平成22年12月定例会 第19回岩手県議会定例会会議録

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〇38番(斉藤信君) 日本共産党の斉藤信でございます。
 議員発議となる会派共同提案の発議案第2号障がいのある人もない人も共に学び共に生きる岩手県づくり条例案に対して、提案者に質問いたします。
 まず、2008年6月県議会での請願の採択を受け、この間、条例案の検討と立案に努力されてきたことに敬意を表します。特に、検討の過程で、障がい者差別に当たると思われる事例を把握し、明らかにしたことは重要な意義を持つものであると思います。また、条例案では、専門的知識を有する職員の育成や財政上の措置等を規定したことは積極的なものだと思います。しかし、条例案が全体として理念条例にとどまったことは、時間の制約があったとはいえ、残念なことでありました。
 千葉県や北海道などの先行事例を踏まえ、よりよい条例案にする建設的な立場から提案者に質問いたします。
 第1に、条例案の前文は、条例の趣旨、理念、目的を述べたものでありますが、何よりも、憲法に基づく障がい者の基本的人権を保障するものであること、国連障害者権利条約の精神を踏まえたものであることを明記すべきではないでしょうか。また、前文の記述が少し具体的な表現となり過ぎているのではないでしょうか。障がいのある人を区別する意識やこれに基づいた社会における制度が存在しや、全国を上回る少子高齢化が進み、地域の担い手が減少していく中にあって、今後、本県が持続可能な社会を構築していくためには、ともに生きる地域づくりを早急に進めていく必要があるなどの表現は、その具体性と普遍性が問われるもので、前文にはふさわしい表現ではないと考えますが、いかがでしょうか。
 第2に、第3条が基本理念を規定していますが、障がいのある人が、障がいを理由として差別を受けず、ありのままにその人らしく地域で暮らす権利があることを明記すべきではなかったでしょうか。
 第3に、第4条では県の責務が明記されています。県は、条例に基づき施策を総合的に策定し、これを実施するとしていますが、総合的な施策とはどういう内容を想定しているのでしょうか。
 第4に、第5条では市町村の役割が明記されています。千葉県の条例では、市町村は県と対等、協力関係にある自治体であることから、県の条例で市町村の役割を直接規定せず、県と市町村との連携と規定されています。こうした規定のほうが適切ではなかったでしょうか。
 第5に、第6条では県民等の役割が規定されています。県民及び事業者を一体としていますが、区別したほうがそれぞれの役割が明らかになったのではないでしょうか。また、第3項では、障がいのある人の家族に対して必要な配慮をするように努めると規定されています。家族についてはここだけの規定でありますが、特別な理由はあるのでしょうか、ここだけでいいのでしょうか。
 第6に、第15条で不利益な取り扱い等に関する相談、助言等が規定されています。一番大事な規定でありますが、千葉県の条例では、知的障害者相談員等とともに地域相談員、広域専門指導員が配置され、障がいのある人の相談に関する調整委員会が設置され、個別事案解決の仕組みがつくられています。条例制定後3年間の成果が最近まとめられていますが、差別に関する相談がこの間約800件、対応した回数は延べ8、763件と報告され、大きな成果を上げています。また、だれもが暮らしやすい社会づくりを議論する仕組みとして、障害のある人もない人も共に暮らしやすい千葉県づくり推進会議が設置されています。不利益な取り扱いを具体的に解決する仕組みと体制、条例上の規定が必要ではないでしょうか。
 第7に、障がい者の参政権の保障に関する規定も必要と思いますが、検討されたのでしょうか。
 次に、保健福祉部長に、関連して質問いたします。
 今回の議員発議による条例案の提案は、平成20年の6月県議会で、障がい者への差別をなくすための岩手県条例の制定についての請願が採択されたことにこたえたものであります。本来、請願の採択を受け、県自身が障がい者団体と協議し、条例の制定を検討すべきであったと思いますが、いかがでしょうか。
 また、今回の条例案も、制定されれば県が実施することになります。その際、一番大事なことは、障がい者団体の方々と協力、連携して、総合的な施策と個別事案解決の仕組みを具体化し、ともに取り組むことであります。その体制構築が求められると思いますが、いかがでしょうか。
 以上でありますが、環境福祉委員会での審査を通じてさらに充実されるよう期待するものであります。
〇39番(及川幸子君) お隣の席の斉藤信議員の質問にお答えいたします。
 まず、前文についてでありますが、条例の前文につきましては、規範性を持つものではありませんが、この条例は県民の意識に働きかけていく要素が大きいことから、障がいについての理解促進と、不利益な取り扱いを解消するための取り組みの意義や方向性について述べているものです。
 憲法や国連障害者権利条約の精神を踏まえたものであることを前文に明記すべきではないかとの議員の御提案についてでありますが、障がいのある人が有する権利の確認と、その実現は当然に行われるべきと考えております。また、この条例が、憲法に規定する基本的人権の保障や国連障害者権利条約の精神を踏まえていることは、申し上げるまでもないところであります。
 次に、前文の記述が具体的な表現となり過ぎているとの御指摘については、条例の制定に当たって県民からいただいた多くの意見等も踏まえ、この条例を制定することの意義や目的について、県民が理解しやすいよう記述したところであり、適切な内容であると考えております。
 次に、基本理念についてでありますが、基本理念は、この条例で規定する施策を推進するに当たり、障がいについての理解の促進及び障がいのある人に対する不利益な取り扱いの解消について、県、市町村及び県民等が共有すべき理念、根本となる考え方を規定する趣旨のものとして規定しております。
 御提案のありました、障がいのある人が、障がいを理由として差別を受けないことにつきましては、別途、第7条に不利益な取り扱いの禁止の規定を置いたところであり、また、ありのままにその人らしく地域で暮らす権利があることについては、基本理念として、第3条第1項に、障がいのある人みずからが選択した地域において生活し、地域社会を構成する一員として、社会、経済、文化その他あらゆる分野の活動に参加する権利を尊重することを規定しております。障がいのある人みずからが選択した地域において生活し、地域社会を構成する一員として、社会、経済、文化その他あらゆる分野の活動に参加する権利を有することを前提として、さらに一歩進めて、その権利を尊重するとしたところであり、いずれも議員御提案の趣旨に沿ったものとなっているものであります。
 次に、県の責務についてでありますが、この条例では、条例の実施全般について責任を持つこと、すなわち知事部局、教育委員会ほかあらゆる県の機関が個々に施策を実施するのではなく、相互に連携し、部局横断的に調整を行いながら障がいについての理解を促進し、障がいのある人に対する不利益な取り扱いの解消に関する施策を総合的に策定し、実施することを定めたものであります。
 次に、市町村の役割についてでありますが、議員御指摘のとおり、地方分権一括法施行以後、県と市町村は対等、協力の関係とした中で、県条例では市町村の役割を直接に規定せず、条例の具体的な内容を踏まえた役割を担うものとして規定が設けられているところであります。
 この条例の制定に当たって実施した障がい者関係団体との意見交換会や県民説明会などにおいては、県のほか市町村の施策や福祉サービスについてもさまざまな御意見をいただいたところであります。議員御指摘のとおり、障がい者施策の推進に当たっては市町村との連携は不可欠であり、こうした観点から、市町村についても、地域の特性に応じて、それぞれの立場において、障がいについての理解の促進と不利益な取り扱いの解消に取り組んでいただくよう規定するものであります。
 次に、県民等の役割についてお答えいたします。
 まず、県民と事業者の役割を区別すべきとの御提案についてでありますが、この条例において規定しようとする、障がいのある人が地域の一員として、社会、経済、文化その他あらゆる分野の活動に参加できるよう支援に努めることや、障がいについての理解の促進、障がいのある人に対する不利益な取り扱いの解消、そのための県及び市町村が実施する施策への協力などは、県民、事業者それぞれが同様に果たすべき共通の役割であることから、これを一体として規定したものであります。
 次に、第3項の障がいのある人の家族に対する配慮についてでありますが、御指摘のとおり、家族に対する配慮はすべての主体に求められるものでありますが、その発生が個人レベルでの場面で多く見られるものであることから、一義的には県民等の役割として規定することで足りると考えたところであります。
 次に、不利益な取り扱い等に関する相談、助言等についてでありますが、第15条では、県に、障がいのある人に対する不利益な取り扱い及び虐待に関する相談に応じ、これに対する助言及び調整等必要な措置を講ずるよう求めております。条例を具体的に運用していくのは執行機関としての知事でありますので、不利益な取り扱いがあった場合、具体的に問題を解決するための仕組みと体制づくりについては、知事が責任を持って主体的に取り組むよう、県に必要な措置を講ずる義務を課す形としたところであります。
 なお、私たちといたしましては、障がいのある人の便宜、実効性等を考慮する立場から、居住する市町村の地域内で相談等を受け付けた後に専門的な見地から助言を行ったり、必要に応じて関係者間の調整などを行うことができるような体制とすることが望ましいと考えているところでありますが、制度設計等の詳細については、条例施行までの間、条例の趣旨を踏まえて、執行部において検討されるべきものと考えております。
 次に、障がいのある人の政治参加についてでありますが、この条例においては、障がいのある人の政治参加については明文の規定は置いておりませんが、障がいのある人も障がいのない人と平等に、自己の自由な意思により政治参加の機会が実現されるべきものであることは申し上げるまでもありません。障がいのある人の政治参加については、この条例の基本理念の中で、障がいのある人みずからが選択した地域において生活し、地域社会を構成する一員として、社会、経済、文化その他あらゆる分野の活動に参加する権利を尊重することを定めており、障がいのある人が政治に参加する権利の保障については、この規定により担保されるものと考えております。
 以上でございます。
〇保健福祉部長(千葉茂樹君) この条例案の制定に関しましては、当該請願の採択後、約1年余りに及びまして、県議会におきまして、障害者権利条約やあるいは障がい者制度改革などの動向も注視されながら内部検討を進められたものと承っております。昨年度後半から条例制定に向けました本格的な作業に入られまして、本議会での発議に至りましたことにつきましては、また、この条例案の検討、立案に御尽力をいただきました県議会の議員の皆様方に対しましては、改めて敬意を表する次第でございます。
 この条例案の施行に当たっての県の取り組みについてでありますが、この条例案につきましては、障がい者関係団体の期待も極めて大きいものと承知しております。私どもといたしましては、現在策定事務を進めております新しい岩手県障がい者プランの素案におきまして、条例が制定された場合を想定し、障がい者に対する不利益な取り扱いの解消についても盛り込んでいるところでございます。
 条例が制定されますと、私どものほうで所管させていただくことになりますが、施行までの間、約半年ございますので、障がい者関係団体や市町村等の御意見も伺いながら、この条例の基本理念や立法趣旨等を踏まえ、個別事案解消のための助言、調整を行う仕組みの構築などを行い、条例施行に万全を期していきたいと考えております。その仕組みの構築に当たりましては、その制度設計に当たり、特に岩手型の仕組みの構築を志向してまいりたいと考えております。
〇議長(佐々木一榮君) これをもって質疑を終結いたします。
 次に、ただいま議題となっております発議案第2号障がいのある人もない人も共に学び共に生きる岩手県づくり条例は、環境福祉委員会に付託いたします。
〇議長(佐々木一榮君) 以上をもって本日の日程は全部終了いたしました。
 本日はこれをもって散会いたします。
   午後6時10分 散 会

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