を設置した例があるだけでございますが、岩手県においては、それ以前も原発事故にかかわる本県への影響に対応するため、6月22日に総務部長を本部長とし関係部局長で構成する原発放射線影響対応本部を設置し、全庁的な情報共有や対応方針の調整等を行い、それぞれの事案に応じて適切に対応してきたところであります。
 こうした中で、県内でも牛肉から基準値を超える放射性物質が検出される事案が確認されたことを踏まえ、県民の安全・安心の確保や県産食材等の安全確保を図るためにはより強力な取り組みが必要との認識から、7月29日に知事を本部長とする原発放射線影響対策本部を設置し、組織体制の強化を図ったところであります。
 次に、アドバイザーについてでありますが、県において、原発放射線の影響に関する必要な対策を決定、実施するに当たり、学術的な知見に基づいた検討を進める必要がありますことから、特命チームに複数の外部の専門家等に参画をいただき技術的な助言を得ようとするものであり、特命チームの設置にあわせ委嘱したところであります。
 具体的には、原子核物理、応用獣医学、草地生態学及び公衆衛生学のそれぞれを専門とする大学の教授ないし准教授各1名を委嘱しており、的確な助言をいただけるものと考えております。
 次に、出荷制限の指示の早期解除に向けた取り組みについてでありますが、出荷制限の指示の解除に当たっては、適切な飼養管理の徹底や牛肉の検査による安全管理体制の確立を内容としたいわゆる検査計画を策定し、国に承認を得た上で検査を実施し、各頭ごと、または各戸ごとに出荷制限を解除していくこととされております。
 このため本県では、解除申請に向けて、適切な飼養管理を徹底していくための稲わらの適切な利用の徹底や今後収穫される粗飼料の放射性物質の調査、牛肉の検査による安全管理体制を確立していくための、原発事故後に収集された稲わらを給与した農家や稲わらを検査できなかった農家の全頭検査、それ以外の農家の、農家ごとに初回出荷される牛のうち1頭以上を検査するいわゆる全戸検査などを盛り込んだ検査計画の策定に取り組んでおり、現在、国と協議しているところであります。できる限り早期の出荷再開が実現できるよう、検査計画の承認に向け全力で取り組んでまいります。
 次に、被害を受けている農家への経営支援についてでありますが、畜産農家においては、出荷制限の指示により、飼育期間の延長に伴う資金繰りの悪化や飼料の確保、肉質の低下など、厳しい状況となっているものと認識しております。このため県としては、JAグループと連携した融資を創設し、利子補給に要する経費を今回の補正予算に盛り込むとともに、国や関係団体と協力しながら、飼料供給情報の提供やマッチングの支援などによる稲わら等の代替飼料の確保、巡回指導の充実による飼養管理の支援などの取り組みを進めております。
 さらに、国が緊急対策として示している飼料代等のかかり増し経費や出荷遅延牛の買い上げ支援に対する速やかな対応などを通じて、肥育農家の経営安定といわて牛産地の維持を図っていく考えであります。
 その他のお尋ねにつきましては関係部長から答弁をさせますので、御了承をお願いします。
〇環境生活部長(工藤孝男君) 放射線対策費補助についてお答えいたします。
 福島第一原発の事故によりまして放射性物質が広範囲に拡散いたしまして、県南地域を中心に比較的高い放射線量という状況になっておりますことから、放射線の影響を受けやすいとされる子供の健康を重視する観点に立ちまして、学校及び児童施設における空間線量率の状況を把握しますとともに、局所的に毎時1マイクロシーベルト以上の放射線量を示す場所の除染について、県も応分の負担を行うという趣旨から2分の1という補助率を設定したものでございます。
 なお、他県の補助率ということでございますが、福島県等におきまして文部科学省が学校の校庭の除染について支援しておりますが、国の補助率は3分の2と伺ってございます。 
 また、厚生労働省が福島県、宮城県、栃木県のみを対象といたしまして、同じような園地の除染対策を講じてございますが、これについては2分の1の補助と伺っているところでございます。
 測定場所についての考え方でございますが、国の原子力災害対策本部によりまして、清掃活動に関する基本的な考え方というものが示されてございます。その中で、放射性物質が集積しやすい場所といたしまして、雨水が集まる軒下や側溝等が示されております。また、除染に関する実証試験結果などが報告されておりますことから、これを踏まえつつ、また、福島県等における実施状況も参考としながら、詳細について詰めてまいりたいと考えているところでございます。
 基準値1マイクロシーベルト、これを超える場所が見つかった場合には、基本的には二つのパターン、その場で上と下の土を入れかえるやり方、もう一つは、汚染された表土を一定の場所に埋めるという方法が考えられるわけでございますが、例えば20センチの覆土をいたしますと、放射線の影響は92%程度軽減できると国のほうから示されてございます。
 最後になりますが、既に実施いたしました市町村に対する支援ということでございますが、私どもが把握しておりますのは、10市町村が何らかの形で学校等の放射線の状況を測定していると伺ってございます。これにつきましては、遡及して支援するということを現在検討しているものでございます。
〇2番(工藤勝博君) 何点か再質問をさせていただきます。
 今、環境生活部長のほうからもお話がありましたけれども、放射線の測定の経費、これはあくまでも国の責任において全額見てもらうというのが筋ではないのかと思いますし、例えば基準値を超えた場所には、国は一応経費は見るということもあるみたいですけれども、その基準値を超えるか超えないか、いずれは調べなければならないと思うので、その辺の経費は国に働きかけるべきだろうと思います。
 もう一点、先ほど知事からも、JAのほうの適切な指導でいろんな情報を集めるというお話がありました。今、畜産農家は、私の知っている範囲では、JA以外の農家が規模も大きいし、かなりの頭数を飼育している状況です。系統以外、JA以外の生産者の実態の把握はどのように考えているのか、お聞きしたいと思います。
 また、先ほども農林水産省のお話をいたしました。その後、政府高官からは、稲わらの管理が不適切でこういう事態を招いたということも報道されております。そのことに関しまして、知事の見解をお聞きしたいと思います。
〇知事(達増拓也君) 岩手県内で牛肉を生産している民間事業者は、新聞報道もされているような大きいところもあるわけでありますけれども、県農協中央会や全農県本部また八つの農業協同組合、家畜商業協同組合とあわせ、大規模農場、民間農場とも調整をしながら、さまざま岩手県として対応してきているところでございます。
 そして、原発事故発生直後の政府の対応については、これは広範に放射性物質が広がる可能性、また、その実態についての情報提供がほとんどなされず、そうした意味で、稲わらの扱いに関して、それを農業者の責任に転嫁するということがあってはならないことと考えております。
〇環境生活部長(工藤孝男君) 御指摘のとおり、原発事故そしてこれに伴う影響につきましては、国の責任において対処すべきというふうに考えてございます。したがいまして、調査あるいは除染に要した経費につきましては、国に対しまして負担あるいは財政支援を求めていきたいと考えてございます。
〇議長(佐々木一榮君) 次に、木村幸弘君。

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