平成21年12月定例会 第14回岩手県議会定例会会議録

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〇25番(飯澤匡君) 政和・社民クラブの飯澤匡でございます。
 発議案第1号高速道路原則無料化の撤回を求める意見書に賛成の立場で討論を行います。
 高速道路原則無料化は、さきの衆議院選挙で民主党が政権公約として示した地域立て直しのための政策として位置づけられた大きな目玉政策でありました。
 最近の新聞報道によれば、首相みずから、必ずしも国民に人気がないとか、社会実験で6、000億円は多過ぎるとか、政府内でも、高速道路無料化政策は明らかに迷走し、揺らいでおります。それは、マニフェスト関連予算が膨らみ過去最高の95兆円にも上っていることに起因しておりますが、公約修正を余儀なくされた今、私は、高速道路無料化に潜む本質的な問題を直視し、政策化についてはリセットすることが求められると考えます。
 私は今日まで、高速道路無料化には反対の立場を主張してまいりました。我が国の高速道路は、物流の根幹をなす基幹道路であり、道路維持管理や道路の計画的な整備が前提となって安心・安全が担保されており、その上に日本経済の安定が築かれているのであります。安心・安全に応分の負担をするのは、利用者として当然のことと考えます。
 無論、高速料金が無料になれば、歓迎する人は当然多いでありましょう。しかし、料金の無料化の裏側に潜む課題は多く、かつ大きいのであります。それらの問題が顕在することを避け、メリットばかり強調するやり方には、常々疑問を感じております。
 以下、主に社会的物流を支える道路使用者側からの視点から、具体的問題点を指摘しながら申し上げます。
 第1に、高速道路無料化だけでは、物流生活コスト低減に大きな影響は出ません。
 高速道路の無料化は、物流生活コストを大幅に切り下げ、都会と地方の格差を是正するとの主張がありました。しかし、平成19年のトラック運送事業の総経費構成を見ますと、運送費のうち人件費は38%、燃料油脂費が16.5%、道路使用料はわずか3.9%であります。物流コストを低減するには、燃料油脂と関係の深い暫定税率の扱いと対をなした議論をしなければ意味がありません。全日本トラック協会などの運輸交通団体は、それらの点を重く見て、安易な無料化政策に反対しています。
 また、現時点で政府は、暫定税率の廃止と同時に環境税の導入を計画していますが、議論が成熟しておらず、来年度の税収が37兆円に落ち込むことを予想されたこともあって、それらの方向性すら見えていません。確かに人口の集中する都会、主に京浜圏への物流コストは、地理的に離れれば離れるほど負担が大きく、単純計算ではコストは下がります。ただ、現実は、他の問題を引き起こす要因もはらんでいます。
 現下の経済情勢において、総体的な費用の低減のために最初に削られるのが物流コストであり、原価計算など考慮なく、冷徹に何%カットの一方的な通知で処理されるケースがほとんどであると言っていいのであります。厄介なことに、製造業者から物流業者に支払われる物流費の中に、高速料金が包含されている例が圧倒的に多いのであります。また、安全対策のコストも、ここ数年来上昇しています。
 第2に、高速道路無料化は、道路使用者の使用責任意識を低下させます。
 道路使用者が、道路を使用することにより道路を傷めるから使用料金を支払う、これほど明快な使用者と管理者との健全な関係があるでしょうか。高速道路は、他の先進国と比較して、日本の地理、地形上の問題で建設コストが高い、それを維持、負担するのは使用者であって、高速道路を使用しない国民に負担を求めるのは、税の公平を欠く議論であります。
 ただになれば、当然のごとく利用者はふえる。車がふえれば、事故もふえる。一般道と異なり速度が出ている高速道路では、一たび事故が起これば、生死にかかわる事故となります。ただという割安感で、安全管理の問題に関して予想の範囲を超える問題が発生いたします。
 また、我が国と異なり、欧米では、高速道路の位置づけはフリーウエイであり、料金は無料の道路が多いですが、車線の数が用途別に確保され、産業道路と一般道路は車線で区別されています。交通安全対策が建設段階から担保されている点を押さえておかなければなりません。
 また、欧米では、ドライバーの休憩エリアも法的根拠で整備されておりますが、残念ながら、我が国でこのような環境にはありません。
 第3に、高速道路無料化は、交通渋滞が経済を混乱させます。十分に予想される交通渋滞が時間的物流網を破壊します。今や運送業界ではスタンダードになっている中間在庫を持たないジャスト・イン・タイム輸送方式は発時間から着時間まで管理されており、着時間に製品が届かないと工場は動かない仕組みになっています。世界のグローバル化により国内の工場は海外工場に直結しており、産業界にも大きな影響が出ることが予想されます。すなわち、産業界にとっては必要のない管理費用が発生することは目に見えています。
 また、高速道路が渋滞すれば、一般道に車が流れるから心配ないとの現政府の一大臣の発言がありましたが、私は、極めて非現実的な発言であると思います。これらのことを想定しないで、果たして経済を発展させることになるのでしょうか。
 第4に、高速道路無料化は、低炭素社会の移行に逆行します。私は、週末、休日利用料1、000円の設定にも疑問を呈しました。無料化は車の走行台数を増加させ、二酸化炭素削減には全くもって寄与しません。これから未来に向けた国民が目指す環境に配慮した社会の構成にさお差すやり方であると言わざるを得ません。
 特に地方都市は、欧州で実現している公共交通の整備に転換していく政策が中長期的な目指す方向性であると考えますし、都市間交通にも同じことが言えます。本県の優良県税である軽油引取税90億円のうち物流業負担が38億円であることも踏まえ、この際、道路建設や維持に対する国と地方との税負担の議論や高速道路の使用者の公平な負担区分設定など、合理的な議論を積み重ねることが最も国民利益に資する道筋と考えます。複合的な視点で考察するこの過程を省いて国民の理解も得られません。
 この際、国民の支持を得ない高速道路無料化は一たん撤回し、本質的な問題を直視し、総合的な見地での判断と国民との合意形成を政府に求めるものです。
 以上申し上げて私の賛成討論といたします。御清聴ありがとうございました。(拍手)
〇議長(佐々木一榮君) 次に、斉藤信君。
   〔38番斉藤信君登壇〕

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