平成21年9月定例会 第13回岩手県議会定例会 会議録

前へ 次へ

〇21番(高橋雪文君) 自由民主クラブ、高橋雪文でございます。
 国の政権がかわり、ダイナミックな変革ができるようになりました。どのような政治をし、国民生活を守るのか、いまだわからないところでございますが、過去を敬い、未来に希望を持てる持続可能な日本を目指してもらいたいと思います。
 不易流行を唱えた松尾芭蕉は、不易とは、変わらないもの、流行とは、時代に合わせて変えていかなければならないもの、その二つをしめ縄のごとくすることが肝要であると述べております。急激な社会の変化に対応する政治を希求しながらも、変えてはいけないものには断固反対していく是々非々の立場で県政に今後臨んでいきたいと思います。
 以下、県の基本的な認識についてお聞きいたします。
 岩手の人口は、ここ数年1万人規模で減少していることは、さきの一般質問でも述べているところであります。人口の減少は、地域経済の縮小や地域の活力を低下させております。特に、仕事を求めての人口流出は産業基盤の脆弱性や地域に希望がないことのあらわれであり、政治の取り組みの結果でもあります。
 日本の人口減少は、少子・高齢化と並行して進行することが予測されております。このまま人口減少に歯どめがかからなければ、2050年には現在より約3、000万人少ない9、500万人にまで減少すると言われ、同時に、65歳以上の高齢者人口の割合も国民の40%になると予測されております。
 政権交代によって、経済成長を基調とする外需拡大依存型の政策から、生活を第一に、国民に税金を再分配する内需拡大の政策への転換は、このような時代背景の中で、日本の社会の構造を大きく変えることであります。短期的には優遇される国民が多い一方で、中長期で日本の安定を考えたときに、この内需拡大への転換が、資源がない国を安定的に維持し、今後も国際競争に立ち向かわなければならない日本の選択すべき策であるか、疑問を感じておるところでございます。その安易な転換により、経済的な強みを発揮できない国になるのではないかという危惧さえ感じておるところでございます。
 そこでお聞きいたしますが、県では本県の人口減少の理由をどのようにとらえ、このことによる問題点についてどのように考えておられるのでしょうか。同時に、高齢化率が急速に高まる社会構造の変化についてどのように考え、対処していこうとするのかお知らせいただきたいと思います。
 また、生産年齢人口の減少は、自治体を支える収入にも大きくかかわってくる問題であります。生産年齢人口の減少が税収にどのように影響してくるのでしょうか。さらには、県では、先ごろ岩手県の今後の収支見込みを公表いたしましたが、知事任期中の平成22年までの期間は収支の均衡を果たすべきと予算の調製を図るようでございますが、その後は毎年700億円の財源不足を生じるとの内容が明示されました。平成23年度以降も破綻することがないよう、どのような決意を持って財政運営をしていくのでしょうか、お知らせいただきたいと思います。
 こうした厳しい財政見通しの中にあっても、私は、医療、社会福祉、介護などが県民要望の高い、重要な分野であると考えておりますが、新しい長期計画の今後10年において希望郷いわてをどのように築いていこうとするか、その全体の中で医療、社会福祉、介護の分野をどのように位置づけようとしているのかお聞かせいただきたいと思います。
 さらに、高齢者を支える介護など社会福祉にかかわる人材確保が社会的に問題になり始めておりますが、その対応策をどのように考えておられるのでしょうか、お知らせいただきたいと思います。
 資源がない日本において、自民党政権下では経済成長を基調とする政策が実施されてまいりました。国民生活の発展と安定は経済の成長とともに確立されてきたと言えます。今回の政権交代では、国民の生活を第一として、税財源を国民に再分配する政策を柱に政治を推進するようであります。資源がない日本においては、産業基盤がしっかりしていて働く場があること、その上で経済が安定していることが前提となって国民生活の継続的な安定が確保されるものと考えます。社会保障の財源も国民の真摯な働きの上で維持されるものだと感じております。今後、拡大し続けるであろう医療費や社会保障を充実するためには、予算の抜本的な再編成による無駄や埋蔵金と言われる財源だけでは到底対応し切れず、高い福祉を求めれば求めるほど、近い将来、国債の発行や増税を強いることになり、国民への負担が増すことは明らかであると思います。
 そのような中にあって、岩手県の産業基盤や経済はいまだ未成熟のままにあると感じます。岩手県が特に力を入れて新たな産業を育成しようと取り組んでいる自動車関連工場の集積においても同様で、これらを支える周辺のインフラ整備も十分とは思われません。しかし、民主党はマニフェストで税金の無駄をなくすとして、公共事業については、その見直しにより平成21年度予算の16%余り、1兆3、000億円の節減を明らかにしております。
 岩手県では、増田前知事が3期目の改選期に公共事業を2年間で30%削減することをマニフェストに掲げました。しかしながら、実際はそれ以上の削減がなされ、県内経済に大きな打撃を与えた経緯があります。公共工事に依存している業界の経営が厳しくなっているのは言うまでもありません。それ以上に県内建設業界は縮小し、それに連動するように地域経済も縮小していると言えます。それが人口流出の要因の一つになっていると感じております。
 産業基盤が弱い本県において、公共事業への投資はいまだ重要な役割があります。そのことを県はどのように考えておられるのでしょうか。本県経済における公共事業の果たす役割について基本的な認識をお聞かせください。また、雇用の受け皿としても建設関連業のすそ野は広いと言われております。雇用の受け皿としてその位置づけをどのように考えておられるのかお聞きいたします。
 また、国は、国民への再分配による内需拡大によって景気を刺激し、経済を立て直すとのコメントが多くありますが、このことが本県の産業の安定化につながるのかどうか質問をいたします。
 雇用の確保は、事業の安定や発展が不可欠です。これまでは中小企業経営安定化対策などを柱に雇用の拡大を図ってまいりましたが、今後はどのような視点で雇用確保を目指すのでしょうか。企業の支援策は今後どうなるものかもあわせてお聞きいたします。
 次に、二酸化炭素8%削減の新たな取り組みについて質問をいたします。
 先日行われた国連での鳩山新首相の演説は、みずから25%の目標数値を明示し、世界各国へ温暖化対策に向けた温室効果ガスの排出量削減を呼びかけました。核廃絶の明確な意思表示とともに、その意義は非常に大きかったと言えます。しかしながら、アメリカも中国も温暖化対策の重要性や国際的な連携をうたったものの具体的な数値を示すことを避け、経済の成長に対し足かせにならないように配慮した姿勢は常識的な演説であったと思います。
 岩手県は、増田前知事の在任中に国が6%削減のところ8%削減と高い数値を掲げ、削減に取り組んでまいりました。その目標数値を高く掲げた評価の一方で、その実現には非常に懐疑的な人も少なくなかったと記憶しております。今まさに鳩山内閣は同じ状況下にあると言えます。
 そこで、県における施策の評価でもおくれが目立つ分野での取り組みでございますが、総合計画最終年度である2010年の8%削減の見込みはどうなっているのか、その進捗状況と取り組みをお聞かせ願いたいと思います。
 鳩山新首相は25%削減を明示しましたが、経済の成長、インフラの整備を積極果敢に進めれば、その分環境への負荷は増大すると言われ、大きな矛盾をはらんでいることが指摘されております。県は、この矛盾に対してどのような視点で取り組みをなされるのか、鳩山新首相の気候変動問題にかかわる国連演説の感想を含めて基本的な認識をお聞きしたいと思います。
 続きまして、市町村合併と道州制について質問いたします。
 合併特例法が来年3月で終了し、市町村合併も新たな段階に入ります。民主党は、地域主権の確立に対し、道州制を否定しながら国と基礎的自治体で構成する二層制を小沢代表当時提唱し、住民に一番身近な基礎的自治体とし、全国を300程度で構成して、人口30万人程度の基礎的自治体には政令市と同等の事務事業を移譲すると大胆な提案をした経緯がございます。
 知事も同様に市町村は300程度にすべきとの持論を持っているようでございますが、現在の市町村合併の取り組みははるかにおくれているとの感を持ちます。このことに関し、知事はどのように考えておられるのでしょうか。また、新法の期限終了後も市町村合併をさらに推進するお考えなのかお知らせください。
 この市町村合併の延長線上の一つに道州制の導入があり、自民党の政権公約には、2017年度、道州制の導入をすると明記されておりました。
 そこで質問いたしますが、知事は道州制をどのように考えておられるのでしょうか。あわせて二層制についてのお考えもお知らせいただきたいと思います。
 その導入すべきその枠組みをどのように考え、いつごろを導入のめどとするべきと考えるのでしょうか。また、地方から地域主権型の新たな自治体の枠組みの取り組みを推進する意思はおありなのか質問いたします。
 次に、地域課題についてお聞きいたします。
 民主党政権では、全国の建設中や計画段階の143カ所について積極的にダム建設の見直しをかける意向のようです。本県の4事業のダムもその中に入ると言われております。知事は、県内のダム建設の意義についてどのような認識を持っておられるのかお聞きいたします。
 また、工期のおくれや、当初の見込みから事業費が加算されてきた簗川ダム建設において、これまでどおり簗川ダム建設を推進すべきと考える立場なのでしょうか。今後の対応をどのように考えておられるのかお聞きいたします。
 仮に民主党政権下で見直しがなされた場合、地元住民、市町村の要望など地元の声を代弁するのかなど、どのような判断をすべきと考えておられるのかお知らせいただきたいと思います。
 そして、市町村要望でも最も多い項目は道路の建設関係であります。そこで、地域課題に関連して2路線について質問させていただきたいと思います。
 まず、宮古盛岡横断道路は簗川ダム建設と密接に関連する道路であります。岩手県の90分構想との連動もあり、非常に重要な路線と言えます。また、都南川目道路は、公共事業評価の費用便益分析に関する技術指針などによって一時予算凍結されるなどがありましたが、県の取り組みによって再開されたことも記憶に新しいことであります。道路、河川、ダムの見直しの基準はいまだ明示されていないところではありますが、強行にマニフェスト実現を進める新政権において再び見直しの対象となる可能性もあります。宮古盛岡横断道路の重要性について県はどのような認識を持っておられるのかをお聞きいたします。
 また、この都南川目道路の完成は、高速道路インターチェンジとつながる都南大橋と結ぶことによって大きな効果を生む道路と言われております。しかしながら、そのめどはいまだつかない状況であります。この整備についてどのように考えておられるのでしょうか。
 次に、茨島跨線橋から分レの拡幅工事について質問いたします。
 この路線は県北と盛岡を結ぶ重要路線であるとともに、盛岡市では、旧玉山村と旧盛岡市を結ぶ重要な生活路線でもあります。盛岡市街地と玉山地区が一体になるためにも、渋滞路線であるこの路線の拡幅は地域の念願でもあります。周辺市町村で結成した促進期成同盟会では、2巡目となる岩手国体に合わせた整備として国に訴えてきたところでありますが、北上市への主会場が決まり、推進には大きな変更を余儀なくされております。しかしながら、一体となるまちづくりを推進するためにも、渋滞路線の解消のためにも早期の着工を働きかけるべきと思いますが、県の考えと国に対する取り組みについてお聞かせいただきたいと思います。
 続きまして、岩手県の教育行政の方向性について質問いたします。
 民主党政権になり、民主党マニフェストの内容以上に自民党政権下と異なるものに教育に対する考え方があるように感じます。民主党インデックスなどによると、安倍内閣のもとで策定された教育基本法の廃止や教職員の10年ごとの教育免許更新制度、全国学力テストの廃止なども視野に入れており、これまでの教育の方向とは別なものと言えます。現在は財政的な部分でしか見えておらず、その本質的なものは見えておりませんが、教育の基本的なベクトルが変われば将来を担う人材像も大きく変わり、日本の姿も大きく変わっていくと考えます。
 そこでお聞きいたしますが、教育の中立性の立場から、これまで教育委員長が教育行政推進の考え方と施策の大要について演述等で毎年述べてきておりますが、政権が交代し、求められる方向性が変わった場合、それに合わせて新たに教育の方向を変えていくのか、知事の基本的な認識をお聞きいたします。
 続きまして、民間人の校長導入による評価と今後の対応について質問いたします。
 学校に民間感覚を導入する試みが続けられておりますが、民間人校長の導入についてもその評価をしなければならない時期にあると思います。2人の民間人校長を導入して以来、今後も継続して民間人登用を継続するのか、そのめどはいまだついていないようであります。
 そこでお聞きいたしますが、実態の中で民間人校長導入のメリット、デメリットをどのように考えておられるのでしょうか。お二人の民間人校長の成果についてどのように評価を加えられると考えておられるのでしょうか。また、部下となった教職員の評価はどのようなもので、通学する生徒の父兄の評価はどのようなものだったのでしょうか。校長会などの同じ役割を担う皆さんの評価はどうなのか、その主な評価をお聞かせいただきたいと思います。さらに第三者の評価を加えるべきであると思いますが、いかがでしょうか、質問をいたします。
 その上で、今後、民間人校長導入を継続していく考えがあるのか、その判断の理由についてもお聞かせいただきたいと思います。
 続きまして、県立高校の経営計画書の導入について質問をいたします。
 第三者として、民間人校長の取り組みを考えたときに、学校経営に経営者感覚を持たせることは今後も必要ではないかと感じております。政務調査会などで民間人校長からお話を伺った際、学校には中長期的な経営計画書が存在しないと話され、その必要性を強調されておられ、私も賛同するところが多でありました。学校の経営は、単年度での経営目標や計画などは存在しますが、ほぼ赴任する校長の采配に任せられているとのことであります。首都圏では、公立高校に十分な信頼が置けずに私立に進学を望む父兄や生徒が多いと聞きます。近年では、岩手県でも私立高校の進学率の向上や東大など難関校へ進学する生徒もおり、その評価は著しく向上していると感じます。
 両者の決定的な違いは、経営目標や数値を明確にし、年次を追って教育レベルの向上や充実を図っている経営にあると思います。現在、少子・高齢化などで学校の統廃合などが議論されているところですが、これからの議論として、人口集積が高い市部に進学校がある必要はなく、過疎化が進んでいる地域にしっかりとした経営目標が定まった進学校が存在し、いわゆる難関校や有名校に進学できる魅力ある高校をつくることによって必要とされる公立高校の再編を求めていく必要があると思いますが、いかがでしょうか。
 また、岩手の人口減少は20代が多く、高校までは岩手県内で進学する生徒がほとんどであります。大学や短大、専門学校などの進学によって岩手から離れた人材が地元へ戻ってくる意識を育てるのは高校までしかありません。地元で活躍できる人材を育てる、そんな視点を持った教育も経営目標に盛り込み、岩手の活力を生み出す県立高校へ転換すべきと考えます。
 そこで質問いたしますが、民間でこういういわゆる経営計画書のようなものをしっかり策定すべきと思いますが、いかがでしょうか。この経営計画書を共有しながら、個性的で地域に求められる県立高校を積極的に提言する必要がありますが、いかがでしょうか。
 続きまして、障がい者アートの海外出展について質問いたします。
 障がいを持つ人たちの創作が芸術作品として評価され始めていることは周知のとおりだと思います。こうした作品は障がい者アートと呼ばれ、来年の2010年3月から半年間、芸術の都パリにある市立アル・サン・ピエール美術館で日本の障害者アート展覧会が開催されることになり、私も注目しているところであります。これは滋賀県の社会福祉事業団を通じて実現するものであり、67名の作家、約1、000点の作品が運ばれ展示されるもので、岩手県からは9名の作家の作品が展示されることになったようであります。ことし5月に作品選定のために来日したマーティン・ルザリア館長が世界が注目するであろう作品が幾つかあったと述べたように、作家の世界観や作品は高いレベルにあるとされております。
 そこで質問いたしますが、他県での取り組み事例ではございますが、多くの作品を出品する本県でもあり、このような取り組みを積極的に評価し、県民への周知を行うことにより、障がい者への理解、さらには自立に向けた支援を行うべきではないでしょうか、いかがでしょうか。
 最後になります。自発的な地域活動にかかわる人への支援について質問をいたします。
 県は、NPOなどの県民の自発的な行動によって、自治体が供給するサービスの低下を食いとめようとする取り組みに近年力を入れているところであります。そのような制度構築の前から自発的な活動を進めている町内会や消防団活動、交通指導員活動などは活動に対する理解が十分とは言えず、人員の確保や構成員の高齢化が大きな問題になってきております。
 活動に対する理解には、活動を担っている人や企業へのより積極的な評価や顕彰が必要であり、県民に明らかになることが必要だと言えます。盛岡市は、本年3月から盛岡市消防団協力事業所表示制度を導入し、そのきっかけをつくろうと動き始めました。しかしながら、その支援は県も市町村もいまだ足りないと思われますが、いかがでしょうか。
 また、NPOには県の財政的な支援や委託事業として金額が比較的大きい項目がありますが、基本となるこのような団体の支援はもっと投資の必要があると思います。消防団員の出動へ対する手当は2、000円前後、交通指導員へは1回当たり1、500円前後と、その報酬は余りにも少なく、担っている社会的責任と業務の割には低過ぎるように感じます。今日の地域社会の一翼を現実に担っているこれらの活動に対して、その実態をどのように把握しておられるのでしょうか。問題点をどのように認識し、どのように解決を図っていかれるのでしょうか。また、各市町村への指導をどのように行っているかお聞きいたします。
 さらに、知事は職員憲章を早々に策定し、その中で地域意識を掲げ、地域社会の一員としての自覚を盛り込みました。県職員の地域活動への自主的で積極的な参加を求めての記載であると感じますが、知事がこの項目に込めた思いをどのように考えておられたのかお聞きいたします。また、この策定以後どのように取り組んでおられるのか、あわせてその実績についてもお聞かせいただきたいと思います。
 以上で私の質問を終わらせていただきますが、答弁によりましては再質問などをさせていただいて協議を深めていきたいと思います。
 御清聴まことにありがとうございました。(拍手)
   〔知事達増拓也君登壇〕
〇知事(達増拓也君) 高橋雪文議員の御質問にお答え申し上げます。
 まず、人口減少の要因等についてであります。
 本県の人口は、少子・高齢化の進行により出生数が死亡数を大幅に下回っていることや、県外への転出がほぼ横ばいで推移する中、県外からの転入の減少が続き、人口の社会減が拡大傾向にあることなどから減少しているものと認識しております。こうした人口減少により、地域経済規模の縮小や社会保障面での負担の増加に加え、中山間地域を中心に地域コミュニティの維持が困難になることが懸念され、また、高齢化が進行する中で、高齢者が住みなれた地域で安心して生き生きと暮らしていけるよう、地域の人々がともに支え合いながら、生きがいづくりや介護サービスなどを充実させていくことが必要であると考えております。
 このため、新しい長期計画では、人口減少・少子高齢化の一層の進行を社会経済情勢の大きな変化の一つとして位置づけ、この2年間に特に重点的に取り組む政策推進目標として人口転出への歯どめと地域医療の確保を掲げ、ものづくり産業の集積促進や農林水産業など地域資源を活用した産業の振興による雇用の場の確保、定住、交流の促進などに取り組むとともに、医師確保や子育て環境の整備、医療、介護、福祉サービスの提供によるセーフティネットの充実などを図ることとしているところであります。
 次に、今後の収支見通しにかかわる財源不足への対応についてであります。
 先般発表した岩手県の今後の収支見込み等では、アクションプランの改革編に基づく各種の財源対策や歳出削減等の取り組みを講じることにより、平成21年度及び平成22年度についてはおおむね収支均衡を達成できるものの、平成23年度以降については、粗い試算を行った結果、毎年度700億円程度の収支ギャップが生じる見込みとなったところであります。今後、平成23年度以降のアクションプランを策定する中で、この収支ギャップの解消に向けた具体的な対応が検討されていくこととなりますが、これまでの歳入、歳出両面にわたるさまざまな取り組みに加え、力強い経済社会構造を構築するとともに多様な主体による公共サービスを担う仕組みづくりを図るなど、あらゆる取り組みを通じて持続可能な財政構造の構築に向け全力を傾注して取り組んでまいります。
 次に、保健福祉分野の新しい長期計画における位置づけについてであります。
 これまでの県民意識調査では、子育て環境の整備や適切な医療体制、高齢者や障がい者に安心な地域づくりなどの政策項目のニーズ度が一貫して上位にあり、保健福祉分野は県民の関心の高い分野であります。こうした県民ニーズにしっかりと対応していくために、長期ビジョンにおいては、医療、子育て、福祉分野を七つの政策の柱の一つとして掲げ、地域の保健医療体制の確立や子育て環境の整備、福祉コミュニティの確立などに重点的に取り組むとともに、岩手の未来を切り開いていくために横断的、先駆的に取り組む六つの構想においても、健康などに着目した元気になれるいわて構想や、医療、福祉分野を中心に地域でともに支え合うさまざまな仕組みを構築する安心のネットワークいわて構想を掲げ、これを推進することとしています。こうした取り組みにより、県民一人一人が、地域社会の中でともに支え合いながら、ふるさと岩手で安心して暮らし、喜びを感じるような希望あふれる岩手を実現してまいります。
 次に、本県経済における公共事業の役割等についてであります。
 社会資本の整備は、県民の安全・安心な暮らしを守り、地域経済を支える上で重要な役割を担っています。また、公共事業による経済効果は、建設業界だけではなく多くの分野に波及するものであり、雇用の場の確保など地域経済に及ぼす影響は大きいものです。このため、新しい長期計画においては、岩手の未来の実現に向けた七つの政策の柱の一つとして、社会資本、公共交通、情報基盤の整備を掲げており、厳しい財政環境の中、公共事業評価に基づく事業の厳選など一層の選択と集中を図りながら、真に必要な社会資本整備については今後も着実に進めていくこととされています。
 また、建設関連産業の雇用の受け皿としての位置づけについてでありますが、建設関連産業全体の雇用状況を直接示す統計はございませんが、総務省の事業所・企業統計調査の直近の平成18年度の調査結果によりますと、県内建設業の従業者数だけでも5万6、350人、県全体の10.5%を占めています。さらに、建設関連企業は県内にくまなく存在し、地域の住民を広く雇用しているという側面も持ち合わせており、雇用の受け皿として質、量ともに重要な役割を果たしています。
 次に、内需拡大による本県産業の安定化についてでありますが、今般、民主党のマニフェストに掲げられた子ども手当や高校授業料の無償化、高速道路の無料化、暫定税率廃止などの政策は、それぞれの本来の目的に加え、国民が働いた成果を直接国民に再配分し、我が国の経済を内需主導型へ転換させながら企業の発展を促すことにより、安定した経済成長を実現しようとするものであります。本県においても、これらの政策が実施されることにより、家計の経済的な負担が軽減され、可処分所得が増加し、新たな消費が喚起されることによって商業やサービス業の振興が図られるなど、地域経済の活性化につながっていくことが期待できると考えられます。
 次に、二酸化炭素25%削減と経済成長に伴う環境負荷についてでありますが、経済の成長やインフラの整備が環境への負荷を生じさせる面があります。県では、環境に配慮した事業の推進や産業活動における省エネルギー、新エネルギー導入の促進、循環型地域社会の形成に向けた3Rの推進などに努めてまいりました。今後においても、環境と共生する持続可能な地域社会の実現を目指していくことが重要であり、現在策定中の新しい長期計画にも地球温暖化対策の推進を初め環境産業の創出、育成や、環境に優しく持続可能な都市づくりなどの諸施策が掲げられています。
 今般の鳩山首相の国連での演説は、地球温暖化防止に向けた国際社会の合意を目指す我が国の強い意見を示すとともに、産業革命以来続いてきた社会構造を転換し、持続可能な社会をつくることを力強く発信したものと受けとめられ、本県の環境と共生する持続可能な地域社会の実現という方向性と相通じるものがあると考えられます。
 次に、市町村合併についてでありますが、平成の大合併により、本県では市町村数が59から35に減少し、全国では3、200余りから来年3月末には1、700余りとおおむね半減する見込みです。300程度の基礎自治体という考え方については、地方自治を確立する上で、真に自立可能な姿を示す趣旨でわかりやすい表現として述べたものであり、現在の状況は、市町村の自主性を尊重しながら地域の議論を進めてきた結果と受けとめています。
 本県の合併市町においては、合併を契機として、行政サービスの維持、向上や職員の効率的な配置、財政規模の拡大など、行財政基盤の強化と行財政運営の効率化が図られましたほか、住民同士の新たな連携や地域資源の結集などによる合併効果が生じていると評価しております。新法期限後においても、市町村の行財政基盤強化のためには市町村合併が有効な手段でありますので、自主的に合併を進めようとする市町村に対しては、引き続き県として支援をしてまいります。
 次に、道州制についてでありますが、道州制あるいは二層制については、いずれもさまざまな定義や考え方があると承知しております。最も重要なことは基礎自治体としての市町村が自立し、地方自治の本旨が全うされるよう真の地方分権改革が行われることであります。自治体の枠組みについては、そういった観点に立ち、幅広く議論がなされる必要がありますが、その議論に基づいて自治体のありようが決められるべきと考えております。
 次に、県内のダム建設の意義についてであります。
 洪水から県民の生命、財産を守るとともに県土の保全を図ることは、県行政の根幹的な責務の一つであります。ダムによる治水対策は、河川改修等と同様に有力な手法であります。また、ダムは、治水面だけではなく発電や水資源の確保という重要な機能をあわせ持ち、県民生活や経済活動にも大きな役割を果たします。
 次に、簗川ダム建設についてでありますが、簗川ダムは、簗川の治水対策と盛岡市や矢巾町の水道用水の確保のために、その建設を推進していく必要があり、今後とも、県の政策等の評価に関する条例に基づく評価の結果を踏まえ、進めていくこととしております。
 次に、国の見直しがあった場合の対応についてであります。
 国土交通大臣が補助ダムを含めてすべてのダム事業について精査するとしておりますが、現時点では具体的な進め方について示されておりませんので、具体的な進め方が示された段階で適切に対応してまいります。
 次に、宮古盛岡横断道路についてでありますが、この道路は、沿岸と内陸を結び、地域間の交流、連携の促進を図り、物流の効率化や観光振興などを支えるとともに、救急医療施設への患者搬送時間の短縮を図る命を守る道路であることから、極めて重要であります。そして都南川目道路でありますが、都南川目道路は、宮古盛岡横断道路の一部を構成する重要な道路であり、先般の国土交通大臣の記者会見では、さきに一時凍結が解除となった17路線について、現時点では見直す考えはないということも表明されており、県としては、その整備促進を今後とも国に働きかけてまいります。
 一般国道4号の茨島跨線橋から分レまでの拡幅工事についてであります。同区間は、平成20年度に都市計画の変更手続が終了し、国では今年度、巣子地区で道路計画の説明会を開催し、関係地権者から立入調査の了解が得られ、用地調査等を進めていくと伺っております。この道路は、議員御指摘の渋滞の解消に加えて沿道環境の改善、さらには地域間交流、連携の促進を図る上でも大きな効果をもたらすものであり、今後も引き続き国に整備促進を働きかけてまいります。
 次に、本県の教育行政の方向性についてであります。
 自立した岩手を担う人材育成のための教育は県政を進める上での基本認識の一つであります。県民総参加の教育立県を基本理念として人づくり施策を進めております。新しい長期計画においても、これからの大きな方向性として教育から地域振興、産業振興まで広くとらえた人づくりにより、人がつながって豊かさを実現するという視点を重視し、その実現に向けて県民とともに取り組んでまいりたいと考えております。もとより、人づくりが基本であるという教育の根幹そのものは不易流行の不易であり、民主党がマニフェストに掲げている教育政策は、そうした教育の根幹を実現していくための教育環境の整備、充実を主眼としているものと認識しており、これらの政策が着実に実現されていくこととなれば、本県における教育環境の充実も図られるという点で大きく期待されるところであり、今後の政策の動向を注目してまいりたいと思います。
 次に、岩手県職員憲章についてであります。
 岩手県職員憲章は、知事以下全職員が心を一つにして意識を共有するとともに、職員が業務を推進していく上で物事を正しくとらえ積極果敢に行動するため、岩手県職員としてのあるべき姿や行動基準として、職員から広く意見を募りながら、本年1月に策定されました。憲章に掲げる地域意識については、県を取り巻く環境が厳しさを増している折、県職員が地域社会の一員として期待されているさまざまな役割を常に自覚して業務推進に臨むとともに、生活者の一員として業務の垣根を越えて地域活動により積極的に参加し、直面している問題に県民とともに一層取り組んでいくことが大切であるという、私そして全職員の共通の思いを込めたものであります。
 なお、現在策定中の新しい長期計画にも、県民本位の姿勢に立脚し、県民とともに考え行動することを重要な視点として位置づけてまいりたいと思います。
 その他のお尋ねにつきましては関係部長から答弁させますので、御了承をお願いします。
   〔総務部長菅野洋樹君登壇〕
〇総務部長(菅野洋樹君) 生産年齢人口の減少が税収に与える影響でございますが、税収を見積もるに当たって人口階層ごとに税額を算定するという手法はとっておらないため、具体的な影響額を算出することは困難でありますが、生産年齢人口の減少は、所得課税である個人県民税の減収に直接影響すると考えられます。また、間接的には、本県以外にも事業所を有する法人の県民税、事業税の分割基準の減少や、さらには消費の減少による地方消費税の減少、人口、従業者数の減少による地方消費税清算金の清算基準─都道府県ごとの配分率でございますが─の減少にも大きく影響するものと考えております。
 次に、地域活動への参加の取り組みについてでありますが、岩手県職員憲章を策定以来、これまで職員がその内容を常に意識しながら日常業務を進めるようにするため、全職員が常に携帯できるカードを作成するとともに、毎年度、各職場において定める業務方針に、憲章の定着や行動の実践につながる取り組みを盛り込むこととしたほか、毎月、各所属単位で実施しているコンプライアンス確立の日においても職員憲章の趣旨の徹底を図るなど、その定着に取り組んでいるところでございます。
 次に、その実績についてでありますが、先ほど申し上げました各職場の業務方針において定めた社会貢献活動や地域活動の浸透度合いについて、それぞれ自己評価を行っているところであります。この結果、取り組みがなされていると評価した割合の職場は、平成17年度の47%から、平成20年度には62%と向上しているところではありますが、本年1月の憲章制定後、この実績につきましては本年12月に取りまとめを行いたいと考えております。いずれにいたしましても、職員の自立的、自発的な取り組みが重要でありますので、参加しやすい環境づくりを進めるとともに、その意識や行動のなお一層の浸透に努めてまいりたいと考えております。
   〔保健福祉部長千葉茂樹君登壇〕
〇保健福祉部長(千葉茂樹君) まず、社会福祉の人材の確保についてでありますが、福祉、介護施設等での就業は他の産業と比較して労働環境が厳しく、十分な処遇が受けられないなどの状況にありますことから、介護福祉等養成施設の入学者数も減少するなど、福祉、介護人材の確保は極めて重要な問題であると認識しております。そのため、県社会福祉協議会に県が委託設置しております福祉人材センターにおきましては無料職業紹介や、昨日、本年度第2回目を実施いたしました福祉の就職総合フェアの開催によるマッチング支援などに加えまして、今年度からは県内定着を目的といたしました介護福祉士等修学資金貸付制度を創設するなど、福祉、介護分野への進路選択を支援する取り組みも始めたところでございます。これらの取り組みに加えまして福祉人材センターに支援専門員を新たに設置し、当該職員が県内各圏域で介護サービス事業所や求職者などのニーズに応じた相談支援等を行う経費を9月補正予算で御審議いただくこととしており、また、介護業務従事者処遇改善等臨時特例基金により処遇を改善する取り組みも開始いたしますことから、これらの施策を通じましてさらに福祉人材確保の取り組みを進めることとしております。
 次に、障がい者アートの海外出展についてでありますが、議員から御紹介がありましたとおり、日本の障がい者アート展覧会が海外で開催され、多数の障がい者アートが展示される中にありまして、本県の9名の作家の作品が展示されることは、障がい者の自立と社会参加という観点から非常に喜ばしいものと認識しております。これまで県内では、毎年県が主催いたします岩手県障がい者文化芸術祭やいわて・きららアート協会によります展覧会などが開催され、県内在住の障がい者の方々のすぐれた芸術作品が県民に紹介されておりますが、今回、日本の障がい者アート展覧会に出展する多くの本県作家は、過去にこうした県内の展覧会に出展された方々でございまして、これらの展覧会が一つのステップとなって活躍の場を世界に広げられたものと認識しております。県といたしましては、今後、今回の9名の作家の作品を初め日本の障がい者アート展覧会に出展された作品を岩手県障がい者文化芸術祭において特別展示することを検討しており、いわて・きららアート協会など民間の取り組みと連携しながら、さらに障がい者の方々の文化、芸術活動を積極的に促進し、その自立や社会参加が進むよう努めてまいりたいと考えております。
   〔商工労働観光部長廣田淳君登壇〕
〇商工労働観光部長(廣田淳君) 今後の雇用確保の視点についてでありますが、これまで、自動車関連産業と半導体関連産業を柱としたものづくり産業の集積を進めるため、核となる企業を誘致し、県内企業の技術力向上や競争力強化に取り組むとともに地域資源を活用した地場産業の振興を図るなど、県内経済の成長や雇用の拡大に努めてきたところです。また、企業に対する支援策につきましては、県内中小企業の経営の安定と成長を支援するため、商工団体等の支援機関によります経営相談、技術相談に対する助言指導、県単融資制度によります円滑な資金供給、新分野への進出や創業に向けた取り組みに対する支援などを行ってきたところです。今後とも、企業経営の安定、成長が実現し、雇用の維持、拡大が図られるよう、ものづくり産業を中心としました本県産業の基盤の強化に努めるとともに、中小企業に対する経営支援を充実させていきたいと考えております。
   〔環境生活部長松川求君登壇〕
〇環境生活部長(松川求君) 二酸化炭素削減目標の進捗状況等についてでありますが、本県における二酸化炭素排出量は、直近のデータであります平成18年の量が1、358万5、000トンであり、1990年、平成2年に比べ5.5%、排出量で70万7、000トン増加しており、8%削減の目標達成のためには、平成22年までに173万8、000トン以上の削減が必要であります。この173万8、000トンの削減については、岩手県地球温暖化対策地域推進計画により、排出削減対策で91万9、000トン、残りの81万9、000トンは森林吸収によることといたしております。
 排出削減対策については、これまで、家庭におけるエコライフの実践、事業所における省エネルギーの取り組み、運輸部門ではエコドライブの普及、また、太陽光発電や木質バイオマスなど新エネルギーの利活用の促進などに取り組んでまいりました。これらの取り組みなどによる平成18年度から平成19年度までの削減量の推計は、家庭部門では、エコライフの実施率の上昇分から推計し、約1、400トンの削減、産業・業務部門では、エネルギー使用量の大きな事業所の削減対策により約13万6、000トンの削減、運輸部門では、低燃費車への買いかえなどにより約9万9、100トンの削減、新エネルギーの導入により約1万トンの削減など、計約27万6、000トンの削減と推計しており、平成22年までの削減目標91万9、000トンに対し、平成19年度までの削減割合は約30%の状況となっております。平成20年度の数値は集計中でありますが、今後、排出削減対策の一層の拡充を図るとともに、本年6月に設立した温暖化防止いわて県民会議を中核とした県民運動の推進や、本議会に提案しております地球温暖化対策等推進基金を活用した事業の展開などにより、目標を達成してまいりたいと考えております。
   〔地域振興部長加藤主税君登壇〕
〇地域振興部長(加藤主税君) 自発的な地域活動にかかわる方々への支援についてでございますが、消防団や交通指導員あるいは町内会などによる地域活動は地域社会を支える重要な役割を担っており、県においては、こうした活動に自発的に取り組まれる方々の志を高く評価し、活動の一層の活性化を期待しているところでございます。このような地域活動につきましては、人口減少、少子・高齢化や就業構造の変化等によりまして、活動の担い手の不足やコミュニティ意識の希薄化など、それぞれ課題が生じてきている実態がございます。例えば消防団につきましては、新規団員の確保難などから団員が減少しております。これらのさまざまな課題の解決のためには、何よりも地域活動に対する住民の理解と参加促進が重要であると認識しております。
 このための地域活動に対する支援につきましては、地域、地域でさまざまな事情を有していることから、まずは市町村が主体的に役割を担っていただくことが基本と考えております。県といたしましては、これまでも消防団への理解を促進するための広報活動、交通指導員の報酬に対する補助、消防団員や交通指導員を対象とした知事表彰などを行ってまいりましたが、今後とも、活動の実態や市町村の取り組みを踏まえまして、必要な助言、支援や普及啓発活動などに取り組んでまいりたいと考えております。
   〔教育長法貴敬君登壇〕
〇教育長(法貴敬君) 民間人校長導入による評価と今後の対応及び県立学校の経営計画書の導入についてでありますが、民間人校長を採用して以来おおむね6年を経過しておりますが、校長会や部下職員あるいはPTA等の民間人校長に対する評価は総じて、民間で培った経営感覚や柔軟な発想を生かし組織的な学校経営ができていること、民間企業の方の学校での講演等により、生徒の進路意識の高揚あるいは向上につながっていること、職員に対しては会社の経営状況の見方を教示することにより、生徒の就職活動に対して大いに貢献していることなどが挙げられております。学校経営においてPDCAサイクルを確実に回し、学校の活性化につながっているものと認識しております。
 また、現段階では評価のための詳細な調査を行っておりませんが、民間人校長の評価を行った東京都の例も参考にしながら、今後さらに評価を続けてまいりたいと考えております。
 民間人校長の導入の目的は、議員御案内のように企業の経営感覚を学校経営に生かすということでありまして、企業の経営計画を参考に学校経営を行うこととし、現在は経営計画の質の濃淡はあるものの、すべての学校で学校経営計画を作成し、目標管理型の学校経営を着実に進めているところであります。
 今後さらに経営計画の質を高めながら、各学校が経営指標に基づき、それぞれの特色を生かし、創意工夫に富んだ魅力のある学校づくりが行えるよう学校経営を進めてまいりますが、民間人校長の新たな採用については、さらなる評価を通じて検討してまいりたいと考えております。
〇21番(高橋雪文君) いろいろと答弁まことにありがとうございました。
 大きく四つお聞きしたいと思います。
 一つは、人口減少にかかわってでございます。
 この10年で5万人という人口が岩手県からいなくなっていると、大変大きな問題であります。その減少が若干100単位で減っているということではございますけれども、私はそれが評価に値するかというと、人口減少の1万人規模で流出している姿ですね、たった数百減少したからって、それに歯どめがかかったとは言えないと思います。しかしながら、知事のたびたびの発言では大分効果が出ているというような発言も多々見受けられるところでございますが、そうではないんだということを改めてお話しさせていただきたいと思います。
 その上で、これまでどちらかというと経済政策、人口減少についても中央の政府が悪いんだと、こういうような話が多々ございました。これについては、今後は、やはり知事が支援している政党でございますので、ただただ中央のやり方を批判するだけではなくて、現実にその歯どめをかけるために知事がどう動くかということが一番求められているのではないか、そういうふうに感じておるところでございます。
 私は、これまで選挙等でも、岩手の場合はねじれ現象だということで、それを解消しなければならない、こういうことを主張したわけでございますが、こうしたところではそのねじれ現象も解消されてきたと。これからはしっかりと知事が連携して、本当に県民の幸福のために、もしくは県民の生活向上のために働ける土壌ができたんだと思って、そういった意味では、今後2年間、非常に期待するところでございます。
 しかしながら、内需拡大策に転換するということが非常に経済的にも大きな影響を与える、これはある程度は事実だろうと思うんですけれども、それがこの人口減少問題を解決するとは私には到底思われないところでございます。現在、例えば有効求人倍率が0.32ということで、やはりここの人口流出の最大の理由は、本県の産業が脆弱であること、雇用がしっかりと確保されていないところ、ここは非常に問題であろうと思います。
 そういった意味で、公共事業の有用性とかはまだまだあるというのが私の趣旨でございますけれども、知事のお話を聞いていると、その積極性というのを感じることはございませんでした。そして、ある程度状況を見てとか中央の政治の方向性を見てとか、こういう非常に消極的な思いを感じるところでございます。私は、そうではなくて、もっと知事が岩手県の実情を国に訴えて、そして岩手のためにこれまでねじれ現象でできなかった部分を補っていく、そういう強いリーダーシップが今こそ求められるのではないかと思いますので、この点については知事にお聞きしたいと思います。
 そして、地方分権について道州制がいいのか二層制がいいのか、こういう議論でございます。これまで300市町村という知事の考え方からすると、もう少し政治主導があっていいと感じておるところでございます。しかしながら、今の答弁をお聞きしますと、市町村合併とか新たな自治体の枠組みについては、あくまでも市町村の一番末端の自治体がどういうふうに考えるかだということであります。そうするとほとんど、市部はよくわかりませんけれども、町村の場合は、合併はこれ以上進めてほしくない、もしくは道州制を進めてほしくないということでもう答申が出ているところでございます。そうならば、知事はそれを受けて国にそういうことを働きかけるのかどうか、その辺もしっかりとお聞きしたいと思います。
 そして、先ほどの三つ目でございますけれども、環境問題についてお聞きします。
 国は、明確に2020年、25%を明示しました。そして今、報告があったのは、達成しますとは言っていますけれども、その根拠はまるでわかりませんでした。改めて私お聞きしたいんですけれども、まず8%は本当に実現可能なのかどうか、それをまず明示していただきたい。そして、その手法についても、もうこういう段階でございますので、どのように達成するのか、もう少し具体的にお話しいただきたいと思います。
 そして、25%というのは、やはりある程度根拠があっての25%だろうと思います。その根拠がある中で、地方はこれからどう進まなければならないかというのは大いに議論するべきだと思います。特に環境を重視している岩手において、やはり明確な態度、来年3月ぐらいをめどにということでございますけれども、やはり早々にそれは取り組むべきだと思いますが、いかがでしょうか。
 最後になります。教育行政について少しお話をさせていただきたいと思います。
 私は、まず、教育の方向性については、まだ民主党政権がどのような方向を示そうか、どういう改革をしようか、こういうのが明示されていないところでありまして、まだまだこれはしっかりと見ていかなければならないと思います。でも、やはり考えなければならないのは、本県の教育がどうあるべきかというものを一つの柱として、それに対して国と正々堂々と議論を重ねながら岩手型の人材育成を図っていくということだろうと思います。
 私は新渡戸稲造が非常に好きで、いろいろ勉強会なども開催させていただいているんですが、実は地元で新渡戸稲造を勉強する機会はほとんどありませんでした。東京に行って、そして五千円札の人という話はありましたけれども、本当に知る機会がない。そういった中で、例えば国際的なところ、そして今日の理念なき、思想なき社会の中で、新渡戸稲造の考え方、生き方、そして武士道みたいなものが再評価された。そういうものがもっと地元の学としてあってよかったのではないか。そして、そういうものを知った人間が本当の意味で国際的な感覚を持って世の中に率先して出られるような、そんな人材を岩手が率先してもいいのではないか、こういうふうに強く思っているところでございますけれども、どちらかというと、これまでもそうでございますが、国の大体の方向性が示されて、それにのっとった形での教育改革が行われてきた。岩手としてどう考えるのか、こういうところがもっと明確になればいいと思います。
 民間人校長の導入にしても、せっかくこの6年間やってきたわけでございますので、私は個人的には、継続して、ほかの分野の有能な民間人を入れながら、これから経営者感覚というのはどういうものなのか、経営感覚というのはどういうものなのか、そして率先して岩手型の学校づくり、教育づくりというものに携わってもらう、こういうことをしていかないと地域の人材が失われてしまう。これまでの状況でいったらどんどん都会に流れてしまう。そういうものをどうやって解消していくかというのが今後の大きな課題なのではないかと思います。その点、どのように考えていこうとするのか、その意志についてももう少し明確にお答えいただきたいと思います。
〇知事(達増拓也君) まず、教育の方向性の話からお答えいたしたいと思います。
 私が民主党のネクスト文部科学大臣をやっていたときに、民主党の教育の方向性というのは、簡単に言えば、金は出すけれども口は出さない。地方の教育環境の整備というところは国際水準に比較しても大分足りない。そういったところをきちっと手当てして、その上で教育の中身については地方が自由にやりたいようにやっていく、それが基本だとしていたんですけれども、それはその後、鈴木寛ネクスト大臣─今の副大臣、そして今の川端大臣に引き継がれているのではないかと思っております。
 そういう意味では、岩手はどうあるべきかということについては、今まで岩手が歴史ある教育立県として積み重ねてきたものをきちんと生かしながら、先輩方から引き継ぎ、そして未来に向けて我々がつくっていけばいいのではないかと考えております。
 民間人校長のあり方、また、そういう民間的な経営者感覚的なことの活用については、担当部局長という言い方でいいのでしたか、教育長から答えさせたいと思います。
 次に、環境問題について、これも8%が可能かどうかということについては担当部長のほうからお答えをさせていただきたいと思います。
 25%については、そもそも県の数値目標については県環境審議会の議論を踏まえて決定していくということでありますけれども、この議論に先立って、これからの県の環境政策のあり方について有識者の皆さんに議論をしていただいております。この議論の最中にオバマ大統領、当時、アメリカの大統領選挙でオバマ候補は、これはクリントン候補もですけれども、ちょっとスパンは違うんですが、今世紀半ばには50%削減、半減しなければならない、そういう提案をしていました。これはヨーロッパにおける議論でもそういう議論が主流になり、去年の福田総理のもとでの洞爺湖サミットでの議論につながっていたかと思います。そうした国際的な議論も視野に入れ、さあ、岩手はどうあるべきかという議論を既に有識者の皆さんにもしていただいておりますので、25%という数字についてはそれほど驚いてはいないところではないかと思います。
 それから、地方分権のあり方について、やはり基礎的自治体が、つまり市町村が力を持ち、自立していくということが地方分権あるいは地方主権、住民自身が主権者として住民自治、団体自治を担っていくという姿であり、そこが眼目なんだと思っております。そのために県としても引き続き力を尽くしてまいりたいと考えます。
 それから、人口減少問題などに関する国への働きかけということで、ある意味自由な政治活動も含め、こうした子育て手当、大胆な、思い切ったヨーロッパ並みの子育て手当の実現といったそういう国政が実現するような働きかけの結果こういうことになったとも思っております。子育て支援初め、地方における、これは神野直彦教授が提唱しているんですけれども、現金給付は国の役割、サービス給付は地方の役割。したがいまして、子育て手当が国から数兆円規模で毎年出るのであれば、県ではそれを前提に、そのお金を使って提供されるサービスというものが地域の中にきちんと確保されていくといった適切な国と地方の役割分担のもとで、近年、崩壊しつつある雇用、産業、これはちょっとどういう言葉が使われていたか、神野先生の言葉がそのまま今、全国知事会が取り組んでおります国のあり方研究会でのたたき台のレポートの言葉にもなっているんですけれども、要は、産業、雇用政策、そして社会保障、福祉政策、この二つの体制の立て直しを国と地方がきちっとした役割分担のもとで、そしてどちらかというと地方主導で進めていくということを今、全国知事会国のあり方研究会で詰めて、そして、その内容については既に私からも原口総務大臣に直接伝えているところではあるんですけれども、政府も巻き込んで進めていければと思います。
〇環境生活部長(松川求君) 二酸化炭素削減8%の削減目標達成についてでございますが、二酸化炭素排出量を算定いたしました平成18年以降平成19年度までの1年間で約27万6、000トンの削減を行ったと推計いたしております。これはおおよそ1年で削減目標の約3割に当たるわけでございまして、平成22年度までの目標達成は可能と考えております。
 平成20年度の削減量や今年度設立いたしました温暖化防止岩手県民会議の取り組み状況について年度内に取りまとめることといたしておりまして、これまでの削減状況を推計しつつ、目標達成に向けた取り組みを着実に進めてまいりたいと考えております。
 取り組み内容といたしましては、温暖化防止岩手県民会議を中核とした県民運動による省エネルギーの推進、地球温暖化対策推進基金を活用した温暖化対策の実施、新エネルギーの導入促進、これらを中心として進めていく考えでございます。
 特に温暖化防止岩手県民会議におきましては、家庭部会の取り組みによりエコライフの実施率を高めるとともに1日2キロの削減を徹底し、事業者部会におきましては省エネルギーの取り組みの強化を図っていくなど、県民、事業者の皆様の広範な参加を得て目標の達成を果たしていきたいと考えております。
〇教育長(法貴敬君) 民間人校長の採用についてでありますけれども、現在2例しかないということで、さまざまな今、評価を続けているところです。先ほどは総じていい面をたくさん述べさせていただきましたけれども、あとは現場でさまざまな御意見がまだ出ているところもありますので、そういう御意見を伺いながら、もう一度、先ほども申しましたように、東京都がちゃんとチェックしたように、どういうことだったのかというものも見きわめながら今後検討してまいりたいと考えています。
〇21番(高橋雪文君) これで最後にしたいと思います。
 人口減少と民間人校長の導入でございますが、要は新たな政権が生まれて、そして新しい政策を打っていく、これは日本の新しい形を模索する上で、私は大いなる試みだろうと思うわけでございます。しかしながら、達増知事は2年前から、民主党がこういう政治をやるんだというものを岩手県政でも実現したいというような同様の趣旨をこれまで話していたところでございまして、例えば人口減少のこの問題について、本当にどういうレベルでの推移を考えておられるのか、それをまず1点お聞きしたいと思います。
 これを今後も1万人規模を想定しながらやっていくのか、それとも、四つの大きな危機的な県政の課題ということで取り組んでおりますので、例えば5、000名ぐらいに抑えるのか、そういう基本的な認識をお聞きしたいと思いますし、今回の政権交代の投資の仕方によって雇用が本当に拡大していくのか、人口減少の一番大きなポイントでございます。この雇用の部分にどういうふうに厚くかかわっていくのか、そこについての認識もお聞きしたいと思います。
 そして、民間人校長の導入のめどでございますけれども、これはいつまでに決めて、そしてもしやるとするならばいつから動き始めようとするのか、その点についてある程度の時間的な部分もお答えいただきたいと思います。
 以上です。
〇知事(達増拓也君) 岩手で働きたい、岩手に暮らしたい、しかし経済的な事情でそうできない、また、経済的事情で家庭が持てない、子育てできない、そうしたことは本当に一人でも一件でも何とかしたい、何とかしなければならないという思いであります。
 それは雇用も全くそのとおりでありまして、県にできることは、やはり一つ一つの会社、また一つ一つの学校、さらに言うと一人一人の求職者に対してきちっと手当てをしていくことだと思っておりまして、そうしたことを通じてこの危機的状況を克服できればと思います。
〇教育長(法貴敬君) 民間人校長の採用の評価の見通しということでございますけれども、もし来年度から着手したとして、早くてその結論が出るのは再来年度の当初になるものだと考えております。
〇議長(佐々木一榮君) 次に、佐々木博君。
   〔32番佐々木博君登壇〕(拍手)

前へ 次へ