平成21年9月定例会 第13回岩手県議会定例会 会議録

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〇7番(高橋元君) 民主党の高橋元であります。
 会派先輩諸兄の御配慮を賜り、3度目の登壇の機会をいただきましたことに感謝を申し上げ、質問をいたします。なお、最終登壇であり、これまでの登壇者との質問の重複する点もあろうかと思いますが、お許しをいただき、よろしくお願いいたします。
 私は、知事の県政運営、ものづくり産業の振興、農林水産業の振興、教育の振興、集落の形成、県職員の人事体制の6項目について順次質問をいたします。
 初めに、達増知事に県政運営についての考えをお伺いいたします。
 国政は、半世紀にも及ぶ自民党を中心とする長期政権が終えんし、選挙による政権交代がなされ、新たに民主党を中心とする政権が誕生いたしました。鳩山政権構想によると、官僚丸投げの政治から政権党が責任を持つ政治家主導の政治へ、各省の縦割りの省益から官邸主導の国益へ、中央集権から地域主権へなどの5原則のもと、国民の生活が第一として優先順位に基づいた予算の組み替えを行うといたしております。
 新政権発足間もない先月末に、本議会に新しい長期計画案の概略について説明がありました。10年後の平成30年に実現していきたい岩手の未来を示した長期ビジョンや、その実現に向けた具体的な取り組みを示す3編からなるアクションプランがその内容であります。現在、県民説明会の開催やパブリックコメント等が実施されており、11月に最終案をまとめ、12月に策定するとのスケジュールであります。総選挙で民主党が掲げた55項目にわたる政権公約は、連立政権で多少の修正はあるものの、政府方針として確実に実行されるものと考えて対応すべきであり、本県では、ガソリン税などの暫定税率が来年の4月に廃止となった場合、当初予算ベースで約80億円の減収と試算し、新年度予算編成に迅速にその対応を協議されているとのことであります。政権党民主党が掲げる選挙公約、そして現在策定作業中の新しい長期計画案、この整合性の検証が必要と思われます。新政権が、明年の通常国会において国家運営の基本的な枠組みとなる国家運営ビジョンと新年度予算案を示し、その審議経過を見定める2月末ごろまで策定時期を延伸すべきと思うところでありますが、いかがでしょうか。
 知事が提唱する危機を希望に変える希望王国岩手の実現は多くの県民が期待するところであります。しかしながら、2次産業を基盤として3次産業を刺激し、1次産業を6次産業化して県民総所得を上げていく、そのような構想の中での世界同時不況は、基盤とする2次産業を弱体化するものでありました。県民所得の大きな柱である2次産業の停滞、団塊世代の大量定年による現役所得からの年金生活化、1次産業においての後継者不足による廃業など、10年後の平成30年の生活基盤である県民所得を推定するときに、大きな不安を抱くものであります。また、急激な高齢化により、県内自治体組織、産業や医療・介護などの県民生活、体育活動や文化活動、伝統芸能の継承など緒問題が発生することが予測されます。元気な高齢者が中心となる社会であると思いますが、知事が描く10年後の近未来岩手の姿についてお聞かせください。
 2点目は、県政を担う人材づくりについての御所見を伺います。
 本県は、古代にあっては蝦夷の地に稲瀬・国見山極楽寺文化が花開き、平泉・藤原文化に代表される独特の文化を形成し、近現代にあっては東北のチベットとやゆされましたが、蘭学者・医学者高野長英を初め第19代内閣総理大臣原敬を筆頭に5人の総理大臣を輩出し、教育者・農学者新渡戸稲造、台湾総督府長官・東京市市長などを歴任した後藤新平、教育者・文学者宮澤賢治、文学者石川啄木、言語学者金田一京助など、国内外で活躍され、歴史に名を残す偉人、賢人と言われる方々は郷土の誇りであります。このような偉人、賢人を輩出できた岩手の風土、教師、教育環境や家庭環境はどのようなものであったか。藩政時代から明治、大正、昭和と続く時代の岩手の教育にあって、現代の教育に不足するもの、教育の柱や学習の目標は何であったのかなど、調査研究する必要があると思うところであります。個々人の自立した生活と、地域社会や国際社会における共存共生に必要な教育が富国強兵に利用され、戦争と敗戦によってそれまでの日本人の考え方、生き方すべてが否定されたことは、戦後生まれの私にとりましても残念に思えてなりません。
 私見ですが、武士道精神は、混迷する社会を立て直し、世界や地球を救う人間としての根源であり、その行動は、あるべき姿、美徳ではないかと思うところであります。小中高の各学年において、郷土の偉人、賢人についての学習と武士道精神についての学習を取り入れるべきと思うところでありますが、知事の御所見をお伺いいたします。
 第2の項目、ものづくり産業の振興について御質問いたします。
 昭和30年代から本県の企業誘致が進められ、現在、729社に上るとのことであります。創業30年、40年になる企業が多数見受けられます。工場施設や生産ラインの老朽化、団塊世代の大量定年による生産・雇用対策、効率化・高度化技術の伝承などの技術力向上などにおいて多くの課題を抱えながら操業しているものと思われます。誘致企業の操業実態についてどのように把握されているかお伺いいたします。また、新商品開発、国内外への事業展開、取引先の拡大等において、県及び企業間における情報の相互活用は行われているのか、その取り組みについてお伺いいたします。
 世界的な景気後退により需要が減退し、ライン生産工場を中心にやむなく事業所の統廃合がなされており、ライン及び施設の老朽化した工場が対象になっております。誘致企業について、撤退や工場閉鎖した企業の調査はこれまでなされていないようでありますが、平成10年度以降において91社に上るとの非公式情報もあります。1商品の平均寿命は10年から15年とされており、大規模生産ラインを抱える企業は、市況を見ながら、新商品に切りかえる多額の設備投資を行っております。内部留保を厳しく批判される方がありますが、新商品の開発、ラインの切りかえは、企業力、内部留保高により、市場を勘案しながらも定期的に実施されなければ、操業の継続は見込めません。産学官連携による新商品開発支援はどのようになっているのか、ライン切りかえのための国や県の支援策はどのようになっているのかお伺いいたします。
 日本が得意といるものづくり産業は多くの分野で成熟化し、大量生産ラインも中国、ベトナム、タイ等に急速に移転が進んでおり、県内誘致企業も海外移転による企業閉鎖が目立ち、雇用の場が失われております。日本の強み、岩手の強み、地域の強みを生かすためにも、さまざまな企業ニーズに合わせた企業支援体制を構築する必要があると思われます。企業誘致活動に偏らず、誘致した企業に対して、雇用を守る観点からもさまざまな企業ニーズにこたえ得る支援を戦略を持って進める必要があると思うところであります。企業誘致から操業支援まで、仮称ものづくり総合支援センターを設置し、総合的に取り組む体制を構築すべきではないかと考えますが、御所見をお伺いいたします。
 第3の項目、農林水産業の振興についてお伺いいたします。
 人口の急激な増加、地球温暖化による異常気象、バイオエタノールへの転用などから世界的に食料需給が逼迫し、価格が高騰したことや、食料の安心・安全確保上から、国内における自給率向上に向け、耕作放棄地の解消に大きく動き出しました。昨年実施された耕作放棄地に関する調査では、全国で28万4、000ヘクタールの放棄地があるとされております。本県における実態と特徴及び農業従事者の高齢化から今後においても増加が心配されますが、どのように予測しているのかお伺いいたします。あわせて、耕作放棄地所有者の在住地、今後の営農意向について、調査できているのであればお伺いいたしたいと思います。
 次に、耕作放棄地解消に向けての取り組みでありますが、国の方針として、本年度から平成25年度までの期間、都道府県協議会及び地域協議会を設置し、耕作放棄地を再生・活用する取り組みや、附帯する施設等の整備、農地利用調整、営農開始後のフォローアップ等を行うとしております。
 先日、県農地再生・活用対策本部を設置したとの報道があり、対策本部として動き出したことに強いメッセージが伝わってまいります。耕作放棄地の復元手順や復元不可能地の自然化などについて議論されるものと期待しておりますが、今後どのような検討をなされるのか、現時点で想定している取り組み内容についてお伺いいたします。
 耕作放棄地の再生、活用に向けて、基礎となるデータを水土里情報利活用促進事業により整備される農地情報データベースの活用を図るとされております。水土里ネットいわてが現在進めている農地のデータベース化がそれに対応するものと考えられますが、全県を網羅するデータとなっているものなのか、未着手地域があるのであれば、どのような対応を検討されておられるのかお伺いいたします。
 現状以上の耕作放棄地を防止する取り組みも大事であります。現在の耕作者及び農地所有者に対する営農意向調査を定期的に実施し、農地の賃貸、譲渡を、窓口機関を整えて仲介し、優良農地の荒廃を防止すべきと考えますが、耕作放棄地の発生防止策をどのように検討しておられるかお伺いいたします。
 次に、若者の新規就農についてお伺いいたします。
 志を持って新規に農業を営んでいただく若者が多数就農していただきたいと願っております。申すまでもなく、農業は自営業であります。経営者として、生産資材の仕入れから生産、販売、経理まで行う必要があり、特に生産技術の体得、生産機器の調達、販売先の開拓など、支援を受けながらも自己責任で取り組まなければなりません。若者の就農を阻む四つの壁があると言われております。一つは耕作する農地で、農地法上50アール以上必要。二つには生産技術。これは農作物の特性、土壌、肥料、気象などの理系の知識と各種機械操作。三つには起業、営農資金。くわ、かまから農業機械、種苗、肥料、農薬、資材などの購入資金。四つには収益性の低さ、生計できる農業収入とのことであります。新規に農業参入する若い起業家に対する本県の支援策はどのようになっているのかお伺いいたします。新規就農の一番の問題は収益性の低さでありますが、新政権における農業政策の中で戸別所得補償が進められようとしており、工夫次第で大きく改善を図れる要素が出てまいりましたので、次なる大きなハードルとして初期投資資金の確保が重要となってまいります。初期投資を極力抑えるため、農家の空き家あっせん、遊休地の賃貸、中古農機のあっせんなど、負担軽減を図る支援策が必要と考えられます。このような点を含め支援体制は体系化され、窓口は一本化されているのか、あわせてお伺いいたします。
 次に、農林水産業における県産品の海外販路についてお伺いいたします。
 1次産業の振興と1次産業の6次産業化を振興するに当たり、販路の開拓が重要であります。国内における需要拡大は当面大事でありますが、人口減少や高齢化による将来需要が高く望めないことから、海外販路の構築が大事と思われます。昨年に続き本年も東南アジア市場に、知事を先頭に販路拡大に活動しておられますが、隣県の青森県では、アラブ首長国連邦ドバイにおける国際見本市ガルフード2009にリンゴ、長芋、米、しめさば、ホタテなど、モスクワ食品見本市PIR2009Expoにリンゴ、長芋、しめさば、リンゴジュースの食材を出品したとのことであり、本県として海外戦略と取り組みはどのようになっておられるのか、海外販路拡大にどのような課題があるのかお伺いいたします。
 第4の項目、教育の振興についてお伺いいたします。
 地域の小学校、中学校の行事に案内があり、出席して感じたことでありますが、両校とも女性の校長先生であり、教壇にも社会の変化が反映されていると感じたところであります。労働社会の喫緊課題として、失業対策や非正規雇用問題の解決、団塊世代の定年退職の補充対策と、女性の働く環境などをどう整えていくのかであると思います。教育現場における近年の年齢分布、男女構成など教員全体の構成と推移はどう変化し、どのような課題があるのかお伺いいたします。
 女性教員の採用増加に伴い、出産休暇や育児休暇に対応する体制が必要ですが、これにかわる講師の補充等は十分でしょうか。また、講師の役割、職務内容、責任範囲などは明確化され、運用されているのかお伺いいたします。講師の教員採用はどのような状況か、課題も含めてお伺いいたします。
 中学校の学習指導要領の改訂で、平成24年度から柔道、剣道、相撲等の武道の必修化が全面実施されるとされております。指導する体育の先生の戸惑いも聞くわけでありますが、体育担当教諭を対象とした武道の講習会等、どのような取り組みを進めているのかお伺いいたします。
 学力向上へ全国各地でさまざまな取り組みが進められております。小学校での秋田県、中学校での福井県は全国トップクラスの成績で、日本の子供が苦手とする考える授業を工夫して行っているのが好成績につながっているとも聞きます。学力向上へ本県での取り組みや研究はどうなっているのかお伺いいたします。
 情報通信技術ICT教育でありますが、日常生活から業務までICTを活用する社会となってきており、パソコンを活用した教育も、導入されてかなりの年限が経過しております。しかしながら、学校単位では基本的な操作以外についても教えることができる教員が少ないとも聞きます。本県の小・中学校における実情と取り組みはどうなっているのかお伺いいたします。
 第5の項目、集落の形成についてお伺いいたします。
 現・大野高知大名誉教授が提唱した限界集落。65歳以上の高齢者が50%を超え、共同生活が難しくなった集落を定義づけた学術用語であります。限界集落では違和感がある、希望が持てないとし、全国的に表現方法が見直しをなされ、山口県では小規模・高齢化集落と呼ぶことにしたといいます。本県では限界集落を区別して政策を出す必要はないとしておりますが、いわゆる限界集落に該当する県内対象集落数の推移と生活の現状及び将来予測をどうとらえているのかお伺いいたします。各自治体では、集落の活性化や再生に向けた取り組みを進めていると思われますが、取り組み内容とその成果、課題をどのように把握しているのかお伺いいたします。
 少子化の進行、就職を含めさまざまな事由による転出により、山村地域は加速度的に集落が縮小しているのが現状であります。安心・安全の県民生活を考えたとき、いわゆる限界集落について現状で再生可能か、再生が難しいかの判断を各自治体と研究する必要があると思われますが、どのように考えておられるのかお伺いいたします。
 私見でありますが、再生が難しい集落について、地域の核となる地域を定め、住居の整備を図り、集落再編や新集落の形成を進めるべきと思いますが、御所見をお伺いいたします。人の住まなくなった開拓地あるいは集落は幾ら存在し、その現状はどうなっているのか。先人が自然を相手に苦労されて開墾した開拓地でありますが、放置したまま自然化するのではなく、望まれる自然体系に配慮した自然化を進めるべきと思うところでありますが、御所見をお伺いいたします。
 第6の項目、県職員の人事体制についてお伺いいたします。
 まず最初に定期異動について伺います。県職員の定期異動が短期間で行われているように感じますが、内規でどう定められており、どのような期間で異動されているのか、異動の現状について伺います。異動する際の引き継ぎは往々にしてトラブルが発生しやすいものであります。口頭での引き継ぎはされていないのか、異動する際の引き継ぎ体制と、異動経費の総額はどのようになっているか伺います。
 次に、職員構成と採用について伺います。いわゆる団塊の世代の定年退職が始まっておりますが、今後の退職者数の推移と採用計画についてお示しください。教育分野でもお伺いいたしましたが、県職員においても女性職員の採用が増加する傾向にあると聞いております。男女共同参画社会において、女性の職場での働く環境の充実が望まれるところでありますが、女性の就業における不安な点として、結婚や出産、育児があり、このことに対応する職場での対応等を話し合い、協議しておられるのかお伺いいたします。個々人の結婚観や晩婚化という社会的な風潮もあると思われますが、独身の職員が少なくないとの話も耳にいたします。役務により結婚や出産、子育てができないということはないと思うところでありますが、県職員の未婚の実情と、結婚を阻害しているのではないかという要因を担当部としてどうとらえているのか、あわせてお伺いいたします。
 最後に、退職公務員による人材バンクの創設についてお伺いいたします。
 専門的な知識や技術を持った女性職員が、出産や育児、介護、病気療養等で長期に職場を離脱する際、事業の企画や管理、実務など、臨時職員では補い切れない業務もあると考えられます。また、新任職員の指導対応も検討する必要があり、それらに対応するため退職県職員による人材バンクを創設し、一定期間、業務の支援を受ける体制をつくるべきと考えるところでありますが、御所見をお伺いいたします。
 以上で登壇しての質問を終わります。答弁によりまして再質問をさせていただきます。御清聴ありがとうございました。(拍手)
   〔知事達増拓也君登壇〕
〇知事(達増拓也君) 高橋元議員の御質問にお答え申し上げます。
 まず、新政権の国家運営ビジョン等と新しい長期計画の策定についてであります。
 新しい長期計画は、多くの県民の皆さんの参加をいだきながら、グローバル化の進展など本県を取り巻く環境の大きな変化を踏まえて、10年後を展望しつつ、私たちが実現していきたい岩手の未来の姿をわかりやすく描くとともに、その岩手の未来を実現するための政策推進の基本方向を取りまとめるものであります。このような新しい長期計画の性格上、現在進められている新政権の政策の枠組みづくりや新年度予算編成作業の結果が計画の根幹に大きな影響を及ぼすものではないと考えているところでありまして、当初のスケジュールどおり、本年12月中の策定を目指してまいりたいと考えております。
 次に、10年後の岩手の姿についてでありますが、現在、総合計画審議会を初め多くの県民の皆さんとともに策定を進めています新しい長期計画においては、実現していきたい岩手の未来の姿として、基本目標にいっしょ育む希望郷いわてを掲げ、県民一人一人がともに支え合いながら生き生きと働き、安心して暮らし、楽しく学んでいくことのできる希望あふれる社会の実現を目指すこととしております。このためには、直面する雇用の維持、創出や地域経済の活性化、地域医療の確保など喫緊の課題にも対応しながら、議員御指摘のようなさまざまな課題を克服し、また、岩手の持つ可能性を伸ばしていくことが重要でありますことから、長期的な視点で、岩手の未来を担う子供たちなどを育てる人づくりや、地域資源を活用した産業の振興による持続的で安定的な経済基盤の構築を進めるとともに、安心した暮らしを支える医師確保や医療、介護、福祉サービスの提供などセーフティネットの充実、日常生活や災害時の相互扶助、地域文化の創造・保全、まちづくりなど県民生活の基本となるコミュニティ機能の維持・強化などを図ることとしています。これらの取り組みを、県民の皆さんを初め企業、NPO、行政など地域社会を構成するあらゆる主体の総力を結集して進めていくことにより、希望あふれる岩手が実現すると考えております。
 次に、県政を担う人材づくりについてでありますが、本県ではこれまで、厳しい自然の中ではぐくまれた粘り強く実直な岩手の人の性格をもとに、健全な心身の鍛錬と広く深い教養の醸成を図ること、また、先見性や社会性をはぐくむことが岩手の教育の基本となってきたものと認識しており、議員御案内のとおり、数多くの先人を輩出しています。この先人の生き方を学ぶことは、豊かな心をはぐくむ教育にとって非常に有効でありますことから、現在、各学校では、社会や道徳の時間などにおいて、先人の生き方や功績について学習が行われているところであります。
 本県の目指す知、徳、体を総合的に兼ね備えた人間形成のためには、今後とも、新渡戸稲造博士を初めとする先人の教えをさまざまな教育の場面で取り上げ、人が育つ岩手、人を育てる岩手であり続けるために、ふるさとづくりを担う人材の育成に一層努めていきたいと考えております。
 その他のお尋ねにつきましては、関係部長から答弁させていただきますので、御了承をお願いいたします。
   〔商工労働観光部長廣田淳君登壇〕
〇商工労働観光部長(廣田淳君) まず、誘致企業の現状についてでありますが、県では、常日ごろから広域振興局や市町村と連携して企業訪問を行っており、それぞれの企業によって、設備等の老朽化、操業時に採用した従業員の高齢化、製品の高付加価値化に伴う技術者の不足など、多種多様な課題や事情があると把握しております。
 また、お尋ねの新商品開発、国内外への事業展開などの動向につきましては、企業秘密にかかわることも多いことから、必ずしもすべてについて把握しているわけではありませんが、酸化亜鉛を活用した新製品の研究開発に産学官が一体となって取り組むなど、企業の将来にかかわる重要な取り組みが展開されている例もあります。
 今後とも、県内の事業所ばかりでなく、その企業の本社にも足しげく訪問しながら、可能な限り、その企業の立地戦略、将来計画などの情報を把握し、県内での事業活動の継続やさらなる拡大に向けた支援に努めてまいりたいと考えております。
 次に、企業支援についてでありますが、県では、誘致企業に対して、ものづくりネットワークなど県内各地の産学官交流組織への参加を促し、この中での交流を通じて、日常的な情報収集や課題解決の場を提供しております。
 こうした情報交換や企業訪問などを通じて相談が寄せられた場合には、他の企業や大学とのマッチング、資金の融資など多様なニーズにマッチした支援ができるよう、関係機関との強力な連携体制を整えているところであります。
 また、誘致企業の大半は、生産ラインの切りかえなどの設備更新については、それぞれの事情に応じ独自の判断で対応しているものと把握しております。
 県としましては、ラインの増設や設備の拡大を伴う場合について積極的に支援することとしており、特定区域における産業の活性化に関する条例に基づく不動産取得税や事業税の課税免除・減免などの措置や企業立地促進法に基づく機械、建物の特別償却措置などの制度を周知し、利用促進に努めております。
 次に、ものづくり総合支援体制についてでありますが、立地企業への支援については、これまでも企業立地推進課がワンストップの窓口となって、さまざまな許認可等一連の手続に係る関係部局との連携や人材確保における市町村との役割分担など、立地決定の段階から円滑な操業に向けての対応に努めております。
 また、操業後においても、いわて産業振興センターを初め、関係機関との強力な連携体制のもと、資金面、技術面、取引面など、さまざまな企業ニーズに迅速に対応するなど、徹底したフォローアップを行っているところであります。
 こうした活動の積み重ねが、昨年度経済産業省が実施しました企業満足度調査において全国第2位という評価につながったものと受けとめております。このことから、実質的には、現在の体制において、御提案のありましたものづくり総合支援センターの機能が果たされているものと考えており、今後とも、県と関係機関が一丸となった取り組みにさらに磨きをかけ、ものづくり産業の集積に努めてまいります。
   〔農林水産部長瀬川純君登壇〕
〇農林水産部長(瀬川純君) まず、本県の耕作放棄地の実態等についてでありますが、昨年度、国の通知に基づき市町村が行った耕作放棄地全体調査の結果によりますと、県内の耕作放棄地面積は約6、900ヘクタールで、経営耕地面積に占める割合は約6%となっております。
 これを地域別に見ると、面積では、県南地域が最も多く約3、100ヘクタールとなっておりますが、耕作放棄地の経営耕地面積に占める割合は、沿岸地域が約28%、県北地域が約16%と他地域を大きく上回っております。
 将来的な予測については、予測方法が確立されていないため具体的に予測することは困難ではありますが、過疎化や高齢化の進行状況を考えると厳しいものがあると受けとめております。
 なお、お尋ねの農地所有者の在住地や営農の意向については、今回の調査には含まれていないものであります。
 次に、耕作放棄地の解消に向けた取り組みについてでありますが、本年9月に設置した岩手県農地再生・活用対策本部においては、県と関係機関、団体が一体となって農地の再生、活用や農業経営の高度化などに取り組むため、地域における耕作放棄地の再生利用や担い手への面的集積による農地の効率的な活用の推進と、地域資源を活用し、所得形成力の高い集落営農組織の育成を両輪とする運動を展開しようとするものであります。
 今後、地方支部の設置や集落座談会の開催、市町村ごとの耕作放棄地対策協議会の設立支援や重点集落への指導体制の構築などを進め、当面、平成23年度までに、再生利用が可能と考えられる農業振興地域内の耕作放棄地約3、300ヘクタールを対象として、その再生に取り組んでまいりたいと考えております。
 次に、水土里ネットの農地情報データベースの活用についてでありますが、このデータベースは、優良農地の確保や農地の効率的利用等を目的に、岩手県土地改良事業団体連合会と地域担い手育成総合支援協議会が連携して、県内の農業振興地域内のすべての農地を対象として、地図データに地番、地目、地積などを盛り込んだ基盤図の作成に加え、農地の利用状況等を付加した農地情報を計画的に整備するものと聞いております。
 県といたしましても、このデータベースについて、土地改良事業団体連合会等と協議しながら、担い手への農地の利用集積や耕作放棄地の再生、活用等への有効利用を考えてまいります。
 次に、耕作放棄地の発生防止についてでありますが、集落営農などにより農地の最大限の活用を図るほか、中山間地域等直接支払制度、農地・水・環境保全向上対策等を活用して、耕作放棄地の発生防止につながる集落の取り組みを支援してまいります。
 なお、農地の対策等については、現在、市町村農業委員会が窓口となって、農業者等の相談活動や農地の利用あっせん等を行っており、こうした機関と連携しながら農地の有効活用に取り組んでまいります。
 次に、若者の新規就農の支援策についてでありますが、新たに農業に参入を希望する若者を本県農業の次代の担い手として育成するためには、就農から経営の自立に至るまで、発展段階に応じた継続的な支援が必要と考えております。
 このため、県といたしましては、議員御指摘の課題につきまして、まず、住居、農地の確保のため、関係機関・団体と連携し、空き家や市町村営住宅等の紹介、農地情報の提供を行うとともに、生産技術の修得に向けて、農業大学校における新規就農者研修の実施や先進農家での実地研修のほか、農業法人等における雇用就業による技術習得を支援しているところであります。
 また、資金の支援策と就農後の収益性の向上対策として、機械、施設の取得などの初期投資に対し、助成金の交付や無利子資金の融資などの支援策を講じるとともに、農業改良普及センターによる生産技術等の指導や、岩手大学と連携したいわてアグリフロンティアスクールによる経営管理やマーケティング手法の研修などにより、就農希望者のニーズや技術習得レベルに合わせたキャリアアップを支援しているところであります。
 また、若者の新規就農の支援体制につきましては、こうした支援策が体系的に受けられるよう、県農業公社に就農相談員を配置し、初期投資の軽減など各種支援策についての情報提供や相談活動を一体的に行う窓口を設置するとともに、各地域においては、農業普及員が相談活動や市町村、県農業公社等、関係機関・団体との調整を行う就農コーディネーターの役割を担うなど、支援体制を整備しているところでありますが、今後とも、関係機関、団体との一層の連携のもと、こうした取り組みの充実を図り、若者の新規就農を支援してまいります。
 次に、県産農林水産物の輸出戦略と取り組みについてでありますが、これまで、平成20年3月に策定したいわて農林水産物輸出戦略に基づき、商社等の専門家で構成する輸出コーディネーターを活用したきめ細かな市場調査、ビジネスマッチングの支援や、官民で構成するいわて農林水産物輸出促進協議会の活動を通じ、海外実需者との商談会やバイヤー招聘、米、リンゴ、水産物等を中心とした現地量販店でのフェアの開催などに取り組んできたところであります。
 しかしながら、最近の世界経済の減速等により輸出環境は厳しさを増しており、加えて、品目によっては、輸出先において国内他産地との競争も激化しておりますことから、より戦略的な輸出の展開が重要となっております。
 こうしたことから、今後は、これまでの成果を踏まえ、国ごとに品目を絞り込んだ販促活動による継続的な取引の拡大、輸出コーディネーターを活用した新規市場の開拓、海外での販売促進活動等をきっかけとした販売チャンネルの多様化、新たにシンガポールや米国等への牛肉の輸出に取り組み、民間ノウハウを活用しながら、官民一体となって海外における販路拡大に努めてまいります。
   〔地域振興部長加藤主税君登壇〕
〇地域振興部長(加藤主税君) まず、いわゆる限界集落についてでございますが、県では、平成18年度末現在の集落の状況に関して調査を実施したところでございます。その中で、総人口に占める65歳以上人口の割合が50%以上の集落は54集落、将来消滅する可能性があると市町村が考えている集落が36集落との結果でありました。
 その際、平成8年度末時点までさかのぼって得られたデータによれば、当時において総人口に占める65歳以上人口の割合が50%以上の集落は8集落でありました。
 これらの集落におきましては、一般に、通院の足の確保やひとり暮らし高齢者の増加など、生活面での不安に加えまして、集落活動の後継者不足や参加率の低下など、集落機能そのものの維持が困難になるなど、課題が多いものと受けとめております。
 集落の活性化を図るため、市町村では、基盤整備や第1次産業振興を初めとして、地区担当職員や集落支援員の設置、集落活動などに対する助成を行うなどの取り組みを行っているところでございます。
 また、県では、基盤整備等への支援はもとより、集落支援を担う人材を育成するためのセミナーの開催や元気なコミュニティ100選団体の先進的な活動事例発信などを通じまして、市町村の取り組みを支援しております。
 これまでの取り組みによりまして、集落活性化の重要性についての認識は深まり、都市住民との交流や特産品の開発など、若者の定着に向けた取り組みが生まれつつあります。しかしながら、依然としてこうした集落を取り巻く状況は厳しく、それぞれ集落の特性を踏まえたきめの細かい対応を行い、集落の活性化へつなげていくことが課題であると認識しております。
 また、集落再編、新集落の形成についてでありますが、人口減少、少子・高齢化が進展している状況では、集落再編、新集落の形成は集落機能を維持するための一つの方策ではありますが、集落の成り立ちにはさまざまな文化的、歴史的背景がございまして、集落が置かれている条件は一様でないこと、さらには、集落住民の意向が何よりも尊重されなければならないことから、第一義的には、その実情を十分把握しております市町村において判断していただくべきものと考えております。
 しかしながら、市町村においてもぎりぎりの悩ましい選択となることから、集落再編の考え方や枠組み、合意形成の方法など、施策の基本構造につきまして、市町村に対し助言する必要が出てくることも考えられるため、県といたしましても、情報収集や研究を重ねてまいりたいと考えております。
 次に、人の住まなくなった開拓地・集落についてでございますが、その数につきましては、統計上把握されていないということでございまして、お答えできないことを御理解願いたいと存じます。
 離農等により人の住まなくなった集落につきましては、一般には適正に管理されないことが多いということでございまして、国土保全や景観・自然環境の保全などに好ましくない影響を及ぼしていることが少なくないと存じております。
 これを直ちに行政が管理いたしまして自然化を進めることにつきましては、私有財産という制約や経費負担など難しい課題がある上に、法的な枠組みが整備されていない状況でございます。したがいまして、今後の検討課題であると認識しておりますが、防災上の大きな課題がありまして緊急の対応が必要である場合などには、適切に対応されるべきと考えております。
   〔総務部長菅野洋樹君登壇〕
〇総務部長(菅野洋樹君) まず、職員の定期人事異動についてでございますが、昨年度末の人事異動に関し申し上げますと、職員の在職期間につきましては、担当課長級以上の職員は2年程度、主任主査から主任級の職員は3年程度、一般職の職員は4年程度を基準としまして、加えて、業務推進の状況や職員個々の事情等にも十分配慮しながら人事異動を実施したところでございます。
 この結果、異動した職員の実際の在職年数の平均を申し上げますと、担当課長級以上の職員で2.1年、主任主査から主任級の職員で3.1年、一般級の職員で3.6年となっているのが現状でございます。
 次に、異動の際の引き継ぎについてでございますが、人事異動の際には、職員服務規程に定めるところにより、後任者または所属長の指定する者に担当していた事務を文書または口頭により引き継ぐこととされております。
 具体的には、事務引継書を作成いたしまして後任者等に引き継ぐことに加え、異動する前に、前任者、後任者が直接顔を合わせまして引き継ぎ内容を詳細に説明することにより、新体制による円滑な業務遂行が確保されるよう努めているところでございます。
 なお、人事異動に伴う経費の総額については、さまざまな行政コスト等を含めた正確な金額全体を把握することは困難でございますが、職員が人事異動に伴って転居する際に支給される赴任旅費がございます。この赴任旅費に関して申し上げますと、昨年度末の異動に関し7、500万円程度となっているものでございます。
 次に、退職者等についてでございますが、現時点で見込まれる今後の知事部局の定年退職者数は、平成21年度末が104人、平成22年度末が120人、平成23年度末が99人、平成24年度末が104人となっているところでございます。
 実際には、これに勧奨退職者等が加わるため、各年度とももう少し多い人数が退職するものと見込まれますが、本県におきましては、いわゆる団塊の世代の大量退職と言われるような急激な退職者の増加はないものの、ここ数年は、比較的高い水準で退職者数が推移していくものと考えております。
 一方、今後の知事部局の職員の採用についてでございますが、集中改革プログラムにおいて、平成23年度当初に4、000人弱程度とする職員縮減計画を定めております。こういったことから、採用者数は平成20年度が27人、平成21年度が46人にとどまっている、こういう現況にございます。
 ただ、一方、現下の厳しい雇用環境もございますので、一人でも多く職員を採用したいという思いもございます。財政状況を見ながらぎりぎりの調整を進めているところでございますが、平成22年度及び23年度の両年度で130人程度の採用者を何とか確保したい、このように考えているところでございます。
 次に、女性の社会進出に伴う職場環境整備についてでございますが、平成17年度に施行されました次世代育成支援対策推進法におきまして、地方自治体にも事業主として行動計画の策定が義務づけられております。平成17年3月に次世代育成のための特定事業主行動計画を策定し、休暇制度の充実や短時間勤務制度の導入など、職員の子育て支援のための環境整備などに取り組んでまいりました。
 現在、平成26年度までを計画期間といたします新たな行動計画を、今年度内を目標に策定すべく検討を進めているところでありますが、新しい行動計画が、より職員のニーズを踏まえたものになるよう、先般、全職員を対象といたしまして、子育て支援に関する職員アンケートを実施したところであります。
 今後、アンケート結果も十分に踏まえ、女性職員が働きやすい職場環境の充実に向けて取り組んでまいる考えであります。
 次に、県職員の未婚の実態についてでございますが、男女別、年代別の未婚率について、県民全体と比較してみますと、男性については各世代ともほぼ同水準となっておりますが、女性については各世代とも、県民全体から見ますと15から20ポイント程度高い水準にあるのが現状でございます。
 結婚を阻害する要因について、職員アンケートの結果を見ますと、必要性を強く感じていない、忙しくめぐり会いの機会や時間がないなどといった回答が上位を占めておりまして、職員個々の考え方によるところも大きいところではありますが、他方、職員が業務の負担などにより、そうした機会を失うことがないよう、職場として職員のワーク・ライフ・バランス、いわゆる仕事と生活の調和でございますが、そういった点に十分意を用いていきたいと考えております。
 最後に、人材バンクの創設についてであります。
 御提言のありました退職者の活用につきましては、県において、定年等により退職した職員が、長年培った能力、経験を公務に有効に活用するため、従来から行っていた臨時職員や非常勤職員としての任用に加えまして、新たな再任用制度を平成14年から導入したところでございます。
 その任用数は、当初、年度末退職者数の1割程度でとどまっていたところでございますが、平成20年度末には3割程度に拡大しておりまして、徐々に制度の定着が図られている状況にございます。
 一方、現行の再任用制度は、年度当初からの任用を原則としておりまして、年度途中に生じた行政需要に即応できないなど、やや柔軟性に欠ける面も否定できないこと等から、議員の御提言の趣旨も踏まえ、新規採用者数の確保とのバランスも十分考慮いたしまして、退職者の多面的な活用の道を検討してまいりたいと考えております。
   〔教育長法貴敬君登壇〕
〇教育長(法貴敬君) まず、教員の年齢構成などについてでありますが、教員の年齢分布については、ここ5年程度を見ますと、義務教育学校、県立学校全体で、40歳代が4割を占めるようになるなど増加傾向にあり、次いで30代、50代と続き、20代は少なくなってきております。少子化の進行等による教員採用枠の縮小に伴い、全体的に20代及び30代前半が減少するとともに、40代後半から50代の年齢の高い層が徐々にふえる傾向にあります。
 男女比については、全体として見ますと、ほぼ半々で推移しております。学校種別では、小学校及び特別支援学校において女性の割合が6割を超え、年代別では20代から30代の女性の割合が若干高くなっております。
 今後、教員採用数の拡大が難しい状況の中で、首都圏では大量採用の時代に入ってまいりますので、さらに優秀な教員をどう確保していくかが大きな課題となっております。
 次に、出産休暇や育児休業に対する講師の補充についてでありますけれども、補充率は、義務教育学校、県立学校ともに100%であり、講師の職務内容等についても、本務教員と同様の扱いとなっております。
 また、講師の教員採用の状況についてでありますが、平成21年度に本県で採用した教員のうち、平成20年度に県内の学校に勤務していた講師の占める割合は、義務教育学校、県立学校全体で56%、学校種別では、小学校が37%、中学校では62%、高等学校63%、特別支援学校68%となっており、採用数が少ない中でも講師経験者の採用割合は高い状況にあります。
 なお、課題とのお尋ねではございますけれども、現時点で採用試験等における制度的な課題はないものと認識しております。
 次に、中学校における武道の必修化についての対応でございますが、これまでも、本県では毎年、体育実技指導者講習会を開催しており、武道については、ほかの種目以上の頻度で、重点的に指導力の向上を図ってきております。
 したがいまして、今回の学習指導要領の改訂に伴う武道の必修化については、大きな混乱なく移行できる態勢にあると考えておりますが、今後とも、武道に関する研修会の充実を図ってまいります。
 また、施設・設備については、所管の市町村教育委員会に対し、国の補助制度に関する情報などを提供するなど、指導、助言してまいります。
 次に、学力向上の取り組みについてでありますが、全国学力・学習状況調査や県の学習定着度状況調査の結果から、本県の学習上の課題が明らかになってきており、その課題を解決するためには、教員の指導力の向上と児童生徒の生活面の両面からの取り組みが必要であると考えております。
 教員の指導力の向上については、学校を直接支援する学校訪問チームの設置や児童生徒がわかったと実感できるモデル事業の提案、学習内容の定着を図るための学習シートの活用等により授業改善を進めております。
 一方、本県の児童生徒の生活面の状況を見ますと、家庭学習の時間が不足していること、テレビを見る時間が長いなどの課題も明らかになってきておりますので、学校においては、課題の出し方を工夫するとともに、家庭では、家庭学習時間の確保や環境づくりに配慮するなど、学校と家庭が一体となった取り組みを進めてまいりたいと考えております。
 次に、ICT教育についてでありますが、本県の教員のICT活用指導力の状況は、授業にICTを活用して指導できる教員が、小学校教員の割合は全体の50.3%、中学校教員は58.3%となっており、また、児童生徒のICT活用を指導できる教員は、小学校教員で59.2%、中学校教員は57.3%となっており、中学校においては全国平均を上回る率となっております。
 ICT教育の充実のために指導者養成研修への派遣や教員研修を行うとともに、活用事例や指導に効果的なコンテンツなどの情報提供、市町村における研修会開催の促進に努めているところでありますが、今後とも、各市町村と連携しながら取り組んでまいりたいと考えております。
〇7番(高橋元君) それぞれに答弁、大変ありがとうございました。
 私がいろいろ心配しておったんですが、今の御答弁で大変細部にわたって取り組みをされているということが理解できましたので、なお一層御努力をいただきたいと思っております。
 何点か質問したいと思います。
 まず、知事にちょっとお尋ねしたいんですが、知事は外務省時代に海外で生活をされた、そういう貴重な体験を持たれております。外から見た日本、そして日本人の生活や考え方についてどのようにお感じになったのか。それと、そうした経験を岩手の教育あるいは県政にどのように反映していこうとお考えなのか、その点についてお伺いしたい。
 それから、教育長にお尋ねしたいんですが、資源のない日本と言われております。確かに物質的な資源はないに等しいわけであります。しかし、日本には人的な資源が豊富でありました。ですから、明治維新以後、欧州のさまざまな工業技術を応用して今日の工業大国日本をつくり上げることができたわけでございます。その根源となるのは教育水準の高さであり、自然を心身で感じ取る文学と初等教育における数学であったと言われております。先ほど、体や精神の鍛錬で、武道の取り組みについてお伺いいたしました。武士道精神には自愛、忍耐、正義、勇気、惻隠の情など日本人の行動基準、道徳基準が内包されていると言われております。これに加えて大事な心の教育についてお伺いしたいと思います。
 我が日本には、茶道、華道、書道、香道といった独特の文化があります。お茶は、欧米人はマグカップでかぶかぶ飲むが、日本では茶わんを用い茶道にする。茶わん、茶器についても一つ一つにこだわりがある。花の生け方も、鉢植えではなくて華道にしてしまう。字は、相手にわかればいいだけでありますが、書道にする。香りも、香水をぷんぷんさせるのではなく、香道として安らぎを醸し出す。古来より自然への繊細な感受性を源泉とする美的情緒が日本人の核となって、世界に類を見ない文化や芸術がつくられていると言われております。万葉集、古今集、枕草子、源氏物語、びょうぶ、まき絵や浮世絵、漆器、陶芸など、文化・芸術を挙げれば枚挙にいとまがありません。悠久の自然とはかない人生という対比の中の美を感じる類まれな日本人、日本文化が、殺伐とした社会や世界を変えていくと言われ始めております。小学校での英語教育に時間を費やす時間は心の育成に振り向けたほうがいいと私は思っております。英語が話せなくて生活ができない日本人はいないし、仕事や興味のある人は、これまでそうであったように独学で英語を勉強すればいいだけの話というふうに思っているところであります。日本文化と芸術について、教育課程の中でどう取り組まれているのかお伺いいたします。また、心の教育のあり方、本県での取り組みの方向性について教育長の御所見を伺います。
〇知事(達増拓也君) 先ほどの答弁の中で、長期計画、また10年後の岩手の姿についてという関連でも申し上げましたが、この岩手の持つ可能性を伸ばしていくということが、やはり国際的な観点から見ても重要であると考えております。私が、アメリカあるいはシンガポールで日本を紹介することが大きな仕事だったんですけれども、漠然とした日本イメージ、フジヤマ、芸者のような、そういったステレオタイプの日本イメージというのは伝えても余り喜ばれず、また、坂本龍一のCDでありますとか、漫画アキラとか先端的なコンテンツ文化も持っていったんですが、喜ぶ人は大変喜びますが、すべての人が歓迎するわけではない。そういう中で、岩手の四季を紹介するビデオも持っていったんですけれども、これがだれにもみんな、どういう人たちにも大変評判がよかったです。歴史と文化、そして岩手山、北上川、そうした自然の中でチャグチャグ馬コとか、そういうお祭り、文化が花開いている、そうしたことへの理解というものは、外国から見て大変興味深く、また、共感を得るものだったというふうに印象を受けております。そういった岩手の持っているよさを自分たちが自覚して、それを自分たちも楽しみながら外国にも紹介していく、そういう姿勢がこれからの岩手の進む方向として一つ重要ではないかと考えております。
〇議長(佐々木一榮君) 本日の会議時間は、議事の都合によりあらかじめ延長いたします。
〇教育長(法貴敬君) まず、文化と芸術を教育課程でどう取り組んでいるかということでございますが、芸術は、音楽I、美術I、書道Iなどで履修することとされておりまして、そのほか国語や地理、歴史、公民、家庭科などの教科の中でも我が国の歴史的な内容や伝統的な文化について学習することとしております。さらに、今般改正された新学習指導要領では、伝統や文化に関する教育の充実を掲げられておりまして、改訂のポイントになっています。先人の残した文化的遺産を継承、発展させ、新しい文化の創造と社会の発展に貢献し得る能力や態度を育成するということにされておりますので、これに十分取り組んでいきたいと思っています。
 次に、心の教育のあり方についてということでございますが、日本の伝統的な文化が持っている価値に気づくとともに美しいものや自然に感動する心の育成を初め生命を大切にし他人を思いやる心、正義感、公正さを重んじる心の育成などは非常に重要なことと認識しており、これらを身につけるためには、まず読書活動の推進や体験活動の推進も有効であることから、これをなお一層推進するとともに、地域の一員として郷土を愛し、日本のすぐれた伝統文化の継承と新しい文化の創造に向けて努力する児童生徒の育成に向けて今後も一層取り組んでまいりたいと考えています。
〇7番(高橋元君) 大正末期から昭和の初めにかけて駐日フランス大使を務めた詩人のポール・クローデル氏は、大東亜戦争の帰趨のはっきりした昭和18年にパリで話した言葉に、日本人は貧しい、しかし高貴だ、世界でどうしても生き残ってほしい民族を挙げるとしたら、それは日本人であると言われたそうであります。市場原理を初め論理と合理という欧米型の教義は破綻し、世界は混沌としていると思われます。日本食ブームやもったいないという日本人の発想や生活、向こう3軒両隣というような家族的な地域、遠くの親戚より近くの他人という助け合いの社会など、長年にわたって培ってきたさまざまな日本古来の物の考え方、とらえ方、そして行動を生かしていく、大事にする、そのような岩手づくり、国づくりを進めていただきたいと願っているものでございます。関係各位のなお一層の御努力と今後の活動に御期待を申し上げ、質問を終わります。
〇議長(佐々木一榮君) 以上をもって一般質問を終結いたします。
   日程第2 認定第1号平成20年度岩手県立病院等事業会計決算から日程第53 議案第31号損害賠償請求事件に係る和解及びこれに伴う損害賠償の額を定めることに関し議決を求めることについてまで
〇議長(佐々木一榮君) この際、日程第2、認定第1号から日程第53、議案第31号までを一括議題といたします。
 認定第4号から報告第12号まで、以上18件について、提出者の説明を求めます。菅野総務部長。
   〔総務部長菅野洋樹君登壇〕
〇総務部長(菅野洋樹君) ただいま議題とされました議案等について御説明を申し上げます。
 認定第4号は、平成20年度岩手県一般会計歳入歳出決算を認定に付するものでございます。平成20年度の一般会計決算は、歳入総額6、834億6、300万円余、歳出総額6、728億8、500万円余で、差し引き残額105億7、800万円余から、繰越財源額62億3、900万円余を差し引いた実質収支は43億3、900万円余の黒字となっているものであります。
 認定第5号から認定第15号までは、平成20年度岩手県母子寡婦福祉資金特別会計外10特別会計の歳入歳出決算を認定に付するものであります。各特別会計とも実質収支は黒字となっております。
 報告第7号は、地方公共団体の財政の健全化に関する法律の規定に基づき、平成20年度決算に基づく健全化判断比率について報告するものであります。
 報告第8号及び報告第9号は、平成20年度決算に基づく流域下水道事業特別会計及び港湾整備事業特別会計の資金不足比率について、それぞれ報告するものであります。
 報告第10号から報告第12号までは、平成20年度決算に基づく公営企業会計の資金不足比率についてそれぞれ報告するものであります。
 以上でありますので、よろしく御審議の上、各決算を御認定くださいますようお願い申し上げます。
〇議長(佐々木一榮君) これより質疑に入ります。質疑の通告がありますので、発言を許します。阿部富雄君。

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