平成21年12月定例会 第14回岩手県議会定例会会議録

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〇38番(斉藤信君) 日本共産党の斉藤信でございます。
 議案第19号いわて県民計画の策定に関し議決を求めることについて、反対の討論を行います。
 反対する第1の理由は、今回のいわて県民計画案が、希望あふれる岩手、実現していきたい岩手の未来の姿をわかりやすく示すものと言いながら、政治の新しい激動と変化を見通すこともできず、深刻な経済危機に直面をして、具体的な目標や計画を示すことができなかったことであります。
 8月の総選挙で、1955年以来続いてきた自民党政治が終わりを告げ、政権交代が実現しました。今、新しい政治の実現へ国民的な模索と探求が開始されています。鳩山政権の今後は極めて過渡的で見通すことはできませんが、従来の自民党政治に追随してきた延長線の発想では、県政でも10年後の新しい展望を示せないということであります。
 また、昨年秋以来のアメリカ発の経済危機によって、アメリカ型の金融資本主義が破綻し、それに追随してきた日本が最も大きな影響を受けました。その本質は、新自由主義に基づく規制緩和と弱肉強食、金融経済を中心にした経済システムの世界への押しつけと破綻であります。
 日本の大企業は、莫大な内部留保には手をつけず、派遣切り、期間工切りで深刻な雇用破壊をもたらしました。こうした大企業への横暴を許さない立場がないために、県民計画では1年後の見通しも立てられない事態となっています。
 こうした激動と危機的状況のもとで、見通しのない県民計画を策定すること自身が問題だったと言うべきであります。県民計画の大部分を占めるアクションプランが、1年前に策定したいわて希望創造プランの焼き直しとなり、その計画期間はわずか1年程度にしかならないことも、無駄な計画づくりだったと言わなければなりません。
 今、必要なことは、危機的状況の雇用問題や貧困打開、社会保障の再建に県政の力を集中して全力で取り組むことであります。政治の激動と新しい転換を見定めて、具体的で根拠のある計画をあわてずに時間をかけて策定することこそ必要ではなかったでしょうか。
 県民所得の向上は達増知事の重要な公約でしたが、いわて希望創造プランよりも後退して、具体的な目標が掲げられませんでした。大幅な人口減少と県内総生産の減少が予想される中、こうした重要な課題についても、目標も対策も具体的に示されなかったことは問題であります。
 反対する第2の理由は、県民の切実な実態と要求を解決する計画となっていないことであります。
 例えば、仕事の分野では、やる気や能力が生かされ、仕事と心豊かな暮らしが調和する社会を目指していますが、3人に1人まで広がった非正規雇用、派遣切り、期間工切りなどの使い捨て労働を解消する目標も対策も示していません。
 暮らしの分野では、安心して子供を生み育て、健康で、ゆとりを持って暮らしていける社会を目指すと言いながら、結婚もできない若者の低所得と不安定雇用、働いても貧困から抜け出せないワーキングプアを解消する目標も政策もありません。少子化が進行する中、合計特殊出生率を引き上げる計画もありません。
 これからさらなる高齢化社会を迎えますが、地域から入院するベッドも奪われ、10年たっても安心して入院できる地域医療の展望も示されませんでした。全国最低の1人当たりの介護サービスの利用量を拡充、改善する目標さえ掲げられていないのであります。高齢化社会に対応した医療、介護、福祉の展望が示されていないことが問題であります。
 第3の理由は、産業振興と農林水産業の問題で、これまでの取り組みの検証を踏まえた根拠ある計画となっていないことであります。
 産業振興の問題では、県はこれまで、自動車や半導体など輸出に強く依存した産業振興を進めてきました。その結果は、誘致大企業はこの10年間、史上空前の利益を上げ内部留保を2倍以上にふやしたが、雇用者報酬は引き下げられ、内需拡大に結びつかなかったことであります。
 昨年秋以来のアメリカ発の経済危機によって、派遣切り、期間工切りという雇用破壊が行われました。この反省から、外需頼み、輸出依存の産業振興から、内需拡大、地域循環型の産業を本格的に振興するべきでありますが、その方向が示されていません。地域経済の主役である中小企業の位置づけも振興策もあいまいであります。
 農林水産業の振興の問題では、この10年間それぞれの粗生産額の減少の要因を明らかにして、生産の減少から拡大へ根拠ある具体的対策と計画を示すべきであります。
 農業の課題では、農業土木事業偏重を改めて、再生産を保障する価格保障と所得補償の拡充、歯どめのない輸入自由化路線の転換とあわせ、家族経営の後継者が育成されることが必要です。
 林業では、個人住宅や公共施設への県産材活用への助成を含め、需要拡大と結んで原木から木材加工品までの一貫した生産体制を確立することが必要であります。これまでの林業の振興に結びつかない林道整備ではなく、きめ細かな路網の整備を進め、県土の77%を占める森林の本格的な活用を図るべきであります。ドイツの経験に学び、自動車産業に倍する就業者を要する林業の振興で地域を起こし、限界集落をなくす計画を示すべきであります。
 第4に、教育・文化の計画では、自民・公明政権が進めてきた新自由主義に基づく管理と競争の教育がさらに強化されようとしていることであります。
 達増知事は、昨日の新しい長期計画特別委員会で教育哲学を質問され、先生の意見をよく聞くこと、先生の立場に立ってものを見ることと答弁されました。余りにも貧困な教育哲学に驚きました。
 教育の目標は、人格の完成を目指すことであり、子供の成長と発達を保障することであります。一人一人に行き届いた教育条件を整備することこそ行政の最大の役割であります。ところが、30人学級どころか35人学級の拡充の方向さえ示されていないのであります。
 一方で、各学校における目標達成型の学校経営を推進し、県版学力テストとも言える学習定着度状況調査で学力向上を進める計画となっています。国連子どもの権利委員会から厳しく指摘され、是正勧告された異常な管理と競争の教育、自民・公明政権のこれまでの教育政策を根本的に転換すべきです。落ちこぼれを一人も出さないことを目標に、教師の力量と自由度を高め、行き届いた教育で、テストもなく世界一の学力を達成したと言われるフィンランドやデンマークの経験などに学ぶべきであります。
 第5に、観光王国いわての実現を目指すとスローガンを掲げながら、そのための具体的な政策、計画が示されていないことであります。
 地球温暖化防止の対策は、地球的課題であり、県政に不可欠の重要課題であります。葛巻町や住田町の取り組みにも学び、バイオマスや風力、太陽光などの自然エネルギーを最大限活用した循環型地域社会と産業振興を本格的に進めるべきであります。来年度までに掲げているCO2の8%削減目標を達成する具体的な取り組みを進めるべきであります。
 第6に、アクションプランの改革編では、政策の選択と集中が掲げられているものの、無駄と浪費の大型公共事業は温存されていることであります。
 70億円も無駄遣いとなる141億円の県営津付ダム建設事業や530億円の簗川ダム建設事業、321億円の花巻空港整備事業、計画と実態が大きく乖離している港湾整備事業などは、温存、継続とされています。無駄と浪費、不要不急の大型開発は、根本的に見直すべきであります。
 また、国の押しつけによる平成の大合併で短期間に合併したところでは、周辺地域の衰退など深刻な矛盾と問題が指摘されていますが、さらなる市町村合併の推進化を掲げていることも問題であります。
 以上申し上げまして、私の反対討論といたします。御清聴ありがとうございました。
〇議長(佐々木一榮君) 以上で通告による討論は終わりました。これをもって討論を終結いたします。
 これより、議案第19号いわて県民計画の策定に関し議決を求めることについてを採決いたします。
 本案は、委員長の報告のとおり決することに賛成の諸君の起立を求めます。
   〔賛成者起立〕
〇議長(佐々木一榮君) 起立多数であります。よって、議案第19号いわて県民計画の策定に関し議決を求めることについては、委員長の報告のとおり決定いたしました。
 次に、お諮りいたします。新しい長期計画に関する調査の件については、これをもって調査を終了したいと思いますが、これに御異議ございませんか。
   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
〇議長(佐々木一榮君) 御異議なしと認めます。よって、本調査事件については、これをもって調査を終了することに決定いたしました。
   日程第17 議案第20号収用委員会の委員の任命に関し同意を求めることについて
〇議長(佐々木一榮君) 次に、日程第17、議案第20号収用委員会の委員の任命に関し同意を求めることについてを議題といたします。
 提出者の説明を求めます。宮舘副知事。
   〔副知事宮舘壽喜君登壇〕
〇副知事(宮舘壽喜君) ただいま議題とされました人事案件について御説明いたします。
 議案第20号は、収用委員会の委員であります野村弘氏、八木橋伸之氏の両氏の任期が12月24日で満了となりますので、両氏を再任するため議会の同意を求めようとするものであります。
 よろしく御審議の上、原案に同意くださるようにお願いいたします。
〇議長(佐々木一榮君) お諮りいたします。ただいま議題となっております議案は、人事案件でありますので、会議規則第34条第3項の規定及び先例により、議事の順序を省略し、直ちに採決いたしたいと思います。これに御異議ございませんか。
   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
〇議長(佐々木一榮君) 御異議なしと認めます。よって、これより、議案第20号収用委員会の委員の任命に関し同意を求めることについてを採決いたします。
 収用委員会の委員に野村弘君を任命することに同意する諸君の起立を求めます。
   〔賛成者起立〕
〇議長(佐々木一榮君) 起立多数であります。よって、収用委員会の委員に野村弘君を任命することに同意することに決定いたしました。
 次に、収用委員会の委員に八木橋伸之君を任命することに同意する諸君の起立を求めます。
   〔賛成者起立〕
〇議長(佐々木一榮君) 起立全員であります。よって、収用委員会の委員に八木橋伸之君を任命することに同意することに決定いたしました。
   日程第18 発議案第1号高速道路原則無料化の撤回を求める意見書及び日程第19 発議案第2号国として直接地方の声を聞く仕組みを保障することを求める意見書
〇議長(佐々木一榮君) 次に、日程第18、発議案第1号及び日程第19、発議案第2号を一括議題といたします。
 提出者の説明を求めます。小野寺有一君。
   〔11番小野寺有一君登壇〕

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