平成21年9月定例会 第13回岩手県議会定例会 会議録

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〇18番(関根敏伸君) 民主党の関根敏伸でございます。
 質問の機会を与えていただきましたことに感謝を申し上げ、分割方式にて順次質問をさせていただきます。なお、重複する質問等があることにつきましてはあらかじめ御了解を願います。
 8月30日の歴史的な総選挙が終了し、1カ月が経過いたしました。我が国にあって国民みずからの投票による初めての政権交代が実現し、民主党中心の政権が誕生。鳩山総理大臣以下、大臣、副大臣、政務官等の組閣が決まり、本格的な政権運営が始まっております。各報道機関による内閣支持率は軒並み70%を超え、発足直後の歴代内閣にあっては屈指の高水準にあります。政治家主導による官僚政治の打破に象徴される改革と、国民の生活の立て直しを最優先に掲げる政策に対する期待の大きさがうかがわれるところであります。もちろん、その実現に向けての道のりが平たんでないことは容易に想像できますが、政策実現のため財源確保に本格的に乗り出している不退転の姿勢などを国民は高く評価してくれるものと確信をしております。
 御承知のとおり、国連総会において鳩山総理は、自身の政治信条である友愛精神の考え方をもとに、政権交代によって生まれた新しい日本が世界のかけ橋となることに全力を尽くしていくことを訴えるとともに、子育て手当の実現や暫定税率の廃止、気候変動対策に対する極めて高い目標などを宣言し、日本の経済再生に向けた政策の大転換を世界にアピールしております。私は、この歴史的な出来事により日本の政治に健全な議会制民主主義が芽生えたこと、それによる日本の政策の方向性が大きく転換されたこと、そして地方分権と地域主権の推進に大きな期待が寄せられることなどを心からうれしく思っております。経済や財政面において厳しい現実があることは否定できませんが、国民一人一人の行動によって国を変えることができるのだというかつて経験したことのない一種の高揚感にも似た雰囲気の中、政治への期待が膨らんでいるこの機を逃さず、希望郷いわての実現に向け、未来の岩手を切り開く大きな将来像を県民に強く訴えていただきたいとの観点から質問をさせていただくものであります。
 まず、達増知事にお伺いいたします。
 国民の生活が第一を掲げた民主党中心の政権交代によって、岩手のような地方の生活、とりわけ岩手の県民生活への影響はどのようになってくるとお考えでしょうか。そして、新政権に対し、岩手県知事として県政運営に当たって最も期待することは何なのか。その期待を実現するについて、民主党籍を持ち、新政権との間のさまざまなパイプを期待される知事として、その期待にこたえるべく具体に行動を起こす必要性はないとお考えか、お聞かせ願います。
 自公政権下、麻生内閣時代には、国の経済危機対策等から合計4度の予算を成立させ、各種対策に充ててまいりました。中でも4兆3、000億円余の予算を使って、地方関係15基金、地方関係以外に31基金、合計46基金を造成し、複数年度にわたって各種事業展開を始めているのは御承知のとおりであります。県でもそれらを受け平成20年度補正から基金造成が始められ、今回提案の9月補正が成立いたしますと、合計12基金に268億円以上の基金が造成されることになります。そして、基金取り崩し金を原資に順次事業が実施され、6月補正で48億円余、9月補正を含めますと71億円余が執行されることになります。新政権は、無駄遣いの廃止とマニフェストに盛り込んだ各種事業のための新年度の財源確保の立場から、これらの事業の見直し、凍結、執行停止について言及しております。地方向け予算の15基金の凍結には慎重な発言が行われておりますが、現在、見直しの全容は明らかにはなっておりません。県では、新政権下での補正予算への対応をどのようにとらえているのでしょうか。また、補正予算を財源とした事業執行への影響、また、9月補正予算への影響はどのようになってくると予想され、具体の対応をどのように考えているのかをお聞かせください。また、補正の執行停止について、全国の知事の中で唯一賛成を表明した達増知事のお考えをお聞かせ願い、登壇での質問とさせていただきます。
   〔18番関根敏伸君質問席に移動〕
   〔知事達増拓也君登壇〕
〇知事(達増拓也君) 関根敏伸議員の御質問にお答え申し上げます。
 まず、政権交代と県政運営等についてでありますが、民主党はマニフェストにおいて子ども手当の支給や年金制度の一元化、職業訓練制度による求職者支援などの政策を掲げ、その着実な実行により、県民が安心して暮らせる社会の実現につながることを期待しております。特に、厳しい経済情勢のもと、私は、何よりもまず安心して暮らせる社会の実現に向けたセーフティネットの構築が重要と考えており、国と地方が対等な立場で適切な役割を担いながら、経済、雇用政策と福祉、社会保障政策を有機的に連携づけて推進していくことが必要と考えております。私は、新政権においては、これまでの官僚依存の政治から、国民の声に耳を傾け、民意が国のあり方を決めていく政治家主導の政治へと転換し、地方の声も十分に踏まえた政策を展開していくものと期待しております。地方の声を初め民意は新政権みずからがしっかりと把握していくものと考えておりますが、地域に根ざした個別、具体の実情を把握したいという姿勢に対しては積極的に協力をしていきたいと考えております。
 次に、平成21年度補正予算についてでありますが、県のさきの6月補正予算、また、現在提案中の9月補正予算案双方とも、悪化が続く県内の景気や雇用情勢等を踏まえ、本県の地域経済や県民生活を守る上で必要な事業を盛り込み、予算編成を行いました。先般9月18日、国の補正予算の見直しにかかわる考え方が示された中で、地方公共団体向けの事業や補助金等の執行が一時留保の対象から除外されたことについては、こうした地方の状況を踏まえ、配慮がなされたものと考えております。一方で、各所管大臣のもと、すべての事業についての執行の是非が点検され、今後、政府としての方針を決定するとされておりまして、現時点では国の補正予算全体の見直しにかかわる詳細が不明であり、本県予算への具体的な影響については言及できる状況にはございません。なお、執行停止等の措置が講ぜられたとしても、これを財源として新たな事業等に組みかえられることにより、より県民生活の向上につながり、また、地方にとって自由度が高く地域主権の確立に資する形で還元されるなど、よりよい方向での見直しとなることを期待して、国の補正予算の見直しに対し賛意を表明したところであります。地方の実情を踏まえた国の補正予算の見直しが引き続き行われるよう、全国知事会とも連携しながら、国に対して提言をしてまいりたいと思います。
〇18番(関根敏伸君) 御答弁いただきましてどうもありがとうございました。補正の動きにつきましては、まさにまだ全容がはっきりしていないという状況でございます。さまざまな基金のもとで事業が具体化をされているという内容のもとで、知事が先ほど申されたとおり、民意が示されたという部分と、各地域の事情を十分吸い上げた国の政策の方向性といったものにつきまして、ぜひ、知事として大きな力を発揮していただきたい、これは強くお願いしておきたいと思っているところでございます。
 次に移りたいと思っております。
 新政権での来年度予算編成方針が決定しております。シーリングの廃止、現在の予算のゼロベースでの見直し、マニフェストに沿った新規施策実現のための財源の確保などの方針によりまして、今月15日までに各省庁に予算要求の再提出を求めております。また、財政単年度主義の見直しも含め複数年度予算の拡充を試みるなど、限られた財源の選択と集中、政策優先順位の中での予算づけの明確化などが図られる模様であると報じられております。
 そこでお伺いいたしますが、国のこのような予算編成作業の転換と、生活が第一の理念の中で、思い切った優先順位づけの予算編成が予想されるわけでありますが、知事は、平成22年度の新年度の予算編成方針につきまして、現時点ではどのような方針で臨もうとされているのか、また、予算編成作業等において、今までと同様の方法で行おうとしているのかお伺いいたします。
〇知事(達増拓也君) 新年度の予算編成方針等についてであります。
 地域経済、雇用情勢の厳しい状況が続く中、県税収入の減少も見込まれるなどさまざまな危機に直面しておりますが、平成22年度当初予算は、今般、策定を進めております新しい長期計画を着実に推進する予算として編成を行いたいと考えております。また、国では既存予算をゼロベースで見直し、政治の優先順位に従って予算編成を行う方針と聞いておりますが、本県におきましては、政策評価結果を踏まえ、全庁的な議論と調整により、政策の優先度に応じた財源の最適配分を行う予算編成手法を既にとっておりまして、新年度も基本的に同様の方法により進めていくこととしておりますけれども、新政権のマニフェストでは地方の自主財源を大幅にふやすと示されておりますので、これが実現した場合には県の自主的な判断により活用できる財源がふえますので、これまで以上に県民の仕事と暮らしの現場に沿い、地域主権の視点に立った予算編成を行ってまいりたいと思います。
〇18番(関根敏伸君) どうもありがとうございました。知事は、この新年度予算の編成方針につきまして金曜日にも御答弁をされておられます。まさに国を先取る形で、さまざまな政策の優先づけでありますとか予算編成方針、この岩手において先進的に取り組まれている、このように私も承知しておりまして、そのことにつきましては全くそのとおりであろうと思っております。また、知事が示されました新しい長期計画を着実に推進するということが、まさに予算を肉づけしていく、政策を実現していく、そういった中でそのような方向性になるのだろうと思っているわけでありますが、ただ、今申し上げましたとおり、国が相当思い切った予算編成の中で政策の順位づけを明確にしてくるということは当然考えられてくるわけであります。知事は、今回提案しております新しい長期計画のアクションプランの中でも、このアクションプランはいわゆる政策のバージョンアップである、新しい政策につきましてはさまざま絶え間ないバージョンアップを試みていきたいというようなことを述べられていると承知しておるわけであります。こういった国の大きな政策の流れ、あるいは今後期待されます国からの地方一括交付金等々を利用されましてですね、政策のさらなる選択と集中の部分につきまして、ぜひ意を用いて予算編成方針に当たっていただきたいと思っているわけであります。
 また、知事は、知事になられましてから御自身の手で本格的な予算編成を2度されているわけであります。1度目はいわて希望創造プランを推進するための岩手を守り育てる希望創造予算、このように命名をされていらっしゃいます。また、本年度つくられました平成21年度予算は、厳しい経済環境を認識された上での岩手を守る逆風立ち向かい予算と、このような命名をされていらっしゃるわけであります。私は、今申し上げましたとおり、来年度の予算編成方針において、明確な予算の特徴づけ、性格づけ、県民に対するアピール、こういったことを強く込めていただいて、この予算に対する命名等も踏まえまして、いま一度、来年度予算に向けました知事のお考えをお聞かせ願いたいとこのように思うわけでございます。
〇知事(達増拓也君) 命名は来年の本予算の知事査定ぐらいのごろにやはりさせていただきたいと思いますけれども、新しい長期計画のスタートの予算にもなりますし、また、政権交代後、改めて草の根の暮らしの現場、仕事の現場に即した行政、政治を進めていく、そういう世の中全体の中での予算にもなります。岩手において一歩先んじる形でそうしたことを進めてきたわけでありますけれども、やはり引き続き岩手が全国の中で名誉ある位置を占めるような、そういう予算にしていきたいと思います。
〇18番(関根敏伸君) どうもありがとうございました。
 次の質問に移らせていただきます。
 今回の総選挙では地方分権が一つの争点となっております。例えば国直轄事業負担金制度など、全国知事会などの地方6団体などが長年訴え続けながら、ほとんど取り上げられることのなかったものが各党のマニフェストにも盛られる結果となりました。今回、全国知事会が果たした役割は大きなものであったと思われますし、今後はさらにその役割は重要性を担ってくるものと推測しているところでございます。民主党はマニフェストに国と地方の協議の場を法律に基づいて設置することを明記し、分権推進の立場の多くの首長などから高い評価を得、今回の選挙結果につながる一因にもなったと思われます。この協議の場につきましては、現時点での全容は明らかになっておりませんが、総理は設置について明言されております。知事はこの協議の場についてどのような所感をお持ちかお伺いをさせていただきます。また、知事としてこの協議の場にどのように臨むお考えかお聞かせいただきたいと思います。
〇知事(達増拓也君) 国と地方の協議の場についてでありますが、国と地方は、本来、住民のために適切な役割分担のもとで手を携えて協力していくのがあるべき姿であり、その役割分担のあり方について、双方がパートナーとして十分に議論して合意形成を図って、そして住民の生活を守り、福祉を向上させる政策を協調して進めるという関係に移行していくべきと考えております。こうしたことから国と地方の協議の場が法制化されて、国と地方が文字どおり対等、協力の関係となり、真の地方分権が進展することを期待しております。現在、この協議の場のあり方については全国知事会においても議論が行われているところでありまして、私としても、この国と地方の協議の場が有意義なものとなるように、知事会に新設された戦略会議の議論に参加するなど、しっかり取り組んでいきたいと思います。
〇18番(関根敏伸君) どうもありがとうございました。今回のこの協議の場につきましては、やはり地方としては大きく期待し、注目しているわけでありますが、この協議の場以外でも、いわゆる民主党政権として新しいさまざまな組織をつくっているわけであります。御承知のとおり、国家戦略局というのが恐らくこれから正式につくられるということになろうかと思いますし、行政刷新会議というところでさまざまな行政の棚卸しをしていく。そして、この国と地方の協議の場が法制化される。臨時国会でつくられるのではないという話もあります。いわゆるこういった国と地方の方々の協議の場が今さまざま想定されているわけであります。そんな中、達増知事の役割というのはやはりいろんなところで注目され、また、地方の期待といったものも大きいものがあろうかと思っております。たびたびいろんな方々が、知事のこういった場についての、立場についてのお考えを質問されているわけであります。私もそういった立場から質問しているわけでありますが、知事は定例記者会見の中でこのようなことを述べております。どこのだれであれ、きちんとした見解と政策論を持っていれば、それが時の政府に採用されて実行されていく。そういう世の中になるだろうと期待し、また、そういう世の中にしなければならないと考えている。そういう意味では、むしろ、国会議員ではないが、そういったことにより効果的に参画できるのではないかと思っている、このように記者会見で述べていると聞いているところでございます。改めまして、国と地方の協議の場であれ、国家戦略局的なものであれ、行政刷新会議的なものであれ、さまざまな形で期待される達増知事のこういった組織に臨むスタンスを、力強いお考えをお聞かせいただきたいと思うわけであります。
〇知事(達増拓也君) よりフラットにと申しましょうか、水平的な広場のようなところでみんなでわいわい議論をしながら、今、日本全体がどうなっているのか、どこでだれが困っているのか、どうすればそれを解決できるのか、以上の項目は、私が、知事の仕事は知ること、それを、知事だけではなくすべての岩手県民が知事になったかのごとく、そういうことを知って行動していけば岩手はよくなると申し上げていることなんですが、それを日本全体を舞台にして進めていけるような状況になっているんだと思います。そういう意味では、日本国民だれもがそういう日本国の知事になったつもりで国政に参画していける時代になるのだと思いますので、そういう中で、私もつたない経験や活動の中で知ったことについてみんなと共有していくような努力をしてまいりたいと思います。
〇18番(関根敏伸君) ぜひよろしくお願い申し上げます。
 国と地方の二重行政の無駄を廃止する立場から、国の出先機関の原則廃止も明言されているところであります。廃止に向けた具体のスケジュールなどはまだ明確にはなっておりませんが、今後、職員体制の異動などを含め大きな変化が出てくることが予想されます。県では現在、新しい長期計画と4広域振興圏への移行に向けた作業を進め、今議会にも条例改正案が提案されているわけでありますが、この地方分権、地域主権の推進化の中で、今後、広域振興圏体制がどのように構築されるべきなのか、知事の御所見を改めてお伺いいたします。
 あわせて、今回の振興局再編を契機として、国、県、市町村等の行政のワンフロア化の具体の取り組みを進めるべきと考えるものでありますが、それについてのお考えと、県が今進めようとしております市町村との政策調整会議のより有効な展開方針についてもあわせてお聞かせ願います。
〇知事(達増拓也君) 広域振興圏体制についてでありますが、広域振興圏は、地方分権が目指す自立した地域の確立を図るために、市町村優先の行政システムのもとにおいて、産業の振興による地域経済の強化を主眼として設定されたものであります。今後さらに地方分権が進展していく中にあっても、住民に身近なサービスは市町村が担い、県は広域的、専門的な施策の展開を担っていくという役割分担を基本にしながら、国の動向も踏まえつつ、広域振興局について必要な体制を整備するなど、地域の特性を生かした取り組みを展開できるよう努めてまいりたいと思います。
〇地域振興部長(加藤主悦君) 行政のワンフロア化と市町村との間の政策調整会議についてでございますが、今回の振興局再編に当たりまして、空きスペースが見込まれる庁舎につきましては、ワンフロア化に向け関係、希望する市町村との協議を現在行っているところでございます。相互の連携を図りながら、住民サービスの向上、効率的な業務遂行に努めてまいりたいと考えております。
 また、地域における政策を総合的かつ効率的に推進するため、先駆的な取り組みとして、県と市町村との間で協議、調整を行う場として政策調整会議を設置したところでございます。現在、県南圏域におきまして、奥州市、金ケ崎町をモデルとして、県と両市町との間における二重行政の状況や望ましい役割分担のあり方などにつきまして、全事業を対象に丁寧に検討を進めているところでございます。来年度以降、今回の取り組み結果を踏まえまして、より効率的な手法を模索しながら全県的な展開につなげてまいりたいと考えております。
〇18番(関根敏伸君) どうもありがとうございました。
 今、市町村との間に進めております政策調整会議につきましては、今、御答弁いただいたとおりだと思います。次年度以降、これをモデルケースとして全県的に波及させていく、このことをぜひ期待申し上げるところでございます。
 現在は二重行政解消のための一つ一つの事業の棚卸し、このような展開中かと承知しておりますが、やはり最終的には、調整会議の設置の要綱にもありますとおり、県と市が施策を協働で立案していく、調整をしていく、連携、協働を一層進めていく、こういった部分になっていくのかと思っているわけであります。
 県は今年度、4広域振興局体制を含め、さまざまな地方分権に向けた取り組みをしているわけでありますが、来年度、今回の条例案が成立するとすれば4広域振興局体制の初年度に当たることになろうかと思っております。来年の予算編成方針の中でも、地域の一体感の醸成、地域課題に的確にこたえた施策を可能な限り反映させる、こういったことが盛り込まれているかと承知しているわけでありますが、こういったことに向けまして、この調整会議のさらに一層発展的な活用の仕方、こういったことを工夫していただきたいと思っているわけでございますが、これに関しまして御答弁をいただきたいと思います。
〇地域振興部長(加藤主悦君) 御指摘を踏まえまして、調整会議、これから議論させていただくわけでございますが、そういった問題意識も踏まえまして、委員各位に投げかけましていろいろ積極的に活発な議論をいただきたいと思いますし、それを踏まえまして今後の展開に生かしてまいりたいと思っております。
〇18番(関根敏伸君) 続きまして、中小企業対策についてお伺いいたします。
 現在の県政の最重要課題は、雇用環境の改善にあると言っても過言ではありません。来春の高校生への求人状況は前年を大きく下回り、最終の内定率がどの程度になるのか、大変危惧されているところであります。また、県は二つの基金を利用し、雇用の創出に鋭意努力をされておりますが、雇用環境の改善に向けましてはまだまだ厳しい状況が続いていると言えるわけであります。
 雇用の維持、創出と企業の安定経営は表裏一体であります。そういう意味では、企業の経営環境整備と雇用対策を一体的に進めていくことが最も確実な雇用対策にもなると思われます。
 県ではこのたび、昨年に立ち上げました岩手県緊急雇用対策本部を岩手県経済・雇用対策本部に改組されたようであります。この組織改組のねらいと、本部設置によって経済、雇用、中小企業対策をどのように戦略的、効果的に進める予定であるかお伺いをいたします。
 また、今定例会には中小企業経営安定資金についての補正予算約70億円が提案されております。これにより融資枠は当初の300億円から倍増の600億円に拡大することとなり、資金繰りに苦慮する中小企業にとっては朗報であると思われます。また、雇用の維持に懸命に努力をされている企業にとって、雇用調整助成金等の存在は大いにありがたいものであると推察されます。
 そこでお伺いいたしますが、改めまして最近の安定資金、雇用調整助成金等の利用状況をお知らせいただきますとともに、これを踏まえ、制度上の問題点等をどう把握しているのか、また、両制度の一層の効果的活用のための県のお考えをお示し願います。
 また、新年度から中小企業の法人税が減税され、18%から11%へ税率が変更される見通しも表明されておりますが、県内の中小企業経営にどのような影響を与えるととらえているのかお示し願います。
〇知事(達増拓也君) 岩手県経済・雇用対策本部についてでありますが、昨年秋からの経済の減速、雇用情勢の急激な悪化に対応しまして、昨年12月、岩手県緊急雇用対策本部を設置し、生活支援、雇用維持、雇用創出、そして就業支援の四つの柱とともに地域経済の活性化にも取り組んでまいりました。その後、県内の景気は、一部に明るい兆しが見られるものの、雇用情勢は依然として厳しい状況にありますことから、雇用環境の持続的な改善を図る上では景気の回復が重要であり、そのためには、これまで以上に経済対策と連動させた総合的な雇用対策を各分野にわたって強力に推進する必要があるという認識のもとに岩手県緊急雇用対策本部を改組して、新たに各振興局長も加えて、8月17日、岩手県経済・雇用対策本部を設置したところであります。
 経済・雇用対策本部におきましては、経済の活性化、雇用の創出、そして就業の支援の三つを柱に、各部局等が取り組む施策について進捗状況や効果等を定期的に把握、検証するとともに、本部員全員が情報を共有して、連携を図りながら状況に応じた経済・雇用関連施策を迅速かつ効果的に推進することとしております。
〇商工労働観光部長(廣田淳君) まず、中小企業経営安定資金の利用状況についてでありますが、本年4月から8月までの融資実績は1、010件、176億5、000万円余で、金額ベースでは前年同月比の約2.7倍となっており、今のところ円滑に中小企業の資金需要に対応しているものと考えております。
 また、下半期に向け資金需要の高まりや金利負担の軽減を図るため、9月補正予算に融資枠の拡大に係る予算を計上いたしますとともに、10月1日から県単融資の貸付利率を引き下げたところであります。
 次に、雇用調整助成金等の利用状況でありますが、本年5月をピークに減少に転じており、8月実績では、事業所数563件、対象者数1万5、566人となっております。この助成金につきましては、申請が集中した時期に支給されるまでに時間を要する状況もありましたが、ハローワークへの人員配置等によりまして、現在では解消されていると聞いております。また、6月には支給対象の拡大や1年間の支給限度日数が撤廃されるなどの支給要件の緩和がなされているところであります。
 これらの状況から、両制度につきましては現在のところ特段の問題はないものと認識しており、引き続き両制度の周知を図りながら、企業におきます効果的な利活用の促進に努めてまいりたいと考えております。
 次に、新年度からの中小企業減税の中小企業経営への影響についてでありますが、平成21年度の税制改正によりまして、中小企業に適用されます法人税率が22%から18%に軽減されており、さらに中小企業の活性化や競争力の向上を支援するため、平成22年度から税率を引き下げる動きがあるところであります。
 税率引き下げによります県内の中小企業経営への影響は、個々の中小企業におきます税負担の実態が異なり、はかりかねるところでありますけれども、中小企業の法人税の軽減は、全体としては企業の経営安定に寄与し、雇用の確保、新たな事業展開に向けた設備投資などの促進につながるものと考えております。
〇18番(関根敏伸君) どうもありがとうございました。
 ことし7月に知事には北上においでになっていただきまして、大変厳しい経済状況、雇用状況等々、延べ2日間にわたって調査、視察をしていただいたところでございます。今、部長から、現在の雇用対策の助成金あるいは中小企業安定化資金につきましては大きな問題はないという答弁がございました。そういった意味では、当初言われておりました交付金の日数が相当数かかって資金繰りに窮するとか、あるいは安定資金を拠出するときの金融機関と信用保証協会、こういったところとの連携不足でなかなか融資が決定されない、こういった部分については相当程度改善されているのではないかと推察されるわけであります。ただ、いずれにいたしましても、この制度の実態は、知事ではありませんが、ぜひ県としても現場に足を運んでいただいて、どういった程度制度が機能しているのか、問題点はないのか等々につきまして今まで以上にきめ細かく調査をしていただきながら施策の充実した取り組みに向けていただきたい、このようにお願いしたいと思っております。
 それでは、次の質問に移らせていただきます。
 県の掲げる政策の一つに食料供給基地岩手の確立があります。言うまでもなく、農林水産業は岩手県の重要な産業として位置づけられているわけでありますが、近年は、いわゆる国内経済の新たな方向性である内需拡大型経済の基盤となる産業として、そしてまた、環境保全や地域コミュニティを維持する上でも重要な産業として改めて注目を浴びております。さらにまた、現在の厳しい雇用環境の中で新たな雇用の受け皿としての位置づけも重要視されており、県では、本年2月に農林水産業及び関連産業への就業促進アクションプランを策定しております。
 プランの概要によりますと、2年間で新規参入と雇用拡大により3、700人の就業者数を目標としており、半年ごとに進行管理を行い、必要に応じて内容を見直しする内容となっております。報道などによりますと、新規就業者数が食品製造や食産業を中心に8月までに今年度の目標数を既に上回っているとされており、本県の1次産業の後継者確保に大きな希望が見えてきつつあると思われます。
 そこでお伺いいたしますが、県ではこの農林水産業関連業種への追い風をしっかりととらえ、今後のプランの最終目標達成にどのように取り組もうとされているのかお知らせください。
 あわせて、現在の新規就業者の方々が将来にわたり定着し、岩手の農林水産業の担い手としての役割を果たすためには安定した生活環境を実現していかなければなりませんが、新規参入者並びに新規雇用者の賃金状況などをどのように把握しておられるのか、また、プラン実現に向けた課題等をどのように整理しているのかお示しください。
 そもそもこのプランの位置づけは、県の雇用対策の方向性を踏まえた農林水産業及び関連産業における雇用対策の実行計画として位置づけられております。確かに現在の雇用環境の改善という大目標の中で、基金事業などを活用して短期間にでも雇用を確保し、将来の本格参入の芽を出しておくという考え方もあろうかと思います。しかし、将来的な農林水産業への期待の高まりの中で、しっかりとした意欲ある担い手の確保と育成を行いながら、本当に岩手の農林水産業が所得を生み、雇用を生み、地域を守り、外貨を稼げる大きな産業に育っていくということにこそ本来の意味があるのではないかと考えます。
 そのように考えたとき、農林水産業への就業促進計画を2年間のプランの実施のみで終わらせるというわけにはいかないと考えます。長期的展望に立ち、足腰の据わった対策をしっかりと講ずるべきと考えますが、内需拡大型産業の育成が急がれる中、農林水産業への有能な人材の就業促進に対する長期的視野に立った達増知事のお考えをお聞かせください。
〇知事(達増拓也君) 長期的展望に立った農林水産業への就業促進対策についてであります。
 本年2月に策定した就業促進アクションプランは、昨年来の急激な雇用情勢の変化に対応した雇用対策と農林水産業の喫緊の課題である担い手対策を一体的に推進するため策定したものであり、現在のいわて希望創造プランを基本に据え、その取り組みを進めているものであります。今後、本県が我が国の食料、木材の供給基地として、また、本県の農林水産業が地域経済社会の基盤となる産業として確立していくためには、農林水産業をリードする経営体の育成はもとより、産業を支える就業者を確保、育成していくことが極めて重要であると認識しております。
 新しい長期計画におきましても、経営発展に果敢に挑戦する意欲と能力を持った経営体の育成、また、新たな人材が絶えず農林水産業に就業できるきめ細かな相談活動や技術習得のキャリアアップ支援態勢の強化などの推進が盛り込まれておりまして、このような取り組みによって、本県農林水産業の未来を開く担い手を確保、育成してまいりたいと考えております。
〇農林水産部長(瀬川純君) アクションプランの実現に向けた課題といたしましては、農林漁業の作業が重労働であり、労働条件が厳しいこと、本県では、生産に季節性があり年間就業が難しいこと、さらには生産技術や機械の操作など専門的な技術、知識の習得に時間を要することなどの課題があると認識しているところでございます。
 こうした課題を解決し、農林水産業への就業を促進するため、補助事業や融資制度を活用した機械化等による省力化支援や冬春野菜や農産加工の導入などによる生産の周年化、さらには就業希望者のニーズや生産技術等のレベルに合わせた生産現場研修等のキャリアアップ支援などに関係機関、団体と一丸となって取り組み、プランの最終目標が達成できるように努めてまいります。
 また、新規参入者や新規雇用者の賃金状況等につきましては、全体の状況を正確に把握することは難しいところではございますが、農業改良普及センター等の現場指導の際などに個別にお聞きしているところであり、こうした情報をもとに、生活面や資金面で必要な支援について、関係機関、団体と連携して取り組んでいるところでございます。
〇18番(関根敏伸君) 今、食料自給率の向上や環境等多面的機能への期待から1次産業の国民的利益が見直され、行政による直接的な所得補償の考え方が国民の理解を得つつあります。国に先駆ける形で、米どころ新潟県では県版所得補償制度のモデル事業を始め、これを将来的に国への政策提言にするとしております。
 新政権では、来年度1年間を制度設計の期間としながら、平成23年度からは農業の戸別所得補償制度を開始することを明言しております。制度詳細は今後になりますが、米、麦、大豆などの土地利用型作物を計画的に生産する販売農業者等に対して、全国平均の生産費と全国平均の販売価格の差額を基本とした所得の補償を行い、かつ経営規模拡大や環境保全に対する取り組み、品質向上対策などに対しては加算要素を検討するとなっております。これからは地域の農業のコストの低減と販売価格と面積当たりの収穫量の増加がそのまま地域の農業所得と連動することになり、かつそのことは、イコール地域の担い手確保、地域の農業産業の繁栄と衰退に直結することになるわけであります。
 県では、今までもさまざまな農業施策を行ってきたわけでありますが、新たな制度導入を間近に控え、これからの岩手の農業政策についてどのような考え方を持っているのか、一層のコストの低減、販売価格上昇、単収アップにどうつなげていくお考えか、また、制度構築までの1年間を、モデル地区への名乗り上げなどより有効に活用する必要があると考えますが、お考えをお聞かせ願います。
〇知事(達増拓也君) 戸別所得補償制度導入を間近に控えた岩手の農業政策についてでありますけれども、新たに導入が検討されることとなっています農業者戸別所得補償制度でありますが、販売農家を対象に所得を補償するセーフティネットとして農村社会の再生につながるものと期待しておりまして、県としてもこうした制度が導入された場合には、制度の十分な効果が発現されるよう取り組んでいくことが必要と考えております。
 このため、農業者の経営努力が所得に反映され、将来展望を持って農業に取り組むことができるよう、経営規模の拡大や低コスト化による生産性の向上、6次産業化による農産物の高付加価値化などを支援してまいります。
 また、モデル事業の本県実施についてでありますけれども、国の動向を見きわめながら十分に検討し、本県農業にとってプラスになるよう、生産者や関係団体とも連携をしながら前向きに対応してまいりたいと考えております。
〇18番(関根敏伸君) 10月に岩手県で開かれます北海道・北東北知事サミットでも、この農林水産業の可能性について、これがテーマになると聞いているところでありまして、まさに内需拡大型産業の育成が大きなテーマになっているんだろうと思っております。
 県では9月にブランド米開発のための補正予算も提案されていると承知しております。ただ、コスト低減等につきましては、平均経営規模面積に関連するとも思われますが、東北各地の中でも、米のいわゆるコスト低減という面ではおくれをとっているという印象を持っているわけであります。ぜひこの販売価格の上昇、コストの低減等々につきまして一層の御努力を期待申し上げるところでございます。
 それでは、次に移らせていただきます。
 子ども手当と高校の授業料無償化に関連して伺います。
 これらの政策につきましては来年度からの政策実施が予定されております。制度の詳細はこれからということになりますが、いずれにせよ、県としても政策実施を見込んだ種々の対応を検討、準備する必要があると考えます。これらの政策は、基本的にはOECD先進各国の中で教育費等に係る国民の家計負担が非常に重い日本の実情などから、他の先進国並みの教育予算の確保による教育格差の是正や、遅々として進まない我が国の少子化対策の抜本的解決方法として検討されたものであり、同時に、国の予算を直接家計に入れることによる可処分所得の増加とそれに伴う消費拡大効果、地域での消費循環等、経済政策的な意味合いを持ったものであります。
 この大きな政策への評価を含め、これらが岩手を含む地方の消費拡大へどう影響してくるのか、また、今後の日本の社会構造にどのような影響を与えていくものとお考えか、知事の所感をお伺いいたします。
 続けてお伺いいたします。
 子ども手当が実際に来年度月額1万3、000円、そして平成23年度以降月額2万6、000円が支給された場合、県全体の支給額はおよそどの程度になると予想されているのか。あわせて、この政策が県が進める子育て支援にどのように活用されることを期待しているのかお伺いいたします。
 また、6月補正で予算化されました子育て支援対策臨時特例基金を利用し、県がこれまで推進してまいりました子育て支援と関連させたより効果的な事業化の方向性をお示し願いたいと思います。
〇知事(達増拓也君) 子ども手当と高校の授業料無償化についてでありますが、これまでの企業の長期的雇用慣行を基本とした雇用の安定と、それを前提とした社会保障や福祉などのセーフティネットが解体しつつある今、求められているのは、雇用と福祉をセットにして、生活保障のあり方を再構築していくことであると考えております。
 こうした観点から、今般の政策は子育て世代に焦点を当て、安心して子供を産み育てることのできる環境を整備するための福祉政策のセーフティネットとして評価できると考えております。
 また、このような政策が実施されることにより、安心して子供を産み育てるため、子育ての費用を社会全体で負担する仕組みが構築されるとともに、家庭の状況にかかわらず、子供たちが安心して修学できる環境整備の一助となり、家計の経済的な負担の軽減を通じて我が国の少子化傾向に歯どめをかけ、また、教育格差の解消を図る契機となることが期待されております。
 さらに、地域経済との関係では、これまでの関係手当等の支給総額に比べますと県内では500億円程度の増額が見込まれるところでありまして、こうした新たな手当の支給等により家計の子育て費用の軽減が図られ、可処分所得の増加による新たな消費の喚起など、地域経済の循環を通じた経済波及効果も期待されるものと考えております。
〇保健福祉部長(千葉茂樹君) 子ども手当と子育て支援についてでありますが、子ども手当の県全体の支給額は、平成20年度の本県の15歳未満の人口が約18万人であることを基礎として試算いたしますと、月額1万3、000円の支給としております平成22年度は約281億4、300万円、月額2万6、000円となる平成23年度以降におきましては約562億8、700万円になるものと見込んでおります。
 この子ども手当の子育て支援への活用につきましては、子ども手当は子育ての経済的負担を軽減し、安心して出産し、子供が育てられる社会をつくる観点から支給することとされております。したがいまして、一般的な生活や教育に要する基礎的な経費に加えまして、県といたしましては、例えばIGR等を活用していわて子どもの森に来館する際の交通費や子供連れの親子に商品の割引等を行うi・ファミリー・サービス事業協賛店での日用品の購入、さらには、県が支援し、市町村が設置しております地域子育て支援センターや児童館等での活動への参加に要する経費などに活用されることを期待しているところでございます。
 また、子育て支援対策臨時特例基金につきましては、平成22年度までに保育サービス等の充実や地域での子育て支援等に活用することとされております。このため、これまで待機児童解消に向けて進めてまいりました保育所の整備を来年度までに重点的に取り組むよう市町村に助成いたしますとともに、これまで県が養成してまいりました子育て支援コーディネーターや子育てボランティアによりますNPOの立ち上げなどを支援することなど、現在見直し作業を行っておりますいわて子どもプランにおいて掲げることとしています保育サービスの充実やみんなで子育てを支援する地域づくりなどの実現に向けた取り組みに活用してまいりたいと考えております。
〇議長(佐々木一榮君) 本日の会議時間は、議事の都合によりあらかじめ延長いたします。
〇18番(関根敏伸君) 高校の授業料の無償化につきましても大分制度の概要が明らかになっております。公立高校の場合は授業料相当額の月額1万円を、私立高校の場合は保護者の所得に応じて月額1万円から2万円を都道府県や学校法人に交付する方法がとられる見込みであることが報じられております。
 そこでお伺いいたしますが、この支給方式などがいわゆる県などへの間接支給になったとすれば、現在、公立高校で行われております授業料徴収事務の軽減や授業料滞納の解消、そして授業料減免措置等による県の収入減額が結果として増加することになると思われるわけでありますが、それらの見込み額等がどの程度になると予測されるのか。そして、結果として、これらのことによる予算の増額分を学校教育施策へより効果的に結びつける好機と考えるものでありますが、教育長のお考えをお聞かせ願います。
〇教育長(法貴敬君) 高等学校授業料の無償化の効果についてでありますけれども、平成20年度の授業料収入減の状況は、滞納額が500万円余、減免額が2億4、500万円余で、合計2億5、000万円余が効果が出てくると思います。ただ、いまだ授業料の無償化の制度設計の詳細が明らかになっていないことから、その効果を的確に把握することは困難でありますけれども、今後、国の制度の動向を十分に注視しながら、教育分野に効果を発揮できるよう適切に対応してまいりたいと考えております。
〇18番(関根敏伸君) 先ほど知事が答弁の中で、現金給付は国の役割、サービス提供は地方の役割と、このようなお話をされておったと思います。ぜひ、こういった政策をよい機会ととらえまして、県としての役割を一層充実させていただきたいとお願いしたいと思います。
 続いて、介護関連施策についてお伺いいたします。
 介護業務従事者処遇改善交付金事業等を中心にお聞きいたします。今までの国の社会保障費の削減方針の中で、他産業との比較で大きく立ちおくれが指摘されておりました介護従事者にとって、今年度の介護報酬の3%アップは一つの前進でありますし、今回の43億円余の基金事業によります処遇改善には大きく期待したいところであります。
 そこでお伺いいたしますが、今回の事業により、国では介護従事者1人当たり月額1万5、000円程度の改善を見込んで予算措置されていると聞いておりますが、現在、申請の受付が始まり、対象事業所の認定が始まっている段階であるとお伺いしておりますが、この事業により、介護職員のしっかりとした確実な処遇改善に結びつけるため、県ではどのような点に留意し、臨もうとしているのかお聞かせ願います。また、具体の改善効果に結びついた場合、介護従事者と県内の他産業との待遇格差がどの程度改善されるのかお聞かせ願います。さらに、基金事業は平成23年度までの期限つきであることから、基金事業終了後の展望について県の考えをお聞かせ願います。
〇保健福祉部長(千葉茂樹君) 介護業務従事者処遇改善交付金事業についてでありますが、厚生労働省の調査では、平成20年の県内全産業の平均給与が25万5、400円であるのに対し、財団法人介護労働安定センターの調査によれば、県内介護労働者の平均給与は20万1、006円であり、全産業平均の79%弱の水準となっているところでございます。介護業務従事者処遇改善交付金事業につきましては、介護関係職員の中でも特に賃金水準が低いとされる介護に直接従事する職員の処遇改善を図ろうとするものであり、処遇改善の効果を最大のものとするためには、できるだけ多くの事業者の方にこの交付金を活用していただくことが重要であると考えております。
 したがいまして、県では6月県議会でいち早く関係予算の議決をいただき、7月下旬から県内4カ所において事業者説明会を開催したほか、県内関係団体との意見交換、NPO団体の協力による研修会や相談事業の実施、県ホームページでの制度の紹介など積極的に事業の周知を図るとともに、交付金の認定事務を事業者の身近な広域振興局等で行うこととするなど、きめ細かな取り組みを現在行っているところであります。こうした取り組みによりまして事業者が交付金を活用し、給与の改定や一時金の支給など処遇改善に取り組んだ場合には、介護職員1人当たり月1万5、000円程度の賃金改善効果が見込まれ、また、県内すべての関係事業者が実施した場合には、冒頭申し上げました平均給与ベースで全産業の79%弱の水準から85%弱の水準まで改善され、約6%の格差縮小になるものと見込まれるところであります。
 なお、今回の事業は約3年間の限定とされたものとなりますことから、県におきましては、これまで介護に直接従事する職員のみならず介護関係職員全体の処遇につきまして恒久的な制度改善を国に提言してまいったところでありまして、引き続き提言してまいりたいと考えております。
〇18番(関根敏伸君) ありがとうございました。
 次の質問に移ります。
 自殺対策についてお伺いいたします。自殺対策につきましては、県は平成16年度より事業を開始。平成18年度からは予算も大幅に増額し、毎年1、500万円程度を予算化、障がい保健福祉課、精神保健福祉センター、そして県内各地の保健所が連携しながら各種事業を展開しております。そして今年度は当初予算で自殺遺族支援体制構築のための調査研究、きめ細かなうつ病予防教室の開催などの事業展開を行う一方、国の自殺対策緊急強化の基金事業の導入により、今議会にも補正予算が提案されております。県では、これらの事業開始以前は、全国の中での人口10万人対比の自殺者の割合がおおむね2位から3位の状況となっておりましたが、事業導入後6年目を迎えた現在、一定の事業に対する総括的評価を行いながら新たな事業に向かうべき時期とも考えるものでありますが、県の評価と、県あるいは地域ごとの問題点をどのように整理しているのかお伺いいたします。
 また、今議会には4、900万円余りの大きな事業予算が提案されているわけでありますが、この予算額は今まで県が数年にわたって行ってまいりました予算額の3倍近くに上るわけであります。県では、今までの事業評価の上に立った効果的な事業の企画が必要になるものと思われます。国では、強化モデル事業として、ハイリスク地のパトロール活動への支援や一時的避難場所の提供事業などを始め、地域の緊急強化のための事業提案などを行っているようでありますが、これらを含め県としての具体の取り組み予定と地域ごとの特徴的な取り組み方針があればお知らせ願います。
〇保健福祉部長(千葉茂樹君) まず、自殺対策の評価と問題点についてでありますが、本県の自殺者数の状況は、平成15年の527人をピークに平成16年は481人、平成19年は437人と毎年減少してきたところであります。このことは、これまで保健所や市町村等が中心となり、地域において、うつ予防に関する普及啓発や相談事業の実施などのきめ細やかな取り組みを行ってきたことが一定の効果としてあらわれたものと考えております。しかしながら、平成20年には、自殺者数が一転して増加傾向となったところであり、これは、経済、雇用情勢の悪化などがその要因の一つと考えられているところでございます。このような状況から、今、議員御指摘のとおり、自殺対策におきましては新たな事業展開が必要とされる時期になってきているものと認識しております。このため、県におきましては、今後の事業展開に当たりまして、49関係機関、団体からなります県自殺対策推進協議会のもとに、新たに学術的、基礎的研究を行う学究委員会や事業の企画評価を行う事業委員会を設置いたしまして、専門家の御意見を踏まえながら課題等の検証を行い、より効果的な取り組みを進めることといたしております。当該委員会の議論の中では、自殺予防に向けた県民機運の醸成を一層図る必要があることや、これまで、働き盛りなど対象者を絞った取り組み、県北・沿岸など自殺率が高い地域を特定した取り組みなどがまだ不十分であることなどが課題として整理されているところでございます。
 次に、今後における自殺対策の具体的な取り組みについてでございますが、まず、県自殺対策推進協議会が昨年度一部見直しを行いました自殺対策アクションプランにおいて盛り込まれております九つの施策体系に基づく事業を官民一体となって着実に推進しますとともに、本年7月に県精神保健福祉センター内に設置いたしました岩手県自殺予防情報センターにおいて、自殺に対する専門的な相談支援や自殺対策の取り組み事例の情報発信などを行うことといたしております。また、ただいまお尋ねのありました9月補正予算事業におきましては、自殺者増加に緊急的に対応するため、本年7月に設置いたしました自殺対策緊急強化基金から、3カ年計画の中で今年度重点的に事業費として投入し、今申し上げました課題を踏まえ、職域における働き盛りの年代を中心としたメンタルヘルスチェック事業や、経済、生活問題を専門とする電話相談事業などにおいて支援いたしますとともに、県、市町村、民間団体が連携し、集中的な自殺防止キャンペーンなどの普及啓発事業を全県的に展開することといたしております。
 さらに、地域ごとの取り組みにつきましても、先ほど申し上げました課題を踏まえまして、これまで自殺率の減少に成果を上げてまいりました久慈地域での取り組みをもとに、県内で特に自殺率の高い二戸地域を対象とし、モデル事業として、中高生、働き盛り世代への健康教室の開催、自殺未遂者への支援などの取り組みを進めることとしており、今後は久慈、二戸の両圏域で得られました成果を他の圏域にも波及させ、自殺率の低減を目指してまいりたいと考えております。
〇18番(関根敏伸君) 今回の広域振興局体制の構築の一環といたしまして北上と花巻の保健所の統合が提案されているわけでありますが、花北の自殺率は県内の地域の中でも決して低いとは言えない状況にあると聞いております。また、今般の経済情勢の中で、この上昇率が目立っているということも承知しておりますが、この統合によります自殺対策はどのように担保されるのでしょうか、あわせてお聞かせ願います。
〇保健福祉部長(千葉茂樹君) 北上、花巻地区の自殺対策についてでございますが、北上、花巻地区からなります岩手中部障がい保健福祉圏域におきます平成20年の自殺率─これは自殺された方の人口10万人対の比率でございますけれども、この自殺率が36.1でございまして、県内9圏域の中で5位と中位にございます。しかしながら、前年より2.2ポイント高くなっているところでございます。また、本年1月から4月までの状況を前年同期と比較いたしますと、40代、50代のいわゆる働き盛り世代の自殺が増加しているところでございます。このような状況から、岩手中部圏域におきましては、保健所が中心となりまして、市町村や関係団体、関係機関と連携し、企業へのうつ予防に関する出前講座や、ハローワークと連携した求職者に対する相談啓発など、働き盛り世代を対象といたしました自殺対策を強化してまいりたいと考えております。
 なお、保健所統合後におきましても、北上地区合同庁舎には相談を担当する専門職員を引き続き配置いたしますとともに、現在、北上、花巻地区にそれぞれ設置しております関係機関、団体で構成いたしております自殺対策推進連絡会議につきましては、現在の状況を踏まえまして引き続き設置運営するなど、当該圏域の自殺対策の取り組みが今後とも担保されるよう十分配意してまいりたいと考えております。
〇18番(関根敏伸君) 岩手県ではかなり早い段階から自殺対策に取り組んでいると承知しております。早い対応には感謝したいと思っております。内閣府では2007年と2008年の2カ年の地域ごとの自殺の動機や年齢のデータを公表し、これからの自殺対策に効果的に役立ててほしいといった数値を発表していると聞いているわけであります。今お聞きしましたとおり、中高年者の働き盛りの方々の経済的な事情による自殺が大変目立つことが憂慮されるわけであります。今、花北地区の取り扱い方法につきましてはお聞きしたわけでありますが、しっかりとした対応をぜひともとっていただけますことをお願い申し上げておきたいと思うわけであります。
 それでは、次の質問に移らせていただきます。
 いわゆる91社問題についてお伺いいたします。平成17年に公正取引委員会が県内の建築A級の建設業者91社に対し排除勧告を出しましてから4年が経過しております。現在は当初の91社が80社を切っているとも言われ、減り続ける公共事業や昨年来からの経済状況が、これら当事者各社に大変厳しい現実を突きつけているとも思われます。この審判も最終意見陳述が終了し、通常、結審から半年から1年以内に行われるとされております公正取引委員会からの審決がいつ出てもおかしくない時期を迎えようとしており、その行方をかたずをのんで見守っている関係者も少なくないと推察されます。
 そこでお伺いいたしますが、審決が下された場合に、県の指名停止などの処分が、関係業者並びに地域経済に与える影響は、県は現時点でどのようにとらえているのでしょうか。また、同時に予想され得る事態に対し相応の対処方針なども検討の時期と考えるものでありますが、県の対応のあり方等についてお示し願います。
 また、県の指名停止期間につきましては、県営建設工事に係る指名停止等措置基準によって行われ、県発注工事につきましては、通常、12カ月間の指名停止処分が行われることになり、全国の中でも厳格な内容の基準になっていると言われております。当然、県の処分が下されますれば、県内市町村もその対応を踏まえ処分を行うことが想定されるわけであります。そうした場合、その間の県内業者の受注が著しく減ることが予想され、県内建設市場が他県企業に席巻されてしまう可能性も否定できません。談合等の不正行為には断固とした対応で臨む県の姿勢はさまざまな経験の中から出てきたものと承知しておりますが、経済や雇用の面で異常事態とも言える県内情勢にあっての措置基準に当たる県の考え方をお示し願います。
〇総務部長(菅野洋樹君) いわゆる91社問題で審決が下された場合の県の対応等についてでありますが、お話のありましたとおり、本年1月に審判が結審したところでありますが、その後、具体的な動きがございませんで、現在、最終的な審決の内容を予測することは困難な状況にございます。したがいまして、審決の内容を前提といたしまして、県としての対応、これに対する影響等についてお示しすることは現時点では困難と考えておりますので、御理解をいただきたいと思います。県といたしましても、公正取引委員会の動向を注視してまいりたいと考えております。
 次に、指名停止等措置基準の考え方についてでありますが、御指摘のありました本県の指名停止期間につきましては、全国で約4割の県が採用している、いわば全国的に見ても標準的なものとなっております。雇用対策や経済対策につきましては、現下の県政の重要な課題であり、県を挙げて取り組んでいるところでございますが、一方、措置基準の適用に当たりましては、定められているルールに従い公平、公正に対処することもまた求められているものと考えております。
〇18番(関根敏伸君) 今の御答弁でありますが、この91社問題につきましては、今までもこの一般質問でありますとか予算委員会、決算委員会等で何名かの議員の方々が質問されております。今までと全く同じ答弁内容だなというふうに聞いておったわけでありますが、私は、県の対応方針のいわゆる基本的なあり方につきまして問題提起をしているわけではありません。あくまで県の危機管理上のさまざまな想定の時期に来ているのではないかといったようなことから質問を申し上げているわけであります。冒頭質問しましたとおり、通常、半年から1年、審決が出されるという時期でありますから、いつあってもおかしくないという状況であれば、そういった状況を踏まえて、今までの答弁とは違った形でさまざまな危機管理的な御答弁をいただけるものかなと期待をしておったわけでありますが、そういった観点から、雇用や経済政策については重要であるということは今さら言うまでもないわけであります。そういった点を踏まえまして再度御答弁をいただければと思うわけであります。
〇総務部長(菅野洋樹君) 仮にという大前提でお話をさせていただきたいと思いますが、もし万が一、そういった公正取引委員会の動きがあって具体的に影響等が生じた場合、特に建設関連産業は大きな関連を持ってございますので、具体的な関連会社や協力会社が多くあることが想定されます。したがいまして、こういった影響については県として最大限対応する必要があろうと思っておりまして、関係部局からなる対策会議等を通じて各種相談窓口の設置や、そういう関連会社等への経営及び雇用といった対策について必要な対策を考えてまいる、そのように考えております。
〇18番(関根敏伸君) 時間がないので競馬に移らせていただきます。
 岩手競馬が、県議会での大きな議論の中、構成団体による330億円の融資を伴う現在のスキームの中で再出発を切ってから3年目を迎えるわけであります。1年目は7億8、500万円によるコスト調整、2年目は5億2、000万円のコスト調整によりまして、それぞれ4、900万円、4、800万円の黒字を達成しております。今年度は、先ほども質問されましたとおり、1億9、300万円のコスト調整が行われ、収支均衡に向けて、今、ぎりぎりの状況にあると承知しているわけであります。いわば現在のスキームは単年度ごとに関係者すべてを巻き込んでのぎりぎりの必死の経営が継続中と言えるわけでありまして、それが現在のスキームの本質であります。しかしながら、およそ競馬であれ、民間企業であれ、厳しい現実の中で、長期的な展望を持って、将来の利益と経営環境の改善という果実を求め前向きの努力を行ってこそ将来展望が開けるわけであり、また、そこに働く方々のモチベーションのアップとさらなる創意工夫に結びついてくるものであると考えるわけであります。
 そこで伺いますが、ここ3年間で投資的経費はいかほど行ってきたのか。また、今後数年間で、競馬の開催機能の維持や積極的売り上げ拡大のために、また、新たな設備投資などによって、結果として、よりローコストで効率的な運営が可能になるなど、さまざまな観点からいかほどの投資が必要と見込んでいるのかお聞かせください。あわせて、そのための財源捻出についての県の考え方と見込みについてはいかがでしょうか。
 また、今、質問させていただきました今後の設備投資の経費が見込めない場合のこれからの競馬の売り上げ等への影響はいかほどに試算されているのでしょうか。その場合のコスト調整の可能性と収支均衡の展望についてもお聞かせ願います。
〇議長(佐々木一榮君) 答弁は簡潔明瞭に、時間内にお願いいたします。
〇農林水産部長(瀬川純君) これまでの投資額でございますが、平成19年度からの3年間におきまして、総額約8、000万円となっております。今後におきましては、場外発売所の大型映像装置等の優先度の高いもののほか、各発売所の自動販売・払戻機の更新等を行いました場合には、概算で5億円を超える投資が必要と見込んでいるところでございます。ただ、その更新時期については、それぞれの設備等の状況を見ながら今後検討させていただくことといたしております。
 また、投資のための財源捻出についての考え方と見込みでございますが、岩手競馬は、新計画のもとで、競馬事業から得られる収入ですべての支出を賄い、収支均衡を達成することが事業存続の条件でございます。投資的経費につきましても競馬事業の収入で賄うことが基本となっております。このため、毎年度の利益などを施設等整備基金に積み立てているところでございますが、基金だけでは確保できない場合も想定されますので、地方競馬全国協会の補助金等も活用しながら、財源確保を図っていかなければならない状況にございます。
 次に、こうした設備投資経費が見込めない場合の影響でございますが、必要な時期に更新等ができない場合は競馬の開催に支障が生じることも懸念されるところでございますが、その影響につきましては、故障の時期、程度などで大きく異なることから、現時点での影響額の試算は難しいものでございます。また、新たな設備投資が見込めない場合には、売り上げ確保や低コスト構造への転換が厳しくなることにより、将来的に安定的な事業運営に影響を及ぼすことも懸念されるところであります。いずれにしましても、財源の確保と……。
〇議長(佐々木一榮君) 執行部に申し上げます。申し合わせの時間になりましたので、発言の終了をお願いしたいと思います。御了承をお願いいたします。
〇18番(関根敏伸君) 終わります。(拍手)
〇議長(佐々木一榮君) 以上をもって本日の日程は全部終了いたしました。
 本日はこれをもって散会いたします。
   午後5時14分 散 会

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