平成22年9月定例会 第18回岩手県議会定例会 会議録

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〇46番(佐々木大和君) 自由民主クラブの佐々木大和でございます。
 通告に従い、順次質問してまいりますので、よろしくお願い申し上げます。
 まず最初に、森のトレーについてであります。
 森のトレー訴訟の判決言い渡しが9月17日に盛岡地裁で行われました。請求棄却という原告側にとって大変厳しい結果になりました。このことによる大きな県民負担が生ずることが心配されます。県民の方からは、納税意欲をそがれる大事件だ、しっかり対応してほしいとの意見が寄せられました。
 平成16年3月のトレー組合による提訴から6年半に及ぶ訴訟において、県は、この事案による県民負担を最小限にするといった立場で、訴訟費用の負担もしながら、訴訟の支援に取り組んでこられました。これまで、この森のトレー問題の解決のため県はどのような努力をされてきたのか、わかりやすく説明をしていただきたいと思います。また、訴訟断念の方針とのことですが、これは最善の解決策でしょうか、これ以外の解決策はなかったのでしょうか、あらためて知事の御所見を伺います。
 次に、岩手県の経済活性化について伺います。
 本年度決算の見込みが示されました。7、418億円の歳入、歳出は7、259億円、ともに9%以上の伸びとなっており、県税、地方交付税の減少を上回る国庫支出金、地方債で決算規模が拡大しました。その中で、経常収支率が前年比0.6ポイント悪化したことは気になるところであります。
 安かろう悪かろう、一文惜しみの百知らずといった先達たちの教えが、経済学の大御所ケインズによると、税金や公共支出にもそのまま当てはまるということであります。政府は単に公金をけちればいいというものではない。むしろ積極的に公共事業なるビジネスをして、経済活性化に一役買うべしという考え方であります。なぜか公費削減、公務員削減などが社会正義であるかのように喧伝される昨今ですが、日本の政府が他の先進諸国に比べ際立って小さな政府であることは統計的にも周知の事実。それをさらに緊縮せよという主張をどうとらえればよいのだろうか。事業仕分けも結構ですが、消極的な方向でなく、より積極的な拡張、増強を打ち出すべきではないかと考えます。
 ケインズは、大恐慌直後に公共事業促進の旗を振りました。その後、もはや需要創出はやめ、地域間格差是正をという論文を発表したそうであります。その結論として投資の社会化を提起したとあります。投資の社会化とは何か。社会保障、雇用、教育、環境などを言うのだろうか。答えは示さなかったとも言われております。
 このような中で、岩手県はこの不況にどう立ち向かっていくべきか、岩手県のトップとしての知事の所見を伺いたいと思います。
 次に、インタンジブルスの見える化について伺います。
 道徳がない経済は泥棒に等しく、経済がない道徳は空念仏である、二宮尊徳はこう言っております。県都盛岡には多くの近江商人が住み、その教えは三方よし。売り手、買い手、そして世間、皆がよい経済社会をつくることを目指していたと聞いております。経済と道徳は不可分の関係にあり、日本人は両者を一体に考えてきました。そして、江戸時代後期には1人当たりのGDPは世界一だったと言われております。軍艦や火薬など軍事に連なる科学技術は発達しなかったが、明治維新を経て、たちまち工業国として成長し、追いつきました。さらに、第2次世界大戦で敗れはしましたが、再度立ち直って世界が驚くほどの経済成長を成し遂げております。その要因は、数値的なものに加え日本的な道徳、それによって培われた目に見えないものが企業の大きな力になっていることは疑いのないことであります。これをインタンジブルスと呼んでいます。タンジブルス─貸借対照表に載っている資産に加え、貸借対照表に載らない資産─インタンジブルスを日本型経営の強みとして使っていく必要があります。タンジブルス─貸借対照表上の資産、プラス、インタンジブルス─企業理念、組織文化など数値であらわせない資産を、トータルマネジメントリソース─経営資源としてとらえることが必要です。知的人材資源とか知的経営資源などの言葉がよく使われるようになったことが一つのあらわれであります。
 日本の経営には、経営者、社員、組織などの人材と、企業に蓄積された情報や信用など多くのインタンジブルスがあります。アメリカ伝来の経営の考え方は、定型化し、計量化して、それからお互いの関数関係を教えるのが科学的で合理的で近代的だとするものでした。その過程で定型化しにくいものや計量化しにくいものは分析の対象から外され、いつしか忘れ去られることになりました。ここに来て、今まで、どちらかというと概念にとどまっていたインタンジブルスが、経営に重要な役割を果たす資産として急速に関心が高まってきました。インタンジブルスは日本にとっていわば常識です。日本の企業文化そのものと言えます。特にアメリカでは経営層が主役のインタンジブルスが多く、日本では社員が主役のインタンジブルスが多いと言われております。仕事が終わった後の飲みニケーションなどもその一つかもしれません。
 インタンジブルスの見える化は、県行政に求められる一つの重要な課題だと思います。ハーバード大学のマイケル・サンデル教授の言われる公共哲学の共同体主義の原点となる公徳や人々が共有する善は、組織文化と共通するものと思われます。そして、岩手県最大最高の人材を有する県庁が、インタンジブルスの活用によって一層確かな成果を上げることは間違いありません。これらインタンジブルスを見える化し、価値や資産として認識し、強みとして活用していくべきと考えます。食糧費問題などが起きて、飲みニケーションは極端に少なくなっている昨今ですが、日本の特徴は相互信頼社会ですから、上司には面倒見のよさ、人徳などが求められます。これがあればうまくいくのですが、それが消えかけているように思います。我が県の現状はどうでしょうか。組織文化とも言われる資産を見直し、評価すべきときだと思いますが、いかがでしょうか、県職員の経験をお持ちの宮舘副知事にお伺いします。
   〔議長退席、副議長着席〕
 上野副知事には、中央官庁での組織文化についてお伺いします。中央官庁ではインタンジブルスの見える化は進んでいるのでしょうか、中央官庁の公共哲学とはどういうものなのでしょうか、御所見をお伺いいたします。
 次に、県北・沿岸振興についてお伺いします。
 チェンジ、チェンジ、チェンジで登場したアメリカのオバマ大統領は、イラク戦争や金融危機で厳しい政治状況が続いております。私たちの見るアメリカは、特派員であれ、学者であれ、官僚であれ、みんなワシントンへ行って日本に帰ってくる。銀行員はニューヨークに行って帰ってくる。だから日本では、ワシントンでも、ニューヨークでもない、もう一つの別のアメリカがあることが知られていないと指摘されております。それが、軍事力や経済力を信奉するのではなく、家族やコミュニティを大切にする田舎のアメリカであります。オバマ大統領は、ワシントンの代弁者でもなく、ニューヨークの代弁者でもない、田舎のアメリカの台頭だったのかもしれません。軍事と政治のワシントンと金融のニューヨークがだめになり、もう一つのアメリカ、フロンティアスピリットが生きているアメリカ、信用と人徳が大切にされる田舎のアメリカへのチェンジ、チェンジ、チェンジだったとも考えられます。
 岩手にこのことを置きかえれば、県北・沿岸振興本部の立ち上げは、地域間格差の是正とともに見直すべき価値、田舎の価値を改めて評価することではないでしょうか。文化とはみずからが創造できるもの、文明は協働社会が創造するもの、文明は法律、政策などでコントロールするもの。公共事業が縮減されるということは、結果として、文明の恩恵を受けている都市部と田舎との格差を拡大することになります。県北・沿岸振興本部の立ち上げは、文明の恩恵が少ない地域への特別な配慮がなされることを意味し、住民は期待していると思います。都市部に生活する人は、気づくこともなく、税などでつくられた公共施設の恩恵を受けております。
 全国的に見れば、東京ではJR山手線、地下鉄など公共交通機関が充実しておりますが、岩手県には生活に密着した交通手段は少ないわけであります。必然的に自家用車となるわけですが、生活のゆとりで持つ自動車と、生活必需品となった自動車とは違うものであります。県北・沿岸にもっと文明、政策の明かりを当てなければ一層の人口移動が進み、産業振興を唱えても、働く人がいなくなるほど疲弊した地域になっていきます。岩手県政の重要課題である県土の均衡ある発展の方向性は見えたのだろうか。知事に、県北・沿岸振興本部を立ち上げた意義を改めて問うものであります。
 次に、県北・沿岸地域の産業振興の取り組み状況について伺います。
 21世紀に入った今日の世界は第3次産業革命時代と言う学者もおります。第1次産業革命時代、18、19世紀は、綿製品を中心に英国型大量生産方式による機械化推進の時代でした。そして、19、20世紀の第2次産業革命時代は、米国型大量生産方式による標準化が加わり、大衆の生活利便性を高める消費財によって中流化が図られました。20、21世紀の第3次産業革命時代は、機械化、標準化に加え、デジタル、IT化によって産業の高度化が図られ、先進国では生活環境をよくする耐久財が普及し、中進国は大衆の生活利便性を高めて消費財を普及する時代となっております。製造技術は累積的に発展するものであり、日本経済が世界をリードしていくことは当然のことでありますし、これからも不断の努力を続けなければなりません。
 岩手県は、インタンジブルスの見える化によって人材評価が高まり、一層の活路が、そして躍進が期待されます。さきの県議会商工観光政策研究会で齋藤商工労働観光部長が示した自動車、半導体、医療の三つのリーディング産業の集積を図る北上川流域は、世界の製造業の分野での躍進を目指し、本県経済を発展させるとしております。
 一方の課題である県北・沿岸はどうでしょうか。県北・沿岸の元気な時代は重厚長大時代だったと思います。久慈に川崎製鉄、岩泉に三井金属、野田玉川鉱山、田老鉱山、宮古のラサ工業、釜石の新日鉄、大船渡の小野田セメントなど、鉱工業系の産業が軒並み配置されておりました。岩泉には明治乳業が昭和4年から50年間操業しておりましたが、これも、産業史的に見ると、鉱山にかかわる産業だったと思います。東北にもたくさんの鉱山があり、小坂、尾去沢、松尾など、日本の産業を支えた時代だったと思います。さらに、その前の時代は、たたら製鉄によって農機具をつくり、刀や文銭もつくられた歴史があります。大島高任の溶鉱炉が開発され、鉄は一気に普及し、さらに昭和の後期には連続鋳造機による製鉄が行われ、製鉄所は集約され、釜石の製鉄所も時代の波を受けました。たたら時代には、木炭が大量に必要なことから、京都や奈良の例を見るとおり、人が多く住むところの森が消え、丹波などを経て出雲、そして北においては南部が最後のたたら製鉄の地となりました。木炭のほかに、重い鉄を運ぶ牛は、岩泉には、明治4年に導入されたショートホンと南部つる牛の雑種として短角牛を誕生させ、明治18年ごろ、ホルスタインを導入し、乳牛をつくりました。岩泉の酪農、畜産そして木炭はたたら製鉄の関連産業であります。木炭等で山が切られることにより、そこに自然発生するアカマツとともに生まれるマツタケは、たたら製鉄が生みの親となっております。京マツタケ、丹波マツタケ、今は日本で最も早く発生するマツタケは、岩泉マツタケもブランド化してきております。県北・沿岸に住む多くの人々は、代々これらの産業にかかわって生きてきました。製造技術は蓄積的に発展すると申し上げました。地域の歴史を振り返り、そこから次の時代を生み出す努力は常に必要ですし、欠くことのできない方法だと思います。第3次産業革命の時代を迎えた今日、県北・沿岸においてもあすの光を見出さなければなりません。県北・沿岸の発展を担う新時代の産業は生まれているのでしょうか。県北・沿岸振興本部長の宮舘副知事に、現状と県北・沿岸のこれからについてお伺いいたします。
 次に、ジオツーリズムの推進について伺います。
 県北・沿岸振興の中で観光振興は重要な分野であります。中でも、三陸海岸とともに北上山系は、その成り立ちを見ても、地質の分野で興味を引くものがあります。陸中海岸国立公園を代表する北山崎の景観は、国内の自然資源の中でも特A級という最高ランクの観光資源であるとの高い評価を得ております。ユネスコの支援を受けた世界ジオパークネットワークが認証する世界のジオパークは60カ所を超えました。日本は3カ所。日本ジオパーク委員会の認証するジオパークは11カ所です。その中で、東北はいまだ空白地域ですが、三陸沿岸などは専門家の選んだ日本の地質百選に入っております。学術的にも貴重な地形、地質を有効活用するため、その成り立ちや特徴などの調査研究を行い、ジオパークの認証とあわせジオツーリズムの展開を推進することはできないでしょうか。この自然資産にしっかりした認識を持つことは、県民にとって、特に県北・沿岸に住む人々の活力の源泉にもなると考えます。市町村要望も出されておりますが、ジオツーリズムについて、現在の取り組み状況と今後についてお伺いします。
 次に、道路網の整備状況について伺います。
 県北・沿岸の基盤整備のおくれは産業振興にブレーキをかけ、その結果、若者の定着率を下げることになりました。県央・県南と県北・沿岸の人口比は、新幹線、高速道、飛行機という近代化の三種の神器の進展とともに大きな格差を生んでまいりました。岩手県の自動車登録台数は平成に入って大きく伸びてきました。普通乗用車はもちろん軽乗用車の伸びは目を見張るものがあります。公共交通機関の充実した都市部と異なり、生活する上で必要な交通手段となった現在、道路網の整備は欠くことのできない県政課題であることはだれもが認識していることと思います。早坂トンネルの完成などを見ても、交通安全とともに道路整備は生活向上に確かな手ごたえを与えております。当然、交通量の増加も見られますが、これ以上の人口減少を食いとめるためにも、積極的な取り組みを期待したいと思います。
 県北・沿岸地域における一般国道、県道、市町村道の改良率はどこまで進展しているのでしょうか。県道については、主要地方道と一般県道に分けてお示しいただければありがたいと思います。そして、県は今後、県北・沿岸地域における道路についてどのように整備を進めていくのかお伺いいたします。
 次に、農業用利水ダムの維持管理について伺います。
 農業利水施設は、安全・安心な食料を安定的に生産するための重要な基盤です。特にも、農業用利水ダムは地域の水源となる施設で、県内では県営事業によって、洋野町、九戸村、普代村など五つのダムが建設されており、農業用水の安定供給により、地域農業の発展に大きな役割を担っております。これらのダム施設は、県が造成した後に利水者である地元町村に維持管理を委託し、その費用は町村が負担しておりますが、年数の経過とともに施設の老朽化が進み、設備の保守点検や修繕の費用がかさんできております。管理を受託している町村によりますと、財政負担が年々過重になってきていることから、維持管理に対する支援を県に要望していると聞いております。町村財政が逼迫する中、このままではダム施設の適切な保全管理に支障を来すのではないかと懸念されるところです。
 申すまでもなく、利水ダムは地域農業の振興にとって極めて重要な施設でありますが、地元町村のこうした実情を踏まえ、ダムを所有する県として、今後ともその機能を適切に発揮させるためにどのように対応していくのか、お伺いをいたします。
 次に、岩泉線の脱線事故について伺います。
 7月31日の朝、岩泉線押角-岩手大川間で、茂市発岩泉行き下り列車が、崩落した土砂に乗り上げ脱線しました。土曜日ということもあり、県外の観光客7人が乗っておりましたが、幸いに大きな人身事故にならなかったことは本当によかったと思っております。
 この鉄路は、戦前、需要が高まった岩泉町門で採掘される製鉄用耐火粘土を輸送するため、1941年─昭和16年3月に建設が始まりました。翌年に、茂市-岩手和井内間が開業しました。戦後になって押角トンネルが開通し、昭和22年に、今は廃止となった宇津野駅まで延びました。それから10年かかって、昭和32年に浅内までたどり着き、岩泉まで延びたのは1972年─昭和47年2月6日でありました。当時の丹羽運輸大臣による岩泉駅の揮毫が、どっかりと駅前に据えられております。
 太平洋戦争が始まったのは昭和16年12月8日、その年の3月に小本線が着工して以来、31年の歳月を経て岩泉まで完成したのであります。当時、国鉄では、岩泉駅は無人駅としておりました。龍泉洞などの観光に取り組んでいた岩泉町は、それではだめだと一念発起し、町有林を伐採し、数千万円をかけて全国でも珍しい町有駅を建設したのであります。駅で売っている切符が、岩泉駅前駅という特別な切符になっているのもそのあらわれであり、訪れた人を和ませる田舎らしい切符だと思っております。
 町の意向を受け、商工会青年部が駅の売店を引き受け、全国で初めて青年部員50名が出資する株式会社をつくって営業に当たったのもこのときです。売店はその後、町の第三セクターに経営をバトンタッチしましたが、観光客の減少とともに存続が困難となり、現在は閉じたままとなっております。
 小本線で始まった鉄路でしたが、小本までの可能性がなくなって岩泉線と変更され、俗に言う盲腸線となって今日に至っております。時代の逆風にさらされる岩泉線、苦しみに耐える声が聞こえるような悲痛な事故であると、新聞に投稿した人がおりました。安全運行最優先の岩泉線でなければならないことは言うまでもないことです。長い歴史の中で、地域とともに育った鉄路、それは、その時代の文化であり文明のあかしだったのかもしれません。
 岩泉線、その復旧を願うのは地域住民、さらにかかわりを持ついろんな人々の思いだと考えます。知事の御所見をお伺いいたします。
 最後に、高校再編計画について伺います。
 次期県立高等学校新整備計画の策定に向けて検討が進められております。特にも、少子化による生徒数の減少は顕著であり、学校、学科の配置は大変難しいものとなっております。望ましい学校規模は1学年4ないし6学級程度とし、3学級以下の学級規模については、地域の実情を踏まえ、意見を伺いながら対応するということにしております。
 1学年3学級以下の学校では、地域の人々が不安になり、学校の存続を訴える地域運動まで始まった状況にあります。今ある学校が廃止されるかもしれないという不安を与えることは、地域に対してはもちろん、在校生にも決してよい影響を与えることにはならないと思います。
 自民党は、昨日まで3日間、市町村要望を聴取してまいりました。葛巻高校、伊保内高校など、小規模校を抱える町村からは、高校再編への強い要望が出されました。
 公立高校の規模について、高校標準法によると、本校は240人、分校は100人を下らないとなっております。学級定員は、標準法による40人の学級を設定している中で、県立高校の規模についてはこの標準法を基礎としつつ、望ましい4学級以上としていることは、県北・沿岸などの人口減少が激しい地域で問題化されることは当然と思われます。
 県立高校の規模について、明確に高校標準法を基本に進むべきと思いますが、教育委員長のお考えをお伺いいたします。
 教育の機会の保障という課題でもう一つ、通学に対する支援があります。
 昨年廃止された岩泉高校田野畑校では、公共交通機関としてバスが週3回しか運行されていないため、保護者協議会でバスの借り上げをして毎日運行しております。21名の利用者と聞いております。県は、費用の50%を負担しているとのことです。県の補助は3カ年とのことですので、再来年度で終了することになると聞いていますが、現在、学区を設定している本県において、通学に対する明確な支援方法が示されるべきと思いますが、いかがでしょうか。
 次に、寄宿舎の活用についてお伺いいたします。
 岩泉高校は寄宿舎が立派に整備されているようですが、なぜか入寮する生徒が少ないと聞いております。私たちのころは、地方出身者は寄宿舎に入ると思っておりました。そこでの生活が、後に大変役に立っていると考えております。イギリスのフリースクール、アメリカのチャータースクールのような、公設民営による全寮制の特色ある高等学校も考えなければならないときが来ていると思います。寄宿舎の魅力を引き出せない現代の高校生活のようですが、保護者の舎費負担が実質的に2万2、000円であれば大変魅力的な額と思いますが、それでも評価されない現状をどう考え、今後どのように打開していくのか、お伺いいたします。
 以上で質問を終わらせていただきます。御清聴ありがとうございます。(拍手)
   〔知事達増拓也君登壇〕
〇知事(達増拓也君) 佐々木大和議員の御質問にお答え申し上げます。
 森のトレー問題解決への取り組みについてでありますが、トレー組合が平成16年3月、トリニティ工業に対し損害賠償を求めて提訴した後、県は裁判所に補助参加の申し出を行いましたが認められませんでしたので、裁判外で、原告であるトレー組合と裁判に補助参加した久慈市を支援してまいりました。
 原告のトレー組合の訴訟費用については県と久慈市が支援してきたほか、職員2名を久慈市職員に併任させ、訴訟に補助参加した久慈市の訴訟事務を支援するとともに、トレー組合、久慈市との打ち合わせを行い、原告の主張や立証等を支援するなど、6年半にわたる訴訟に対して、県として可能な限り取り組んでまいりました。また、訴訟の支援にあわせて、補助金返還金や延滞金の免除に向けて国と協議を重ねたところであり、結果として、補助金返還金本体の一部免除は認められませんでしたが、延滞金約5億2、600万円は、去る9月17日に全額免除されたところであります。
 次に、控訴断念への所見についてでありますが、この訴訟においては、原告であるトレー組合が、木製トレー生産設備の製作、納入にかかわる債務の存在や債務の不履行について被告のトリニティ工業と全面的に争ったため、裁判所からも、原告及び被告に対して和解といった話はなく、話し合いでの解決に至らなかったものであります。
 判決では、トレー組合が主張してきたトリニティ工業の債務の存在が否定され、これまで5回の口頭弁論や23回に及ぶ弁論準備手続で原告が有するすべての証拠を提出した中、この判決を覆すだけのさらなる証拠の提出が困難であったことから、トレー組合、久慈市等とも協議の上、控訴しても勝訴する見込みがないと判断し、残念ながら控訴を断念せざるを得なかったものであります。
 次に、不況への対応策についてでありますが、県民一人一人が自分の希望をしっかり持って希望あふれる岩手を実現するために、喫緊の課題である雇用の維持・創出、地域経済の活性化などにしっかりと対応するとともに、人とつながりをはぐくみ豊かさにつながるよう、県民の暮らしの基本となる持続的で安定的な経済基盤を構築していくことが重要であります。そのため、今年度はいわて県民計画を着実に推進するため必要な事業を盛り込み、積極型の予算編成を行いました。
 具体的には、この予算を活用して雇用機会の創出や新卒者等への就業支援、企業の雇用維持や離職者への生活支援など、県民の仕事と暮らしを守ることに意を注ぐとともに、自動車や半導体産業などを柱とした国際競争力の高いものづくり産業の集積促進や地域の特性、資源を生かした農林水産業、食産業、観光産業などの振興、また、医療、福祉、環境など、今後、成長が期待できる分野の産業の育成を重点的に進めています。加えて、社会資本の整備についても、所要の事業規模を確保し、産業や県民の安全・安心な暮らしを支える、真に必要な整備を着実に進めているところであります。
 このような取り組みを進めることにより、地域に根差した産業政策を推進し、県民が岩手で安心して暮らすことのできる社会を実現していきたいと考えます。
 さらに、国においては、現下の経済状況にかんがみ、追加経済対策の動きが見られることから、こうした動向も踏まえ、機動的に対応してまいりたいと思います。
 次に、県北・沿岸振興本部設置の意義についてでありますが、県北・沿岸振興本部は、市町村や地域関係者と連携し、関係各部そして振興局が横断的かつ機動的に総力を挙げて県北・沿岸振興に取り組むため、副知事を本部長として設置されたものであります。
 県北・沿岸の発展なくして県の発展はないとの思いから、これまで、県北・沿岸振興本部を中心に県北・沿岸圏域における地域資源を最大限に生かし、地域と一体となって県北・沿岸圏域の産業振興に重点的に取り組んでまいりました。その結果、食産業、ものづくり産業、観光産業、農林水産業などにおいて、さまざまな地域資源を活用した新商品の開発や販路の開拓、農商工連携などの新たな展開、新規立地企業と既存立地企業の生産拡大、農林水産物のブランド化などの成果があらわれつつあるものと認識しております。
 いわて県民計画においても、県政の重要課題として、県北・沿岸振興に重点的に取り組むことを一層明確にしましたほか、六つの構想の中に、主として県北・沿岸圏域を対象とした海の産業創造いわて構想と元気になれるいわて構想を盛り込んだところであります。今後も、これまでの成果をさらに発展させ、産業経済基盤の構築を図り、地域の自立と活力を生み出されるよう、全力で取り組んでまいります。
 次に、岩泉線の復旧についてでありますが、脱線事故の後、復旧を応援する地元の方々によるさまざまな活動が行われていますことからも、地元の熱意に支えられた路線であることを改めて感じております。この岩泉線は、地域住民の方々の通学や通院など、日常生活における交通手段として重要な社会資本であるとともに、近年では、古きよき趣の残るローカル線としても注目を集め、全国から観光客が訪れる貴重な観光資源であります。このため、一日も早い復旧が強く望まれるところであります。
 現在は、JR東日本において詳細な原因調査を行っており、事故原因が明らかにされた後に、必要な対応がなされるものと承知しております。県では、関係する岩泉町や宮古市とともに、復旧等に関する連絡会議を設置し、JR東日本からの情報の収集や必要な対策の検討を行っており、こうした場も活用し、地域の要望をJR東日本に伝えるとともに、JR東日本による対応を支援することとしております。今後も、両市町と連携し、早期復旧に向けた取り組みを展開してまいります。
 その他のお尋ねにつきましては、副知事及び関係部長から答弁させますので御了承をお願いします。
   〔副知事宮舘壽喜君登壇〕
〇副知事(宮舘壽喜君) 県行政における組織文化についてでありますが、県が県民の負託にこたえていくためには、職員個々の能力の向上を図るとともに、組織全体が常に県民全体の利益を目指し、一丸となって課題に取り組んでいくことが重要であると考えております。このため、上司の適切なリーダーシップのもと、これまで培った個々の知識、経験を評価し、伝え、共有化していくとともに、各組織がその総合力を発揮していくことが肝要でありますので、職員の埋もれた知識、経験を明らかにするナレッジマネジメントの強化を図るとともに、各所属長が率先垂範して職場内の一層の意思疎通を図ることにより、組織のモラル及び個人のモチベーションを高め、引き続き県民の負託にこたえるべく組織の強化を図ってまいります。
 次に、県北・沿岸の発展を担う新時代の産業についてでありますが、これまで、新たな産業創出を目指す取り組みといたしまして、地域資源を活用した新素材や新商品の開発に加え、新しい産業展開として食産業、観光産業、農林水産業の分野における6次産業化や農商工連携などに取り組んできた結果、今後に希望を持てる成果が上がりつつあります。
 具体的には、医療機器や一般産業品への応用を視野に、釜石エリアを中心とする県内外の産学官が共同で継続的に研究開発を進めてきたコバルト合金の素材生産、大学と連携し、岩手県沿岸で漁獲されるイサダを原料とする新しい機能性食品素材の試作開発、カキ小屋など新たな素材の発掘、サッパ船や農村生活体験など、体験型観光メニューの充実による魅力的な新しい旅行商品の開発、沿岸のトレッキングコースの整備に向けた調査、付加価値の高い新製法のリキュール酒の開発や地域の食材を活用した惣菜加工工場の新設などの例が挙げられます。これらに加えまして、海の資源を活用した産業の振興をいわて県民計画の中に盛り込み、いわて三陸海洋産業振興指針を策定し、新たに体制を強化した広域振興局を中心に、総合的な取り組みを展開していくこととしております。
 今後におきましても、県北・沿岸振興本部を中心として、本庁各部局や広域振興局との連携を図り、市町村や関係団体と協働しながら、県北・沿岸圏域の地域資源を最大限に活用し、地域の自立と活力を生み出す産業基盤の構築を目指して全力で取り組んでまいります。
   〔副知事上野善晴君登壇〕
〇副知事(上野善晴君) 中央官庁におけます組織文化についてでございますが、国におきましても、県と同様な考え方のもとで、公務員のあり方についての検討が進められているものと承知をいたしております。例えば、本年4月に取りまとめられました財務省が変わるための50の提言におきましては、国民から信頼される財務省になるために、第1に、納税者としての国民の視点に立った行政を行うための不断の努力を行い、殻に閉じこもらず、各界との交流など多様な経験や執行現場の経験により専門性を向上させる。第2に、コスト意識を持ち、不断の業務効率化を行い、これによって得られたリソース、すなわち、マンパワー、時間、こうしたものを人材育成や政策提言能力の向上のために再投資をするというふうにされております。
 こうしたことによりまして、より質の高い政策を国民に発信、提言していく積極提言型を目指すこととされておりまして、このためにモチベーションを高め、オープンでフレキシブルなモデルを構築するとの提言が行われているところでございます。
   〔政策地域部長加藤主税君登壇〕
〇政策地域部長(加藤主税君) ジオツーリズムの推進についてでございますが、現在、学識経験者からなる研究会を設け、造形美にあふれる地形に恵まれ、地質学的にも重要な箇所が点在しております本県の沿岸部を対象に、ジオパークとしての活用可能性について、科学的根拠とストーリー性を踏まえた調査検討を行っております。これまでのところ、有識者からは高い評価をいただいております。また、他県のジオパーク認定地域の事例調査を行うとともに、市町村と連絡会議を開催し、地質、地形資源を観光等に生かすための情報、認識の共有に努めてまいりました。
 こうした取り組みの中で、本県沿岸部は、既に認定されましたジオパーク地域に遜色のない地質、地形資源とその活用実績があり、ジオパークとして十分な価値を有しているものと認識したところでございます。今後、ジオパークの認定申請に向けて進んでいくためには、ジオツーリズムの一層の推進が必要と考えております。市町村や地域の関係者と一体となって課題を具体的に検討し、セミナー等を共同で開催するなど、地域の理解や主体的な参画を促すような取り組みを推進してまいりたいと考えております。
   〔県土整備部長平井節生君登壇〕
〇県土整備部長(平井節生君) 道路網の整備状況についてでございますが、県北・沿岸地域の道路改良率につきましては、国道昇格や主要地方道への昇格を経て現在の道路網となった直後の平成6年と平成21年の数値を比較しますと、県管理の国道は90.9%から93.5%に2.6ポイント上昇、主要地方道は74.9%から84.7%に9.8ポイント上昇、一般県道は48.5%から65.9%に17.4ポイント上昇、市町村道は50.3%から58.7%に8.4ポイント上昇しておりますが、県北・沿岸部と県央・県南部の幹線道路の改良率は縮小傾向にあるものの、依然として格差がある状況でございます。
 今後の道路の整備の方針につきましては、県北・沿岸地域のすぐれた地域資源を生かした食産業や観光産業などの振興を支援するため、その基盤となる道路につきましては、国や市町村とも連携しながら、高規格幹線道路から市町村道までの体系的な道路ネットワークの構築を着実に進めていく考えでございます。
   〔農林水産部長小田島智弥君登壇〕
〇農林水産部長(小田島智弥君) 農業用利水ダムの維持管理についてでありますが、ダムなど基幹的な農業用水利施設は、地域の水循環の中核を担う重要な施設であり、農業用水の安定供給に加え、県土や自然環境の保全、災害の防止等の多面的な機能を有していることから、適切な保全管理による施設機能の十分な発揮が重要であると考えております。県では、ダムの管理を利水者である地元町村に委託しているところでありますが、老朽化した管理設備の補修や更新などについては、国庫補助事業の導入などにより支援してきているところであります。
 一方、国では、ダムなどが有する多面的機能の効用が広く国民に波及していることを踏まえ、国が所有するダムなどの管理を地元土地改良区等に委託するに当たり、維持管理費用の一部を助成しているところであります。このため、国に対し、県営事業で造成したダム等も助成対象とするよう要望してきたところでありますが、いまだ実現に至っておりません。
 県といたしましては、引き続き国に対し制度拡充を要望していくとともに、今後とも、老朽化に対応した施設整備への支援やダム湖周辺の環境保全の活動を促進しながら、利水者である地元町村と連携し、県有ダムの機能の維持、増進に取り組んでまいります。
   〔教育委員会委員長八重樫勝君登壇〕
〇教育委員会委員長(八重樫勝君) 高校再編の基本的な考え方についてでありますが、本年3月に県教育委員会が策定しました今後の高等学校教育の基本的方向においては、教育課程の編成や部活動の状況、社会人となる前段階として担うべき高校の役割などを考慮し、学校規模は1学年4ないし6学級程度が望ましく、3学級以下の学校につきましては、地域の実情等を踏まえ検討していくこととしたところであります。
 来年度上半期に、これは仮称でありますが、第二次県立高等学校整備計画を策定したいと考えておりますが、今後の高校再編につきましては、高校標準法を前提としつつ、地域の皆様方の御意見を十分にお聞きし、その御意見を参考にしながら総合的に検討していく考えであります。
   〔教育長法貴敬君登壇〕
〇教育長(法貴敬君) まず、通学支援への対応についてでありますが、通学の支援については、今後の高等学校教育の基本的方向にもお示ししているとおり、経済的な理由により高校教育を受ける機会が制限されることのないよう、地域の方々の意見を十分にお伺いしながら、生徒の円滑な修学を確保するための通学支援のあり方について、今後検討してまいります。
 また、寄宿舎については、県内7校に設置しておりますが、議員御案内のように、入舎率が低位にある高校も見られるところであります。寄宿舎のあり方は、地域事情や学科などによってそれぞれ状況が異なっていることから、入舎率の改善に向けては、議員御提案の趣旨も踏まえながら、それに応じてきめ細やかに対応していくことが必要であると考えております。
〇副議長(小野寺研一君) この際、暫時休憩いたします。
   午後3時3分 休 憩
出席議員(48名)
1  番 吉 田 敬 子 君
2  番 工 藤 勝 博 君
3  番 高 橋 但 馬 君
4  番 小 野   共 君
5  番 岩 渕   誠 君
6  番 郷右近   浩 君
7  番 高 橋   元 君
8  番 喜 多 正 敏 君
9  番 岩 崎 友 一 君
10  番 木 村 幸 弘 君
11  番 久 保 孝 喜 君
12  番 小 西 和 子 君
13  番 高 橋 博 之 君
14  番 及 川 あつし 君
15  番 亀卦川 富 夫 君
16  番 高 橋 昌 造 君
17  番 菅 原 一 敏 君
18  番 中 平   均 君
19  番 五日市   王 君
20  番 関 根 敏 伸 君
21  番 三 浦 陽 子 君
22  番 小田島 峰 雄 君
23  番 熊 谷   泉 君
24  番 嵯 峨 壱 朗 君
25  番 飯 澤   匡 君
26  番 大 宮 惇 幸 君
27  番 千 葉 康一郎 君
28  番 新居田 弘 文 君
29  番 工 藤 大 輔 君
30  番 佐々木 順 一 君
31  番 佐々木   博 君
32  番 田 村   誠 君
33  番 工 藤 勝 子 君
34  番 平 沼   健 君
35  番 樋 下 正 信 君
36  番 柳 村 岩 見 君
37  番 阿 部 富 雄 君
38  番 斉 藤   信 君
39  番 及 川 幸 子 君
40  番 佐々木 一 榮 君
41  番 伊 藤 勢 至 君
42  番 渡 辺 幸 貫 君
43  番 吉 田 洋 治 君
44  番 小野寺 研 一 君
45  番 千 葉   伝 君
46  番 佐々木 大 和 君
47  番 菊 池   勲 君
48  番 小野寺   好 君
欠席議員(なし)
説明のため出席した者
休憩前に同じ
職務のため議場に出席した事務局職員
休憩前に同じ
午後3時23分 再開
〇副議長(小野寺研一君) 休憩前に引き続き会議を開きます。
 日程第1、一般質問を継続いたします。工藤勝博君。
   〔2番工藤勝博君登壇〕(拍手)

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