平成21年9月定例会 第13回岩手県議会定例会 会議録

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〇14番(高橋博之君) 政和・社民クラブの高橋博之です。1年9カ月ぶりの一般質問になります。よろしくお願いをいたします。
 今、私たちは時代の大きな曲がり角におります。グローバル化、人口減少、少子・高齢化、消費需要の低迷という大きな社会構造の変化に対応できず、日本全体が閉塞感に覆われております。我が国は、他国に先んじてこうした変化に直面をしており、もはや目指すべきモデルはありません。私たち自身が英知を結集し、この難局を乗り越え、子孫が永続的にこの国で幸せに暮らし続けることができる新しい社会を構想し、つくり上げていかなければなりません。このような基本認識に立ち、以下、本県のこれからの進むべき道筋を指し示すような建設的な質問をしたいと思います。
 先立つものはお金でありますから、まずはお金の話から、財政の問題から入りたいと思います。
 県は、現在の財政状況をどのように認識しているのか、また、今後の財政見通しと財政運営の課題をどのようにとらえているのか、お聞きをいたします。
   〔14番高橋博之君質問席に移動〕
   〔知事達増拓也君登壇〕
〇知事(達増拓也君) 高橋博之議員の御質問にお答え申し上げます。
 まず、本県の財政に対する現状認識等についてということでありますけれども、まず歳入面でありますが、景気低迷等により県税収入が減少しております。そして、近年の地方交付税の削減などがあり、県債に大きく依存せざるを得ない状況であります。歳出面では、県債の償還など、義務的経費の支出割合が高い水準にあります。また、主要3基金の残高が大きく減少しておりまして、極めて厳しい財政状況と認識しております。このため、中期的な財政収支の見通しも踏まえながら、より踏み込んだ歳入の確保、そして歳出の削減ということを実行し、不断の行財政改革を進めながら、一層の集中と選択を進めて、限られた財源を重点的かつ効果的に活用してまいりたいと思います。
 そして、今後の見通しについてでありますが、県政運営の参考とするために、現行の諸制度等を前提とし試算した結果、平成22年度まではアクションプランの改革編に基づく歳入確保、歳出削減などに取り組み、おおむね収支が均衡する見込みとなっておりますが、平成23年度以降につきましては、毎年度700億円規模の収支ギャップが見込まれております。今後、将来にわたって安定的に持続可能な財政構造を築くことが、今後の財政運営の課題と考えております。
〇14番(高橋博之君) まだ負担が顕在化をしていない若い世代として、この財政の問題は大変に関心を持っております。
 ただいま知事から御説明がありましたように、景気低迷による県税収入の減少、それから近年の地方交付税の大幅な削減、高い水準で推移する県債の償還、その結果、平成23年度以降は毎年度700億円規模で収支ギャップが生じる見込みであること、また、主要3基金の残高が減少するなど、大変厳しい財政運営を強いられていることがわかりました。その中で、現在策定中の新しい長期計画を着実に推進する予算として編成をする必要があるわけですが、ほとんど綱渡りの状態であると言ってもいいと思います。持続可能な財政という観点から見ても大変危ういと言いますか、危機的な状況にあると言えますが、この財政の現状と今後の見通しについて、達増知事はどのような危機認識をお持ちになっておられますでしょうか。
〇知事(達増拓也君) 危機認識ということについて言いますと、やはり県税収入が大きく落ち込んでいること、また、地方交付税も削減されてきたということ。一方で、県債の償還が将来にわたって重くのしかかるといったことから、岩手の財政状況は非常に厳しいというふうに認識しております。
〇14番(高橋博之君) 大変簡潔な御答弁でありがとうございました。
 県の現在の県債残高は1兆5、000億円、県民1人当たり100万円を超えております。それから、さらに深刻な数字は、国と地方を合わせた借金であります816兆円。これは国民1人当たり、赤ちゃんからお年寄りまで漏れなく600万円を超える借金を抱えていると、こういう状態です。主要先進国で最悪の水準です。要するに、借金まみれで首が回らないというような状態だと思います。さらに、今後の生産労働人口の減少による税収減、それから高齢化による社会保障費の増大といったぐあいに、歳入、歳出両面から二重の圧力がかかってまいります。予想を超す速さで進む少子・高齢化は、静かに国民生活を脅かし始めております。
 北海道羅臼町では、昨年4月、水道料金が25.5%の大幅値上げに踏み切らざるを得なくなりました。羅臼だけではありません。平成19年4月からの1年で値上げをしたのは66市町村、人口が少ないほど高くなる傾向にあります。人口減少、少子・高齢化のスピードが速い本県も、決して人ごとではありません。いずれ、税収不足で国や我々自治体の財政難は、今後さらに深刻化していくことが予想されます。しかしながら、まだ顕在化をしていない危機とも言え、県民も総じて危機認識に欠けている面があります。県の役割は、このまだ見えない危機を浮き彫りにし、県民と危機認識を共有した上で、そうした事態に備えることではないでしょうか。しかしながら、先ほど知事から短い御答弁がありましたが、県の説明からはまだ十分に危機感が伝わってまいりません。県は、このような危機的状況をもっと素直に認識をし、県民に丁寧に説明するべきではないでしょうか。知事の御所見をお伺いいたします。
〇知事(達増拓也君) 中期的な財政収支の見通しということで、毎年度700億円程度の収支ギャップが生じるということについては、マスコミ等でも報じられているかと思います。これは非常に深刻な状況でありまして、そういった700億円の収支ギャップということ、また、その積算の根拠も明らかにしているところでありますから、これを本当に県民の皆さんにきちんと理解をしていただいて、この岩手の自治ということを考えていただかなければならないと思っております。
〇14番(高橋博之君) なぜ、ここにこだわるかといいますと、まさにここが私は危機のスタートだと思っております。きょうは県の10年後のビジョンを指し示すような議論をしたいというお話をさせていただきましたが、まず、今スタートの話なんですけれども、もはや行財政資源が限られた県庁の力だけでは、財政危機に瀕するこの難局を打開するのは不可能であります。だからこそ、県民にこの現状を正直に丁寧に説明することによって、ともに課題解決に当たっていかなければならないわけです。
 現在、県は、本県の10年後の未来を描く新しい長期計画を策定中です。この中で、多様な主体、つまり、県庁以外の県民やNPOを初めとする民間セクターが、公共サービスを担う仕組みづくりの重要性が説かれております。そのスタート地点は、まさにこの財政の危機認識の共有にあるのではないかと私は考えておりますが、知事の御所見をお伺いいたします。
〇知事(達増拓也君) 国と地方がこのような巨額の借金、世界的に見ても異常に借金が多い状態になったのは、右肩上がりの高度成長時代には、そういう借金をベースにした財政のやりくりということが一つ合理性があったんだと思います。所得がどんどん、10年で倍になっていくような中、貯蓄、郵便貯金など、それが公共事業に回り、そしてまた、それがさらに経済を成長させていく。そして物価も上昇して、借金は実質的には目減りして、財政もそれなりの一定の均衡を保ちながら借金頼りの、これは本当に世界史的に見ても例のない財政の一つの構造だったと思うんですけれども、それが機能してきたのが終わってしまったということだと思います。そういった構造をぜひ新政権のもとで改めてほしいと思っているわけでありますけれども、一方で、日本全体としては、むしろ外国に、アメリカの国債を買う、つまり、アメリカにお金を貸したり中国にODA、やはりお金を貸したり、日本全体としてはお金はむしろ余っている状況でありまして、それはすなわち、国や地方以外のところにそういうお金がたくさんある。ですから、そういうお金が回り回って、日本全体の豊かさや社会の安心・安全につながるところにうまく回ればいいわけでありまして、そうした方向性の中で、狭い行政以外の主体が活躍するところには大きく期待をされているというふうに考えております。
〇14番(高橋博之君) 知事は、今、これまでの国あるいは世界も含めてその構造をお話になりましたが、今の岩手県それからこれからの岩手県の財政のお話を先ほどやりとりさせていただきましたけれども、危機認識はお持ちになっておられると。その中で、県庁の力だけでは、もう、いかんともしがたい、だからこそ、県民やNPOを含めて、多くの主体が行政に参加をして一緒にやってほしいと、こういうことでこれからお願いをしていこうとしているわけですよね。その辺ちょっとまた確認をさせてください。
〇知事(達増拓也君) 右肩上がり時代のような大規模に借金をして、そのお金を使って行政を執行していくということは、そもそも地方はそうそう借金をできないような仕組みにもなっていて、主として、国がそういう借金をするような役割分担にもなっていたわけでありますけれども、まして今のような右肩上がりではない時代には、県においては、そうした何でもかんでも県でやるということは無理だと思います。
 一方で、日本社会全体として、高度成長を経て豊かな社会にはなっているわけでありまして、もちろん、ひずみ、ゆがみのせいで、ワーキングプアの問題でありますとか、本当に助けを必要としている個人やグループというのは、岩手県内にもたくさん存在しているわけでありますけれども、一方で、世のため人のために動くことができる、活動できる、そういう余力といいますか、それがそもそも生きる道というような、そういう主体はこれもまた少なからず県の中に存在していると思っておりますので、そうした皆さんと県が協力してやっていけるといいのではないかと考えております。
〇14番(高橋博之君) わかりました。この点については、次の行政運営のほうでもちょっとお話をしたいと思います。
 次に、総務部長にお聞きをしますが、このような厳しい財政状況の中で、県が現在策定中の長期計画、いわば県民が希望を持てる将来の道筋を指し示すこの計画を実効性あるものにしていくためには、長期計画を予算とリンクさせ戦略性のある計画へと高め、計画的な財政運営を図っていくことが大事であります。長期計画というと、これまでは将来のバラ色の物語を描くようなものが多かったわけですが、これからは、財源の裏づけがなければ県民の理解を得ながら行政を進めていくことは極めて困難であります。限られた財源の中で、当面、どの施策を重点的、戦略的に進めていくのかという、長期計画に沿った計画的な財政運営が求められていると思いますが、この点についてどのようなお考えを持っておりますでしょうか。
〇総務部長(菅野洋樹君) 新しい長期計画と財政運営の整合性についてでございますが、当然、財政の分野からしますと、ビジョンである長期計画を下支えといいますか、それを支える役割を持ってございます。したがいまして、長期計画に基づいたアクションプランが具体的には策定されるわけでございますが、それと整合性を持った財政運営というものが求められます。したがいまして、長期計画に基づくアクションプランが複数年度にわたる計画でございますので、財政のほうにおきましても、それと連動いたしまして中期的な収支の見通しを作成しながら、それと整合性をとりながら財政運営を行っていく必要があろうと思ってございます。それが、限られた財源を新しい長期計画に基づく施策に重点的に配分することになると思っておりまして、これまでも、いわて希望創造プランの策定に合わせまして、当該年度にかかわります中期収支を作成したところでございます。
 今後、新しい長期計画のアクションプランの策定に合わせまして、収支均衡した形で収支見込みを作成し、今回はこれを公表させていただきましたが、中期収支見込み並みの予算規模を目指しながら、県財政の持続性を確保しつつ、アクションプランに基づく施策というものを確実に実施していきたい、このように考えております。
〇14番(高橋博之君) 目指しながらということですから、今後、予断を許さないということなんだろうと思いますが、いずれ、この新しい長期計画の方向に従って、限られた財源の重点的かつ効率的な活用をしていくためには、歳出の徹底した見直しと政策の優先度に応じた財限の最適配分を図り、より一層の選択と集中を進めていく必要があります。これは、今、鳩山政権が今年度補正予算の中で無駄な支出を中止し、税金を回収する組み替え作業に半ば通じるものだと思いますが、知事、いかがですか。
〇知事(達増拓也君) 今、鳩山政権が行っているような政治家主導で予算全体を見直していくというのは、私が知事になっての最初の本予算の調整の際に、あらゆる政策、経費、すべての事業項目について改めてゼロベースで見直して、そして選択と集中を行ったということと相通ずるものと考えております。
〇14番(高橋博之君) 知事そして我々議会も、県民の負託を受けてこの議会に来ております。私たちは二元代表制というこの仕組みをとっているわけですが、官僚依存体質からの脱却が問われているのは、我々議会の側でもあると思います。地方自治法上、予算編成権は知事に専属し、議会は、提案されて初めて予算を審議できるものとされております。また、議会が予算の内容と異なる意見を持っている場合はこれを否決し、または修正することができることになっております。しかし、予算の提案以前に議会の意見を知事に申し入れることは可能になっております。議会は正規の活動として、予算編成前に次年度の基本施策や予算に盛り込むべき事項について知事に質問をし、あるいは議員間で自由討議を行い、その結果を知事に申し入れるなどにより、議会の意思をこれに反映させることができるとされております。
 そこで知事にお尋ねをいたしますが、政治主導と県民本位ということでありまして、我々議員も、県民の負託を受けてこの議会に来ております。この二元代表制におけるもう一方の民意の代表である議会、県民と直結をした議会が、このように予算編成前にさまざまな形で今も知事に要望を出したりしておりますが、知事はこれをどのように取り扱っておりますか。
〇知事(達増拓也君) 地方自治法の趣旨に基づきながら、さまざまな工夫がなされることは大変よいことだと思います。
〇14番(高橋博之君) 次に、我々議会と、そして直接県民がどうやって予算の編成の中に参画をしていくのかという視点から質問させていただきたいと思います。
 従来の事業の優先劣後を考えないシーリング方式を改めた新しい予算編成方式では、選択と集中を進める上で一定の効果を出しております。さらに一歩踏み込んで選択と集中を進める、つまり、どれをとりどれを捨てるか、政策の優先順位をもっと明確にするには、予算編成過程を全面公開し、県民の目にさらすことだと思います。予算編成の途中段階において、県民から広く意見や異論、反論を募ります。県民に納得してもらえる説明がなければ、要求も査定もできなくなるわけですから、最終予算は、より客観性が高く、不適正な予算づけの少ない優先順位のすぐれたものとなり、結果として、一層、選択と集中も図られたという他県の事例もございます。
 本県は、全庁的な議論を経て最終的に知事査定の段階で決まるという予算編成方式上、公開はなかなか難しいという答弁をこれまで何度もいただいておりますが、私は選択と集中をさらに進める上でも、やはり調整過程から何らかの形で公開するべきだというふうに思いますが、総務部長、いかがでしょうか。
〇総務部長(菅野洋樹君) 本県の予算の公表につきましては、現況、各部からの予算要求時点と知事査定後の最終時点で、それぞれ公表させていただいているところでございます。
 一方、他県の例におきましては、例えば課長調整後、部長調整後、それぞれにおいて公表されている例もございます。ただ、本県の場合、非常に現実問題として大変だと思っておりますのは、例年1月に示される国の地方財政計画に大きく本県の財政の全体規模感、その内容がコントロールされてしまうというところもございますし、全庁的な政策の優先度に応じた予算編成とするため、政策的経費のすべての事業において知事が担当部局と議論を行い、数度の調整段階を経て副次的に行っているという例もございまして、他県で例がありましたとおり、課長調整、部長調整のそれぞれで一つ一つ決まっていくというプロセスをとっておらず、いろんな動きをとっておるという現実の問題もございます。ただ一方で、議員御指摘のとおり、県民の方々に本県の予算の状況をどう御理解いただくかというのは非常に重要な課題だと思ってございますので、どのようなものが可能か、引き続き私どもとしてもよく勉強させていただきたいと思っております。
〇14番(高橋博之君) 選択と集中をしていく上で、こっちを立てればこっちが立たないというのがこれからの時代であります。どっちも立てればばらまきになるわけですが、政策に優先順位をつけて新たな政策を行うときは、必要度の薄い政策をやめるスクラップ・アンド・ビルドが欠かせません。忘れてならないのは、それにはある程度痛みも伴うということです。無駄遣いと言いましても、全く不要な政策はほとんどありません。一方で、必要だという人がいれば、必ず一方で無駄だという人がおります。万事の政策がそうであります。一部の地域や特定の団体の要望の高い事業でも、全県民的に見て必要度が薄ければ、無駄遣いということにもなります。その事業をやめることを納得してもらうためには、なぜその事業を削るあるいは減額するという判断に至ったのかをわかっていただくために、調整過程の情報公開と、それに伴う説明責任が欠かせません。現在の予算編成方式では、削られる事業から受益を受けるはずだった側の納得がなかなか得られないと思いますがいかがでしょうか、総務部長にお聞きします。
〇総務部長(菅野洋樹君) 確かに厳しい財政環境下におきまして、新しい事業を行うためには既存事業のスクラップ・アンド・ビルドといいますか、そういったものを行いながら選択と集中を重ねていかなければなりません。したがいまして、いわゆるスクラップを行う場合につきましては、そういった事業についてなぜスクラップするのかということは、よく御説明を尽くす必要があるだろうと思ってございまして、それは議員の御指摘のとおりだと思ってございます。したがいまして、県民の方々により信頼していただける予算調製システム、よく御理解をいただけるそういうシステムになるように、今後ともいろいろ研究を重ねてまいりたいと考えております。
〇14番(高橋博之君) 個別の政策の是非で説明しても納得いただけないと思うんですね。全体の中で、こういう調整過程の中で、優先順位が低かったからこれは減額になったんだ、あるいはやめたんだという説明がなければ、なかなか納得がいただけないと思うわけですが、この質問を最後にしますが、これは知事に聞きます。
 政治主導というのは、国民本位、県民本位というのは記者会見の中でも知事がお話しになっておりますが、主権は県民にあります。その県民は、自治体にとって最も重要な意思決定の一つである予算の決定の蚊帳の外に今置かれております。民主党が掲げる政治主導と整合性がとれないのではないでしょうか。自治体として納税者から集めた税金を、住民の最大幸福のためにどう使うか。有権者でもある住民を巻き込んだ形で、税財源の使い方を自主的に決めていくというシステムの確立が、いわば地方分権のはずです。予算編成過程を公開できないようでは、地方分権の受け皿として甚だ心もとないというふうに思います。
 そこで、改めて知事にお聞きをいたしますが、地方分権時代に備えて、住民に開かれた予算編成過程にするべきだと思いますが、いかがでしょうか。
〇知事(達増拓也君) 現行地方自治法のもとでは、主権者である住民が、一つには知事を選び、もう一つには議員を選び、そして、それぞれが予算の編成の役割を担い、また、それに対する議決の役割を担い、そのそれぞれが、きちんと主権者である住民の目線に立ちながら、地方自治法の規定に従ってきちんとなすべきことをなすということが期待されているのだと思います。
 議員御指摘のことも念頭に置きながら、きちんと法令に従って役割を果たしていきたいと思います。
〇14番(高橋博之君) 他県のように予算調製の過程の段階から、課長査定、部長査定、本県ではそのような仕組みになっていないということですが、何らかの形で、途中の段階で公開ができるような工夫を、今後、御検討いただきたいというふうに思います。
 次に、総務部長にお聞きをします。公共事業についてです。
 現在、本県における公共事業に関しては、従来の総量管理方式により個別の事業を十分に査定できているとは言えないので、国の補助金がついたからという理由で優先順位の低い事業が執行されたり、必要以上の高規格で事業が行われたりする無駄が温存される可能性を排除し切れません。予算調製課が一件審査する形になれば、事業担当者では決断できなかった事業の廃止や規模縮小を、今よりも多く実現できることになろうかと思いますが、いかがでしょうか。
〇総務部長(菅野洋樹君) 公共事業の関係でございますが、本県におきましては総務部、私どもで公共事業費全体の予算規模を管理しつつ、個々の事業につきましては、公共事業評価を行った上で予算化を行っているところでございます。特に大型の公共事業、これは総事業費50億円以上ということになろうと思いますが、岩手県政策評価委員会に設置されております大規模事業評価専門委員会の審議も踏まえまして、県としての意思を決定しているところでございます。
 公共事業評価は、県土の均衡ある発展と県民生活の向上を図る上で重要な役割を果たしております公共事業について、一層の効率化、重点化を図るとともに、極力、その客観的な指標に基づきまして、その実施過程の透明性の向上を図るという目的でそういう公共事業評価を行っているところでございまして、本県のように、一方で総額をコントロールしつつ、公共事業評価という格好で、より総体的に客観性の高い指標に基づいてそれぞれの公共事業を採択をしていくという方法につきましても、一定の役割があるのではないかと思ってございます。
〇14番(高橋博之君) この項目最後になりますが、国の施策転換による本県への影響についてお聞きします。
 暫定税率については、けさの岩手日報の一面で報じられておりましたので、この点については省きます。補正予算の一部凍結について再質問させていただきたいので、この点について質問させていただきたいと思います。
 補正予算の一部凍結が検討されておりますが、ダムなどの大型公共事業が凍結の対象となった場合の本県の補正予算、大型公共事業への対応も含めた財政の影響はどのように見込まれ、その対応はどのように考えておられますでしょうか、総務部長にお聞きいたします。
〇総務部長(菅野洋樹君) 国の補正予算凍結の本県への影響ということでございますが、ダムのお話がありましたので、本県では、直轄ダム1カ所、補助ダム─県営の補助ダムでございますが、3カ所実施しているところでございますが、現在のところ、国における予算、事業見直しの詳細が不明でございまして、本県財政への影響について具体的に申し上げられる段階には至っていないところでございますが、仮に国のダム建設関係予算が凍結されたとした場合の、他の歳入歳出予算が一切変わらないという仮定の前提を置いて申し上げさせていただきますと、国直轄事業の場合は、国直轄事業負担金の支出が、県営事業の場合には事業に要する経費の支出がそれぞれ不要となる、なくなるということになります。その財源の大半は県債の発行で賄っておりますので、財政的には県債発行額の抑制が図られるということになりますが、一方で、将来の基準財政需要額にその県債の償還額の元利償還金が盛り込まれますので、将来的には地方交付税が減少する方向に働く、こういうことになろうと思ってございます。
〇14番(高橋博之君) 県がゴーサインを出しているものについて、今後、仮に国が、これはノーだという判断をされるケースもあろうかと思うんですが、知事は記者会見の中で、同じことをやれば同じような結果になると思う、こういう御発言をされておりますが、結論が同じになると言い切れるのでありましょうか。
〇知事(達増拓也君) そもそも県では、大規模公共事業に対して、委員会のほうで5年ごとに評価見直しをしていただいております。ですから、その委員会と同じような委員会で評価をすれば、同じような結論になると思います。
〇14番(高橋博之君) 同じになるのか、私はちょっとそこは理解できないんですが、今、いずれ各都道府県でこの補正予算を当てにしていて、反対の意思表示、あるいは混乱をするといったような心配の声が各都道府県から聞こえてきておるわけですが、知事は、知事の姿勢、スタンスですね、仮に国が本県として下している決断とは違う決断をした場合に、知事は、他の都道府県同様、それは反対の意思、あるいは混乱をするのでそれは考えてほしいという立場なのか、それとも、同じ民主党として、今回、政権交代、国民の民意を受けた国政において、そういう判断を政権与党が下したということですから従うしかないという判断になるのか、その点について、最後、お聞かせいただきたいと思います。
〇知事(達増拓也君) それは、どういうことが決まるかの中身によるのではありますけれども、そうそう民意に反することを決定はしないのではないかとは思っておりまして、そういうことを期待しております。
〇14番(高橋博之君) 時間がないので次に行きたいと思います。
 民意に反することはないということでありますが、行政運営についてお聞きしますが、八ツ場ダム建設中止をめぐる一連の騒動を見ていて思い出したのは、本県の県立病院、地域診療センターの無床化の問題です。八ツ場ダム同様、半ば唐突に計画を公表するなど、合意形成に至るまでの手続が乱暴だったために地元住民の大反対を受けました。
 人口減少社会、少子・高齢化、低成長時代が、これまでの拡大成長を前提とした社会システムに変革を迫っているのは、国だけではなく、本県も同様です。その象徴的な例が無床化問題だったと思います。
 縮む社会にいかに身の丈を合わせていくのか、そこにはサービスの縮小、カットという痛みが伴います。その際大切なことは、住民の痛みを伴う改革を受け入れてもらうための合意形成をいかに図るかという点に尽きます。
 改めて、地域診療センターの無床化の問題を振り返り、計画策定から実施に至るまでの政策決定過程をどのように総括されておりますでしょうか、知事にお聞きいたします。
〇知事(達増拓也君) 県立病院等の新しい経営計画については、医療局において、深刻な医師不足など県立病院の置かれている厳しい現状を踏まえて、病院長を初め、現場医師や各職域の職員と議論を重ね、また、県民の方々の声も聞きながら、新しい経営計画を策定したわけであります。
 そして、県議会における議論等も経て、新しい経営計画は本年4月から実行に移され、県立病院、地域診療センターのいわゆる無床化についても、患者さんの移動でありますとか、スムーズに行われ、また、二次医療圏域ごとの中核病院を中心とした体制についても、底が抜けない状況が何とか確保されて、地域診療センターの近くにお住まいの方々も含めて、県民の安心・安全を確保できるような形になっていると思っております。
 また、九戸の伊保内のセンターについては、常勤医師が1人ふえる、また、住田についても、一時内科の常勤医師が不在だったのが、今回、センターで働きたいという医師が見つかったと聞いておりますし、また、花泉においては、民間参入という当初の予想を超えるような、そういう地域の力を結集して地域医療を守っていくという動きも、いわば医療局の予想を上回るペースで進んでいるという状況と考えております。
〇14番(高橋博之君) いや、私の質問はそういうことではなくて、八ツ場ダムもそうですけれども、あの病院の問題もやらなければならなかったと。ただし、やり方の中で、やはり幾つか問題があったということでありまして、政策の決定過程をどのように総括されているのか改めてお聞きしたわけですが、予算特別委員会の総括でも、知事は、政策決定過程の透明性を確保し、説明責任を果たすことが、教訓としてあの政策決定過程から学んだことだというお話をしていたはずです。
 しかし、今の御答弁を聞いて、もう、のど元を過ぎればではありませんけれども、その後も、国体の主会場選定や、あるいは振興局の再編などの重要課題で、関係市町村や地域住民への十分な説明もなく、半ば唐突に計画を公表するなど、十分にその教訓を生かし切れていないように見えます。
 知事は、このような一連の重要課題への対応を聞かれ、住民サービスを縮小するという決断は、早い段階では対外的には言えない。内部で専門的な議論を詰めて、やむを得ないという段階になって初めて外に出すという意思決定にならざるを得ないとお話をしております。某新聞は、このような知事の姿勢を、ぎりぎりのタイミングで方針を示し、一気に中央突破する、その戦略が常套手段となりつつあると指摘をしております。
 今後も、県立高校の再編など県民に痛みを伴う改革が待ち受けておりますが、どのような姿勢で臨むのか、改めて確認させていただきたいと思います。
〇知事(達増拓也君) 痛みを伴う改革とおっしゃいましたけれども、確かに私は、かつて、資源配分の時代から我慢配分の時代になってきているということも申し上げましたが、ただ、それは、右肩上がりの経済成長を前提に、とにかく国も地方も財政が年々ふえていき、そのふえたパイをどう分けるか、その中で、市町村であるとか、あるいは各団体であるとか、それぞれの個別的な利害を最大化するということを目指してそれぞれが動いて、そういう綱引きの中でそれぞれに資源分配されていく、そういうやり方がかつては有効だった、でも、今はもうそういう資源分配ではなく、むしろ我慢分配だということを申し上げたことがありましたけれども、ただ、そういう個別利益の最大化を図ることが、政治だ、行政だという物の見方を外して、自分の属する全体の利益の中で、岩手で言えば、岩手県民の利益を最大化するというふうに発想を転換しますと、これは、必ずしも我慢配分とは言えないでありましょうし、また、痛みという表現もどうかと思います。
 国体の開閉会式場をあのような形に決定したということは、痛みなんでしょうか。私はそうは思っておりませんで、県民として非常に賢明な選択ができたと思っております。その間の議論は非常に白熱したものもありましたが、それは、診療センター無床化についてもそうでありましたけれども、結果として、県民は賢明な選択ができたと思っております。県民が賢明な選択をするために盛んに議論をしていくこと、そうした議論の工夫については、過去の経験も生かしながら、今後もいろいろ工夫をしていきたいと思っております。
〇14番(高橋博之君) 国体の話を入れてしまったので今そういう御答弁をされて、それは知事の言うとおりだと思います。国体の問題は、私は痛みではないと思います。ただし、振興局の再編や県立病院の再編、あるいは県立高校の再編等は、10分で行けていた学校や病院が30分、40分かかる、これは行政サービスの低下に地元ではつながりますから、これは、私は痛みだということになると思います。
 世の中が右肩上がりで拡大していた時代にさまざまな行政サービスを充実させてきた。それが、これから税収減、人口減少、低成長、縮んでいく中で、やはりその中に大きくなってしまった我々の体をダウンサイジングしていかなければならないわけですね。そのときには、どうしても県立病院の再編の問題のときもあったような反対というのが、これは必ず起きるんだと思います。
 どう進めていくかが、私は大変大きな問題だというふうに今も指摘をしているわけですが、その際、今、知事も、さまざまな議論をしていく工夫はしなければいけないという話でありましたが、その議論の仕方についてでありますけれども、県立大学の齋藤教授は、知事は、マニフェストで草の根主義を打ち出しながら、地域に根差した問題解決が不十分だった、問題が起きてから地域に入っていくという感じ、役人が青写真をつくるのではなく、県民と一緒に考えていくという姿勢を出していかないと不信感が募るだけだと厳しく指摘しています。
 私も全く同感です。確かに、例えば医療は専門的な知見が求められる分野ですし、個別の地域の利益と県全体の利益との折り合いをどこにつけるかなど、最初の青写真は、たたき台は県当局が主導してつくるしかないと思います。しかし、大事なのは、それをどこで出して議論するかなんだと思います。
 知事も以前お話をしておりましたが、できるだけ早く県が置かれた厳しい現状を県民の皆さんにさらけ出して、その上で、たたき台を出して一緒に考えると。その青写真を持って現場に入っていき県民と一緒に考えるという姿勢が私は大切なんだと思います。その話し合いの場で、受益と負担の問題にも改めて住民の皆さんに目を向けていただいて、なぜそのような改革が必要なのか時間をかけて丁寧に説明を尽くす、そのことが私は最低限必要な合意形成のプロセスだと思いますが、その点について知事はどのようにお考えでしょうか。
〇知事(達増拓也君) 日ごろより、知事の仕事は知ることということを言っておりますけれども、岩手が今どうなっているのか、どこでどういう人たちが困っているのか、そして、どうすればそれを解決できるのか、それを知ることができれば、それをすぐ解決することが、あとは行動するだけ。これは、知事という職種一人が知ればいいということではなく、県であれば組織として知らなければなりませんし、また、岩手全体、県民一人一人が、あたかも自分が知事であるかのごとく、岩手全体がどうなっているのか、どこでだれが困っているのか、そして、どうすれば解決できるのかということがわかれば、合意形成は非常にやりやすくなると思います。
 御指摘のとおり、そういう草の根の力で岩手の未来を懸命に推進していくということのために、さらに工夫と努力を重ねたいと思います。
〇14番(高橋博之君) 済みません、しつこくてね。ここの合意形成プロセスになぜこだわるかといいますと、満足はしていただけないんだと思うんです。10分で行けていた病院や学校が、やはり30分かかるようになれば、当然、当該地域に暮らしておられる方々にしてみれば、行政サービスの低下につながりますから満足はしていただけない。しかし、少なくとも御納得はいただきながら進めていかなければならないということについては、知事も以前どこかでお話をされておったはずです。やはりそうなんだと思うんです。
 では、なぜ納得をしていただきながら進めなければいけないかということでありますが、それは、先ほどもお話をさせていただきましたが、少子・高齢化が進んでいって、これから行財政資源がどんどん限られていく。そういう中にありましては、もはや県庁の力だけではやっていけない。県民の力をかりなければいけないから、いわゆる県民との協働と呼ばれるものですが、協働のやはり前提になるのは信頼関係なんだと思うんです。日ごろ不信を招くような行政運営をしていて、困ったときに、さあ、一緒にやりましょうと言っても、やはりだれもついてこないと思います。少なくとも、今回五つの対象地域になった住民の皆さんは、私はその後は大迫しか行っておりませんが、やはり不信感というものがいまだに根強く残っております。
 新しい長期計画の大きなポイントは、多様な主体が公共サービスを担う仕組みづくり、まさに協働です。ですから、県民を初めとする民間セクターの力を引き出すような行政運営をしていかなければならないわけです。そのためには、やはり日ごろから県民の不信感を招かないような行政運営を心がけなければならないし、県民に現状を丁寧に説明し、ともに課題解決に当たっていく姿勢を示すことが必要なんではないかと思うわけですが、知事はどのようにお考えでしょうか。
〇知事(達増拓也君) 行政として我慢をお願いしますということは、実はそんなにないのではないかと思っておりまして、行政として何か新しいことをする、そちらのほうにしていきましょうということなんだと思います。
 診療センターの問題についても、医療圏ごとに、より安全・安心な医療体制をつくっていこう、今のままでは、診療センターのそばに住んでいる人たちでも、いざ手術が必要なときに手術が受けられない、命が危なくなるんだ。それをまず防がなければならないのではないですかということで議論を進めてきたと思っております。
 八ツ場ダムの問題については、何をするためにあれをやめるのかという議論がうまくできていないところに問題があると思いますし、今報道されている補正予算のカットとかいろいろな、とにかくばっさばっさ予算を切るというのは、それ自体を見れば我慢なんですけれども、その分、もっと国民生活、国民経済のためにいいことをしようということなので、それをやりましょうということをきちんと出して議論していけば、我慢を納得してもらうというのとは違う議論ができるんだと思っております。
〇14番(高橋博之君) 私は、やはり我慢をお願いしていく、その根拠というか、その分、これだけ違う分野で雇用が生まれるよということを説明していけば納得が得られるというようなお話でありましたが、やはり当該地域に暮らしておられる方々は、それではなかなか納得できないというのが、今までこういう改革をしてきて、さまざまな反対、反発を受けているのを見て、率直に思うところであります。
 いずれ私がこの行政運営の今の質問の中で言いたいのは、県庁の力だけではこれからなかなか難しい、県民の皆さんの力もかりていかなければならないというときに、やはり日ごろからつまらないところで不信感を招いていくよりは、信頼して、信頼関係を持ちながら行政を進めていかなければならないと思うわけです。
 知事のように、説明して、納得してくれる住民の皆さんというのは、私は、まだなかなかいない、実際いなかったわけです、この間の県立病院の診療センターの問題のときもですね。感情論だと思いますよ。最後は感情論だけれども、しかし、あれだけ大きな反発が起きてしまったわけです。
 この県民との協働を推し進めていくときに、私は、行政も変わっていかなければならないと思いますが、一方で、県民の皆さんもやはり変わっていかなければならないとも思っております。
 一方の協働のパートナーである県民ですが、これまで、困ったときは行政に頼めば何とかしてくれるという意識、これもやはりこれから変えていかなければならないと思います。これからは、自分たち自身が地域づくりの一翼を担うんだという主権意識を県民に持ってもらうことがやはり大事です。
 新しい長期計画も、その点を意識して、次のように踏み込んだ記述をしております。県民の皆さんには、地方分権が進展する中で、自治体の主権者として、受益と負担のあり方の検討により一層参画いただくとともに、魅力的で住みよい地域づくりを進めるために、行政とともに地域づくりを担うパートナーとしての役割を期待しますと。
 ポイントは、受益と負担のあり方の検討に参画してもらうという点だろうと私は思います。この点を書き込んだことは高く評価したいと思います。これを具体的に形にしていくには、やはり、さまざまな計画の策定段階から県民を巻き込むことだと思います。
 これまで、我が国は経済発展に力を注いできて、順調過ぎるほど経済発展を遂げてきました。そうした中で、国民の関心も受益に偏りがちでした。結果、役所にやってもらって当たり前というお任せ民主主義がはびこってきた面があります。負担を伴う計画の策定段階から県民に入ってもらうことで、改めて負担なくして受益なしの現実に目を向けていただき、県民が受益と負担の新たな均衡を見出す機会にしていくべきだと思いますが、いかがでしょうか。
〇知事(達増拓也君) 議員の皆さんも、まさに県民の代表としてそういうプロセスに参画をいただいて、役割を果たしていくというのが、地方自治法の趣旨だとは思うんですけれども、確かに地方自治法にも、住民投票のような、そういう住民が直接意思決定に参画していくということについては、全く書いていないわけではないんですが、そこは、もう少し充実させるべきではないかという議論もあるというのは承知しております。
 議員が冒頭でお話しされたように、二元代表制というものにどう直接民主制を取り入れていくかというのは、地方自治にとって非常に重要な課題だと思いますので、さまざまな工夫を検討していきたいと思います。
〇14番(高橋博之君) 検討をお願いします。
 低成長、人口減少、少子・高齢化という厳しい時代を乗り切るためには、県民も、行政に求めるだけではなく、主権意識を持って積極的に参画してもらわなければなりません。私たちは、主権者であることに甘んじるのではなく、県民一人一人が主権者たらんとするようにならないと、この厳しい時代を乗り切っていけません。いわば参画型民主主義、これを育てていかなければならないと思います。
 ですから、我々政治の側も、単に県民の生活を楽にする話だけではだめで、それでは財政は早晩破綻してしまいます。これからの厳しい時代を考えれば、県民にしてあげることばかりではなく、逆に、県民にしてもらわなければならないことを素直にお願いしていかなければなりません。その意味で、右肩上がりの時代のしてあげる政治からの意識転換が、私たち議員にも問われております。アメリカのかつてのケネディ大統領や現在のオバマ大統領のように、県民の県に対する貢献の志を引き出すような政策を私たち議員も、そして知事も、勇気を持ってこれから打ち出していかなければならないと思っております。
 せっかくのこういう機会でありますので、知事が、今後、岩手県民の皆さんに対して、してあげる話、ふだん困っておられる方々に対してすぐ手を差し伸べるということで頑張っておられるわけですが、逆に、これから県民の皆さんに県としてお願いしなければいけないこと、県民の皆さんが県に貢献できる、そういうことについて、この場でぜひ県民に正直にお話をしていただきたいと思います。
〇知事(達増拓也君) 今でも、またこれまでも、納税をしていただくという、これはもうこの上ないある種の貢献をしていただいているということがありますし、行政と国民や、あるいは住民との関係で、何かをしてあげる、してもらうという、足し合わせれば、負担と得るものというのはイコールなわけですから、そういう意味で、そういった本質が変わるわけではないんですけれども、ただ、高度成長時代においては、借金をベースにした行政政治がうまく回転していたということで、ですから、それは、国民、住民自身が、ある種の未来の自分たち、あるいは次世代との関係において、ちょっと貸してもらうよということで、それなしでは得られなかったような便益を多数得ていたということなんだと思います。
 それは、国民と政府の間で行われていったというよりは、一緒にそういうことをやったわけですので、そこは、そうした仕組みを変えていかなければならないというところから、まず、行政に直接携わる者たち、そして政治に携わる者たち、そしてそれ以外の国民、住民というのが、一緒になって、まずその仕組みを変えるということをやっていかなければならない。その中で、そういう借金頼りじゃなくて、普通に税金を中心とした負担、そしてその負担だけ便益を受けられる、そういう協働の仕組みをこれまた一緒につくっていくということを長期計画にも盛り込んであると思っておりますので、そういう方向で、ぜひ岩手県民の皆さんと一緒に、そういう賢明な地方自治というものを進めていきたいと思います。
〇14番(高橋博之君) ちょっと難し過ぎて理解できなかったんですが、改めてまた、きょうの知事の御答弁を読み返して自分なりに理解してみたいと思います。
 これを最後の質問にしますが、県職員の話です。この協働を進めるもう一方のパートナーの県職員も、やはり意識転換が問われています。知事は以前、記者会見の中で、先ほど知事みずからおっしゃっておりましたが、資源配分の時代から我慢配分の時代になってきたが、それに対してきちんとした体制をつくってこなかった、政治、行政、地域づくりにおける発想の転換ということが、時代にふさわしい形できちんとできてこなかったことが、岩手において直面しているさまざまな危機の背景にあると述べておりました。
 そして、無床化問題では、みずからもまだまだ甘かったことを反省し、素直におわびをされました。その上で、この反省を生かしながら、県と市町村、さまざまな主体が、対等なパートナーシップとなって、新しい時代にふさわしい地域経営という観点からの地域づくりということを進めていけるよう、まず、私は、県職員に対してそういう意識転換を強く求めて、私自身も意識転換を進めていかなければならないと決意を述べられました。
 その決意に基づいてかどうかはわかりませんが、最近、知事は、岩手県I援化構想という私的構想を披露されました。これは、これからの県は、県職員だけではなく、いろいろな人や組織と一緒に仕事をしていかなければならない。県そのものが脱県をし、開かれた今までの行政機関と違うタイプの集団になっていこうという意味ということらしいんですが、この岩手県I援化構想も含め、知事は、具体的にはどのように県職員に対して意識転換を求めてきたのか、また今後求めていくのでしょうか。
〇知事(達増拓也君) I援隊化構想ですね。I援隊化、坂本龍馬の海援隊の海というのを岩手の頭文字Iに変えてI援隊と言っているんですけれども、これは部課長研修において提案したんですが、そのときは私的構想にとどまっていたんですが、そうだ、そのとおりだという声が県職員の中にもありまして、今、もう少し組織的、制度的に、県行政のあり方の一つの運動としてできないかということで、県職員にいろいろ検討してもらっているところです。
 脱藩ならぬ脱県ということで、古い国の下請のような県のありようであったりとか、そういう古い県のあり方から脱皮して新しい時代にふさわしい、そして海援隊というのは人づくりの機関であり、また、つながりづくりの機関であり、そういうことを通じて豊かさをつくる機関であった。それを岩手県として、この長期計画のもとでやっていければいいと思っております。
 海援隊が形式的には土佐藩のもとに置かれたわけでありますけれども、土佐藩以外の人でもどんどん、また脱藩者でもOKということだったように、県がI援隊的に物を進めていくときには、狭い県職員以外の人たちとも対等な立場で連携をして、そして岩手の外にもどんどん出ていく、外国にもどんどん出ていく。そういう中で人づくり、つながりづくり、豊かさづくり─豊かさというのも単なるお金で換算される豊かさではない、精神的な安らぎとか生きがいとかも含めた、そういう真の豊かさを獲得していくという方向に進めていきたいと思っております。
〇14番(高橋博之君) 知事ブログを読ませていただいたので、思いはわかりました。ぜひ名前負けしないように、頑張っていただきたいなと思います。
 最後、長期計画についてお聞きをします。ここまで少し厳しい話ばかりでしたので、最後は未来に向かって希望の持てる話にしたいと思います。
 新しい長期計画についてです。まず、長期計画の基本的な認識についてお尋ねをいたします。
 大きな時代の曲がり角にあっては、やはり進むべき道筋を指し示す長期的なビジョンが重要です。それが現在策定中の新しい長期計画だと思いますが、変化が激しい時代に長期の計画を立てる。しかも、県民が希望を感じられるような計画にしていかなければならない難しい作業を進めるに当たって、どのような点に留意し計画をされたのか、お聞きをいたします。
〇知事(達増拓也君) まず、右肩上がりのそういう高度成長時代のような財政収入がこのくらいずつふえていくだろうということに基づいて、ここまでに何をつくる、ここまでに何をつくるというような、そういう計画にはできないし、そういう時代でもないだろうと。しからば、どういうふうにつくっていけばいいかということについては、県民本位に、まず県民がそれぞれ10年後どういう自分になっていたいか、また、どういう岩手であってほしいか、そういう県民の希望というものを束ねていくと、そこに岩手の10年後の目指す方向性が出てくるであろうということで、県民みんなの力を結集し、それぞれの希望に向かって行動していくための羅針盤としての性格を有する、いわば岩手県民計画として策定したいということを当初考えまして、こうした考え方に基づいて計画の策定に当たりましては、2度にわたるパブリックコメントや地域説明会等の実施、さらには、県民からの構想のアイデア募集など、県民の皆さんの声を伺う機会をできるだけ確保して計画づくりに参加いただきました。また、県内各界の学識経験者等で構成する岩手県総合計画審議会、ここで県民の皆さんからさまざまな意見、提言を反映させた資料を事務局から提出しながら、これまで18回にわたって熱心な審議をいただいたわけであります。
 そして、計画の内容についてでありますけれども、仕事や暮らしなど、県民の生活ステージに着目した将来像を描くという構造になっております。そしてまた、政策推進に当たって県が何をするかということはもちろんなんですけれども、県民やあるいは団体などのさまざまな主体に期待される役割を示すなど、さまざまな構成主体が目指す岩手の姿の実現に向けて行動していく際の指針になるような構造に、今回のこの長期計画はなっていると思います。
〇14番(高橋博之君) 難しい時代の中で、10年後のビジョンに果敢に挑むということは私は大変大切なことだと思いますが、しかし、パブリックコメントあるいは構想グランプリでしたか、さまざまな工夫で県民の皆さんの希望を思い、声を聞いていこうという工夫は見られるわけでありますが、しかし、残念ながら、私もこの2カ月ぐらい、会う県民、会う県民に、長期計画を知っていますかという話を聞くと、ほとんど、残念ながらまだまだ浸透していない、広がっていないという状況であります。大変難しい、先が見通せない時代でありますから、やはり私はもっと腰を据えて時間をかけて、もっと県民の中に分け入って計画をつくった方がよかったのではないのかなというふうに思っております。
 前回の増田知事時代の長期計画は、策定に2年1カ月かけています。間に知事選があったということもあるようでありますが、今回の策定期間は1年2カ月という期間であります。平成7年当時よりも激動の世の中ですから、もっと時間をかけるべきだったと思います。
 知事は、前回の選挙で掲げたマニフェストに基づいて、任期4年の政策としていわて希望創造プランという4カ年計画を立てました。この後半の2年分を長期計画に合うようにバージョンアップしたということですが、県民からすると、何だかわかりにくいような気がします。むしろ、希望創造プランは知事のマニフェストそのものというか、ベースにしているわけですから、それはそれでやり切って、新しい長期計画はもっと時間をかけてつくり、まだ表明されておりませんが、次期知事選挙には、この前回の選挙の約束である希望創造プランへの評価と、実質的には恐らくは新しいマニフェストのベースになるであろう新しい長期計画への信任を選挙で県民に問うとしたほうが、県民からすると大変わかりやすかったし、結果、県民にも、自分たちの県の未来を指し示すこの新しい長期計画に関心を持ってもらうための絶好の機会にもなったと思うのですが、その点について知事にお聞きをしたいというふうに思います。
〇知事(達増拓也君) まず、総合計画については、実は岩手県総合計画審議会が毎年毎年その時々の総合計画、今は増田知事時代につくられた夢県土いわての総合計画があるわけでありますけれども、この検証作業を行いながら、また時代に合った総合計画というのはどういうものだろうかというような、そういう議論も平素から行っているところがあります。そして、県組織全体にとってみて10年とか12年とか、そういう長期の中で10年に1回、12年に1回つくり上げていくということで、いわば10年前、12年前に現行のものができた後、さあ、次はどうしようみたいなことは、私が知事になる前から県職員の念頭にはあったと思っております。そうした総合計画審議会の継続的な活動や県組織としての10年、12年の波、それを県民全体に広げながら作業をしていくということでありまして、私はかなり、今、新しい長期計画の策定中だということは県民に浸透してきていると思っておりますし、この岩手のあるべき姿、また、その中で一人一人がどういうふうになっていきたいかということについても、いろんな声が集まってきていると思っております。
 それから、知事選挙と長期計画の関係については、長期計画の趣旨から言って、それは選挙とはまた別のものとして条例にもありますし、また、県組織として取り組まなければならないことでもありますし、そういう知事選挙とは別に、県としてそして県民的につくられるべきものかなと考えております。
〇14番(高橋博之君) ここがいま一つかみ合わないんですが、知事は県の最高責任者でたった1人です。日ごろ本当にあちこち激務の中で回って、県民の声に耳に傾ける努力をしていることも私は存じ上げておりますが、しかし、体一つでありますから限界があります。そこを補うのが我々48人の県議会議員でありまして、少なくとも、私の周りでは長期計画を知らない─知事の周りでは長期計画が広まっているかもしれませんが、少なくとも、私が歩いている範囲の中では、なかなか広がっていないという声があることも知っていただきたいというふうに思います。
 それで、残り3分になったわけですが、まだまだやりたかったんですけれども、希望学とかいろいろ勉強させていただいて、知事が希望希望とこだわっている理由が何となく私もわかりました。まだないもの、つまり、今ないものに希望を見出していくというその考え方は少し理解をしたわけですが、今回知事のブログも読みましたが、一言でこの10年の長期計画を進めることによって目指す社会、それは、人がつながって豊かさを実現する社会というふうに私は理解をさせていただきました。これは鳩山内閣の基本方針に、経済合理性重視の経済から人間のための経済への転換を目指し、国が予算をふやせばすべての問題が解決されるものではないというふうにあります。つまり、成長がすべてを解決する時代が終わったというふうなメッセージだろうというふうに私は受けとめました。
 フランスのサルコジ大統領も、最近、GDPの見直しに言及し、幸福感を加味した新しい指標を提唱しております。新しい長期計画にこの最終目標を掲げたのは、私は大変すばらしい目標だというふうに思っておりますが、いかんせん、残念ながら、まだまだ県民の皆さんに浸透していないというか、広まっていないというふうに私は感じるんです。私は、10年後に目指すビジョンというのは、とてもいいところにビジョンを描いたと思います。
 改めてお聞きをしますが、知事は、長期計画そして最終的に目指すビジョンが、岩手県民の中に広がっていると感じていると先ほどおっしゃっておりましたけれども、どの程度広がっているとお感じになっているのでしょうか。
〇知事(達増拓也君) ゆたかさ、つながり、ひとというこの三つの視点は、私のアイデアではございませんで、まさに県当局が作成した資料に基づきながら、岩手県総合計画審議会において出てきた案なんです。これは大変すばらしい案だと私は思っております。そしてグローバル化、情報化、将来が非常に不透明なこれから10年にあっても、そこをきちっとやっていけば大きな間違いはないし、むしろこういうグローバル化、情報化の中で、岩手が大きく花開くことができるというふうに思っております。したがって、本当にすばらしい案を考えていただいたので、私もこれをできるだけ、ただ言葉を覚えているというのを超えて、その意義とか応用の仕方とかも含めて、県民にどんどん浸透させていきたいと思っております。特に決定していただければ、正式なものとして県のほうでも……
〇議長(佐々木一榮君) 執行部に申し上げます。
 申し合わせの時間が経過いたしましたので、発言の終了をお願いします。
〇知事(達増拓也君)(続) 時間ですので終わります。
   〔「議事進行について」と呼ぶ者あり〕

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