平成21年9月定例会 第13回岩手県議会定例会 会議録

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〇19番(三浦陽子君) 民主党の三浦陽子でございます。
 このたびは、会派の皆様の御配慮を賜りまして、今期4回目の登壇の機会をいただきましたことに心から感謝申し上げます。
 初めて分割方式で質問させていただきますので、知事初め当局の皆様におかれましては、これまで以上に明瞭で前向きな御答弁をよろしくお願いいたします。
 さて、ことしは梅雨明け宣言がないままに夏が過ぎましたが、天候不順や新型インフルエンザに見舞われながら開催された第91回全国高校野球夏の甲子園大会では、春の選抜大会で準優勝に輝いた花巻東高校のすばらしい戦いが繰り広げられ、岩手県民は、とても大きな勇気と感動をもらいました。残念ながら全国優勝こそ果たせませんでしたが、佐々木監督のもとで、高校生らしいさわやかな戦いぶりを見せてくれました。そして、岩手のためにと最後まで持ち続けた球児たちの強い精神力には、私たちも学ぶべきものが多かったのではないでしょうか。また、菊池雄星投手の活躍は、国内外にも注目され、私も地元の一人として大変誇りに思います。
 その熱い戦いのさなかで行われた第45回衆議院選挙では、多くの国民の皆様の負託を得て、歴史的な政権交代が実現し、官僚主導から民主的政治主導に大きくかじが切られ、いよいよ新たな国づくりが始まりました。
   〔議長退席、副議長着席〕
 今後は、真の地方分権を推進するとともに、マニフェストの実現に向けてしっかり取り組んでいくことを期待するものです。
 そこで、このたびの政権交代に際して、達増知事の率直な御感想を改めてお伺いいたします。
 また、全国知事会における発言力にも大きく影響するものと想像いたしますが、岩手の力をどのようにアピールし、どのような活動をしていくおつもりか、お伺いいたします。
   〔19番三浦陽子君質問席に移動〕
   〔知事達増拓也君登壇〕
〇知事(達増拓也君) 三浦陽子議員の御質問にお答え申し上げます。
 政権交代に対する感想等についてでありますが、今回の選挙においては、国民が、新しい政治を切り開いていこうという大きな決断を行い、日本の政治の変革を願う多くの声によって政権交代が実現したものであり、まさに国民が自立して力強く歩んでいく大きな一歩を踏み出したものと率直に感じております。この国の変化と政治の変革を求める民意を受けた新政権の政策の展開に大いに期待しております。
 新政権においては、これまでの官僚依存の政治から、国民の声に耳を傾け、民意が国のあり方を決めていく政治家、いわゆる政治主導の政治へと転換し、地方の声にも十分耳を傾けて政策を展開していくものと期待しており、新政権みずから、地方の声を初めとする民意をしっかりと把握していくものと考えておりますが、さらに、地域に根差した個別、具体の実情を把握したいという姿勢に対しては、積極的に協力していきたいと考えております。
 また、全国知事会でも、地方分権改革の推進や今後の国と地方のあり方などについて、さまざまな議論が行われているところでありまして、私も、全国知事会に設置されました戦略会議でありますとか、この国のあり方に関する研究会でありますとか、そういった新しい場にも参加しながら、そうした政策課題にもしっかり取り組んでまいりたいと考えております。
〇19番(三浦陽子君) 大変ありがとうございました。知事には、お体に気をつけて頑張っていただきたいと思います。
 次に、歯科保健医療について伺います。
 地域歯科保健医療において、私はこれまで、口腔ケアや摂食、嚥下の重要性について取り上げてまいりました。さらには、急性期病院でのNST、つまり栄養サーポートチームに歯科医師が参加することによって、これらの取り組みが栄養改善に直接結びつき、誤嚥性肺炎などの感染防止や心身の向上につながることから、その取り組みや推進などについて質問をさせていただきました。
 県と岩手県歯科医師会の施策として4疾患─がん、脳卒中、急性心筋梗塞、糖尿病について、岩手県保健医療計画に歯科医の役割が明文化されるようになり、地域医療や介護の現場で、歯科保健医療の重要性の理解が徐々に広まってきたものと思います。
 そこで、歯科保健医療の重要性について、知事はどのようにお考えか、御所見を伺います。
 また、これまでの歯科保健医療の取り組みをどのように評価し、支援、推進していくお考えか、あわせて伺います。
 また、大規模災害時の歯科保健医療体制においては、行政を中心とした関係機関との密な連絡、連携が何よりも必要であり、口腔ケアなどの大規模災害時の二次健康被害を予防するための歯科保健医療の果たす役割が大きいことが、国の大規模災害時における歯科保健医療の健康危機管理体制の構築に関する研究事業の中で発表されています。
 阪神・淡路大震災や中越地震の事例を踏まえ、昨年6月発生した岩手・宮城内陸地震の折に、地区歯科医師会が、被災者の方々に歯ブラシなどの歯科衛生材料の配布や口腔ケア、歯科保健衛生指導などを行ったということです。緊急歯科医療や被災者の健康、QOLの観点から、歯科救援活動は、生きる力を支援する、生活を支援する医療として非常に重要であると考えますが、県として、大規模事故、災害発生時の歯科保健医療体制の構築をどのように進めるおつもりか伺います。
 また、岩手県福祉総合相談センターの要保護児童の口腔内状況と生活習慣との関連について、平成16年11月から平成21年6月まで一時保護された児童を対象に岩手県歯科医師会が調査したところ、虫歯有病率は一般児童に比べ多く、小学生では約3倍であり、1人平均虫歯数は、就学前から高校生まですべての学年で一般児童を上回っておりました。
 保護された理由は、身体的虐待とネグレクトが多いようですが、特に小学生以下の子供たちの口腔内への影響が顕著であることから、この時期の被虐待児のスクリーニングとして歯科健診は重要であり、歯科医師による児童虐待の早期発見や未然防止に一役を担うことができると思います。
 さらに、有病児や障がい児の歯科保健の取り組みやマウスガードの装着によるスポーツ時の事故防止、食と口腔機能との関連における食育の分野など、歯科保健医療の重要性は、関係機関との連携によってさまざまな分野に拡大する可能性があり、県の施策の推進に大きな役割を果たすことができると考えますが、県の御見解をお示しください。
〇知事(達増拓也君) 歯科保健医療の重要性についてであります。
 議員御指摘のとおり、歯科保健医療については、虫歯や歯周病といった歯科疾患の予防のみならず、高齢化が進展する中で、高齢者や要介護者が日常生活において食事を楽しむことができるよう、摂食、嚥下機能を維持改善するなど、医療、介護、福祉分野を通じて、その役割の重要性が高まっているものと認識しております。
 このため、平成20年4月に策定した岩手県保健福祉計画の中では、がん、脳卒中、急性心筋梗塞、糖尿病の4疾病について、それぞれの医療連携体制において歯科医療機関が果たす医療機能を明記するとともに、これを提供する歯科医療機関を公表しているところであります。
 また、各保健医療圏においても、病院、介護施設、行政の代表者から成る圏域連携会議の設置に当たっては、歯科医療機関にも積極的な参画をいただきながら、各機関相互の役割分担と連携に向けた圏域医療連携推進プランを作成したところであります。
 今後におきましても、岩手県保健福祉計画や各圏域の医療連携推進プランに掲げられている施策の着実な推進を図るため、歯科保健医療の一層の充実を支援してまいります。
〇保健福祉部長(千葉茂樹君) まず、大規模事故・災害発生時の歯科保健医療体制の構築についてでありますが、大規模な災害等が発生した場合においては、負傷者の治療の優先順位の設定、いわゆるトリアージ等を行う医療活動のみならず、歯の外傷や義歯の紛失、破損等による応急歯科診療や、避難所での口腔ケア等を行う歯科保健医療活動が重要であると考えております。このような現地活動におきましては、地域の歯科医師会や保健所などが主導的な役割を担うものと理解しているところでございます。
 このような認識のもと、県歯科医師会におきましては、独自の対応マニュアルとして策定いたしました緊急災害時における救急歯科医療体制の手引書に基づきまして、被災した地域の保健所等と連携して歯科保健医療活動に当たられるほか、警察本部の要請に対応して、災害で亡くなられた方の歯型による身元確認作業なども行うこととしていることを承知しているところでございます。
 県といたしましては、このような歯科保健医療活動を支援するため、保健所を拠点としまして保健活動班を編成し、市町村、関係機関等の連携調整などの役割を担うこととしているところでございます。
 災害発生時に、県歯科医師会や県を初めとする関係機関が一体となって活動するためには、何よりも平常時からの連携が重要でありますことから、県といたしましては、県災害拠点病院連絡協議会等の場を活用いたしまして、円滑な医療救護活動の推進に向けた協議を進めてまいりたいと考えております。
 次に、歯科保健医療が県施策において果たす役割についてでございますが、県では、これまで県歯科医師会や岩手医科大学等の関係団体とともに、医療支援の必要な小児の歯科保健・医療を考える会を運営してきたところでございます。その検討結果を踏まえ、当該小児の家族に対しまして、各地域の支援歯科診療所や上手な歯の磨き方などの情報提供を行ってまいりましたほか、岩手医科大学附属病院の障害者歯科医療センターに心身障がい者(児)歯科診療事業を運営委託するなど、医療支援の必要な小児や障がい者の方を対象として、歯科保健医療と連携した取り組みを行ってまいります。
 また、議員よりお話のありましたとおり、今年度から県歯科医師会と連携し、歯科健診等を通じた児童虐待の早期発見に向けた研修会の開催を予定しており、今後、診療や健診の場を通じてその役割を果たしていただけるものと期待しております。
 さらに、生涯にわたって健康で豊かな生活を送る観点から、平成19年に改正いたしました岩手県食育推進計画におきましては、歯と口腔の健康を保ち、よくかんで食事をする習慣を身につけるなどの目標を掲げ学校などで取り組んでいるほか、高齢化の進展を踏まえ、要介護高齢者等を対象とした在宅歯科診療につきましても、東北6県の中でいち早く、昨年度からその実施を支援してまいったところでございます。
 このほか、スポーツ時のマウスガードの装着につきましても、スポーツ外傷の予防の観点から、スポーツ指導者等と連携して対応していく必要があるものと考えております。
 今後におきましても、県歯科医師会を初めとした関係団体等の御意見を伺いながら、これらの取り組みはもとより、県のさまざまな分野において歯科保健医療の役目が十分発揮できるよう検討を進めてまいります。
〇19番(三浦陽子君) ありがとうございます。
 今、知事、そして千葉保健福祉部長からお話がありましたように、本当に歯科保健医療につきましては、随分関心が高まってきて、岩手県におきましては、在宅診療についても非常に御理解を示していただきまして、私も本当にうれしく思っているところでございます。
 大規模災害時における歯科保健医療体制につきましては、阪神・淡路大震災のときに、助かった方でも、口腔ケアがきちっと行き届かなくて誤嚥性肺炎で亡くなられた方も多くいらしたと伺っております。どうぞ、そういう意味でも歯科保健医療体制、きちっとふだんからの、平時の体制を整えていただきまして、御対応いただきたいと希望いたします。
 続きまして、地域医療再生計画の取り組み状況についてお伺いいたします。
 国の平成21年度第1次補正予算にかかわる基金事業のうち、地方公共団体向け事業については、それらのほとんどが実施段階にあるものと聞いておりますが、報道によりますと、地方の意見が反映され事業が継続するものと安心しております。しかしながら、地域医療再生基金については、いまだに国において採択、決定されていないと伺っております。
 県内の医療の現状を見ますと、特に病院勤務医師の不足から、一部の地域の病院では、産科、循環器科などの入院医療が受けられない状況が続くなど、大きな喫緊の課題に直面しております。
 この基金事業は、あらかじめメニューが限定されず、地域の救急医療の確保、地域の医師確保など、それぞれの地域における医療の課題の解決に取り組むことができる事業となっており、私も岩手で医療に携わる一員として、早期に決定されることを大いに期待しているところでございます。
 6月定例会におきまして、この基金を活用する事業は、都道府県が二つの二次保健医療についての地域再生計画案をそれぞれ策定し、10月中旬までに国に提出するという日程などの内容と、本県でも積極的に取り組む意向であるとの御説明を受けたところですが、まず、現在の取り組み状況をお伺いします。また、その計画案にはどのような事業を盛り込もうとしているのか、その具体的内容と、策定作業に当たって何か課題がありましたら、それらにどう取り組んでおられるのかお示しください。あわせて、この基金の交付額は全国10カ所に対しては100億円を交付するということで、当然、本県でも100億円事業を獲得すべく作業を進めておられると存じますが、採択の見通しはいかがでしょうか、お伺いいたします。
〇保健福祉部長(千葉茂樹君) まず、地域医療再生計画の取り組み状況についてでありますが、国の説明会がございました6月中旬以降、医療関係機関、関係団体、医育機関、市町村の御意見を伺いますとともに、また、国の計画策定要領の細部に変動がございましたことから、これらを国に確認しながら、現在、県と計画実施にかかわる機関、団体等が一体となって、鋭意取りまとめの作業に取り組んでいるところでございます。
 今後、近日中に、県医療審議会を構成する医療関係団体等の有識者の方々から専門的な見地による御意見をいただき、本計画の最終案を取りまとめ、国が定める期限までに提出したいと考えております。
 次に、計画案の内容と課題についてでありますが、まず、内容については、いわて希望創造プラン及び岩手県保健医療計画に掲げるがん診療、周産期医療体制の充実確保等に向けまして、盛岡保健医療圏と釜石保健医療圏を対象とする2計画を策定することといたしております。
 具体的に申し上げますと、盛岡保健医療圏につきましては、重篤な患者の医療を担う高度な三次医療機能を有しているほか、県内の産科や小児科などの医師の不足により、県内の他の圏域からの患者の流入が増加しておりますことなどから、総合周産期母子医療センター等の現状を踏まえまして、周産期医療や小児医療、救急医療を統合した医療機能の充実強化を図ることといたしております。また、釜石保健医療圏につきましては、県内で唯一、地域がん診療連携拠点病院が整備されておりません圏域でございますことから、放射線治療機能を整備するとともに在宅医療の推進などに関する事業を盛り込むべく、作業を進めているところでございます。
 次に、この計画策定作業に当たりましての課題でございますが、この計画の対象区域は、二次保健医療圏を基本とすることとされますが、本県の各保健医療圏は医師不足を原因としてほぼ共通の課題を抱えておりますことから、二つの圏域におきましては、全県的に効果が波及する事業、例えば医師確保のための奨学金制度の拡充をできる限り盛り込むべく、現在、鋭意努力しているところでございます。
 次に、いわゆる100億円事業の採択の見込みについてでございますが、まずもって、国におきましては、本基金を含む本年度第1次補正予算に計上されたすべての事業について、その執行の是非を検討しているところであります。さきの閣議決定においては、地方公共団体向けの基金事業につきましては執行の一部留保の対象外とされたところではございますが、現時点で、本基金の執行について最終的な結論はいまだ明示されていないところであり、今後、国の動向を注視していく必要があるものと考えております。このような状況下にはございますが、いわゆる100億円事業につきましては、今申し上げた盛岡保健医療圏の地域医療再生計画案に盛り込むこととしております。ほとんどの都道府県が100億円事業の計画案を提出すると仄聞しており、この中から10圏域が採択されることとなるものでございますので、本県といたしましても、その採択に向け、関係機関、団体と一丸となって取り組んでまいりたいと考えております。
〇19番(三浦陽子君) ありがとうございます。ただいまの御答弁で、基金獲得のために大変頑張っていただいているということがよくわかりました。ただ、各県によって医療を取り巻く状況が違う中で、本県のように医療資源の乏しい県に対しましては、この交付金実施に当たり、なるべく傾斜配分してもらうよう配慮していただくことが必要ではないかと思います。
 以上、感想を述べまして、次の質問に入ります。
 次は、地域包括ケアの取り組みについて伺います。
 高齢者が住みなれた地域で、医療、介護、福祉などのサービスが総合的に提供されるよう、各市町村では地域包括ケアを支える中核的機関として地域包括支援センターを設置しております。地域包括支援センターの充実については、県では、健康安心、福祉社会の実現を目指すため、今年度の主要課題の中にもしっかり盛り込んでおります。
 過日、9月の閉会中の地域医療等対策特別委員会において、陸前高田市地域包括支援センターの主任介護支援専門員と社会福祉士のお二人から現状と課題について丁寧なる御説明をいただきました。そもそも、この制度は平成18年の介護保険制度の改正により保険給付のほかに地域支援事業として位置づけられたもので、介護予防事業、包括的支援事業、そして市町村が任意で行うことができる任意事業があり、そのうち包括的支援事業がセンターの業務でありますが、さらには要支援の方を対象とした介護予防プランの作成業務を行う指定介護予防支援事業所の機能があります。陸前高田市では、介護支援専門員への指導などを担当する主任介護支援専門員として民間から経験豊富な職員の派遣を受け、さらには、介護予防プラン作成業務に専任職員を配置し、機能分担もうまくいっているようです。しかし、ほかの市町村では、設置数や専門職員の不足、また、直営型と委託型のそれぞれ抱える課題などがあり、社会的背景の厳しい現状の中で介護保険制度だけでは支え切れないサービス業務もあり、改めて地域包括支援センターの職員の方々の御苦労や御努力に頭が下がる思いでした。
 県では、このような地域包括支援センターの現状をどのようにとらえ、どのように支援していくおつもりなのか伺います。また、在宅と病院・施設の間を行き来する高齢者のためには、包括的、継続的ケアマネジメント支援業務として、介護支援専門員と主治医を中心とする医療、介護などの関係機関による連携支援システムをつくることが重要であると思いますが、その取り組みが十分になされていないように感じます。また、介護する家族に対する情報提供がなかなかスムーズになされていない現実もあるようですが、県では、今後、地域包括支援センターにおける医療・介護の関係機関の連携体制づくりなどをどのように進めていくおつもりなのかお伺いいたします。
 さらに、ひとり暮らしや認知症の高齢者がますますふえていくことが見込まれているところですが、それぞれの地域において自立して生活していくことが困難な高齢者や障がい者の方々に対する見守りなど、地域でのさまざまな支え合いの取り組みが一層重要になってきていると思います。本県では、情報機器を用いた見守りの新たな仕組みづくりも進められていると聞いておりますが、そのような取り組みの状況と今後の展望を伺います。
〇保健福祉部長(千葉茂樹君) まず、地域包括支援センターの現状と支援についてでありますが、地域包括支援センターは、保険者である市町村等が、高齢者人口や市町村介護保険事業計画に定めております日常生活圏域などの地域の実情に応じて設置しており、平成21年4月現在で48カ所、うち保険者直営が31カ所、社会福祉法人等への委託が17カ所となっております。平成20年度の業務実績を見ますと、総合相談支援件数は14万件を超え、専門的相談につながる高齢者虐待通報への対応が318件となっておりますが、ことし6月に実施いたしました支援センターの運営状況調査におきましては、課題として、職員数の不足や業務量が過大のほか、職員の力量不足、専門職の確保などが挙げられているところでございます。
 また、実際の専門職の配置状況を見ますと、高齢者数等に応じた国の基準に対する充足率は、保健師が85.5%、社会福祉士が64.3%、主任介護支援専門員が56.7%となっており、3職種を充足している支援センターは17カ所にとどまっており、いまだ不十分な状況にございます。特に、おおむね人口10万人以上の市部におきまして専門職の配置が不足している状況にありますことから、これまで、県におきましてはさまざまな会議等の機会をとらえ、地域支援事業交付金を活用した職員配置の拡充などについて働きかけてきたところであり、8月の支援センター連絡会議におきましても、改めて保険者である市町村等に、民間人材の活用も含め専門職の充足を要請したところでございます。
 県といたしましては、これまでの取り組みに加え、ことし4月から地域包括ケアの推進を目的として、県長寿社会振興財団に委託設置しております県高齢者総合支援センターにおきまして、権利擁護などに対する専門研修を各地域で開催しますとともに、今後はさらに地域包括支援センターにおける支援困難事例に対し同センターが助言指導を行うなど専門的支援を強化し、支援センターの相談支援機能が十分に発揮されるよう取り組んでまいりたいと考えております。
 次に、地域包括支援センターにおける医療、介護の関係機関の連携体制づくりについてでありますが、県では、支援センターが担う医療、介護等関係機関のネットワークづくりなどのいわゆる包括的・継続的ケアマネジメント支援機能の向上を図りますため、これら関係機関の連携の仕組みづくりなどに関する各種研修を実施してきておりまして、先進事例として陸前高田市が取り組んでまいりました県立病院等との連携や情報共有の仕組みづくりなどを県内に広く紹介してまいったところでございます。また、昨年度から、脳卒中患者に医療、介護サービスが切れ目なく提供されるよう、急性期、回復期、維持期における患者情報を県内の医療、介護の関係機関が共有できるシステム構築を進めておりまして、現在、4圏域22医療機関となっております参加機関の拡大やシステムの改善に現在取り組んでいるところでございます。
 さらに、今年度、県内9保健医療圏域で開催しております地域医療に関する懇談会におきましては、医療と介護、福祉の連携も重要議題となっておりまして、今後、懇談会の提言も踏まえながら、各圏域、市町村の実情に応じた医療、介護、福祉サービスの提供体制の整備や連携の仕組みづくりを一層支援してまいりたいと考えております。
 次に、情報機器を用いた見守りの新しい仕組みづくりについてでございますが、県社会福祉協議会におきましては、平成20年度に、県立大学と協働し、高齢者が毎日家庭の電話機を利用してみずから発信した安否情報を、市町村社会福祉協議会等がICTを活用して確認するシステムの運用と、発信がない高齢者につきましては、民生委員等地域の見守り協力者が安否確認をする取り組みを川井村など4市村において試行的に行ったところであり、利用者からは、情報発信が簡単なことや安心感が得られるなど高い評価を得たところでございます。このような取り組みは、ひとり暮らし高齢者が増加しております本県におきまして、当該高齢者が地域で安心して生活できる支援システムとして有効であると考えられますことから、県といたしましてはモデル事業として推進することとしております。前年度の取り組みにおいて限定されておりました利用者数を大幅に拡充できますよう、システムの高度化に要する経費を9月補正予算案に計上させていただいているところでございます。今後におきましては、本年3月に策定いたしました県地域福祉支援計画におきまして、地域の住民と協力した高齢者等の見守り体制の充実・強化を掲げておりますことを踏まえ、本県独自のセーフティネットとしての形成を目指しまして、県、県社会福祉協議会、県立大学が一体となって、県内市町村へのこのシステムの普及を進めてまいりたいと考えております。
〇19番(三浦陽子君) 大変心強い取り組みになってきているのかなと思っております。やはり今これから、高齢者のひとり暮らしはもちろんのこと、家族もなかなか一緒に住めず、遠くから自分の親の面倒を見ながら、心配しながら介護に通ってくる方々もふえると思います。やはりそういう方々に対する医療と介護の連携といいますか、そういう家族に対する情報もきちっと提供できるように、そしてなるべく複雑なシステムではなく、その家族なり御本人がある程度すべて安心して自分の、それから家族のことがどのようになっていくかわかるような、そういうシステムの取り組みに御配慮いただきたいと思っているところでございます。これから情報機器のモデル事業となるシステムにも大変期待が大きいところでございますけれども、やはり一発花火に終わらせないように、ぜひとも、本当に県内くまなくそういうシステムが行き渡りますように私たちも頑張っていきたいと思いますので、よろしくお願いしたいと思います。
 それでは、次に岩手県の児童自立支援施設である県立杜陵学園についてお伺いいたします。昨年、私は初めて学園を訪問する機会があり、園長さんを初め職員の皆様が子供たちの自立のため熱心に取り組んでいる現場を見せていただきました。また、創立100周年の文化祭では子供たちの一生懸命に発表する姿や展示作品からも学園生活が充実してきているものと深い感動を覚えました。また、創立100周年記念誌を読ませていただきましたが、さまざまな事情を背負った子供たち1、300人余りの育ち直しと、自立を支援されてこられた歴代園長さん初め職員や福祉関係の方々、そして地域の方々の深い愛情と御尽力のたまものであったと、改めて学園関係者の皆様の御労苦に敬意を表するものでございます。
 杜陵学園は明治41年に感化院として開園され、昭和9年には少年教護院、昭和22年には児童福祉法の制定、昭和23年、同法の施行に伴い県立教護院となり、さらに平成10年には児童福祉法改正に伴い県立児童自立支援施設というようにさまざまな変遷をたどり、現在に至っております。しかし、児童自立支援施設に移行する過程の中で、児童の人権、自主性の尊重という新たな理念に根差した指導が十分確立されないまま施設運営が続いた時期もあり、生活が落ちつかず問題行動が頻発し、特に無断外出が多いため学園の機能は低下し、支援施設運営が危機的状況に陥ったこともあったようです。これは全国の多くの児童自立支援施設にも見られた状況でもあったそうですが、運営の立て直しを図るため、平成18年に杜陵学園と保健福祉部、児童相談所とで構成する杜陵学園のあり方検討会がスタートしました。最近では生活も落ちつき、子供たちの状況に合わせた生活指導や杜陵方式の学習指導が功を奏した結果、県立高校に合格できる子供たちも出てきていることは大変喜ばしいことだと思います。
 現在、シンガーソングライターとして活躍中の松本哲也さんが監督しているしあわせカモンという映画が県内上映されております。彼は杜陵学園の退園生でありますが、本人の自叙伝的作品「空白」を原作として、このたび初めてみずからメガホンを握ることになったそうです。彼はこれまでの生き方をしっかり受けとめ、在園中に出会った音楽を通して勇気と誇りを持って生きることの大事さをメッセージとして届けているように思います。しかし、彼のように退園してから夢や希望を持って社会で頑張っている方たちもいる反面、退園しても、残念ながら社会での自立が困難な子供たちもいるということから、退園後のしっかりとした支援策も必要ではないでしょうか。現在の子供たちが抱える社会的背景は大変複雑になっており、今後ますます施設の果たす役割が大きいのではないかと思います。先日公表された新しい長期計画案に、岩手の未来を担う子供たちの育成について盛り込まれておりますが、社会的自立が困難な子供たちも大切にしていかなければならないと思います。そういう子供たちを預かる施設として、100周年を迎えられた杜陵学園に今後どのような役割を期待されているのか、知事の御所見をお伺いいたします。
 次に、昨日の地元新聞に、杜陵学園における学校教育の導入について報道がなされておりましたが、記事の内容について私の理解と若干異なるところもありますので、保健福祉部長にお伺いいたします。
 杜陵学園の平成20年度運営方針の重点項目の一つに学校教育の実施促進とありますように、平成20年7月には、5年前から一時中断されていた岩手県立杜陵学園学校教育実施促進検討会が再開されることになったことは、学園の子供たちの自立支援にとってさらに一歩前進した取り組みであると思います。しかし、平成9年の児童福祉法の改正に伴い、児童自立支援施設に入所する子供たちにも学校教育の導入を実施することが義務づけされて10年以上が経過しており、全国的にも、今年度導入に踏み切ったところを入れると、都道府県の7割以上が義務教育を実施しております。
 私は、ことしの5月に北海道教育委員会と北広島市にある女子の自立支援施設である道立向陽学院にお邪魔しました。北海道には道立の施設が2カ所と社会福祉法人立が1カ所ありますが、この春から3カ所同時に学校導入がスタートしたそうです。向陽学院は中学校の分校方式を採用しており、当日は本校の中学校から校長先生と施設の分校を担当している副校長先生に学校教育の取り組み状況を伺い、授業風景も見せていただきました。実施までにはやはり時間がかかったようですが、北海道と北海道教育委員会、そして北広島市教育委員会初め二つの設置自治体の教育委員会など関係機関が協議を進め、ことしの4月から実施の運びとなりました。教員は公募の形をとり、中堅どころの先生方が熱意を持って教育に当たり、施設と学校が一致協力して子供たちと向き合い、自立に向けてさらに深い理解と支援を示しているように感じました。岩手県においても一日も早い学校教育の導入実施を望むものです。
 そこで、県立杜陵学園学校教育実施促進検討会が再開されてから学校教育導入の実施見込みはどのようになっているか伺います。
〇知事(達増拓也君) 県立杜陵学園に期待する役割についてでありますが、県立杜陵学園は、昨年10月、創立100周年を迎え、これまで自立自尊の学園訓のもと、地域や教育関係者などの協力を得ながら多くの卒園生を輩出してまいりました。その間、杜陵学園では、入所児童に対する支援の充実を図るため、1人の児童自立支援専門員が複数の児童を入所から退所まで一貫して指導するグループ担当制など、独自の支援体制に基づきすぐれた取り組みがなされてきたところであります。また、スポーツを通じた入所児童の健全育成の取り組みに力を注ぎ、特に野球では全国大会に8度出場し、昭和60年には全国優勝を遂げるなど輝かしい活躍を積み重ねてきたところであります。さらに、教員免許を有する福祉専門職員を配置するとともに、県教育委員会からの派遣教員を昭和63年度から1名、平成2年度には2名とするなど、学科指導の強化も図ってきたところであります。
 近年、家庭や地域での子供の養育機能が低下して、児童虐待相談の増加、重大な少年事件の発生など、子供を取り巻く環境が大きく変化しており、社会的支援を必要とする子供への対応も多様化が求められておりますことから、児童自立支援施設の果たすべき役割はますます重要になっております。したがいまして、県では、今後、学校教育法による義務教育を速やかに導入することにより、専任の教員による教育の実施や、児童自立支援専門員による生活全般にわたる指導の強化を図るとともに、退所後の生活援助や就労支援を継続的に行うなど、本県唯一の児童自立支援施設として、児童が社会の健全な一員として自立できるよう、その支援体制や運営内容を充実してまいりたいと考えております。
〇保健福祉部長(千葉茂樹君) 県立杜陵学園における学校教育導入についてでありますが、平成9年の児童福祉法の一部改正によりまして、児童自立支援施設の長に対し、入所中の児童を就学させる義務が課されたところでございますが、同法の附則では、当分の間、従前と同様に施設長が学校教育に準ずる学科指導を実施できることとされており、県では、現在、当該規定を適用し、学科指導を行ってきているところでございます。
 これまでの経緯を簡単に申し上げますと、平成10年度から関係機関によります検討を開始したところでございますが、意見調整に時間を有し、直ちには結論が導き出せなかったことに加えまして、さらにその後、平成15年ごろから入所児童の問題行動の増加などが顕著になったため、これら児童に対する指導を優先しなければならない状況がしばらく続いたことや、これに伴い児童数が減少したこともあり、学校教育導入に係る協議を中断せざるを得なかったところでございます。近年、学園職員の努力もあり、このような状況が改善され、児童数も増加してまいりましたことなどから、昨年度、杜陵学園の学校教育導入のあり方を検討することを目的といたしました杜陵学園学校教育導入促進検討会を再開いたしまして、県教育委員会や市町村教育委員会等の関係機関と、学校教育導入後の学級編制や教員体制などについて検討を行い、本年3月にその結果を取りまとめたところでございます。これを踏まえまして、杜陵学園には、その施設の性格上、県内全域から児童が入所いたしておりますものの、施設所在地でございます盛岡市に学校教育の導入を要請いたしますとともに、県教育委員会、盛岡市教育委員会の協力を得まして、本年6月に開設準備委員会を設置したところでございます。県といたしましては、盛岡市の御理解を賜りながら、来年4月からの学校教育導入を目指しているところでございます。現在、準備委員会におきまして、運営指針、カリキュラム編成や教員の配置、教育備品の購入等を検討いたしますとともに、関連する施設の改修工事等を進めているところでございます。
〇19番(三浦陽子君) 杜陵学園に対します知事から大変前向きな御答弁をいただきました。そしてまた、学校教育導入につきましても、今、来年の4月導入を目指して取り組んでいらっしゃるというお話を伺いました。
 そこで、学校教育の教職員体制の充実について、今のところ、県の教育委員会におきましてはどのように取り組まれていくおつもりか、教育長にお伺いいたします。
〇教育長(法貴敬君) 杜陵学園の学校教育の導入に向けた教員の体制等についてでございますが、杜陵学園において学校教育を実施するために、ただいま開設準備委員会においてその協議を進めているところでありまして、教職員の配置については、他の公立小・中学校と同様に公立義務教育諸学校の学級編制及び教職員定数の標準に関する法律に基づき適正に配置してまいりたいと考えておりますが、なお、開設準備委員会での議論がありますので、引き続き、開設準備委員会において現場の意見を十分聞きながら適切に対応してまいりたいと考えております。
〇19番(三浦陽子君) ありがとうございます。この学校教育導入につきましては各県ともいろいろと非常に難しい課題といいますか、一人の子供の教育に対して、私は義務教育は当然だと思っていたんですけれども、なかなかそれが進まない状況というのがあるのだろうというふうには、今、何となく推察はいたしておりますけれども、しかし、やはり来年の導入に向けて、子供たちの一人一人の自立のために適正な教職員の体制を充実させていただきたいと思います。
 本当にデリケートな心を持っている子供たちでありますので、私も、向陽学院で担当している先生方にもお伺いしましたけれども、非常に普通の一般のお子さんたちとは違った、本当に心のケアをしながらの教育ということで、先生方それぞれ取り組みに考慮されながら、施設の職員の方と先生が一体になって取り組んでいる姿を見せていただきました。ぜひとも、そのようにきめ細かく配慮されて取り組んでいただきたいことをお願いしたいと思います。
 次に、農業水産振興施策についてお伺いいたします。
 まず、農業振興施策について伺います。
 本県においては、総合食料供給基地を目指して、米、園芸作物、畜産のバランスのとれた総合産地づくりを推進しておりますが、農業の担い手の減少、農業従事者の高齢化、耕作放棄地が拡大し、農業者の所得確保の課題がなかなか解決できないようです。
 このたびの政権交代によって農家の戸別所得補償制度に期待するところですが、同時に、岩手の特性を生かした農業振興施策をもっと推進し、岩手ブランドの確立に努めることがとても重要と思います。
 県内では、県北において雑穀の生産に力を入れており、健康志向から若い人たちにも大変人気を得ているようですが、雑穀生産をどのように推進し、どのようにして販路拡大に取り組むつもりか伺います。
 先月、農業農村整備推進議員クラブの現地研修会に参加し、北上地域の農業農村整備事業について調査させていただきました。経営体育成基盤事業として、圃場整備現場や耕作放棄地解消にも取り組んでいる北上南部大豆の生産現場の状況、また、里芋やアスパラガス、リンドウなどの特産品の産地形成の特色を生かし、農業と企業との交流、連携、協働活動を通じて、農村の活性化や企業の持続的発展につながる取り組みをしている農楽工楽クラブの活動など、改めて北上地域の特性を生かした元気な取り組みを見せていただきました。
 特にも、更木地域の桑茶生産加工の取り組みには、大変感動いたしました。健康機能性の高い桑の葉は、本来、薬草として、不老長寿の妙薬として、中国古来から神仙茶として愛飲されていたそうです。
 この取り組みは、岩手大学農学部の鈴木教授による桑食文化という言葉で提案し、岩手から発信したいという思いから始まり、まさに産学官連携によるすばらしいモデルになるものと思いました。
 さらに、桑茶を生産、加工販売するに当たっては、県外の食品会社と業務提携しているということですが、岩手産の桑にこだわっているというお話も伺い、岩手県の桑栽培農家の方たちにとって、大変希望ある事業ではないかと思います。
 また、最近、北海道や青森県において、化粧品や漢方薬と結びつけて薬草研究や栽培の取り組みに着手しております。
 本県での薬草事業について、知事からは、総合薬草産地づくりを推進するとともに、産学官連携による薬草を核とした産業クラスターの形成の可能性について検討していくという前向きな御答弁をちょうだいいたしましたが、その後、具体的にどのように検討が進んでいるのでしょうか。
 また、薬草のほかにも、県内各地には特色ある農林水産物が数多くあります。このような特色を最大限に生かすため、大学や企業との連携を県としてこれまで以上に支援していくべきと考えますが、岩手県においては、どのような展望を持って取り組みを進めようとしているのかお伺いいたします。
〇農林水産部長(瀬川純君) 雑穀の生産振興と販路拡大についてでありますが、県では、県産雑穀を日本一の雑穀ブランドとして確立するため、本年3月に、消費者、生産者団体、流通販売業者等の意見を伺いながら、いわて雑穀生産、販売戦略を策定したところであります。
 この戦略に基づき、生産面では、現在、半もち性ヒエなど県オリジナル品種の生産拡大や、除草作業や収穫作業の機械化等を推進しているところであり、今後は、優良種子の生産供給体制の構築、化学合成農薬を用いない栽培技術の確立、普及などにより、他産地との差別化や一層の省力化に取り組むこととしております。
 また、販売面では、毎年5月9日をいわて雑穀の日としたPRイベントの開催や全国雑穀サミットの開催等を通じ、県産雑穀の認知度向上に努めており、新たに県産雑穀と穀類等を素材とした新商品開発や産地認証制度の創設などを進めることとしております。
 こうした生産、販売の両面からの取り組みにより、消費者等のニーズに即した信頼される日本一の雑穀ブランドを確立してまいります。
 次に、薬草事業の具体的検討状況についてでありますが、産学官が連携した薬草栽培の振興については、昨年10月に設立された県、岩手医科大学、岩手大学、農業団体等で構成する薬草総合事業懇談会において検討を進めているところであります。
 本年5月に開催された懇談会では、身近な素材であるヤーコンの加工販売や薬膳料理のメニュー化が提案されるとともに、生産者の所得確保に向けた生薬会社との契約拡大など、出口対策の重要性が指摘されたところであります。
 さらに、8月には、生薬会社の御協力をいただき、岩手町等の栽培状況を視察し、生薬会社からは、需要の拡大に向け一層の生産拡大が求められていることや、生産者側からは、労力の軽減、生産性向上のため、特に除草の技術開発への支援が要請されたところであります。
 こうしたことから、県としては、本県で開発が進んでいる雑穀の機械化除草技術の応用等による支援を強化するとともに、雑穀や桑など、いわゆる健康食品も含めた振興の可能性について、懇談会等での御意見をいただくなど、具体的な課題を産学官連携の中で十分検討し、全国有数の総合薬草産地づくりに向けて取り組んでまいります。
 次に、大学や企業との連携への支援についてでありますが、各地域の特色ある農林水産物の付加価値を高めるためには、農林水産分野の取り組みはもとより、知識や技術、人的ネットワークが集積している地元大学や民間企業と連携した取り組みが重要と認識しております。
 このため、これまで、議員からも御紹介いただきました桑茶を初め、岩手大学と障害福祉サービス事業所の連携による雑穀入りパンや県立大学と食品企業等との連携による高齢者の食べやすさに配慮した魚製品などの新商品開発の取り組みを支援してきたほか、農林漁業者が流通加工分野等に進出する農林水産業の6次産業化や、企業と農林漁業者が連携し、新商品や新サービスを生み出す農商工連携の取り組みを支援してきたところであります。
 今後とも、大学や企業との連携により、本県農林水産物の高付加価値化を積極的に支援するとともに、このような取り組みを県内全域に波及させ、地域の活性化を促進するとともに、雇用創出と所得の向上に努めてまいります。
〇19番(三浦陽子君) ありがとうございます。ぜひとも、農産物につきましての産学官連携、商工連携を進めていただきたいと思います。
 続いて、水産業の振興施策について伺います。
 本県の水産業は、国民の食生活に欠かせない重要な役割を担っており、平成18年度、沿岸地域における1次産業の純生産額366億円のうち、水産業は218億円で約6割を占めており、なくてはならない産業であります。しかしながら、近年の水産業は、漁業の生産額が昭和57年の822億円をピークに減少し、残念ながら、平成19年には438億円まで低下しております。また、先日発表された平成20年の漁業センサスによると、漁業就業者が初めて1万人を割り9、948人まで減少しているなど厳しい状況になっていることなどから、漁業を取り巻く課題が山積しているように思います。
 県は、宮舘副知事を先頭に県北・沿岸振興に力を入れて取り組む姿勢を示しておりますが、沿岸地域の重要産業である水産業の課題と今後の推進方向をどのように考えておいでか、お伺いいたします。
 私は、先日、北海道の独立行政法人水産総合研究センターにおいて、さけ、ます資源調査の取り組みやふ化、放流事業について調査させていただき、水揚げで全国第1位を誇る北海道の生産技術のすばらしさを学び、その規模の大きさにも驚きました。また、2年前には、中国の大連市において、アワビやナマコの生産状況や需要の大きさについて認識を深めてまいりました。
 本県におけるサケもアワビも、つくり育てる漁業として全国に誇れるものであり、アワビの生産量は全国第1位、サケは第2位であることから、この地位を維持し、さらに生産額をアップするためにも、しっかりとした取り組みがぜひとも必要であると思います。
 しかしながら、平成20年度の生産額は、サケが101億円とピーク時の平成4年度の241億円から大幅に低下しており、アワビの生産額も、価格が大幅に下落したことにより前年の半分以下にまで減少しているということです。サケの生産によってアワビの増殖経費が賄われていることや、アワビの生産には沿岸漁業者の皆さんの多くが依存していることを考えると、サケとアワビの振興は大きく連動しており、両方ともに力を入れて進めていくことが、本県の漁業にとって重要なことと認識しております。
 そこでお尋ねしますが、サケ及びアワビ増殖の課題は何か、そして、今後どのように振興していくおつもりなのかお伺いいたします。
〇副知事(宮舘壽喜君) 水産業における課題と今後の推進方向についてでありますが、本県の水産業は、恵まれた自然環境のもと、高品質で安全・安心な水産物を水揚げし、付加価値を高めた加工品を生産するなど、県北・沿岸地域の産業として重要な役割を担っております。
 しかし、一方で、漁業資源の減少を初め、就業者の減少、高齢化が進んでいること、さらには、前浜資源の高次加工品の割合が低いことなど、さまざまな課題を抱えております。
 こうした課題を解決するため、県ではこれまで、資源管理型漁業やつくり育てる漁業の推進、担い手の育成や水産物の加工流通振興に取り組んでまいりました。
 今後は、こうした取り組みに加えまして、新しい長期計画において推進することとしておりますサケの回帰率の向上など、増養殖技術の開発、普及による水産物の生産拡大、アワビ、ウニ等を対象とした新たな県北型地域営漁計画の策定と実行の支援、そして地域内の加工原料供給体制の強化による高付加価値化、ワカメなどのプレミアム商品化や、アワビなど全国に誇れる水産物の魅力を最大限に生かした新商品開発と販売促進など、本県水産業の振興策に積極的に取り組んでまいりたいと考えております。
 次に、サケ・アワビ増殖事業の課題と振興策についてでありますが、サケとアワビは、本県漁業生産額の3割を占め、つくり育てる漁業の中核をなす魚種でありまして、生産から流通加工に至るまで、県北・沿岸地域産業の振興に大きく寄与するとともに、漁協経営と漁家の家計を支える重要な魚種であります。
 しかしながら、サケの漁獲量は近年2万トン台で推移しておりまして、また、回帰率が2%台の低い水準となっており、アワビは、中国の乾鮑相場の下落などにより平成20年の価格が暴落し、種苗放流事業の採算性がマイナスに転じている状況にあります。
 こうした課題に対応し、サケについては、回帰率向上を図るため、本年度から新たに、強い稚魚の生産技術開発、ふ化場技術者の人材育成、老朽化したふ化場の機器整備を進めているところであります。
 また、アワビにつきましては、事業の効果を高めるため、優良漁場への積極的な種苗放流、潜水漁法の導入や漁獲時期の延長による増産、加工品開発や多様な販売体制の構築などについて、関係団体と協議を重ね、こうした取り組みの基本的な方向について理解を得ているところであります。
 今後におきましても、サケ・アワビ増殖事業の推進に、より一層力を入れて取り組んでまいりたいと考えております。
〇19番(三浦陽子君) 心強い対応を大変期待しておりますので、ぜひともこのつくり育てる漁業、これは私も本当に、ただ自然に任せるのではない、積極的にこの漁業を推進していくためには、本当に高い技術力が必要なんだということを認識してまいりました。本当に人材育成が大変重要だという話も伺ってまいりました。ぜひともそういうところにもしっかりと視点を置いて取り組んでいただきたいと思います。
 最後になります。並行在来線について伺います。
 沿線住民の日常生活に欠かすことのできない交通手段として重要な役割を担っているIGRいわて銀河鉄道は、平成20年3月に寝台特急列車が2便減便となり、開業以来最大ともいえる危機を迎えたものの、経費の削減といった経営努力により、平成20年度も何とか黒字を確保したところでありますが、今後も、沿線人口の減少や少子化などの影響により、引き続き、より一層厳しい経営を迫られるものではないかと危惧されているところです。
 そのような中、現在、IGRでは、平成22年12月に予定されている東北新幹線新青森開業に対応するため、総事業費16億円余をかけて新たな指令システムの構築を懸命に進めているところとお聞きしております。
 この指令システムは、1日に約50本もの貨物列車を走行させているJR貨物も使用するものであることから、その構築経費について、当然、JR貨物も負担してしかるべきものであると思っておりましたところ、幸い、この経費が貨物線路使用料の対象に新たに追加されたことにより、JR貨物による一部負担が実現したものと伺いました。
 しかしながら、指令システム分の貨物線路使用料は、JR貨物からIGRに対して完成後に支払われる仕組みであるため、IGRでは、システム構築のための当座の資金が確保されていない状況であり、このため、県においては、JR貨物との間で資金拠出などを求めて協議してこられたとのことです。
 そこでお伺いいたします。一つ目に、新指令システム構築のための今年度以降の工事に対するJR貨物負担分の資金について、JR貨物との交渉の結果、どのように解決が図られたのか。また、貨物線路使用料制度を含め、残された課題はどのようなもので、今後、JR貨物や国などに対してどのように対応していくのか伺います。
 二つ目に、地域住民の通勤、通学、通院などの移動手段としての大きな役割を担っているIGRは、その利用を促進し、経営の安定を図ることにより、将来にわたって維持存続していかなければならないと考えますが、IGRはどのような方針で取り組むこととしているのか。また、県はどのように支援していくのかお伺いいたします。
〇地域振興部長(加藤主税君) まず、新指令システム構築に当たってのJR貨物との交渉結果についてでございますが、新指令システム構築に当たりまして、今年度以降に必要となる約6億円のJR貨物負担分の資金につきまして、IGRがJR貨物から市中金利と比べまして相当有利な条件によります長期低利融資を受けることで、本年7月、JR貨物と合意したところでございます。
 あわせて、IGRの経営の安定化を図る観点から、貨物列車の増発につきまして、県とJR貨物の双方が最大限努力することを合意したところでございます。
 次に、貨物線路使用料制度等の課題と今後の対応についてでございますが、現行の貨物線路使用料に係る課題といたしましては、トンネルや橋梁などの既存施設の使用料や固定資産税、さらには施設整備に係る資金調達のための利息が対象に含まれていないなど、地方に超過負担を強いていることが挙げられます。
 本県といたしましては、県議会の皆様や沿線市町村と一体となりまして、JR貨物の線路使用実態に応じた適正な水準の使用料が確保されますよう、JR貨物及び政府、さらには関係する国会議員に対しまして、これまで以上に強く働きかけてまいりたいと考えております。
 最後に、IGRの利用促進についてでございますが、IGRでは、健全経営を確立し、地域の旅客輸送を将来にわたり維持していくため、業務の効率化や利用促進策を推し進めておりまして、地域医療ラインの展開や不動産業への本格参入、ほかの交通事業者と連携いたしました県内周遊切符の発売、駅の産直のオープンなど、利用者の利便性向上や鉄道としての魅力向上のための努力を積み重ねているところでございます。
 加えまして、IGRの経営安定のためには、地域や関係機関が連携した取り組みもさらに必要でありますことから、本年3月、県、沿線市町村、住民、関係交通事業者などで構成いたします協議会を設け、地域の魅力を活用いたしました旅行商品の造成など、各種利用促進策につきまして、現在、検討中でございます。
 県といたしましては、適正な貨物線路使用料の確保に向け取り組むことはもとよりでございますが、老朽施設の更新経費補助や各種利用促進策に対する支援などを通じまして、IGRの維持存続に努めてまいりたいと考えております。
〇19番(三浦陽子君) 大変ありがとうございました。IGRいわて銀河鉄道は、私の子供も使わせていただいて通学したこともありますけれども、排出ガスの問題やら環境問題におきましても、やはり利用を促進していただきたいと思いますし、また、各駅につきましても、非常にいろいろな取り組みをしているというふうに伺っております。
 一つには、先日、奥中山高原駅の名誉駅長として人気を博したヨークシャーテリアのマロン君が亡くなったという報道もありまして、私も実際抱いてみたこともあって、大変かわいらしいマスコットだったと思います。やはりそういう、そこの特色ある取り組みというものが、そこにおり立つ人たちに対するいやしにもなると思いますし、そういう意味でも、本当に県としても、そういう各駅の取り組みについて、地域住民の方々と一緒に御支援していただきたいと思っております。
 大変長きにわたって御答弁いただきましてありがとうございました。今後の県政運営に一生懸命私も貢献していきたいと思いますが、当局の皆様も、ぜひともよろしくお願いいたします。
 ありがとうございました。(拍手)
〇副議長(小野寺研一君) この際、暫時休憩いたします。
   午後3時25分 休 憩
出席議員(44名)
1  番 木 村 幸 弘 君
2  番 久 保 孝 喜 君
3  番 小 西 和 子 君
4  番 工 藤 勝 博 君
5  番 岩 渕   誠 君
6  番 郷右近   浩 君
7  番 高 橋   元 君
8  番 喜 多 正 敏 君
9  番 高 橋 昌 造 君
10  番 菅 原 一 敏 君
11  番 小野寺 有 一 君
12  番 熊 谷   泉 君
14  番 高 橋 博 之 君
15  番 亀卦川 富 夫 君
16  番 中 平   均 君
18  番 関 根 敏 伸 君
19  番 三 浦 陽 子 君
20  番 小田島 峰 雄 君
21  番 高 橋 雪 文 君
22  番 嵯 峨 壱 朗 君
23  番 及 川 あつし 君
25  番 飯 澤   匡 君
26  番 田 村   誠 君
27  番 大 宮 惇 幸 君
28  番 千 葉 康一郎 君
29  番 新居田 弘 文 君
30  番 工 藤 大 輔 君
31  番 佐々木 順 一 君
32  番 佐々木   博 君
33  番 工 藤 勝 子 君
35  番 樋 下 正 信 君
36  番 柳 村 岩 見 君
37  番 阿 部 富 雄 君
38  番 斉 藤   信 君
39  番 吉 田 洋 治 君
40  番 及 川 幸 子 君
41  番 佐々木 一 榮 君
42  番 伊 藤 勢 至 君
43  番 渡 辺 幸 貫 君
44  番 小野寺 研 一 君
45  番 千 葉   伝 君
46  番 佐々木 大 和 君
47  番 菊 池   勲 君
48  番 小野寺   好 君
欠席議員(2名)
17  番 五日市   王 君
34  番 平 沼   健 君
説明のため出席した者
休憩前に同じ
職務のため議場に出席した事務局職員
休憩前に同じ
午後3時44分 再開
〇議長(佐々木一榮君) 休憩前に引き続き会議を開きます。
 日程第1、一般質問を継続いたします。高橋元君。
   〔7番高橋元君登壇〕(拍手)

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