平成21年9月定例会 第13回岩手県議会定例会 会議録

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〇32番(佐々木博君) 民主党の佐々木博であります。
 通告に従い順次質問いたしますので、簡潔で前向きな御答弁をお願いいたします。
 8月30日に行われた衆議院選において、民主党は308議席を獲得するという圧倒的勝利をおさめ、9月16日、民主、社民、国民新党の3党連立になる鳩山内閣が発足、ここに政権交代が実現いたしました。民主党衆議院議員として政権交代を目指して活動し、現在も民主党籍を有する達増知事にとっても感慨ひとしおのものがあると思われます。
 さて、この政権交代によりさまざまな変化が期待されますが、私は、特にも地方分権推進の観点から、一括交付金制度の導入と国税5税から地方交付税として割り当てられる法定率の引き上げによる地方交付税の増額を強く期待するものであります。知事が新政権に対し特に期待することは何でしょうか。行政の長たる知事としての立場で期待することと政治家達増拓也個人として期待することをそれぞれ伺います。
 次に、新しい長期計画について伺います。
 9月15日に新しい長期計画案が公表されました。この計画の特色は、10年の長期計画を策定すると同時に、知事の任期の4年ごとに実施計画となるアクションプランを策定するとしたことにあります。私は、時代の変遷が非常に速く、先行き不透明な時代に10年もの長期計画を策定することは不可能であり、また、必ず実態に合わなくなるからやめたほうがよい、策定するならば、マニフェスト実現のための4年間の計画にとどめておくべきだと主張してまいりました。この観点から、公表された新しい長期計画では10年後の岩手の進むべきベクトルだけを示し、あえて数値目標を掲げなかったことについては賛意を表するものであり、また、キーワードとして、ゆたかさ、つながり、ひとの三つの視点を取り入れたことも適切なものと評価しておりますが、知事が10年の長期計画が必要と考える根拠と、知事の任期と合わせて4年ごとにアクションプランを策定することとした理由を改めてお聞かせください。
   〔議長退席、副議長着席〕
 ところで、新しい長期計画案では、人口減少や少子・高齢化社会の到来に対する危機感やソフトパワー戦略について述べられ、また、九つの生活広域圏は4広域振興圏に変わり、さらには県政運営の基本姿勢として、岩手の未来づくりを支える専門集団になるとの強い意欲が示されるなど、今の総合計画と違う点はもちろんありますが、最も基本となる県民が期待する将来ビジョンという視点で見ると余り違いがないようにも思います。
 なぜかと思い、今の総合計画策定時に参考とした平成12年の県の施策に関する県民意識調査結果と平成21年の県の施策に関する県民意識調査結果とを対比してみたところ、調査項目に違いはあるものの、雇用や中心市街地の活性化や適切な医療体制など、県民のニーズ度が高い項目は10年前も現在も余り違いはないということに気づきました。このことをどう評価すべきなのか。今の総合計画で目標とされたことが実現できなかったからなのか、あるいはこれらの項目はいつの時点でも普遍的にニーズ度が高いからなのか判断に迷うところでありますが、知事はこの点をどう考えるか。また、今の総合計画と新しい長期計画との違いはどこにあると考えるのか御所見を伺います。
 次に、長期計画の策定にかかわって、県政懇談会のあり方について伺います。知事が出席する県政懇談会は平成20年度にも計31回開催されましたが、直接県民から意見、提言を聞くことは、県民の声の県政への反映や県民との協働による地域づくりの推進に役立つとともに、今回の新しい長期計画の策定にも大いに参考になったことと思われます。しかしながら、これらの懇談会は、岩手フロンティア懇談会や草の根地域訪問こんにちは知事ですを初めとして懇談の対象者が限定され過ぎているように思われますし、現実に私の周囲にも知事との直接対話を望んでいる方々もおります。
 そこで、一つの提言ですが、郵便や電子メールなどによる県政への意見や提言の中には有意義で参考とすべきものも相当数あると思われますので、そういった意見や提言をされた方々に広く呼びかけて懇談会を行うなど、現在より幅広い層を対象にした県政懇談会の開催も検討すべきと思うのですが、知事の御所見を伺います。
 次に、今後の財政見通しとその対策について伺います。
 先般、本県の今後の収支見込み等が公表されました。それによると、平成21年度と平成22年度は、歳出削減や国の地方財政対策等により収支均衡を達する見込みだが、平成23年度以降は毎年700億円規模の収支ギャップが生じる見込みとされております。本県は、国から地方自治体が平成17年度から平成21年度までを取り組み期間とする集中改革プランを策定するように要請を受ける以前の平成15年10月、既に岩手県行財政構造改革プログラムを策定し、平成15年度から平成18年度までの4年間に見込まれた約1、750億円の財源不足を解消するため、職員数の削減や給与の減額措置による人件費の抑制、さらには大規模施設整備の見直し等による投資的経費の大幅な削減など、2、000億円を上回る徹底した歳出削減に取り組み、着実な成果を上げてまいりました。
 しかしながら、その後、平成18年8月、中期財政見通しの試算をしたところ、平成19年度以降、毎年度700億円規模の財源不足が見込まれることから、これに対処するため、岩手県集中改革プログラム等に基づき、事務事業の総点検、徹底した歳出の見直し、職員給与の特例減額、歳入確保の強化、職員体制のスリム化などにさらに徹底して取り組んできたところであります。この結果、職員数は平成21年度では平成15年度と比較して2、700人以上減少し、平成23年度には知事部局は4、000人体制となりますが、職員数の削減も限界に近づいていると思います。また、借換債発行の余地もほとんどなくなっていますし、主要3基金についても平成15年度には675億円あったものが大きく減少し、平成21年度末には136億円程度になるものと見込まれ、基金からの繰り入れも期待できません。このように県としてやれることはすべてやり尽くしたとも言える厳しい状況の中で、平成23年度以降、知事は県政執行に当たってどこに突破口を見出そうとされているのか伺います。
 ところで、民主党のマニフェストでは国が使い道を限定して地方に配分する国庫補助負担金を廃止し、地方が自由に使える一括交付金に変えることとされており、原口総務大臣は平成23年度から導入する方針を表明いたしました。この一括交付金に大いに期待したいところですが、マニフェストで明らかになっているように、補助金のうち社会保障、義務教育関係費は除くとされていることから、一括交付金化の主要対象は公共事業関連の約3.8兆円程度と想定され、この規模では地方の創意工夫だけでは対応不可能であり、地方交付税の増額や新たな財源確保が必要不可欠であります。達増知事には、地方への適切な財源保障、財源調整が行われるよう、地方税財源の充実、確保に向け全国知事会のリーダーとして取り組んでいただくことを強く期待するものでありますが、知事の強い決意をお伺いします。
 財政問題の最後に今年度の県税収入の見通しについて伺います。
 今年度当初予算では、県税収入は不景気による大幅な落ち込みを見込んで、昨年度当初予算対比で248億円余少ない1、047億円余を計上しております。しかしながら、この経済不況の影響は想定を上回るものがあり、特にも企業収益に大きく影響を受ける法人二税を中心に見込みどおりの県税収入が確保できるのか、非常に危惧されるところであります。
 そこで、県税収入の見通しについて伺うとともに、もし、不足が見込まれるとしたら、どのように対処するお考えかお示し願います。
   〔32番佐々木博君質問席に移動〕
   〔知事達増拓也君登壇〕
〇知事(達増拓也君) 佐々木博議員の御質問にお答え申し上げます。
 まず、新政権への期待についてであります。
 行政の長といたしましては、民主党はマニフェストに、地域のことは地域が決め、活気に満ちた地域社会をつくるという地域主権の確立を掲げており、国から地方への大幅な権限移譲や地方税財政制度の改革など、真の地方分権改革が進むことを期待しております。また、厳しい経済情勢のもと、何よりもまず国民が安心して暮らせる社会の実現に向けたセーフティネットの構築が重要と考えており、国と地方が対等な立場で、適切な役割を担いながら、経済、雇用政策と福祉、社会保障政策を有機的に連携づけて推進していくことで、国民の生活が保障されることを期待しております。
 政治家個人といたしましては、岩手では約15年間、日本を変えようという改革の動きが全国に先んじて進んできたところであり、このたびの政権交代の実現は岩手の力で日本を変えたということもでき、私としても感慨深いものがございます。選挙による本格的な政権交代は民主主義のあるべき機能が発揮されたことによるものであり、新政権において民意を踏まえたいわゆる政治家主導の政治が行われて、我が国の民主主義がさらに発展していくことを期待しております。
 次に、10年の長期計画と4年ごとのアクションプランの策定についてであります。
 私は、グローバル化の進展など社会経済情勢が目まぐるしく変化し、先を見通しにくい時代だからこそ、岩手の長期的な将来像を県民の皆さんと県が共有し、その実現に向けてともに努力していくことが重要と考えております。このような考えのもとで実現していきたい岩手の未来の姿を示すとともに、未来を担う子供たちや地域を支える人材などを育てる人づくり、豊かな自然環境の保全などは長期的な視点で取り組むことが重要であるという考えから、10年間を計画期間とする長期計画を策定することとしたものであります。
 一方、近年、知事選挙において知事候補者がマニフェストを掲げて選挙に臨むいわゆるマニフェスト型選挙が定着しつつありますことから、アクションプランについてはマニフェストサイクルと連動した4年間の計画期間とすることが適当であると判断したものであります。
 次に、県民意識調査結果についてであります。
 議員御指摘の二つの調査結果については、調査項目や設問内容の違いなどから直接的な比較は困難ではございますが、これらの調査結果などを概観いたしますと、雇用や医療などの施策分野の優先度やニーズ度が高くなっています。こうした分野は県民が暮らしていく上で最も基本となる事項であり、いつの時代であっても県民にとって関心が高い分野である。グローバル化や人口減少、少子・高齢化など本県を取り巻く社会経済情勢が現行総合計画策定時の予測を上回って変化し、大きな影響を受けている。また、特に最近の世界的な景気後退や国の医療制度の見直しなどの影響を大きく受けている。そういう分野であることなどから、県民ニーズ自体も高度化、多様化し、県の施策に対する関心が引き続き高くなっているものと考えられます。県民のニーズが高く、かつ社会経済情勢の変化によって高度化、多様化していく課題に適切に対応するため、新しい長期計画では、現行計画における参画による地域づくりの考え方というものをさらに一歩推し進め、県民、企業、NPOや行政など地域社会を構成するあらゆる主体が総力を結集して、地域の多様な資源を生かし、地域の価値を高めていく、いわゆる地域経営の考え方を強く打ち出しているところでございます。
 次に、県政懇談会のあり方についてであります。
 地域の現状や、今、地域で起こっていることを知ることが重要であり、県政懇談会を通じて多くの県民の皆様と直接語り合い、課題を共有し、県民の声の県政への反映や県民との協働による地域づくりに生かしてまいりたいと考えております。このような認識のもと、私は知事就任以来、地域のコミュニティを対象とした草の根地域訪問こんにちは知事ですという企画や、有識者を対象とした岩手フロンティア懇談会、次代を担う学生、生徒を対象とした出前授業、青年層を対象とした岩手フロンティア・フレッシュトークなどを通じて県内各地を訪問し、若い世代から高齢者の方々まで、また農林水産業を初めさまざまな産業に携わる方々と直接語り合ってまいりました。今後とも、議員御提案の趣旨も踏まえ、できる限り幅広い年齢層やさまざまな産業に携わる方々と意見交換し、県民の皆様の暮らしや仕事の現場を、その声を直接お伺いできるよう工夫をし、また検討してまいりたいと思います。
 次に、今後の収支見込みにかかわる財源不足への対応についてであります。
 先般発表した岩手県の今後の収支見込み等では、アクションプランの改革編に基づく各種の財源対策や歳出削減等の取り組みを講じることにより、平成21年度及び平成22年度についてはおおむね収支均衡を達成できるものの、平成23年度以降については、粗い試算を行った結果、毎年度700億円程度の収支ギャップが生じる見込みとなったところであります。今後、平成23年度以降のアクションプランを策定する中で、この収支ギャップの解消に向けた具体的な対応が検討されていくこととなりますが、これまでの歳入、歳出両面にわたるさまざまな取り組みに加えて力強い経済社会構造を構築するとともに、多様な主体による公共サービスを担う仕組みづくりを図るなど、あらゆる取り組みを通じて、持続可能な財政構造の構築に向け全力を傾注してまいりたいと思います。
 また、厳しい県財政の状況について、県民の皆さんに積極的な情報提供と情報共有を行うことによって、限られた財源の中で、魅力的で住みよい地域づくりを進めるために、行政とともに地域づくりを担っていただくなど、地域社会を構成するさまざまな主体の総力を結集して、ともに地域課題の解決に当たっていく考えであります。
 次に、地方税財源の充実、確保に向けた対応についてであります。
 民主党の政権公約では、地域主権を確立し、地方政府が地域の実情に合ったサービスを提供できるようにするとされておりまして、このため、一括交付金制度の創設や財政調整と財源保障機能を強化した制度を創設するとされています。今般、収支見通しで示したように、将来に向け安定的に持続可能な財政運営を行うため、不断の行財政改革を行うとともに、適切な財源調整、財源保障がなされる制度的な手当てが不可欠であります。このため、地方のこうした厳しい状況については、民意を通じて現政権には届いているものと考えておりますが、その実現に向け、私も積極的に協力してまいりたいと思います。
 その他のお尋ねにつきましては関係部長から答弁させますので、御了承をお願いします。
   〔総務部長菅野洋樹君登壇〕
〇総務部長(菅野洋樹君) 県税収入の見通しと不足した場合の対処についてでありますが、平成21年度当初予算における県税収入の見込みに当たっては、特に法人二税について、平成20年12月末時点での申告の状況、上場企業などの決算予想を参考に積算したところでございます。当初予算時においても急激な景気後退の影響を考慮したところではありますが、その後のさらなる景気後退も影響し、現時点におきましては当初予算の積算を下回る厳しい状況にあると認識いたしております。したがいまして、当初予算の確保については今後予断を許さない状況だと思っておりまして、県税収入の不足に対する対応につきましては、一つは歳入面でございますが、制度上認められた地方債であります減収補てん債の発行による歳入の確保、また、歳出面ではさまざまな経費の精査、節減による対応を想定しているところでございます。いずれ、現在の状況、税収見込み等を精査いたしながら、慎重な財政運営を今後とも心がけていきたいと考えております。
〇32番(佐々木博君) 財政が厳しいのは本県だけじゃなくて、先般公表されました全国知事会の資料によっても全国的にすべてそうなわけであります。本県の状況も、先ほども私は申し上げましたけれども、本当に人の削減ももう限界値に近づいているというふうに思います。借換債もほとんど余地がないはずですし、主要基金もそういった状態であります。民間企業で合理化が進んでいるところは、乾いたタオルで、絞っても何も出てこないとよく言いますけれども、本県の状態が絞って何も出てこないところまで来ているかどうかはちょっと判断はつきかねますけれども、いずれ、それに近い状況になっているということは多分間違いないというふうに思います。そういった中で、特にも平成23年度以降、何に期待するかというと、やはり単独の県単位だけでは取り組みがなかなか難しいわけでありまして、加えて、平成23年度ごろからは、私は、政権交代によったいろいろな変化も顕著にあらわれてくるのじゃないかと思いますので、やはりそこに合わせた、全国の知事会あるいは地方6団体、そういったところの統一した強力な運動、そして何とかそれを実現していくといった意気込み、そういったものが非常に大切なんじゃないかなというふうに思うわけでありまして、そのことについて知事の、何といいますか、それに向けた強い意気込みというものをぜひとも答弁でお聞かせをいただきたいと思います。
 それから、あわせましてもう一点ですが、要するに地方税の歳入の見通しですが、この景気がV字型で上昇していくのであればいいわけでありますけれども、多くのエコノミストは、多分、V字型にはならないだろうと。むしろL字型でしばらくこのまま停滞するんじゃないかと言われているわけでありまして、ということになりますと、本当に県税収入の見通しが立たなくて、特にも財政当局の皆さんは大変御苦労なさると思うわけでありますが、しかしながら、考えてみますと、行政というのは、県でも市町村でもすべてそうですが、公共サービスを担うから存在意義があるわけでありまして、義務的な事業だけやっているのであれば、私は存在意義はないというふうに思うんです。そういった点では本当に厳しい状況ではありますけれども、しかし、どこかにやはり活路を見つけて、そして県民あるいは市町村民の負託にこたえていかなければいけない、そういった大きな使命を担っているわけでありますので、大きなことは多分できないと思います。ですから、小さなこと、歳出の本当に小さなことをいろいろ節約する、あるいは歳入も小さなことでもちょっとずつ拾っていく、そういったことの積み重ねしか当面ないのではないかなというふうに思うんですが、改めてその辺についての御認識をお伺いしたいと思います。
〇知事(達増拓也君) ことしの夏に三重県で行われました全国知事会において、このままでは平成23年度には全国の都道府県の財政は一気に破綻するという情勢認識、そして、それに基づいて一日も早く地方税財源の制度を大きく変えなければならないという決議をしたところであります。それをもって衆院選のマニフェスト評価の作業や、それを通じての、今、総務大臣になっている、当時ネクスト総務大臣だった原口総務大臣への全国知事会からの働きかけもやってきたところでありますが、今、原口大臣はそういう地方の現状をしっかり理解して、そして地方財政を絶対破綻させないようにする、そういう平成23年度の崩壊というのは絶対に防ぐということを全国知事会と一緒に取り組んでいこうという決意を持っているという感触は得ております。あとはしっかり連携をしながらそれを進めていくことだと思っておりまして、私は、全国知事会の戦略会議にも参加しながら、そうしたことを全力で進めていくよう微力ながら尽くしてまいりたいと思います。
〇総務部長(菅野洋樹君) 議員御指摘のとおり、やはり財政をあずかるものとして、財政の役割は二つあると思っています。一つは、なかなか厳しい歳入面から歳出をコントロールしていくという役割もございますが、一方で、どうしても必要な歳出のためには、何とかその歳入を確保するという役割も持ってございます。御指摘のとおり、なかなか大きなことはできないわけでございますが、一つ一つ工夫を重ねながら、県民にとって真に必要な歳出を確保できるように、私どもとしても努力してまいりたいと考えております。
〇32番(佐々木博君) 次に、雇用対策について伺います。
 総務省が今月2日に発表した全国の8月の完全失業率は5.5%で、過去最悪を記録した先月より0.2ポイントは改善しましたが、雇用情勢の悪化は深刻な状況にあります。製造業を中心に進んできた雇用調整が、小売業など非製造業にも広がりつつあり、失業率は年末には6%台に達するのではとの指摘もあります。雇用環境は過去に例がないほどのスピードで急速に悪化しており、リーマンショックによる金融危機が深刻になった昨年10月の失業率が3.7%だったものが、9カ月で2ポイント近くも上昇しました。2000年前後の景気悪化局面では、失業率が4%台に達してから、過去最悪だった5.5%に上昇するまで約4年かかったのですが、雇用形態が変わり、雇用の調整弁となる非正規職員の比率が高まったため、失業率が一気に上昇したと言われております。本県の雇用環境は全国平均よりなお厳しく、同じ8月の有効求人倍率を見ても、全国平均0.42のところ、本県はそれを大きく下回る0.32にとどまり、雇用対策はまさしく現下の本県における緊急かつ最大の県政課題であります。
 そこで、第1に、今後の離職者数の見通しについて伺います。
 ソニーイーエムシーエス千厩テックの年内閉鎖により424名の正社員が退職するほか、派遣社員333名との契約も9、10月で終了するとの報道がなされており、富士通マイクロエレクトロニクス岩手工業の再編や日本たばこ産業盛岡工場の閉鎖なども控えているわけですが、今後も依然として高い水準で続くのか、あるいは減少に転じるのか、その見通しをお聞かせください。
 次に、雇用の創出について伺います。
 県では産業振興施策による雇用創出として、本年度の目標値を新規、常用雇用で1、300人、うち正規雇用を1、099人と定め、また、農林水産業及び関連産業への就業促進アクションプランの推進により、本年度の就業促進目標を1、960人、うち新規参入340人、雇用拡大1、620人と定め、その達成に努力されておりますが、現在の達成状況をお示しください。また、この目標値の中には緊急雇用創出事業による数が含まれているのか否か伺います。
 次に、雇用対策基金を活用した雇用創出について伺います。
 緊急雇用創出事業については、本年度の新規雇用創出目標を県事業で713人、市町村事業で1、750人の合計2、463人と定めておりますが、現時点での雇用実績が何人なのか伺います。また、9月補正で市町村に対する5億700万円の増額補正が提案されており、市町村に対する緊急雇用創出事業費補助は合計で25億4、900万円になりますが、これによって市町村事業の新規雇用は何名ふえるのか、また、確実に消化できる見込みが立っているのかお聞かせください。また、この緊急雇用創出事業は、雇用・就業期間については原則6カ月未満とされ、介護、福祉、子育て、医療、教育の重点分野については、更新を1回可能として実質1年間認めるとされております。したがって、新規雇用の数には当面ダブルカウントされる人が含まれることとなりますので、それを控除した実数が何人となるのかお示しください。
 次に、ふるさと雇用再生特別基金事業について伺います。この事業による新規雇用創出目標は県事業で165人、市町村事業で350人の合計515人ですが、現時点での雇用実績が何名か、また、目標値をこれ以上ふやすことはできないのか伺います。
 ところで、このふるさと雇用再生特別基金事業は、自治体による直接の実施が認められないほか、受託する事業者からも使いづらい部分があるとの声が寄せられております。どこに問題があるのか、そして改善する方法はないのか、御所見をお聞かせください。
 次に、来年卒業予定の新規学卒者の就職対策について伺います。8月末現在、来年卒業予定の高校生に対する県内企業からの求人数は1、141人と、前年同月に比べ938人、率にして45.1%も減少しました。県内就職希望者は2、676人で、県内求人倍率は0.43倍と前年同月と比べ0.27ポイントも下回っています。また、大学、専門学校の卒業予定者等を対象に9月17日に開催されたふるさといわて定住財団主催のいわて就職面接会に参加した企業は41社で、昨年同時期の101社と比べて6割減だったと聞いております。このように不況による業績の低迷で企業が新規採用を控える傾向が鮮明になっており、来春県内に就職を希望する新規学卒者にとってもかつてない厳しい状況になることが確実です。県も、知事を筆頭に、一人でも多くの新規学卒者の採用に努めてもらうよう関係団体に要請活動をしておりますし、高校でも就職支援員と連携を強化するなど努力しておりますが、企業の反応は鈍いと言わざるを得ません。全国より速いスピードで人口減少と高齢化が進む本県にとって、地域経済の活性化には若者の人材育成と県内定着が重要な課題でありますが、企業が景気動向や収益の見通しを見ながら慎重に採用枠を決定することも当然で、そこに県や学校現場の苦慮があるわけです。新規学卒者を初めとする若者の県内定着に向け、県や県教委は今後どのような取り組みを考えているのか、それぞれ伺います。
 次に、本県の産業振興について伺います。
 今回のアメリカの金融危機に端を発した経済不況は、震源地であるアメリカ以上に我が国に大きな影響を及ぼしました。それは我が国の産業構造が外需依存型になっているからであり、今後、内需拡大型に構造転換していくことが必要だと言われておりますが、これはそのまま本県にも当てはまることであります。本県では自動車、半導体関連を中心にものづくり産業を振興してきましたが、それに続く内需型の第3の柱が必要であり、その有力な候補の一つが産業成長戦略でも掲げられている食産業だと思われます。本県の工業統計調査速報によると、食料品製造業の出荷額は平成19年度で3、331億円と、電気、情報、電子を合算した電気機械、輸送用機械に次いで3番目に大きく、事業所数では621で第1位、従業者数は2万1、385人で電気機械に次いで第2位となっており、今でも有力な雇用の受け皿となっております。それが、1次産業の農林水産業、2次産業の食料品製造業に加え、食に関連する外食、小売、観光産業などの3次産業と融合することにより、さらに大きな相乗効果が期待されるところであります。県は、アクションプランに食産業の振興を掲げ、目指す姿を実現するための取り組みとして、食の安全・安心をベースにして商品開発、流通、販売プロセスなどを改革していく観点から、農商工連携とマーケット・イン重視の取り組みを強化していく必要があること、このため、各分野に精通した専門家、県内外の有力企業や大学、試験研究機関、金融機関等による食産業支援のためのネットワークを一層強化し、地域の経済、雇用を支える中核的な企業や農林漁業者を重点的に支援、育成するとしていますが、本県の食料品製造業は小規模な事業所が多く、生産技術、設備、人材、資金調達力などの経営基盤が弱いというのが実態です。したがって、高い付加価値を持つ総合産業として発展させるには、産学官連携のもとにブランドの育成やマッチング機能の充実、製品開発の支援や人材教育、さらには資金調達や販路拡大まで、さまざまな分野でのサポートが必要とされますが、県はサポート体制の充実をどう構築されるのか、その取り組みについて伺います。
〇商工労働観光部長(廣田淳君) まず、今後の離職者数の見通しについてでありますが、岩手労働局の調べによりますと、常用とパートを合わせた事業主都合の離職者数は本年4月の5、227人をピークとして減少傾向にあり、8月には2、416人となっております。
 今後につきまして、岩手労働局の見通しによりますと、事業主都合離職者は前年同月比で80.2%増加と引き続き高い水準にあり、有効求人倍率は横ばいで推移すると予想、また、盛岡財務事務所でも、従業員の判断については、全産業では過剰ぎみ超で推移する見通しとしております。
 県といたしましては、富士通マイクロエレクトロニクスやソニーイーエムシーエス千厩テックなどの再編、合理化も予定されており、離職者数の増加が見込まれることから、雇用情勢は今後も厳しい状況が続くものと認識しております。
 次に、雇用の創出についてでありますが、産業振興施策については、現在、目標達成に向けて、新事業創出・経営支援、企業誘致、農林水産業振興、福祉施設整備等、全庁一丸となって取り組みを推進しているところであり、今年度上半期の達成状況について早急に取りまとめを予定しておりますが、現下の経済情勢を踏まえ、厳しい状況も想定しているところであります。
 なお、産業振興施策によります雇用創出の目標数には、緊急雇用創出事業によります雇用者数は含まれておりません。
 また、農林水産業及び関連産業への就業促進アクションプランの達成状況については、本年8月末現在で新規参入者が168人、新規雇用者が1、986人、合計2、154人で、就業者数の総数は同プランに掲げました就業者目標に対しまして110%の進捗状況となっております。
 次に、緊急雇用創出事業についてでありますが、雇用実績は、8月31日時点で県事業分が238人、市町村事業分が1、135人、合計1、373人となっております。
 また、市町村に対する緊急雇用創出事業費補助につきましては、9月補正で増額をお願いしておりますが、550人の新規雇用の増加を見込んでおります。この増額補正に伴い、市町村においては、事業化に向けて今後、鋭意取り組んでいただくと聞いております。
 また、新規雇用者数のうち、雇用更新に係る人数の取り扱いについては、市町村事業分については把握いたしておりませんが、県事業分については、事業計画、雇用実績とも実人員でダブりなく取り扱っております。
 次に、ふるさと雇用再生特別基金事業についてでありますが、雇用実績は、8月31日時点で県事業分が83人、市町村事業分が233人、合計316人となっております。雇用創出目標をふやすことにつきましては、8月31日時点の事業計画ベースで県事業分が180人、市町村事業分が371人、合計551人と、当初目標の515人を上回ることが見込まれておりますことから、計画済みの事業を着実に推進し、雇用の創出に努めてまいりたいと思っております。
 また、本事業の問題点につきましては、実施要件が、民間事業に対する委託事業であり、事業収益が対象外であることや、地域における継続的な雇用が見込まれる事業であることなど、事業者から見て制約が多いことから、国に対して、継続的な雇用創出の観点から、将来収益が見込める産業分野への補助を認めることなどにつきまして、制度の改善を去る6月15日に要望しているところであります。
 次に、来年卒業予定の新規学卒者の就職対策についてでありますが、高校生については、各学校の要請に応じまして、就職出前セミナー、保護者セミナーの開催を支援しておりますほか、ハローワーク等と連携し、地方振興局に39名配置されております就業支援員、教育委員会と一体となって取り組みしておりますが、これによります就職相談や求人開拓、さらには就職未決定者を対象としました就職面接会を例年より多く開催するなど、就職に向けた支援を強化してまいりたいと考えております。
 また、経済団体、商工団体に対する雇用要請につきましても、岩手労働局、教育関係者と連携して再度行ってまいりたいと考えております。
 大学生につきましては、県内5大学によりますキャリア支援連絡会議を随時開催して就職支援に関する情報交換を行うとともに、11月に開催予定のいわて就職面接会への企業の参加を強く働きかけ、企業と学生とのマッチングの機会を高めてまいりたいと考えております。
 県といたしましても、県内定着若者の促進に向けて、国、市町村、学校現場と連携し、一人でも多くの学卒者が県内に就職できるよう全力を挙げて取り組んでまいります。
 次に、食産業の振興についてでありますが、食産業は、ものづくり産業と並び地域経済を支える重要な産業であり、本県の産業振興を図るため、高い付加価値を持つ産業として成長させていかなければならないと考えております。
 この食産業の振興を図るため、まずは事業者への重点密着支援が重要でありますことから、産業創造アドバイザー等の民間力を活用し、生産者と事業者のマッチング、パッケージの改良、衛生・品質管理など、それぞれの企業の事業の状況に応じまして個別の指導助言に取り組んでいるところであります。また、販路拡大や商品開発などが必要でありますことから、フェア、商談会の開催やいわて農商工連携ファンドによります商品開発等の支援を実施しているところであります。さらには、経営基盤強化のため、金融機関と連携し、食料品製造業者向けの流動資産担保融資の支援モデル構築とその普及に着手しているところであります。
 こうした取り組みによりまして、しめさばなど水産加工品の首都圏大手量販店におきます定番化やヤマブドウを利用しましたパンの全国展開等の成果があらわれてきているところですが、今後は、このビジネスモデルを食産業全体に普及させていく必要があると考えております。
 このため、現在取り組んでおります支援策の一層の充実を図るとともに、これまでのビジネスモデルをもとに、産学官連携によりますサポート体制の強化、あるいは食産業振興のロードマップの作成など、戦略的な取り組みを積極的に進めてまいりたいと考えております。
〇32番(佐々木博君) ちょっと確認させていただきたいわけでありますが、産業振興施策による雇用創出、本年度の目標値、新規常用雇用で1、300人、うち正規雇用1、099人、これの実績値というのは今の答弁にありましたでしょうか。
 あわせて、農林水産業関連産業の就業促進アクションプランの中の数の雇用拡大の1、620名、この中に緊急雇用創出事業による数が含まれているのかどうか、このことについても答弁がなかったと思いますので、まず最初にその二つについてお願いします。
〇商工労働観光部長(廣田淳君) 第1点目の産業振興施策の実績のまとめでございますけれども、実は年間上半期と下半期にまとめをしておりまして、現在取りまとめをしておりまして、来月早々に取りまとめがなります。もうちょっと時間がかかる状況になります。
 それから、農業のほうのアクションプランに緊急雇用基金の数字が含まれているかというのは、これは含まれております。
〇32番(佐々木博君) ありがとうございました。
 私、さっきも申し上げましたけれども、雇用問題というのは多分県政の現下の最大の課題ではないかと実は思っております。県でも9月に岩手県経済・雇用対策本部会議を立ち上げまして全力で取り組んでいただいているわけでありますけれども、そういった中にあって、やはり組織横断的に現在の就業の状況がどうなっているかということをきちんと把握することは、私個人は非常に大切なことではないかと思うんです。今、廣田部長、上期と下期、年に2回実態の調査をされるということをおっしゃいましたけれども、通常であれば年に2回の実態調査でいいかもしれませんが、今これだけ雇用問題でいろいろどちらでも社会的な大きな問題になっているときに、2カ月に一遍だとか、もう少し細かく実態の調査をしていただかないといろいろな面でおくれるのではないかと思うんです、状況の把握で。そのことについて、これからでも間に合うわけですから、これから以降、今のままですと上期をやってしまうと今度下期までやらないというお話でしょうけれども、できればもう少し細かくやっていただきたい。そしてまず実態を把握していただきたい。
 なぜかといいますと、今、県の分、緊急雇用創出事業で実数で押さえているという答弁がありましたけれども、まことに結構なことで、いいことだと思うんです。お互い持ち寄って、ただ足し算をやるのではなくて、やっぱり現実にどれだけの方が雇用されているかという実態を把握することが非常に大切でありまして、そういった点では、県が今、緊急雇用の創出事業、少なくとも県事業分だけではありますけれども、それをカウントしていないということについては非常によかった、正解だと思いましたけれども、ただ、一方で農林水産分野の新規参入の雇用拡大のほうにはダブルカウントがあるわけでありますし、それから市町村分については把握されていないわけですから、そういったところも含めまして、今こういった状況ですから、もう少し密にこういった実態の調査をされながら、できるだけ改善の手も早く打てるような御努力を一層お願いしたいと思いますが、まずそのことについての御所見が一つでございます。
 それからもう一点、新規学卒者の問題ですけれども、ことしもそうですけれども、特にも県内の求人の一番大きな問題でいつももったいないなと思っているのは、全国の企業と比べて求人が遅く出るんですね。それだけ慎重だということも確かにあるのかもしれませんが、何かゆっくり取り組んでいまして、その間に本当に優秀な子供たちが県外に行ってしまうというような傾向がありまして、これはいろいろな経済団体になお一層要請をしていただいて、やはり県内の企業も求人をもっと早く出していただくような取り組みが私は前から必要ではないかと思っていたんですが、ことしは特にそのような思いを強くするわけでありますけれども、その取り組みの改善について1点お伺いしたいと思います。
〇商工労働観光部長(廣田淳君) まず、1点目の雇用の実績をできるだけ早く把握するようにという議員の御指摘はもっともでございます。今回、経済・雇用対策本部も毎月月初めに開催するということで、その時点での基金に基づく実績の把握とか、あるいは今、御指摘のあった、今まで年2回というものも、できるだけ小まめに出していきたいと考えております。
 それから、二つ目の県内企業の求人のスタートというのはかねてから遅いというようなことで言われておりまして、さまざまな事情がございますので、事情もっともという企業も結構あるのでございますけれども、私どもも商工団体とのさまざまな意見交換や、あるいは個別の企業訪問のときにも、こういった時期こそいい人材が得られるよと、そして、若い人たちは地元に就職したいという強い要望があるというのを伝えております。この辺もさらに精力的に進めてまいりたいと考えております。
〇32番(佐々木博君) ありがとうございました。
 次に、高校再編と入試の学区制について伺います。
 9月17日、第2次県立高等学校長期構想検討委員会から今後の県立高等学校のあり方についての答申がありました。県教委では平成12年に県立高等学校新整備計画を、さらには同17年に後期計画を策定し、生徒急減期に対応した県立高校の再編整備に取り組んできましたが、同計画が平成21年度で終了するに当たり、引き続き中学卒業生が減少することや、社会情勢の変化に対応した県立高校の方向性を再構築する必要があることから検討を求めていたことへの答申であります。
 県教委はこの答申を踏まえて、今後、県立高校についての基本的方針を定めるわけですが、この答申について何点か教育長に伺います。
 その第1は、望ましい学校規模について、1学級40人を標準として1学年4から6学級程度としたことであります。4学級以上が望ましいとすることについては、専門教員の配置やクラブ活動、さらに、高校時代は社会人になる前段階であり、多くの個性や考え方に触れ、大きな集団の中で自分らしさを発揮できるたくましさを養うことが重要だとの観点からも賛同できるのですが、上限を現計画の8学級から6学級に引き下げたことは理解できません。答申では引き下げた理由を、今後の生徒数の減少を踏まえ各ブロックの学校数を考えた場合、将来にわたって7学級以上の規模の学校を設置することが難しいからとしていますが、これでは単に生徒減少分を学校の数で機械的に割り振ったというだけで、教育効果を考えて得た結論とは思えません。
 大きな集団の中で自分らしさを発揮できるたくましさを養うという観点でいえば8学級のほうがよいと言えます。もちろん地域の事情にもよりますが、例えば盛岡市内の普通科の場合は学校統合によって8学級を維持することも十分可能であり、現計画と同様に、望ましい学校規模は1学年4から8学級と考えますが、教育長の御所見を伺います。
 2番目は、小規模校について伺います。
 この答申では、小規模校について明確な方針が少なくとも私には伝わってきませんでした。教育長は、小規模校についてこの答申をどのように理解されたのか伺います。
 第3に、今後の県教委の取り組みについて伺います。
 この答申の初めに、今後の県立高校のあり方について、10から15年先を展望して、高校教育としての学びの環境がどうあるべきか戦略的に検討するよう要請を受けたと記されております。そこで、この答申を受け、県教委が策定する新たな整備計画の期間は前回と同様に10年と考えてよいのか否か伺います。またあわせて、現計画が本年度で終了しますから、新たな計画は来年度を初年度とするものなのか伺います。
 次に、高校入試の学区制について伺います。
 平成13年7月に一部改正された地方教育行政の組織及び運営に関する法律により、公立高校の学区に関する規定が削除されました。その後、学区を廃止する自治体が年々増加し、平成20年度の高校入試では全国で20の自治体が学区を廃止していますが、学区を廃止する自治体が増加している理由をどう把握されているか、平成21年度の全国の状況とあわせて伺います。
 本県では、昭和24年に21学区が設けられてから学区制は何度か見直され、現在は平成16年度の見直しにより8学区、学区外許容率は10%とされております。私は以前にも本会議で学区制の廃止を主張しましたが、それはこの制度が不合理と考えるからであります。学区制は普通科のみの規制ですが、例えば金ケ崎町の受験生が奥州市の水沢高校を受験すれば学区の規制を受けないのに、同じ隣接の北上市の黒沢尻北高を受験すると10%の学区外許容率の規制を受けますが、これを合理的に説明することができるのでしょうか。
 また、県教委は、学区制を特定の高校への入学志願者の過度の集中を避け、また、遠距離通学による生徒の負担を軽減するため設けていると言いますが、ことし開学した一関一高附属中学校には学区制がなく、紫波町から2名通学していると聞いております。中学生に規制がないのに高校生にあるというのもまことに説得力のない話です。県内の子供たちがひとしく平等に希望する学校が受験できるよう学区制を廃止すべきと考えますが、教育長の御所見を伺います。
〇教育長(法貴敬君) まず、望ましい学校規模、学級規模でありますけれども、今後の県立高等学校のあり方についての答申に関してですが、この学校、学級規模については、第2次県立高等学校長期構想検討委員会においてさまざまな議論がなされました。先般いただいた報告では、専門教員の配置や部活動の状況、社会人となる前段階として担うべき高校の役割、あるいは今後の生徒数の減少や各ブロックの学校数を考えていきますと、十数年先を展望した場合には、県全体を見据えた一定の方向性として学校規模は1学年4から6学級程度が望ましいと委員会で結論づけられたものでございます。
 今後、この検討委員会報告を踏まえて県の方針を決めていくわけですけれども、こういう望ましい学校規模を基本としながらも、県教育委員会として各学校の規模あるいは配置のあり方について今年度中に検討していくとしております。
 なお、先ほど機械的に学校を統合したのではないかという話ですけれども、そういうことのないようにきめ細やかに対応してまいりたいと考えています。
 次は小規模高校についてどう考えるのだというお話でしたけれども、検討委員会の報告では、各高校の学校規模を検討するに当たっては、望ましい学校規模を念頭に入れつつ、各ブロックにおける将来見込まれる生徒数に加えて、地域の産業構造や振興方向などを踏まえながら、地域の実情に応じた規模、配置としていくことが必要である、その中で小規模校の対応を検討していくことが必要であるとされております。
 これは、4から6学級という一応の中間答申を受けて、各地域に委員たちが出かけて、各地域の意見が出てきたときにこういう取りまとめになったと理解しておりますけれども、今後、この検討委員会の報告の趣旨を踏まえながら、検討委員会についての議論は、恐らく、高校教育は社会に巣立つ一歩手前の教育でもあり、ある程度の規模があることが望ましいという趣旨だと理解しております。ブロックごとの学校規模や配置を検討する中で、先ほど申しましたように、きめ細やかに地域の意見を伺いながら、小規模校をどのようにしていくかについて総合的に検討していきたいと考えております。
 次に、今後の教育委員会の取り組みですけれども、初年度はいつかという感じでしたが、県教育委員会では、検討委員会の報告を踏まえて、先ほど申し上げたように今年度中に今後の県立高校の基本的方向を示すビジョン、これは総論部分になると思います、何学級がいいのかとか小規模高校をどうするのかという哲学の部分をこのビジョンの中に検討委員会の報告と同様におおむね10年先を目指して展望したいと考えております。このビジョンをまず確定させまして、来年度にはこのビジョンを基本としながら具体的な県立高校の整備計画の検討に入りたい、着手したいと考えています。
 新たな整備計画の具体的な期間、その開始年度については、ビジョンの策定に向けた検討とあわせて基本的な方向を定めてまいりたいと考えております。
 次に、高校の学区制の全国状況ですけれども、議員の御指摘のとおり、平成13年度の法改正によって公立高校の学区に関する規定が削除されました。その趣旨は、通学区域をいわゆる全県1区にすること、あるいは通学区域の拡大を一律に促すことではなく、公立高校の通学区域の設定について、これを設定するか否か、また、どのように設定するかを含めて都道府県教育委員会の判断にゆだねようとするものであります。
 学区を廃止する理由は、さまざま調べたんですけれども、その都道府県によりさまざまと聞いておりまして、各都道府県において、それぞれの事情に基づきその設定等について判断するものと受けとめております。
 なお、平成21年度における学区を廃している全国の都道府県の状況は、議員御案内のように、文部科学省調査によりますと20団体となっており、平成20年度から増減はしておりません。
 県立高等学校の普通科の学区、通学区域については、議員御指摘のとおり、特定の高等学校への入学志願者の過度の集中を避けて、遠距離通学による生徒の負担を軽減するために設定しているものであります。必要に応じて見直しを行いながら現在の8学区としているものであります。
 学区のあり方についてまた先ほどの検討委員会で議論がされておりまして、生徒の希望、高校選択の自由を尊重する視点、議員のような御指摘ですけれども、学区制を撤廃すべきであるという議論がある反面、地域で子供たちが育ち、地域振興を担うとの視点から現在の学区制を維持すべきなどというさまざまな議論が出ました。見たところによると、残すべきだみたいな委員のほうが結構多かったと思います。
 検討委員会報告でそういうことでもあったので、学区について当面現行のままに取り扱うことが望ましいとされる一方で、中長期的には生徒数の減少により10年後の学級数が10程度になる地区が生じる。例えば二戸とか気仙地区ですけれども、500人を切ってくるブロックが出てくることもあると予測されます。それから、より広域的な地域単位の設置も視野に入れた集中的かつ専門的な検討が必要と結論づけるときにさまざまな議論を付議した形で報告を受けていまして、今後、生徒の高校選択に影響が出る可能性を踏まえて、必要に応じて検討を進めていくことが重要であるとされております。
 県教委では、今のようなブロック、といってもブロックを残すかどうかということもありますけれども、そういうことを総合的に判断しまして学区制について十分に検討してまいりたいと考えています。
〇32番(佐々木博君) 学校の規模と学区制について、少し教育長と本当は議論したいところですが、残念ながら大分時間が差し迫ってまいりましてちょっとできないんですけれども、ただ、学区制については私もいろいろ調査しました。今、20ですね、学区制をとっていないところは。ところが、まだまだ廃止しようという方向で進めているところがいっぱいありまして、いずれ廃止するところが近い将来間違いなく逆転する状況だと私は認識しております。そして、一遍廃止して戻ったところもありません。ですから、それはお互いメリット、デメリットあるでしょうけれども、私はやはりなくするメリットが大きいと思います。
 1点だけ、私も盛岡市民という立場でいえば当事者でありますけれども、盛岡学区みたいに学校がいっぱいあるところの学区は学区制があると有利なんです。だけれども、反対からいきますとこれはいわば既得権益みたいなものでありまして、やっぱり合理性がない既得権益はなくしていったほうがいいということをお話だけさせていただいて、ちょっと議論したいんですが時間がありませんので、次に移らせていただきます。
 最後に、岩手競馬について伺います。
 岩手県競馬組合運営協議会の平成21年度第3回協議会が9月15日開催され、賞典費や事業運営費を当初計画より1億9、300万円縮減するコスト調整を決定しました。330億円の巨額融資を実行してから3年になりますが、3年連続の経費の縮減であります。
 本年度は景気の落ち込みによる売り上げの大幅な減少が危惧されましたが、第2期終了時点での発売額が自場発売は66億4、200万円で計画額より3億300万円減の達成率が95.6%でしたが、広域委託発売は24億8、400万円で1億5、800万円増の106.8%、インターネット発売が12億円で1億5、700万円増の115.2%で、発売総額では103億2、600万円と計画額を達成していたことから、ことしはいけるかなとひそかに期待をしていただけに残念でなりません。広域委託発売では手数料が約15%、インターネット発売でも同様に約13%かかることから、売り上げの割に収益性が低いことが赤字の要因であることは明らかです。しかるに、100年に一度とも言われる不景気にもかかわらず、広域委託発売やネットによる発売が好調なことが不思議に思うのですが、その要因をどう分析されているのか伺います。あわせて、他の地方競馬の売り上げ状況についてもお聞かせください。
 ところで、岩手競馬と同様に収支均衡による存続を条件としている高知競馬は、本年7月から全国初の通年ナイター競馬、夜さ恋ナイターを始めましたが、組合の財政調整基金と地方競馬全国協会の補助金など約1億7、600万円を投じてナイター設備を新設したため、財政調整基金の残額は180万円とほぼ使い切り、まさに失敗すれば後がない大勝負をかけているとの報道がなされていました。地方競馬を取り巻く状況はなお厳しいものがありますが、岩手競馬もまた失敗すれば後がありません。収支均衡による存続に向け、これからの後半戦、岩手競馬の自場発売の拡大のために具体的にどう取り組まれるのかお伺いします。
〇知事(達増拓也君) 岩手競馬について、まずは自場発売の拡大のための具体的取り組みについてであります。
 まずは来週12日の月曜日に、岩手競馬の最高峰レースである南部杯が行われます。これに向けまして、昨年以上に競馬ファンの期待と関心を集められるよう重点的な広報宣伝を展開してまいります。その後、地方競馬での2歳馬の重賞シリーズである若駒賞やレディースジョッキーズシリーズ、岩手競馬伝統の3歳馬の頂点を決める不来方賞など、全国から注目される魅力あるレースを連続して実施してまいります。また、年末年始には、昨年度、ファンの皆様から好評を得ました三つの重賞競争をシリーズ化してクライマックス3として実施いたします。こうしたこれからの後半戦に重賞競争を中心に充実した質の高いレースを展開して、多くのファンの来場と発売促進につなげてまいりたいと思います。
 こうした取り組みと並行しまして、岩手競馬に対する県民のより一層の理解をいただくために、あすの6日火曜日には、岩手に縁の深い浅田次郎氏による競馬にかかわる講演会を開催いたします。また、今月末には奥州市で競馬ファン、競馬関係者が一堂に会しまして岩手競馬を盛り上げる応援パーティーを開催するなど、新たなファンを広げるためのさまざまな取り組みも展開してまいります。厳しい経済情勢が続く中で、今年度も3年連続の黒字達成という実績を築くことにより、県民の信頼と関係者の意欲を高めて、岩手競馬の存続がより確かなものになると考えておりまして、今後さらに競馬関係者と一丸となって、その実現にしっかり取り組んでまいりたいと思います。
〇農林水産部長(瀬川純君) 岩手競馬の広域委託販売やインターネット発売が好調な要因についてでございます。今年度は南関東地区や東海地区などでの発売レース数をふやすとともに薄暮競馬の拡大実施、インターネット事業者とのタイアップによるキャンペーンの実施、さらには首都圏のスポーツ紙に馬柱を継続的に掲載するなど、積極的な情報発信などに取り組んできたことが好調の要因と考えております。今後も引き続き他の主催者やインターネット事業者との連携に取り組んでまいります。
 また、他の地方競馬の発売状況についてですが、本年8月までの地方競馬の発売金額は、1日当たりの前年度比が99.2%となっております。岩手競馬と同様に各地方競馬主催者ともインターネット発売は総じて前年度を上回っているものの、自場発売については減少基調にあると聞いているところでございます。
〇32番(佐々木博君) ありがとうございました。ネット発売をやるときに手数料が少し高いのではないかということが実はかなりの議論をされました。委託販売については、受託もあって、お互いに同じ条件でやっていますから、これはやむを得ないと思いますけれども、ネットについては、今、JRAは自分たちでやっていますから基本的にないわけですけれども、地方競馬は、やはり13%というのは、正直言って手数料が高いなというような気がいたします。いずれ13%の手数料ということは、倍売らないと自場発売に追いつかないわけでありますから、そういった点は厳しいなと思いますので、その辺はどうなんでしょう。余地があるならば、ぜひともみんなで、地方競馬全体で取り組んで、交渉の余地があるのではないかと思います。
 私は旧競馬場のすぐそばに住んでいますので、競馬場は本当は移転しなければよかったなと大変思っているんですけれども、そういった関係で私の周りには騎手もたくさんおりますし、調教師あるいは馬主、そういった方々もたくさんおります。最近見ていますと、岩手競馬に馬を預託していた方々がずいぶんやめて中央競馬に持っていったり、ほかに持っていったりする方がふえてまいりました。大変残念だと思いますし、それから、知っている方々、要するにこの辺にお住まいの方々の馬主が馬の預託先をほかに預けるということは、やはり知っているから自場発売、競馬場に行って買うという方もそれなりにいらっしゃるわけでありまして、そういった点もあるいは自場発売が減っていることの一つの要因になっているのかもわかりません。いずれ、そこはわかりませんが、この岩手競馬は、巨額融資もそうですけれども、もしこれが継続できないということになると、また多額の財政負担が生じることは間違いがないことでありますので、何とか特にも自場発売の拡大に御努力をいただいて、そして黒字決算にもっていけるよう、これから後半戦に向けて頑張っていただくことを強く期待しまして一般質問を終わらせていただきます。ありがとうございました。(拍手)
〇副議長(小野寺研一君) この際、暫時休憩いたします。
   午後3時40分 休 憩
出席議員(45名)
1  番 木 村 幸 弘 君
2  番 久 保 孝 喜 君
3  番 小 西 和 子 君
4  番 工 藤 勝 博 君
5  番 岩 渕   誠 君
6  番 郷右近   浩 君
7  番 高 橋   元 君
8  番 喜 多 正 敏 君
9  番 高 橋 昌 造 君
10  番 菅 原 一 敏 君
11  番 小野寺 有 一 君
12  番 熊 谷   泉 君
14  番 高 橋 博 之 君
15  番 亀卦川 富 夫 君
16  番 中 平   均 君
18  番 関 根 敏 伸 君
19  番 三 浦 陽 子 君
20  番 小田島 峰 雄 君
21  番 高 橋 雪 文 君
22  番 嵯 峨 壱 朗 君
23  番 及 川 あつし 君
25  番 飯 澤   匡 君
26  番 田 村   誠 君
27  番 大 宮 惇 幸 君
28  番 千 葉 康一郎 君
29  番 新居田 弘 文 君
30  番 工 藤 大 輔 君
31  番 佐々木 順 一 君
32  番 佐々木   博 君
33  番 工 藤 勝 子 君
34  番 平 沼   健 君
35  番 樋 下 正 信 君
36  番 柳 村 岩 見 君
37  番 阿 部 富 雄 君
38  番 斉 藤   信 君
39  番 吉 田 洋 治 君
40  番 及 川 幸 子 君
41  番 佐々木 一 榮 君
42  番 伊 藤 勢 至 君
43  番 渡 辺 幸 貫 君
44  番 小野寺 研 一 君
45  番 千 葉   伝 君
46  番 佐々木 大 和 君
47  番 菊 池   勲 君
48  番 小野寺   好 君
欠席議員(1名)
17  番 五日市   王 君
説明のため出席した者
休憩前に同じ
職務のため議場に出席した事務局職員
休憩前に同じ
午後3時58分 再開
〇議長(佐々木一榮君) 休憩前に引き続き会議を開きます。
 日程第1、一般質問を継続いたします。関根敏伸君。
   〔18番関根敏伸君登壇〕(拍手)

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