平成22年9月定例会 第18回岩手県議会定例会 会議録

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〇31番(佐々木博君) 民主党・ゆうあいクラブの佐々木博です。当面する県政課題について順次質問いたしますので、簡潔明瞭な御答弁をお願いいたします。
 最初に、森のトレーについて伺います。
 9月17日、約6年半に及んだ森のトレーの裁判の1審判決の言い渡しがありました。請求棄却という、原告いわて森のトレー生産協同組合の全面敗訴の判決であります。原告に対して厳しい判決が出るものと予想はしていましたが、予想以上の厳しい判決でした。そして、控訴の断念により、一貫して訴訟で組合を勝訴させることを通じて補助金返還金を全額回収するとしていたスキームは崩れ、だれがこれを負担するかということが正面から問われることとなります。
 しかしながら、本当に県は当初から訴訟による全額回収が可能と思っていたのでしょうか。私は、以前にも一般質問で取り上げたことがありますが、この訴訟による全額回収はほとんど不可能で、未回収部分の負担の問題が必ず生じると考えておりました。なぜなら、原告の組合が被告トリニティ工業に起こした損害賠償の額は25億4、000万円余ですが、その内訳は、トリニティ工業との機械の売買代金10億1、000万円余と補助金全額の15億3、000万円余の合計であります。しかしながら、この機械の売買代金は少なくとも2分の1は補助金で支払われていることから、機械代金の2分の1については二重に請求していることになり、その分請求金額が過大になっているのであります。
 なぜこのような過大な請求をしたかといえば、原告はほかにも金融機関から11億円余の借り入れがあり、裁判で回収する損害賠償金は債権額に応じて案分比例されることから、全額回収するには請求額を過大にする必要があったからです。しかし、このような過大な訴えで全面勝訴することは難しく、たとえ一部回収できたとしても未回収部分の負担の問題が生じるのに、全額回収のみを強調して一部回収の場合の不足分の負担について一切答えようとしない増田前知事の姿勢に対し、私は以前から問題を先送りしているという強い思いを持っておりました。
 裁判の結果は、原告の請求棄却という予想を超える厳しいものとなりましたが、この判決と今までの一連の経過に対する知事の御所見を伺います。
 さて、この判決の確定によって、森のトレーは補助金返還金の負担をどうするかという、いわば第2ステージに移ることとなります。もちろん理屈上はいわて森のトレー生産協同組合が全額負担すべきなのですが、組合は当時から既に破綻状態にあり、かつ資産は金融機関の担保となっていることから、組合からの回収は期待できません。知事は、この返還金をだれが負担することが適切と考えておられるか御所見を伺います。
 私は、組合に支払い能力がなく、県、国、そして久慈市にそれぞれ責任がある以上、県民感情は複雑ですが、それぞれがその責任に応じて負担するしか現実的な手だてがないと思っております。
 第1に、県の責任についてですが、県は組合に対する指導監督が不十分だったということだけではなく、県自身にも、完了確認調査では、新たに開発された機械なのに試運転もしないで出された完了届を追認するなど幾つかの決定的重大ミスがあります。改めて具体的に事実関係を丁寧に説明して、県民に対しみずからの責任を明らかにするとともに謝罪することが求められていると思いますが、知事の御所見を伺います。
 また、県の責任と同時に、増田前知事の政治責任を明らかにすることも必要です。増田前知事は、森のトレーについての自身の責任について、任期中に明らかにしたいと本会議で答弁いたしておりましたが、訴訟が長期に及んだこともあり、任期中に責任を明らかにすることがないまま退任いたしました。しかしながら、県民に負担を求めることとなれば、事件発生時の県政の最高責任者であり、政治的責任をどう考えているか見解を問うてみたいと考える県民は多数いると思います。増田前知事がその政治責任を明らかにすることは、県民に負担を求める前提として不可欠と考えますが、知事の御所見を伺います。
 第2に、国の責任についてです。
 林業構造改善事業では、その補助対象となる事業は技術が確立しているものに限られ、研究開発型の事業は対象となりません。裁判でもこのことは確認されており、原告側の岡野証人は、証人尋問で、木製トレーを作製する確立した技術を持っていたのは庄内鉄工だと証言しております。
 この事業が失敗した要因はさまざまあると思いますが、最大の要因は、庄内鉄工で小規模に生産していた木製トレーを、技術が確立されていないのに連続自動化ラインによって日産50万枚の大量生産をしようとしたことにあります。大量生産の技術は確立されていなかったのですから、庄内鉄工と決別した時点で本来は林業構造改善事業の対象に合致しなくなっていたのです。そしてこのことは、県、久慈市だけでなく林野庁とも協議しながら進められたのですから、当然国も知っていたはずです。国に対し応分の責任を求めるべきと考えますが、知事の御所見を伺います。
 第3に、久慈市の責任について伺います。
 平成16年、国に補助金の3分の1、4億2、600万円余を返還したときは、負担割合は県7に対し久慈1と定め、久慈市は5、300万円余を負担しました。その後、平成20年度から本年度まで3年分割により残り3分の2、8億5、200万円余を返還済みですが、この分につき久慈市は負担しておりません。知事は、平成20年の予算特別委員会で、阿部富雄委員の質問に対し、県としては、久慈市が訴訟による補助金回収に尽力して回収に最大限努めた場合には、国への追加返還部分及び県費補助分に係る久慈市の負担は求めないとし、一方、訴訟によって回収された賠償金については、追加返還部分に優先充当、すなわち県が久慈市に対して先取りすることで久慈市と協議済みであると答弁しております。
 訴訟は請求棄却となり、1円も回収できないこととなりましたが、久慈市への対応に変化はないのか、また、負担を求めない理由は何なのか、知事の御所見を伺います。
 また、この事業の失敗を通じて、いわゆるひもつき補助金のあり方に一石が投じられたと考えます。私は、補助金行政のあり方を根本的に改める必要性を強く感じますが、このことについての知事の御所見もあわせて伺います。
 次に、人口減少と雇用対策について伺います。
 岩手県毎月人口推計速報によると、本年9月1日現在の本県の推計人口は133万1、223人で、前年同月と比較すると1万31人の減少となっております。かつて140万県民と言われた本県の人口ですが、平成16年に140万人を下回ってから加速度的に人口減少が進み、平成18年度から21年度まで、10月1日の基準日で4年連続して1万人以上の人口減少が続いていますが、5年連続となりそうです。このまま推移しますと、いわて県民計画に記されているように、平成30年には120万人から125万人程度まで減少することが見込まれますが、人口の減少は、地域経済の縮小や地域コミュニティの機能を弱体化させるなど大きな影響を与えることとなり、このままでは将来への明るい展望を失わせてしまいます。
 我が国自体が人口減少社会に移行していますから、本県のみが人口減少から逃れることはできませんが、本県の人口減少は全国平均を上回って進んでおり、特にも15歳から24歳までの年齢層の県外流出が非常に多く、これを食いとめるには雇用の確保が最大の課題です。
 ところで、10月1日、岩手労働局が発表した8月の有効求人倍率は前月を0.02ポイント上回る0.46倍となっており、リーマンショック後、一時0.32倍まで下がった時点から緩やかに回復しているようにも見えます。しかしながら、この数字は過去と比較するとなお相対的にかなり低い数字で、全国的にも35番目、加えて正社員の有効求人倍率が0.19倍で、雇用の質もよくなっているとは言えません。雇用、さらにはこれと密接に関連する県内の経済状況をどう認識されているか御所見を伺います。
 さて、このような状況下、9月16日から来春卒業予定者の高校生の採用試験が始まりました。10月1日の岩手労働局発表によると、全体の求人倍率は0.92倍と前年同月に比べ0.03ポイント下回り、相変わらず厳しい状況が続いていますが、県内求人数が1、335人と、前年同月に比べ194名、率にして17%増加したことから、県内求人倍率は0.54倍と、前年同月を0.11ポイント上回っております。
   〔議長退席、副議長着席〕
 県内就職希望者は2、461人で、求人数はまだまだ不足しているとはいえ、厚生労働省の発表によると、国全体で求人倍率は7月末時点で0.67倍と前年同期より0.04ポイント下回り、就職氷河時代と言われる中で、本県の求人倍率が前年を上回っていることは明るい材料です。この点につき、たまたまの結果なのか、あるいは国、県が行ってきたさまざまな施策の成果ととらえるべきなのか御所見を伺います。また、施策の成果だとするなら、特に効果があった施策は何なのか、あわせてお知らせください。
 また、学校を卒業しても就職できない、いわゆる就職浪人がふえており、県内にも相当数いると思われますが、これら既卒者に対する就職支援について伺います。
 岩手労働局では、9月10日に閣議決定された新成長戦略実現に向けた3段構えの経済政策に基づき、卒業後3年以内の既卒者を対象とする盛岡新卒応援ハローワークと、ハローワーク、地方公共団体、労働界、産業界、学校などの関係者を構成員とし、地域の実情を踏まえた就職支援の企画立案を行うための岩手新卒者就職応援本部を設置しました。また、既卒者の就職を支援するため、新卒者就職実現プロジェクトとして、3年以内既卒者トライアル雇用奨励金や3年以内既卒者採用拡大奨励金などの制度も創設されたところであります。岩手新卒者就職応援本部の構成員には商工労働観光部長も入っていますが、これらの制度をどのように活用して既卒者の就職に結びつけようとされるのか御所見を伺います。
 雇用問題の最後に、アクションプラン政策編の平成21年度時点の達成状況について伺います。
 政策項目ナンバー8、雇用、労働環境の整備の項において、求人不足数や県北・沿岸圏域の求人不足数、正規雇用求人不足数の達成度がAとされております。求人不足数は、平成21年度は2万5、123人と前年度に比べて8、980人増加しているが、目標の2万6、400人より1、277人少ないからA、県北・沿岸圏域では6、196人と前年度に比べて1、280人増加しているが、目標の7、000人より804人少ないからA、正規雇用求人不足数について、平成21年度は2万5、550人と前年度に比べて6、702人増加しているが、目標の2、600人と比べて450人少ないからAとしています。
 確かに平成21年度第1・四半期には求人不足数は3万316名、正規雇用求人不足数は2万8、800名と大幅に増加しましたから、その解消に努力したことは評価します。しかしながら、前年度よりはるかに雇用状況が悪化しているのに達成度がAというのは県民意識との乖離が余りにも大きく、理解に苦しむのであります。目標値の設定に問題があると思うのですが、いかがでしょうか。
 少子化が進み、長男、長女が多くなっていることから、新卒者等の地元就職志向が年々高まってきております。人口減少を食いとめるためにも、高い目標を掲げて意欲的に取り組むべきと考えますが、知事の御所見を伺います。
 次に、建設業の振興と入札制度の改善について伺います。
 最初に、いわゆる91社の談合問題の影響について伺います。
 本年3月23日の公正取引委員会の排除措置を命じる審決を受け、県は77社2経常共同企業体に対し、9月21日まで指名停止を行いました。県内建設業者は、公共事業の削減や不況による民間工事の減少、低入札の恒常化などにより利益率が大幅に低下しており、東日本建設業保証株式会社による平成20年度の決算分析によると、県内建設業者の総資本経常利益率はマイナス2.36%、売上高経常利益率はマイナス1.95%と赤字経営となっております。そして、このように厳しい経営状況が続いているところに今回の指名停止ですから、経営体力が消耗し切っているところも相当数あると思われます。この間、倒産は1社だけでしたが、経営状況は一段と厳しさを増しており、1社以外倒産が出なかったのは、いわゆる亀井モラトリアム法と言われる中小企業金融円滑化法のおかげだと言う金融関係者もおります。県は、県内建設業者の経営実態をどう把握されているかお聞かせください。
 また、このような状況下、今後、課徴金、さらには県に対する損害賠償の支払いが生じてきますが、その時期はいつごろと想定されるのか、また、損害賠償については分割支払いなどを検討されているのかあわせて伺います。
 次に、低入札について伺います。
 長引く景気の低迷や公共事業の減少などの厳しい経営環境を背景に、業者間の受注競争が年々激化し、低入札が増加していることは以前からたびたび指摘されているところであります。今年度の低入札の発生件数や発生率、落札率が前年度と比較してどうなっているかお示し願います。
 過度な安値受注は、手抜き工事などの品質低下を招くほか、下請、資材業者へのしわ寄せ、労働条件の悪化、安全対策の不徹底など、さまざまな分野に悪影響を及ぼすことが指摘されております。県も、入札制度を改善して低入札対策に取り組んでこられたことは評価しますが、目に見える形で効果があらわれたという状況にはありません。業界からの要望、さらには今までの議会での議論を通じて、最低制限価格制度の導入と予定価格の事前公表の廃止が低入札対策のポイントと思われます。県は、最低制限価格制度の導入にも予定価格の事前公表の廃止にも消極的ですが、全国的にはどのような傾向にあるのか伺います。
 県は、最低制限価格制度を導入しない理由として、ダンピングをしっかり防止しながら、他方で適切な競争性を確保する必要があるからとしていますが、本当に現行の入札制度でダンピングが防止できると考えておられるのでしょうか。予定価格は設計単価に基づき積算されているのに、それを大幅に下回る価格での落札が続くとなると、予定価格の意義を県はどう考えるのでしょうか、御所見を伺います。
 また、予定価格の事前公表については、業界から、十分な積算もしないまま、予定価格から幾ら値引いて請け負うのかという観点のみが重視され、ダンピング受注の大きな要因となっていると指摘されていますが、県は予定価格の事前公表を継続するとしており、その理由として、予定価格の漏えいなどによる不正の防止を挙げております。確かに過去に不幸な歴史があったことは事実ですが、これでは、県職員を守ることばかりに力点が置かれ、業界に対する配慮が足りないのではないでしょうか、あわせて御所見を伺います。
 低入札による弊害は公共工事設計労務単価に強くあらわれており、本県における平成8年度と平成21年度を比較すると、特殊作業員は、平成8年度が2万4、200円だったのが、平成21年度には1万4、900円と38%下がり、普通作業員では、1万8、500円だったものが1万2、500円と32%下がっています。しかも、この数字は設計単価の数字であり、低入札が多いことから、落札比率に応じてさらに低くなっているのが実態と思われますが、果たしてこの単価で生活が可能なのでしょうか。公共事業に従事しても生活がままならないでは、公共事業の意義が問われます。設計労務単価についての御所見を伺います。
 91社の談合問題による指名停止期間も終わったことから、今後、下半期発注の数少ない公共事業の獲得に向け、一層激しい低入札による受注合戦が危惧されるところであり、最低制限価格制度の導入と予定価格の事前公表の廃止を強く要望するものでありますが、県の御所見を伺います。
 最後に、岩手競馬について伺います。
 最初に、コスト削減について伺います。
 発売額の低迷が続く岩手競馬は、9月14日に平成22年度第3回岩手県競馬組合運営協議会を開催し、本年度2回目のコスト調整を決定しました。第2期までの発売計画の達成率の見通しを試算した結果、年間を通じて収支均衡を図るためには、収支不足額が8、400万円程度と見込まれると試算し、広域受託販売の日数を追加するなどにより3、000万円程度収入をふやすとともに、競争関係費と事業運営費をそれぞれ2、700万円程度コスト調整するというものであります。昨年度も3回の収支計画の見直しがあり、コスト調整が行われたわけですが、発売額の減少に応じてコストの調整をするといっても限界があります。本年度後半、来年度と発売額がさらに減少した場合、コスト削減の余地はまだあるのか伺います。
 また、このコスト調整は、新しい岩手県競馬組合改革計画の経営指標に基づき、事業収益の25%の中で、競争関係費8%、事業運営費16%、財務経費1%の枠組みを基本的に維持しつつ調整が行われているわけですが、本年度、第1期後の見直し時には、競争関係費については、昨年同期と比較して在厩頭数が減少していることから、賞金、手当の水準を引き下げると、馬資源の減少にさらに拍車をかけることを懸念して単価が据え置かれた経緯があります。それが、わずか3カ月後の今回の見直しで、1等賞金10%削減、出走手当も削減するとの方針が示されましたが、馬資源の確保に支障は出ないのか、御所見を伺います。
 また、平成24年度から導入が予定されている地方競馬共同トータリゼータシステムについて伺います。
 このシステムは、地方競馬全主催者が共同で整備するもので、システム構築費には、競馬活性化事業補助金として地方競馬全国協会から5分の4の補助が出されます。競馬組合の試算では、このシステムが導入されると、イニシャルコスト、ランニングコストを合わせて、現行9億6、300万円かかるコストが8億1、500万円になる見込みで、毎年度1億5、000万円程度のコスト削減になるようであります。抜本的なコスト削減策がない中で期待も大きいのですが、このシステムをほかにも活用して、さらなるコスト削減に生かす方法はないのか伺います。
 次に、減少が続く発売額について伺います。
 岩手競馬の発売額は、330億円の巨額融資後も連続して減少し、平成19年度が233億800万円、平成20年度が220億6、600万円、平成21年度が207億2、300万円で、本年度は、さきの第2期後の収支見通しによると191億6、000万円と、とうとう200億円の大台を下回る見通しが示されております。平成3年度には689億円の発売額を誇った岩手競馬ですが、まさに隔世の感ありです。県は、この発売額の減少が今後も続くとお考えでしょうか、あるいはいずれ底を打って反転するとお考えでしょうか。私は、いずれは底を打つときが来るとは思いますが、それはまだまだ先の話で、なおしばらくは発売額の減少が続くと考えます。なぜなら、私が20代のころ、競馬はレジャー産業の花形でした。週末のレースの予想をするのが楽しみで、皆で集まって予想し合うこともたびたびでした。しかし、今の若者は、レジャーが多様化し、競馬にはほとんど興味を示しません。競馬場に行っても、目立つのは年配者ばかりで、口の悪い人は、岩手競馬は年金競馬と言う人もいるほどです。若者の支持が得られない以上、発売額の低迷は今後も続くと考えますが、発売額の見通しについて御所見を伺います。
 また、発売の金額だけではなく、その中身も問われなければなりません。岩手競馬では、自場発売が減少する一方、インターネット発売だけは伸びていますが、自場発売なら発売額の25%が収益となるのに、ネットでは手数料が約13%取られますから、収益は自場発売の半分にしかなりません。したがって、全体の発売額が減少していく中にあって、ネット販売だけが今後伸びていくということになると、額面以上に経営を厳しくしていくことになると思われますが、この影響についてもお知らせください。
 次に、収支均衡に対する県の考え方について伺います。
 県及び競馬組合は、最終的な損益が赤字でなければ収支均衡しているとの考えのようですが、この考え方が県民目線で見て納得が得られているか、私は少々疑問を感じております。少なくとも民間感覚で言えば、収支均衡とは営業損益の段階で判断するのが一般的だからです。この観点で、岩手競馬の決算状況を見ますと、平成20年度は4、800万円の黒字で、平成21年度も1、900万円の黒字が見込まれていますが、その要因は、平成20年度には、地方財政法施行令の改正により、公営企業金融公庫納付金の納付の必要がなくなった一方、前年度納付した1億9、800万円余の還付があったからであり、平成21年度も施設等整備基金から8、500万円を繰り入れ、さらには退職手当基金の積み立てを取りやめているからであります。しかしながら、企業会計の原則では、公営企業金融公庫からの還付金や施設等整備基金からの繰り入れは営業外収益と見なされるものであり、この原則に従えば、営業段階での収支は赤字となります。それぞれ決算のルールが異なりますから、競馬組合の決算が間違っているとは申しませんが、一般的には企業会計のほうがより経営実態をあらわすと言われております。知事は、この点についてどうお考えか、御所見を伺います。
 また、競馬組合には、構成団体である県から8名、盛岡市と奥州市から各2名、合わせて12名の職員が駐在しており、この人件費は1億円を超えます。本来はこの人件費も組合が負担すべきものと思いますが、これを加えますと、競馬組合の経営は収支が均衡しません。知事は、この人件費の扱いについてどう考えるのか、あわせて御所見を伺います。
 岩手競馬は、平成19年2月定例会において1度は廃止が決まりました。ところが、その後の3月臨時議会で、新たな赤字を出さない継続であること、県民負担が最小になること、この2点を満たす場合に限り存続が許されるという観点から議員発議案が出され、1票差で逆転存続が決まったという歴史があります。したがって、競馬存続についての議会の責任は極めて重いものと私は認識しております。330億円もの巨額融資をしている以上、その存続を願わないものではありませんが、決して赤字を出すことは許されません。存続のための努力はもちろんですが、収支均衡の見通しが立たないときは、英断をもって廃止を決断する覚悟を持って臨まなければなりません。知事の今後の岩手競馬に対する展望を伺って、私の一般質問を終わります。(拍手)
   〔知事達増拓也君登壇〕
〇知事(達増拓也君) 佐々木博議員の御質問にお答え申し上げます。
 森のトレー裁判の判決と一連の経過に対する所見についてでありますが、森のトレー事業は、トレー生産設備の不具合により生産量が計画を大幅に下回り、その結果、極度の販売不振から事業中断に至ったもので、この主な原因は、納入した生産設備が所期の性能を発揮しなかった、すなわちトリニティ工業の債務不履行によるものというトレー組合の主張には十分合理性があるとして、補助金を回収するという観点から訴訟支援を行ってきたものであります。平成16年3月の提訴以来6年半の間、5回の口頭弁論と23回の弁論準備手続が行われる中で、県は、久慈市と連携、協力し、原告関係者の打ち合わせなどを通じて、訴訟準備書面の作成、資料収集など、原告組合の訴訟支援に全力で当たってまいりましたが、今般、トレー組合の主張が退けられ、請求棄却という厳しい判断が示されたことは、大変残念な結果と受けとめているところであります。
 裁判による補助金回収は実現できませんでしたが、今般、国への補助金返還金に係る延滞金約5億2、600万円については免除決定をいただいたところであり、これは、訴訟支援などのこれまでの県の補助金回収の取り組みが国にも認められ、実現したものと考えております。
 次に、補助金の返還についてでありますが、補助金返還金については、本来、本補助金の受領者であるトレー組合が負担すべきものと考えております。今回の裁判結果を踏まえて、まずは、トレー組合がその資産や債権債務の状況を整理し、次に久慈市が組合から債権回収を図ることができるかどうか見きわめた上で、県として判断してまいりたいと考えております。
 次に、県の責任でありますが、事業実施に当たって、トレー組合に対する適正な指導監督や事業遂行上の必要な検証を十分に行わなかったという点で、県にも責任の一端があったと認識しております。この責任については、既に関係職員の処分や三役の給与の減額措置が行われていますが、現在、県政をあずかる者として、県民に御迷惑をおかけした残念な事案であると考えております。今後、二度とこのようなことが起こらないよう再発防止に努めてまいります。
 また、県民の負担と増田前知事の政治責任についてでありますが、まずは、トレー組合がその資産状況等を整理し、久慈市が組合から債権回収を図ることができるかどうかを見きわめる必要があると考えております。
 次に、国の責任についてでありますが、県は従来から、本事業は、事業計画の策定等に当たって国に協議して進めてきたものであることから、国にも責任の一端があるとしてきたところであり、平成19年度における国との補助金の残額返還協議においても、国の責任を理由に返還の一部免除を要請しましたが、補助金適正化法に基づく返還命令であることを根拠に認められなかったところであります。なお、国からは、県の訴訟支援を通じての補助金回収の取り組みを認められ、今般、補助金返還の延滞金約5億2、600万円を免除されたところであります。
 次に、久慈市の責任についてでありますが、久慈市には最後まで補助金回収に努力していただく必要がありますが、久慈市の訴訟支援については、みずからの判断で訴訟へ補助参加を行うなど、訴訟に全力で取り組んでいただいたと受けとめており、訴訟結果によって、訴訟による補助金回収に尽力して回収に最大限努めた場合は、国への追加返還部分及び県費補助分に係る久慈市の負担を求めないという方針を見直すことは、現時点では考えておりません。いずれにせよ、今回の裁判結果を踏まえて、まずは、トレー組合がその資産や債権債務の状況を整理し、その後に、久慈市が組合から債権回収を図ることができるかどうかを見きわめる必要があると考えております。
 次に、補助金行政のあり方についてでありますが、国の補助金については、国が設計した制度の枠に縛られ、地方の創意工夫の余地を狭める、国、県、市町村、事業主体など複数の主体がかかわり、事務手続が煩雑になるほか、責任の所在があいまいになるおそれがあるといった弊害が指摘されているところであり、地方が、それぞれの実情を踏まえ、自立的、自主的に判断し、その結果についても地方が責任を持って対応する仕組みに改めていくことが重要と考えます。現在、国においては、ひもつき補助金の一括交付金化などが検討されているところでありますが、こうした制度改正や地方税財源の充実によって、地方の自由と責任のもとで行政運営を行っていくことが可能になるよう、県としても提言や働きかけを行ってまいります。
 次に、雇用、労働環境の整備にかかわるアクションプランの目標設定についてでありますが、アクションプランの目標値は、世界同時不況による最悪な雇用情勢の中で、急増した求人不足数を、リーマンショック以前の状況に近づけるべく、最大の努力を払って達成すべき目標として設定したものであり、これまで、雇用対策基金事業や中小企業向け融資枠の拡大など、種々の施策を講じた結果、目標にたどり着くことができたものと受けとめております。
 現在の雇用情勢は、着実に改善されてきているものの、一方では若者の県外流出に歯どめがかからないなど、全体としては厳しい状況にあると認識しております。このため、新卒者の地元定着を図るとともに、県外に流出した若年層がUターンできるよう、雇用の場をさらに創出していく必要があると考えております。したがいまして、次の目標設定に際しては、こうした現状認識のもとで、経済、雇用情勢も見据えながら、県としてのあるべき姿を常に念頭に置いて検討していく必要があると考えております。
 次に、岩手競馬についてでありますが、まず、営業収支の考え方については、岩手競馬は、新たな赤字を発生させないという基本的な考え方のもとに、競馬事業で得られる収入ですべての支出を賄い、経常損益で黒字または収支均衡を達成することを事業存続の条件として運営しているところであります。したがいまして、競馬事業の実施に伴い発生する還付金などの収入や、利息の支払いなどの費用も含めた経常損益で収支均衡をとらえておりますが、これは新計画のルールに沿ったものと考えております。
 次に、人件費の取り扱いについてでありますが、県、奥州市及び盛岡市は競馬組合に職員を駐在させておりますが、その人件費の負担は、構成団体として競馬組合の経営状況に的確に対応するために必要な人員配置に伴うものであります。競馬組合の経営が安定し、収支均衡はもとより、構成団体融資の元金返済が可能となるように、競馬組合の収支状況を常に把握し、その経営改善に積極的にかかわっていくことが、構成団体としての役割と考えております。
 次に、岩手競馬の展望についてでありますが、競馬事業を継続していくためには、まずは、新計画のもとで、現実的な売り上げ見通しに対応したコスト管理を徹底し、単年度ごとに着実に黒字または収支均衡を積み重ねながら、安定的な経営を確立していくことが基本であると考えております。
 一方で、岩手競馬は、依然として厳しい経営状況にはありますものの、平成24年度からは経費の大幅な削減が見込まれる地方競馬共同トータリゼータシステムへの参画など、新たな局面を迎えつつあり、このような新たな動きの中で、岩手競馬を将来にわたり安定的に運営していくためには、さらに低コスト構造への転換を図るとともに、中長期的な展望に立った施策を展開していくことが必要と考えております。このため、これまでの改革、改善の取り組みを踏まえつつ、今後の岩手競馬の事業運営の方向について、外部の有識者からも客観的な視点と専門的な検証に基づく意見、提言を伺いながら、幅広く検討をしてまいりたいと思います。
 また、地方競馬が厳しい経営環境の中で、安定的に事業を運営していくためには、制度の見直しや、地方競馬と中央競馬との連携強化が重要と認識しておりまして、先般実施した来年度政府予算提言でも、交付金制度の見直しなどを要望したところでありますが、今後とも、関係道県や全国の地方競馬主催者と連携を図りながら、地方競馬の経営安定が可能となる仕組みづくりに向けて取り組んでまいりたいと思います。
 その他のお尋ねにつきましては関係部長から答弁させますので、御了承をお願いします。
   〔商工労働観光部長齋藤淳夫君登壇〕
〇商工労働観光部長(齋藤淳夫君) まず、県内の雇用情勢と経済状況に対する認識でありますが、有効求人倍率は8月まで4カ月連続で上昇しており、水準としてはまだ予断を許さない状況ですが、雇用については底がたい動きになってきていると考えております。
 一方、製造業など生産面での指標となる鉱工業生産指数を見ますと、平成21年3月を底に緩やかに上昇に転じ、月によっては増減はあるものの、回復基調となっております。実際に企業へ聞き取りを行った結果でも、リーマンショック以前の状況に戻った、あるいは七、八割ぐらいまでは回復したと聞いておりまして、県内の製造業は相当程度回復していると認識しております。
 さらに、日銀盛岡事務所が公表しております岩手県金融経済概況7月分では、個人消費の面でも、これまでの経済対策や猛暑の面から、一部の家電製品や自動車などを中心に持ち直しの動きが出てきているほか、住宅投資も底打ちの兆しという報告がなされており、県内の経済情勢は緩やかに回復してきているものと考えております。
 こうした指標等を見ますと、製造業などの回復が雇用面に反映されるのがややおくれていると考えているほか、輸出関連企業では、急激な円高による先行きの不透明感から、当面は雇用をふやさず様子を見るという動きが出始めていることから、雇用情勢の動向については、今しばらく注視する必要があるものと考えております。
 次に、高校生の求人状況についてでありますが、県では、今年度も引き続き厳しい状況が予想されたことから、昨年度の経験を踏まえ、高校の就職支援相談補助員を増員したほか、高校ごとの就職セミナー開催による生徒の意識醸成を図るなど、進路指導の強化に早期に取り組んでまいりました。これに加えまして、6月には関係機関と連携し、経済団体に、採用枠の確保及び求人票の早期提出の要請を行ったところでございますが、今年度は、特に個別の企業を一つ一つ丁寧に訪問いたしまして、新規高卒者の厳しい就職環境について訴え、協力要請を行ったところであります。こうした取り組みに加え、景況感の改善に伴う企業の採用意欲の向上と相まって、県内企業の求人数が8月末現在で昨年を上回るという結果につながったと思っております。
 次に、既卒者に対する就職支援についてでありますが、国の追加経済対策に基づく3年以内既卒者トライアル雇用奨励金や3年以内既卒者採用拡大奨励金については、9月24日から既に各ハローワークで取り扱いを始めているところであります。岩手労働局によりますと、今般設置いたしました岩手新卒者就職応援本部を中心に、今後、本格的に事業主団体等への周知、啓発を行っていきたいとのことでありました。同本部の第1回会議は10月中旬に開催される予定となっております。県といたしましても、本部の構成員として、本庁及び広域振興局の職員等による企業訪問などを通じ、積極的に制度の周知を図るとともに、ジョブカフェなどの利用者に対しましても丁寧な情報提供を行いまして、本部の活動と呼応しながら既卒者の就職支援に努めてまいりたいと考えております。
   〔県土整備部長平井節生君登壇〕
〇県土整備部長(平井節生君) 県内建設業者の経営実態についてでございますが、東日本建設業保証株式会社の調査によると、県内建設業者の経常利益率の平均は、平成16年度にマイナスに転じて、近年はマイナス2%前後で推移しており、東日本23都県の平均を大きく下回る状況が続いております。また、本年8月から9月にかけて、県内13地域で実施した建設業地域懇談会では、各地域の建設業関係者から、公共事業の減少に民間需要の落ち込みが加わり、やむを得ず建設機械を手放したり、役員報酬や社員の賃金を引き下げたなどの報告があり、以前にも増して厳しい経営環境に置かれていると、改めて認識を深めたところでございます。
 次に、設計労務単価についてでございますが、設計労務単価は、公共工事の元請並びに下請企業の賃金台帳をもとに、国と県等が協力して毎年実施している労務費調査に基づき、国が調査翌年度の設計単価を都道府県ごとに決定しているものでございます。
 本県の設計労務単価は、平成10年度以降、低下傾向に歯どめがかからない状況が続いております。この背景には、建設投資の急速な減少による価格競争の激化や、公共工事における落札率の低下があると考えており、これらが下請企業へのしわ寄せや建設労働者の賃金の引き下げをもたらし、ひいては労務費調査に基づく設計労務単価を引き下げるという状況が続いていると認識しております。
 建設産業は人が支える産業であり、賃金水準の低下は、雇用環境の悪化のみならず、工事品質や安全性の低下にもつながることが懸念され、また、建設産業を担う優秀な人材の確保にも困難を来す要因となるものと考えております。
   〔総務部長菅野洋樹君登壇〕
〇総務部長(菅野洋樹君) いわゆる91社問題に係る課徴金、損害賠償金についてでありますが、課徴金は、御案内のとおり、独占禁止法の規定により公正取引委員会が命じるものでありますが、法律上の期限は審決の日─本件の場合は平成22年3月23日でございますが、これから1年以内とされてございます。過去の例では、4カ月ないし6カ月後程度で納付命令が出されているのが通例でございます。納付命令から30日以内に審判請求がなければ命令が確定することとなりますので、これを待ちまして、県の損害賠償の請求について、その確定状況を確認した上で対応していくことになろうと存じております。
 次に、損害賠償に係る支払いについてでございますが、地方自治法施行令におきまして、一定の条件を満たす場合には、債権の履行期限の延長及びこの場合に債権の金額を適宜分割して履行期限を定めることが認められております。したがいまして、今後、請求の額、それから相手方の財務内容など個々の状況を見ながら、それぞれ適切に対応していく必要があろうと考えております。
 次に、低入札の現状等についてであります。本年度の4月から8月までの普通会計における低入札は235件、発生率は57.3%と、前年同期と比較して件数は同様でありますが、発生率は6.2ポイントの増加となっております。一方、落札率は82.2%で、前年度1年間と同水準となっております。
 最低制限価格制度の導入状況につきましては、これは全国の状況でございますが、本年2月に国が発表した調査結果では、平成21年度現在において、低入札価格調査制度のみが6団体、低入札価格調査制度及び最低制限価格制度の併用が41団体あり、これは前年度と同様でございます。
 また、予定価格の公表につきましては、平成20年度から平成21年度にかけて、事前公表のみとしていた32団体中、事前公表及び事後公表の併用に移行したものが11団体、それから、事前公表及び事後公表の併用から事後公表のみに移行したものが2団体ありまして、引き続き事前公表のみとしている都道府県が21団体、このような状況になっております。
 次に、現行の入札制度についてでありますが、本年度、8月までの低入札は235件ございました。このうち、これによりまして208者を失格としたほか、昨年11月の制度改正以後、落札率70%を下回るような大幅な低い事例は減少しつつございます。また、6月にはペナルティーを強化させていただいたところでございますが、39者を最長6カ月間の非指名としたところであり、今後そのペナルティーの影響等も十分見てまいりたいと考えております。
 予定価格につきましては、地方公共団体が契約を締結する場合にあらかじめ作成する契約の上限価格でございまして、標準的な施工能力を有する建設会社が、それぞれ現場の条件に照らして、最も妥当性があると考えられる標準的な工法で施工する場合に必要となる経費を基準として積算される、このように定められておりますが、入札参加者の企業努力や取引上の要因などによって変動の余地はあろうかと存じてございます。
 また、事前公表についてでございますが、御指摘のありました不正行為を防止するという大きなメリットがあると同時に、入札の透明性を向上させ、入札制度全般に対する県民の信頼回復にも寄与しているのではないかと考えております。
 次に、最低制限価格制度の導入等についてでございますが、御提案のありました方法、それから本県の平均型失格基準価格と予定価格の事前公表、これは制度としてそれぞれのメリットとデメリットがあろうかと存じてございます。先ほど申し上げましたとおり、本県が実施しております現行制度にも、透明性の向上を通じ県民の皆様の入札制度への信頼向上につながる、こういうメリットもあろうかと思ってございます。
 ただ一方、ダンピングの発生を防止することも重要な課題となってございます。まずは現行制度のメリットを最大限生かしつつ、ダンピングを防止する方法についてどのような方策があるのか、他県等の状況も勘案しつつ、今後とも検討を深めてまいりたいと考えております。
   〔農林水産部長小田島智弥君登壇〕
〇農林水産部長(小田島智弥君) 岩手競馬についてのお尋ねであります。
 まず、コスト削減についてでありますが、これまで新計画のもとで、発売額が計画に満たないと見込まれる場合には、競馬関係者や取引先企業と話し合い、工夫を重ねながらコスト調整を実施してきたところであり、今後もその方針に変わりはなく、岩手競馬を存続していくために、コスト管理を徹底することで収支均衡を達成するという基本的な対応について、関係者は共通の認識にあるものと考えております。
 今後とも、収支均衡を実現するため、まずは発売額の確保、拡大に関係者一丸となって取り組んでいきますが、やむを得ずコスト調整が必要となる場合には、関係者に対し岩手競馬を取り巻く状況や発売動向を十分に説明し、理解と協力をいただきながら収支均衡に取り組んでまいります。
 次に、馬資源の確保についてでありますが、第1期終了後のコスト調整では、馬資源の確保や厩舎関係者の収入への影響が懸念される賞典費の削減は可能な限り避けたいとの思いから調整を見送ったものでありますが、今回の収支不足額を解消するためには、事業費の約3分の1を占める賞典費の調整は避けられず、やむを得ず調整の対象としたものであります。
 賞典費の調整に当たっては、厩舎関係者との協議を踏まえ、馬資源への影響をできるだけ抑えるよう配慮したところであり、特に馬資源への影響が大きいとされる出走手当については、減額幅を最小限に抑えたことにより、他主催者と比較した場合でも支給水準に大きな変化はないことから、馬資源の急激な流出は防げるものと考えております。
 次に、地方競馬共同トータリゼータシステムの活用についてでありますが、共同トータリゼータシステムの構築により、全国の地方競馬主催者をつなぐ新たなデータ回線が整備されることとなり、このことにより、共同トータリゼータシステム本来の機能である投票業務のほかに、映像やさまざまな情報など幅広いデータの伝送も可能と見込まれており、その機能を活用した地方競馬主催者間の連携の取り組みが進むものと期待されます。
 また、JRAと地方競馬主催者との間で、共同トータリゼータシステムを活用した勝馬投票券の相互発売の実現に向けて、現在、協議が進められていると聞いており、収益の増加に寄与するものと期待しております。
 次に、発売額の見通しとインターネット発売の影響についてでありますが、長引く厳しい経済情勢の中で、全国の地方競馬、中央競馬とも発売が伸び悩んでいる状況にあり、岩手競馬においても、特に自場発売の低迷が続き、その回復の兆しがなかなか見られないことから、今後においてもしばらくは厳しい発売状況が続くものと見込んでおります。
 そのような中でインターネット発売は順調に増加し、平成21年度では岩手競馬の発売額に占める割合は約12%となっておりますが、地方競馬全体では約29%となっている状況から、岩手競馬においてもさらにインターネット発売が増加し、その比率が高まっていくことが見込まれます。
 しかしながら、インターネット発売が増加した場合でも現行の委託料率では十分な利益を確保できないことから、料率の引き下げについて、地方競馬主催者とインターネット事業者との間で交渉を行っているところであります。
 今後、発売額の確保、拡大を図っていくためには、何よりもまず競馬関係者が一丸となって、魅力あるレースの提供と積極的な広報宣伝に取り組むことが第一でありますが、それとあわせて、岩手競馬を応援する地元のファンや団体、企業等が協力しながら岩手競馬を盛り上げていく活動を展開していくことも必要と考えております。
 このため、去る8月には岩手競馬・みんなで応援ネットワークを立ち上げたところであり、また、若手の岩手競馬ファンが中心となった応援グループの活動も始まるなど、岩手競馬を応援、支援する輪が広がりつつありますことから、このようなつながりの輪をより一層広げていくことで、より多くのファンを獲得し、競馬場に足を運んでいただき、自場発売の確保、拡大を図っていきたいと考えております。
〇31番(佐々木博君) 御答弁ありがとうございました。
 何点か再質問させていただきたいと思います。
 まず、森のトレーの負担の問題でありますが、知事は、まず久慈市がトレー生産組合から回収するのを見ながらというお話をされましたけれども、トレーの生産組合は、既に訴訟を起こした段階で破綻状態なわけです。さらに、補助金を使って購入した資産は担保権が設定できないことになっていたわけですが、これを無視して担保を設定して、それも実は補助金返還の一つの理由になっているわけでありますが、担保権が設定されております。そして、訴訟費用ですら原告みずから出せなかった状態なわけでありますから、もし回収できるにしても、それは本当に微々たるものだろうと思うわけです。
 この問題は、平成10年、11年、12年、3カ年間の継続事業でありましたけれども、事業が終わってから10年もたっている事業であります。さらにまた、さほど回収もできないその様子を見ながらということになりますと、さらにまた解決に時間がかかってしまいますので、これはもし幾らかでも返ってきたら、それは本当にお釣りが入ったぐらいの感覚で、やはり早期にどこがどういう負担でいくかということを決定する必要があるのではないかと私は思っておりますが、そのことについての知事のまず御所見を伺いたいと思います。
 それから、これは平成15年です。返還命令を出されまして、当時、ちょうど12月議会で農林水産委員会と総務委員会で連合審査会というものをつくりました。当時、私は総務委員長でありましたから幾らかこの問題にかかわって、それ以来ずっとかかわっているわけでありますが、この問題について一番追及されたのは、引退された佐藤正春議員であります。この本会議でもこの問題だけですべての時間を使って質疑をしたこともありましたし、予算特別委員会あるいは決算特別委員会でも随分いろいろな質問がありました。
 増田知事のときには、全額、訴訟で回収するの一点張りだったんです。県民に負担をかけるという話はありませんでした。だから私さっき言ったんですけれども、訴訟は二重請求だということは認めますよね。農林水産部長も当時関係者ではないけれども、いずれ訴訟は二重請求なのです、最低でも5億円の部分は。ですから、あんな過大な請求をして、全額回収なんてあり得ませんよ、当然被告だってそのことを訴えてくるわけでありますから。初めから全額返却は無理だったのに、全額、訴訟で回収するの一点張りで進めてきた。やはりそのことが非常にこの事件を長引かせている大きな要因になっているのではないかと思っています。
 それからもう一つ、林業構造改善事業についても、私が言ったとおり研究開発の要素のあるものは対象になりませんよね。ですから、トリニティ工業なんか木材なんか一遍も扱ったことはないわけですから、当然林業構造改善事業の対象になる事業じゃなかったんです、その段階で。県はトリニティ工業と2回目に会ったときにはっきり言っているんです、補助事業でそういう事業だから、テスト機、試作機には融資はできませんよと。それから、事業計画はもっと具体的なものを6月何日かまでに出しなさいと、県はそう言っているんです、トリニティ工業に2回目に会ったときに。ですから、県だってよくわかっていたわけですよ。これは対象じゃないということはわかりながら進めたんですね。当然国だってわかっていたはずです。一緒に協議しながら進めたということであれば、当然国だってわかっていたはずです。ですから、このことについては、いわば国と県は、久慈市がどこまで関知していたか私はわかりませんが、少なくとも国と県は共同正犯なんですよ、このことについて言えば。ですから、私は国の責任も問うべきだと、そういうふうに主張しているわけであります。
 実は答弁が若干変わってきているのは、達増知事になってから、知事は、県民の負担を最小限に抑えるためにということを言っています。平成20年の予算特別委員会でもそういう答弁をしている。前回の田村誠議員の質問に対してもそういう答弁がありました。県はどこかの時点で方針が変わったんですね。増田前知事のときにはそういう答弁はなかった。ちょっとお聞きしたいんですが、どうして変わったか。
 一つには、平成19年、裁判で回収できない未収の部分の補助金返還金について免除できないかという交渉をやっていますね、農水省と。その段階で県民の負担を最小限にするということに針路を変えたのか、協議して変えたのか。あるいは知事自身が今までの経緯をずっと見てきて、この状況では県民の負担は避けられないという御自身の判断で変えられたのか、そのことも含めてまずお伺いしたいと思います。
〇農林水産部長(小田島智弥君) まず、補助金について、裁判で回収するということがいわゆる二重請求になっているのではないかというお話でございましたが、今回の事業対象経費、これはいわゆる補助金部分のほかに、その他の負担金として11億5、000万円ほどかかってございます。全体経費は約27億円かかってございます。これが全体として、今回トリニティ工業の問題によって、機器がきちっとしたものが納入されないことによってこの事業全体が執行されなくなったという意味合いを持って約27億円という数字は押さえるべきものと考えております。
 25億円というのは、確かに議員御指摘のように、その10億円と、国庫が入っている15億円の2分の1の分、これは重なっている部分はあろうかと思います。しかしながら、私どものほうでは、そういう全体として見たときに約27億円全体に損害が生じているという考え方から、こういうことについては訴訟で請求をしておかしくないだろうというふうに判断したものであります。
 それから、研究開発費について、対象にこの林業構造改善事業がならないのではないかという御指摘でございました。確かにこういう林業構造改善事業については、そういう研究開発がきちっとある程度見込まれていないとその対象にはならないということはございます。
 私どものほうでも、そういうことについて県として組合に指導もしつつやりとりをした経過はあるわけですが、いずれそういう部分について、トリニティ工業にある程度、木材についてはノウハウそのものがきちっとあるわけではありませんが、そのやりとりの中で、そういうことについてきちっとできるというようなことから申請行為を行ったものでございます。
 したがいまして、林業構造改善事業というものについて、そういう意味ではきちっとした部分は明確にはお答えできない部分もありますが、いずれそういうことも含めてトリニティ工業にはお願いをし、きちっとした製品が出てくるものということで考えて事業を進めたものでございます。
 それから、県民負担についてでございますが、これは、国とのやりとりは平成16年のときにもございまして、そういう中におきまして、延滞金を免除するというような形で進めるということについて折衝してきたこととあわせて、国には、その後でもありますが、延滞金のほかに本体についても国の責任があるのではないかというようなことで、免除をしてもらうように折衝を重ねてきたところであります。結果として、国のほうからは延滞金の免除というものが今回示されたということでございます。
〇31番(佐々木博君) 私も、森のトレー生産組合が11億5、000万円、金融機関から借り入れていたのはよくわかっています。だけど、訴えはどうですか。補助金と機械の部分で訴えているんでしょう、訴状は。あなたの言った、民間のほかの十何億なんていうのは全然訴えていないじゃないですか。訴えていないことを、何でそんなことをおっしゃるんですか。県だって直接は補助参加を認められなかったから久慈市に職員を発令して訴訟にかかわってきたんだから、もしそういうことを言うのならそういう訴えを起こしたらよかったでしょう。そういう訴えを起こしていないから、被告は全額その分については二重請求だと言っているんですよね、機械については。被告の主張はそうなんですよ。
 いずれほかのお金も使ったのなら、それもきちっと訴えればよかった。そうじゃないでしょう、訴えは。機械の売買代金と補助金、県のかさ上げ分を含めて請求していて、それでほかもあったから云々なんていうのは全然答弁になりませんよ、部長。
 それから、試験研究的な要素があるとあなたはおっしゃるけれども、私、去年の12月24日と25日両日、2日間、証人尋問に行って見てきました。最初から最後までずっと傍聴してきました。技術を持っていたのは庄内鉄工だというふうに証人の岡野さんも言っていました。それで、裁判所の認定は、基本的には森のトレー生産組合が、我々はこういう技術を持っているから我々の指示どおりやればそういったものができるんだと、そういう話があったからトリニティ工業が仕事を受けたんだというのが、大体そういった認定じゃないですか。部長も恐らく判決文を読まれたと思いますけれども、そうでしょう。ですから、やはり裁判でそういうふうに認定されているわけだから、そういった思いがあるかもしれないけれども、それはやっぱり別だと思うんですよ、答弁としては。苦しいところはよくわかる。
 私は、そうじゃないんです。県はやっぱり責任があったんだから、それをきっちりと認めて、そしてどこに県の責任があったかをきっちりと認めて県民に説明して、そしてそんなに長引かせないで、県が責任をとるべきは責任をとるべきじゃないかと。そのためにも責任はむしろ認めたほうがいいんじゃないかというのが私の主張なんですよ。
 先ほど、知事ですか、これで既に処分も終わっていると言いましたけれども、事件がたって、事実関係が終わってからもう10年。これが公になってからももう7年ぐらいたって、もう関係者もやめている方も多いでしょうし、現実的な問題として、今さら県職員に責任をとれなんていう話には私は多分ならないだろうと思います。
 ただ、さっき、増田前知事も含めて、特別職3人も既に処分は終わっていると言いました。確かに処分はありましたけれども、これは森のトレーだけじゃなかったんですよ。繰り上げ充用でずっと競馬の累積赤字をつくったことの責任、それからふれあいランドの用地の問題の責任、この三つ合わせての責任だったのであって、森のトレーだけで責任をとったわけではありません。しかもあのときは県民に負担をかけないことが前提の責任ですから、ですから本当は、もし県民の皆さんに負担をかけるということになってしまうのであれば、あの処分のときの状況とは若干違うんですよ。
 だから私は、もし県民の皆さんに負担をかけるということであれば、当時の最高責任者である増田前知事の見解も県民はやはり問うてみたいのではないかと、そう思っているんじゃないかと、そのことについていかがですかという御質問をしたわけでありますが、知事、そのことについての御所見を伺いたいと思います。
〇知事(達増拓也君) そのような声があることについては重く受けとめたいと思います。
〇31番(佐々木博君) 森のトレーはそれぐらいにしまして、岩手競馬のことで伺いたいと思います。
 さっき知事が地方競馬に対する交付金のお話をしましたけれども、もともと地方競馬というのは財政貢献のために始まった事業でありますから、もし交付を求めてやるということになるとすれば、改めて岩手競馬、地方競馬全体と言ってもいいでしょうけれども、その存在意義、何のためにやるのかということがやはり問われてくるのではないかと思います。そこのところのしっかりした議論が私は必要ではないかと思います。このことについては答弁は要りません。
 共同トータリゼータシステムのことで伺いたいわけでありますが、農林水産部長、確かに1億5、000万円の経費の削減にはなりますが、1億5、000万円というのは6億円売り上げが下がってしまうとチャラになっちゃう程度の削減なんですよね。今、毎年売り上げが下がっていますけれども、6億円なんてものじゃないですよ。もっともっと20億円ぐらいずつ売り上げが下がってきていますよね。そうすると、確かにトータリゼータシステム、期待するところがあるというのはわかりますけれども、売り上げの減少、今の減少のままいけばなかなかそれだけではカバーできない。ですから、さっきもおっしゃったとおり、映像だとか、あるいはJRAとの関係、やはり活用してできることについて、本当に全力投球でいろいろな方策を探っていただいて経費の削減に結びつけていただきたいと思うわけでありますが、このことについての御所見を伺って私の質問を終わります。
〇農林水産部長(小田島智弥君) 共同トータリゼータシステム、これが入りますが、それとあわせて、先ほども御答弁申し上げましたが、地方競馬主催者間でのさまざまな連携の取り組み、それからJRAと地方競馬との間での相互発売の実施、そういうものを活用していきたいと思いますし、そのほかに、先ほど交付金のお話もございましたが、国へのさまざまな要望だとか、いろいろな手だてを尽くしながら、競馬の経営が安定的に持続されるような形で検討を進めていきたいと考えております。
〇副議長(小野寺研一君) この際、暫時休憩いたします。
   午後3時27分 休 憩
出席議員(47名)
1  番 吉 田 敬 子 君
2  番 工 藤 勝 博 君
3  番 高 橋 但 馬 君
4  番 小 野   共 君
5  番 岩 渕   誠 君
6  番 郷右近   浩 君
7  番 高 橋   元 君
8  番 喜 多 正 敏 君
9  番 岩 崎 友 一 君
10  番 木 村 幸 弘 君
11  番 久 保 孝 喜 君
12  番 小 西 和 子 君
13  番 高 橋 博 之 君
14  番 及 川 あつし 君
15  番 亀卦川 富 夫 君
16  番 高 橋 昌 造 君
17  番 菅 原 一 敏 君
18  番 中 平   均 君
19  番 五日市   王 君
20  番 関 根 敏 伸 君
21  番 三 浦 陽 子 君
22  番 小田島 峰 雄 君
23  番 熊 谷   泉 君
24  番 嵯 峨 壱 朗 君
25  番 飯 澤   匡 君
27  番 千 葉 康一郎 君
28  番 新居田 弘 文 君
29  番 工 藤 大 輔 君
30  番 佐々木 順 一 君
31  番 佐々木   博 君
32  番 田 村   誠 君
33  番 工 藤 勝 子 君
34  番 平 沼   健 君
35  番 樋 下 正 信 君
36  番 柳 村 岩 見 君
37  番 阿 部 富 雄 君
38  番 斉 藤   信 君
39  番 及 川 幸 子 君
40  番 佐々木 一 榮 君
41  番 伊 藤 勢 至 君
42  番 渡 辺 幸 貫 君
43  番 吉 田 洋 治 君
44  番 小野寺 研 一 君
45  番 千 葉   伝 君
46  番 佐々木 大 和 君
47  番 菊 池   勲 君
48  番 小野寺   好 君
欠席議員(1名)
26  番 大 宮 惇 幸 君
説明のため出席した者
休憩前に同じ
職務のため議場に出席した事務局職員
休憩前に同じ
午後3時48分 再開
〇副議長(小野寺研一君) 休憩前に引き続き会議を開きます。
 日程第1、一般質問を継続いたします。関根敏伸君。
   〔20番関根敏伸君登壇〕(拍手)

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